【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「環境調和型製鉄プロセス技術開発(STEP2)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タール含有ガス改質工程では、前記タール含有ガスを、タール改質触媒を用いて改質することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
前記タール含有ガス改質工程では、前記タール含有ガス中のタールを、常温で気体の水素、メタン、一酸化炭素を含む炭化水素に改質することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のタール含有ガスの改質方法。
前記タール含有ガス改質工程の後段に、改質後のタール含有ガス中のガス成分を連続的又は断続的に測定するガス成分測定工程を更に有し、当該測定されるガス成分の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御工程で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする請求項6に記載のタール含有ガスの改質方法。
前記タール含有ガス改質工程の圧力損失を測定する圧力損失測定工程を更に有し、当該測定される圧力損失増加の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御工程で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする請求項6に記載のタール含有ガスの改質方法。
前記タール含有ガス改質手段は、タール改質触媒を有するタール含有ガス改質処理装置を備え、前記タール含有ガス中のタールを、常温で気体の炭化水素及び水素に改質することを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載のタール含有ガスの改質システム。
前記タール含有ガス流量制御手段は、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量が、前記タール含有ガス改質手段におけるタール改質触媒の劣化に伴い、減少するように制御することを特徴とする請求項12に記載のタール含有ガスの改質システム。
前記タール含有ガス改質手段において改質された後の前記タール含有ガス中のガス成分を連続的又は断続的に測定するガス成分測定手段を更に有し、当該測定されるガス成分の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御工程で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする請求項13に記載のタール含有ガスの改質システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、炭素質原料を加熱することで発生し、通常の流量計ではタール分が流量計の内部構成に固着する等のために流量計測が困難なタール含有ガスの流量を、新規な手法で直接計測し、当該計測値に基づいてガス流量を制御することにより、当該ガスの改質、すなわち水素、一酸化炭素等の軽質化学物質への転換を効率的かつ安定して行うことができるタール含有ガスの改質方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
炭素質原料を加熱、すなわち熱分解することで発生するタール含有ガスの改質では、タール含有ガスからタールを何らかの形で除去し、タール除去後のドライなガスの流量を従来の手法により測定し、測定結果に基づいて、タール含有ガスの流量を任意に制御するのが一般的である。従って、この方法では、タール除去前のタール含有ガスの発生量及び性状(組成)が経時的に変化する場合、タールの除去、分解によって生成されたドライなガスの流量も経時的に変化することになる。この結果、改質処理装置に多大な負荷がかかるので、改質処理装置が安定した機能を発揮することが難しくなる。
【0012】
特に、タール含有ガスを発生する装置がコークス炉となる場合には、コークス炉の炉壁温度が、炉中心部の温度に比べ高くなる(すなわち、炭素質原料相内における温度勾配が生じる)。したがって、炉壁近傍に装入された炭素質原料は、炉壁からの熱によって高温となる。一方、炉内の炭素質原料は加熱されて熱分解する。即ち、炭素質原料の乾留が進行する。具体的には、600℃未満の温度領域を有する炉中心部近傍では、多量の一酸化炭素、水素、炭化水素ガス(例えばメタンガス)、タール成分等の多様なフラグメント(これを一次生成物という)が生成して炭素質原料粒子外へ放出される(これを一次熱分解という)。これらの一次生成物は、より高温度の炉壁近傍(主に炉壁と炭素質原料粒子との隙間)を経由してコークス炉から排出される。その後、これらの一次生成物は、更に熱分解されることで、低分子化される。(これを二次熱分解といい、このとき生成する生成物を二次生成物と呼ぶ。)
