特許第6261348号(P6261348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261348
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】複数の機能部材の位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20180104BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20180104BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20180104BHJP
   B23P 11/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B23P19/00 301D
   B23P21/00 301A
   B23P19/02 B
   B23P11/02 A
   B23P11/02 C
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-6167(P2014-6167)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136308(P2014-136308A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】10 2013 200 638.1
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ベーレンス
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ メノナ
(72)【発明者】
【氏名】ローター プフィツェンマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント シャハエラー
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−61749(JP,A)
【文献】 特開2002−28827(JP,A)
【文献】 特開2012−213817(JP,A)
【文献】 特開2001−232522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト(3)用の孔部(2)を備えた複数の機能部材(4)を、該シャフト(3)上の所定の角度位置に配置するための位置決め装置(1)であって、
前記装置(1)は、前記シャフト(3)上の角度位置に対応する個々の前記機能部材(4)の角度位置を確定する型(6)がそれぞれ設けられた、個々の機能部材(4)のための複数の取付部(5)を備え、
前記取付部(5)は、前記機能部材(4)の前記孔部(2)が共通の直線(7)上に位置するように配置され、
前記取付部(5)は、前記共通の直線(7)が垂直方向に延びるように、垂直方向に順に重なって配列され、
前記機能部材(4)の前記シャフト(3)への組み付けが垂直方向で行われるように、前記シャフト(3)のための垂直方向に移動可能な案内キャリッジ(8)が備えられるとともに、
少なくとも2つの機能部材(4)を、前記取付部(5)において、加熱することができる加熱装置(9)が備えられ
加熱された機能部材(4)が前記取付部(5)に配置されていても、少なくとも前記型(6)の領域において一定の温度に調整され得るように少なくとも1つの取付部(5)が冷却可能に構成されている
ことを特徴とする、位置決め装置(1)。
【請求項2】
前記取付部(5)が、少なくとも部分的に非誘導加熱性材料により形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の位置決め装置(1)。
【請求項3】
前記シャフト(3)を冷却するか、及び/又は前記機能部材(4,4a)を加熱することにより確立される焼き嵌め嵌合により、前記シャフト(3)が前記機能部材(4,4a)に接続される
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の位置決め装置(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの取付部(5)は、機能部材(4,4a)が正確な角度で該取付部(5)内に保持されるように配置された、少なくとも3本のピン部材(18)を備えるか、又は、
少なくとも1つの型(6)は、前記機能部材(4,4a)との接点(20)が得られ、かつ前記機能部材(4,4a)が正確な角度で保持されるように少なくとも3つの位置(19)に形成された、前記機能部材(4,4a)周りの輪郭を備える
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項5】
前記型(6)は、前記機能部材(4,4a)が正確な角度で前記型(6)内に保持されるように、前記機能部材(4,4a)の少なくとも部分的に逆の輪郭を有する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項6】
前記逆の輪郭が、前記機能部材(4)が室温においてほとんど遊び無く前記逆の輪郭内に保持されるように、保持対象である前記機能部材(4)の外輪郭に対応している
