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特許6261356準静電界を利用した通信装置および改札機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261356
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】準静電界を利用した通信装置および改札機
(51)【国際特許分類】
   H04B 13/00 20060101AFI20180104BHJP
   H04B 1/59 20060101ALI20180104BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20180104BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20180104BHJP
【FI】
   H04B13/00
   H04B1/59
   G06K7/10 152
   G07B15/00 A
   G07B15/00 501
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-14268(P2014-14268)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-142259(P2015-142259A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北見 公一
(72)【発明者】
【氏名】神垣 智一
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−191535(JP,A)
【文献】 特開平11−282978(JP,A)
【文献】 特開2004−282733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 13/00
G06K 7/10
G07B 15/00
H04B 1/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導型のICカードを保持する保持部と、
電磁誘導を利用した通信を行う電磁誘導通信部と、
準静電界を利用した通信を行う準静電界通信部と、
通信装置全体を制御する演算制御部と、を備え、
前記演算制御部は、
前記電磁誘導通信部を制御して前記電磁誘導型のICカードから情報を読み出す情報読出制御部と、
読み出した情報から電磁誘導通信における送信コマンドに対する応答時間の保証値を算出するためのパラメータを抽出し、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した、電磁誘導を利用した通信を行う場合と比較して長い応答時間の保証値を算出するための値に変更するパラメータ変更部と、
前記準静電界通信部を制御して前記変更されたパラメータを改札機に設けられた準静電界送受信装置に送信する準静電界通信制御部と、
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記パラメータは所定ビット数のビット列情報であり、当該ビット列の示す値が大きいほど算出される応答時間の保証値が長くなるように生成されるものであり、
前記変更されたパラメータは、上記ビット列において、応答時間の保証値に対応する下位数ビットよりも上位の1または2以上のビットを書き換えて元のビット列の示す値よりも大きくされた値であることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
操作部を備え、
前記操作部の操作、あるいは、前記操作部の操作に基づく前記演算制御部の制御により電源電圧の供給を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
表示部を備え、
前記演算制御部は、前記電磁誘導通信部、あるいは、前記準静電界通信部が通信可能になった場合、前記表示部に通信可能状態である旨を表示させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
音声出力部を備え、
前記演算制御部は、前記電磁誘導通信部、あるいは、前記準静電界通信部が通信可能になった場合、前記音声出力部から音声案内若しくは確認音を出力させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の通信装置との間で準静電界を利用した通信を行う準静電界送受信部と、情報読み取り部に翳された媒体との間で電磁誘導を利用した通信を行う電磁誘導通信部と、を備えた改札機であって、
前記準静電界送受信部は、前記電磁誘導通信部からの電磁誘導通信によるコマンドを受信して準静電界通信によるコマンドを送信し、
前記通信装置からの応答に含まれる前記変更されたパラメータを前記電磁誘導通信部により受信し、受信したパラメータに基づいてコマンドに対する応答時間の保証値を設定することを特徴とする改札機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、準静電界を利用した通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅の改札機における通信装置として、例えば、改札機に設けられたデータ読出書込器内のコイルと、ICカード内のコイルとの間における電磁誘導により情報を送受信するものが知られている。
【0003】
