【文献】
CHANG CHIEN-HSING,"EFFECTIVE THERAPY OF HUMAN LYMPHOMA XENOGRAFTS WITH A NOVEL RECOMBINANT RIBONUCLEASE/ANTI-CD74 HUMANIZED IGG(4) ANTIBODY IMMUNOTOXIN.",BLOOD,米国,AMERICAN SOCIETY OF HEMATOLOGY,2005年12月 1日,V106 N13,P4308-4314
【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
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【文献】
Clin. Cancer Res.,2010年,vol.16, no.3,p.888-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗体の少なくとも部分的な還元によって得られる該抗体のスルフヒドリル残基に付加されているリンカーを介して、治療部分とコンジュゲートしている、請求項20記載の抗体。
細胞傷害性部分が、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;マイトマイシン;エトポシド;テノポシド(tenoposide);ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione);メイタンシンまたはそのアナログもしくは誘導体;アウリスタチンまたはその機能的ペプチドアナログもしくは誘導体;ドラスタチン10もしくは15またはそれらのアナログ;イリノテカンまたはそのアナログ;ミトキサントロン;ミトラマイシン;アクチノマイシンD;1-デヒドロテストステロン;グルココルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;ピューロマイシン;カリケアマイシンまたはそのアナログもしくは誘導体;代謝拮抗剤、メトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、またはクラドリビン;アルキル化剤、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC;白金誘導体、シスプラチンまたはカルボプラチン;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)、またはこれらのアナログもしくは誘導体;抗生物質、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC));ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素、ジフテリアA鎖ならびにその活性断片およびハイブリッド分子、リシン毒素、リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素、志賀様毒素、SLT I、SLT II、SLT IIV、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズボウマン-バークプロテアーゼインヒビター、シュードモナス外毒素、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン(modeccin)、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、PAPI、PAPII、およびPAP-S、ツルレイシ(momordica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、およびエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNase);DNase I、ブドウ球菌腸毒素A;ポークウィード抗ウイルスタンパク質;ジフテリア毒素(diphtherin toxin);ならびにシュードモナス内毒素からなる群より選択される、請求項23記載の抗体。
アントラサイクリン、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン、メイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10もしくは15、イリノテカン、またはそれらのいずれかのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグからなる群より選択される細胞傷害性部分とコンジュゲートしている、請求項23記載の抗体。
細胞傷害性部分が、抗体の1つまたは複数のシステイン残基に付加されているリンカーを介して該抗体とコンジュゲートしているアウリスタチンまたはその機能的ペプチドアナログもしくは誘導体である、請求項23記載の抗体。
治療部分が溶解性ペプチドまたはサイトカインであり、治療部分が、抗体の重鎖または軽鎖のN末端またはC末端にペプチドリンカーを介してコンジュゲートしている、請求項20記載の抗体。
IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFNβ、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFαからなる群より選択されるサイトカインとコンジュゲートしている、請求項29記載の抗体。
SEQ ID NO: 7、11、15、および19からなる群より選択される1つのアミノ酸配列ならびにSEQ ID NO:23および26からなる群より選択される1つのアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
癌の予防が、癌の発症のリスクの軽減、癌の進行のリスクの軽減、および/または寛解状態にある癌の再発のリスクの軽減のうちの1つまたは複数を含む、請求項42記載の薬学的組成物。
癌が、乳癌、結腸直腸癌、子宮内膜/子宮頸癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、悪性神経膠腫、悪性黒色腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、腎癌、肝癌、胸腺癌、悪性線維性組織肉腫(malignant fibrous histiosarcoma)、聴神経鞘腫、下垂体腺腫、および腺腫からなる群より選択される、請求項41〜43のいずれか一項記載の薬学的組成物。
癌が、悪性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、単球様B細胞リンパ腫(MBCL)、毛様細胞性白血病(HCL)、およびT細胞リンパ腫からなる群より選択される、請求項41〜43のいずれか一項記載の薬学的組成物。
少なくとも1つのさらなる治療剤が、第2の抗体もしくはADC;化学療法剤;血管新生、新血管形成、および/もしくはその他の血管形成のインヒビター;抗癌性免疫原;サイトカインもしくはケモカイン;細胞周期制御もしくはアポトーシス調節物質;ホルモン調節剤;抗アネルギー剤;腫瘍抑制遺伝子含有核酸もしくはベクター;抗癌性核酸;ウイルスもしくはウイルスタンパク質;免疫系細胞;分化誘導剤;CD74上方制御剤;抗炎症剤、免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤;またはそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項53記載の薬学的組成物。
少なくとも1つの治療剤が、CD20特異的抗体、CD138特異的抗体、CD38特異的抗体、抗VEGF-A抗体、メルファラナン(melphalanan)、レナリドマイド、ボルテゾミブ、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、シスプラチン、またはそれらの誘導体もしくはアナログから選択される、請求項54記載の薬学的組成物。
請求項20〜30または請求項32〜33のいずれか一項記載の抗体を含む、CD74発現細胞の細胞死を誘導する、CD74発現細胞の成長を阻害する、および/またはCD74発現細胞の増殖を阻害するための薬学的組成物。
さらなる治療剤がCD20特異的抗体、CD138特異的抗体、CD38特異的抗体、抗VEGF-A抗体、メルファラナン(melphalanan)、レナリドマイド、ボルテゾミブ、フルオロウラシル、ゲムシタビン、イリノテカン、シスプラチン、またはそれらの誘導体もしくはアナログから選択される、請求項59記載の医薬。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
定義
「CD74」および「CD74抗原」という用語は、本明細書において言い換え可能に使用される。そうでないことが示されない限り、これらの用語には、自然界で細胞によって発現されるまたはCD74遺伝子をトランスフェクトした細胞において発現されるヒトCD74の任意の
バリアント、アイソフォームおよび種ホモログが含まれる。少なくとも4つのヒトアイソフォーム、p43、p41、p35およびpp33が存在することが公知となっている(Borghese F et al., Expert Opin Ther Targets 2011; 15(3): 237-251)。これらは選択的転写物スプライシングおよび2つの翻訳開始部位に起因するものである。p43(CD74アイソフォーム1、アイソフォームaまたは「長鎖(long)」としても公知である;UniProtエントリーP04233-1およびNCBI参照配列NP 001020330を参照のこと)は、296アミノ酸を含み、残基73〜296がその細胞外部分を形成する。アイソフォーム1の細胞外部分を有するCD74のタンパク質構築物は、本明細書において「
バリアント1」または「CD74v1」と称される。p35(CD74アイソフォーム2、アイソフォームbまたは「短鎖(short)」としても公知である;UniProtエントリーP04233-2およびNCBI参照配列NP 004346を参照のこと)は、選択的スプライシングにより細胞外ドメインから残基209〜272が欠失したものである。アイソフォーム2の細胞外部分を有するCD74のタンパク質構築物は、本明細書において「
バリアント2」または「CD74v2」と称される。p41およびp33は、選択的翻訳開始部位から生じたものであり(48bp下流;16アミノ酸短いタンパク質)、そのためこれらの16アミノ酸内に存在する小胞体(ER)保留シグナルを欠失しているが、それぞれp43およびp35と同一の細胞外部分を有する
バリアントとなっている。残基148〜160が置き換えられかつ残基161〜296が欠失している別のアイソフォーム(アイソフォーム3またはアイソフォームcとして公知である)の配列が、NP 001020329として提供されている。カニクイザルCD74ホモログの配列は、例えば、NCBI参照配列: XP_001099491.2およびNCBI参照配列: XP_002804624.1として提供されている。
【0013】
「免疫グロブリン」という用語は、4つすべてがジスルフィド結合によって相互接続されている、1対の低分子量軽(L)鎖および1対の重(H)鎖の2対のポリペプチド鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを表す。免疫グロブリンの構造は、よく特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunologyの第7章(Paul, W., ed., 2
nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照のこと。簡潔に説明すると、各々の重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてはV
HまたはVHという略語が用いられる)および重鎖定常領域(C
HまたはCH)から構成される。重鎖定常領域は、典型的には3つのドメインC
H1、C
H2およびC
H3から構成される。各々の軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(V
LまたはVLという略語が用いられる)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には1つのドメインC
LまたはCLから構成される。典型的には、定常領域のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に記載されるEUインデックスに従って行われる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域によって隔てられた、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または配列および/もしくは構造的に定義されるループの形態に関して超可変であり得る超可変領域)にさらに細分され得る。各々のV
HおよびV
Lは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順に配列される3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901 917 (1987)も参照のこと)。
【0014】
本発明との関係で「抗体」または「Ab」という用語は、典型的な生理学的条件下で抗原に特異的に結合する能力を有し、半減期が有意な期間、例えば少なくとも約30分間、少なくとも約45分間、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間もしくはそれ以上、約48時間もしくはそれ以上、約3、4、5、6、7もしくはそれ以上の日数等、または任意のその他の関連する機能的に定義される期間(例えば、抗体の抗原結合に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強および/もしくは調整するのに十分な時間ならびに/または抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)に及ぶ、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片またはそれらのいずれかの誘導体を表す。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、その免疫グロブリンが、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典的経路の最初の成分であるC1qを含む宿主の組織または因子に結合するのを媒介し得る。抗体はまた、多特異性であり得、典型的には重複しない2つまたはそれ以上の異なるエピトープに対する特異性を有し得る。多特異性抗体の例には、二特異性抗体、ダイアボディ(diabody)および類似の抗体分子が含まれる。上記のように、本明細書における抗体という用語には、そうでないことが示されない限りまたは文脈と相反することが明らかでない限り、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片が含まれる。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片、例えばFabおよびF(ab')
2断片によって発揮され得ることが示されている。抗体という用語には、そうでないことが示されない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体も含まれることも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。
【0015】
「ヒト抗体」、「ヒトAb」または「HuMab」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有する抗体を包含することが意図されている。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的変異誘発によってまたはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を包含することは意図されていない。
【0016】
本明細書で使用される場合、ヒト抗体は、その抗体が、ヒト免疫グロブリン配列を用いる系から、例えばヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫刺激することによってまたはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることによって得られたものであり、かつその選択されたヒト抗体が、アミノ酸配列に関して、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%または例えば少なくとも99%同一である場合、特定の生殖細胞系列配列に「由来する」ものである。典型的には、重鎖CDR3は別として、特定のヒト生殖細胞系列の配列に由来するヒト抗体は、その生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列に対して20アミノ酸以下の違い、例えば10アミノ酸以下の違い、例えば9、8、7、6または5以下、例えば4、3、2または1アミノ酸以下の違いを示す。
【0017】
「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」等の用語は、本明細書で使用される場合、単一の分子組成の抗体分子の調製物を表す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変および定常領域を有し、単一の結合特異性を示す抗体を表す。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合された、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノム有するトランスジェニックまたは染色体導入非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって産生され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)を表す。
【0019】
「全長抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、そのアイソタイプの抗体において通常見られるすべての重鎖および軽鎖の定常および可変ドメインを含む抗体を表す。
【0020】
本明細書で使用される場合、文脈と相反しない限り、「Fabアーム」または「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖の対を表す。
【0021】
本明細書で使用される場合、文脈と相反しない限り、「Fc領域」という用語は、少なくとも1つのヒンジ領域、C
H2ドメイン、およびC
H3ドメインを含む抗体領域を表す。
【0022】
「エフェクター機能の欠損した抗体」または「エフェクター機能欠損抗体」は、補体活性化またはFc受容体結合等の1つまたは複数のエフェクターメカニズムを活性化する能力が有意に低下したまたはそのような能力を有さない抗体を表す。したがって、エフェクター機能欠損抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力が有意に低下しているかまたはそのような能力を有さない。そのような抗体の例は、IgG4アイソタイプの抗体またはそのヒンジ安定化形態である。別の例は、補体タンパク質およびFc受容体との相互作用を大きく低下させることができる変異のFc領域への導入である。例えば、Bolt S et al., Eur J Immunol 1993, 23: 403-411; Oganesyan, Acta Crys. 2008, D64, 700-704; およびShields et al., JBC 2001, 276: 6591-6604を参照のこと。
【0023】
本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識および活性化フェーズではなく免疫応答のエフェクターフェーズに関与する免疫細胞を表す。例示的な免疫細胞には、骨髄系またはリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(例えば、B細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、マスト細胞ならびに顆粒球、例えば好中球、好酸球および好塩基球が含まれる。いくつかのエフェクター細胞は、特異的なFc受容体(FcR)を発現し、特異的な免疫機能を果たす。いくつかの態様において、エフェクター細胞は、ADCCを誘導することができるもの、例えばナチュラルキラー細胞である。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的な殺傷と免疫系の他の成分に対する抗原提示とに関与する。いくつかの態様において、エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞における特定のFcRの発現は、液性因子、例えばサイトカインによって調節され得る。エフェクター細胞は、標的抗原を貪食するかまたは標的細胞を貪食もしくは溶解することができる。
【0024】
本発明との関係で、「ADC」は、抗体-薬物コンジュゲートを表し、本発明との関係では典型的に、本願に記載されるような別の部分にカップリングされたCD74特異的抗体を表す。
【0025】
「CD74抗体」、「抗CD74抗体」、「CD74 Ab」、「CD74特異的抗体」または「抗CD74 Ab」は、抗原CD74に特異的に結合する上記のような抗体である。
【0026】
好ましい態様において、本発明の抗体は、単離される。「単離されたAb」は、本明細書で使用される場合、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を表すことが意図されている(例えば、CD74に特異的に結合する単離された抗体は、CD74以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトCD74のエピトープ、アイソフォームまたは
バリアントに特異的に結合する単離された抗体は、他の関連抗原、例えば他の種の関連抗原(例えば、CD74の種ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないものであり得る。本発明の1つの態様において、異なる抗原結合特異性を有する2つまたはそれ以上の「単離された」モノクローナル抗体は、十分に定義された組成物中で組み合わされる。
【0027】
本明細書において2つまたはそれ以上の抗体との関係で使用される場合、「競合する」、「交差競合する」という用語は、2つまたはそれ以上の抗体が、CD74に対する、例えばCD74
バリアント1、2またはその両方に対する結合に関して競合することを示す。例えば、実施例1に記載される構築物をそのようなアッセイにおいて使用することができる。1つの例示的なタイプのアッセイにおいて、CD74は、プレート上にコーティングされそして第1の抗体と結合され、その後に第2の標識された抗体が添加される。第1の抗体の存在が第2の抗体の結合を減少させる場合、これらの抗体は競合している。「競合する」という用語は、本明細書で使用される場合、1つの抗体が別の抗体の結合を減少させるが、その逆の順でこれらの抗体が添加された場合には競合が観察されない抗体の組み合わせを網羅することも意図されている。
【0028】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、表面分子群、例えばアミノ酸または糖側鎖からなり、かつ通常、特異的な三次元構造的特徴および特異的な電荷的特徴を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないことにより区別される。エピトープは、その結合に直接関与するアミノ酸残基およびその結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば特異的に抗原に結合するペプチドにより効果的に塞がれるまたは覆われるアミノ酸残基を含み得る(別の言葉で言うと、そのアミノ酸残基は、特異的に抗原に結合するペプチドの影響が及ぶ範囲に存在する)。
【0029】
本明細書で使用される場合、既定の抗原またはエピトープに対する抗体の結合の関係で言う「結合」という用語は、典型的には、例えばBIAcore 3000機器においてリガンドとしての可溶化形態の抗原および分析物としての抗体を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合における、約10
-7Mもしくはそれ未満、例えば約10
-8Mもしくはそれ未満、例えば約10
-9Mもしくはそれ未満、約10
-10Mもしくはそれ未満、または約10
-11Mもしくはそれ未満またはさらに低いK
Dに相当する親和性での結合のことである。典型的には、抗体は、既定の抗原と同一でないまたは近い関係にない非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対するその結合のK
Dよりも少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いK
Dに相当する親和性で既定の抗原に結合する。抗体のK
Dが非常に低い(すなわち、抗体が高い親和性を有する)場合、それが抗原に結合する際のK
Dは、典型的には、非特異的抗原に対するそのK
Dよりも少なくとも10,000倍低いものである。
【0030】
「k
d」(sec
-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定のAb-抗原相互作用の解離速度定数を表す。この値は、K
off値としても参照される。
【0031】
「k
a」(M
-1×sec
-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定のAb-抗原相互作用の会合速度定数を表す。
【0032】
「K
D」(M)という用語は、本明細書で使用される場合、特定のAb-抗原相互作用の解離平衡定数を表す。
【0033】
「K
A」(M
-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定のAb-抗原相互作用の会合平衡定数を表し、k
aをk
dで割り算することによって得られる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「インターナリゼーション」は、CD74抗体の関係で使用される場合、抗体を細胞表面からCD74発現細胞内へとインターナライズする任意のメカニズムを包含する。抗体のインターナリゼーションは、インターナライズされたAb-毒素コンジュゲートまたはプレインキュベーションによって抗体に特異的に結合した毒素の効果を測定する間接的アッセイ(例えば、実施例14の抗κ-ETA'アッセイ)において評価することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、(例えば、細胞、例えば腫瘍細胞を参照して言う)「成長を阻害する」という用語は、CD74抗体またはADCと接触させなかった同一細胞の成長と比較しての、CD74抗体またはADCと接触させたときの細胞成長の任意の測定可能な低下、例えば、細胞培養物の成長の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の阻害を包含することが意図されている。そのような細胞成長の低下は、様々なメカニズム、例えばインターナリゼーション、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、薬物媒介性細胞殺傷および/またはアポトーシスによって引き起こされ得る。
【0036】
本発明はまた、実施例の抗体のV
L領域、V
H領域または1つもしくは複数のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。CD74抗体の関係で使用されるV
L、V
HまたはCDRの機能的変異体は、その抗体が依然として親抗体の親和性/結合性(avidity)および/または特異性/選択性の少なくとも実質比率(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)を保持することを許容するものであり、そしていくつかの例において、そのようなCD74抗体は、その親Abよりも大きな親和性、選択性および/または特異性を伴うものであり得る。
【0037】
そのような機能的変異体は、典型的には、その親Abに対する有意な配列同一性を保持している。2つの配列間の%同一性は、その2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要のあるギャップの数および各ギャップの長さが考慮された上での、それらの配列によって共有される同一位置の数の関数(すなわち、%相同性 = 同一位置の数 / 位置の総数 × 100)である。2つの配列間の配列の比較および%同一性の決定は、以下の非限定的な例に記載されるような数学的アルゴリズムを用いて実施され得る。
【0038】
2つのヌクレオチド配列間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMPマトリクスおよびギャップウェイト(gap weight)40、50、60、70または80および長さウェイト(length weight)1、2、3、4、5または6を用いて決定され得る。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の%同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller(Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988))により紹介されたアルゴリズムを用い、PAM120残基ウェイトテーブル(weight residue table)、ギャップ長さペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いて決定され得る。加えて、2つのアミノ酸配列間の%同一性は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970))を用い、Blossum 62マトリクスまたはPAM250マトリクスのいずれかおよびギャップウェイト16、14、12、10、8、6または4および長さウェイト1、2、3、4、5または6を用いて決定され得る。
【0039】
CDR変異体の配列は、主に保存的置換を通じて親抗体配列のCDRの配列と異なるものであり得;例えば変異体における少なくとも約35%、約50%またはそれ以上、約60%またはそれ以上、約70%またはそれ以上、約75%またはそれ以上、約80%またはそれ以上、約85%またはそれ以上、約90%またはそれ以上(例えば、約65〜95%、例えば約92%、93%または94%)の置換は、保存的なアミノ酸残基の置き換えである。
【0040】
CDR変異体の配列は、主に保存的置換を通じて親抗体配列のCDRの配列と異なるものであり得;例えば変異体における少なくとも10個、例えば少なくとも9、8、7、6、5、4、3、2または1個の置換は、保存的なアミノ酸残基の置き換えである。
【0041】
「安定化IgG4抗体」という用語は、半分子交換(half-molecule exchange)を減少させるように改変されたIgG4抗体を表す(例えば、国際特許出願公開WO2008145142またはvan der Neut Kolfschoten M et al. (2007) Science 14; 317 (5844)および同文献における参考文献を参照のこと)。
【0042】
本発明との関係で、保存的置換は、以下の3つの表のうちの1つまたは複数に反映されているアミノ酸のクラス内での置換によって定義され得る。
【0043】
保存的置換のためのアミノ酸残基クラス
【0044】
代替となる保存的アミノ酸残基置換クラス
【0045】
アミノ酸残基の代替となる物理的および機能的分類
【0046】
その他の保存的置換のグループ分けには、バリン・ロイシン・イソロイシン、フェニルアラニン・チロシン、リジン・アルギニン、アラニン・バリンおよびアスパラギン・グルタミンが含まれる。
【0047】
さらなるアミノ酸グループもまた、例えばCreighton (1984) Proteins: Structure and Molecular Properties (2nd Ed. 1993), W.H. Freeman and Companyに記載されている原理を用いて編成され得る。
【0048】
変異CDRでは、実施例の抗体のCDRとの比較で、疎水性(hydropathic)/親水性の特性および残基の重量/サイズに関する保存性もまた、実質的に保持される(例えば、その配列の重量クラス、疎水性(hydropathic)スコアまたはその両方が、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上(例えば、約65〜99%)保持される)。例えば、同様にまたは代わりに保存的残基置換は、当技術分野で公知の強いまたは弱い重量ベースの保存グループの置き換えに基づくものであり得る。
【0049】
類似する残基の保持はまた、またあるいは、BLASTプログラム(例えば、NCBIを通じて利用可能な、標準設定のBLOSUM62、オープンギャップ(Open Gap)= 11および拡張ギャップ(Extended Gap)= 1を用いるBLAST 2.2.8)の使用によって決定される類似性スコアによって測定され得る。適当な変異体は、典型的には、その親ペプチドに対して、少なくとも約45%、例えば少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%またはそれ以上(例えば、約70〜99%)の類似性を示す。
【0050】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、それに連結された別の核酸を輸送することができる核酸分子を表すことが意図されている。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これはその中に追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状の二本鎖DNAループである。ベクターの別のタイプは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントはそのウイルスゲノムにライゲートされ得る。あるベクターは、それが導入された宿主細胞中で自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入した際、その宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、したがって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、そこに機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。そのようなベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミド形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが最も広く利用されるベクターの形態であることから、言い換え可能に使用され得る。しかし、本発明は、等価な機能を提供する他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を包含することが意図されている。
【0051】
「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、本明細書で使用される場合、発現ベクターが導入された細胞を表すことが意図されている。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も表すことが意図されていることを理解されるべきである。後続の世代においては変異または環境の影響のいずれかに起因して一定の改変が発生し得るため、そのような子孫は、実際は、その親細胞と同一ではないかもしれないが、それでも本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲に包含される。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ、例えばCHO細胞、HEK-293細胞、PER.C6、NS0細胞、およびリンパ球細胞、ならびに原核生物細胞、例えば大腸菌(E. coli)が含まれる。
