特許第6261318号(P6261318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6261318-型枠用セパレータの取付け構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261318
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】型枠用セパレータの取付け構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 17/06 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   E04G17/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-259209(P2013-259209)
(22)【出願日】2013年12月16日
(65)【公開番号】特開2015-113696(P2015-113696A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤野 浩
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−329546(JP,A)
【文献】 特開平11−256821(JP,A)
【文献】 実公昭49−003149(JP,Y1)
【文献】 実開昭58−172657(JP,U)
【文献】 米国特許第04145024(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 17/00 − 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留壁に固定される複数のアンカーと、前記山留壁に隣接状態で構築される壁体を形成するための型枠を保持する複数の型枠用セパレータとが、前記山留壁と前記型枠との間に配設した位置保持部材に取り付けられている型枠用セパレータの取付け構造であって、
前記位置保持部材が、前記山留壁の壁長手方向に沿って延びる一対のガイド管を、両ガイド管どうしの対向面間に前記壁長手方向に沿って延びる取付け溝を形成する状態で並設して構成され、
前記アンカーおよび前記型枠セパレータの各々が前記取付け溝の溝長手方向の所定位置に取付けられ
前記山留壁と前記位置保持部材との間隔と、前記位置保持部材と前記型枠との間隔と、が変更可能なように構成されている型枠用セパレータの取付け構造。
【請求項2】
前記壁体を形成するための打ち込みコンクリートの上端ラインよりも高い位置に前記一対のガイド管が配設されている請求項1記載の型枠用セパレータの取付け構造。
【請求項3】
前記ガイド管が角パイプから構成されている請求項1又は2記載の型枠用セパレータの取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
山留壁に隣接状態で構築される壁体を形成するために、山留壁の内側に間隔を隔てて型枠を設置する必要がある。
本発明は、このような型枠を設置するために、山留壁に固定される複数のアンカーと、型枠を保持する複数の型枠用セパレータとが、前記山留壁と前記型枠との間に配設した位置保持部材に取り付けられている型枠用セパレータの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、山留壁(土留め壁)に隣接する壁体を構築するために、外側型枠として機能させる山留壁と、山留壁の内面側に設置した内側型枠との間にコンクリートを打設するための型枠用セパレータの取付け構造が開示されている。
【0003】
この型枠用セパレータの取付け構造は、山留壁に固定された複数のアンカーの夫々と、内側型枠を保持する複数の型枠用セパレータの夫々とを互いに連結して、山留壁と内側型枠との間にコンクリートの打設空間を設けてある。
【0004】
そして、隣り合うアンカーどうしの間の位置に配置された型枠用セパレータをアンカーに連結するために、位置保持部材として機能する位置保持用形鋼を隣り合うアンカーに亘って取り付けておき、この形鋼に型枠用セパレータをボルトで取り付けることによって、位置保持用形鋼を介して型枠用セパレータをアンカーに連結してある。
【0005】
位置保持用形鋼には、型枠用セパレータをボルトで取り付けるためのボルト孔を予め貫通形成してあり、形鋼のアンカーに対する取付誤差が生じていても型枠用セパレータを確実に取り付けることができるように、ボルト孔を形鋼の長手方向に沿って長い長孔に形成してある。
【0006】
つまり、上記従来技術では、型枠用セパレータの位置が隣り合うアンカーどうしの間の位置などのアンカーの位置と異なる場合に、その型枠用セパレータをアンカーに連結するために、ボルト孔を形成してある位置保持用形鋼を位置保持部材として設けてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−3472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、従来の型枠用セパレータの取付け構造では、取付位置が互いに異なる型枠用セパレータとアンカーとを連結するために設ける位置保持部材を、ボルト孔が型枠用セパレータの取付ピッチに応じたピッチで予め形成された形鋼で構成する必要がある。