また、近年、送受信用の電極間に介在する人体を媒質としたコンデンサの作用により、受信用の電極に生じる静電誘導現象を用いて情報を送受信するようになされた通信装置が開示されている(特許文献1及び2参照)。
特に、特許文献1及び2における実施の形態では、所定の駅に設けられた改札機と、改札機の利用者が保有するカード形状でなる可搬型の装置との間で、準静電界を利用した通信を行う改札システムが開示されている。
【0004】
このような改札システムでは、従来のように、ICカードを改札機の送受信部に翳すことなく、改札機を通過できるので、例えば、大量の荷物を抱えた利用者や、車椅子を使用した利用者等、ICカードを改札機の送受信部に翳すことが難しい利用者が改札機を通過する場合に対して非常に有効である。
【0005】
但し、上述の改札システムでは、そもそも準静電界を利用した通信を想定しているため、準静電界を利用した通信が可能な「改札機」の設置と、準静電界を利用した通信が可能な「カード形状でなる可搬型の装置」の携帯が必須であり、現在普及している、従来の電磁誘導型の改札機やICカードをそのまま使用することができない。
【0006】
このため、現在普及している従来の電磁誘導型の「改札機」に、準静電界を利用した通信が可能な送受信装置を設けるとともに、「カード形状でなる可搬型の装置」が電磁誘導を利用した通信で読み出した従来の電磁誘導型のICカードの情報を、準静電界を利用した通信で当該送受信装置に提供するようなインターフェースを利用することにより、従来の電磁誘導型の改札機やICカードであっても、準静電界を利用した通信が可能となり、上述の改札システムとして使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−282733号公報
【特許文献2】特開2012−191535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の電磁誘導型のICカードから読み出される情報のうち、各コマンドに対する応答時間の保証値を算出するためのパラメータは、改札機側での通信のコマンドタイムアウトの判断に用いられており、当該パラメータは、従来の電磁誘導を利用した通信を行う場合を想定したパラメータである。
一方、準静電界を利用した通信の場合、従来の電磁誘導を利用した通信と比べて、通信時間が長くなる可能性がある。
このため、従来の電磁誘導型のICカードから読み出された当該パラメータをそのまま用いて算出した保証値で準静電界を利用した通信を行った場合、上述のインターフェースを介してICカードから送信されてくる前に、改札機側でタイムアウトとなり、改札機からのコマンドの再送処理が発生すること等により、準静電界を利用したICカードとの間のスムーズな情報交換ができず、改札システムとして正常に動作しなくなるおそれがあるといった問題点があった。
【0009】
本発明の課題は、電磁誘導型のICカードを用いて準静電界を利用した通信を行うことが可能な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するため、この発明は、
電磁誘導型のICカードを保持する保持部と、
電磁誘導を利用した通信を行う電磁誘導通信部と、
準静電界を利用した通信を行う準静電界通信部と、
通信装置全体を制御する演算制御部と、を備え、
前記演算制御部は、
前記電磁誘導通信部を制御して前記電磁誘導型のICカードから情報を読み出す情報読出制御部と、
読み出した情報から電磁誘導通信における送信コマンドに対する応答時間の保証値を算出するためのパラメータを抽出し、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した、電磁誘導を利用した通信を行う場合と比較して長い応答時間の保証値を算出するための値に変更するパラメータ変更部と、
前記準静電界通信部を制御して前記変更されたパラメータを改札機に設けられた準静電界送受信装置に送信する準静電界通信制御部と、
を有するようにしたものである。
【0011】
また、望ましくは、前記パラメータは所定ビット数のビット列情報であり、当該ビット列の示す値が大きいほど算出される応答時間の保証値が長くなるように生成されるものであり、
前記変更されたパラメータは、上記ビット列において、応答時間の保証値に対応する下位数ビットよりも上位の1または2以上のビットを書き換えて元のビット列の示す値よりも大きくされた値であるようにする。
【0012】
また、望ましくは、操作部を備え、前記操作部の操作、あるいは、前記操作部の操作に基づく前記演算制御部の制御により電源電圧の供給を制御するようにしたものである。
【0013】
また、望ましくは、表示部を備え、前記演算制御部は、前記電磁誘導通信部、あるいは、前記準静電界通信部が通信可能になった場合、前記表示部に通信可能状態であることを表示させるようにしたものである。
【0014】
また、望ましくは、音声出力部を備え、前記演算制御部は、前記電磁誘導通信部、あるいは、前記準静電界通信部が通信可能になった場合、前記音声出力部から音声案内若しくは確認音を出力させるようにしたものである。
【0015】
また、望ましくは、前記ICカードを検知する検知部を備え、前記演算制御部は、前記検知部が前記ICカードを検知した場合に電源電圧を供給するようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、演算制御部が、電磁誘導通信部を制御して電磁誘導型のICカードから情報を読み出し、読み出した情報から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した所定の値に変更し、準静電界通信部を制御して変更されたパラメータを改札機に設けられた準静電界送受信装置に送信することにより、従来の電磁誘導型のICカードを用いて準静電界を利用した通信を行うことができ、準静電界を利用した通信を行う改札システムに用いることができる。