ことを特徴とする、請求項5に記載の位置決め装置(1)。
【請求項7】
前記加熱装置(9)が、互いに独立して制御され得る少なくとも2つの誘導コイル(10)を備える
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項8】
加熱された前記機能部材(4)が前記逆の輪郭内に締め付け固定されるように、前記逆の輪郭が、前記加熱装置(9)により加熱された前記機能部材(4)に比べて、加熱された前記機能部材(4)の熱膨張の少なくとも10%分小さい
ことを特徴とする請求項5、6、および請求項請求項5または6を引用する請求項7のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項9】
前記共通の直線(7)が垂直方向に延びるように、少なくとも4つの取付部(5)が垂直方向に順に重なって配列されている
ことを特徴とする、 請求項1〜8のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項10】
少なくとも2つの取付部(5)が台(17)上に配置され、
少なくとも2つの前記台(17)が位置決め部材を通じて前記装置(1)上に配置され、
前記共通の直線(7)が垂直方向に延びている
ことを特徴とする、請求項9に記載の位置決め装置(1)。
【請求項11】
前記装置(1)が、前記シャフト(3)用のベアリングフレーム(12)のための保持装置(11)を備え、
前記装置(1)に対する前記ベアリングフレーム(12)の位置決めが、前記ベアリングフレーム(12)のベアリングギャラリー(15)が個々の前記機能部材(4)の孔部(2)と整列するように、少なくとも2つの位置決め部材(13)により行われる
ことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項12】
シャフト(3)に、該シャフト(3)用の孔部(2)を備えた複数の機能部材(4)を請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置(1)を使用して組み付ける焼き嵌め方法であって、
前記機能部材(4)は、前記機能部材(4)の前記孔部(2)が実質的に垂直な共通の直線(7)上に位置するように、前記装置(1)の前記取付部(5)の個々の前記型(6)に正確な角度で配置され、
前記シャフト(3)が冷却され、及び/又は前記機能部材(4)が加熱され、
前記シャフト(3)が、垂直方向に移動可能な案内キャリッジ(8)により、前記機能部材(4)の前記孔部(2)を通じて上側から圧入され、
均熱化により前記機能部材(4)が前記シャフト(3)上に固定されるまで放置され、
前記シャフト(3)上に固定された前記機能部材(4)を含む該シャフト(3)を、前記装置(1)から取り外す
ことを特徴とする、焼き嵌め方法。
【請求項13】
前記機能部材(4)が、前記取付部(5)内において、又は外部から加熱される
ことを特徴とする、請求項12に記載の焼き嵌め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載された、シャフト用の孔部を備えた複数の機能部材、特にカム、バランスウエイト、ギアホイール、及び/又はベアリングの位置決め装置に関する。また、本発明は、シャフトに複数の機能部材を組み付けるための焼き嵌め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャフト用の孔部を備えた複数の機能部材、特にカムをシャフト上の所定の角度位置に配置するための一般的な位置決め装置が記載されており、前記装置は、シャフト上の角度位置に対応する個々の機能部材の角度位置を固定する型をそれぞれ備えた、個々の機能部材用の複数の取付部を備えている。この場合、取付部は機能部材の孔部が共通の直線上に位置するように配置され得る。この場合、少なくとも個々の型は角度位置が調整可能であるため、機能部材の正確な位置決めを簡単に行うことができる。
【0003】
特許文献2には、一体型ベアリングを備える少なくとも1本のシャフトにより構成される複合部品の組立用装置の改良されたものが開示されており、少なくとも1本のシャフトがハウジングのベアリング及び機能部材の開口部を通じて圧入され得るように、組み付け前に機能部材をハウジング内の所定の位相位置に保持する位置決め装置がハウジングに備えられている。この場合、位置決め装置には機能部材用の凹部が備えられており、この凹部はシャフトの組み付け方向に対して機能部材を支持する止めを有する。このとき、位置決め装置の凹部は、機能部材の輪郭の部分的な輪郭の逆の形状を有しており、従って機能部材は、後に接合される組み付け位置に対応する位相位置に保持され得る。この場合、凹部の部分的な輪郭は、少なくとも機能部材の外輪郭の一部で機能部材と係合している。特に、正確な位相の位置決めはこれにより達成される。しかしながら、特許文献2に記載された装置の問題は焼き嵌め工程において比較的複雑なシャフトの案内が必要になることである。
【0004】