【0052】
「トランスフェクトーマ」という用語は、本明細書で使用される場合、Abを発現する組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、PER.C6、NS0細胞、HEK-293細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌を包含する。
【0053】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、(その動物の生来のゲノムDNAに組み込まれたまたは組み込まれていないのいずれかの)1つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖導入遺伝子または導入染色体を含むゲノムを有し、完全ヒトAbを発現することができる非ヒト動物を表す。例えば、トランスジェニックマウスは、そのマウスがCD74抗原および/またはCD74発現細胞で免疫刺激されたときにヒトCD74抗体を産生するよう、ヒト軽鎖導入遺伝子とヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかとを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えばHuMAb(登録商標)マウス、例えばHCo7またはHCo12マウスの例のように、マウスの染色体DNAに組み込まれ得、または、ヒト重鎖導入遺伝子は、WO02/43478に記載される染色体導入KMマウスの例のように、染色体外で維持され得る。そのようなトランスジェニックおよび染色体導入マウス(本明細書ではまとめて「トランスジェニックマウス」と称される)は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを行うことにより、所定の抗原に対して複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgDおよび/またはIgE)を産生することができる。トランスジェニック非ヒト動物はまた、特定の抗原に対する抗体の産生のために、そのような特定のAbをコードする遺伝子を、例えばその遺伝子を動物の母乳中で発現される遺伝子に機能的に連結することによって導入することにより、使用することができる。
【0054】
「処置」は、症状または疾患状態を緩和、改善、抑止または根絶(治癒)する目的で有効量の本発明の治療活性化合物を投与することを表す。
【0055】
「有効量」は、望ましい治療結果を達成するのに効果的な、投薬時のおよび必要とされる期間の間の量を表す。CD74抗体の治療有効量は、疾患状態、個体の年齢、性別および体重、ならびに個体において望ましい応答を惹起するCD74抗体の能力等の要因によって変化し得る。治療有効量はまた、治療上有益な効果がその抗体または抗体部分の任意の毒性または有害効果を上回る量である。
【0056】
「抗イディオタイプ」(Id)抗体は、一般にAbの抗原結合部位に関係している固有の決定基を認識する抗体である。
【0057】
本発明のさらなる局面および態様
本発明は、ヒトCD74アイソフォーム1および2に結合する単離された抗体、例えばヒトモノクローナル抗体を提供する。この抗体は、加えて、他のCD74アイソフォームまたは種ホモログ、例えばカニクイザルホモログにも結合し得る。特に、本発明の抗体は、細胞表面に発現しているCD74に結合した後に効果的にインターナライズされるため、ADCアプローチの治療適用において有益である。実施例19〜22に示されているように、CD74抗体およびリンカー-薬物の組み合わせであるvcMMAEまたはmcMMAFのADCは、様々なインビボ腫瘍モデルにおいて腫瘍のサイズを効果的に減少させた。CD74 ADCは、驚くべきことに、腫瘍細胞上のCD74標的の表面発現が少ない場合でさえも効果的であった(実施例22)。さらに、CD74抗体は、腫瘍予防のインビボモデルにおいて腫瘍の成長を予防するのに効果的であることが示された(実施例25)。
【0058】
この抗体はさらに、1つもしくは複数のヒトCD74
バリアントに高い親和性で結合し、CD74に対するMIFの結合を阻害するという1つもしくは複数の機能的特性、または上記の特性の任意の組み合わせによって特徴づけることができる。
【0059】
1つの局面において、本発明の抗体は、高い親和性でヒトCD74
バリアント1および/もしくは2にまたは生来的にCD74を発現するヒト細胞に結合する。例えば、1つの態様において、この抗体は、実施例11に記載の通りに決定される場合、(a)約500 ng/mL未満、約400 ng/mL未満、約350 ng/mL未満もしくは約330 ng/mL未満のEC
50(見かけ上の親和性)でCD74
バリアント1の細胞外ドメインに結合するか;b)約400 ng/mL未満、約300 ng/mL未満、約250 ng/mL未満もしくは約220 ng/mL未満のEC
50でCD74
バリアント2の細胞外ドメインに結合するか;または(c)(a)および(b)の両方である。また、またはあるいは、この抗体は、実施例12に記載の通りに決定される場合、約400 ng/mL未満、約300 ng/mL未満、約250 ng/mL未満または約200 ng/mL未満のEC
50でRaji細胞上のCD74に結合し得る。また、またはあるいは、この抗体は、約10
-8 Mもしくはそれ未満、例えば約10
-9 Mもしくはそれ未満、または約10
-10 Mもしくはそれ未満ものK
DでCD74
バリアント1、2または両方に結合し得る。
【0060】
1つの局面において、この抗体は、細胞表面上に発現しているCD74に結合した後にインターナライズされる。このことは、実施例24に記載されるアッセイに従い蛍光標識された抗体を用いて、実施例14に記載されるアッセイに従い抗体のインターナリゼーションを反映するADCアプローチを用いて、またはOng GL et al., Immunology 1999; 98: 296-302; Hansen HJ et al., Biochem J 1996; 320: 293-300; Koch NG et al., J Immunol 1991; 147: 2643-2651; Roche PA et al., PNAS 1993; 90: 8581-8585)に記載される方法を用いて決定することができる。細胞は、B細胞株、例えばRaji細胞由来、またはIFNγ処理によって高レベルのCD74を発現するよう誘導される別のタイプの腫瘍細胞株由来(例えば、HT-29結腸癌細胞またはSK-MEL-37黒色腫細胞)であり得る。1つの態様において、細胞は、Raji細胞である。別の態様において、この抗体は、実施例14に記載の通りに決定される場合、抗κ-ETA'アッセイにおけるRaji細胞の殺傷の誘導に関して、約60 ng/mL未満、約40 ng/mL未満、約30 ng/mL未満または約25 ng/mLもしくはそれ未満のEC
50を有する。あるいは、この抗体は、そのようなアッセイにおいて、約25〜約60 ng/Lの間、約25〜40 ng/mLの間、または約25〜約30 ng/mLの間のEC
50を有する。
【0061】
1つの局面において、本発明の抗体は、実施例14に記載の通りに決定される場合、30 ng/mL未満のEC
50または約25 ng/mLもしくはそれ未満のEC
50を有する。
【0062】
1つの局面において、この抗体は、細胞表面上に任意で発現されるCD74抗原からのそのオフレートによって特徴づけられる。オフレートは、例えば、典型的には蛍光(またはそれ以外の)標識がなされた抗体を用い、0℃におけるオフレートを決定する細胞アッセイ、例えば実施例23のもの、を用いて決定することができる。細胞は、B細胞株、例えばDaudiもしくはRaji細胞由来、または別の適当なタイプの腫瘍細胞株(例えば、M4A4細胞もしくはNCI-H747細胞)由来であり得る。1つの態様において、細胞は、Daudi細胞である。1つの態様において、この抗体は、0.02〜1.0 min
-1、例えば約0.03〜約0.30 min
-1、例えば0.04〜0.10または0.15〜0.30 min
-1の範囲のオフレートを有する。1つの態様において、この抗体は、約0.07 min
-1のオフレートを有する。1つの態様において、この抗体は、約0.20または0.24 min
-1のオフレートを有する。
【0063】
同様にまたは代わりに、本発明の抗体は、ヒトCD74
バリアント1、
バリアント2もしくは
バリアント1および2の両方に対する参照抗体と交差競合することまたはそれらと同一エピトープに結合することによって特徴づけられる。
【0064】
本抗体と参照抗体の競合的結合を試験するアッセイは、例えば、CD74
バリアントの細胞外ドメイン(例えば、実施例1に記載される構築物)、CD74発現細胞および/またはCD74発現細胞から調製された細胞膜を利用することができる。例示的なアッセイにおいて、CD74発現細胞は、1〜100μg/mLの範囲の異なる濃度の試験抗体と共にプレインキュベートされ、その後に10μg/mLの濃度のフルオロフォア標識参照抗体と共にインキュベートされる。参照抗体の結合は、FACS分析を用いて決定される。
【0065】
1つの局面において、本抗体は、ヒトCD74の
バリアント1および2に対する結合に関して、
(a)SEQ ID NO:7の配列を含むVH領域とSEQ ID NO:23の配列を含むVL領域とを含む抗体[005];
(b)SEQ ID NO:11の配列を含むVH領域とSEQ ID NO:26の配列を含むVL領域とを含む抗体[006];
(c)SEQ ID NO:15の配列を含むVH領域とSEQ ID NO:26の配列を含むVL領域とを含む抗体[008];および
(d)SEQ ID NO:19の配列を含むVH領域とSEQ ID NO:26の配列を含むVL領域とを含む抗体[011]
から選択される少なくとも1つの参照抗体と競合する。
【0066】
別個の特定の態様において、本抗体は、(a)および(b)、(a)および(c)、(a)および(d)、(b)および(c)、(b)および(d)、(c)および(d)、(a)から(d)のうちの少なくとも3つ、または(a)、(b)、(c)および(d)のすべての抗体と競合する。
【0067】
1つの態様において、本抗体は、ヒトCD74内の、(a)、(b)、(c)および(d)で定義される参照抗体の少なくとも1つと同一のエピトープに結合する。これは、公知のエピトープ決定技術、例えば異なる点変異を有するCD74
バリアントに対する抗体結合の試験またはファージディスプレイ技術を用いて決定することができる(例えば、Binder et al., Cancer Res 2007; 67: 3518-3523; Carter JM et al., Curr Protocols Immunol 2004; Ch 9: Unit 9.4; Hjelm B et al., N Biotechnol 2010; 27: 129-137; Rockberg J et al., Curr Protocols Immunol 2010; Ch 9: Unit 9.9; Benjamin DC et al., Methods 1996; 9: 508-515を参照のこと)。
【0068】
同様にまたは代わりに、本発明の抗体または免疫グロブリンは、特定のV
H、V
LもしくはCDR配列またはそれらの特定の組み合わせを含むことによって特徴づけられ得る。
【0069】
1つの局面において、この抗体または免疫グロブリンは、HuMab-CD74-005、HuMab-CD74-006、HuMab-CD74-008、およびHuMab-CD74-011のいずれか1つのV
H CDR3領域を含む。したがって本発明は、SEQ ID NO: 10、14、18、および22から選択される配列を含むまたは該配列からなるV
H CDR3を含む抗体または免疫グロブリンを提供する。1つの態様において、この抗体または免疫グロブリンは、SEQ ID NO: 22を含む。
【0070】
1つの局面において、この抗体または免疫グロブリンは、以下を含む:SEQ ID NO: 24、AASおよびSEQ ID NO: 26のCDR1、2および3配列を含むV
L領域ならびに
a)SEQ ID NO: 8、9および10のCDR1、2および3配列を含むV
H領域(005);
b)SEQ ID NO: 12、13および14のCDR1、2および3配列を含むV
H領域(006);
c)SEQ ID NO: 16、17および18のCDR1、2および3配列を含むV
H領域(008);
d)SEQ ID NO: 20、21および22のCDR1、2および3配列を含むV
H領域(011)、または
e)前記抗体もしくは免疫グロブリンのいずれかの変異体であって、前記配列のいずれかに、好ましくは最大で1、2もしくは3個のアミノ酸改変、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該変異体。
【0071】
1つの局面において、この抗体は、その本来の配列と比較して最大で3個のアミノ酸改変を有する、SEQ ID NO: 20、21および22のCDR1、2および3配列を含むV
H領域ならびにSEQ ID NO: 24、AASおよび25のCDR1、2および3配列を含むV
L領域を含む。1つの態様において、この抗体は、最大で1個のアミノ酸改変を有する、SEQ ID NO: 20、21および22のCDR1、2および3配列を含むV
H領域ならびにSEQ ID NO: 24、AASおよびSEQ ID NO: 25のCDR1、2および3配列を含むV
L領域を含む。(e)の特定の態様において、変異体は、(d)のV
H CDR2の残基7のアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を含む。
【0072】
1つの局面において、この抗体または免疫グロブリンは、
a)SEQ ID NO: 7、11、15および19からなる群より選択されるV
H領域配列に対する少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO: 7、11、15および19からなる群より選択されるV
H領域配列と比較して最大で20個、例えば15個、もしくは10個、もしくは5、4、3、2もしくは1個のアミノ酸改変、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換
を有するV
Hを含む。
【0073】
1つの局面において、この抗体または免疫グロブリンは、
a)SEQ ID NO: 23および26からなる群より選択されるV
L領域配列に対する少なくとも80%の同一性、例えば少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO: 23および26からなる群より選択されるV
L領域配列と比較して最大で20個、例えば15個、もしくは10個、もしくは5、4、3、2もしくは1個のアミノ酸改変、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換
を有するV
Lを含む。
【0074】
(b)の1つの態様において、V
L領域は、SEQ ID NO: 23および26の残基36に対応する位置にアミノ酸置換を含む。SEQ ID NO: 23および26において、この位置のアミノ酸は、それぞれ、FおよびYである。
【0075】
別個の特定の局面において、この抗体または免疫グロブリンは、以下の組み合わせのいずれか一つから選択されるV
HおよびV
L領域を含む:
a)SEQ ID NO: 7の配列を含むV
H領域およびSEQ ID NO: 23の配列を含むV
L領域(005);
b)SEQ ID NO: 11の配列を含むV
H領域およびSEQ ID NO: 26の配列を含むV
L領域(006);
c)SEQ ID NO: 15の配列を含むV
H領域およびSEQ ID NO: 26の配列を含むV
L領域(008);
d)SEQ ID NO: 19の配列を含むV
H領域およびSEQ ID NO: 26の配列を含むV
L領域(011);および
e)SEQ ID NO: 7の配列を含むV
H領域およびSEQ ID NO: 26の配列を含むV
L領域(005/011);ならびに
f)前記抗体または免疫グロブリンのいずれかの変異体であって、前記VHおよび/またはVL領域配列のいずれかに、好ましくは最大で1、2または3個のアミノ酸改変、より好ましくはアミノ酸置換、例えば保存的アミノ酸置換を有する、該変異体。
【0076】
1つの局面において、本発明は、SEQ ID NO: 26の配列を含むV
L領域を含む抗体または免疫グロブリンを提供する。1つの態様において、この抗体または免疫グロブリンは、SEQ ID NO: 22のV
H CDR3を含む。別の態様において、この抗体は、SEQ ID NO: 20、21および22の、それぞれ、V
H CDR1、2および3配列を含む。
【0077】
本発明の抗体は、上記の局面の1つもしくは複数の機能的もしくは構造的特徴によって、または選択された機能的および構造的特徴の任意の組み合わせによって、特徴づけることができる。例えば、1つの態様において、本発明の抗体または免疫グロブリンは、以下の特徴のいずれか一つによって特徴づけられる:
a)実施例14に記載の通りに決定される場合、抗κ-ETA'アッセイにおける30 ng/mL未満のEC
50、もしくは約25 ng/mLもしくはそれ未満のEC
50;
b)SEQ ID NO: 19および26の、それぞれ、V
HおよびV
L配列を有する抗体との競合またはそれと同一のエピトープへの結合;
c)実施例23に従い決定される場合、0.03〜0.30 min
-1の範囲のオフレート;
d)SEQ ID NO: 22を含むV
H CDR3;
e)(a)および(b)の組み合わせ;
f)(a)および(c)の組み合わせ;
g)(a)および(d)の組み合わせ;
h)(b)および(c)の組み合わせ;
i)(b)および(d)の組み合わせ;
j)(c)および(d)の組み合わせ;または
k)(a)、(b)、(c)および(d)の組み合わせ。
【0078】
本発明の抗体は、好ましくはモノクローナルである。本発明のモノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al.(Nature
256, 495 (1975))によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって産生され得、または、組換えDNA法によって産生され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature
352, 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol.
222, 581-597 (1991)に記載される技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の適当な供給源から取得され得る。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、関心対象の抗原で、例えばその表面に関心対象の抗原を発現する細胞の形態で、または関心対象の抗原をコードする核酸で、免疫刺激されたマウスから得られたマウス脾臓およびリンパ節B細胞から調製されたハイブリドーマから取得され得る。モノクローナル抗体はまた、免疫刺激されたヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えばラット、イヌ、霊長類等の抗体発現細胞由来のハイブリドーマから取得され得る。
【0079】
1つの態様において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。CD74に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系のパーツを保有するトランスジェニックまたは染色体導入マウスを用いて作製され得る。そのようなトランスジェニックおよび染色体導入マウスには、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと称されるマウスが含まれ、そしてこれらは本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と称される。
【0080】
HuMAbマウスは、再構成されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびにκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子の小遺伝子座を含み、かつ内因性のμおよびκ鎖の遺伝子座を不活性化する特異的変異を有している(Lonberg, N. et al., Nature 368, 856-859 (1994))。したがって、このマウスは、免疫刺激に対するマウスIgMまたはκの発現が少なく、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラススイッチおよび体細胞変異を起こし高親和性のヒトIgG,κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg, N. et al. (1994), 前記;Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology 113, 49-101 (1994)で総説されている、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol. 13 65-93 (1995)およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N.Y. Acad. Sci 764 536-546 (1995))。HuMAbマウスの作製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research 20, 6287-6295 (1992)、Chen, J. et al., International Immunology 5, 647-656 (1993)、Tuaillon et al., J. Immunol. 152, 2912-2920 (1994)、Taylor, L. et al., International Immunology 6, 579-591 (1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に詳細に記載されている。US 5,545,806、US 5,569,825、US 5,625,126、US 5,633,425、US 5,789,650、US 5,877,397、US 5,661,016、US 5,814,318、US 5,874,299、US 5,770,429、US 5,545,807、WO 98/24884、WO 94/25585、WO 93/1227、WO 92/22645、WO 92/03918およびWO 01/09187も参照のこと。
【0081】
HCo7、HCo12、HCo17およびHCo20マウスは、(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830 (1993)に記載されるように)それらの内因性の軽鎖(κ)遺伝子中にJKD破壊、(WO 01/14424の実施例1に記載されるように)それらの内因性の重鎖遺伝子中にCMD破壊、および(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に記載されるように)KCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子を有している。加えて、Hco7マウスは、(US 5,770,429に記載されるように)HCo7ヒト重鎖導入遺伝子を有し、HCo12マウスは、(WO 01/14424の実施例2に記載されるように)HCo12ヒト重鎖導入遺伝子を有し、HCo17マウスは、(WO 01/09187の実施例2に記載されるように)HCo17ヒト重鎖導入遺伝子を有し、そしてHCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性のマウス重鎖およびκ軽鎖の遺伝子座の破壊についてホモ接合性であるバックグラウンドでヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0082】
KMマウス系統では、Chen et al., EMBO J. 12, 811-820 (1993)に記載されるように、内因性のマウスκ軽鎖遺伝子がホモ接合的に破壊され、そしてWO 01/09187の実施例1に記載されるように、内因性のマウス重鎖遺伝子がホモ接合的に破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)に記載されるように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子KCo5を保有している。このマウス系統はまた、WO 02/43478に記載されるように、第14染色体断片から構成されるヒト重鎖導入染色体hCF(SC20)を保有している。HCo12-BALB/Cマウスは、WO 097006に記載されるように、HCo12とKCo5[J/K]-Balb/Cを交配することによって作製することができる。
【0083】
これらのトランスジェニックマウス由来の脾細胞およびリンパ節細胞は、周知の技術に従い、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するのに使用され得る。
【0084】
本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体または他の種を起源とする本発明の抗体はまた、関心対象の免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列ならびにそれらから回収可能な形態の抗体の産生に関してトランスジェニックである別の非ヒト哺乳動物または植物の作製を通じてトランスジェニックに生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生では、抗体は、ヤギ、ウシまたはその他の哺乳動物の母乳中で産生され、そしてそこから回収され得る。例えばUS 5,827,690、US 5,756,687、US 5,750,172およびUS 5,741,957を参照のこと。
【0085】
さらに、本発明のヒト抗体または他の種由来の本発明の抗体は、当技術分野で周知の技術を用い、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイおよびその他の技術を含むがこれらに限定されないディスプレイ型の技術を通じて作製され得、そして得られた分子はさらなる成熟化、例えば親和性成熟化に供され得、そのような技術は当技術分野で周知である(例えばHoogenboom et al., J. Mol. Biol. 227, 381 (1991)(ファージディスプレイ)、Vaughan et al., Nature Biotech 14, 309 (1996)(ファージディスプレイ)、Hanes and Plucthau, PNAS USA 94, 4937-4942 (1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene 73, 305-318 (1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS 17, 241-245 (1992)、Cwirla et al., PNAS USA 87, 6378-6382 (1990)、Russel et al., Nucl. Acids Research 21, 1081-1085 (1993)、Hogenboom et al., Immunol. Reviews 130, 43-68 (1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH 10, 80-84 (1992)およびUS 5,733,743を参照のこと)。ディスプレイ技術がヒトでない抗体の産生に利用される場合、そのような抗体はヒト化され得る。
【0086】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプであり得る。アイソタイプの選択は、典型的には、望まれるエフェクター機能、例えばADCCの誘導に基づくものである。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域のκまたはλのいずれかが使用され得る。望ましい場合、本発明のCD74特異的抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、当初IgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のサブクラスに、例えばIgG1からIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途のために、アイソタイプスイッチによって、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体に変更され得る。1つの態様において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1,κである。
【0087】
1つの態様において、本発明の抗体は、全長抗体である。
【0088】
1つの態様において、全長抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1,κ抗体である。
【0089】
別の態様において、全長抗体は、IgG4抗体である。
【0090】
特定の態様において、CD74特異的IgG4抗体は、安定化IgG4抗体である。適当な安定化IgG4抗体の例は、前記のKabat et al.のEUインデックスに示されるヒトIgG4の重鎖定常領域の409位のアルギニンがリジン、スレオニン、メチオニンまたはロイシン、好ましくはリジンで置換された抗体(WO2006033386に記載)および/またはそのヒンジ領域がCys-Pro-Pro-Cys配列を含む抗体である。他の適当な安定化IgG4抗体は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2008145142に開示されている。
【0091】
1つの態様において、安定化IgG4 CD74特異的抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であって、その重鎖が409位に対応する位置にLys、Ala、Thr、MetおよびLeuからなる群より選択される残基ならびに/または405位に対応する位置にAla、Val、Gly、IleおよびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、そしてこの抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を含むが、そのヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない抗体である。好ましくは、この抗体は、409位に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、またはこの抗体のC
H3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2もしくはヒトIgG3のC
H3領域によって置き換えられている。
【0092】
別の態様において、安定化IgG4 CD74特異的抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であって、その重鎖が409位に対応する位置にLys、Ala、Thr、MetおよびLeuからなる群より選択される残基ならびに/または405位に対応する位置にAla、Val、Gly、IleおよびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、そしてこの抗体が任意で1つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を含み、かつこの抗体がそのヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む抗体である。好ましくは、この抗体は、409位に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、またはこの抗体のC
H3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2もしくはヒトIgG3のC
H3領域によって置き換えられている。
【0093】
別の態様において、CD74特異的抗体は、エフェクター機能、例えばADCC、を媒介する能力が減少または消失さえするよう変異を導入された非IgG4型、例えばIgG1、IgG2またはIgG3の抗体である。そのような変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol. 177(2): 1129-1138 (2006)およびHezareh M, J Virol. 75(24): 12161-12168 (2001)に記載されている。
【0094】
1つの態様において、2つの重鎖定常(Fc)領域のそれぞれのアイソタイプおよび/または配列は、同一である。別の態様において、1つのCD74特異的抗体の2つの重鎖定常(Fc)領域のそれぞれのアイソタイプおよび/または配列は、相違する。これは特に、多特異性、例えば二特異性のCD74特異的抗体に適用することができ、これについては以下でさらに詳細に説明されている。
【0095】
別の局面において、この抗体は、抗原結合断片である。抗体断片は、従来技術によって、例えば全長抗体の断片化によってまたは抗体断片をコードする核酸を組換え細胞中で発現させることによって、取得することができる(例えば、Evans et al., J. Immunol. Meth. 184, 123-38 (1995)を参照のこと)。この断片は、その後、全長抗体に関して本明細書に記載されているのと同じ様式でそれらの特性について試験またはスクリーニングされ得る。以下では、本発明のCD74特異的抗原結合断片の例示的な形式を説明する。
【0096】
F(ab')
2断片、これはヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片である。これは、例えば、全長抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。
【0097】
Fab'またはFab断片、これらはV
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインからなる一価の断片である。Fab断片は、例えば、IgG抗体をパパインで処理することによって取得することができる。Fab'断片は、例えば、ジチオスレイトール等の還元剤を用いてF(ab')
2断片のジスルフィド架橋を還元することによって取得することができる。
【0098】
一価抗体または「抗体半分子」、これらはWO2007059782(Genmab A/S)に記載される、水溶液中に1つの軽鎖および1つの重鎖のヘテロダイマーとして存在するものである。
【0099】
Fd断片、これは本質的にV
HおよびC
H1ドメインからなるものである。
【0100】
Fv断片、これは本質的に抗体の一本のアームおよびその単鎖抗体のV
LおよびV
Hドメインからなるものである。単鎖抗体(単鎖Fv(scFv)抗体としても公知)は、Fv断片のV
LおよびV
Hドメインが、組換え法を用いて、このV
LおよびV
H領域が対になって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖としてこれらを発現させることができる合成リンカーによって接続されている構築物である(例えば、Bird et al., Science
242, 423-426 (1988)およびHuston et al., PNAS USA
85, 5879-5883 (1988)を参照のこと)。
【0101】
ドメイン抗体(dAb断片とも呼ばれる)、これは本質的にV
Hドメインからなるものである(例えば、Ward et al., Nature
341, 544-546 (1989); Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov;
