(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261362
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】レールボンドの切り替え方法
(51)【国際特許分類】
E01B 11/00 20060101AFI20180104BHJP
H01R 4/34 20060101ALI20180104BHJP
B60M 5/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
E01B11/00
H01R4/34
B60M5/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-19936(P2014-19936)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-148046(P2015-148046A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 和浩
(72)【発明者】
【氏名】守安 健太
(72)【発明者】
【氏名】大谷 拓也
(72)【発明者】
【氏名】船水 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福元 猛
【審査官】
袴田 知弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−210397(JP,A)
【文献】
特開2009−070784(JP,A)
【文献】
特開2006−228691(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0032933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 11/00
B60M 5/00
H01R 4/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繋ぎ合わされた一方のレールと他方のレールとに跨って取り付けられている1本の導線からなるレールボンドを、その中間部において切り離し/接続を可能とする状態に切り替えるレールボンドの切り替え方法において、
前記レールボンドをその中間部において切断することにより、前記レールボンドを前記一方のレールに溶接された第1導線部と、前記他方のレールに溶接された第2導線部とに分断し、
前記レールボンドの切断によって新たにできた前記第1導線部の先端部に第1端子を、前記第2導線部の先端部に、前記第1端子に対し分離/結合可能な第2端子を、それぞれ取り付け、
前記第1端子と前記第2端子とを結合することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとの間の電気的な導通を確保することを特徴とするレールボンドの切り替え方法。
【請求項2】
前記第1端子を形成する部材は、前記第2端子と接合する接合部と、前記第1導線部の先端部に圧縮する圧縮部とを有し、
前記第2端子を形成する部材は、前記第1端子と接合する接合部と、前記第2導線部の先端部に圧縮する圧縮部とを有し、
前記第1端子の接合部と前記第2端子の接合部とをボルトおよびナットで結合することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとの間の電気的な導通を確保することを特徴とする請求項1に記載のレールボンドの切り替え方法。
【請求項3】
前記レールボンドとともに、第2レールボンドが、前記一方のレールと前記他方のレールとに跨るように、かつ、その中間部が、前記レールボンドの中間部と略並行となるように取り付けられている場合、
前記第2レールボンドを、前記レールボンドの切断箇所と重ならない箇所で切断することにより、前記第2レールボンドを前記一方のレールに溶接された第3導線部と、前記他方のレールに溶接された第4導線部とに分断し、
前記第2レールボンドの切断によって新たにできた前記第3導線部の先端部に第3端子を、前記第4導線部の先端部に、前記第3端子に対し分離/結合可能な第4端子を取り付けることを特徴とする請求項1または2に記載のレールボンドの切り替え方法。
【請求項4】
前記レールボンドが、切り離し/接続が可能な状態である必要がなくなった後は、前記第1導線部の中間部を切断することにより前記第1導線部から前記第1端子を切除するとともに、前記第2導線部の中間部を切断することにより前記第2導線部から前記第2端子を切除し、
