(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の止血器具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の止血器具の第1実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)、
図2は、
図1に示す止血器具の使用状態を示す断面図、
図3は、
図1に示す止血器具の破断部が破断する過程を示す拡大平面図、
図4は、
図3中のA−A線断面図、
図5は、
図1に示す止血器具の破断部が破断する過程を示す拡大平面図、
図6は、
図5中のB−B線断面図である。
【0018】
図1および
図2に示す止血器具1は、例えば、肢体に生じた創傷を止血するのに用いられる。本実施形態では、止血器具1は、治療、検査、診断等の目的で手首500に形成した穿刺孔より経皮的に動脈へ挿入したカテーテル等を抜去した後に、その穿刺部位(止血すべき部位)510を止血するのに使用されるものとする。
【0019】
この止血器具1は、帯体2と、面ファスナ3と、補強板4と、バルーン10と、補助バルーン6とを備えている。また、バルーン10は、主に穿刺部位510の圧迫を担う第1バルーンとして機能し、補助バルーン6は、バルーン10の穿刺部位510への圧迫を補助する第2バルーンとして機能する。以下、各部について説明する。
【0020】
帯体2は、可撓性を有する帯状の部材である。
図2に示すように、帯体2は、手首500の外周を一周するように巻き付けられ、その両端付近の部分を互いに重ね合わせるようにして、手首500に装着される。そして、帯体2は、この重ね合わせ部分が後述する面ファスナ3によって固定(接合)される。
【0021】
帯体2の構成材料としては、軟質プラスチックが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。
【0022】
また、帯体2は、実質的に透明、すなわち、光透過性を有しているのが好ましい。これにより、患部を外側から視認することができる。
【0023】
帯体2の中央部には、後述する補強板4を保持する補強板保持部21が形成されている。補強板保持部21は、外面側(または内面側)に別個の帯状の部材が融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着(接着剤や溶媒による接着)等の方法により接合されることにより、二重になっており、それらの隙間に挿入された補強板4を保持する。
【0024】
帯体2の
図1中の左端付近の部分の内面側(
図1の紙面の表側)には、一般にマジックテープ(登録商標)などと呼ばれる面ファスナ3の雄側(または雌側)31が設置(固定)されており、帯体2の
図1中の右端付近の部分の外面側(
図1の紙面の裏側)には、面ファスナ3の雌側(または雄側)32が設置(固定)されている。
図2に示すように、この面ファスナ3の雄側31と雌側32とが接合することにより、帯体2が手首500に装着される。なお、帯体2を手首500に巻き付けた状態で固定する固定手段としては、面ファスナ3に限らず、例えば、スナップ、ボタン、クリップ、帯体2の端部を通す枠部材等であってもよい。
【0025】
補強板4は、帯体2の二重に形成された補強板保持部21の間に挿入されることにより、帯体2に保持されている。
【0026】
補強板4は、その少なくとも一部が内周側に向かって湾曲した形状をなしている。この補強板4は、帯体2よりも硬質な材料で構成されており、ほぼ一定の形状を保つようになっている。このため、帯体2の一部は補強されることとなる。
【0027】
図1に示すように、本実施形態では、補強板4は、帯体2の長手方向に長い形状をなしている。
図2に示すように、この補強板4の長手方向の中央部41は、ほとんど湾曲せずに平板状になっており、この中央部41の両側には、それぞれ、内周側に向かって、かつ、帯体2の長手方向(手首500の周方向)に沿って湾曲した湾曲部42が形成されている。すなわち、湾曲部42の曲率半径R1は、中央部41の曲率半径R1(図示の構成では、R1は、ほぼ無限大)より小さい。また、本実施形態では、補強板4は湾曲した形状をなしているが、湾曲していなくてもよい。
【0028】
補強板4の構成材料としては、硬質プラスチックが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(特に硬質ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0029】
