特許第6261296号(P6261296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261296
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/02 20060101AFI20180104BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180104BHJP
   C08K 9/00 20060101ALI20180104BHJP
   C01F 5/14 20060101ALI20180104BHJP
   C01F 7/02 20060101ALI20180104BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C09K21/02
   C08L101/00
   C08K9/00
   C01F5/14
   C01F7/02 J
   B32B15/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-242941(P2013-242941)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-101635(P2015-101635A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】柳井 俊輔
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−051906(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/065300(WO,A1)
【文献】 特開平03−197317(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/077168(WO,A1)
【文献】 特開平02−074521(JP,A)
【文献】 特開平02−289420(JP,A)
【文献】 特許第2645086(JP,B2)
【文献】 特開2005−264076(JP,A)
【文献】 特開2012−111827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 21/02
B32B 15/08
C01F 5/14
C01F 7/02
C08K 9/00
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属水酸化物を含有する金属水酸化物粒子、及び、二酸化ケイ素を含有し前記金属水酸化物粒子に固着した二酸化ケイ素粒子含む難燃剤と、樹脂と、を少なくとも含む難燃性樹脂組成物が、シート状に形成された樹脂層と、
該樹脂層の少なくとも一方の面側に配された金属層と、が積層されてなり、
ISO5660に従った難燃性評価において、20分後の合計発熱量が8MJ/m以下を示す、積層体
【請求項2】
前記金属水酸化物粒子の粒径が、該金属水酸化物粒子に固着した前記二酸化ケイ素粒子の粒径よりも大きい請求項1に記載の積層体
【請求項3】
前記金属水酸化物粒子の平均粒径が、前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対して10〜10,000倍である請求項2に記載の積層体
【請求項4】
前記金属水酸化物粒子と前記二酸化ケイ素粒子との質量比が、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=80:20〜90:10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記難燃剤と前記樹脂との質量比が、難燃剤:樹脂=2:8〜6:4である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性樹脂組成物を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、難燃剤としては、様々な種類のものが知られており、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を含有する粒子が知られている。
【0003】
この種の難燃剤は、例えば、樹脂組成物の構成成分として樹脂組成物に配合されることにより、配合前よりも、樹脂組成物の難燃性を高めることができる。
【0004】