前記第1端子の切除によって新たにできた前記第1導線部の先端部に第5導線部の一端を分離不能に接続するとともに、前記第2端子の切除によって新たにできた前記第2導線部の先端部に前記第5導線部の他端を分離不能に接続することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとを導通させることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のレールボンドの切り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールに溶接されている1本の導線からなるレールボンドを切り離し/接続可能な状態に切り替える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空間の有効利用、利便性向上などの観点から、既設の軌道の下方に、新たに橋や通路などの構造物(以下線路下構造物)を設けることがある。線路下構造物を構築する一般的な流れとしては、まず、構築予定箇所の上にある軌きょう、道床を撤去する。次に、仮撤去した道床の下の路盤を掘削する。そして、掘削してできた空間に新たに線路下構造物を構築する。最後に、撤去していた道床、軌きょうを復旧させるというものである。線路下構造物を構築するにあたり、列車の運行を中止することは極力避けたいので、工事は列車の通らない夜間に行われるのが一般的である。しかしながら、線路下構造物の構築を一晩で終わらせることは極めて困難であるため、翌朝までの間に工事を進められるだけ進めたところで撤去した軌道を一旦仮復旧させ、翌晩に再び仮撤去して工事を再開する、といった流れを繰り返しながら工事を進めていくことになる。
【0003】
工事の流れは、既設の軌道に敷設されているレールによって変わってくる。すなわち、敷設されているのが継ぎ目のないロングレールの場合は、そのロングレールを、撤去したい部分の両端となる箇所で切断して仮撤去し、仮復旧の際には、撤去したレールを、定尺レールの連結と同様に継目板を用いて繋ぎ合わせる。なお、仮復旧時は、レールに継目ができるので、レールボンドで電気的な導通を確保する必要がある。そこで、一端がレールに溶接されるようになっており、他端にボルト穴の形成された端子を有する端子金具付レールボンド(以下CZボンド)を分断された両レールにそれぞれ溶接し、各端子同士をボルトとナットで結合する。こうすることで、2回目以降の仮撤去においては、端子のボルトとナットを取り外すだけでレールボンドを分断でき、仮復旧においては端子と端子をボルトとナットで結合させるだけで導通させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】福山史昭他著 日本鉄道施設協会誌1997年8月号「横浜駅改良工事の安全対策」 p.630−631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、敷設されているのが複数の定尺レールを突き合わせ、継目板を用いて繋ぎ合わせたものである場合は、突き合わせたレールとレールとを導通させるためのレールボンドが元々取り付けられている。このような軌道においては、最初の仮復旧までの過程で、レールにCZボンドを取り付けようとすると、既に取り付けられているレールボンドから、CZボンドに交換する作業が必要となる。取り付けようとする箇所には、既に取り付けられているレールボンドの溶接形態によっては、最初の仮撤去において取り外したレールボンドの溶接跡が残っている場合もある。その場合、その溶接跡は除去することが極めて困難であるし、溶接跡の上から更に溶接することはできないため、新たなCZボンドは、この溶接跡とは異なる位置に溶接しなければならない。しかしながら、CZボンドを溶接跡よりも継目から遠い位置に溶接しようとすると、CZボンドが長くなって電気抵抗が高くなりすぎてしまう。一方、CZボンドを溶接跡よりも継目に近い位置に溶接しようとすると、継目板等が邪魔でやはり取り付けることが困難である。また、溶接跡の上方は、レールの頭部が邪魔でスペースが確保できない。また、溶接跡の下方は保線作業に差し障りが生じる恐れがある。このため、CZボンドに付け替えるためにはレールを溶接跡の残っていないものに交換しなければならない。
このように、複数の定尺レールを繋ぎ合わせて構成された軌道の場合、レールボンドの交換には手間とコストがかかっていた。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、1本の導線からなるレールボンドを、容易かつ低コストで切り離し/接続を可能な状態に切り替えることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、繋ぎ合わされた一方のレールと他方のレールとに跨って取り付けられている1本の導線からなるレールボンドを、その中間部において切り離し/接続を可能とする状態に切り替えるレールボンドの切り替え方法において、