また、通信装置から取り出したICカードは、勿論、従来の電磁誘導型の改札システムに利用可能であり、通信装置内部の電源の電源電圧が、喪失した場合であっても、取り出したICカードを改札機に翳すことにより、改札機を通過することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る準静電界を利用した通信装置の構成の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施の形態に係る準静電界を利用した通信装置の構成の一例を示す平面図及び断面図である。
図3】準静電界を利用した改札システムの一例を示す説明図である。
図4】準静電界を利用した通信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】各装置間の通信データの流れの一例を示すシーケンス図である。
図6】パラメータの変更の動作の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.構成の説明]
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である準静電界を利用した通信装置を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0019】
(実施形態)
本発明の実施形態の準静電界を利用した通信装置の構成について図1図2及び図3を参照して説明する。図1は、準静電界を利用した通信装置100の機能をブロック図として表した概略構成図であり、図2は、準静電界を利用した通信装置100の平面図及び断面図であり、図3は、準静電界を利用した改札システムの一例を示す説明図である。
図1に示すように、準静電界を利用した通信装置100(以下、単に装置100と呼ぶ。)は、操作部1、記憶部2、電磁誘導通信部3、準静電界通信部4、表示部5、情報読出制御部6、パラメータ変更部7及び準静電界通信制御部8を有する。
【0020】
また、情報読出制御部6、パラメータ変更部7及び準静電界通信制御部8は、演算制御部50によってその機能が実現される。具体的には、演算制御部50は、CPU、ROM、RAM等を有しており、RAMの作業領域に展開されたROM等に記憶された各種プログラムデータとCPUとの協働により、操作部1、記憶部2、電磁誘導通信部3、準静電界通信部4及び表示部5を統括制御するとともに、情報読出制御部6、パラメータ変更部7及び準静電界通信制御部8における処理を実行して各部の機能を実現する。
【0021】
また、図2(a)のX−Xに沿った断面を示す図2(b)のように、装置100には、従来の電磁誘導型のICカード60を挿入して保持するための保持部HD21を有しており、保持部HD21側には電磁誘導通信部3が設けられ、図3に示すような人体の表面に存在する準静電界EF31を利用して通信を行う準静電界通信部4が装置100の表面部分に設けられている。
【0022】
図1の操作部1は、演算制御部50の制御により、装置100内部の図示しない電池やバッテリー等の電源の電源電圧を装置100に供給する制御を行うスイッチ回路である。例えば、操作部1は、押しボタンスイッチ、キーボード、タッチパネル等であり、当該操作部1の操作により、電源のON/OFFを制御する。あるいは、操作部1の操作に基づく演算制御部50の制御により、電源のON/OFFを制御する。
記憶部2は、演算制御部50(情報読出制御部6、パラメータ変更部7、準静電界通信制御部8)から読み書き可能に情報を記憶する。例えば、記憶部2は、HDD、半導体メモリ等であって、情報読出制御部6で読み出された情報等が記憶されている。
電磁誘導通信部3は、演算制御部50の制御により、装置100の保持部HD21に挿入されたICカード60との間で、電磁誘導を利用した通信を行うものであり、例えば、ICカード60に電力供給ための微弱電波を放射するとともに、ICカード60により変調された微弱電波を受信するアンテナと、このような電磁誘導を利用した通信を制御する制御回路とから構成される。
準静電界通信部4は、演算制御部50の制御により、準静電界受信電極70との間で準静電界を利用した通信CM31を行うものであり、例えば、人体の表面に存在する準静電界EF31を利用して準静電界受信電極70との間で通信CM31を行うアンテナと、このような準静電界を利用した通信を制御する制御回路とから構成される。
表示部5は、演算制御部50(情報読出制御部6、パラメータ変更部7、準静電界通信制御部8)から出力された表示制御信号に基づいた情報や画像を表示画面上に表示する。例えば、表示部5は、使用者に通信状態等を示すためのLEDやLCD、有機EL素子を用いたフラットパネルディスプレイである。
【0023】
情報読出制御部6は、電磁誘導通信部3を制御して電磁誘導を利用した通信を行い、装置100の保持部HD21に挿入されたICカード60から情報を読み出し、読み出した情報を記憶部2や演算制御部50を構成するRAM等に記憶させる。
パラメータ変更部7は、読み出した情報から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した所定の値に変更する。例えば、所定のパラメータとは、各コマンドに対する応答時間の保証値を算出するためのパラメータであり、準静電界を利用した通信に適合するように、従来の電磁誘導を利用した通信を行う場合と比較して長い応答時間の保証値となるように変更する。