21(11): 484-90を参照のこと)。
【0102】
他の例示的な形式には、ラクダ抗体(camelid)またはナノボディが含まれる(例えば、Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;
5(1): 111-24を参照のこと)。
【0103】
多特異性の抗体形式
別の態様において、本発明は、本明細書上記のCD74特異的抗体分子由来の第1の抗原結合部位および少なくとも1つの第2の抗原結合部位を含む多特異性抗体を提供する。
【0104】
特定の態様において、第2の抗原結合部位は、例えばヒトエフェクター細胞上の抗原に結合することによってまたは細胞傷害剤もしくは第2の治療剤に結合することによって、殺傷メカニズムを動員するために使用される。例示的なエフェクター細胞には、T細胞、例えば細胞溶解性T細胞(CTL))、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、マスト細胞ならびに顆粒球、例えば好中球、好酸球および好塩基球が含まれる。例示的なエフェクター細胞抗原には、CD1、CD3、CD4、CD8、CD16、CD25、CD28、CD32、CD40、CD64、CD89、FcεRIおよびHLA-DRが含まれるがこれらに限定されない。適当な細胞傷害剤および第2の治療剤は、以下に例示されており、毒素(例えば、放射性標識ペプチド)、化学療法剤およびプロドラッグが含まれる。
【0105】
別の特定の態様において、第2の抗原結合部位は、ヒトB細胞上の抗原、例えば、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD80、CD138およびHLA-DRに結合する。
【0106】
別の特定の態様において、第2の抗原結合部位は、組織特異的抗原に結合し、その二特異性抗体の特定組織への局在化を促進する。
【0107】
別の特定の態様において、第2の抗原結合部位は、CD74発現細胞と同タイプの細胞上に存在する抗原、典型的には腫瘍関連抗原(TAA)に結合するが、第1の抗原結合部位のそれとは異なる結合特異性を有するものである。そのような多特異性または二特異性抗体は、腫瘍細胞への結合の特異性を増強し、および/または複数のエフェクター経路に関与することができる。例示的なTAAには、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、RAGE(腎性抗原)、α-フェトプロテイン、CAMEL(黒色腫上のCTL認識抗原)、CT抗原(例えば、MAGE-B5、-B6、-C2、-C3およびD;Mage-12;CT10;NY-ESO-1、SSX-2、GAGE、BAGE、MAGEおよびSAGE)、ムチン抗原(例えば、MUC1、ムチン-CA125等)、ガングリオシド抗原、チロシナーゼ、gp75、c-Met、C-myc、Mart1、MelanA、MUM-1、MUM-2、MUM-3、HLA-B7、Ep-CAMまたは癌関連インテグリン、例えばα5β3インテグリンが含まれる。あるいは、第2の抗原結合部位は、CD74の異なるエピトープに結合する。第2の抗原結合部位は、あるいは、血管新生因子またはその他の癌関連成長因子、例えば血管内皮成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、アンジオゲニンまたはこれらのいずれかの受容体、特に癌の進行に関連する受容体に結合し得る。
【0108】
別の特定の態様において、第2の抗原結合部位は、第2のCD74特異的抗体、例えば本発明のCD74特異的抗体由来のものである。
【0109】
本発明の多特異性抗体分子の例示的な形式には、(i)化学的なヘテロコンジュゲーションによって架橋された、一方がCD74に対する特異性を有し、他方が第2の抗原に対する特異性を有する2つの抗体;(ii)2つの異なる抗原結合領域を含む単一の抗体;(iii)2つの異なる抗原結合領域、例えば外部ペプチドリンカーによって直列に連結された2つのscFv、を含む単鎖抗体;(iv)各軽鎖および重鎖が短いペプチド連結を通じて2つの直列の可変ドメインを含む、デュアル可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-Ig(商標)) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(v)化学的に連結された二特異性(Fab')
2断片;(vi)2つの単鎖ダイアボディの融合物であり、各標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価二特異性抗体である、Tandab;(vii)scFvとダイアボディを組み合わせた多価分子であるフレキシボディ(flexibody);(viii)Fabに適用したときに、異なるFab断片に連結された2つの同一のFab断片からなる三価二特異性結合タンパク質を生成することができる、プロテインキナーゼAの「ダイマー化・ドッキングドメイン(dimerization and docking domain)」に基づく、いわゆる「ドック・アンド・ロック(dock and lock)」分子;(ix)例えばヒトFabアームの両端に融合された2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子;ならびに(x)ダイアボディが含まれるがこれらに限定されない。
【0110】
二特異性抗体の別の例示的な形式は、ヘテロダイマー化を促す相補的なCH3ドメインを有するIgG様分子である。そのような分子は、公知の技術、例えば、Triomab/Quadroma(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knob-into-Hole(Genentech)、CrossMAb(Roche)および静電気マッチング(electrostatically-matched)(Amgen)、LUZ-Y(Genentech)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonic(Merus)およびDuoBody(Genmab A/S)技術として公知の技術を用いて調製することができる。
【0111】
1つの態様において、二特異性抗体は、典型的にはDuoBody技術を用いる制御されたFabアーム交換を通じて取得されるまたは取得可能である。制御されたFabアーム交換により二特異性抗体を作製するためのインビトロ法は、WO 2008119353およびWO 2011131746(両方ともGenmab A/Sによる)に記載されている。WO 2008119353に記載される1つの例示的な方法において、二特異性抗体は、還元条件下でのインキュベートによる、共にIgG4様C
H3領域を含む2つの一特異性抗体間の「Fabアーム」または「半分子」の交換(重鎖および付加されている軽鎖の取り換え)によって形成される。得られる生産物は、異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二特異性抗体である。WO 2011131746に記載される別の例示的な方法において、本発明の二特異性抗体は、以下の段階を含む方法によって調製され、ここで、第1および第2の抗体の少なくとの一方が本発明のCD74抗体である:
a)免疫グロブリンのFc領域を含む第1の抗体を提供する段階であって、該Fc領域が第1のCH3領域を含む、段階;
b)免疫グロブリンのFc領域を含む第2の抗体を提供する段階であって、該Fc領域が第2のCH3領域を含み、ここで、第1のCH3領域の配列と第2のCH3領域の配列は異なっており、かつ第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロダイマー相互作用が第1および第2のCH3領域の各々のホモダイマー相互作用よりも強くなるようになっている、段階;
c)還元条件下で、第1の抗体を、第2の抗体と共にインキュベートする段階;ならびに
d)二特異性抗体を取得する段階、
ここで、第1の抗体が本発明のCD74抗体であり、かつ第2の抗体が異なる結合特異性を有する、またはその逆である。
【0112】
還元条件は、例えば、還元剤、例えば2-メルカプトエチルアミン、ジチオスレイトールおよびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンから選択される還元剤の添加によって提供され得る。段階d)はさらに、この条件を、例えば、還元剤の除去、例えば脱塩による還元剤の除去によって、非還元または弱還元条件まで回復させることを含む。
【0113】
好ましくは、第1のCH3領域と第2のCH3領域との間のヘテロダイマー相互作用が第1および第2のCH3領域の各々のホモダイマー相互作用よりも強くなるよう、第1および第2のCH3領域の配列は、数個のみの相当に保存的な非対称的変異を含むことで相違している。これらの相互作用に関するさらなる詳細およびそれらをどのようにして達成できるかは、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO 2011131746に提供されている。以下は、任意で一方または両方のFc領域がIgG1アイソタイプである、そのような非対称的変異の組み合わせの例示的な態様である。
【0114】
1つの態様において、第1のFc領域は、366、368、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、第2のFc領域は、366、368、370、399、405、407および409からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、第1および第2のFc領域は同じ位置では置換されていない。
【0115】
1つの態様において、第1のFc領域は、405位にアミノ酸置換を有し、第2のFc領域は、366、368、370、399、407および409からなる群より選択される位置、任意で409位にアミノ酸置換を有する。
【0116】
1つの態様において、第1のFc領域は、409位にアミノ酸置換を有し、第2のFc領域は、366、368、370、399、405および407からなる群より選択される位置、任意で405または368位にアミノ酸置換を有する。
【0117】
特定の態様において、第1および第2のFc領域の両方がIgG1アイソタイプであり、第1のFc領域が405位にLeuを有し、第2のFc領域が409位にArgを有する。
【0118】
コンジュゲート
本発明は、治療部分、すなわち薬物とコンジュゲートしたCD74特異的抗体を提供する。治療部分は、例えば、細胞毒素、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫刺激剤、溶解性ペプチド、または放射性同位元素であり得る。そのようなコンジュゲートは、本明細書において、「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」と称される。
【0119】
したがって、1つの局面において、上記の局面または態様のいずれかに従う抗体は、治療部分にコンジュゲートされる。例示的な治療部分には、細胞毒素部分、放射性同位元素、サイトカイン、および溶解性ペプチドが含まれる。
【0120】
1つの態様において、この抗体は、例えば実施例14に記載されるようにまたは同タイプのアッセイで示されるように、治療部分にコンジュゲートされたまたは治療部分と関連付けられた抗体のRaji細胞へのインターナリゼーションによりRaji細胞中で細胞傷害性を誘導することができる。1つの態様において、この抗体は、実施例14に記載されるように、抗κ-ETA'アッセイにおけるRaji細胞の殺傷の誘導に関して、インターナリゼーションにより約25 ng/mLから約60 ng/mLの間、例えば25 ng/mLから30 ng/mLの間のEC
50値または60 ng/mL未満、例えば40 ng/mL未満、もしくは30 ng/mL未満のEC
50値の細胞傷害性を誘導する。別の態様において、本発明に従うADCは、Raji細胞または他のCD74発現細胞の殺傷の誘導に関して、10 ng/mL未満、例えば5 ng/mL未満、1 ng/mL未満、0.5 ng/mL未満または0.1 ng/mL未満のEC
50値の細胞傷害性を誘導する。
【0121】
1つの態様において、この抗体は、細胞傷害性部分にコンジュゲートされる。細胞傷害性部分は、例えば、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;マイトマイシン;エトポシド;テノポシド(tenoposide);ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione);チューブリンインヒビター、例えばメイタンシンまたはそのアナログもしくは誘導体;抗有糸分裂剤、例えばモノメチルアウリスタチンEもしくはFまたはそれらのアナログもしくは誘導体;ドラスタチン10もしくは15またはそれらのアナログ;イリノテカンまたはそのアナログ;ミトキサントロン;ミトラマイシン;アクチノマイシンD;1-デヒドロテストステロン;グルココルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;ピューロマイシン;カリケアマイシンまたはそのアナログもしくは誘導体;代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、またはクラドリビン;アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC;白金誘導体、例えばシスプラチンまたはカルボプラチン;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065)、またはこれらのアナログもしくは誘導体;抗生物質、例えばダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC));ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素および関連分子、例えばジフテリアA鎖ならびにその活性断片およびハイブリッド分子、リシン毒素、例えばリシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素、コレラ毒素、志賀様毒素、例えばSLT I、SLT II、SLT IIV、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズボウマン-バークプロテアーゼインヒビター、シュードモナス外毒素、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン(modeccin)、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質、例えばPAPI、PAPII、およびPAP-S、ツルレイシ(momordica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、およびエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNase);DNase I、ブドウ球菌腸毒素A;ポークウィード抗ウイルスタンパク質;ジフテリア毒素(diphtherin toxin);ならびにシュードモナス内毒素からなる群より選択され得る。
【0122】
1つの態様において、この抗体は、アウリスタチンまたはそのペプチドアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。アウリスタチンは、微小管のダイナミクス、GTPの加水分解ならびに核および細胞の分裂に干渉し(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45 (12): 3580-3584)、かつ抗癌(US5663149)および抗真菌活性(Pettit et al.,(1998) Antimicrob. Agents and Chemother. 42: 2961-2965)を有することが示されている。例えば、アウリスタチンEは、パラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応し、それぞれ、AEBおよびAEVBを生成することができる。その他の典型的なアウリスタチン誘導体には、AFP、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)およびMMAE(モノメチルアウリスタチンE)が含まれる。適当なアウリスタチンならびにアウリスタチンアナログ、誘導体およびプロドラッグ、ならびにアウリスタチンをAbにコンジュゲートするのに適したリンカーは、例えば、米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号および同第6,214,345号ならびに国際特許出願公開WO02088172、WO2004010957、WO2005081711、WO2005084390、WO2006132670、WO03026577、WO200700860、WO207011968およびWO205082023に記載されている。
【0123】
1つの態様において、この抗体は、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)またはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。適当なPDBおよびPDB誘導体、ならびに関連技術は、例えば、Hartley J.A. et al., Cancer Res 2010; 70(17): 6849-6858; Antonow D. et al., Cancer J 2008; 14(3): 154-169; Howard P.W. et al., Bioorg Med Chem Lett 2009; 19: 6463-6466およびSagnou et al., Bioorg Med Chem Lett 2000; 10(18): 2083-2086に記載されている。
【0124】
1つの態様において、この抗体は、アントラサイクリン、メイタンシン、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDB、またはそれらのいずれかのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグからなる群より選択される細胞傷害性部分にコンジュゲートされる。
【0125】
特定の態様において、この抗体は、アントラサイクリンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、メイタンシンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、カリケアマイシンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、デュオカルマイシンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、ラケルマイシン(CC-1065)またはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、ドラスタチン10またはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、ドラスタチン15またはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、モノメチルアウリスタチンEまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、モノメチルアウリスタチンFまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、ピロロ[2,1-c][1,4]-ベンゾジアゼピンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。別の特定の態様において、この抗体は、イリノテカンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグにコンジュゲートされる。
【0126】
1つの態様において、本発明のCD74特異的抗体は、核酸または核酸関連分子にコンジュゲートされる。1つのそのような態様において、コンジュゲートされる核酸は、細胞傷害性リボヌクレアーゼ(RNase)もしくはデオキシ-リボヌクレアーゼ(例えば、DNase I)、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えば、siRNA分子)または免疫刺激性核酸(例えば、免疫刺激性CpGモチーフ含有DNA分子)である。別の態様において、本発明のCD74特異的抗体は、アプタマーまたはリボザイムにコンジュゲートされる。
【0127】
1つの態様において、本発明のCD74特異的抗体は、例えば、融合タンパク質として、溶解性ペプチド、例えばCLIP、マゲイニン2、メチリン、セクロピンおよびP18にコンジュゲートされる。
【0128】
1つの態様において、この抗体は、サイトカイン、例えばIL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα、IFNβ、IFNγ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチムおよびTNFαにコンジュゲートされる。
【0129】
1つの態様において、この抗体は、放射性同位元素にまたは放射性同位元素含有キレートにコンジュゲートされる。例えば、この抗体は、抗体と放射性同位元素とを複合体化させることができるキレートリンカー、例えばDOTA、DTPAまたはチウキセタンにコンジュゲートされ得る。同様にまたは代わりに、この抗体は、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸またはその他の放射性標識分子を含み得るかまたはそれにコンジュゲートされ得る。放射性標識CD74特異的抗体は、診断および治療の両方の目的で使用され得る。放射性同位元素の非限定的な例には、
3H、
14C、
15N、
35S、
90Y、
99Tc、
125I、
111In、
131I、
186Re、
213Bi、
225Acおよび
227Thが含まれる。治療目的では、ベータまたはアルファ粒子線を放出する放射性同位元素、例えば
131I、
90Y、
211At、
212Bi、
67Cu、
186Re、
188Reおよび
212Pbが使用され得る。
【0130】
本明細書の他箇所に記載される本発明のCD74特異的抗体と組み合わせて投与され得る治療剤、例えば、化学療法剤、抗癌性サイトカインまたはケモカインもまた、本発明の抗体とのコンジュゲーションに有用な治療部分の候補である。
【0131】
本発明のCD74特異的抗体はまた、例えばその循環半減期を延長するポリマーへの共有結合によるコンジュゲーションによって化学修飾され得る。例示的なポリマーおよびそれらをポリペプチドに付加する方法は、例えば、US 4,766,106、US 4,179,337、US 4,495,285およびUS 4,609,546に示されている。さらなるポリマーには、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000〜約40,000の間、例えば約2,000〜約20,000の間の分子量を有するPEG)が含まれる。
【0132】
治療剤またはその他の薬剤は、当技術分野で公知の方法に従い、直接的または間接的のいずれかで、本発明のCD74特異的抗体にコンジュゲートされ得る。第2の薬剤の間接的なコンジュゲーションの1つの例は、抗体のシステインまたはリジン残基に対してスペーサー部分を介するものである。同様にまたは代わりに、治療剤またはその他の部分は、CD74特異的抗体ポリペプチドまたはその断片(例えば、CD74特異的抗体のH鎖もしくはL鎖)のN(アミノ)末端またはC(カルボキシ)末端残基にコンジュゲートされ得る(例えば、Antibody Engineering Handbook, Osamu Kanemitsu編、Chijin Shokan出版 (1994)を参照のこと)。コンジュゲートされた抗体誘導体はまた、適当な場合、内部の残基または糖におけるコンジュゲーションにより作製され得る。例示的な方法は、例えば、Hunter et al., Nature
144, 945 (1962)、David et al., Biochemistry
13, 1014 (1974)、Pain et al., J. Immunol. Meth.
40, 219 (1981)およびNygren, J. Histochem. and Cytochem.
30, 407 (1982)にも記載されている。
【0133】
1つの態様において、CD74特異的抗体は、スペーサーまたはリンカーを介して、インビボで治療薬へと活性化させることができるプロドラッグ分子にコンジュゲートされる。例えば、プロドラッグ部分は、リンカーを介して、ペプチドまたは非ペプチド薬物部分のNまたはC末端を通じて、抗体に付加され得る。投与後、スペーサーまたはリンカーは、腫瘍細胞関連酵素またはその他の腫瘍特異的条件によって切断され、それによって活性薬物が形成される。そのようなプロドラッグ技術およびリンカーの例は、Syntarga BV, et al.によるWO02083180、WO2004043493、WO2007018431、WO2007089149、WO2009017394およびWO201062171に記載されている(すべて参照により本明細書に組み入れられる)。適当な抗体-プロドラッグ技術およびデュオカルマイシンアナログは、米国特許第6,989,452号(Medarex)(参照により本明細書に組み入れられる)においても見出すことができる。アウリスタチンに関する適当なプロドラッグ技術は、WO03026577(Seatte Genetics)および上記のその他のアウリスタチンの参考文献に記載されている。
【0134】
1つの態様において、CD74特異的抗体は、pH変化または還元条件に感受性のあるリンカーを介して治療部分またはプロドラッグにコンジュゲートされる。適当なリンカー技術は当技術分野で公知であり、例えば、Ducry, L and Stump, Bioconjugate Chem. 2010; 21: 5-13; Senter P.D., Current Opinion in Chemical Biology 2009; 13: 235-244; およびCarter, P.J. and Senter, P.D., The Cancer Journal 2010; 14: 154-169に記載されるものが含まれる。
【0135】
いくつかの態様において、リンカーは、そのリンカーの切断により細胞内環境で抗体から薬物単位が放出されるよう、細胞内条件下で切断可能なものである。いくつかの態様において、リンカーは、細胞内環境に(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内に)存在する切断作用物質により切断可能なものである。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの態様において、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断作用物質には、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ得、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解し、標的細胞内で活性薬物を放出させることが公知である(例えば、Dubowchik and Walker, 1999, Pharm. Therapeutics 83: 67-123を参照のこと)。特定の態様において、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、Val-Cit(バリン-シトルリン)リンカーまたはPhe-Lys(フェニルアラニン-リジン)リンカーである(例えば、Val-Citリンカーおよび異なる例のPhe-Lysリンカーを含むドキソルビシンの合成について記載するUS6214345を参照のこと)。Val-CitおよびPhe-Lysリンカーの構造の例には、以下に記載されるMC-vc-PAB、MC-vc-GABA、MC-Phe-Lys-PABまたはMC-Phe-Lys-GABAが含まれるがこれらに限定されない。ここで言うMCまたはmcはマレイミドカプロイルの略語であり、vcはVal-Citの略語であり、PABはp-アミノベンジルカルバメートの略語であり、そしてGABAはγ-アミノ酪酸の略語である。治療剤の細胞内タンパク質分解放出を使用する利点は、薬剤は典型的にはコンジュゲートされているときに弱毒化されること、およびコンジュゲートの血清安定性は典型的には高いことである。
【0136】
さらに別の態様においては、リンカー単位が切断可能でなく、薬物は抗体の分解によって放出される(例えば、US 2005/0238649を参照のこと)。典型的には、そのようなリンカーは、細胞外環境に対して実質的に感受性を有さない。本明細書で使用される場合、リンカーの関係で言う「細胞外環境に対して実質的に感受性を有さない」は、抗体-薬物コンジュゲート化合物が細胞外環境(例えば、血漿中)に存在するときに、その抗体-薬物コンジュゲート化合物のサンプル中、20%以下、典型的には約15%以下、より典型的には約10%以下、さらにより典型的には約5%以下、約3%以下、または約1%以下のリンカーが切断されることを意味する。リンカーが細胞外環境に対して実質的に感受性を有さないかどうかは、例えば、抗体-薬物コンジュゲートを既定の期間(例えば、2、4、8、16または24時間)、血漿と共にインキュベートし、次いで血漿中に存在する遊離薬物の量を定量することによって決定することができる。
【0137】
特定の態様において、CD74特異的抗体は、MMAE(式I)
にコンジュゲートされる。式中の波線は、リンカーに対する共有結合付加部位を示している。
【0138】
別の特定の態様において、CD74特異的抗体は、MMAF(式II)
にコンジュゲートされる、式中の波線は、リンカーに対する共有結合付加部位を示している。
【0139】
特定の態様において、MMAEまたはMMAFのリンカーは、CD74特異的抗体の(部分)還元によって得られるCD74特異的抗体のスルフヒドリル基(遊離システイン残基)に付加される。
【0140】
別の特定の態様において、リンカー-アウリスタチンは、MC-vc-PAB-MMAF(vcMMAFとも表記される)またはMC-vc-PAB-MMAE(vcMMAEとも表記される(それぞれ、式IIIおよび式IV)
である。式中のpは1〜8の数を示し、SはCD74特異的抗体の遊離システインチオール残基を表し、かつAbはCD74特異的抗体を示す。その1つの態様において、リンカー-アウリスタチンは、vcMMAEである。vcMMAE薬物リンカー部分およびコンジュゲーション方法は、WO2004010957、US7659241、US7829531、US7851437およびUS11/833,028(Seattle Genetics, Inc.)(参照により本明細書に組み入れられる)に開示されており、vcMMAE薬物リンカー部分は、これらに開示されているのと同様の方法を用いてシステインにおいてCD74特異的抗体に結合させることができる。
【0141】
別の特定の態様において、リンカー-コンジュゲートは、mcMMAF(式V)
である。式中のpは1〜8の数を示し、SはCD74特異的抗体の遊離システインチオール残基を表し、かつAbはCD74特異的抗体を示す。mcMMAF薬物リンカー部分およびコンジュゲーション方法は、US7498298、US11/833,954およびWO2005081711(Seattle Genetics, Inc.)(参照により本明細書に組み入れられる)に開示されており、mcMMAF薬物リンカー部分は、これらに開示されているのと同様の方法を用いてシステインにおいてCD74特異的抗体に結合させることができる。
【0142】
1つの局面において、本発明は、005、006、008および011から選択される抗体と同一のエピトープに結合する抗体ならびにアウリスタチンまたはそのアナログ、誘導体もしくはプロドラッグである薬物を含むCD74特異的ADCを提供する。1つの態様において、CD47v1の細胞外ドメインに結合する際のADCのEC
50は、実施例16に記載されるアッセイにおいて決定される場合、約0.2μg/mLより低く、例えば0.1μg/mLより低くまたは約0.05μg/mLより低く、任意で0.01μg/mLより高い、例えば0.02μg/mLより高い。1つの態様において、このCD74特異的ADCは、実施例18に記載されるアッセイにおいてRaji、DaudiまたはM4A4細胞について測定される場合、70%、80%または90%より高い細胞殺傷を誘導する。1つの態様において、このCD74特異的ADCは、実施例18に記載されるアッセイにおいて決定される場合、Raji、DaudiおよびM4A4細胞の殺傷の誘導に関して、約0.5μg/mL未満、約0.3μg/mL未満、約0.2μg/mL未満または約0.1μg/mL未満であり、任意で0.005μg/mLまたは約0.01μg/mLより高いIC
50を有する。1つの態様において、この抗体は、少なくとも、表3に記載される005のVH CDR3、例えばVH CDR1、2および3、任意でVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含む。1つの態様において、この抗体は、少なくとも、表3に記載される006のVH CDR3、例えばVH CDR1、2および3、任意でVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含む。1つの態様において、この抗体は、少なくとも、表3に記載される011のVH CDR3、例えばVH CDR1、2および3、任意でVH CDR1、2および3ならびにVL CDR1、2および3を含む。1つの態様において、薬物は、モノメチルアウリスタチン誘導体であり、任意でMMAEおよびMMAFから選択される。
【0143】
1つの局面において、本発明は、005、006および011からなる群より選択される抗体のCDR、VHおよび/またはVL配列を含む抗体ならびにMMAEおよびMMAFから選択される薬物を含むCD74特異的ADCを提供する。1つの態様において、抗体は005である。1つの態様において、抗体は006である。1つの態様において、抗体は011である。1つの特定の態様において、抗体は005であり、薬物はMMAE、任意でvcMMAEである。1つの特定の態様において、抗体は005であり、薬物はMMAF、任意でmcMMAFである。1つの特定の態様において、抗体は006であり、薬物はMMAE、任意でvcMMAEである。1つの特定の態様において、抗体は006であり、薬物はMMAF、任意でmcMMAFである。1つの特定の態様において、抗体は011であり、薬物はMMAE、任意でvcMMAEである。1つの特定の態様において、抗体は011であり、薬物はMMAF、任意でmcMMAFである。
【0144】
特定の別個の態様において、本発明は、以下のCD74特異的ADCを提供する:011-vcMMAE、006-vcMMAE、005-vcMMAE、011-mcMMAF、006-mcMMAFおよび005-mcMMAF。
【0145】
細胞増殖抑制薬の添加量はpによって表され、これは1つの分子中の抗体あたりの細胞増殖抑制薬部分の平均数である(薬物対抗体比、DARで表記されることもある)。細胞増殖抑制薬の添加量は、抗体あたり1〜20個の薬物部分の範囲であり得、これはリジンまたはシステイン中にあるようなアミノ基またはスルフヒドリル基を含むがこれらに限定されない有用な官能基を有するアミノ酸上で行われ得る。
【0146】
コンジュゲーション方法に依存して、pは、例えば付加部位がシステインチオール、すなわち、スルフヒドリル基である場合、抗体上の付加部位の数によって制限され得る。一般に、抗体は、薬物部分と連結され得る遊離および反応性のシステインチオール基、すなわちスルフヒドリル基を多くは含んでおらず、抗体中の大部分のシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。したがって、特定の態様において、抗体は、反応性スルフヒドリル基を生成するために、部分または完全還元条件下で還元剤、例えば、ジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)によって還元され得る。特定の態様において、本発明のADCにおける薬物添加量は、1〜約8個、例えば約2〜5個、例えば約3〜5個の範囲、例えば約4個である。抗体の(部分)還元後に、最大で8個の遊離スルフヒドリル基が利用可能となり得る(鎖間ジスルフィド結合に関与しているシステインが8個存在する)。