また、補強板4は、実質的に透明であるのが好ましい。これにより、患部を外側から視認することができる。
【0030】
以上のような補強板4により、手首側へバルーン5の押圧力Fが集中することとなる。すなわち、補強板4はバルーン5の押圧を補助する機能を有している。
【0031】
補強板4(帯体2)の内側には、可撓性を有する材料で構成されたバルーン5が設置されている。
図2に示すように、バルーン5は、内部空間S1に、流体(空気等の気体もしくは液体)を所定量(例えば18cc)注入することにより拡張し、その拡張状態で、一部が手首500の穿刺部位510に宛がわれ、当該穿刺部位510を圧迫する。
【0032】
バルーン10は、バルーン(バルーン本体)5と、検出用バルーン(小バルーン)8とで構成されている。
【0033】
バルーン5は、補強板4の長手方向の一端側に片寄って位置している。すなわち、図示の構成では、バルーン5は、補強板4の
図2中のほぼ右半分側と重なるように位置している。
【0034】
バルーン5の構成材料としては、可撓性を有していれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。また、バルーン5は、帯体2と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着による帯体2との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
【0035】
また、バルーン5は、実質的に透明であるのが好ましい。これにより、患部を外側から視認することができる。
【0036】
バルーン5の構造は、例えば、前述したような材料からなるシート材の縁部を融着または接着等の方法によりシールして袋状に形成したものとすることができる。図示の構成では、バルーン5は、拡張していない状態では、ほぼ四角形をなしている。
【0037】
このようなバルーン5は、可撓性を有する連結部11を介して、帯体2に連結されている。本実施形態では、バルーン5は、補強板4に対し片寄った側、すなわち、
図2中の右側のみが連結部11を介して帯体2に連結されている。この連結部11は、その実質的な長さが比較的短くされ、これにより、バルーン5が補強板4に対し片寄った位置に配置、固定される。なお、連結部11は、バルーン5と同材料で構成されているのが好ましい。
【0038】
本実施形態では、バルーン5が連結部11により片側のみで帯体2に連結されていることにより、
図2に示す状態でバルーン5がやや傾斜した姿勢になり、その結果、穿刺部位510に対する押圧力Fが傾斜した方向に作用する。
【0039】
図1に示すように、バルーン5の下側の辺51には、流体が注入される注入口52が設けられている。この注入口52には、バルーン5内に流体を注入する注入部7が接続、固定されている。また、バルーン5の辺51には、注入口52と異なる位置に連通部53が設けられている。この連通部53を介してバルーン5と検出用バルーン8とが連通している。
【0040】
注入部7は、その基端部がバルーン5に接続され、その内腔がバルーン5の内部空間S1に連通する可撓性を有するチューブ71と、チューブ71の先端部に設置された袋体72と、袋体72に接合された管状のコネクタ73とで構成されている。
【0041】
バルーン5を拡張(膨張)させる際には、コネクタ73にシリンジ(図示せず)の先端突出部を挿入し、このシリンジの押し子を押す。これにより、シリンジ内の流体は、バルーン5に向ってチューブ71の内腔部711を流下してバルーン5の内部空間S1に供給される。
【0042】
バルーン5内に流体を供給したら、コネクタ73からシリンジの先端突出部を抜去すると、コネクタ73に内蔵された逆止弁が閉じて流体の漏出が防止される。これにより、バルーン5の拡張状態が維持される。
【0043】
また、バルーン5の辺51には、注入口52と異なる位置に、連通部53が設けられている。この連通部53を介してバルーン5の内部空間S1と後述の検出用バルーン8の内部空間S2とが連通している。
【0044】
図2に示すように、補強板4とバルーン5との間には、可撓性を有する材料で構成された補助バルーン6が設置されている。この補助バルーン6は、その全部または一部がバルーン5と帯体2の厚さ方向に沿って重なっており、バルーン5を押圧する押圧部材として機能するものである。
【0045】
なお、補助バルーン6は、バルーン5と共通の連結部11を介して、帯体2に連結されている。本実施形態では、補助バルーン6は、バルーン5と同様に補強板4に対し片寄った側、すなわち、