この種の難燃剤としては、例えば、金属水酸化物を含有する粒子と、亜鉛化合物を含有する粒子とを組み合わせたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、斯かる難燃剤は、金属水酸化物を含有する粒子と、亜鉛化合物を含有する粒子とが単に組み合わされだけのものであるため、樹脂組成物の構成成分として樹脂組成物に配合されても、それぞれの粒子が樹脂組成物中で必ずしも十分に分散しない。従って、斯かる難燃剤は、樹脂組成物における分散状態が必ずしも良好にならないことから、樹脂組成物が必ずしも十分な難燃性を有することができないという問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−241171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、樹脂組成物の構成成分として配合されたときに、樹脂組成物が十分な難燃性を有することができる難燃剤を提供、十分な難燃性を有する難燃性樹脂組成物含む積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明に係る積層体は、金属水酸化物を含有する金属水酸化物粒子、及び、二酸化ケイ素を含有し前記金属水酸化物粒子に固着した二酸化ケイ素粒子を含む難燃剤と、樹脂と、を少なくとも含む難燃性樹脂組成物が、シート状に形成された樹脂層と、
該樹脂層の少なくとも一方の面側に配された金属層と、が積層されてなり、
ISO5660に従った難燃性評価において、20分後の合計発熱量が8MJ/m以下を示すことを特徴とする。
【0009】
上記難燃剤は、構成成分として樹脂組成物に配合されたときに、二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着した状態で樹脂組成物中に分散される。従って、金属水酸化物粒子に二酸化ケイ素粒子が固着している分、金属水酸化物粒子同士の凝集が抑制される。これにより、樹脂組成物における金属水酸化物の分散が良好なものとなり得る。そして、二酸化ケイ素粒子と金属水酸化物粒子とによって、樹脂組成物が十分な難燃性を有することができると考えられる。
【0010】
上記の難燃剤においては、前記金属水酸化物粒子の粒径が、該金属水酸化物粒子に固着した前記二酸化ケイ素粒子の粒径よりも大きいことが好ましい。
【0011】
上記の難燃剤においては、前記金属水酸化物粒子の平均粒径が、前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対して10〜10,000倍であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る積層体では、前記金属水酸化物粒子と前記二酸化ケイ素粒子との質量比が、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=80:20〜90:10であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る積層体では、前記難燃剤と前記樹脂との質量比が、難燃剤:樹脂=2:8〜6:4であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記の難燃剤は、樹脂組成物の構成成分として配合されたときに、樹脂組成物が十分な難燃性を有することができ、上記の難燃性樹脂組成物は、十分な難燃性を有する本発明に係る積層体は、十分な難燃性を有するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】難燃剤を走査型電子顕微鏡によって観察したときの写真。
図2】難燃剤を走査型電子顕微鏡によって観察したときの写真。
図3】難燃剤を走査型電子顕微鏡によって観察したときの写真。
図4】樹脂組成物の難燃性の評価結果を示すグラフ。
図5】樹脂組成物の難燃性の評価結果を示すグラフ。
図6】樹脂組成物の難燃性の評価結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明における難燃剤の一実施形態について説明する。
【0017】
本実施形態の難燃剤は、金属水酸化物を含有する金属水酸化物粒子と、二酸化ケイ素を含有し前記金属水酸化物粒子に固着した二酸化ケイ素粒子とを含むものである。
詳しくは、本実施形態の難燃剤においては、1つの金属水酸化物粒子の表面に、複数の二酸化ケイ素粒子が固着している。
【0018】
本実施形態の難燃剤においては、通常、金属水酸化物粒子の粒径が、該金属水酸化物粒子に固着した二酸化ケイ素粒子の粒径よりも大きい。
【0019】
前記難燃剤においては、金属水酸化物粒子よりも小さい二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着している。斯かる構成の難燃剤は、構成成分として樹脂組成物に配合されることにより、配合後の樹脂組成物の難燃性を十分なものにすることができる。
樹脂組成物の難燃性が十分なものとなる原理は、十分に解明されているわけではないが、該難燃剤が樹脂組成物中に配合されると、複数の二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着した状態で、難燃剤が樹脂組成物中に分散する。難燃剤においては、二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着しているため、二酸化ケイ素粒子同士の凝集が抑えられる。また、金属水酸化物粒子の表面に二酸化ケイ素粒子が固着している分、金属水酸化物粒子同士の凝集が抑えられる。これにより、二酸化ケイ素粒子及び金属水酸化物粒子が樹脂組成物で良好に分散すると考えられる。