準静電界通信制御部8は、準静電界通信部4を制御して準静電界を利用した通信を行い、準静電界受信電極70を介して改札機90に設けられた準静電界送受信装置80に対して、パラメータ変更部7で変更されたパラメータを送信するとともに、準静電界送受信装置80との間でその他のコマンド受信、応答の送信等を準静電界受信電極70を介して準静電界を利用した通信で行う。
【0024】
このような装置100にICカード60を挿入し保持して電磁誘導通信部3がICカード60から情報を読み出し可能にするとともに、準静電界通信部4が、図3における人体の表面に存在する準静電界EF31の内部に位置するように人体に装着、例えば、準静電界通信部4を内側にして衣服のポケットに入れる等により、装置100が、電磁誘導を利用した通信でICカード60から情報を読み出し、図3に示すように、準静電界を利用した通信CM31で、準静電界受信電極70を介して準静電界送受信装置80に情報を送信することができる。
なお、図3に示す改札システムにおいて、改札機90は従来の電磁誘導型の改札機であり、準静電界送受信装置80は、改札機90との間で電磁誘導を利用した通信を行い、装置100から受信した情報の送受信を行うものである。
【0025】
[2.準静電界を利用した通信装置の動作の説明]
ここで、本発明の実施形態における準静電界を利用した通信装置100の具体的な動作の説明を図4図6を用いて詳細に行う。
【0026】
図4のフローチャートに示すように、情報読出制御部6は、電磁誘導通信部3を制御して電磁誘導を利用した通信を行い、装置100の保持部HD21に挿入されたICカード60から所定のパラメータを含む情報を読み出して記憶部2や演算制御部50を構成するRAMに記憶させる(ステップS1)。
すなわち、図5に示すシーケンス図において、装置100は、電磁誘導を利用した通信により、ICカード60に対してカード捕捉コマンドCM51を送信し、ICカード60から送信される所定のパラメータを含む情報である応答RS51を受信する。カード捕捉コマンドCM51は、電磁誘導を利用した通信をトリガーとして送信されることに限定されず、装置100の保持部HD21の内部に、挿入検知センサやメカニカルスイッチ等の検知部を設け、当該検知部の起動をトリガーとして送信することも可能である。
【0027】
そして、パラメータ変更部7は、読み出した情報から所定のパラメータを抽出するとともに(ステップS2)、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した所定の値に変更する(ステップS3)。
例えば、読み出した情報から抽出されたパラメータとしては、16ビット列の情報であり、16ビット列の示す値が大きいほど算出される応答時間の保証値が長くなるものとした場合、図6(a)に示すような抽出された所定のパラメータ(16ビット列)において、9〜12ビットの値を書き換えて、図6(b)に示すように、16ビット列の示す値が大きくすることにより、改札機側では、従来の電磁誘導を利用した通信を行う場合と比較して長い応答時間の保証値が算出される。
また、図5に示すシーケンス図においては、装置100は、パラメータの変更処理PR51を行う。
【0028】
図4のフローチャートに示すように、上記ステップS3によるパラメータの変更後、準静電界通信制御部8は、準静電界通信部4を制御して準静電界受信電極70に準静電界を利用した通信を行い、準静電界受信電極70を介して改札機90に設けられた準静電界送受信装置80に対して、パラメータ変更部7で変更されたパラメータを送信する(ステップS4)。
【0029】
そして、準静電界通信制御部8は、準静電界通信部4を制御して、準静電界送受信装置80との間でその他のコマンド受信、応答の送信等をする際に準静電界受信電極70を介して準静電界を利用した通信を行い(ステップS5)、通信を完了したか否かを判断し(ステップS6)、完了したと判断した場合(ステップS6:Yes)、処理を終了する。
【0030】
すなわち、図5に示すシーケンス図において、改札機90は、電磁誘導を利用した通信により、準静電界送受信装置80に対してカード捕捉コマンドCM52を送信し、準静電界送受信装置80は、準静電界受信電極70を介した準静電界を利用した通信により、装置100に対して、改札機90から受信したカード捕捉コマンドCM52をカード捕捉コマンドCM53として転送する。
このようなカード捕捉コマンドCM53を受信した装置100は、準静電界を利用した通信により、準静電界受信電極70を介して準静電界送受信装置80に対して、パラメータ変更部7で変更されたパラメータを応答RS52として送信し、準静電界送受信装置80は、改札機90に対して、装置100から受信した応答RS52を応答RS53として転送する。
そして、改札機90は受信したパラメータに基づき各コマンドに対する応答時間の保証値を算出して、例えば、図5に示すように、コマンドCM54を送信してから次のコマンドCM55を送信するまで待機するためのタイマー値とする。
すなわち、コマンドCM54を送信してから、算出された保証値以上の時間待機した後、次のコマンドであるコマンドCM55を送信することにより、改札機90側でのタイムアウトの発生を防止し、ICカード60と改札機90との間のスムーズな情報交換を実現する。
【0031】
そして、装置100は、例えば、ICカード60から改札の通過に必要な区間情報、有効期限情報、プリチャージ情報等を読み出して準静電界を利用した通信により、準静電界受信電極70を介して準静電界送受信装置80に対して順次送信し、準静電界送受信装置80は、改札機90に順次転送させることにより、改札機90が改札通過の可否を判断して、通過を許可する表示、あるいは、ゲートを閉めて通過を拒否する等の適宜必要な措置を取る。