図2中の右側のみが連結部11を介して帯体2に連結されている。
【0046】
連結部11と反対側の補助バルーン6の端部には、位置決め用のマーカ9が配置されている(
図1参照)。後述するように、このマーカ9を穿刺部位510に合わせて帯体2を巻いて固定することで、バルーン5の穿刺部位510に対する位置決めを容易に行なうことができる。なお、マーカ9は、図示の構成と異なり、バルーン5の中央部に設けてもよい。
【0047】
補助バルーン6は、内部に充填された流体の圧力により、
図2中の矢印fで示すように、バルーン5をほぼ手首500の中心部520に向かう方向に押圧する。このような補助バルーン6からの押圧力を受けることにより、バルーン5は、
図2中の矢印Fで示すように、穿刺部位510を上から下へ垂直な方向(手首500の表面に対し垂直な方向)ではなく、傾斜した方向(手首500の中心部520に向かうような方向)に押圧(圧迫)する。これにより、本発明では、穿刺部位510を上から下へ垂直な方向に押圧(圧迫)する場合と比べ、より優れた止血効果が得られ、より確実に止血することができる。
【0048】
なお、図示の構成では、
図2に示す状態で、バルーン5が補強板4に(帯体2を介して)接触していないが、バルーン5の一部が補強板4に(帯体2を介して)接触してもよい。
【0049】
補助バルーン6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した帯体2の構成材料と同様のものを用いることができる。また、補助バルーン6は、実質的に透明であるのが好ましい。これにより、患部を外側から視認することができる。また、補助バルーン6の構造は、バルーン5と同様の構造とすることができる。
【0050】
本実施形態では、補助バルーン6は、帯体2の長手方向についての幅がバルーン5よりも小さくされていることにより、その大きさがバルーン5よりも小さくなっており、バルーン5を局所的に押圧する。これにより、バルーン5から穿刺部位510への押圧力Fの方向をより確実に傾斜させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、補助バルーン6は、補強板4の長手方向の
図2中の右端部付近に位置する。これにより、補助バルーン6からバルーン5への押圧力fの方向をより確実に手首500の中心部520に向かうような方向にすることができ、その結果、バルーン5から穿刺部位510への押圧力Fの方向をより確実に傾斜させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、バルーン5の一部と補助バルーン6の一部とは、互いに融着または接着等の方法により接合されている。そして、その接合部には、バルーン5の内部空間S1と補助バルーン6の内部空間とを連通する連通部(開口部)12が形成されている。これにより、前述したようにしてバルーン5に流体を注入すると、注入された流体の一部が連通部12を介して補助バルーン6内に流入し、バルーン5の拡張に伴って補助バルーン6が拡張する。これにより、1回の操作で両者を拡張させることができ、操作性に優れる。
【0053】
さて、前述したように、止血器具1は、検出用バルーン8を有している。この検出用バルーン8は、バルーン5の穿刺部位510への押圧力Fの程度を検出する機能を有している。
【0054】
図1および
図3〜
図6に示すように、検出用バルーン8は、外形形状が帯状をなし、バルーン5の連通部53から
図1中下側に向って延在している。また、検出用バルーン8は、その内部空間S2が、連通部53を介してバルーン5の内部空間S1と連通している。これにより、バルーン5を拡張させると、連通部53を介して内部空間S2に流体が注入される。
【0055】
検出用バルーン8の構成材料としては、可撓性を有していれば特に限定されず、例えば、前述した帯体2、バルーン5および補助バルーン6の構成材料と同様のものを用いることができる。また、検出用バルーン8は、バルーン5と同質または同種の材料で構成されるのが好ましい。これにより、融着によるバルーン5との接合を容易に行うことができ、容易に製造することができる。
【0056】
図4に示すように、検出用バルーン8の構造は、例えば、前述したような材料からなる2枚のシート材84、85の縁部を融着または接着等の方法によりシールして袋状に形成したものとすることができる。
【0057】
このような検出用バルーン8の内部空間S2は、