そして、金属水酸化物粒子と、該金属水酸化物粒子に固着したまま樹脂組成物中に分散された二酸化ケイ素粒子とによって、樹脂組成物が十分な難燃性を有することになると考えられる。
【0020】
前記難燃剤においては、比較的強い結合力によって、二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着している。従って、難燃剤が、例えば、樹脂組成物の構成成分として、樹脂と混練されたとしても、二酸化ケイ素粒子は、金属水酸化物粒子に固着した状態を保つ。
金属水酸化物粒子と二酸化ケイ素粒子との結合力は、物理的結合及び化学的結合のうち少なくとも一方によるものである。
前記難燃剤における“固着”とは、後に詳述する難燃性樹脂組成物の製造において、斯かる組成物の配合成分としての難燃剤と樹脂とを混合した後であっても、金属水酸化物粒子と二酸化ケイ素粒子とが、互いに接し合った状態を保つことを意味する。
【0021】
なお、前記難燃剤においては、金属水酸化物粒子よりも粒径が小さく且つ比較的多数の二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着することにより、金属水酸化物粒子の表面が二酸化ケイ素粒子によって覆われ得る。
【0022】
前記金属水酸化物粒子は、金属水酸化物を含有している。金属水酸化物粒子における金属水酸化物の含有量は、難燃剤の難燃性がより優れたものになるという点で、95質量%以上であることが好ましく、98〜100質量%であることがより好ましい。
【0023】
前記金属水酸化物粒子には、僅かに不純物が含まれていてもよく、不純物としては、例えば、鉄、ナトリウムなどの金属の金属水酸化物、金属酸化物、金属塩類等が挙げられる。前記金属水酸化物粒子は、さらに、難燃性能に影響を与えない成分や難燃性能を向上させる成分を含んでいてもよい。
【0024】
前記金属水酸化物粒子に含有される金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ベーマイト[α−AlO(OH)]などが挙げられる。
前記金属水酸化物としては、難燃剤を配合した樹脂組成物がより十分な難燃性を有し得るという点で、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムのうちの少なくとも一方が好ましい。
【0025】
前記金属水酸化物粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、真球状、楕円球状、棒状、板状、多面体状などが挙げられる。
【0026】
前記金属水酸化物粒子の粒径は、特に限定されないが、固着した二酸化ケイ素粒子の粒径よりも大きいことが好ましい。
また、金属水酸化物粒子の平均粒径は、0.5〜30μmであることが好ましい。
【0027】
前記金属水酸化物粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度分析方法によって定める。
詳しくは、平均粒径は、実施例に記載された方法に従って定める。
【0028】
前記二酸化ケイ素粒子は、二酸化ケイ素を含有している。二酸化ケイ素粒子における二酸化ケイ素の含有量は、難燃剤の難燃性がより優れたものになるという点で、95質量%以上であることが好ましく、98〜100質量%であることがより好ましい。
【0029】
前記二酸化ケイ素粒子には、僅かに不純物が含まれていてもよく、不純物としては、例えば、亜鉛、銅等などの金属性不純物が挙げられる。
【0030】
前記二酸化ケイ素粒子の形状としては、特に限定されず、例えば、真球状、楕円球状、棒状、板状、多面体状などが挙げられる。
【0031】
前記二酸化ケイ素粒子の粒径は、特に限定されないが、固着した金属水酸化物粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。
また、二酸化ケイ素粒子の平均粒径(平均一次粒子径)は、5〜20nmであることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。
【0032】
前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡によって得られた観察像を基にして定める。
詳しくは、平均粒径は、ランダムに選んだ2,000個の粒子の直径(非球形であれば長手方向長さ)を平均して定める。
【0033】
前記二酸化ケイ素は、非結晶構造を有するものが好ましい。
前記二酸化ケイ素粒子としては、いわゆる、“ヒュームドシリカ”と称される乾式シリカが好ましい。
【0034】