【0009】
このため、型枠用セパレータの取付ピッチが壁体の構築現場毎に異なる場合は、その構築現場毎に、型枠用セパレータの取付ピッチに応じたピッチでボルト孔が予め貫通形成された位置保持部材を用いて内側型枠を取付る必要がある。
したがって、構築現場に応じたピッチでボルト孔が形成された位置保持部材を準備しなければならず、工期の短縮や工費の抑制を図り難いおそれがある。
【0010】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、取付位置が互いに異なる型枠用セパレータとアンカーとを連結する場合に、工期の短縮や工費の抑制を図り易い型枠用セパレータの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による型枠用セパレータの取付け構造の特徴構成は、山留壁に固定される複数のアンカーと、前記山留壁に隣接状態で設置される壁体を形成するための型枠を保持する複数の型枠用セパレータとが、前記山留壁と前記型枠との間に配設した位置保持部材に取り付けられている型枠用セパレータの取付け構造であって、前記位置保持部材が、前記山留壁の壁長手方向に沿って延びる一対のガイド管を、両ガイド管どうしの対向面間に前記壁長手方向に沿って延びる取付け溝を形成する状態で並設して構成され、前記アンカーおよび前記型枠セパレータの各々が前記取付け溝の溝長手方向の所定位置に取付けられ、前記山留壁と前記位置保持部材との間隔と、前記位置保持部材と前記型枠との間隔と、が変更可能なように構成されている点にある。
【0012】
本構成の型枠用セパレータの取付け構造は、位置保持部材が、山留壁の壁長手方向に沿って延びる一対のガイド管を、両ガイド管どうしの対向面間に壁長手方向に沿って延びる取付け溝を形成する状態で並設して構成されている。
このため、入手し易い一対のガイド管を用いて、アンカーと型枠用セパレータの取付け溝を有する位置保持部材を簡便に設置することができる。
【0013】
また、アンカーおよび型枠セパレータの各々が、両ガイド管どうしの対向面間に形成された取付け溝の溝長手方向の所定位置に取付けられている。
このため、夫々の取付ピッチに応じた位置で取付け溝に取り付けたアンカーと型枠セパレータとを位置保持部材を介して連結することができる。
【0014】
したがって、本構成の型枠用セパレータの取付け構造であれば、取付位置が互いに異なる型枠用セパレータとアンカーとを連結する場合に、型枠用セパレータの取付ピッチが壁体の構築現場毎に異なる場合でも、同じ位置保持部材を設置して型枠を取り付けることができるので、工期の短縮や工費の抑制を図り易い。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、前記壁体を形成するための打ち込みコンクリートの上端ラインよりも高い位置に前記一対のガイド管が配設されている点にある。
【0016】
本構成であれば、打ち込みコンクリートが位置保持部材にかぶらないので、コンクリートの養生後は、その位置保持部材を型枠から外して再利用することができ、工期の短縮や工費の抑制を一層図り易い。
【0017】
本発明の他の特徴構成は、前記ガイド管が角パイプから構成されている点にある。
【0018】
本構成であれば、角パイプの一辺を形成している板面どうしを互いに対向させて、その対向面間に深さが深い取付け溝を形成することができる。
このため、取付け溝に入り込ませたアンカーおよび型枠セパレータの姿勢を安定させて、山留壁と型枠との間隔を精度よく維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】山留壁に隣接状態で構築された壁体を示す断面図である。
図2】型枠用セパレータの取付け構造を示す側面図である。
図3】型枠用セパレータの取付け構造を示す平面図である。
図4図3におけるIV−IV線矢視図である。
図5図3におけるV−V線矢視図である。
図6図3におけるVI−VI線矢視図である。
図7図3におけるVII −VII 線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明による型枠用セパレータの取付け構造(以下、セパレータ取付け構造という。)は、図1に示すように、地盤Gを掘削して設置してあるコンクリート製の山留壁Aの内側に鉄筋コンクリート製の壁Bを隣接状態で一体に構築するために設けられている。
【0021】
壁Bは、基礎コンクリートCの上部に、下部壁体B1と中間壁体B2と上部壁体B3とを順に打ち継ぐことにより構築され、これらの壁体B1,B2,B3の構築工程の夫々に対応して本発明によるセパレータ取付け構造が設けられる。
【0022】
図2図7は、基礎コンクリートCの上部に下部壁体B1を形成するための鋼製型枠1を保持してあるセパレータ取付け構造を示す。