図3および
図4に示すように、破断部81、82、83によって、小空間S3、S4、S5、S6に仕切られている。小空間S3は、破断部81よりもバルーン5側に位置しており、バルーン5の内部空間S1と連通している。小空間S4は、破断部81と破断部82との間に位置している。また、小空間S5は、破断部82と破断部83との間に位置している。そして、小空間S6は、破断部83のバルーン5とは反対側に位置している。
【0058】
各破断部81〜83は、内部空間S1の圧力Pが所定の圧力(P1、P2、P3)を超えると破断する部分である。これらの各破断部81〜83は、検出用バルーン8を構成するシート材を融着または接着等の方法により固着された固着部で構成されている。本実施形態では、各破断部81〜83は、熱融着により形成される。
【0059】
各破断部81〜83は、検出用バルーン8の長手方向を幅方向とする帯状をなしている。また、各破断部81〜83の面積は、この順に大きくなっている。これにより、各破断部81〜83の破断限界は、この順に大きくなる。すなわち、各破断部81〜83の破断限界は、連通部53から遠ざかるにしたがって大きくなる。よって、内部空間S1の圧力Pが上昇した際、各破断部81〜83は、圧力Pの大きさに応じて順次、破断(剥離)することとなる。
【0060】
以下、このことについて詳細に説明する。
バルーン5の内部空間S1に流体を供給していくと、連通部53を介して小空間S3にも流体が供給される。これにより、内部空間S1および小空間S3の圧力は、上昇する。このとき、シート材84、85の小空間S3を画成する部分には、互いに離間していく方向に力が作用する。そして、
図6に示すように、破断部81は、破断限界を迎えると破断する。すなわち、シート材84、85の破断部81に対応する部分は、剥離される。その結果、内部空間S1および小空間S3は、小空間S4と連通する。
【0061】
さらに内部空間S1に流体を供給すると、内部空間S1、小空間S3および小空間S4の圧力は、上昇する。このとき、シート材84、85の小空間S3および小空間S4を画成する部分には、互いに離間していく方向に力が作用する。そして、破断限界を迎えると、破断部82は、前記と同様に破断する。その結果、内部空間S1、小空間S3およびS4は、小空間S5と連通する(図示せず)。
【0062】
そして、さらに内部空間S1に流体を供給すると、内部空間S1、小空間S3、小空間S4および小空間S5の圧力は、上昇する。このとき、シート材84、85の小空間S3、小空間S4および小空間S5を画成する部分には、互いに離間していく方向に力が作用する。そして、破断限界を迎えると、破断部82は、前記と同様に破断する。その結果、内部空間S1、小空間S3、小空間S4および小空間S5は、小空間S6と連通する(図示せず)。
【0063】
内部空間S2の最大容積は、内部空間S1の最大容積の5〜15%であるのが好ましく、8〜12%であるのがより好ましく、特に10%であるのが好ましい。これにより、検出用バルーン8の容積をバルーン5の容積に対して十分に小さくすることができる。
【0064】
ここで、各破断部が破断し、隣り合う小空間同士が連通する際には、内部空間S1内の流体が連通した小空間に流入することとなる。その結果、内部空間S1の圧力Pは、若干低下する。しかしながら、前述したように、内部空間S2の容積は、内部空間S1の容積に対して十分に小さい。これにより、各小空間の連通による内部空間S1の圧力Pの低下を無視することができる。
【0065】
また、内部空間S1は、内部空間S2(小空間S3〜S6)に対して十分に大きいため、以下では、内部空間S1と内部空間S2とを合わせた空間の圧力を、内部空間S1の圧力Pと同じ圧力とする。
【0066】
破断部81は、内部空間S1の圧力Pが上昇して、圧力P1になったときに破断するよう構成されている。また、破断部82は、内部空間S1の圧力Pが圧力P1よりも高い圧力P2になったときに破断するよう構成されている。そして、破断部83は、内部空間S1の圧力Pが圧力P2よりも高い圧力P3になったときに破断するよう構成されている。
【0067】
また、圧力P1のときのバルーン5の穿刺部位510への押圧力Fを押圧力F1とし、圧力P2のときの押圧力Fを押圧力F1よりも大きい押圧力F2とし、圧力P3のときの押圧力Fを押圧力F2よりも大きい押圧力F3とする。
【0068】
本実施形態では、押圧力F1は、血圧(最高血圧)が130mmHg以下の患者の穿刺部位510を十分に止血し得る程度の値とされる。具体的には、押圧力F1は、130mmHgよりも若干高い圧力(例えば、140〜150mmHg程度)で穿刺部位510の全域を押圧し得る程度の値とされる。