前記難燃剤においては、二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対する金属水酸化物粒子の平均粒径の比が、10以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。また、斯かる比が、10,000以下であることが好ましく、1,000以下であることがより好ましく、500以下であることがより好ましい。
即ち、前記金属水酸化物粒子の平均粒径が、前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対して10〜10,000倍であることが好ましい。
斯かる比は、上述した測定方法によって測定した二酸化ケイ素粒子の粒径に対する、上述した測定方法によって測定した金属水酸化物粒子の粒径の比によって決定する。
【0035】
斯かる平均粒径の比が10以上であることにより、二酸化ケイ素粒子が金属水酸化物粒子に固着した状態がより確実に保たれるという利点がある。また、斯かる平均粒径の比が10,000以下であることにより、難燃剤が樹脂組成物に配合されたときの樹脂組成物の難燃性がより優れたものになるという利点がある。
【0036】
前記難燃剤においては、金属水酸化物粒子と二酸化ケイ素粒子との質量比が、特に限定されないが、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=70:30〜95:5であることが好ましく、80:20〜95:5であることがより好ましく、80:20〜90:10であることがさらに好ましい。
斯かる質量比が上記の範囲であることにより、樹脂組成物の難燃性がより十分なものになり得るという利点がある。
【0037】
なお、前記難燃剤は、粉体状の態様であってもよく、溶媒をさらに含むスラリー状の態様であってもよい。
【0038】
次に、前記難燃剤の製造方法について説明する。
【0039】
前記難燃剤は、例えば、市販されている粒子状の金属水酸化物を金属水酸化物粒子として用い、また、市販されている粒子状の二酸化ケイ素を二酸化ケイ素粒子として用いて、粒子状の金属水酸化物に粒子状の二酸化ケイ素を一般的な方法によって固着させることによって製造することができる。
【0040】
具体的には、前記難燃剤は、例えば、分散複合化処理装置(製品名「ノビルタ NOB−130」 ホソカワミクロン社製)を用いて、粒子状の金属水酸化物と粒子状の二酸化ケイ素とを乾式混合することによって製造することができる。
より具体的には、上記の分散複合化処理装置におけるロータ回転数を、例えば1500rpm以上とすることによって、難燃剤を製造できる。
上記の分散複合化処理装置によって金属水酸化物粒子と二酸化ケイ素粒子とを乾式混合することによって、混合中に金属水酸化物粒子と二酸化ケイ素粒子とに比較的大きいせん断力を与えることができる。そして、金属水酸化物粒子に二酸化ケイ素粒子を物理的に固着させることができる。また、混合中のせん断力を比較的大きくすることによって、金属水酸化物粒子に二酸化ケイ素粒子を化学的に固着させることもできる。
【0041】
上記のごとく製造された難燃剤は、例えば、樹脂組成物の配合成分として用いられる。上記の難燃剤が配合された樹脂組成物は、十分な難燃性を発揮し得る。
【0042】
続いて、本発明における難燃性樹脂組成物の一実施形態について説明する。
【0043】
本実施形態の難燃性樹脂組成物は、樹脂と上記の難燃剤とを少なくとも含むものである。本実施形態の難燃性樹脂組成物は、上記の難燃剤を含んでいるため、十分な難燃性を有し得る。
【0044】
前記樹脂としては、特に限定されず、一般的なものが採用される。
具体的には、前記樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0045】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレ樹脂ン、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。
なお、前記樹脂は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0046】
前記難燃性樹脂組成物においては、難燃剤と樹脂との質量比が、難燃剤:樹脂=2:8〜6:4であることが好ましく、3:7〜5:5であることがより好ましく、4:6であることがさらに好ましい。
難燃剤と樹脂との質量比が上記範囲内の質量比であることにより、難燃性樹脂組成物がより十分な難燃性を有し得るという利点がある。
【0047】
前記難燃性樹脂組成物は、樹脂を50質量%以上含むことが好ましい。また、樹脂を70質量%以下含むことが好ましい。
樹脂を50質量%以上70質量%以下含むことにより、難燃性樹脂組成物がより十分な難燃性を有し得るという利点がある。
【0048】
前記難燃性樹脂組成物は、難燃剤を30質量%以上含むことが好ましい。また、難燃剤を50質量%以下含むことが好ましい。