【0032】
以上のように、演算制御部50が、電磁誘導通信部3を制御して電磁誘導型のICカード60から情報を読み出し、読み出した情報から所定のパラメータを抽出し、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した所定の値に変更し、準静電界通信部4を制御して変更されたパラメータを改札機に設けられた準静電界送受信装置80に送信することにより、従来の電磁誘導型のICカードを用いて準静電界を利用した通信を行うことができ、準静電界を利用した通信を行う改札システムに用いることができる。
【0033】
また、装置100から取り出したICカード60は、勿論、従来の電磁誘導型の改札システムに利用可能であり、装置100内部の電源(図示せず)の電源電圧が、喪失した場合であっても、取り出したICカード60を改札機90に翳すことにより、改札機を通過することが可能である。
【0034】
なお、本発明の実施形態等の説明に際しては、情報読出制御部6が、ステップS1で、電磁誘導通信部3を制御して電磁誘導を利用した通信を行い、装置100の保持部HD21に挿入されたICカード60から所定のパラメータを含む情報を読み出して記憶部2や演算制御部50を構成するRAMに記憶させ、パラメータ変更部7が、ステップS2〜S3で、読み出した情報から所定のパラメータを抽出するとともに、抽出したパラメータの値を準静電界通信に適した所定の値に変更しているが、図5に示すシーケンス図における転送されてきた改札機90からのカード捕捉コマンドCM52(カード捕捉コマンドCM53に相当)を受信してから、情報読出制御部6が、ICカード60から所定のパラメータを含む情報の読み出しを開始するものであっても良い。
【0035】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、表示部5については、特に説明していないが、装置100の保持部HD21にICカード60を挿入し、電磁誘導通信部3とICカード60との間の通信可能になった場合、あるいは、準静電界通信部4と準静電界送受信装置80との間の通信可能になった場合、演算制御部50は、表示部5に当該通信可能状態である旨を表示させる。例えば、演算制御部50が、表示部5であるLEDを点灯させる、点灯しているLEDの色を変える(例えば、赤から緑に点灯色を変える)ことにより、使用者に通信可能になったことを認識させても良い。
【0036】
また、スピーカやブザー等の音声出力部を設けて、装置100の保持部HD21にICカード60を挿入し、電磁誘導通信部3とICカード60とが通信可能になった場合、あるいは、準静電界通信部4と準静電界送受信装置80との間の通信可能になった場合、演算制御部50は、音声出力部を制御して、音声案内や確認音を出力させても良い。
【0037】
さらに、電磁誘導通信部3、あるいは、準静電界通信部4による通信中に、演算制御部50は、表示部5に通信中である旨の表示をさせる。例えば、演算制御部50が、表示部5であるLEDを点滅させることにより、使用者に正常にデータ通信を行っていることを認識させても良い。
また、電磁誘導通信部3、あるいは、準静電界通信部4による通信中に、演算制御部50は、音声出力部を制御して、通信中である旨の音声案内や確認音を出力させても良い。
【0038】
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、操作部1により、あるいは、操作部1の操作に基づく演算制御部50の制御により、装置100内部の図示しない電池やバッテリー等の電源の装置100の供給を制御しているが、前述のとおり、装置100の保持部HD21の内部に、挿入検知センサやメカニカルスイッチ等の検知部を設け、ICカード60が、装置100の保持部HD21に挿入して保持されたことを検知部により検知した場合、演算制御部50が、電源電圧の装置100への供給を制御しても良い。
この場合、装置100にICカード60が挿入されていない場合には、電源電圧が装置100へ供給されないので、装置100内部の電源の消耗を抑えることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0039】
また、図2に示した本発明の実施形態では、装置100の保持部HL21にICカード60を挿入することにより、ICカード60を保持する構造を例示しているが、勿論、保持部HD21の構造に関しては、ICカード60を電磁誘導通信部3に近接して保持できる構造であれば良く。例えば、利用者の携帯に便利な、定期券等のパスケース型、カードケース型、財布型等であっても良い。
【0040】
また、図3に示した改札機90は、従来の電磁誘導型の機構を備えた改札機を例示したが、これにかかわらず、従来の電磁誘導型の機構を設けない、準静電界を利用した通信に専用化された改札機(準静電界通信専用の改札機)であってもよい。この場合、利用者は、準静電界通信専用の改札機を通過した後、装置100内部の電源の電源電圧が喪失した場合であっても、装置100から取り出したICカード60を従来の電磁誘導型の改札機に翳すことにより、改札機を通過することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 操作部
2 記憶部
3 電磁誘導通信部
4 準静電界通信部
5 表示部
6 情報読出制御部
7 パラメータ変更部
8 準静電界通信制御部
50 演算制御部
60 ICカード
70 準静電界受信電極
80 準静電界送受信装置
90 改札機
100 装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6