【0069】
押圧力F2は、血圧が131〜140mmHgの患者の穿刺部位510を十分に止血し得る程度の値とされる。具体的には、押圧力F2は、140mmHgよりも若干高い圧力(例えば、150〜160mmHg程度)で穿刺部位510の全域を押圧し得る程度の値とされる。
【0070】
そして、押圧力F3は、血圧が141〜150mmHgの患者の穿刺部位510を十分に止血し得る程度の値とされる。具体的には、押圧力F3は、150mmHgよりも若干高い圧力(例えば、160〜170mmHg程度)で穿刺部位510の全域を押圧し得る程度の値とされる。
【0071】
また、止血器具1で止血を行う際には、装着状態とするのに先立って、患者の血圧を測定する。そして、血圧の測定結果に基づいて、押圧力Fの適切な大きさを認識する。例えば、血圧が125mmHgの患者の場合には、破断部81が破断したとき、すなわち、押圧力Fが押圧力F1となったときに、押圧力Fの大きさが適切であると判断することができる。以下、患者の血圧が125mmHgであった場合について説明する。
【0072】
装着状態でバルーン5の内部空間S1に流体を供給していくと、内部空間S1の圧力Pが上昇する。また、圧力Pの上昇に伴い、押圧力Fも上昇する。そして、
図5および
図6に示すように、圧力Pが圧力P1になったとき、破断部81は破断する。この破断を視認することで、術者は、押圧力Fが押圧力F1になった、すなわち、押圧力Fの大きさが適切になったのを認識することができる。そして、内部空間S1への流体の供給を停止することで、穿刺部位510を適切な大きさで、すなわち、過不足なく圧迫し続けることができる。よって、止血が不十分となったり、過剰な圧迫による手のしびれや血行不良等が生じるのを確実に防止することができる。
【0073】
また、例えば、血圧が135mmHgであった場合には、破断部81が破断した後に、さらに内部空間S1に流体を供給する。そして、圧力Pが圧力P2になったとき、破断部81に次いで、破断部82が破断する。この破断を視認することで、押圧力Fが血圧が135mmHgの患者に対して適切な押圧力F2になったのを認識することができる。
【0074】
また、例えば、血圧が145mmHgであった場合には、破断部82が破断した後に、さらに内部空間S1に流体を供給する。このとき、図示しないシリンジの操作速度を緩めつつ、内部空間S1に流体を供給するのが好ましい。これにより、破断部83が破断したら直ぐに内部空間S1への流体の供給を停止することができる。よって、バルーン5が穿刺部位510を過剰に圧迫するのを確実に防止することができる。
【0075】
そして、圧力Pが圧力P3になったとき、破断部83が破断する。この破断を視認することで、押圧力Fが血圧が145mmHgの患者に対して適切な押圧力F3になったのを認識することができる。
【0076】
このように、本実施形態では、止血器具1は、血圧の異なる患者に対応することができ、汎用性に優れる。
【0077】
なお、検出用バルーン8は、装着状態では、帯体2の平面視で、帯体2から外れている、すなわち、帯体2から突出している。これにより、使用者(術者)は、装着状態で検出用バルーン8を確実に視認することができる。
【0078】
また、本実施形態では、各破断部81〜83が未だ破断していない状態において、小空間S4、S5、S6には、それぞれ、空気が充填されていない状態となっている。これにより、止血器具1が未使用状態のときに、検出用バルーン8に不本意に外力が加わって、各小空間の圧力が高まり、各破断部81〜83が破断するのを確実に防止することができる。
【0079】
また、止血器具1では、小空間S4、S5、S6に、それぞれ、空気が予め充填されていてもよい。この場合、止血器具1で止血を行っている際、破断部81〜83が破断したときに内部空間S1の圧力Pが低下するのをさらに効果的に抑制することができる。よって、押圧力Fの程度をさらに正確に把握するこができる。
【0080】
また、前述したように、注入口52と連通部53とは、バルーン5の同じ辺(辺51)に設けられている。これにより、装着状態では、検出用バルーン8と注入部7とは、止血器具1(帯体2)から同じ方向(辺51側)に突出することとなる。よって、検出用バルーン8と注入部7とが止血器具1から異なる方向に突出している場合に比べて、検出用バルーン8と注入部7とが邪魔になるのを回避することができる。その結果、止血器具1は、使い勝手が良くなる。