このセパレータ取付け構造は、図2図3に示すように、鋼製型枠1と山留壁Aとの間に壁体形成用コンクリートの打設空間2を形成するために、型枠1を山留壁Aに対して所定間隔で保持する複数の鋼製アンカー3および複数の鋼製型枠用セパレータ(以下、セパレータという。)4設けてある。
【0023】
型枠1は、内部がフレーム部材などで補強された箱状に形成してある。型枠1の下端部は基礎コンクリートCに埋設したアンカー部材5にネジなどで着脱自在に固定して支持してあり、型枠1の上端部が本発明によるセパレータ取付け構造によって支持される。
【0024】
山留壁Aには、一方のフランジ面6aを内側に露出させた複数のH形鋼6が上下方向に沿う縦姿勢で水平方向に沿った一定ピッチで埋設され、各フランジ面6aには、山形鋼で構成したアンカー固定用の受け具7が溶接固定されている。
【0025】
各アンカー3はボルトで構成され、図5に示すように、受け具7に溶接固定したナット部材7aに着脱自在にねじ込んで、H形鋼6の一定高さ位置にH形鋼6と同じ一定ピッチP1で山留壁Aに固定されている。
【0026】
各セパレータ4はボルトで構成され、図2に示すように、型枠1に設けてあるナット部材1aに着脱自在にねじ込んで、アンカー3とは異なる水平方向に沿った一定ピッチP2で型枠1に固定されている。
【0027】
アンカー3とセパレータ4の夫々は、山留壁Aと型枠1との間に配設した共通の位置保持部材8に着脱自在に取り付けて、位置保持部材8を介して互いに連結されている。
【0028】
位置保持部材8は、図4図7に示すように、山留壁Aの壁長手方向に沿って延びる上下一対のガイド管9を、両ガイド管9どうしの対向面間に壁長手方向に沿って延びる取付け溝10を形成する状態で並設して構成されている。
両ガイド管9は、断面形状が四角形の角パイプで構成されている。
【0029】
取付け溝10は、ガイド管9の一辺を形成している板面どうしを間隔を隔てて互いに対向させるとともに、図7に示すように、それらの板面の間に挟み込んだスペーサ部材11を溶接固定して、溝深さ方向の両側が水平方向に向けて開口するスリット状に形成してある。
【0030】
図2に示すように、アンカー3とセパレータ4および一対のガイド管(位置保持部材8)9は、下部壁体B1を形成するための打ち込みコンクリート12の上端ラインLよりも高い位置に配設されている。
【0031】
各アンカー3は、アンカー用の一定ピッチPで取付け溝10に挿通して、取付け溝10の溝長手方向の所定位置に取付けられている。
アンカー3は、図5に示すように、ワッシャ3aを介して一対のガイド管9を挟むようにアンカー3にねじ込んである一対のナット部材3bで位置保持部材8に着脱自在に固定してある。
【0032】
各セパレータ4は、セパレータ用の一定ピッチP2で取付け溝10に挿通して、取付け溝10の溝長手方向の所定位置に取付けられている。
セパレータ4は、図6に示すように、ワッシャ4aを介して一対のガイド管9を挟むようにアンカー3にねじ込んである一対のナット部材4bで位置保持部材8に着脱自在に固定してある。
【0033】
そして、図2に示すように、山留壁Aと型枠1との間に形成した打設空間2に、鉄筋カゴ13や、中間壁体B2を構築する際の型枠1の下部を支持するために使用するアンカー部材5などを位置保持して、その打設空間2にコンクリート12を打設することにより、図1に示すように下部壁体B1が構築される。
【0034】
下部壁体B1の構築後は、図示しないが、型枠1やアンカー3、セパレータ4、位置保持部材8などを撤去して、中間壁体B2および上部壁体B3を構築するための同様のセパレータ取付け構造を設置する。
【0035】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による型枠用セパレータの取付け構造は、型枠の上下方向における複数位置を支持するために、各支持位置に対応してアンカー、型枠用セパレータ、位置保持部材などを設置してあってよい。
2.本発明による型枠用セパレータの取付け構造は、位置保持部材を構成する一対のガイド管の双方または一方が丸パイプで構成されていてもよい。
3.本発明による型枠用セパレータの取付け構造は、アンカーや型枠用セパレータの夫々が不規則なピッチで位置保持部材に取り付けられていてもよい。
4.本発明による型枠用セパレータの取付け構造は、鋼矢板などの金属製板材で一連に構成された山留壁に壁体を隣接状態で構築するために設置するものであってもよい。
5.本発明による型枠用セパレータの取付け構造は、山留壁に対して一体接合されない壁体を山留壁に隣接状態で構築するために設置するものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 型枠
3 アンカー
4 型枠用セパレータ
8 位置保持部材
9 ガイド管
10 取付け溝
12 打ち込みコンクリート
A 山留壁
B1,B2,B3 壁体
L 上端ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7