【0147】
発現構築物
さらなる個別の局面において、本発明は、本発明の抗体の配列をコードする核酸、本発明の抗体の配列をコードする発現ベクター、そのような発現ベクターを含む宿主細胞、本発明の抗体を産生するハイブリドーマ、ならびに抗体の産生および任意で回収に適した条件下でそのような宿主細胞またはハイブリドーマを培養することによって本発明の抗体を産生する方法に関する。
【0148】
1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO: 7〜26から選択される1つまたは複数のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。1つの態様において、この発現ベクターは、SEQ ID NO: 7、11、15、19、23および26からなる群より選択される1つもしくは複数のアミノ酸配列をコードする1つもしくは複数のヌクレオチド配列またはそれらの任意の組み合わせを含む。別の態様において、この発現ベクターは、SEQ ID NO: 10、14、18または22のV
H CDR3アミノ酸配列のいずれか一つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、この発現ベクターは、SEQ ID NO: 7、11、15および19から選択されるV
Hアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、この発現ベクターは、SEQ ID NO: 23および26から選択されるV
Lアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。別の態様において、この発現ベクターはさらに、ヒト抗体の軽鎖の定常領域またはヒト抗体の重鎖の定常領域またはその両方をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0149】
特定の態様において、本発明の発現ベクターは、1つまたは複数の上記アミノ酸配列の変異体をコードするヌクレオチド配列を含み、該変異体は、最大で25個のアミノ酸改変、例えば最大で20個、例えば最大で15、14、13、12もしくは11個のアミノ酸改変、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1個のアミノ酸改変、例えば欠失もしくは挿入、好ましくは置換、例えば保存的置換を有するか、または上記配列のいずれかに対する少なくとも80%の同一性、例えば上記アミノ酸配列のいずれかに対する少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性を有する。
【0150】
本発明における発現ベクターは、染色体、非染色体、および合成核酸ベクター(適当な発現制御エレメントのセットを含む核酸配列)を含む任意の適当なベクターであり得る。そのようなベクターの例には、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせから得られるベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが含まれる。1つの態様において、CD74特異的抗体をコードする核酸は、例えば、(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech
17, 355-59 (1997)に記載されるような)線状発現エレメント、(例えば、US 6,077,835および/もしくはWO 00/70087に記載されるような)コンパクト核酸ベクター、プラスミドベクター、例えばpBR322、pUC 19/18もしくはpUC 118/119、(例えば、Schakowski et al., Mol Ther
3, 793-800 (2001)に記載されるような)「ミッジ(midge)」ミニマルサイズ核酸ベクターまたは(例えば、WO 00/46147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA
83, 9551-55 (1986)、Wigler et al., Cell
14, 725 (1978)およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603 (1981)に記載されるような)沈降核酸ベクター構築物、例えばCaPO
4-沈降構築物を含むネイキッドDNAまたはRNAベクター中に含まれる。そのような核酸ベクターおよびそれらの使用法は当技術分野で周知である(例えば、US 5,589,466およびUS 5,973,972を参照のこと)。
【0151】
1つの態様において、このベクターは、細菌細胞中でのCD74特異的抗体の発現に適したものである。そのようなベクターの例には、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503-5509 (1989))、pETベクター(Novagen, Madison, WI)等の発現ベクターが含まれる。
【0152】
同様にまたは代わりに、発現ベクターは、酵母システム下での発現に適したベクターであり得る。酵母システム下での発現に適した任意のベクターが利用され得る。適当なベクターには、例えば、構成性または誘導性プロモーター、例えば、アルファ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York (1987)およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516-544 (1987)において総説されている)。
【0153】
核酸および/またはベクターはまた、ポリペプチド、例えば新生ポリペプチド鎖を細胞膜周辺腔または細胞培養培地へと標的化できる分泌/局在化配列をコードする核酸配列を含み得る。そのような配列は当技術分野で公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチド、オルガネラ標的配列(例えば、核局在化配列、ER保留シグナル、ミトコンドリア移行配列、葉緑体移行配列)、膜局在化/アンカー配列(例えば、輸送停止配列、GPIアンカー配列)等が含まれる。
【0154】
本発明の発現ベクターにおいて、CD74特異的抗体をコードする核酸は、任意の適当なプロモーター、エンハンサーおよびその他の発現促進エレメントを含み得るまたはそれらを伴い得る。そのようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌内でのプラスミド産生のための複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子および/または便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、CMV IE等の構成性プロモーターとは逆の誘導性プロモーターを含み得る(当業者はそのような用語が特定条件下での遺伝子発現の程度を実際に表すものであることを理解しているであろう)。
【0155】
1つの態様において、CD74特異的抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物内に配置されるおよび/または送達される。
【0156】
そのような発現ベクターは、本発明の抗体の組換え産生に使用され得る。
【0157】
1つの局面において、本発明は、本明細書に記載される任意の局面または態様の抗体を産生する組換え真核生物宿主細胞または組換え原核生物宿主細胞を提供する。したがって、本発明は、本明細書で定義される本発明の抗体または免疫グロブリンを産生する組換え真核生物宿主細胞または組換え原核生物宿主細胞、例えばトランスフェクトーマを提供する。宿主細胞の例には、酵母、細菌および哺乳動物細胞、例えば、CHOまたはHEK-293細胞が含まれる。例えば、1つの態様において、本発明は、本発明のCD74特異的抗体の発現をコードする配列を含む、細胞のゲノムに安定的に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の態様において、本発明は、本発明のCD74特異的抗体の発現をコードする配列を含む非組み込み型の核酸、例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線状発現エレメントを含む細胞を提供する。
【0158】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で定義される本発明の抗体を産生するハイブリドーマに関する。なおさらなる局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖をコードする核酸を含む、本発明の抗体を産生するトランスジェニック非ヒト動物または植物に関する。そのようなハイブリドーマおよびトランスジェニック動物または植物の作製については上記されており、かつ実施例でさらに説明されている。
【0159】
さらなる局面において、本発明は、本発明のCD74特異的抗体を製造する方法であって、
a)本明細書上記の本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する段階、ならびに
b)培養培地から本発明の抗体を回収および/または精製する段階、ならびに、任意で、
c)CD74特異的抗体からADCを調製する段階
を含む方法に関する。
【0160】
さらなる局面において、本発明の抗体の配列をコードするヌクレオチド配列はさらに、第2の部分、例えば治療用ポリペプチドをコードする。例示的な治療用ポリペプチドは、本明細書の他箇所に記載されている。1つの態様において、本発明は、CD74特異的抗体融合タンパク質を製造する方法であって、
a)そのようなヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養する段階、ならびに
b)培養培地からCD74特異的抗体融合タンパク質を回収および/または精製する段階
を含む方法に関する。
【0161】
薬学的組成物
1つの局面において、本発明は、上記局面および態様のいずれかで定義される抗体またはADCと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。
【0162】
この薬学的組成物は、従来技術、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に記載される従来技術に従い、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意のその他の公知のアジュバントおよび賦形剤を用いて処方され得る。
【0163】
薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意のその他の公知のアジュバントおよび賦形剤は、本発明の抗体または抗体コンジュゲートおよび選択される投与様式に適したものであるべきである。担体および薬学的組成物のその他の成分の適性は、選択された化合物または本発明の薬学的組成物の望ましい生物学的特性に対する有意な負の影響の欠如(例えば、抗原結合に対する実質未満の影響(10%またはそれ未満の相対的阻害、5%またはそれ未満の相対的阻害等))に基づき決定される。
【0164】
本発明の薬学的組成物はまた、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質非含有アミノ酸)、保存剤、組織固定剤、溶解剤および/または薬学的組成物に含めるのに適したその他の物質を含み得る。
【0165】
本発明の薬学的組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、個々の患者、組成および投与様式で望ましい治療応答を達成するのに有効であり、その患者に毒性を示さない活性成分の量となるよう、変更され得る。選択される用量レベルは、使用される本発明の個々の組成物もしくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される個々の化合物の排出速度、処置の継続期間、使用される個々の組成物と組み合わせて用いられるその他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、総合的な健康状態および病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態要因に依存する。
【0166】
薬学的組成物は、任意の適当な経路および様式によって投与され得る。本発明の化合物をインビボおよびインビトロで投与するのに適した経路は当技術分野で周知であり、これは当業者によって選択され得るものである。
【0167】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、非経口的に投与される。
【0168】
「非経口投与」および「非経口的に投与」というフレーズは、本明細書で使用される場合、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によるものであり、これには上皮、静脈内、筋内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入が含まれる。
【0169】
1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下注射または注入により投与される。
【0170】
薬学的に許容される担体には、本発明の化合物と生理学的に適合する任意のおよびすべての適当な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、抗酸化物質および吸収遅延剤等が含まれ得る。
【0171】
本発明の薬学的組成物において使用され得る適当な水性および非水性担体の例には、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの適当な混合物、植物油、例えばオリーブ油、トウモロコシ油、ピーナツ油、綿実油、およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルならびに/または各種緩衝液が含まれる。その他の担体は、製薬分野で周知である。
【0172】
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液または分散物および注射可能な滅菌溶液または分散物の即席調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質に対してそのような媒体および薬剤を使用することは当技術分野で公知である。任意の従来的な媒体または薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、本発明の薬学的組成物におけるそれらの使用が想定されている。
【0173】
適当な流動性は、例えば、コーティング物質、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合は必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0174】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化物質、例えば(1)水溶性の抗酸化物質、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性の抗酸化物質、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール等;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等を含み得る。
【0175】
本発明の薬学的組成物はまた、組成物中に等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロールまたは塩化ナトリウムを含み得る。
【0176】
本発明の薬学的組成物はまた、その薬学的組成物の有効期間または効果を増強し得る、選択された投与経路に適した1つまたは複数のアジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤または緩衝液を含み得る。本発明の化合物は、化合物が急速に放出されないよう保護する担体、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放処方物を用いて調製され得る。そのような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を、単独でまたはワックスもしくは当技術分野で周知の他の物質と共に含み得る。そのような処方物を調製する方法は、一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。
【0177】
1つの態様において、本発明の化合物は、インビボでの適当な分布を実現するよう処方され得る。非経口投与用の薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液または分散物および注射可能な滅菌溶液または分散物の即席調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質に対してそのような媒体および薬剤を使用することは当技術分野で公知である。任意の従来的な媒体または薬剤が活性化合物と非適合性である場合を除いて、本発明の薬学的組成物におけるそれらの使用が想定されている。他の活性または治療用化合物もまた、この組成物に組み込まれ得る。
【0178】
注射用の薬学的組成物は、典型的には、滅菌されておりかつ製造および保管条件下で安定でなければならない。この組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高い薬物濃度に適したその他の規則構造として処方され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)およびそれらの適当な混合物、植物油、例えばオリーブ油ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む、水性または非水性の溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性は、例えば、コーティング、例えばレシチンの使用によって、分散物の場合は必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばグリセロール、マンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期間吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによってもたらされ得る。注射可能な滅菌溶液は、例えば上記のような成分の1つまたは組み合わせを含む適当な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、必要な場合はその後に滅菌精密ろ過することによって調製され得る。一般に、分散物は、基本分散媒および必要とされるその他の成分、例えば上記の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、活性成分および任意の追加の望ましい成分の粉末を予め滅菌ろ過されているその溶液から生成する、真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)である。
【0179】
注射可能な滅菌溶液は、上記成分の1つまたは組み合わせを含む適当な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、必要な場合はその後に滅菌精密ろ過することによって調製され得る。一般に、分散物は、基本分散媒および必要とされる上記のその他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、活性成分および任意の追加の望ましい成分の粉末を予め滅菌ろ過されているその溶液から生成する、真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)である。
【0180】
本発明の薬学的組成物は、本発明の抗体もしくはADCの1つ、本発明に従う抗体もしくはADCと別の治療化合物との組み合わせ、または本発明の化合物の組み合わせを含み得る。
【0181】
治療適用
別の局面において、本発明は、医薬としての使用のための、本明細書の任意の局面または態様で定義される本発明の抗体またはADCに関する。
【0182】
本発明のCD74特異的抗体は、CD74発現細胞が関与する障害の処置または予防に使用することができる。例えば、この抗体は、CD74発現細胞が関与する障害を処置または予防するために、培養細胞に、例えばインビトロもしくはエクスビボで、またはヒト対象に、例えばインビボで投与され得る。本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、典型的には、CD74特異的抗体またはADCに応答するヒトである。対象には、例えば、CD74機能を調整することによってまたは細胞を殺傷することによって、直接的または間接的に是正または改善され得る障害を有するヒト患者が含まれる。
【0183】
1つの態様において、本発明は、CD74発現細胞とCD74特異的抗体とを接触させることによって同細胞におけるCD74関連シグナル伝達を調整する方法を提供する。本発明のCD74特異的抗体は、例えば、CD74に対するMIFの結合と干渉し得るが、これは本発明の抗体がどのようにしてCD74関連シグナル伝達を調整することができるかの非限定的な例にすぎない。
【0184】
1つの態様において、本発明は、CD74発現細胞と本発明のCD74特異的抗体とを接触させることによって同細胞を殺傷する方法を提供する。学説に制限されるものではないが、細胞表面上でCD74分子が抗体を媒介して架橋またはクラスター形成すること(例えば、CD74に結合した抗体のFc領域がFcR発現細胞に結合することに起因する)が、細胞のアポトーシスを引き起こし得る。
【0185】
1つの態様において、本発明は、Fc媒介性エフェクター細胞応答、例えばCDC、ADCCまたはADCP応答を誘導することができるエフェクター細胞の存在下でCD74発現細胞と本発明のCD74特異的抗体とを接触させることによって同細胞を殺傷する方法を提供する。この態様において、この抗体は、典型的には、全長でありかつCDCまたはADCC応答をもたらすアイソタイプ、例えば、IgG1,κアイソタイプである。
【0186】
本発明のCD74特異的抗体は、CD74に結合した際の効果的なインターナリゼーションによって特徴づけられ、これが、この抗体を、本明細書に記載される任意の局面または態様において記載されているADCを用いるADCアプローチに適したものにしている。
【0187】
したがって、1つの態様において、本発明は、抗体-リンカー-薬物複合体の特異的(すなわち、切断可能リンカー)または非特異的(非切断可能リンカー)なタンパク質分解切断のためにリソソームへとインターナライズされ輸送される必要のある本発明のADCを、CD74発現細胞と接触させることによって、同細胞を殺傷する方法を提供する。別の態様において、本発明は、CD74発現細胞と本発明のADCとを接触させることによって同細胞を殺傷する方法であって、CD74特異的抗体が、ADCがインターナライズされたときに例えばpHの変化または還元条件によって薬物を放出することができるリンカーを介して治療部分に連結されている、方法を提供する。適当なリンカー技術は、上記の通り、当技術分野で公知である。
【0188】
別の局面において、本発明は、対象においてCD74発現細胞が関与する障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCの投与を含む方法を提供する。この方法は、典型的には、その障害を処置または予防するのに効果的な量のCD74特異的抗体またはADCを対象に投与する段階を包含する。
【0189】
特定の局面において、CD74特異的抗体またはADCは、癌の発症のリスクを減らすために、癌進行上のイベントの発生を遅らせるためにまたは癌が寛解状態にある場合および/もしくは原発性腫瘍が外科的に除去された場合に、再発のリスクを減らすために、予防的に投与される。後者の場合、CD74特異的抗体は、例えば、手術に関連して(すなわち、手術前、手術中または手術後に)投与され得る。予防的な投与はまた、存在すると考えられる腫瘍の位置決めが他の生物学的要因のために困難な患者において有用であり得る。
【0190】
CD74を過剰発現する細胞、例えば癌細胞は特に、細胞あたりより多くの抗体またはADCが結合し得るため、本発明のCD74特異的抗体またはADCの格好の標的である。したがって、1つの局面において、CD74発現細胞が関与する障害は、癌、すなわち、腫瘍原性の障害、例えば、例えば細胞が固形腫瘍または血液腫瘍由来である障害を含む、CD74を発現する腫瘍細胞の存在により特徴づけられる障害である。CD74の発現は、例えば、乳癌(Koretz K et al., Int J Cancer 1989; 44:816-822)、結腸直腸癌(Cuthbert RJ et al., Eur J Cancer 2009; 45: 1654-1663)、子宮内膜/子宮頸癌(Glew SS et al., Cancer Res 1992; 52: 4009-4016)、胃癌(Tamori Y et al, Oncol Rep 2005; 14: 873-877)、頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHN)(Han J et al., Head Neck Oncol 2009; 1: 27)、肺癌(McClelland M et al., Am J Pathol 2009; 174: 638-646)、膠芽腫(Kitange GJ et al., J Neurooncol 2010; 100: 177-186)、悪性リンパ腫(Momburg F et al., Int J Cancer 1987; 40: 598-603)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)(Narni F et al., Blood 1986; 68: 372-377)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、単球様B細胞リンパ腫(MBCL)(Stroup R et al, Hum Pathol 1992; 23: 172-177)、毛様細胞性白血病(HCL)(Spiro RC et al., Leuk Res 1984; 8: 55-62)、悪性黒色腫(Weeraratna AT et al., Oncogene 2004; 23: 2264-2274)、卵巣癌(Rangel LB et al., Cancer Biol Ther 2004; 3: 1021-1027)、前立腺癌(Meyer-Siegler KL et al., BMC Cancer 2005; 5: 73)、膵癌(Koide N et al., Clin Cancer Res 2006; 12: 2419-2426)、腎癌(Saito T et al., Cancer Lett 1997; 115: 121-127)、胸腺上皮新生物(Datta MW et al., Appl Immunohistochem Mol Morphol 2000; 8: 210-215)、悪性線維性組織肉腫(malignant fibrous histiosarcoma)(Lazova R et al., Cancer 1997; 79: 2115-2124)および下垂体腺腫(Rossi ML et al., Tumori 1990; 76: 543-547)において報告されている。CD74はまた、例えば、ピロリ菌(H. pylori)感染および潰瘍性大腸炎時に胃上皮において上方制御されることが見出されている(Beswick, World J Gastroenterol. 2009; 15(23): 2855-61)。
【0191】
したがって例示的なCD74発現細胞には、癌細胞、例えばNHL、多発性骨髄腫(MM)、卵巣癌、乳癌、膵癌、前立腺癌、胃癌、結腸直腸癌腫および肝癌由来の細胞が含まれる。
【0192】
1つの局面において、本発明は、血液学的悪性腫瘍を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCの投与を含み、血液学的悪性腫瘍がリンパ腫、骨髄腫および/または白血病から選択される方法を提供する。1つの態様において、血液学的悪性腫瘍は、悪性リンパ腫、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、急性転化期の慢性骨髄性白血病(CML)、NHL、MM、MBCL、HCLおよびT細胞リンパ腫からなる群より選択される。
【0193】
1つの態様において、血液学的悪性腫瘍は、NHLである。本発明のCD74特異的抗体およびADCは、例えば、緩慢性および侵攻性の両方の形態のNHLの処置に使用することができる。B細胞NHLの例には、リンパ腫様肉芽腫症、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、原発性体液性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、重鎖病(γ、μおよびα病を含む)、免疫抑制剤療法によって誘導されるリンパ腫、例えばシクロスポリン誘導性リンパ腫、およびメトトレキサート誘導性リンパ腫が含まれる。1つの態様において、血液学的悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、例えば、骨髄腫軽鎖病および意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)である。他の別個の特定の態様において、血液学的悪性腫瘍は、悪性リンパ腫、B-CLL(例えば、小リンパ球性リンパ腫;SLL)、急性転化期のCML、MBCLまたはHCLである。1つの態様において、血液学的悪性腫瘍は、T細胞リンパ腫、例えば、菌状息肉症、非特定型末梢性T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、腸症関連T細胞リンパ腫または肝脾T細胞リンパ腫である。別の態様において、血液学的悪性腫瘍は、ホジキンリンパ腫である。別の態様において、血液学的悪性腫瘍は、ワルデンストレームマクログロブリン血症である。1つの態様において、血液学的悪性腫瘍は、CLL、例えば、B-CLL(例えば、小リンパ球性リンパ腫;SLL)である。
【0194】
1つの局面において、本発明は、固形腫瘍を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCの投与を含み、固形腫瘍が黒色腫、癌腫、肉腫、腺腫および/または神経膠腫である方法を提供する。1つの態様において、癌は、乳癌(例えば、原発性または転移性乳癌)、結腸直腸癌、子宮内膜/子宮頸癌、胃癌、頭頸部癌(例えば、SCCHN)、肝細胞癌腫、肺癌(例えば、小細胞肺癌または非小細胞肺癌)、悪性神経膠腫(例えば、未分化星状細胞腫および多形性膠芽腫)、悪性黒色腫(例えば、原発性または転移性黒色腫)、卵巣癌(例えば、漿液、類内膜または明細胞腺腫)、膵癌、前立腺癌、腎癌、膀胱癌、胸腺癌(例えば、胸腺癌腫および浸潤型胸腺腫)、悪性線維性組織肉腫、聴神経鞘腫、下垂体腺腫ならびに軟部組織腫瘍からなる群より選択される。
【0195】
1つの態様において、癌は、卵巣癌である。別の態様において、癌は、原発性または転移性乳癌から選択される。別の態様において、癌は、膵癌、例えば、切除不能な進行性または転移性膵癌である。別の態様において、癌は、前立腺癌である。別の態様において、癌は、胃癌である。別の態様において、癌は、結腸直腸癌腫、例えば、転移性結腸直腸癌腫である。別の態様において、癌は、肝細胞癌腫である。他の別個の特定の態様において、癌は、子宮内膜/子宮頸癌、頭頸部癌、肺癌、悪性神経膠腫、悪性黒色腫、卵巣癌、腎癌、胸腺癌、悪性線維性組織肉腫、聴神経鞘腫、下垂体腺腫または軟部組織腫瘍である。
【0196】
1つの局面において、本発明は、自己免疫疾患を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCの投与を含む方法を提供する。1つの態様において、自己免疫疾患は、免疫性血小板減少症(例えば、急性突発性血小板減少性紫斑病および慢性突発性血小板減少性紫斑病)、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎(thromboangitis ubiterans)、原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cinhosis)、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡(pamphigus vulgaris)、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症(amyofrophic lateral sclerosis)、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎および線維化性肺胞炎から選択される。
【0197】
1つの態様において、自己免疫疾患は、関節リウマチである。別の態様において、自己免疫疾患は、全身性硬化症である。別の態様において、自己免疫疾患は、多発性硬化症である。別の態様において、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎である。
【0198】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする個体に対する上記局面または態様のいずれかのCD74特異的抗体またはADCの投与による上記局面および態様の障害のいずれか一つの処置方法を提供する。本発明はまた、治療剤としての使用のための、例えば、本明細書で言及されている癌またはその他の障害の処置における使用のための本発明のCD74特異的抗体またはADCに関する。
【0199】
ある態様において、CD74特異的抗体で処置する患者の選択は、サンプル、例えば腫瘍細胞を含むサンプルにおけるCD74発現のレベルに基づくか、または標識されたCD74特異的抗体もしくは抗体断片、例えば本発明のそれらを用いてCD74発現腫瘍を検出することによるものである。本発明のCD74抗体または抗体断片を用いてCD74発現を決定する例示的な診断アッセイは、本明細書に記載されている。
【0200】
このCD74特異的抗体またはADCの有効用量および投薬計画は、処置したい疾患または状態に依存し、これは当業者によって決定され得るものである。
【0201】
当技術分野の通常の技能を有する医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方し得る。例えば、医師は、薬学的組成物において用いられるCD74特異的抗体の用量を望ましい治療効果の達成に必要とされるよりも低いレベルから開始し、そしてこの用量を望ましい効果が達成されるまで徐々に増やしていくことができる。一般に、本発明の組成物の適当な用量は、個々の投薬計画に従い治療効果を生じるのに効果的な最小限の用量となる化合物の量である。そのような有効用量は、一般に、上記の要因に依存する。
【0202】
例えば、治療用途における「有効量」は、疾患の進行を安定させる能力によって測定され得る。癌を阻害する化合物の能力は、例えば、ヒト腫瘍における効果を予測する動物モデルシステムにおいて評価され得る。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に公知のインビトロアッセイによって、細胞成長を阻害するまたは細胞傷害性を誘導する化合物の能力を試験することにより評価され得る。治療有効量の治療用化合物は、腫瘍サイズを減少させるかまたはそうでなければ対象の症状を改善し得る。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重篤度および選択された個々の組成物または投与経路等の要因に基づきそのような量を決定することができる。
【0203】
本発明のCD74特異的抗体の治療有効量の例示的、非限定的な範囲は、約0.1〜100 mg/kg、例えば約0.1〜50 mg/kg、例えば、約0.1〜20 mg/kg、例えば約0.1〜10 mg/kg、例えば、約0.5、例えば約0.3、約1、約3 mg/kg、約5 mg/kgまたは約8 mg/kgである。