前記レールボンドをその中間部において切断することにより、前記レールボンドを前記一方のレールに溶接された第1導線部と、前記他方のレールに溶接された第2導線部とに分断し、前記レールボンドの切断によって新たにできた前記第1導線部の先端部に第1端子を、前記第2導線部の先端部に、前記第1端子に対し分離/結合可能な第2端子を、それぞれ取り付け、前記第1端子と前記第2端子とを結合することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとの間の電気的な導通を確保することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、既設のレールボンドに端子を設けるので、レールボンドを新しいものに付け替える必要がなく、既存のレールボンドの撤去作業および新たなレールボンドの溶接作業が不要になる。このため、レールボンドを容易かつ低コストで切り離し/接続を可能な状態に切り替えることができる。
【0009】
なお、望ましくは、上記発明において、前記第1端子を形成する部材は、前記第2端子と接合する接合部と、前記第1導線部の先端部に圧縮する圧縮部とを有し、前記第2端子を形成する部材は、前記第1端子と接合する接合部と、前記第2導線部の先端部に圧縮する圧縮部とを有し、前記第1端子の接合部と前記第2端子の接合部とをボルトおよびナットで結合することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとの間の電気的な導通を確保するようにするとよい。
このようにすれば、容易に手に入る一般的な部材を用いてレールボンドの切り替えができるので、更なる低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、望ましくは、上記発明において、前記レールボンドとともに、第2レールボンドが、前記一方のレールと前記他方のレールとに跨るように、かつ、その中間部が、前記レールボンドの中間部と略並行となるように取り付けられている場合、前記第2レールボンドを、前記レールボンドの切断箇所と重ならない箇所で切断することにより、前記第2レールボンドを前記一方のレールに溶接された第3導線部と、前記他方のレールに溶接された第4導線部とに分断し、前記第2レールボンドの切断によって新たにできた前記第3導線部の先端部に第3端子を、前記第4導線部の先端部に、前記第3端子に対し分離/結合可能な第4端子を取り付けるようにするとよい。
導線の太さに比べ、端子と端子の結合部は幅が大きくなりがちなので、2つの結合部が横並びになると幅を取り過ぎて工事の邪魔になる恐れがあるが、このようにすれば、レールボンドと第2レールボンドとで端子の結合部の位置がずれるので、端子の結合部が余り邪魔にならず、工事の進行に差し障る心配がない。
【0011】
また、望ましくは、上記発明において、前記レールボンドが、切り離し/接続が可能な状態である必要がなくなった後は、前記第1導線部の中間部を切断することにより前記第1導線部から前記第1端子を切除するとともに、前記第2導線部の中間部を切断することにより前記第2導線部から前記第2端子を切除し、前記第1端子の切除によって新たにできた前記第1導線部の先端部に第5導線部の一端を分離不能に接続するとともに、前記第2端子の切除によって新たにできた前記第2導線部の先端部に前記第5導線部の他端を分離不能に接続することにより、前記一方のレールと前記他方のレールとを導通させるようにするとよい。
このようにすれば、第1導線部および第2導線部を再びレールボンドとして用いるので、レールボンドを新しいものに付け替える必要がなく、第1導線部および第2導線部の撤去作業および新たなレールボンドの溶接作業が不要になる。このため、工事の手間が低減されて工期を短縮できるとともに、コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1本の導線からなるレールボンドを、容易かつ低コストで切り離し/接続を可能な状態に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るレールボンドの切り替え方法を、線路下構造物の構築工事に適用した場合の流れを説明する図である。
【
図3】工事の各工程におけるレールの継目部を示した図である。
【
図4】レールボンドの端子となる金具の一例およびその結合の仕方を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態のレールボンドの切り替え方法は、複数の定尺レールを繋ぎ合わせてなる既設の軌道において、一部のレールの仮撤去および仮復旧を頻繁に繰り返す作業が必要になった場合に用いられるもので、ここでは、そのような場合の一例として、軌道の下方に線路下構造物(橋、地下空間、通路など)を構築する工事を行う場合を例にして説明する。
【0015】
工事の流れとしては、
図1に示す(1)前工程と、