【0013】
このように、炭素質原料の熱分解プロセスにおいては、熱分解によって発生した一次生成物(多様なフラグメント)は、更に二次熱分解される。これによって二次生成物が生成する。そして、二次生成物同士が再結合して重合化する。例えば、高濃度のタール蒸気が重縮合することで、煤が発生する。したがって、コークス炉から発生するタール含有ガスには、一酸化炭素、水素、炭化水素ガス、芳香族化合物(例えば、タール、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)、煤)等の多様な成分が含まれる。さらに、タール含有ガスの性状及び発生量は、経時的且つ比較的大きく変化する。
【0014】
したがって、コークス炉から発生するタール含有ガスの流量を上述した方法によって制御する場合、改質処理装置に多大な負荷がかかる。一方、当該タール含有ガスの流量を直接制御する場合、上述したように、流量計へのタールの固着により流量計が誤作動を起こしやすい。その結果、改質処理装置(例えば、タール含有ガス中のタール成分を水素に変換する触媒を具備した改質処理装置)にタール含有ガスが一時的に大量に導入される場合がある。この結果、タール含有ガスに含まれるタール成分、煤等が改質処理装置を構成する機器の内部に固着、堆積して機器が破損する場合がある。また、許容値を超える高い負荷が機器にかかる等、機器にダメージが与えられる。さらに、改質処理に用いる触媒がタールや煤等により急激に劣化を起こすので、安定してタール含有ガスを改質処理することが困難となる。このように、性状及び発生量が経時変化するタール含有ガスの流量を長期間精度良く計測して一定に制御できる装置、方法が存在しなかった。
【0015】
本発明者は、上記問題を鋭意検討した結果、外部からタール含有ガス内の反応に関与しない不活性ガスをタール含有ガス中に所定流量で連続して注入し、不活性ガスが注入されたタール含有ガス中の不活性ガスの濃度を測定し、当該測定濃度に基づいて、タール含有ガスの流量を逆算することで、タール固着等の問題を有していた従来の流量計を使用せずに、タール含有ガスの流量を正確に計測できることを見出した。そして、本発明者は、当該計測値を用いてタール含有ガスの流量を的確に制御することで、タール含有ガスを安定的に改質することができることを見出して本発明を為すに至った。
【0016】
発明の要旨は以下の通りである。
(1)炭素質原料が熱分解されて生じたタール含有ガスを、
タール含有ガス改質処理装置に流量制御して導入し、前記タール含有ガスを改質する方法であって、
前記タール含有ガスを
タール含有ガス改質処理装置に連続して導入する、タール含有ガス導入工程と、
前記連続して導入したタール含有ガスに、不活性ガスを所定流量で連続して注入する、不活性ガス注入工程と、
前記不活性ガスが注入された後のタール含有ガスに含まれる、前記不活性ガスの濃度を測定する、不活性ガス濃度測定工程と、
前記所定流量で連続して注入される不活性ガスの流量と、前記測定される不活性ガスの濃度から、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を算出する、タール含有ガス流量算出工程と、
前記算出された前記タール含有ガスの流量を
所定の一定値となるように制御する、タール含有ガス流量制御工程と、
前記流量制御後のタール含有ガスを改質する、タール含有ガス改質工程と、
を有することを特徴とするタール含有ガスの改質方法。
【0017】
(2)(1)記載のタール含有ガスが、石炭を乾留した際に発生する600℃以上1000℃以下のタール含有ガスであることを特徴とする(1)に記載のタール含有ガスの
改質方法。
【0018】
(3)前記タール含有ガスが、コークス炉ガスであることを特徴とする(2)に記載のタール含有ガスの改質方法。
【0019】
(4)前記タール含有ガス改質工程では、前記タール含有ガスを、タール改質触媒を用いて改質することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のタール含有ガスの改質方法。
【0020】
(5)前記タール含有ガス改質工程では、前記タール含有ガス中のタールを、常温(例えば5〜35℃)で気体の水素、メタン、一酸化炭素を含む炭化水素に改質することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のタール含有ガスの改質方法。
【0022】
(6)前記タール含有ガス改質工程では、前記タール含有ガスを、タール改質触媒を用いて改質し、
前記タール含有ガス流量制御工程では、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量が、前記タール含有ガス改質工程におけるタール改質触媒の劣化に伴い、減少するように制御することを特徴とする(4)