特許文献3には、機能部材を備えるシャフトの組立装置が記載されており、この装置は、機能部材を整列させ、正確に位置決めするための複数の位置決めディスクが、シャフトが圧入され得るように配置された機台を備える。この位置決めディスクは、機台上に取り外し可能に固定されたフレーム上に取り外し可能に固定されている。これは、複数のフレームが使用可能になり製造工程を手早く変更可能とすることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102008064194A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007056638A1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102009060350A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、一般的なタイプの装置を改良し、特に焼き嵌め工程を大幅に簡潔化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は独立請求項の主題により解決される。好ましい実施形態は従属請求項の主題にある。
【0008】
本発明は、シャフト用の孔部を備えた複数の機能部材の位置決め装置を、個々の機能部材を装置内で垂直方向に配列して取り付けることにより、機能部材のシャフトへの焼き嵌めが垂直方向で行われ得るように改良するという概括的な概念に基づく。例えば、垂直方向に順に重なって配列した機能部材中に冷却されたシャフトを上側から圧入するような垂直方向の組み付けにより、これまで必要であった複雑なシャフトの案内が特に省略され得る。これは、シャフトの案内が既に主に重力により行われているためである。先行技術の既知装置の場合は、機能部材のシャフトへの組み付けは常に水平方向で行われ、組み付け工程においてシャフトを頻繁に、かつ複雑に支持することが必要とされる。本発明に係る装置は、特にカム、バランスウエイト、ギアホイール、及び/又はベアリングをシャフト上の所定の角度位置に組み付けるのに適しており、装置はシャフト上の角度位置に対応する個々の機能部材の角度位置を確定するネストのような型がそれぞれ設けられた個々の機能部材用の複数の取付部を備えている。ここで、本発明における個々の機能部材用の取付部は、機能部材の孔部が共通の直線上に位置すると共に、この共通の直線が実質的に垂直方向に延びるように配置される。従って、個々の取付部はバルコニーのように順に重なって配列され、個々のバルコニー内の型はネストのように形成されている。また、本発明に係る装置はシャフト用の垂直方向に移動可能な案内キャリッジを有し、これにより機能部材のシャフトへの組み付けが垂直方向において行われるため、これまで必要であった案内の労力がなくなる。さらに、本発明に係る装置は、水平方向に操作する既知装置に比較して、非常に設置面積が小さいため、同じ面積により多くの装置を配置可能であるという重要な効果を有する。
【0009】
さらなる実施形態において、取付部は、機能部材が正確な角度で保持されるように配置された、少なくとも3本のピン部材を備え得る。また、機能部材との接点が形成され、かつ機能部材が正確な角度で保持されるように少なくとも3つの位置に形成された、機能部材周りの輪郭を備える型を設けることも同様に考えられる。これにより少なくとも3本のピン部材を極めて正確に配置するか、又は少なくとも3つの位置において高精度に仕上げた輪郭を設けるだけでよいという効果が得られる。また、これにより取付部の製造に実質的な効果がもたらされ、大幅なコスト削減につながる。
【0010】
実際には、取付部において、少なくとも2つの機能部材を、特に電磁誘導的に加熱することができる加熱装置が備えられている。ここで、加熱装置は、本発明のさらに好ましい実施形態によれば、個別に加熱可能な誘導コイルを備える。このような加熱装置により、機能部材を個々に加熱することが可能となるため、例えば個別に加熱が必要な異なる機能部材を1つの同じ装置内で組み付けることができる。
【0011】
実際には、取付部は少なくとも部分的に、例えばセラミック等の非誘導加熱性材料により形成されているため、取付部内において機能部材が加熱されても、同時に取付部の加熱及び膨張を伴うことはない。また、これにより機能部材は室温においては取付部の対応する型にほとんど遊び無く挿入され得、加熱時のみ型内で熱膨張により締め付け固定されるという重要な効果が得られる。仮に、取付部、従って型もまた同様に誘導加熱性材料により形成された場合は、これらは機能部材加熱時に同様に膨張し、その結果一定の条件下において、特にカムシャフトのカムの場合に極めて重要な、機能部材の正確な位置合わせが損なわれるであろう。
【0012】
この場合、取付部の型は少なくとも部分的に機能部材の逆の輪郭を有しており、これにより機能部材は取付部の型内に正確な角度で保持され得る。また、この逆の輪郭は、機能部材が少なくとも室温においてほとんど遊び無くそこに保持されるように、保持対象である機能部材の外輪郭に対応させることができる。これにより特に、組み付け対象の機能部材を装置に取り付けることが特に容易にできるようになる。個々の機能部材を取付部の型内に確実に正確に固定するために、逆の輪郭は、加熱装置により加熱された機能部材に比べて、加熱された機能部材の熱膨張の少なくとも10%分小さい構成とすることができる。これにより、工程上確実に機能部材が型内に正確な位置で固定され得る。
【0013】