図2に示す(2)仮撤去工程、(3)構築工程、(4)仮復旧工程、および(5)本復旧工程があり、(1)の工程の後、(2)〜(4)の工程を順次繰り返し、最後に(5)の工程を経ることにより、工事が進められる。
工事開始前の軌道1は、
図1(a)に示すように、路盤2の上に形成されたバラスト道床(以下道床11)と、道床11の上に敷設された軌きょう12とで構成されている。互いに先端を突き合わせた一方のレール13と他方のレール13とは、
図3(a)に示すように、継目板14およびボルト・ナットで繋ぎ合わされ、第1レールボンド3および第2レールボンド4の一端が一方のレール13の腹部に溶接され、他端が他方のレール13の腹部に溶接されることにより、一方のレール13と他方のレール13との導通が確保されている。
【0016】
〔前工程〕
前工程は、本実施形態の場合には撤去工程の前に行うが、場合によっては後述する構築工程において行うこともあれば、構築する構造物によっては行わない場合もある工程である。前工程においては、まず、
図1(b)に示したように、軌道1の所定箇所の左右両側方に、空間S1をそれぞれ形成する。具体的には、ライナープレート等を用いて、筒状の土止め壁を構築し、その内側の土砂を掘削することにより形成する。一対の空間S1,S1は、軌道1の敷設方向に沿って所定間隔を空けて複数形成する。空間S1を形成した後は、
図1(c)に示すように、各空間S1の底から、地中に向かって杭51を、各杭51の上端が同じ高さとなるようにそれぞれ打ち込む。
【0017】
〔仮撤去工程(初回)〕
初回の撤去工程においては、まず、
図3(b)に示すように、撤去しようとするレール13の両端にそれぞれ取り付けられた第1,第2レールボンド3,4の中間部3a,4aを切り取る。第2レールボンド4の切り取り箇所は、第1レールボンド3の切り取り箇所と重ならない箇所とする。こうして、第1レールボンド3は、一方のレール13に溶接された第1導線部31と、他方のレール13に溶接された第2導線部32とに分断され、第2レールボンド4は、一方のレール13に溶接された第3導線部41と、他方のレールに溶接された第4導線部42とに分断される。
【0018】
レールボンド3,4の中間部3a,4aを切り取った後は、切り取ったことによって各導線部31,32,41,42に新たにできた端部(以下先端部)に、金具33,34,43,44をそれぞれ取り付ける。金具33,34,43,44には、
図4(a),(b)に示すように、各導線部の先端部が差し込まれる筒状の圧縮部331と、ボルト穴332aが形成された板状の接続部332とを有したものを用いる。各導線部31,32,41,42の先端部を各金具の圧縮部331に差し込み、所定の工具(図示省略)を用いて圧縮部331を外側から圧縮すると、圧縮部331が先端部に食い込むように塑性変形し、導線部31,32,41,42が金具33,34,43,44に圧縮される。こうすることにより、金具が各導線部31,32,41,42の第1〜第4端子33,34,43,44となり、既存のレールボンド3,4を取り換えることなく、第1,3導線部31,41および第2,4導線部32,42が、連結を解除した一組のCZボンドと同様の状態となる。各導線部に第1〜第4端子を設けた後は、
図2(a)に示したように、継目板14を外し、軌きょう12を撤去する。そして、
図2(b)に示したように、撤去した軌きょう12の下の道床11を撤去する。
【0019】
〔構築工程(前半)〕
構築工程は、複数の小工程に分けられ、小工程と小工程との間に、仮復旧工程および仮撤去工程を挟みながら行われる工程である。構築工程においては、まず、
図2(b)に示したように、道床11を撤去することで露出した路盤2を、軌道1の左右に形成した一対の空間S1を繋げるように掘削する。そして、
図2(c)に示すように、掘削によってできた空間S2を通るように、かつ、左右の杭51の上端に跨るようにかんざし桁52を架け渡す。この作業を他の箇所に形成した一対の空間S1が形成された個所においても行うことにより、軌道1の下方に複数のかんざし桁52が設置される。
【0020】
〔仮復旧工程〕
例えば、
図2(c)に示した状態で構築工程の小工程を終えた場合は、復旧工程において、まず、土砂でかんざし桁52を埋め戻し、その上に再び道床11を形成する。そして、形成した道床11の上に軌きょう12を敷設し直し、軌道1に残されていたレール13と、敷設し直したレール13とを継目板14を用いて繋ぎ合わせる。こうすることで、
図2(c)の右部分に示したように、かんざし桁52が軌道1の下に隠れた状態となる。その後、第1導線部31の先端部に取り付けた第1端子33の接合部332と、第2導線部32の先端部に取り付けた第2端子34の接合部332とを、ボルト穴332aが一致するように重ね合わせ、