【0204】
本発明のCD74特異的ADCの治療有効量の例示的、非限定的な範囲は、0.02〜100 mg/kg、例えば約0.02〜30 mg/kg、例えば約0.05〜10 mg/kgまたは0.1〜3 mg/kg、例えば、約0.5〜2 mg/kgである。
【0205】
投与は、例えば、静脈内、筋内、腹腔内または皮下であり得、例えば、標的部位の近傍に投与され得る。
【0206】
上記の処置および使用方法における投薬計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するよう適応される。例えば、単回ボーラスが投与されることもあり、いくつかに分割された用量が時間をかけて投与されることもあり、またはその用量が治療状況の緊急度に比例して減少または増加されることもある。
【0207】
1つの態様において、効果-安全性ウィンドウは、特異的毒性(specific toxicity)を低下させることによって、例えば薬物-抗体比(DAR)を低下させるおよび/またはCD74特異的ADCと未標識CD74特異的抗体とを混合することによって最適化される。
【0208】
1つの態様において、治療の間、例えば既定の時点で、処置の効果がモニターされる。1つの態様において、効果は、腫瘍細胞を含むサンプル中のCD74のレベルを測定することによって、疾患領域の可視化によって、または本明細書中でさらに説明されているその他の診断方法によって、例えば、例えば本発明のCD74特異的抗体由来の標識されたCD74特異的抗体、断片またはミニ抗体を用いて1回または複数回のPET-CTスキャンを実施することによって、モニターされ得る。
【0209】
望ましい場合、薬学的組成物の有効一日用量は、その日の中で適当な間隔で、任意で単位剤形で、別々に投与される2、3、4、5、6つまたはそれ以上の小用量として投与され得る。別の態様において、CD74特異的抗体は、任意の望ましくない副作用を最小限に抑えるために、長期間、例えば24時間超にわたる緩やかな連続注入によって投与される。
【0210】
本発明の化合物は単独で投与することが可能であるが、この化合物を上記のような薬学的組成物として投与することが好ましい。
【0211】
有効用量の本発明のCD74特異的抗体またはADCはまた、1週間、2週間または3週間の投薬期間を用いて投与され得る。この投薬期間は、例えば8週間、12週間または臨床的進展がみられるまで、に制限され得る。
【0212】
例えば、1つの態様において、このCD74特異的抗体またはADCは、10〜500 mg/m
2の間、例えば200〜400 mg/m
2の間の1週間用量を注入することによって投与される。そのような投与は、例えば、1〜8回、例えば3〜5回反復され得る。投与は、1〜24時間、例えば1〜12時間の期間にわたる連続注入によって実施され得る。
【0213】
別の態様において、このCD74特異的抗体またはADCは、10〜500 mg/m
2の間、例えば50〜200 mg/m
2の間の用量を3週間ごとに注入することによって投与される。そのような投与は、例えば、1〜8回、例えば3〜5回反復され得る。投与は、1〜24時間、例えば1〜12時間の期間にわたる連続注入によって実施され得る。
【0214】
1つの態様において、CD74特異的ADCは、約0.1〜10 mg/kg、例えば約1〜3 mg/kgの単回用量を、毎週または3週間ごとに、最大で12回、最大で8回または臨床的進展があるまで、投与される。投与は、1〜24時間、例えば1〜12時間の期間にわたる連続注入によって実施され得る。そのような計画は、必要に応じて、例えば6ヶ月または12ヶ月後に、1回または複数回反復され得る。その用量は、例えば生物学的サンプルを採取し、本発明のCD74特異的抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって、投与後の血中の本発明の化合物の量を測定することにより決定または適応され得る。
【0215】
1つの態様において、このCD74特異的抗体は、維持療法として、例えば週1回ずつ6ヶ月またはそれ以上の期間、投与される。
【0216】
非限定的な例として、本発明に従う処置は、1日あたり約0.1〜100 mg/kg、例えば、0.2、0.5、0.9、1.0、1.1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90または100 mg/kgの量の本発明の化合物の一日用量として、処置開始後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39もしくは40日目のうちの少なくとも1日に、あるいは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20週目のうちの少なくとも1週に、またはそれらの任意の組み合わせで、24、12、8、6、4もしくは2時間ごとに単回または分割用量を用いて、またはそれらの任意の組み合わせで、提供され得る。
【0217】
非経口組成物は、投与を容易にし用量を均一にするために単位剤形として処方され得る。単位剤形は、本明細書で使用される場合、各々が望ましい治療効果を生ずるよう計算された既定量の活性化合物を、必要とされる薬学的担体と共に含む、処置される対象に対する単回投与に適した物理的に分かれている単位を表す。本発明の単位剤形の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴および達成される個々の治療効果、ならびに(b)個体における過敏症への対処のためのそのような活性化合物の配合という当技術分野特有の制約、によって決定されかつそれに直接的に依存する。
【0218】
組み合わせ
本発明はまた、本発明の抗体またはADCを上記のような処置したい疾患または障害に関連する少なくとも1つのさらなる治療剤と組み合わせて使用する治療適用を提供する。そのような投与は、同時、個別または連続的なものであり得る。同時投与において、薬剤は、適当な場合、1つの組成物としてまたは別個の組成物として投与され得る。
【0219】
したがって、本発明は、本発明のCD74特異的抗体またはADCを1つまたは複数の追加の治療剤と組み合わせて投与することを含む、上記のようなCD74発現細胞が関与する障害を処置する方法を提供する。本発明はまた、そのような障害を処置するために少なくとも1つの化学療法剤と共に投与される薬学的組成物の調製のための、本発明のCD74特異的抗体またはADCの使用を提供する。
【0220】
さらなる治療剤は、典型的には、処置したい障害に関連するものである。例示的な治療剤には、他の抗癌性抗体またはADC、細胞傷害剤、化学療法剤、抗血管新生剤、抗癌性免疫原、細胞周期制御/アポトーシス調節剤、ホルモン調節剤および以下に記載される他の薬剤が含まれる。
【0221】
1つの局面において、さらなる治療剤は、別の標的、例えば、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD80、CD126、B7、MUC1、テネイシン、HM1.24またはHLA-DRに結合する少なくとも1つの第2の抗体またはADCである。例えば、第2の抗体は、CD20、CD19、CD21、CD23、CD38、CD46、CD80、CD138、HLA-DR、CD22を含むがこれらに限定されないB細胞抗原にまたはCD74上の別のエピトープに結合し得る。別の態様において、第2の抗体は、血管内皮成長因子A(VEGF-A)に結合する。別個の特定の態様において、さらなる治療剤は、CD20またはCD138特異的抗体である。
【0222】
1つの態様において、本発明のCD74特異的抗体またはADCは、特定の治療用抗体、例えばベルツズマブ、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ザルツムマブ、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(商標))、オファツムマブ(Arzerra(商標))、オクレリズマブ、ザノリムマブ、ダラツムマブ、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、Zenapax、Simulect、Remicade、Humira、Tysabri、Xolair、ラプティバ、ニモツズマブ、リツキシマブおよび/またはトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))と組み合わせて使用される。1つの態様において、本発明のCD74特異的抗体またはADCは、CD20特異的抗体、例えば、ベルツズマブ、オクレリズマブまたはオファツムマブ(Arzerra(商標))と組み合わせて投与される。別の態様において、本発明のCD74特異的抗体またはADCは、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))と組み合わせて投与される。
【0223】
1つの局面において、本発明は、少なくとも1つの化学療法剤と組み合わされた、CD74発現細胞が関与する障害、例えば癌の処置用の、上記局面または態様のいずれかの抗体またはADCを提供する。
【0224】
1つの態様において、化学療法剤は、代謝拮抗剤、例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フロクスウリジン(FudR)、3',5'-O-ジオレオイル-FudR、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビンおよび同様の薬剤から選択される。
【0225】
1つの態様において、化学療法剤は、アルキル化剤、例えばメクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンCおよび白金誘導体、例えばシスプラチン、カルボプラチン、ならびに同様の薬剤から選択される。
【0226】
1つの態様において、化学療法剤は、抗有糸分裂剤、例えばタキサン、例えばドセタキセル、およびパクリタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えばビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビノレルビンから選択される。
【0227】
1つの態様において、化学療法剤は、トポイソメラーゼインヒビター、例えばトポテカンまたはイリノテカンから選択される。
【0228】
1つの態様において、化学療法剤は、細胞増殖抑制薬、例えばエトポシドおよびテニポシドから選択される。
【0229】
1つの態様において、化学療法剤は、成長因子受容体インヒビター、例えばErbB1(EGFR)のインヒビター(例えば、イレッサ、アービタックス(セツキシマブ)、タルセバおよび同様の薬剤)、ErbB2(Her2/neu)のインヒビター(例えば、ハーセプチンおよび同様の薬剤)ならびに同様の薬剤から選択される。
【0230】
1つの態様において、化学療法剤は、チロシンキナーゼインヒビター、例えばイマチニブ(Glivec、Gleevec STI571)、ラパチニブ、PTK787/ZK222584および同様の薬剤から選択される。
【0231】
1つの局面において、本発明は、対象、例えば癌患者におけるCD74発現細胞が関与する障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCならびに少なくとも1つの血管新生、新血管形成および/またはその他の血管形成のインヒビターの投与を含む方法を提供する。
【0232】
そのような血管新生インヒビターの例は、ウロキナーゼインヒビター、マトリクスメタロプロテアーゼインヒビター(例えば、マリマスタット、ネオバスタット、BAY 12-9566、AG 3340、BMS-275291および同様の薬剤)、内皮細胞の遊走および増殖のインヒビター(例えば、TNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、ペニシラミン、SCH66336(Schering-Plough Corp, Madison, NJ)、R115777(Janssen Pharmaceutica, Inc, Titusville, NJ)および同様の薬剤)、血管新生成長因子のアンタゴニスト(例えば、ZD6474、SU6668、血管新生作用物質および/またはそれらの受容体(例えば、VEGF、bFGFおよびアンジオポイエチン-1)に対する抗体)、サリドマイド、サリドマイドアナログ(例えば、CC-5013)、Sugen 5416、SU5402、抗血管新生性リボザイム(例えば、アンジオザイム)、インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2a)、スラミンおよび同様の薬剤)、VEGF-Rキナーゼインヒビターおよび血管新生性チロシンキナーゼのその他のインヒビター(例えば、SU011248)、内皮特異的インテグリン/生存シグナルのインヒビター(例えば、ビタキシンおよび同様の薬剤)、銅アンタゴニスト/キレート剤(例えば、テトラチオモリブデート、カプトプリルおよび同様の薬剤)、カルボキシアミノ-トリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156Eならびに血管新生を阻害するヌクレオチド分子(例えば、アンチセンスVEGF cDNA、アンジオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNAおよび不完全VEGF受容体-2をコードするcDNA)および同様の薬剤である。
【0233】
そのような血管新生、新血管形成および/またはその他の血管形成のインヒビターの他の例は、抗血管新生性ヘパリン誘導体および関連分子(例えば、ヘパリナーゼIII(heperinase III))、テモゾロミド、NK4、シクロオキシゲナーゼ-2インヒビター、低酸素誘導因子1のインヒビター、抗血管新生性ダイズイソフラボン、オルチプラズ、フマギリンおよびそのアナログ、ソマトスタチンアナログ、ポリ硫酸ペントサン、テコガランナトリウム(tecogalan sodium)、ダルテパリン、タムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレタスタチン、カンスタチン(canstatin)、アバスタチン(avastatin)、その他の関連標的に対する抗体(例えば、抗α-v/β-3インテグリンおよび抗キニノスタチン(kininostatin)mAb)ならびに同様の薬剤である。
【0234】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、抗癌性免疫原、例えば癌抗原/腫瘍関連抗原(例えば、上皮細胞接着分子(EpCAM/TACSTD1)、ムチン1(MUC1)、癌胎児性抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、gp100、Melan-A、MART-1、KDR、RCAS1、MDA7、癌関連ウイルスワクチン(例えば、ヒトパピローマウイルスワクチン)、腫瘍由来熱ショックタンパク質および同様の薬剤である。当技術分野で公知の多くのその他の適当な癌抗原/腫瘍関連抗原もまた、またはあるいは、そのような態様において使用され得る。抗癌性免疫原性ペプチドには、抗イディオタイプ「ワクチン」、例えば、BEC2抗イディオタイプ抗体(Mitumomab)、CeaVacおよび関連する抗イディオタイプ抗体、MG7抗体に対する抗イディオタイプ抗体ならびにその他の抗癌性抗イディオタイプ抗体も含まれる(例えば、Birebent et al., Vaccine.
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2(4), 231-8(1996)およびMaruyama, J Immunol Methods.
264(1-2), 121-33 (2002)を参照のこと)。そのような抗イディオタイプ抗体は、任意で、合成性(典型的には不活性)の分子担体、タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH))(例えば、Ochi et al., Eur J Immunol.
17(11), 1645-8 (1987)を参照のこと)または細胞(例えば、赤血球細胞 - 例えば、Wi et al., J Immunol Methods.
122(2), 227-34 (1989)を参照のこと)であり得る担体にコンジュゲートされ得る。
【0235】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、癌成長阻害特性を有するサイトカイン、ケモカインまたはサイトカイン/ケモカインの組み合わせである。適当なサイトカインおよび成長因子の例には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα(例えば、INFα2b)、IFNβ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチムおよびTNFαが含まれる。適当なケモカインには、ヒトCXCおよびC-Cケモカインファミリー由来のGlu-Leu-Arg(ELR)非含有ケモカイン、例えばIP-10、MCP-3、MIGおよびSDF-1αが含まれ得る。適当なサイトカインには、サイトカイン誘導体、サイトカイン変異体、サイトカイン断片およびサイトカイン融合タンパク質が含まれる。本発明における天然に存在するペプチドコード核酸に関するこれらおよびその他の方法または使用はあるいは、または加えて、「遺伝子活性化」および相同組換え遺伝子上方制御技術、例えばUS 5,968,502、US 6,063,630およびUS 6,187,305ならびにEP 0505500に記載される技術によって実施され得る。
【0236】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス調節物質(または「調節剤」)であり得る。細胞周期制御/アポトーシス調節物質には、細胞周期制御/アポトーシス調節物質を標的化しこれを調整する分子、例えば、(i)cdc-25(例えば、NSC 663284)、(ii)細胞周期を過剰刺激するサイクリン依存性キナーゼ(例えば、フラボピリドール(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシ-スタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202))、ならびに(iii)テロメラーゼモジュレーター(例えば、BIBR1532、SOT-095、GRN163ならびに例えばUS 6,440,735およびUS 6,713,055に記載される組成物)が含まれ得る。アポトーシス経路に干渉する分子の非限定的な例には、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、TRAIL受容体を活性化する抗体、IFNおよびアンチセンスBcl-2が含まれる。
【0237】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、ホルモン調節剤、例えば、抗アンドロゲンおよび抗エストロゲン療法に有用な薬剤である。そのようなホルモン調節剤の例は、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エチニル、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド(flutaminde)/ユーレキシン(eulexin))、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン/プロベラ、酢酸メゲストロール(megestrol acepate)/メゲース)、副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(ならびにそのアナログおよびその他のLHRHアゴニスト、例えばブセレリンおよびゴセレリン)、アロマターゼインヒビター(例えば、アナストロゾール(anastrazole)/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン(cytraden)、エキセメスタン)、ホルモンインヒビター(例えば、オクトレオチド/サンドスタチン)ならびに同様の薬剤である。
【0238】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、抗アネルギー剤(例えば、腫瘍および癌抗原に対する寛容を破壊する低分子化合物、タンパク質、糖タンパク質または抗体)である。そのような化合物の例は、CTLA-4の活性を遮断する分子、例えばMDX-010(イピリムマブ、Yervoy(商標))である(Phan et al., PNAS USA
100, 8372 (2003))。
【0239】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、腫瘍抑制遺伝子含有核酸またはベクター、例えば、ヒト組換え野生型p53/SCH58500をコードする複製欠損アデノウイルス等;癌遺伝子、変異もしくは脱調節遺伝子を標的化するアンチセンス核酸;または変異もしくは脱調節遺伝子を標的化するsiRNAである。腫瘍抑制標的の例には、例えば、BRCA1、RB1、BRCA2、DPC4(Smad4)、MSH2、MLH1およびDCCが含まれる。
【0240】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、抗癌性核酸である。例示的な抗癌性核酸には、ジェナセンス(オーグメロセン/G3139)、LY900003(ISIS 3521)、ISIS 2503、OGX-011(ISIS 112989)、LE-AON/LEraf-AON(リポソーム封入c-rafアンチセンスオリゴヌクレオチド/ISIS-5132)、MG98およびPKCα、クラステリン、IGFBP、プロテインキナーゼA、サイクリンD1またはBcl-2を標的化するその他のアンチセンス核酸が含まれる。
【0241】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、抗癌性阻害性RNA分子である(例えば、Lin et al., Curr Cancer Drug Targets.
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303(4), 1169-78 (2003)を参照のこと)。
【0242】
本発明の組成物および併用投与法には、核酸ワクチン、例えば、そのような癌抗原/腫瘍関連抗原をコードするネイキッドDNAワクチンの投与も含まれる(例えば、US 5,589,466、US 5,593,972、US 5,703,057、US 5,879,687、US 6,235,523およびUS 6,387,888を参照のこと)。1つの態様において、この併用投与法および/または併用組成物は、自己ワクチン組成物を含む。1つの態様において、この併用組成物および/または併用投与法は、全細胞ワクチンまたはサイトカイン発現細胞(例えば、組換えIL-2発現線維芽細胞、組換えサイトカイン発現樹状細胞等)を含む(例えば、Kowalczyk et al., Acta Biochim Pol.
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69, 233-57 (2002)およびTirapu et al., Curr Gene Ther.
2(1), 79-89 (2002)を参照のこと)。本発明の併用方法において有用であり得るそのような自己細胞アプローチの別の例は、MyVax(登録商標)個別化免疫療法(以前はGTOP-99と称されていた)(Genitope Corporation - Redwood City, CA, USA)である。
【0243】
1つの態様において、本発明に従うCD74特異的抗体またはADCは、ウイルス、ウイルスタンパク質等と組み合わされるまたは共投与される。例えば、通常インビボで1回または数回のみの複製が可能でありかつ腫瘍細胞を標的化する複製欠損ウイルスが、そのような組成物および方法の有用な要素となり得る。そのようなウイルス剤は、免疫刺激因子、例えば、GM-CSFおよび/またはIL-2をコードする核酸を含み得るまたはそれを伴い得る。天然の腫瘍崩壊性ウイルスおよびそのような組換え腫瘍崩壊性ウイルス(例えば、HSV-1ウイルス、レオウイルス、複製欠損および複製感受性アデノウイルス等)の両方が、そのような方法および組成物の有用な要素となり得る。したがって、1つの態様において、本発明は、CD74特異的抗体が腫瘍崩壊性ウイルスと組み合わされるまたは共投与される併用組成物および併用投与法を提供する。そのようなウイルスの例には、腫瘍崩壊性アデノウイルスおよびヘルペスウイルスが含まれ、これらは改変ウイルスである場合もそうでない場合もある(例えば、Shah et al., J Neurooncol.
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28(4), 336-43 (2001)を参照のこと)。
【0244】
本発明の併用組成物および併用投与法はまた、「全細胞」および「養子」免疫療法に関連するものであり得る。例えば、そのような方法は、免疫系細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、例えばCD4
+および/またはCD8
+ T細胞(例えば、腫瘍特異的抗原および/または遺伝子的強化によって展開されたT細胞)、抗体発現B細胞またはその他の抗体産生もしくは抗体提示細胞、樹状細胞(例えば、DCを展開させる作用物質、例えばGM-CSFおよび/もしくはFlt3-Lを用いて培養された樹状細胞ならびに/または腫瘍関連抗原担持樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞、またはそれらの組み合わせの注入または再注入を含み得る。細胞溶解産物もまた、そのような方法および組成物において有用であり得る。そのような局面において有用であり得る臨床試験段階の細胞「ワクチン」には、Canvaxin(商標)、APC-8015(Dendreon)、HSPPC-96(Antigenics)およびMelacine(登録商標)細胞溶解産物が含まれる。任意でアジュバント、例えばアラムと混合される、癌細胞から脱落した抗原およびその混合物(例えば、Bystryn et al., Clinical Cancer Research Vol.7, 1882-1887, July 2001を参照のこと)もまた、そのような方法および併用組成物の要素となり得る。
【0245】
1つの態様において、CD74特異的抗体またはADCは、体内ワクチン接種(internal vaccination)法の適用と組み合わせて患者に送達される。体内ワクチン接種は、典型的には、(i)腫瘍細胞全体、または(ii)(a)分泌タンパク質、糖タンパク質もしくはその他の生産物、(b)膜関連タンパク質もしくは糖タンパク質または膜に関連するもしくは膜に挿入されるその他の成分および/または(c)細胞内タンパク質もしくはその他の細胞内成分、を含む腫瘍細胞の一部分、に対する免疫応答を惹起する、患者内で誘導される腫瘍または癌細胞の死、例えば、腫瘍細胞の薬物誘導または放射線誘導、冷凍アブレーション誘導または高周波アブレーション誘導の細胞死を表す。体内ワクチン接種により誘導される免疫応答は、液性(すなわち、抗体 - 補体媒介性)または細胞媒介性(例えば、体内で殺傷された腫瘍細胞またはその一部分を認識する内因性の細胞傷害性Tリンパ球の発生および/または増加)であり得る。放射線療法に加えて、腫瘍細胞死および体内ワクチン接種を誘導するのに使用され得る薬物および薬剤の非限定的な例は、従来的な化学療法剤、細胞周期インヒビター、抗血管新生薬、モノクローナル抗体、アポトーシス誘導剤およびシグナル伝達インヒビターである。
【0246】
上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤として関連し得るその他の抗癌剤の例は、分化誘導剤、レチノイン酸アナログ(例えば、全トランスレチノイン酸、13-cisレチノイン酸および同様の薬剤)、ビタミンDアナログ(例えば、セオカルシトールおよび同様の薬剤)、ErbB3、ErbB4、IGF-IR、インスリン受容体、PDGFRα、PDGFRβ、Flk2、Flt4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、TRKA、TRKC、c-met、Ron、Sea、Tie、Tie2、Eph、Ret、Ros、Alk、LTK、PTK7のインヒビターならびに同様の薬剤である。
【0247】
上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤として関連し得るその他の抗癌剤の例は、カテプシンB、カテプシンDデヒドロゲナーゼ活性のモジュレーター、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(例えば、グルタミルシステイン(glutacylcysteine)シンセターゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ)ならびに同様の薬剤である。
【0248】
上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体と組み合わせて使用される治療剤として関連し得るその他の抗癌剤の例は、エストラムスチンおよびエピルビシンである。
【0249】
上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体と組み合わせて使用される治療剤として関連し得るその他の抗癌剤の例は、17-(アリルアミノ)-17-デメトキシゲルダナマイシン等のHSP90インヒビター、PSA、CA125、KSA等の腫瘍抗原に対する抗体、インテグリンβ1等のインテグリン、VCAMのインヒビターおよび同様の薬剤である。
【0250】
上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤として関連し得るその他の抗癌剤の例は、カルシニューリンインヒビター(例えば、バルスポダール、PSC 833およびその他のMDR-1またはp-糖タンパク質インヒビター)、TORインヒビター(例えば、シロリムス、エベロリムスおよびラパマイシン)、および「リンパ球ホーミング」メカニズムのインヒビター(例えば、FTY720)ならびに細胞のシグナル伝達に対する効果を有する薬剤、例えば接着分子インヒビター(例えば、抗LFA等)である。
【0251】
1つの態様において、CD74特異的抗体またはADCは、CD74特異的抗体または併用組成物の腫瘍内部へのアクセスを促進する1つまたは複数の薬剤の送達と関連して投与され得る。そのような方法は、例えば、腫瘍を弛緩させることができるレラキシンの送達と関連して実施され得る(例えば、US 6,719,977を参照のこと)。1つの態様において、本発明のCD74特異的抗体またはADCは、細胞透過性ペプチド(CPP)に結合され得る。細胞透過性ペプチドおよび関連ペプチド(例えば、人工細胞透過性抗体)は、例えば、Zhao et al., J Immunol Methods.
254(1-2), 137-45 (2001)、Hong et al., Cancer Res.
60(23), 6551-6 (2000)、Lindgren et al., Biochem J.
377(Pt 1), 69-76 (2004)、Buerger et al., J Cancer Res Clin Oncol.
129(12), 669-75 (2003)、Pooga et al., FASEB J.
12(1), 67-77 (1998)およびTseng et al., Mol Pharmacol.
62(4), 864-72 (2002)に記載されている。
【0252】
さらに別の態様において、このCD74特異的抗体またはADCは、CD74上方制御剤、例えばIFNγまたは不活性化ピロリ菌と関連して投与される。
【0253】
1つの態様において、本発明は、対象におけるCD74発現細胞が関与する障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量のCD74特異的抗体またはADCならびに少なくとも1つの抗炎症剤、免疫抑制剤および/または免疫調節剤の投与を含む方法を提供する。
【0254】
1つの態様において、そのような抗炎症剤は、アスピリンおよびその他のサリチル酸塩、Cox-2インヒビター(例えば、ロフェコキシブおよびセレコキシブ)、NSAID(例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラク、オキサプロジンおよびインドメタシン)、抗IL-6R抗体、抗IL-8抗体(例えば、WO2004058797に記載される抗体、例えば10F8)、抗IL-15抗体(例えば、WO03017935およびWO2004076620に記載される抗体)、抗IL-15受容体Ab、抗CD4抗体(例えば、ザノリムマブ)、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α-4/β-1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)、炎症疾患処置用CTLA4-Ig、プレドニゾロン、プレドニゾン、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えばメトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ピリミジン合成インヒビター(例えば、レフルノミド)、IL-1受容体遮断剤(例えば、アナキンラ)、TNF-α遮断剤(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブおよびアダリムマブ)ならびに同様の薬剤から選択され得る。
【0255】
1つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、例えばプレドニゾン、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、チモペンチン、チモシン-αおよび同様の薬剤から選択され得る。
【0256】
1つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、免疫抑制性Ab、例えば、IL-2受容体のp75に結合する抗体、CD25に対する抗体(例えば、WO2004045512に記載されるもの、例えばAB1、AB7、AB11およびAB12)、胸腺細胞グロブリンに対する抗体、または例えばMHC、CD2、CD3(例えば、OKT3)、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFNγ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-10、CD11aもしくはCD58に結合する抗体またはそれら各々の受容体もしくはリガンドに結合する抗体から選択され得る。
【0257】
1つの態様において、そのような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、可溶性IL-15R、IL-10、B7分子(B7-1、B7-2、それらの変異体およびそれらの断片)、ICOS、およびOX40、負のT細胞調節物質のインヒビター(例えば、CTLA4に対する抗体)ならびに同様の薬剤から選択され得る。
【0258】
1つの態様において、本発明は、対象におけるCD74発現細胞が関与する障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量のCD74特異的抗体またはADCおよび抗C3b(i)抗体の投与を含む方法を提供する。
【0259】
1つの態様において、上記の障害を処置するためにCD74特異的抗体またはADCと組み合わせて使用される治療剤は、ヒストンデアセチラーゼインヒビター(例えば、フェニルブチレート)および/またはDNA修復剤(例えば、DNA修復酵素および関連組成物、例えばジメリシン(dimericine))から選択され得る。
【0260】
治療有効量のCD74特異的抗体またはADCの投与を含む上記の障害を処置するための本発明の方法はまた、抗癌光線力学療法(例えば、任意で感光剤を使用して実施され得る抗癌レーザー療法、例えば、Zhang et al., J Control Release.
93(2), 141-50 (2003)を参照のこと)、抗癌音波衝撃波療法(例えば、Kambe et al., Hum Cell.