難燃剤を30質量%以上50質量%以下含むことにより、難燃性樹脂組成物がより十分な難燃性を有し得るという利点がある。
【0049】
前記難燃性樹脂組成物は、さらに、界面活性剤などの分散剤等を含み得る。
【0050】
前記難燃性樹脂組成物は、従来公知の一般的な方法によって製造される。例えば、前記難燃性樹脂組成物は、上記の難燃剤と樹脂とを一般的な混合方法によって混合することによって製造される。
具体的には、前記難燃性樹脂組成物は、例えば、混合装置として、ロール混練機などの混練機を用いて、上記の難燃剤と樹脂とを混合することによって製造される。
【0051】
続いて、本発明の積層体の一実施形態について説明する。
【0052】
本実施形態の積層体(難燃用積層体)は、上記の難燃性樹脂組成物がシート状に形成された樹脂層と、該樹脂層の少なくとも一方の面側に配された金属層とが積層されてなる。
即ち、本実施形態の積層体(難燃用積層体)は、上記の難燃性樹脂組成物がシート状に形成された樹脂層と、金属を含む金属層とを備える。好ましくは、樹脂層の両面側にそれぞれ金属層が配されている。
【0053】
本実施形態の積層体は、例えば、上記の難燃性樹脂組成物を含む樹脂層を芯材として、樹脂層の少なくとも一方の面、好ましくは両面に、金属層としての金属箔が貼着されて形成されている。
【0054】
本実施形態の積層体は、後述するISO5660に従った難燃性評価において、1,200秒後の合計発熱量が8MJ/m2以下を示すものであることが好ましい。
【0055】
本実施形態の積層体の厚みは、重量が適度になる点、加工性に優れる点、又は、取り扱いに優れる点などにおいて、1〜10mmであることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。
【0056】
前記樹脂層の厚みは、1〜10mmであることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。
前記樹脂層は、例えば、一般的な方法によって、上記の難燃性樹脂組成物をシート状に成形することによって作製される。
【0057】
前記金属層は、金属を95質量%以上含む層である。金属層は、金属以外の不純物を含み得る。
前記金属層の材質としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス合金、鋼材、銅、チタン等が挙げられる。
前記金属層の厚みは、重量が適度になる点、加工性に優れる点、又は、取り扱いに優れる点などにおいて、0.05〜1mmであることが好ましく、0.1〜0.5mmであることがより好ましい。
前記金属層としては、例えば、金属箔が採用される。
【0058】
前記難燃性樹脂組成物及び積層体は、例えば、建材などの難燃用途において好適に使用される。
【0059】
本実施形態の難燃剤、難燃性樹脂組成物、及び、積層体は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の難燃剤、難燃性樹脂組成物、積層体に限定されるものではない。
また、一般の難燃剤、難燃性樹脂組成物、積層体において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
【実施例】
【0060】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
難燃剤を製造すべく、まず、下記の原料を用意した。
[原料]
・金属水酸化物粒子1(水酸化アルミニウム粒子):
製品名「H−43M」(昭和電工社製)
平均粒径(D50)−2.050μm
水酸化アルミニウムを99%以上含有
・金属水酸化物粒子2(水酸化マグネシウム粒子):
製品名「水酸化マグネシウム」(和光純薬社製)
平均粒径(D50)−3.230μm
水酸化マグネシウムを99%以上含有
・二酸化ケイ素粒子:製品名「QS−102」(トクヤマ社製)
平均粒径−12nm
二酸化ケイ素を99%以上含有
二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対する水酸化アルミニウム粒子の平均粒径の比−171
二酸化ケイ素粒子の平均粒径に対する水酸化マグネシウム粒子の平均粒径の比−269
【0062】
なお、金属水酸化物粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱式の粒度分析方法(粒度分析装置:製品名「マイクロトラックMT3000」日機装社製)によって、下記の手順に従って求めた。
即ち、まず、0.1質量%濃度となるように純水に粒子を添加する。次に、超音波洗浄機内にて粒子を3分間分散させる。このようにして調製した測定用サンプルについて、下記の測定条件で粒度分布測定を行った。
[装置の測定条件]
・粒子条件
粒子透過性:透過
屈折率:1.57(水酸化アルミニウム)、1.56(水酸化マグネシウム)
形状:非球形
平均径:体積基準 D50