図4(c),(d)に示すように、ボルト333とナット334で結合することにより、第1端子と第2端子とを接続する。また、第3導線部41の先端部に取り付けた第3端子と、第2導線部32の先端部に取り付けた第4端子44とを同様にして接続する。そして、接続した第1,第2端子および第3,第4端子をそれぞれ防護材(図示省略)で覆う。こうして、レール13に再び通電が可能となり、列車の通行が可能な状態に戻る。
【0021】
〔仮撤去工程(2回目以降)〕
2回目以降の撤去工程においては、まず、各端子33,34,43,44を覆っていた防護材をそれぞれ取り外し、第1,第2端子33,34を結合しているボルト333とナット334を外して第1端子33と第2端子34との接続を解除するとともに、第3,第4端子43,44を結合しているボルト333とナット334を外して第3端子43と第4端子44との接続を解除して、レールボンド3,4を再び第1,3導線部31,41と第2,4導線部32,42とに分断する。そして、レール13から継目板14を外し、軌きょう12および道床11を撤去する。レールボンド3,4の分断はボルト333とナット334を外すだけでできるので、2回目以降の撤去工程の進行は、初回に比べて格段に早くなる。
【0022】
〔構築工程(後半)〕
すべてのかんざし桁52を架け終えたところから構築工程を再開する場合は、
図2(d)に示したように、軌きょう12およびその下の道床を撤去し、隣り合う2本のかんざし桁52の上面を露出させる。そして、
図2(e)に示したように、かんざし桁52の上面と、その隣のかんざし桁52の上面とに跨るように工事桁53を架け渡す。この作業を、位置を変えながら繰り返していくことにより、工事桁53が軌道1の敷設方向に沿って複数連結され、
図2(f)に示したように、橋5が構築される。橋5が構築された後は、工事桁53の下を掘削して空間S4を形成する。
【0023】
〔本復旧工程〕
本復旧工程は、最後の構築工程を終えた後の工程である。本復旧工程においては、まず、橋5の上に軌きょう12を敷設し、レール13を繋ぎ合わせる。そして、
図3(d)に示したように、各導線部31,32,41,42を中間部において切断し、各導線部から金具33,34,43,44をそれぞれ切除する。その後、
図3(e)に示すように、第1導線部31と第2導線部32との間に第1中間接続ボンド35(第3導線部)で接続するとともに、第3導線部41と第4導線部42とを第2中間接続ボンド45で接続する。中間接続ボンド35,45には、
図4に示すように、導線部31,32,41,42と同様の導線351の両端部に、導線351と導線とを、先端同士を突き合わせた状態で接続する圧縮スリーブ352,353が圧縮され、両端に導線を差し込んで圧縮できるようにしたものを用いる。この第1中間接続ボンド35の一端に第1導線部31の先端部を差し込んで圧縮するとともに、他端に第2導線部32の先端部を差し込んで圧縮する。そして、第2中間接続ボンド45の一端に第3導線部41の先端部を差し込んで圧縮するとともに、他端に第4導線部42の先端部を差し込んで圧縮する。これにより、第1,3導線部31,41と第2,4導線部32,42とが分離不能に接続されて元のレールボンド3,4と同様の状態に戻り、一方のレール13と他方レール13とが導通する。こうして、一連の工事が終了する。
【0024】
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本実施形態では、端子を、ボルトとナットで結合させる形のものを用いたが、振動によって外れることなく、複数回分離/結合可能なものであれば、どのようなものを用いてもよい。
また、本実施形態では、初回の仮撤去工程において、導線部の先端部に端子となる金具を取り付けることとしたが、初回の仮復旧工程においてレールとレールとを導通させる前であればいつ行ってもよい。
また、上記実施形態では、初回の仮撤去工程において、レールボンドの中間部を一部切り取ったが、単に切断するだけとしてもよい。
また、上記実施形態では、本復旧工程において、中間接続ボンドを用いてレールボンドを分断不能な形に戻したが、レールとレールとを溶接してロングレール化し、レールボンドそのものを撤去するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、軌道の下に橋(線路下構造物)を構築したが、構造物を構築するのではなく、長時間を要する路盤や道床の改良工事等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 軌道
13 レール
3 第1レールボンド(レールボンド)
31 第1導線部
32 第2導線部
33 金具(第1端子)
34 金具(第2端子)
35 第1中間接続ボンド(第5導線部)
4 第2レールボンド
41 第3導線部
42 第4導線部
43 金具(第3端子)
44 金具(第4端子)
45 第2中間接続ボンド