10(1), 87-94 (1997)を参照のこと)ならびに/または抗癌栄養補助療法(例えば、Roudebush et al., Vet Clin North Am Small Anim Pract.
34(1), 249-69, viii (2004)およびRafi, Nutrition.
20(1), 78-82 (2004)を参照のこと)を含み得る。同様に、CD74特異的抗体は、抗癌光線力学療法(例えば、任意で感光剤を使用して実施され得る抗癌レーザー療法)、抗癌音波衝撃波療法および/または抗癌栄養補助療法と共に投与される上記の障害を処置するための薬学的組成物の調製に使用され得る。
【0261】
1つの態様において、本発明は、対象におけるCD74発現細胞が関与する障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCおよび放射線療法の投与を含む方法を提供する。
【0262】
1つの態様において、本発明は、癌を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCおよび放射線療法の投与を含む方法を提供する。
【0263】
1つの態様において、本発明は、放射線療法と組み合わせて投与される癌を処置するための薬学的組成物の調製のための、本発明のCD74特異的抗体またはADCの使用を提供する。
【0264】
放射線療法は、患者に対する放射線照射および関連する放射性医薬の投与を含み得る。放射線源は、処置する患者の外部または内部のいずれかに存在し得る(放射線処置は、例えば、体外照射療法(EBRT)または小線源療法(BT)の形式であり得る)。そのような方法を実施する上で使用され得る放射性元素には、例えば、ラジウム、セシウム137、イリジウム192、アメリシウム241、金198、コバルト57、銅67、テクネチウム99、ヨウ素123、ヨウ素131およびインジウム111が含まれる。
【0265】
さらなる態様において、本発明は、癌を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に対する、手術と組み合わせての、治療有効量の本発明のCD74特異的抗体またはADCの投与を含む方法を提供する。
【0266】
上記のように、本発明の薬学的組成物は、併用療法で投与され得る、すなわち、処置したい疾患または障害に関連する1つまたは複数の薬剤と、別個の薬学的組成物としてまたは本発明の化合物を上記の1つまたは複数の追加の治療剤と共に処方することによってのいずれかで、組み合わされ得る。そのような併用療法は、低用量の本発明の化合物および/または共投与される薬剤を必要とし、したがって様々な単剤療法に付随して起こり得る毒性または合併症を回避し得る。
【0267】
1つの態様において、特定の治療用途のためのさらなる治療剤は、以下から選択される:
- 特に血液学的悪性腫瘍、例えばB-CLLまたは濾胞性リンパ腫の処置の場合、CD20特異的抗体;
- 特に血液学的悪性腫瘍、例えば骨髄腫の処置の場合、CD138特異的抗体;
- 特に血液学的悪性腫瘍、例えば骨髄腫またはCLLの処置の場合、CD38特異的抗体;
- 血液学的悪性腫瘍、例えば骨髄腫の処置の場合、メルファラン(または塩酸メルファラン);
- 特に癌、例えば乳癌の処置の場合、抗VEGF-A抗体、例えばベバシズマブ;
- 特に血液学的悪性腫瘍、例えば骨髄腫の処置の場合、レナリドマイドまたはボルテゾミブ;
- 特に癌、例えば膵癌の処置の場合、フルオロウラシルまたはゲムシタビン;
- 特に癌、例えば結腸直腸癌の処置の場合、イリノテカン;および
- 特に癌、例えばSCCHNの処置の場合、シスプラチンまたはその他の白金誘導体。
【0268】
診断的適用
本発明のCD74特異的抗体はまた、本明細書に記載されるCD74特異的抗体を含む組成物を用いて診断目的で使用され得る。したがって、本発明は、本明細書に記載されるCD74特異的抗体を用いる診断方法および組成物を提供する。そのような方法および組成物は、純粋な診断目的で、例えばCD74発現細胞が関与する疾患の検出または同定に、および治療的処置の進展のモニタリング、疾患の進行のモニタリング、処置後の状態の評価、疾患の再発のモニタリング、疾患の発症のリスクの評価等に使用することができる。
【0269】
1つの局面において、本発明のCD74特異的抗体は、患者から採取されたサンプルにおけるCD74のレベルまたは細胞表面にCD74を発現する細胞のレベルを検出することによって、エクスビボで、例えばCD74発現細胞が疾患の指標となるまたはその病理に関与している疾患の診断に、使用される。これは、例えば、試験したいサンプルを、任意で対照サンプルと共に、CD74特異的抗体と、その抗体がCD74に結合できる条件下で接触させることによって達成され得る。その後、複合体の形成が(例えば、ELISAを用いて)検出され得る。試験サンプルと共に対照サンプルを用いる場合、CD74特異的抗体またはCD74特異的抗体-CD74複合体のレベルは、両方のサンプルにおいて分析され、そして試験サンプルにおける統計的に有意に高いCD74特異的抗体またはCD74特異的抗体-CD74複合体のレベルが、試験サンプルにおける対照サンプルよりも高いCD74レベルを示す。
【0270】
本発明のCD74特異的抗体を使用することができる従来的な免疫アッセイの例には、ELISA、RIA、FACSアッセイ、プラズモン共鳴アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、組織の免疫組織化学、ウェスタンブロットおよび/または免疫沈降が含まれるがこれらに限定されない。
【0271】
1つの態様において、本発明は、サンプル中のCD74抗原またはCD74発現細胞の存在を検出する方法であって、
- サンプルと本発明のCD74特異的抗体とを、該CD74特異的抗体がサンプル中のCD74に結合できる条件下で接触させる段階;および
- 複合体が形成されたかどうかを分析する段階
を含む方法に関する。典型的には、サンプルは、生物学的サンプルである。
【0272】
1つの態様において、サンプルは、CD74抗原および/またはCD74発現細胞を含むことが既知のまたはそれが疑われる組織サンプルである。例えば、CD74発現のインサイチュー検出は、患者から組織学的試料を取り出し、そしてそのような試料に本発明の抗体を提供することによって達成され得る。抗体は、抗体を試料に適用することによってまたは抗体を試料に上乗せすることによって提供され得、その後に適当な手段を用いて検出される。その後、CD74またはCD74発現細胞の存在だけでなく、(例えば、癌細胞の拡散の評価に関連して)試験された組織におけるCD74またはCD74発現細胞の分布も決定することができる。本発明を用いる際、当業者は、任意の様々な組織学的方法(例えば、染色手順)がそのようなインサイチュー検出を達成するために修正され得ることを直ちに理解するであろう。
【0273】
上記のアッセイにおいて、CD74特異的抗体は、CD74に結合した抗体を検出できるよう、検出可能な物質で標識され得る。あるいは、結合した(1次)CD74特異的抗体は、検出可能な物質で標識された、1次抗体に結合する2次抗体によって検出され得る。
【0274】
サンプル中のCD74のレベルはまた、検出可能な物質で標識されたCD74標準および未標識のCD74特異的抗体を用いる競合免疫アッセイによって概算することもできる。このタイプのアッセイにおいては、生物学的サンプル、標識されたCD74標準およびCD74特異的抗体が組み合わされ、そして未標識のCD74特異的抗体に結合した標識CD74標準の量が決定される。生物学的サンプル中のCD74の量は、CD74特異的抗体に結合した標識CD74標準の量に反比例する。
【0275】
インビトロ診断技術において使用されるCD74特異的抗体、2次抗体および/またはCD74標準に適した標識には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質および放射性物質が含まれるがこれらに限定されない。適当な酵素の例には、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれ;適当な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれ;適当な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドおよびフィコエリトリンが含まれ;発光物質の例には、ルミノールが含まれ;そして適当な放射性物質の例には、
125I、
131I、
35Sおよび
3Hが含まれる。
【0276】
1つの局面において、本発明のCD74特異的抗体は、CD74発現組織、例えば腫瘍のインビボ画像化において使用される。インビボ法では、それらの迅速に分布する動態から、抗体断片、例えば(Fab')
2、FabおよびFab'断片が特に有利である。
【0277】
インビボ画像化は、任意の適当な技術によって実施することができる。例えば、
99Tc、
131I、
111Inまたはその他のガンマ線を放出する同位体で標識されたCD74特異的抗体(例えば、断片)は、典型的には低エネルギー、高解像度コリメーターまたは低エネルギー、多目的コリメーターを用いるガンマシンチレーションカメラ(例えば、Elscint Apex 409ECTデバイス)によりCD74発現組織、例えば腫瘍内のCD74特異的抗体の蓄積または分布を画像化するために使用され得る。あるいは、
89Zr、
76Br、
18Fまたはその他の陽電子を放出する放射性核種による標識が、陽電子放出断層撮影(PET)を用いて腫瘍内のCD74特異的抗体または抗体断片の分布を画像化するのに使用され得る。そのような技術を使用して得られる画像は、例えば、癌細胞の存在のバイオマーカーとしてCD74を使用する場合、患者、哺乳動物または組織におけるCD74の生体内分布を評価するのに使用され得る。この技術のバリエーションには、ガンマカメラ技術よりも画像化を改善する磁気共鳴画像化(MRI)の使用が含まれ得る。従来的な免疫シンチグラフィーの方法および原理は、例えば、Srivastava (ed.), Radiolabeled Monoclonal Antibodies For Imaging And Therapy (Plenum Press 1988)、Chase, "Medical Applications of Radioisotopes," in Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Gennaro et al., (eds.), pp. 624-652 (Mack Publishing Co., 1990)およびBrown, "Clinical Use of Monoclonal Antibodies," in Biotechnology And Pharmacy 227-49, Pezzuto et al., (eds.)(Chapman & Hall 1993)に記載されている。さらに、同様にまたは代わりに、そのような画像は、腫瘍を除去するための外科技術の基礎として機能し得る。さらに、そのようなインビボ画像化技術は、患者が(他のバイオマーカー、転移等の存在に基づき)腫瘍を有することが同定されたがその腫瘍が伝統的な分析技術では同定することができない状況で、腫瘍の同定および局在化を実現し得る。これらの方法はすべて、本発明の特徴である。
【0278】
本発明によって提供されるインビボ画像化およびその他の診断方法は、ヒト患者(例えば、過去に癌と診断されていない患者または癌からの回復/寛解期にある患者)における微小転移の検出に特に有用である。
【0279】
1つの態様において、本発明は、本発明のCD74特異的抗体を、検出を促進する放射線不透過剤にコンジュゲートし、このコンジュゲート抗体を、例えば血流への注射によって宿主に投与し、そして宿主における標識抗体の存在および位置をアッセイする、インビボ画像化法を提供する。この技術および本明細書で提供される任意のその他の診断方法を通じて、本発明は、ヒト患者もしくはヒト患者から採取された生物学的サンプルにおいて疾患関連細胞の存在をスクリーニングする方法および/またはCD74特異的ADC療法の前にCD74特異的抗体の分布を評価する方法を提供する。
【0280】
診断画像化のために、放射性同位元素は、直接的または中間官能基を用いることによる間接的のいずれかで、CD74特異的抗体に結合され得る。有用な中間官能基には、キレーター、例えばエチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸が含まれる(例えば、US 5,057,313を参照のこと)。
【0281】
放射性同位元素および放射線不透過剤に加えて、診断方法は、色素(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いて)、造影剤、蛍光化合物または分子および磁気共鳴画像化(MRI)用増強剤(例えば、常磁性イオン)にコンジュゲートされたCD74特異的抗体を用いて実施され得る(例えば、MRI技術およびMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製について記載している米国特許第6,331,175号を参照のこと)。そのような診断/検出剤は、MRIで使用するための薬剤および蛍光化合物から選択され得る。CD74特異的抗体に放射性金属または常磁性イオンを担持させるために、該抗体を、イオンの結合のために多数のキレート基が付加されている長い尾部を有する試薬と反応させることが必要であり得る。そのような尾部は、ポリマー、例えばポリリジン、多糖、またはそれ以外の、キレート基が結合され得るペンダント基、例えばポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシムおよびこの目的で有用であることが公知の同様の基を有する誘導体化されたもしくは誘導体化可能な分子鎖であり得る。キレートは、標準的な化学を用いてCD74特異的抗体にカップリングされ得る。
【0282】
したがって本発明は、造影剤(例えば、磁気共鳴画像化、コンピュータ断層撮影もしくは超音波コントラスト増強剤)または例えばガンマ、ベータ、アルファ、オージェ電子もしくは陽電子を放出する同位体であり得る放射性核種にコンジュゲートされた、診断用CD74特異的抗体を提供する。
【0283】
さらなる態様において、本発明は、サンプルにおけるCD74抗原またはCD74発現細胞の存在を検出するためのキットであって、
- 本発明のCD74特異的抗体またはADC;および
- 当該キットの使用に関する指示
を含むキットを提供する。
【0284】
1つの態様において、本発明は、CD74特異的AbおよびCD74特異的抗体のCD74への結合を検出するための1つまたは複数の試薬を含む容器を含む、癌診断用のキットを提供する。試薬には、例えば、蛍光タグ、酵素タグまたはその他の検出可能なタグが含まれ得る。試薬には、また、2次もしくは3次抗体または可視化され得る生産物を生成する酵素反応のための試薬が含まれ得る。1つの態様において、本発明は、適当な容器に入れられた標識または未標識形態の1つまたは複数の本発明のCD74特異的Ab、間接的アッセイにおけるインキュベーションのための試薬、およびその標識の性質に依存する、そのようなアッセイにおける検出のための基質または誘導体化剤を含む診断キットを提供する。対照試薬および使用のための指示も含まれ得る。
【0285】
診断キットはまた、組織サンプルまたは宿主におけるCD74の存在の検出のためにCD74特異的Ab、例えばコンジュゲート/標識されたCD74特異的Abと共に使用する目的で供給され得る。そのような診断キットにおいておよび本明細書の他箇所に記載される治療用途のキットにおいて、CD74特異的抗体は、典型的に、単独でまたは標的細胞もしくはペプチドに特異的な追加の抗体と合わせてのいずれかで、容器に入れられた凍結乾燥の形態で提供され得る。典型的には、薬学的に許容される担体(例えば、不活性希釈剤)および/またはその成分、例えば、Tris、リン酸または炭酸緩衝液、安定化剤、保存剤、殺生物剤、不活性タンパク質、例えば血清アルブミン等もまた含まれ(典型的には、混合するための別個の容器に入れられて)、そして追加の試薬も含まれる(また、典型的には、別個の容器に入れられて)。特定のキットにおいては、典型的には別個の容器内に存在する、CD74特異的Abに結合することができる2次抗体も含まれる。2次抗体は、典型的には、標識にコンジュゲートされ、そして本発明のCD74特異的抗体と同様の様式で処方される。上記および本明細書の他箇所に記載の方法を用いる場合、CD74特異的抗体は、癌/腫瘍細胞のサブセットを定義し、そのような細胞および関連腫瘍組織を特徴づけるのに使用され得る。
【0286】
抗イディオタイプ抗体
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載される本発明のCD74特異的抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0287】
抗イディオタイプ(Id)抗体は、一般に抗体の抗原結合部位に関連する固有の決定基を認識する抗体である。抗Id抗体は、CD74特異的モノクローナル抗体の供給源と同じ種および遺伝子型の動物を、抗Idを調製したいモノクローナル抗体で免疫刺激することによって調製され得る。免疫刺激された動物は、典型的には、免疫刺激抗体のイディオタイプ決定基を、これらのイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することにより、認識し応答することができる。そのような抗体は、例えば、US 4,699,880に記載されている。そのような抗体は、本発明のさらなる特徴である。
【0288】
抗Id抗体はまた、さらに別の動物において、いわゆる抗-抗Id抗体を産生する免疫応答を誘導する「免疫原」として使用され得る。抗-抗Id抗体は、抗Id抗体を誘導した最初のmAbとエピトープ的に同一であり得る。したがって、mAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を使用することにより、同一特異性の抗体を発現する他のクローンを同定することが可能である。抗Id抗体は、任意の適当な技術、例えば本発明のCD74特異的抗体に関して本明細書の他箇所に記載されている技術によって改変(それによって、抗Id抗体の変異体が産生される)および/または誘導体化され得る。例えば、モノクローナル抗Id抗体は、担体、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)にカップリングされ、BALB/cマウスを免疫刺激するのに使用され得る。これらのマウス由来の血清は、典型的には、最初の/親のCD74特異的抗体と、同一でなくとも類似の結合特性を有する抗-抗Id抗体を含む。
【0289】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例はさらなる限定を構成するものではない。
【実施例】
【0290】
実施例1
CD74v1およびCD74v2、His-CD74v1およびHis-CD74v2ならびにCD74del2-36v1およびCD74del2-36v2発現ベクターの構築
ヒトCD74
バリアント1(CD74v1)(Genbank配列NP_001020330と同じ)およびヒトCD74
バリアント2(CD74v2)(Genbank配列AAV383110330と同じ)のコード配列を合成により作製し、十分にコドン最適化を行った(GeneArt, Regensburg, Germany)。この構築物を哺乳動物発現ベクターpEE13.4(Lonza Biologics, Slough, UK)にクローニングした。これらの構築物をpEE13.4CD74v1およびpEE13.4CD74v2と命名した。細胞表面上でのCD74の発現レベルを増強するため、細胞質ER保留シグナル(aa2〜36)を、記載されているようにして取り除いた(Khalil H et al., J Cell Sci 2005; 118: 4679-4687)。この目的で、pEE13.4CD74v1およびpEE13.4CD74v2からCD74コード領域を増幅し、その過程でaa2〜36コード領域を取り除くことによって新たな構築物を作製した。これらのPCR断片をpEE13.4に再クローニングし、全体を配列決定してこの新しい構築物の正確性を確認した。これらの発現ベクターをpEE13.4CD74v1del2-36およびpEE13.4CD74v2del2-36と命名した。
【0291】
ヘキサマーN末端Hisタグのコード領域を導入する過程で、pEE13.4CD74v1およびpEE13.4CD74v2からCD74v1(aa 73〜296)およびCD74v2(aa 73〜232)の細胞外ドメインのコード領域を、PCRによって増幅した。このPCR断片を、高効率シグナルペプチド(HMM38[Barash S et al., Biochem Biophys Res Commun 2002; 294: 835-842)のコード領域を含む哺乳動物発現ベクターpEE12.4(Lonza Biologics)にクローニングした。この発現ベクターの全体を配列決定し、pEE12.4SPHisCD74v1およびpEE12.4SPHisCD74v2と命名した。得られるタンパク質をHisCD74v1およびHisCD74v2と命名した。
【0292】
CD74
バリアントのタンパク質配列は、
図1に示されている。
【0293】
実施例2
HEK-293F細胞およびCHO-S細胞における一過的発現
Freestyle(商標)293-F(懸濁成長および化学的に定義されたFreestyle培地に適合されたHEK-293サブクローン;HEK-293F)細胞をInvitrogenから入手し、293fectin(Invitrogen)を製造元の指示に従い用いてpEE13.4CD74v1、pEE13.4CD74v2、pEE13.4CD74del2-36v1、pEE13.4CD74del2-36v2、pEE12.4SPHisCD74v1またはpEE12.4SPHisCD74v2をトランスフェクトした。
【0294】
pEE12.4SPHisCD74v1またはpEE12.4CD74v2の場合、細胞培養上清を収集し、そして以下に記載の通りに、可溶性のHisCD74v1またはHisCD74v2を金属親和性クロマトグラフィーによって精製した。
【0295】
pEE13.4CD74v1、pEE13.4CD74v2、pEE13.4CD74v1del2-36またはpEE13.4CD74v2del2-36の場合、細胞をトランスフェクションの1〜2日後に収集し、これをその後のアッセイにおいて使用した。これらの細胞をTH2013-CD74v1、TH2013-CD74v2、TH2013-CD74v1del2-36およびTH2013-CD74v2del2-36と命名した。
【0296】
懸濁培養に適合されたCHO-K1SV細胞株(CHO-S、Invitrogen)に、製造元のプロトコルに従いCHO-Max試薬(Invitrogen)を用いてpEE13.4CD74v1、pEE13.4CD74v2、pEE13.4CD74v1del2-36またはpEE13.4CD74v2del2-36をトランスフェクトした。トランスフェクトしたCHO-S細胞をトランスフェクションの1〜2日後に収集し、これをその後のアッセイにおいて使用した。これらの細胞をTC2013-CD74v1、TC2013-CD74v2、TC2013-CD74v1del2-36およびTC2013-CD74v2del2-36と命名した。
【0297】
抗体を発現させる場合、実施例9に記載される適当な重鎖および軽鎖ベクターを、上記のようにしてHEK-293F細胞において共発現させた。
【0298】
実施例3
NS0細胞における安定的発現
pEE13.4CD74v1del2-36プラスミドをNS0細胞(Lonza Biologics)にトランスフェクトした。記載されているように(Bebbington CR et al., Biotechnology (N Y) 1992; 10: 169-175)、細胞を、25μMメチルスルホキシミン(MSX)の存在下、グルタミン非含有細胞培養培地中で培養することにより、発現ベクターの安定的組み込みについて選択した。CD74発現細胞をプールしこれを準安定集団として使用するかまたは個々の安定なクローンを選択し使用した。これらの細胞をN2013del-v1-012と命名した。
【0299】
実施例4
Hisタグ付きCD74の精製
HisCD74v1およびHisCD74v2をHEK-293F細胞において発現させた。このタンパク質中のHisタグは、固定された金属親和性クロマトグラフィーによる精製を可能にする。この過程で、クロマトグラフィー樹脂に固定したキレーターに、Co
2+カチオンをチャージする。CD74ECDHisを含有する上清を、この樹脂と共にバッチ式で(すなわち、溶液中で)インキュベートする。Hisタグ付きタンパク質は樹脂ビーズに強く結合し、培養上清中に存在する他のタンパク質は強く結合しない。インキュベーションの後、ビーズを上清から回収し、カラムに充填する。このカラムを、弱く結合したタンパク質を取り除くために洗浄する。強く結合したCD74ECDHisタンパク質を、その後、HisのCo
2+に対する結合と競合するイミダゾールを含む緩衝液により溶出させる。溶出物は、脱塩カラム上での緩衝液の交換によってタンパク質から取り除く。
【0300】
実施例5
トランスジェニックマウスの免疫刺激手順
抗体HuMab-CD74-005、HuMab-CD74-006、HuMab-CD74-008およびHuMab-CD74-011を、4つの遺伝子改変を有するHCo17 HuMAbマウス(ヒトモノクローナル抗体;Medarex Inc., San Jose, CA, USA)の免疫刺激により得た。これらのマウスは、ヒトIg重鎖およびヒトIgκ軽鎖についてトランスジェニックでありかつマウス重鎖およびマウスκ軽鎖遺伝子座が二重ノックアウトされたものであった。これらの破壊は、完全にマウスである任意の抗体の発現を防止する。異なる系統も使用した;HCo12、HCo12-BALB/c、HCo17およびHCo20。これらは、ヒトVH(重鎖の可変領域)およびVL(軽鎖の可変領域)の遺伝子の数が相違する。HCo12-BALB/cマウスは、KCo5-BALB/c(κ軽鎖トランスジェニック)との異種交配によって得た。
【0301】
6つの異なる免疫原を免疫刺激に使用した:TH2013-CD74v1del2-36、TH2013-CD74v2del2-36、N2013del-v1-012、SU-DHL-4細胞(ヒトB細胞リンパ腫細胞株)および担体タンパク質KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)にカップリングされたHisCD74v1またはHisCD74v2。マウスを2週間ごとに、5×10
6個の細胞または15μgのタンパク質で交互に、免疫刺激した。4回の腹腔内(IP)および4回の皮下(SC)の、合計8回の免疫刺激を行った。
【0302】
抗体-005、-006および-008は、HCo17マウスを、5×10
6個のTH2013-CD74v1del2-36細胞によるIPと15μgのHisCD74v2によるSCで交互に免疫刺激することにより得た。最初の免疫刺激は、完全フロイントアジュバント(CFA;Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)中の細胞を用いてIPで行い、その後は不完全フロイントアジュバント(IFA)(タンパク質、SC)またはPBS(細胞、IP)を用いて免疫刺激を行った。
【0303】
抗体-011は、HCo17マウスを、5×10
6個のTH2013-CD74v1del2-36細胞によるIPと15μgのHisCD74v1によるSCで交互に免疫刺激することにより得た。最初の免疫刺激は、CFA中のタンパク質を用いて行い(IP)、その後はIFA(タンパク質、SC)またはPBS(細胞、IP)を用いて免疫刺激を行った。
【0304】
血清力価が十分になったことが確認されたら(少なくとも2回連続の隔週のスクリーニングイベントにおいて1/50以下の血清の希釈物が実施例6に記載される抗原特異的スクリーニングアッセイで陽性を示したら)、マウスをさらに2回、融合の4および3日前に、100μL PBS中の10μg His CD74タンパク質を用いて静脈内(IV)でブースト刺激した。
【0305】
実施例6
均質系抗原特異的スクリーニングアッセイ
マウス血清およびハイブリドーマ上清を、抗CD74抗体の存在について、高スループットスクリーニング(HTS)であるFluorometric Micro Volume Assay Technology(FMATアッセイ;Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)によって分析した。このアッセイにおいて、TC2013-CD74v1del2-36およびTC2013-CD74v2del2-36細胞を、ヒト抗CD74抗体の検出に使用した。野生型CHO-S細胞を、非特異的結合の測定に使用した。サンプルを細胞に添加し、CD74に結合させた。その後、HuMabの結合を、蛍光コンジュゲート(ヤギ抗ヒトIgG-Cy5;Jackson Immunoresearch)を用いて検出した。以下に記載される、Alexa-647で標識したマウス抗ヒトCD74抗体(Becton Dickinson;IgG2a,κ;クローンM-B741)を陽性対照として使用し、Alexa-647で標識したマウスクロムピュア(chrompure)(Jackson Immunoresearch)を陰性対照として使用した。