・溶媒条件
溶媒:純水
屈折率:1.333
なお、各粒子の平均径の測定結果(D50以外)は、下記の通りであった。
[水酸化アルミニウム]
D10=1.148μm D90=3.213μm、
[水酸化マグネシウム]
D10=2.060μm D90=5.024μm
【0063】
また、二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡による直接観察によって、ランダムに選んだ2,000個の粒子について、長手方向の長さを測定し、平均化することによって求めた。
【0064】
また、難燃剤を製造すべく、下記の分散複合化処理装置を用いた。
[装置]
・分散複合化処理装置(製品名「ノビルタ NOB−130」 ホソカワミクロン社製)
【0065】
(実施例1)
上記の水酸化アルミニウム粒子と上記の二酸化ケイ素粒子とを、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=9:1の質量比となるように上記の装置内に入れ、2500rpmのロータ回転速度にて、2分間、分散複合化処理を行った。この分散複合化処理によって、水酸化アルミニウム粒子に二酸化ケイ素粒子が固着した。
そして、難燃剤を装置内から取り出し、難燃剤を製造した。
【0066】
(実施例2)
上記の水酸化アルミニウム粒子と上記の二酸化ケイ素粒子とを、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=8:2の質量比となるように上記の装置内に入れた点以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0067】
(実施例3)
上記の水酸化アルミニウム粒子と上記の二酸化ケイ素粒子とを、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=9.5:0.5の質量比となるように上記の装置内に入れた点以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0068】
(実施例4)
上記の水酸化アルミニウム粒子に代えて、上記の水酸化マグネシウム粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0069】
実施例1〜3の難燃剤を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)で観察した顕微鏡写真をそれぞれ図1図3に示す。
【0070】
比較例の難燃剤を製造するために、下記の原料を用意した。
・炭酸カルシウム粒子:製品名「炭酸カルシウム」(和光純薬社製)
平均粒径−14.10μm
炭酸カルシウムを99%以上含有
・二酸化チタン粒子:製品名「ST−01」(石原産業社製)
平均粒径−7nm
二酸化チタンを99%以上含有
【0071】
(比較例1)
水酸化アルミニウム粒子に代えて、上記の炭酸カルシウム粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0072】
(比較例2)
二酸化ケイ素粒子に代えて、上記の二酸化チタン粒子を用いた点以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0073】
(比較例3)
二酸化ケイ素粒子に代えて上記の二酸化チタン粒子を用いた点、二酸化ケイ素粒子:二酸化チタン粒子=8:2の質量比とした以外は、実施例1と同様にして難燃剤を製造した。
【0074】
上記の各実施例及び各比較例における難燃剤の構成を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
以下のようにして、試験例1〜4の樹脂組成物をそれぞれ調製した。
【0077】
(試験例1)
実施例1の難燃剤と樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン樹脂 LLDPE)とを難燃剤:樹脂=4:6の質量比(総量60g)で混合することにより、難燃性樹脂組成物を調製した。
樹脂としては、製品名「ニポロン−L」(東ソー社製)を用いた。
混合においては、ラボブラストミル(型式100MR3 東洋精機製作所社製)を用い、50rpm、170℃、5分間の混練を行った。
【0078】
(試験例2)
実施例1の難燃剤に代えて、実施例2の難燃剤を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0079】
(試験例3)
実施例1の難燃剤に代えて、実施例3の難燃剤を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0080】
(試験例4)
実施例1の難燃剤に代えて、実施例4の難燃剤を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0081】
(試験例5)