取付部が少なくとも部分的に非誘導加熱性材料により形成されている場合であっても、一定の作動時間が経過した後の製造工程において取付部が加熱されることが起こり得る。これにより、型に対する工程上確実な機能部材の挿入、保持、及び取り外しが一定の条件下において確実には行われなくなる。
【0014】
従って、実質的には、少なくとも逆の輪郭の領域か、又は型の領域において、作動中に達する所定の温度で取付部を保持することができるように、取付部の冷却が施される。
【0015】
本発明のさらに重要な特徴及び効果は、従属請求項、図面、及び図面に基づく関連説明から得られる。
【0016】
上述の、及び以下説明する特徴は、記載された個々の組合せにおいて使用され得るだけでなく、本発明の範囲を超えない他の組合せ、又は単独でも使用され得ることを理解されたい。
【0017】
本発明における好ましい例示的な実施形態は図面において示され、以下の記載の中でより詳細に説明される。なお、同一の符号は、同一の、同様の、又は機能上同一の部材に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)〜(e)は、本発明に係るシャフト用の孔部を備えた複数の機能部材の位置決め装置において、シャフトの焼き嵌めを行うための、異なる方法ステップを示す。
図2図2は、本発明における機能部材を固定するための取付部の平面図である。
図3図3は、本発明に係る装置の側面図である。
図4図4は、機能部材を固定するための3本のピン部材を備える取付部を示す。
図5図5は、図4と同様の図であるが、取付部の型に機能部材を固定するための3つの接点を備える取付部を示す。
図6図6は、台上に配置された2つの取付部を示す。
図7図7は、本発明に係る装置のさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a)〜(e)、図3、及び図7によれば、本発明に係る装置1はシャフト3用の孔部2を備えた複数の機能部材4をシャフト3上の所定の角度位置に配置するための位置決め装置であり、個々の機能部材4のための複数の取付部5を備える。バルコニーのように形成された個々の取付部5内に、それぞれ型6が設けられており、これにより個々の保持された機能部材4、例えばカム4aが、シャフト3上の個々の機能部材4,4aの角度位置に対応する角度位置に固定され得る。従って、型6を用いて、シャフト3に対する機能部材4及びカム4aの正確な角度位置への調整が行われ、これは特にカムシャフトの場合、内燃機関のバルブを制御するのに極めて重要である。取付部5及び型6は垂直方向に順に重なって配列され、個々の型に保持された機能部材4の場合には、これらの孔部2が共通の垂直線7上に位置する。
【0020】
これに加え、本発明に係る装置1はシャフト3のための垂直方向に移動可能な案内キャリッジ8を備えているため、機能部材4,4aのシャフト3への組み付けは垂直方向において行われ得る。これにより組み付け対象のシャフト3がそれに働く重力により自発的に配列され、その結果、水平方向の組み付けにおいてこれまで必要であった複雑な位置合わせを優先的に完全に省略することができるという特別な効果がもたらされる。
【0021】
型6は機能部材4,4aの少なくとも部分的に逆の輪郭を有し(図2参照)、これにより機能部材4,4aは型6に配置され、又は正確な角度で、及び特に正確に嵌合された形で型6に保持され得る。この場合、逆の輪郭は機能部材4の外輪郭の少なくとも一部において機能部材4と係合している。ここで、逆の輪郭は保持対象の機能部材4、例えばカム4aの外輪郭に対応しており、室温において機能部材4がほとんど遊び無く保持され、従って型に対して特に簡単に挿入及び取り外しが可能となるように構成される。
【0022】
機能部材4のシャフト3への焼き嵌めのために、加熱装置9が備えられており、これにより少なくとも2つの機能部材4が個々の取付部5及び型6内で特に電磁誘導的に加熱され得る。機能部材4、例えばカム4aの誘導加熱用に、加熱装置9は少なくとも2つの誘導コイル10を備え、これらは特に互いに独立して加熱することができる。個々の誘導コイル10が独立して加熱可能であることにより、例えばカム4aやギアホイールのみならずベアリング等のそれぞれ異なる加熱条件を有する様々な機能部材4を、1つの同じ装置1を使用して組み付けることができる。すなわち、これらは、個々の機能部材4の厚さに依存して、焼き嵌め温度に到達するために必要な加熱出力、又は加熱時間が異なる。さらに、又は代わりに、シャフト3が冷却され得ることは明らかである。
【0023】
逆の型、すなわち型6は、その内部における機能部材4の加熱時に、加熱されたカム4a、又は加熱された機能部材4が確実に正確に型6内に固定されるように、形成されていることが好ましい。
【0024】
取付部5の型6内に加熱された機能部材4が締め付け固定されるために、取付部5は、例えばセラミック等の非誘導加熱性材料により形成され得る。
【0025】
優先的に、逆の輪郭は、加熱装置9により加熱された機能部材4に比べ、加熱された機能部材4の熱膨張の少なくとも10%分小さい構成とすることができ、これにより、加熱された機能部材4が逆の輪郭内に締め付け固定される。これら全ての構成にも拘わらず、非誘導加熱性材料により形成されたこのような取付部5でさえ、加熱された機能部材4からの熱移動により、製造時間が増すにつれて加熱されるため、実質的に少なくとも1つの取付部5を冷却可能とすることにより、機能部材4の工程上確実な挿入、保持、及び取り外しが可能な構成とすることができる。