【0306】
抗体を、以下の手順を用いて、Alexa Fluor(登録商標)647 Dye(Molecular Probes)、以降「Alexa-647」で標識した。
【0307】
1 mg/mL IgGの抗体溶液を0.1M 炭酸ナトリウム緩衝液 pH 9.0(NaHCO
3、Riedel de Haen、カタログ番号31437;)中で調製した。Alexa-647は、1本のバイアル(Alexa Fluor(登録商標)647カルボン酸、スクシンイミジルエステル(1 mg/バイアル)、Molecular Probes, Leiden, The Netherlands、カタログ番号A-20006)に100μL DMSO(Sigma、カタログ番号D2438)および900μL 0.1M炭酸ナトリウム緩衝液 pH9.0を添加することによって新たに調製した。以下に示されるようにして計算した5倍モル過剰のAlexa-647をIgG溶液に添加し、室温の暗所で1時間、回転させながらインキュベートした。標識後、未結合のAlexa-647を、PD-10カラム(Amersham Biosciences、カタログ番号17-0851-01)を使用して、Tris緩衝液 pH 8.0(50 mM Tris[Trizma塩基、Sigma、カタログ番号T-6066];100 mM NaCl[Riedel de Haen、カタログ番号31437];0.01%アジ化ナトリウム[NaN
3、Riedel de Haen、カタログ番号13412])によって取り除いた。IgG溶液に添加するAlexa-647の量は、式:添加するAlexa-647の容積(μL) = (IgG濃度(mg/mL)/MW IgG(Da)
* 比
* 容積
* MW Alexa-647
* 1,000)を用いて計算した。
【0308】
MW IgG = 150,000 Da;比は、使用されるAlexa-647のモル過剰である;容積は標識されるサンプルの容積である(mL);MW Alexa-647 = 1250 Da。
【0309】
タンパク質濃度(IgG)および標識度(D.O.L.)は、Ultrospec 2100 Pro(Amersham Biosciences)においてOD 280 nmおよび650 nmを測定することによって決定した。IgG濃度(mg/mL)は、式:IgG濃度 = [A
280 - (0.03
* A
650)]/IgG消衰係数を用いて計算した。
【0310】
D.O.L.は、式:D.O.L. = A
650/239,000/[A
280 - (0.03
* A
650)/(IgG消衰係数
* MW IgG)]を用いて計算した。239,000は、λ
maxでのAlexa-647の消衰係数で単位がcm
-1M
-1である;0.03は、補正率(A
280の遊離色素/A
maxの遊離色素)である(両方とも製造元から提供される)。ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma、カタログ番号A 2934)を0.1%(w/v)の終濃度になるよう10%(w/v)溶液から添加し、標識した抗体を5℃で保管した。いくつかの融合物のスクリーニングにおいて、抗ヒトIgG-Cy5.5に加えて、ヒト抗体を検出するために、抗マウスIgG Cy5.5標識コンジュゲートを使用し、特定のキメラ抗体を検出した。サンプルを、Applied Biosystems 8200 Cellular Detection System(8200 CDS)を用いてスキャンし、「カウント×蛍光」を読み取り値として使用した。
【0311】
実施例7
HuMabハイブリドーマの作製
(上記のように定義される)十分な抗原特異的力価を確立したHuMAbマウスを屠殺し、脾臓ならびに腹部大動脈および大静脈に隣接するリンパ節を回収した。マウス骨髄腫細胞株への脾細胞およびリンパ節細胞の融合は、CEEF 50 Electrofusion System(Cyto Pulse Sciences, Glen Burnie, MD, USA)を基本的に製造元の指示に従い用いる電気融合により行った。融合細胞を、HyQ mADCF-Mab(Perbio)中に10% Fetal Clone I Bovine血清(Perbio)、1 mMピルビン酸ナトリウム(Cambrex)、0.5 U/mLペニシリン、0.5 U/mLストレプトマイシン(Cambrex)、50μM 2-メルカプトエタノール(Invitrogen)、600 ng/mLインターロイキン6(IL-6)(Strathmann)、1×HAT(Sigma)および0.5 mg/mLカナマイシン(Invitrogen)を含む融合培地に播種した。10日後、上清を収集し、細胞を、HyQ mADCF-Mab中に10% Fetal Clone I Bovine血清、0.5 U/mLペニシリン、0.5 U/mLストレプトマイシン、600 ng/mL IL-6および1×proHT(Cambrex)を含む収集培地で洗浄した。ハイブリドーマ培養物の上清を、TC2013-CD74v1del2-36細胞およびTC2013-CD74v2del2-36細胞における1次FMATスクリーニングアッセイによってスクリーニングし、上記のヒト(またはキメラ)抗CD74抗体を産生するハイブリドーマを検出した。上位60の1次ウェルを、40% CloneMedia(Genetix, Hampshire, UK)および60% HyQ 2x完全培地(Hyclone, Waltham, USA)から構成される半固体培地に播種した。各1次ウェルからGenetix黒色6ウェルプレートの2つのウェルに播種を行った。各ウェルから33個のサブクローンを、ClonePixシステム(Genetix)を用いて採集した。これらのサブクローンを、収集培地中に採集した。7日後、これらのサブクローンの上清を、再度、CD74特異的ヒトIgG結合についてスクリーニングし、ヒトIgG濃度をOctet(Fortebio, Menlo Park, USA)を用いて測定した。各1次ウェルの最も良いサブクローンを、600 ng/mL IL-6、0.5 U/mLペニシリン、0.5 U/mLストレプトマイシンおよび1×proHTのみを含む展開培地中で展開させた。このサブクローンを1つの96ウェルプレートウェルから1つの24ウェルプレートウェルへ、4つの24ウェルプレートウェルへ、6つの6ウェルプレートウェルへ、Hyperflask(小規模生産)へと展開させた。Hyperflaskの上清をCD74特異的ヒトIgG結合についてスクリーニングした。このプロセスによって得られたクローンをPC2013と命名した。
【0312】
実施例8
精製された抗体の質量分析
6ウェルまたはHyperflask段階の0.8 mLの抗体含有上清の小アリコートを、Sciclone ALH 3000ワークステーション(Caliper Lifesciences, Hopkinton, USA)においてProtein G樹脂を含むPhyTipカラム(PhyNexus Inc., San Jose, USA)を用いて精製した。このPhyTipカラムは、緩衝液を置き換えたこと以外は製造元の指示に従い使用した。PBS(B.Braun, Medical B.V., Oss, Netherlands)を結合緩衝液として使用し、0.1M Glycine-HCl pH 2.7(Fluka Riedel-de, Haen, Buchs, Germany)を溶出緩衝液として使用した。精製後、サンプルを2M Tris-HCl pH 9.0(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)を用いて中和した。あるいは、いくつかの場合では、Protein A親和性カラムクロマトグラフィーを用いてより多量の培養上清を精製した。
【0313】
精製後、サンプルを384ウェルプレート(Waters、100 uL四角ウェルプレート、カタログ番号186002631)にプレートした。サンプルを、37℃でO/N、N-グリコシダーゼF(Rocheカタログ番号11365177001)を用いて脱グリコシル化した。DTT(15 mg/mL)を添加し(1μL/ウェル)、そして37℃で1時間インキュベートした。サンプル(5または6μL)を、Acquity UPLC(商標)(Waters, Milford, USA)においてBEH300 C18、1.7μm、2.1×50 mmカラムを用いて、60℃で脱塩した。どちらも0.1%ギ酸(Fluka、カタログ番号56302、Buchs, Germany)を含むMQ水およびLC-MS等級のアセトニトリル(Biosolve、カタログ番号01204101、Valkenswaard, The Netherlands)を、溶出液AおよびBとして使用した。正イオンモード稼働のmicrOTOF(商標)質量分析器(Bruker, Bremen, Germany)において、飛行時間型エレクトロスプレーイオン化の質量スペクトルをオンライン記録した。分析の前に、ESチューニングミックス(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)を用いて900〜3000 m/zスケールを較正した。質量スペクトルを、DataAnalysis(商標)ソフトウェアv3.4(Bruker)により5〜80 kDaの間の分子量を探索するMaximal Entropyアルゴリズムを用いて逆重畳積分した。
【0314】
逆重畳積分の後、重複する抗体を見つけるためにすべてのサンプルにおいて得られた重鎖および軽鎖の質量を比較した。重鎖の比較では、C末端リジン変異体の存在の可能性を考慮した。これにより、固有の抗体のリストを得た。ここで言う固有は、重鎖および軽鎖の固有の組み合わせと定義される。重複する抗体が見出された場合、他の試験の結果を使用して、どちらの物質を用いて実験を継続するかを決定した。
【0315】
41個の抗CD74ハイブリドーマの重鎖および軽鎖の分子量の質量分析により、18個の固有の抗体(固有の重鎖/軽鎖の組み合わせ)を得た。
【0316】
実施例9
CD74特異的HuMabの可変ドメインの配列分析および発現ベクターへのクローニング
5×10
6個のハイブリドーマ細胞から抗CD74 HuMab抗体の総RNAを調製し、そしてSMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を製造元の指示に従い用いて100 ngの総RNAから5'-RACE-相補DNA(cDNA)を調製した。V
H(重鎖の可変領域)およびV
L(軽鎖の可変領域)をコードする領域を、PCRによって増幅した。抗体006、008および011の増幅されたPCR産物を、Zero Blunt PCRクローニングキット(Invitrogen)を用いてpCR-Blunt II-TOPOベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0317】
抗体005の増幅されたV
HおよびV
LのPCR産物は、G1fおよびκ定常ドメインをコードするpcDNA3.3ベクター(Invitrogen)にクローニングした。各HuMabにつき、16個のV
Lクローンおよび8個のV
Hクローンを配列決定した。(質量分析によって決定された)同じ抗体のハイブリドーマ由来物質の質量と一致する推定重鎖および軽鎖質量を有するクローンを、さらなる研究および発現のために選択した。得られた配列を本明細書の配列表および
図2に示す。
【0318】
表1および表2(以下)は、抗体の配列情報および最も相同性の高い生殖系列配列についての概要を示している。
【0319】
(表1)重鎖の相同性
【0320】
(表2)軽鎖の相同性
【0321】
(表3)配列表の説明
【0322】
実施例10
抗体の精製
培養上清を0.2μmのデッドエンドフィルターでろ過し、5 mLプロテインAカラム(rProtein A FF、Amersham Bioscience)に充填し、そして0.1Mクエン酸-NaOH、pH 3で溶出させた。この溶出物を直ちに2M Tris-HCl、pH 9で中和し、そして12.6 mM NaH
2PO
4、140 mM NaCl、pH7.4(B.Braun)に対してO/Nで透析した。透析後、サンプルを0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌ろ過した。純度をSDS-PAGEにより決定し、濃度を比濁法および280 nmの吸光度により測定した。精製された抗体を小分けして-80℃で保管した。解凍後は、精製された抗体のアリコートを4℃で維持した。質量分析を行い、実施例9に記載されるハイブリドーマによって発現された抗体重鎖および軽鎖の分子量を同定した。
【0323】
実施例11
ELISAによって決定された、2つのCD74アイソフォームの組換え細胞外ドメインに対する、およびFACSによって決定された、Raji細胞上の細胞性CD74に対する、CD74特異的HuMab抗体の結合
CD74の2つアイソフォームに対する抗CD74 HuMab抗体の結合を、ELISAによって(コーティングされたCD74の組換え細胞外ドメイン)、およびRaji細胞(ATCC, Manassas, VA)上の細胞性CD74に対する結合を、FACS分析によって、測定した。
【0324】
ELISAプレート(Greiner BioOne)を、4℃でO/N、2μg/mL、ウェルあたり100μLの、PBS(B. Braun Melsungen AG)中の組換えCD74v1またはCD74v2でコーティングした。これらのアイソフォームの配列および作製については上記の通りである。ELISAウェルを、0.05% Tween-20を含むPBS(PBST)で3回洗浄し、空にし、そしてPBS中1%(w/v)BSAフラクションV(Roche)を用いてRTで1時間、振盪(300 rpm)しながらブロックし、そして空にした。その後、100μLの抗CD74 HuMab抗体を、PBST(アッセイ緩衝液)中0.2%(w/v)BSAフラクションVに添加して連続希釈し、これをRTで90分間振盪しながらインキュベートした。ELISAプレートをPBSTで3回洗浄し、空にし、そして結合したHuMab抗体を、アッセイ緩衝液中のHRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(100μL;1:5,000;Peroxidase Affinipure Goat抗ヒトIgG、F(ab')
2 Fragment Specific[min X Bov, Hrs, Ms Sr Prot];Jackson Immunoresearch)を用いて検出し、RTで90分間振盪しながらインキュベートした。プレートをPBSTで3回洗浄し、空にし、そして100μL ABTS溶液(50 ml ABTS緩衝液[Roche]および1つのABTSタブレット[50 mg; Roche])と共にインキュベートした。暗所、RTで30分間のインキュベーションの後、この反応を、ウェルあたり100μLのシュウ酸(2%[w/v])を添加することによって停止させた。プレートを、ELISAリーダー(Biotek Instruments, EL808 Absorbance Microplate Reader)においてOD 405 nmで測定した。
【0325】
FACS分析では、100μL FACS緩衝液(0.1% BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを補充したPBS)中10
5個の細胞を、96ウェル丸底プレートの各ウェルに播種した。細胞をスピンダウンし(1200 rpm、4℃、5分)、上清を廃棄した。連続希釈した抗CD74 HuMab抗体を添加し(100μL)、氷上で1時間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で洗浄し、上清を廃棄し、そしてFACS緩衝液で1:100希釈した100μLのR-フィコエリトリン標識ヤギ抗ヒトIgG(R-Phycoerythrin AffiniPure F(ab')
2 Frag Gt Anti-Human IgG, Fcγ Frag Spec [min X Bov, Hrs, Ms Sr Prot]; Jackson Immunoresearch)を添加した。(暗所の)氷上で1時間後、細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、上清を廃棄し、そしてHuMab抗体の特異的結合をFACS Canto II(BD Biosciences)においてフローサイトメトリーにより検出した。
【0326】
アイソタイプ対照Ab IgG1-b12を陰性対照として使用した。結合曲線を、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いる非線形回帰(勾配の変化するシグモイド型用量応答)を用いて分析した。
【0327】
図3は、HuMab-CD74-006および-011がCD74細胞外ドメインの両方のアイソフォームに高い親和性(210〜344 ng/mLの間のEC
50値)で結合したことを示している。HuMab-CD74-008は、中程度の親和性(759〜1391 ng/mLの間のEC
50値)で両方のアイソフォームに結合した。
【0328】
図4は、HuMab-CD74-006および-011がRaji細胞により発現される細胞性CD74にも高い親和性(150〜200 ng/mLの間のEC
50値)で結合したことを示している。HuMab-CD74-008および-005は、中程度の親和性で細胞性CD74に結合した(EC
50値は、最大結合に達しなかったために決定することができなかった)。
【0329】
表4は、ELISAによるCD74v1およびCD74v2の細胞外ドメインに対する結合ならびにFACSによるRaji細胞上の細胞性CD74に対する結合に関する、CD74特異的HuMab抗体のEC
50値を示している。
【0330】
(表4)ELISAによって決定された、CD74v1およびCD74v2の細胞外ドメインに対する、ならびにFACSによって決定された、Raji細胞上の細胞性CD74に対する、CD74特異的HuMab抗体の結合のEC
50値の概要。すべてのHuMab抗体は、関連する(上記の)重鎖および軽鎖の発現ベクターを一過的にコトランスフェクトしたHEK293F細胞によって産生されたものである。
EC
50値はng/mL単位である
nd - 算出できず
nt - 試験されず
【0331】
実施例12
カニクイザル組織に対する抗CD74 HuMab抗体の交差反応性
CD74特異的HuMab抗体がカニクイザルCD74に結合する能力を、免疫組織化学によって試験した。抗CD74 HuMab抗体を用いる免疫組織化学は、CD74発現が(濾胞性)Bリンパ球およびマクロファージで予想されることから、凍結させたヒト扁桃およびカニクイザルリンパ節組織上で行った。凍結させた組織切片を切断し(4〜6μm厚)、アセトン中で固定した。HuMab抗体は、ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-FITC(Fab)(Protos)とのインキュベーション(Humabと1:1比)によって、フルオレセイン-イソチオシアネート(FITC)と複合体化させた。HuMabの染色(1μg/mL)の前に、内因性のビオチン、ペルオキシダーゼ(PO)および免疫グロブリンに関して組織をブロックした。HuMab-Fab-FITC複合体を、その後のウサギ抗FITC(Invitrogen)(1:1000希釈)およびPOコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(Powervision、[rb IgG]-PO;未希釈)とのインキュベーションによって検出した。PO活性は、基質として赤色を生じるアミノ-エチル-カルバゾール(AEC)を用いて可視化させ、そして核は、ヘマトキシリン(青色)によって可視化させた。組織染色物を光学顕微鏡(Axioskop-2 plus)で検査し、Axiocamカメラによってデジタル画像に変換し、そしてデジタル画像として保存した。
【0332】
図5は、HuMab-CD74-006および-011が、マクロファージおよび濾胞性B細胞の染色によって示されているように(アイソタイプ対照に対する染色は陰性である)、カニクイザルCD74との交差反応性を示したことを示している。カニクイザルCD74との交差反応性の程度は、ヒト組織と比較してカニクイザル組織の染色の強度が低くなっていることによって示されるように、HuMab-CD74-006の方が-011よりも小さかった。
【0333】
実施例13
ADCCおよびCDCの誘導
CD74特異的HuMab抗体によるADCCの誘導を、
51Cr放出アッセイにおいて試験した。簡潔に説明すると、Raji細胞を100μCiの
51Crで標識し、これを標的細胞として使用した。軟膜から単離した末梢血単核細胞をエフェクター細胞として使用した。標的細胞を抗CD74 HuMab抗体と共にプレインキュベートし(RT、30分間)、エフェクター対標的比が100:1となるようエフェクター細胞を添加し、そして37℃、5% CO
2、O/Nでインキュベートした。上清への
51Crの放出を、ガンマカウンターで測定した。抗CD74 HuMab抗体によるADCCの有意な誘導は検出されなかった。
【0334】
抗CD74 HuMab抗体によるCDCの誘導は、ヨウ化プロピジウム法を用いて試験した。簡潔に説明すると、Raji細胞を抗CD74 HuMab抗体と共にプレインキュベートし(RT、15分間)、正常ヒト血清を終濃度20%となるよう添加し、そして37℃、5% CO
2で45分間インキュベートした。プレートを氷上に置き、反応を停止させた。ヨウ化プロピジウムを添加し、細胞をFACS分析によって分析した。抗CD74 HuMab抗体によるCDCの有意な誘導は検出されなかった。
【0335】
実施例14
抗κ-ETA'アッセイにおける抗CD74 HuMab抗体による抗体媒介性のインターナリゼーションおよび細胞殺傷
抗体-薬物コンジュゲートアプローチにおける抗CD74 HuMab抗体の適性を評価するため、κ指向性シュードモナス内毒素A(抗κ-ETA')を用いる汎用、インビトロ、細胞ベースの殺傷アッセイを構築した。このアッセイにおいて、高親和性の抗ヒトκ軽鎖ドメイン抗体および短縮形態のシュードモナス内毒素AプラスKDEL保留モチーフからなる構築物を使用した。インターナリゼーションにより、抗κドメイン抗体-ETA'構築物はタンパク質分解およびジスルフィド結合の還元を起こし、触媒ドメインと結合ドメインに分離する。触媒ドメインは、KDEL保留モチーフを介してゴルジ体から小胞体に輸送され、その後にサイトゾルに移行し、そこでタンパク質合成を阻害し、アポトーシスを誘導すると考えられている(Kreitman RJ. BioDrugs 2009; 23(1): 1-13)。
【0336】
抗体媒介性のインターナリゼーションおよび毒素による細胞殺傷を、Raji細胞を用いて、異なる抗CD74 HuMab抗体に関して試験した。Raji細胞表面に発現されるCD74分子の数を、QIFIKIT(登録商標)法(Dako, Glostrup, Denmark)を用いて、細胞あたり10
4個の分子と概算した。細胞培養培地中のウェルあたり10
4個の細胞を96ウェル組織培養プレート(Greiner Bio-one)に播種した。プレートを37℃で1時間インキュベートし、細胞を馴染ませた。この毒素のインターナリゼーションおよび毒素による殺傷を実現する抗CD74 HuMab抗体を同定するため、抗体の非存在下では非特異的な細胞死を誘導しなかった固定濃度(ウェル中1μg/mLの終濃度)の抗κ-ETA'を、滴定量の抗CD74 HuMab抗体と共に30分間プレインキュベートし、その後に細胞に添加した。3日後、生存細胞の量を、AlamarBlue(BioSource International, San Francisco, US)を製造元の指示に従いウェルあたり10μL添加して定量した。37℃で4時間のインキュベーションの後、標準的なAlamarBlueの実験設定でEnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer, Turku, Finland)を用いて蛍光をモニターした。抗κ-ETA'と共にプレインキュベートされたアイソタイプ対照抗体(IgG1-b12)を陰性対照として使用した。スタウロスポリン(Sigma-Aldrich)を、バックグラウンドシグナルを決定するための対照として使用し、終濃度1μg/mLを細胞に添加した。
【0337】
生存率(%)は、以下のようにして計算した:
(FL
処理 - FL
バックグラウンド)/(FL
対照 - FL
バックグラウンド) × 100%
FL
対照 = 未処理ウェルからの蛍光
FL
バックグラウンド = スタウロスポリン処理ウェルからの蛍光
【0338】
図6および表5は、すべての抗κ-ETA'プレインキュベート抗CD74 HuMab抗体が用量依存的な様式でRaji細胞を殺傷することができたことを示している。抗κ-ETA'プレインキュベートHuMab-CD74-006、-011、-005および-008は、効果的な殺傷力を誘導した(25〜250μg/mLの間のEC
50および0〜15の間の最小生存率(%))。抗κ-ETA'プレインキュベート対照mAbであるIgG1-b12は、細胞殺傷を誘導しなかった。
【0339】
(表5)抗κ-ETA'プレインキュベート抗CD74 HuMab抗体によるRaji細胞の処理後のEC
50値および細胞生存のパーセンテージの概要。示されているデータは、1つの代表的な実験において測定されたEC
50値(μg/mL)および抗κ-ETA'プレインキュベート抗CD74 HuMab抗体により処理されたRaji細胞の最小生存率である。
a)算出できず
【0340】
実施例15
CD74特異的ADCの調製
HuMab-CD74-005、HuMab-CD74-006、HuMab-CD74-011および陰性対照であるIgG1-b12を、HEK-293F細胞において一過的に産生させた。これらの抗体を標準的手順に従うプロテインAクロマトグラフィーによって精製し、最終的におよそ263 mgの精製されたHuMab-CD74-005、165 mgのHuMab-CD74-006および720 mgのHuMab-CD74-011を得た。得られたコンジュゲート抗体の量が表6に示されている。文献(Sun et al. (2005) Bioconjugate Chem. 16: 1282-1290; McDonagh et al., (2006) Protein Eng. Design Sel. 19: 299-307; Alley et al., (2008) Bioconjugate Chem. 19: 759-765)に記載された手順に従い、薬物-リンカーvcMMAEまたはmcMMAFを、還元された抗体のシステインにアルキル化結合させた。反応は、過剰なN-アセチルシステインの添加によって停止させた。任意の残留する未コンジュゲート薬物を透析ろ過によって取り除き、最終的なCD74特異的抗体薬物コンジュゲートをPBSで処方した。
【0341】
その後、このCD74特異的抗体薬物コンジュゲートを、(280 nmの吸光度により)濃度について、逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)および疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により薬物対抗体比(「DAR」)について、(逆相クロマトグラフィーにより)未コンジュゲート薬物の量について、(サイズ排除クロマトグラフィー、SEC-HPLCにより)%凝集について、ならびに(Limulus Amebocyte Lysate(LAL)内毒素試験により)内毒素レベルについて、分析した。その結果が表7に示されている。
【0342】
(表6)得られたADCの量
【0343】
(表7)抗体-薬物コンジュゲートの分析
*ピークの同時溶出のためDARを割り当てることができなかった。
【0344】
実施例16
ELISAによって決定された、CD74v1の組換え細胞外ドメインに対する抗CD74 ADCの結合
CD74に対するCD74特異的ADCの結合をELISA(コーティングされたCD74v1の組換え細胞外ドメイン)によって測定し、これを未コンジュゲートCD74特異的 HuMab抗体の結合と比較した。
【0345】
ELISAプレート(Greiner BioOne)を、4℃でO/N、2μg/mL、ウェルあたり100μLの、PBS(B. Braun Melsungen AG)中の組換えCD74ECDHisでコーティングした。ELISAプレートを空にし、振盪(300 rpm)しながらRTで1時間、0.05% Tween-20を含む200μL/ウェルのPBS(PBST)でブロックし、300μLのPBSTで3回洗浄し、そして空にした。その後、100μLの抗CD74 ADCまたは未コンジュゲートCD74特異的HuMab抗体をPBSTに添加して連続希釈し、これをRTで2時間振盪しながらインキュベートした。ELISAプレートをPBSTで洗浄し、そして空にした。結合した抗CD74 ADCおよび未コンジュゲートHuMab抗体を、PBST中のHRPコンジュゲートマウス抗ヒトIgG1(100μL;0.015μg/mL;Sanquin;# M1328)の添加および振盪しながらRTで2時間のインキュベーションによって検出した。プレートをPBSTで洗浄し、空にし、そして100μL ABTS溶液(50 ml ABTS緩衝液[Roche]および1つのABTSタブレット[50 mg; Roche])と共にインキュベートした。暗所で振盪しながらRTで30分間のインキュベーションの後、この反応を、ウェルあたり100μLのシュウ酸(2%[w/v]; Riedel de Haen)と共に暗所で振盪しながら10分間インキュベーションを行うことによって停止させた。プレートを、ELISAリーダー(Biotek Instruments, EL808 Absorbance Microplate Reader)においてOD405 nmで測定した。