【0081】
次に、止血器具1の使用方法について説明する。
[1] まず、患者の血圧を測定し、その測定結果に基づいてどの破断部が破断した際に、押圧力Fの大きさが適切な大きさであるかを認識する。以下では、破断部81が破断したときに押圧力Fの大きさが適切な大きさである場合について説明する。
【0082】
[2] 止血器具1を手首500に装着する前は、バルーン5および補助バルーン6は、拡張していない状態とされている。手首500の場合、通常、動脈への穿刺部位510は、手首500の内側(腱がある側)の親指側へ片寄った位置にある。この穿刺部位510を指などで圧迫しながら、穿刺部位510上にバルーン5が位置するようにして、帯体2を手首500に巻き付け、帯体2の両端部付近を面ファスナ3にて固定(接合)する。
【0083】
[3] 止血器具1を手首500に装着したら、注入部7のコネクタ73にシリンジ(図示せず)を接続し、前述したようにして流体をバルーン5および補助バルーン6内に注入し、バルーン5および補助バルーン6を拡張させる。そして、バルーン5の内部空間S1の圧力Pが上昇し、圧力P1になったとき、破断部81が破断する。この破断を視認することで、押圧力Fが押圧力F1となったのを認識することができる。
【0084】
[4] 破断部81の破断を確認したら、バルーン5への流体の供給を停止し、コネクタ73からシリンジを離脱させる。これにより、バルーン5および補助バルーン6は、拡張状態を維持し、穿刺部位510への圧迫状態が維持される(
図2参照)。よって、高い止血効果が得られるとともに、過不足なく穿刺部位510を圧迫することができる。
【0085】
<第2実施形態>
図7は、本発明の止血器具の第2実施形態を示す底面図(手首に装着したときの内面側が見える状態)である。
【0086】
以下、この図を参照して本発明の止血器具の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0087】
本実施形態の止血器具1Aは、検出用バルーンの設置位置が異なること以外は前記第1実施形態と略同様である。
【0088】
図7に示すように、止血器具1Aでは、検出用バルーン8は、チューブ71の長手方向の途中に設けられている。検出用バルーン8の内部空間S2(小空間S3)は、チューブ71の内腔部711と連通している。このような構成によれば、検出用バルーン8の内部空間S2は、チューブ71の内腔部711を介して、バルーン5の内部空間S1と連通する。これにより、内部空間S2の圧力は、バルーン5の内部空間S1の圧力Pと等しくなる。よって、第1実施形態と同様に、検出用バルーン8は、バルーン5の穿刺部位510への押圧力Fの程度を検出することができる。
【0089】
また、止血器具1Aでは、帯体2(バルーン5)から離れた位置に設けられているため、穿刺部位510を安静にしたまま、検出用バルーン8を見やすい位置に移動させることができる。また、装着状態において、肢体に装着されている部分の構成を簡素にすることができ、よって、止血器具1Aを長時間使用した場合であっても、快適に止血を行うことができる。
【0090】
以上、本発明の止血器具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、止血器具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0091】
なお、本発明の止血器具は、手首に装着して使用するものに限らず、腕または脚(本明細書では、これらを総称して「肢体」という)のいかなる部分に装着して使用する止血器具にも適用することができる。
【0092】
また、前記各実施形態では、破断部の数は、3つであるが、本発明ではこれに限定されず、1つ、2つ、または、4つ以上であってもよい。
【0093】
また、前記各実施形態では、破断部は、検出用バルーンに設けられているが、本発明ではこれに限定されず、バルーン本体や、補助バルーンに設けられていてもよい。この場合、バルーン本体または補助バルーンの縁部付近に破断部を形成し、それらの内部空間を大空間と小空間とに仕切るのが好ましい。このような構成によれば検出用バルーンを省略することができ、止血器具をより簡素な構成にすることができる。
【0094】
また、前記各実施形態では、各破断部の破断限界を融着面積により異ならせているが、本発明ではこれに限定されず、例えば、融着条件(融着温度等)や、破断部の形状等を異ならせることにより、各破断部の破断限界を異ならせてもよい。