【0026】
現代の燃焼機関において、シリンダのために働く2つの直立した機能部材4、特にカム4a間の距離は、多くの場合、製造業者間で同一である。この理由により、複数の取付部5、特に2つの取付部5は、特に効果的なさらなる改良型の装置1において共通の台17上に取り付けられている(図6参照)。この距離は多くの場合同一であるため、同一の部品を使用することができ、特定の効果がこれにより生じ、大幅なコスト削減が可能となる。少なくとも2つの台17(図7参照)が装置1上に整列して取り付けられている。これに好適なのは、例えば嵌合ピン14’、又は固定された形で、若しくは取り外し可能に装置1に配置され得る位置合わせ部材等の位置決め装置である。さらに効果的な改良型の装置1における少なくとも2つの台17は、実質的にはまずフレーム21に取り付けられ、その後完成品として装置1に取り付けられ得る。複数のフレーム21を常備しておくことが可能であり、製造工程において別のカムシャフトタイプに迅速に変換することが可能である。一方、これにより同一の部品の使用、及びより速く、かつより柔軟な製造環境の変更が可能となる。
【0027】
また、装置1はシャフト3用のベアリングフレーム12のための保持装置11を備えることができ、装置1に対するベアリングフレーム12の位置決めが、ベアリングフレーム12のベアリングギャラリー15が個々の機能部材4の孔部2と整列するように、少なくとも2つの位置決め部材13、特に嵌合ピン14により行われ、その結果シャフト3がこれらに位置合わせされたベアリングフレーム12のベアリングギャラリー15について機能部材4の孔部2に簡単に圧入され得るようになっている。
【0028】
図1(a)〜(e)には、本発明に係る装置1を使用した、特にカム4a、バランスウエイト、ギアホイール、及び/又はベアリング等のシャフト3用の孔部2を備えた複数の機能部材4のシャフト3への焼き嵌め方法の個々のステップが示されている。
【0029】
図1(a)に示された最初のステップによれば、機能部材4又はカム4aはそれぞれまず装置1の取付部5の型6内に正確な角度で挿入され、すなわち個々の機能部材4,4aの孔部2が実質的に垂直な共通の直線7上に位置するようになっている。
【0030】
続いて、シャフト3が冷却されるか、及び/又は機能部材4、すなわちカム4aが例えば上述の加熱装置9により加熱される。これは図1(b)のステップにおいて行われる。
【0031】
ここで、図1(c)のステップにおいて、ベアリングフレーム12は位置決め部材13、すなわち嵌合ピン14により、ベアリングフレーム12のベアリングギャラリー15が個々の機能部材4の孔部2と整列するように、装置1に固定される。
【0032】
一度このステップが実行されると、図1(d)に示されたステップのように、シャフト3が、上側から機能部材の孔部2及びベアリングフレーム12のベアリングギャラリー15を通じて垂直方向に移動可能な案内キャリッジ8により圧入される。次に、均熱化により機能部材4がシャフト3上に固定されるまで放置し、その間に機能部材4が冷却され、及び/又はシャフト3が加熱され、これら2つの部材間の焼き嵌め嵌合が形成され得る。次に、図1(e)のステップにおいて、シャフト3上に固定された機能部材4と、さらにベアリングフレーム12とを含む該シャフト3を装置1から取り外す。ここで、個々の機能部材4のシャフト3への焼き嵌めが、純粋に理論上はベアリングフレーム12がなくても可能であることは明らかである。この場合、図1(c)のステップは省略され得る。
【0033】
図4の取付部5を考慮すると、この取付部5は3本のピン部材18を有し、これらは機能部材4,4aが正確な角度で保持されるように配置されている。これに対して代わりに、図5に示すように、少なくとも1つの型6は、機能部材4,4aとの接点20が得られ、機能部材4,4aが正確な角度で固定されるように、少なくとも3つの位置19において形成された、機能部材4,4a周りの輪郭を備え得る。従って、位置19により取付部5内の機能部材4,4aの位置が明確に決定される。明らかに、型6はまた機能部材4,4aの少なくとも部分的に逆の輪郭を有し得、これにより機能部材4,4aは型6に正確な角度で保持される。ここで、逆の輪郭は機能部材4が室温においてほとんど遊び無くそこに保持されるように、保持対象の機能部材4の外輪郭に対応している。また、図1図3及び図7を考慮すると、少なくとも4つの取付部5が垂直方向に順に重なって配列されることにより、共通の直線7が垂直方向に延びていることは明らかである。
【0034】
本発明に係る装置1及び本発明に係る方法によって、垂直方向の組み付けにより、これまでは必要であったシャフト3の複雑な位置合わせの大部分が重力により行われ、従って手動で苦労して行う必要がなくなるため、シャフト3上の機能部材4の焼き嵌めが明らかに簡潔化され得る。しかしながら、装置1が組み付け工程の間にシャフト3を案内するための、例えばガイドピン等の個々のガイド部材16を備え得ることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7