【0346】
無関係の抗原に結合する抗体であるIgG1-b12を陰性対照として使用した(未コンジュゲートのものおよびADC形式のものの両方)。結合曲線を、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いる非線形回帰(勾配の変化するシグモイド型用量応答)を用いて分析した。
【0347】
図7の結合曲線により実証されているように、すべての抗CD74 HuMab抗体およびADCは、ELISAにおいて、同様の範囲でCD74v1細胞外ドメインに結合した(0.02〜0.04μg/mLの間のEC
50値)。表8は、CD74の細胞外ドメインに対する結合に関する、CD74特異的HuMab抗体およびADCのEC
50値を示している。
【0348】
(表8)ELISAによって決定された、CD74v1の細胞外ドメインに対するCD74特異的HuMab抗体およびADCの結合のEC
50値の概要。EC
50値はμg/mL単位である。示されているデータは、4回の独立した実験から計算した平均EC
50値である。
【0349】
実施例17
Daudi細胞におけるFACS分析によって決定された、表面発現CD74に対するCD74特異的ADCの結合
表面発現CD74に対する抗CD74 ADCの結合を、Daudi細胞においてFACS分析により測定し、これを未コンジュゲート抗CD74 HuMab抗体の結合と比較した。
【0350】
0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Roche、カタログ番号10735086001)および0.02%アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich、カタログ番号13412)を含む100μLのPBS(FACS緩衝液)中の1×10
5個のDaudi細胞を、96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ番号650101)の各ウェルに播種した。細胞をスピンダウンし(1200 rpm、4℃、3分間)、上清を廃棄した。連続希釈した抗CD74 HuMab抗体またはADCを添加し(100μL)、氷上で30分間インキュベートした。細胞を150μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、そしてFACS緩衝液で1:100希釈した100μLのウサギ抗ヒトIgG-FITC(カタログ番号F0185、Dako)を添加した。(暗所の)氷上で30分間の後、細胞を150μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、そしてHuMab抗体およびADCの特異的結合をFACS Canto II(BD Biosciences)においてフローサイトメトリーにより検出した。
【0351】
無関係の抗原に結合する抗体であるアイソタイプ抗体IgG1-b12を陰性対照として使用した(未コンジュゲートおよびADCとしての両方)。結合曲線を、GraphPad Prism 5ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いる非線形回帰(勾配の変化するシグモイド型用量応答)を用いて分析した。
【0352】
図8は、抗CD74 HuMab抗体およびADCの表面発現CD74に対する結合の結合曲線を示し、表9および10は、そのEC
50値および最大平均蛍光強度を示している。1つを除くすべてのコンジュゲート抗CD74 HuMab抗体が、対応する未コンジュゲートHuMab抗体と同様の親和性でDaudi細胞上の表面発現CD74に結合した。HuMab-CD74-005のvcMMAEコンジュゲートは、未コンジュゲートHuMabよりも高い親和性(低いEC
50値)で結合した。HuMab-CD74-005およびそのmcMMAFコンジュゲートは、HuMab-CD74-006および-011ならびにそれらのコンジュゲートよりも低い親和性で結合した。最大結合は、vcMMAEコンジュゲートHuMab-CD74-006および-011の方が、その対応する未コンジュゲートHuMab抗体よりも低かった。
【0353】
(表9)Daudi細胞におけるFACS分析によって決定された、表面発現CD74に対するCD74特異的HuMab抗体およびADCの結合のEC
50値の概要。EC
50値は、μg/mL単位である。示されているデータは、3回の独立した実験から計算した平均EC
50値である。
【0354】
(表10)Daudi細胞におけるFACS分析によって決定された、10μg/mLのCD74特異的HuMab抗体およびADCの平均蛍光強度の概要。示されているデータは、10μg/mLのHuMab-CD74 mAbおよびADCで測定された平均最大MFI値である。平均最大MFI値は、3回の独立した実験から計算した。
【0355】
実施例18
インビトロ殺傷アッセイにおける抗CD74 ADCによる抗体媒介性のインターナリゼーションおよび細胞殺傷
細胞傷害性を誘導する抗CD74 ADCの能力を決定するため、インビトロの細胞ベースの殺傷アッセイを行った。
【0356】
異なる抗CD74 ADCについて、4つの細胞株の細胞殺傷を試験した。すべての細胞株を、American Tissue Culture Collection(ATCC, Manassas, VA, USA)から得た:Raji(カタログ番号CCL-86)、Daudi(カタログ番号CCL-213)、M4A4(カタログ番号CRL-2914;ヒト細胞株MDA MB 435由来)およびNCI-H747細胞(カタログ番号CCL-252、結腸直腸腺癌転移物由来)。細胞を、100μLの細胞培養培地(DaudiおよびRajiの場合は、10%コズミックウシ血清[Perbio Science Nederland B.V.、カタログ番号SH30087.04]、2 mM L-グルタミン[Lonza、カタログ番号BE17-605F]および1 mMピルビン酸ナトリウム[Lonza、カタログ番号BE13-115E]を補充したRPMI 1640[Lonza、カタログ番号BE12-115F];NCI-H747の場合は、10%コズミックウシ血清、1 mMピルビン酸ナトリウム、0.15%炭酸水素ナトリウム[Lonza、カタログ番号BE17-613E]および0.5%グルコース[Sigma、カタログ番号G8769]を補充したRPMI 1640;そしてM4A4の場合は、10%コズミックウシ血清を補充したDMEM[Lonza、カタログ番号BE12-709F])中で至適濃度(Raji:1×10
4細胞/ウェル;Daudi:1×10
3細胞/ウェル;M4A4:2×10
3細胞/ウェル、NCI-H747 3×10
3細胞/ウェル)となるよう96ウェル組織培養プレート(Greiner Bio-one)に播種し、接着させた。抗CD74 ADCの連続希釈物を添加し、37℃で3日間(Raji、Daudi)または5日間(M4A4、NCI-H747)インキュベートした。生存細胞の量は、AlamarBlue(カタログ番号DAL1100、BioSource International, San Francisco, US)を製造元の指示に従い用いて定量した。蛍光は、標準的なAlamarBlue実験設定でEnVision 2101 Multilabelリーダー(PerkinElmer, Turku, Finland)を用いてモニターした。IgG1-b12(無関係の抗原に結合する抗体)のADCを陰性対照として使用した。スタウロスポリン(Sigma、# S6942)を、最大細胞殺傷を誘導するために使用した。細胞株上のCD74分子の量は、マウスIgG1抗CD74(クローンBy2;Santa Cruz、カタログ番号SC-20062)およびアイソタイプ対照(CLB、カタログ番号M1415)抗体を用いる、製造元の指示に従うQIFIKIT(登録商標)(Dako, Glostrup, Denmark)によって決定した。両方の抗体を、10μg/mLの濃度で使用した。RajiおよびDaudi細胞はその細胞表面上に約20,000個;そしてM4A4細胞は約11,000個のCD74分子を発現すると決定された。
【0357】
図9および表11は、すべての抗CD74 ADCが用量依存的な様式でRaji、DaudiおよびM4A4細胞を殺傷できることを示している。すべてのコンジュゲートのIC
50値は、約6倍低いレベルのCD74を発現するM4A4細胞において約5〜12倍高かった(すなわちより低い効果であった)。NCI-H747細胞は、試験した最高用量のADC(10μg/mL)でのみ殺傷された。HuMab-CD74-006および-011の場合、mcMMAFコンジュゲートが、DaudiおよびRaji細胞の殺傷の誘導に関して、vcMMEAコンジュゲートよりも若干効果的であった(-006:Daudi細胞において3倍低いおよびRaji細胞において5倍低いIC
50;-011:Daudi細胞において2倍低いおよびRaji細胞において4倍低いIC
50)。
【0358】
(表11)抗CD74 ADCによって誘導されたIC
50値および細胞殺傷のパーセンテージの概要。示されているデータは、抗CD74 ADCで処理された示されている細胞株の(10μg/mLの濃度における)平均IC
50値(μg/mL)および平均最大%殺傷である。データは、3回の独立した実験から計算した。細胞殺傷率(%殺傷)は、以下のようにして計算した:
(MFI
未処理 - MFI
抗CD74 ADC処理)/(MFI
未処理 - MFI
スタウロスポリン処理) × 100%。
a)曲線のプラトーレベルに達しなかったため算出できず。
【0359】
実施例19
CD74特異的ADCによるSCIDマウス内のDaudi腫瘍異種移植片の治療的処置
HuMab-CD74-011 ADCのインビボ効果を、SCIDマウスの静脈内(i.v.)形成されたDaudi(バーキットリンパ腫)異種移植腫瘍において決定した。
【0360】
Daudi細胞は、4:1比のgWIZルシフェラーゼ(Aldevron, Fargo, ND, USA)およびpPurベクター(BD Biosciences, Alphen a/d Rijn, The Netherlands)を用いる電気穿孔によってトランスフェクトした。48時間後、安定的にトランスフェクトされたクローン(Daudi-luc)の選択のためにピューロマイシンを添加した。Daudi-luc #1E3細胞を、10%コズミックウシ血清(カタログ番号SH30087.04、Hyclone)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号DE17-603、Cambrex, Germany)、1%ピルビン酸ナトリウムおよび1μg/mLピューロマイシン(カタログ番号P-8833、Sigma, Zwijndrecht, The Netherlands)を補充したRPMI中で培養した。100μL PBS中の2.5×10
6個のDaudi-luc腫瘍細胞をメスSCIDマウスの尾静脈にi.v.注射した。マウスを腫瘍接種の直後に画像化し、その後、第14日から1週間間隔で画像化した。画像化の際、マウスをイソフルランを用いて麻酔し、その後に200μLの10mg/mL TRIS(カタログ番号T60666-1kg、Sigma)中2.5 mgのD-ルシフェリン(酸形態、カタログ番号BT11-1000;Biothema, Haninge, Sweden)を腹腔内(i.p.)投与した。後部側(背面側)からの生物発光画像化(BLI)を、Biospace Imagerにおいて、D-ルシフェリンの投与から10分後、露光時間5分で開始した。解剖学的参照のために白黒画像を作製した。マウスを、腫瘍接種後第21日から、100μL PBS中の60μg(約3 mg/kg)のHuMab-CD74-011および対照抗体(IgG1-b12)、ADCとしておよび未コンジュゲートIgG1としての両方、で週に2度、計4回処置した。処置前に、マウスを、各々が等しい平均BLIシグナルおよび等しい分散(variance)を有する各々7匹のマウスの群に分けた。
【0361】
図10は、HuMab-CD74-011-vcMMAEおよび-mcMMAFの両方がi.v. Daudi-luc腫瘍のサイズの縮小に効果的であったことを示している。
図10に示されるように、未コンジュゲートHuMab-CD74-011の場合に、見かけ上、対照抗体群と比較してより大きな腫瘍成長阻害の傾向があったが、その差異は有意でなかった。
【0362】
実施例20
抗CD74 ADCによるSCIDマウス内のRaji腫瘍異種移植片の治療的処置
抗CD74 ADCのインビボ効果を、SCIDマウスのi.v. Raji異種移植腫瘍モデルにおいて決定した。
【0363】
Raji細胞は、4:1比のgWIZルシフェラーゼ(Aldevron, Fargo, ND, USA)およびpPurベクター(BD Biosciences, Alphen a/d Rijn, The Netherlands)を用いる電気穿孔によってトランスフェクトした。48時間後、安定的にトランスフェクトされたクローン(Raji-luc)の選択のためにピューロマイシンを添加した。Raji-luc #2D1細胞を、10%コズミックウシ血清(カタログ番号SH30087.04、Hyclone)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号DE17-603、Cambrex, Germany)、1%ピルビン酸ナトリウムおよび1μg/mLピューロマイシン(カタログ番号P-8833、Sigma, Zwijndrecht, The Netherlands)を補充したRPMI中で培養した。100μL PBS中の2.5×10
6個のRaji-luc腫瘍細胞をメスSCIDマウスの尾静脈にi.v.注射した。マウスを腫瘍接種の直後に画像化し、その後、第7日以降に週2回画像化した。画像化の際、マウスをイソフルランを用いて麻酔し、その後に200μLの10mg/mL TRIS(カタログ番号T60666-1kg、Sigma)中2.5 mgのD-ルシフェリン(酸形態、カタログ番号BT11-1000;Biothema, Haninge, Sweden)をi.p.投与した。後部側(背面側)からの生物発光画像化(BLI)を、Biospace Imagerにおいて、D-ルシフェリンの投与から10分後、露光時間5分で開始した。解剖学的参照のために白黒画像を作製した。マウスを、腫瘍接種後第11日から、100μL PBS中の60μg(約3 mg/kg)のHuMab-CD74-011または対照抗体(IgG1-b12)、ADCとしておよび未コンジュゲートIgGとしての両方、で週に2度、計4回処置した。処置前に、マウスを、各々が等しい平均BLIシグナルおよび等しい分散を有する各々7匹のマウスの群に分けた。
【0364】
図11は、HuMab-CD74-011-vcMMAEおよび-mcMMAFの両方が実質的にすべてのRaji-luc腫瘍を消滅させたことを示している。
図11に示されるように、未コンジュゲートHuMab-CD74-011の場合に、見かけ上、対照抗体群と比較してより大きな腫瘍成長阻害の傾向があったが、その差異は有意でなかった。
【0365】
実施例21
抗CD74 ADCによるSCIDマウス内のRaji腫瘍異種移植片の治療的処置
CD74 ADCのインビボ効果を、SCIDマウスの皮下(s.c.)に形成されたRaji(バーキットリンパ腫)異種移植腫瘍においても決定した。
【0366】
200μL PBS中の(実施例20に記載の通りに得た)5×10
6個のRaji-luc #2D1腫瘍細胞をメスSCIDマウスの右脇腹にs.c.注射し、その後に抗CD74 ADCまたは対照(IgG1-b12;ADCとしておよび未コンジュゲートIgG1としての両方)を2回、一回は第17日に腫瘍サイズが平均約400 mm
3になったときに、もう一回は4日後の第21日に、注射した(1回の注射あたり60μg/マウス、約3 mg/kg、100μL中、腹腔内)。1回目の処置の前に、腫瘍成長のみられるマウスを、等しい腫瘍体積分布となるよう群分けした。腫瘍体積は、1週間に少なくとも2回決定した。腫瘍体積(mm
3)は、カリパス(PLEXX)の測定から、0.52×(長さ)×(幅)
2として計算した。
【0367】
図12は、すべての抗CD74 ADCがs.c.形成されたRaji-luc腫瘍のサイズを効果的に減らしたことを示している。ADCとしておよび未コンジュゲートとしての両方のIgG1-b12で処置されたマウスの腫瘍は、成長を続けた。
【0368】
実施例22
抗CD74 ADCによるSCIDマウス内のM4A4腫瘍異種移植片の治療的処置
抗CD74 ADCのインビボ効果を、SCIDマウスの皮下(s.c.)に形成されたM4A4異種移植腫瘍においても決定した。M4A4黒色腫細胞(カタログ番号CRL-2914;American Tissue Culture Collection, ATCC;ヒト細胞株MDA-MB-435由来)を、10%コズミックウシ血清(カタログ番号SH30087.04、Hyclone, The Netherlands)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号DE17-603、Gambrex, Germany)を含むDMEM(カタログ番号BE12-709F、Cambrex, Germany)中で培養した。200μL PBS中の10
7個のM4A4腫瘍細胞を、メスSCIDマウスの右脇腹にs.c.注射し、その後に腫瘍サイズが約200 mm
3になったときから抗CD74 ADCまたは対照(IgG1-b12;ADCとしておよび未コンジュゲートIgG1としての両方)を4回、第11日、第14日、第18日および第21日に注射した(1回の注射あたり60μg/マウス、約3 mg/kg、100μL中、腹腔内)。1回目の処置の前に、マウスを、等しい平均腫瘍体積および等しい腫瘍体積の分散となるよう群分けした。腫瘍体積は、1週間に少なくとも2回決定した。腫瘍体積(mm
3)は、カリパス(PLEXX)の測定から、0.52×(長さ)×(幅)
2として計算した。
【0369】
図13は、すべての抗CD74 ADCがs.c.形成されたM4A4腫瘍の腫瘍成長を阻害し、そのvcMMAEコンジュゲートが腫瘍サイズを大きく減らしたことを示している。未コンジュゲートIgG1-b12と比較して、IgG1-b12のADCは腫瘍成長をわずかに阻害した。
【0370】
実施例23
Daudi細胞における抗CD74 HuMab抗体のオフレートの決定
この実施例では、Daudi細胞への結合に関する抗CD74 HuMab抗体のオフレートの決定について記載する。
【0371】
抗体を、以下の手順を用いてAlexa Fluor(登録商標)488 Dye(Molecular Probes)、以降「Alexa-488」で標識した。
【0372】
1 mg/mL IgGの抗体溶液を0.1M 炭酸ナトリウム緩衝液 pH 9.0(NaHCO
3、Riedel de Haen、カタログ番号31437;)中で調製した。Alexa-488は、1本のバイアル(Alexa Fluor(登録商標)488カルボン酸、スクシンイミジルエステル(1 mg/バイアル)、Molecular Probes, Leiden, The Netherlands、カタログ番号A-20000)に100μL DMSO(Sigma、カタログ番号D2438)を添加することによって新たに調製した。以下に示されるようにして計算した25倍モル過剰のAlexa-488をIgG溶液に添加し、室温の暗所で1時間、回転させながらインキュベートした。標識後、未結合のAlexa-488を、PD-10カラム(Amersham Biosciences、カタログ番号17-0851-01)を使用して、Tris緩衝液 pH 8.0(50 mM Tris[Trizma塩基、Sigma、カタログ番号T-6066];100 mM NaCl[Riedel de Haen、カタログ番号31437];0.01%アジ化ナトリウム[NaN
3、Riedel de Haen、カタログ番号13412])によって取り除いた。IgG溶液に添加するAlexa-488の量は、式:添加するAlexa-488の容積(μL) = (IgG濃度(mg/mL)/MW IgG(Da)
* 比
* 容積
* MW Alexa-488
* 100)を用いて計算した。
【0373】
MW IgG = 150,000 Da;比は、使用されるAlexa-488のモル過剰である;容積は標識されるサンプルの容積である(mL);MW Alexa-488 = 643 Da。
【0374】
タンパク質濃度(IgG)および標識度(D.O.L.)は、Ultrospec 2100 Pro(Amersham Biosciences)においてOD 280 nmおよび495 nmを測定することによって決定した。IgG濃度(mg/mL)は、式:IgG濃度 = [A
280 - (0.11
* A
495)]/IgG消衰係数を用いて計算した。
【0375】
D.O.L.は、式:D.O.L. = A
495/71,000/[A
280 - (0.11
* A
495)/(IgG消衰係数
* MW IgG)]を用いて計算した。71,000は、λ
maxでのAlexa-488の消衰係数で単位がcm
-1M
-1である;0.11は、補正率(A
280の遊離色素/A
maxの遊離色素)である(両方とも製造元から提供される)。
【0376】
ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma、カタログ番号A 2934)を0.1%(w/v)の終濃度になるよう10%(w/v)溶液から添加し、標識した抗体を5℃で保管した。
【0377】
Daudi細胞を、Alexa-488標識抗CD74 HuMab抗体と共にインキュベートした。Daudi細胞を氷冷PBSで2回洗浄した。氷冷FACS緩衝液中のウェルあたり10
5個の細胞を96ウェル丸底組織培養プレート(Greiner Bio-one)に播種した。0.5μg/mL(HuMab-CD74-006および-011;終濃度)または1μg/mL(HuMab-CD74-008;終濃度)のAlexa-488標識抗CD74 HuMabを氷冷FACS緩衝液に添加した。氷上で30分間のインキュベーションの後、50μg/mL(HuMab-CD74-006および-011;終濃度)または100μg/mL(HuMab-CD74-008;終濃度)の未標識抗CD74 HuMabを添加し、そして15〜180分間の範囲の異なる時間、氷上でインキュベートした。未標識抗体との総インキュベーション時間が、グラフの下に示されている。最大結合を決定するため、Daudi細胞を、氷上で30分間、Alexa-488標識HuMab抗体と共にインキュベートした。陰性対照として、細胞をアイソタイプ対照抗体IgG1-b12(0.5μg/ml、終濃度)、その後に未標識IgG1-b12(50μg/mL終濃度)と共にインキュベートした。抗体とのインキュベーションの後、細胞をFACS緩衝液で1回洗浄し、結合したAlexa標識抗CD74 HuMab抗体を、FACS Canto II(BD Biosciences)におけるフローサイトメトリーによって決定した。
【0378】
図14は、0℃で測定されたHuMab-CD74-006および-008のオフレートが非常に速く(0℃で、結合したAlexa-488標識抗体の半分が約3および約4分以内に未標識抗体と置き換わり、K値が0.24および0.20 min
-1であった[K = K
off])、一方、0℃で測定された-011のオフレートはやや遅かった(0℃で、結合したAlexa 488標識抗体の半分が約10分以内に未標識抗体と置き換わり、K値が0.07 min
-1であった)ことを示している。
【0379】
実施例24
抗CD74 HuMab抗体のインターナリゼーションおよび蓄積
抗CD74 HuMab抗体が抗体-薬物コンジュゲートアプローチに適しているかどうかを決定するため、抗体のインターナリゼーションおよび蓄積を、異なる抗CD74 HuMab抗体とDaudi細胞とのインキュベーション後のFACS分析によって試験した。細胞培養培地中のウェルあたり10
5個の細胞を96ウェル丸底組織培養プレート(Greiner Bio-one)に播種した。10μg/mL(終濃度)のAlexa-488標識抗CD74 HuMab抗体を異なる時点で添加し、4℃(細胞表面に発現されたCD74に対する結合を測定するため)または37℃(結合およびインターナリゼーションを測定するため)でインキュベートした。抗体との総インキュベーション時間は、グラフの下に示されている。37℃でのインターナリゼーションおよび蓄積は、RajiおよびM4A4細胞と終濃度3μg/mLのAlexa-488標識抗CD74 HuMab抗体を用いても試験した。抗体とのインキュベーションの後、細胞を氷上に置き、そしてプレートをFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞に結合した標識抗体を、FACS Canto II(BD Biosciences)におけるフローサイトメトリーにより検出した。
【0380】
図15Aは、4℃でのインキュベーション後の任意の時点で、Daudiの細胞表面に対するAlexa-488標識抗CD74 HuMab抗体の結合が低レベルでしか検出されなかったことを示している。したがって、37℃でのインキュベーション後に測定された観察された蛍光強度は、インターナライズされた抗体を表している。
図15Bは、試験したすべての抗CD74 HuMab抗体がインターナライズされたがそれらの効率は異なっていたことを示している。インターナリゼーションは、HuMab-CD74-011が最も迅速であり、HuMab-CD74-006がそれよりも遅く、そしてHuMab-CD74-008が最も遅かった。同じことが、Raji細胞(15C)およびM4A4細胞(15D)におけるインターナリゼーションおよび蓄積に関しても観察された。
【0381】
実施例25
抗CD74 HuMab抗体によるSCIDマウス内のDaudi腫瘍異種移植片の予防的処置
抗CD74 HuMab抗体のインビボ効果を、SCIDマウスの静脈内(i.v.)Daudi(バーキットリンパ腫)異種移植腫瘍モデルにおいて決定した。Daudi細胞は、4:1比のgWIZルシフェラーゼ(Aldevron, Fargo, ND, USA)およびpPurベクター(BD Biosciences, Alphen a/d Rijn, The Netherlands)を用いる電気穿孔によってトランスフェクトした。48時間後、安定的にトランスフェクトされたクローン(Daudi-luc)の選択のためにピューロマイシンを添加した。Daudi luc #1E3細胞を、10%コズミックウシ血清(カタログ番号SH30087.04、Hyclone)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(カタログ番号DE17 603、Cambrex, Germany)、1%ピルビン酸ナトリウムおよび1μg/mLピューロマイシン(カタログ番号P 8833、Sigma, Zwijndrecht, The Netherlands)を補充したRPMI中で培養した。100μL PBS中の2.5×10
6個のDaudi luc腫瘍細胞をメスSCIDマウス(1群につき7匹のマウス)の尾静脈にi.v.注射した。腫瘍接種の日にマウスを200μL PBS中の100μg(約5 mg/kg)のHuMab-CD74-005、-006もしくは-011または対照抗体(IgG1 b12)で腹腔内(i.p.)処置した。マウスを腫瘍接種の直後に画像化し、その後、第14日から1週間間隔で画像化した。画像化の際、マウスをイソフルランを用いて麻酔し、その後に200μLの10mg/mL TRIS(カタログ番号T60666-1kg、Sigma)中2.5 mgのDルシフェリン(酸形態、カタログ番号BT11 1000;Biothema, Haninge, Sweden)をi.p.投与した。後部側(背面側)からの生物発光画像化(BLI)を、Biospace Imagerにおいて、Dルシフェリンの投与から10分後、露光時間5分で開始した。解剖学的参照のために白黒画像を作製した。
【0382】
図16は、すべての試験した抗CD74 HuMab抗体がi.v. Daudi luc腫瘍の成長をほぼ完全に予防したことを示している。
【0383】
均等物
当業者は、慣用的な実験のみを用いることで、本明細書に記載の本発明の特定の態様の多くの均等物を認識するまたは確認することができるであろう。そのような均等物は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。引用請求項に開示される態様の任意かつすべての組み合わせもまた、本発明の範囲内であることが想定されている。