実施例1の難燃剤に代えて、上記原料の水酸化アルミニウム粒子を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0082】
(試験例6)
実施例1の難燃剤に代えて、上記原料の水酸化マグネシウム粒子を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0083】
(試験例7)
実施例1の難燃剤に代えて、上記原料の水酸化アルミニウム粒子と上記原料の二酸化ケイ素粒子とを単に混合したもの(質量比−水酸化アルミニウム粒子:二酸化ケイ素粒子=9:1)を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0084】
(試験例8)
実施例1の難燃剤に代えて、上記原料の水酸化マグネシウム粒子と上記原料の二酸化ケイ素粒子とを単に混合したもの(質量比−水酸化マグネシウム粒子:二酸化ケイ素粒子=9:1)を用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0085】
(試験例9〜11)
実施例1の難燃剤に代えて、比較例1〜3の難燃剤をそれぞれ用いた点以外は、試験例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0086】
上記の各試験例における樹脂組成物の組成を表2及び表3に示す。
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
<難燃性の評価>
上記のごとく調製した各樹脂組成物を用いて、難燃性評価用のサンプルをそれぞれ作製した。
詳しくは、シート状に成形した樹脂組成物(樹脂層)の両面側に、それぞれ0.2mm厚のアルミニウム箔を配してプレス成型することにより、シート状の樹脂組成物(樹脂層)とアルミニウム箔(金属層)とが積層された総厚2.8mm、100mm×100mmの矩形状の積層体を評価用サンプルとして作製した。なお、プレス成型の条件は、170℃、5MPa、3分間とした。
作製した各評価用サンプルを用いて、下記の方法に従い、コーンカロリーメーター(型式:C−4、東洋精機製作所社製)によって、難燃性を評価した。
一般財団法人日本建築総合試験所 防耐火性能試験・評価業務方法書 ISO5660
【0090】
試験例1〜11の積層体について難燃性の評価を行った結果を図4図6に示す。図4図6に示すグラフにおいては、合計発熱量が長い時間抑えられているものほど、難燃性に優れている。
【0091】
図4に示すグラフは、水酸化アルミニウムを含有する金属水酸化物粒子を用いてなる積層体における難燃性の評価結果である。
図4から把握されるように、水酸化アルミニウム粒子と二酸化ケイ素粒子とを単に樹脂組成物に配合した試験例7においては、水酸化アルミニウム粒子のみを樹脂組成物に配合した試験例5と比較して、合計発熱量がより長い時間抑えられている。分散複合化処理を施した難燃剤を樹脂組成物に配合した試験例1〜3においては、合計発熱量が更に長い時間抑えられている。
また、試験例1、2においては、試験例3と比較して、合計発熱量がより長い時間抑えられている。難燃剤において、金属水酸化物粒子:二酸化ケイ素粒子=9:1〜8:2の質量比であれば、この質量比範囲内の難燃剤を用いた積層体は、当該難燃性評価において、1,200秒後の合計発熱量が8MJ/m2以下となっている。
【0092】
図5に示すグラフは、水酸化マグネシウムを含有する金属水酸化物粒子を用いてなる積層体における難燃性の評価結果である。
図5から把握されるように、水酸化マグネシウム粒子と二酸化ケイ素粒子とを単に樹脂組成物に配合した試験例8においては、水酸化マグネシウム粒子のみを樹脂組成物に配合した試験例6と比較して、合計発熱量がより長い時間抑えられている。分散複合化処理を施した難燃剤を樹脂組成物に配合した試験例4においては、合計発熱量がより長い時間抑えられている。
また、試験例4においては、当該難燃性評価において、1,200秒後の合計発熱量が8MJ/m2以下となっている。
【0093】
図6に示すグラフは、金属水酸化物粒子、二酸化ケイ素粒子の代わりに他の材料を用いて製造した積層体の難燃性の評価結果である。
図6から把握されるように、金属水酸化物粒子の代わりに用いた炭酸カルシウム粒子と、二酸化ケイ素粒子とを分散複合化処理した難燃剤が樹脂組成物に配合された試験例9は、試験例1と比較して、合計発熱量がかなり短い時間しか抑えられていない。
また、図6から把握されるように、二酸化ケイ素粒子の代わりに用いた二酸化チタン粒子と、水酸化アルミニウム粒子とを分散複合化処理した難燃剤が樹脂組成物に配合された試験例10、11は、試験例1、2と比較して、合計発熱量が短い時間しか抑えられていない
【0094】
このように、実施例の難燃剤が配合された樹脂組成物を用いて製造した積層体は、十分な難燃性を有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6