又は(5)に記載のタール含有ガスの改質方法。
【0023】
(7)前記タール含有ガス改質工程の後段に、改質後のタール含有ガス中のガス成分を連続的又は断続的に測定するガス成分測定工程を更に有し、当該測定されるガス成分の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御工程で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする
(6)に記載のタール含有ガスの改質方法。
【0024】
(8)前記タール含有ガス改質工程の圧力損失を測定する圧力損失測定工程を更に有し、当該測定される圧力損失増加の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御工程で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする
(6)に記載のタール含有ガスの改質方法。
【0025】
(9)(1)〜
(8)のいずれかに記載のタール含有ガスの改質方法で使用するタール含有ガスの改質システムであって、
前記タール含有ガスを
タール含有ガス改質処理装置に連続して導入する、タール含有ガス導入手段と、
前記連続して導入したタール含有ガスに、不活性ガスを所定流量で連続して注入する、不活性ガス注入手段と、
前記不活性ガスが注入された後のタール含有ガスに含まれる、前記不活性ガスの濃度を測定する、不活性ガス濃度測定手段と、
前記所定流量で連続して注入される
不活性ガスの流量と、前記測定される不活性ガスの濃度から、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を算出する、タール含有ガス流量算出手段と、
前記算出された前記タール含有ガスの流量を
所定の一定値になるように制御する、タール含有ガス流量制御手段と、
前記流量制御後のタール含有ガスを改質する、タール含有ガス改質手段と、
を有することを特徴とするタール含有ガスの改質システム。
【0026】
(10)(3)〜
(8)のいずれかに記載のタール含有ガスの改質方法で使用するタール含有ガスの改質システムであって、
前記タール含有ガスは、コークス炉ガスであり、
前記タール含有ガスの改質システムは、
コークス炉から発生するタール含有ガスの一部を、
タール含有ガス改質処理装置に連続して導入する抽気管と、
前記抽気管内のタール含有ガスに、不活性ガスを所定流量で連続して注入する不活性ガス注入手段と、
前記不活性ガスが注入された後のタール含有ガスに含まれる、前記不活性ガスの濃度を測定する、不活性ガス濃度測定手段と、
前記所定流量で連続して注入される
不活性ガスの流量と、前記測定される不活性ガスの濃度から、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を算出する、タール含有ガス流量算出手段と、
前記算出された前記タール含有ガスの流量を
所定の一定値になるように制御する、タール含有ガス流量制御手段と、
前記流量制御後のタール含有ガスを改質する、タール含有ガス改質手段と、
を有することを特徴とするタール含有ガスの改質システム。
【0027】
(11)前記タール含有ガス流量制御手段が、流量制御部と流量調整弁を備えることを特徴とする
(9)又は
(10)に記載のタール含有ガスの改質システム。
【0028】
(12)前記タール含有ガス改質手段は、タール改質触媒を有するタール含有ガス改質システムを備え、前記タール含有ガス中のタールを、常温で気体の炭化水素及び水素に改質することを特徴とする
(9)〜
(11)のいずれかに記載のタール含有ガスの改質システム。
【0029】
(13)前記タール含有ガス流量制御手段は、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量が、前記タール含有ガス改質手段におけるタール改質触媒の劣化に伴い、減少するように制御することを特徴とする
(12)記載のタール含有ガスの改質システム。
【0030】
(14)前記タール含有ガス改質手段において改質された後の前記タール含有ガス中のガス成分を連続的又は断続的に測定するガス成分測定手段を更に有し、当該測定されるガス成分の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記コークス炉ガス流量制御工程で、前記連続して導入される
タール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする
(13)に記載のタール含有ガスの改質システム。
【0031】
(15)前記タール含有ガス改質
手段における圧力損失を測定する圧力損失測定手段を更に有し、当該測定される圧力損失増加の時間的変化を、前記タール改質触媒の劣化と捉えて、前記タール含有ガス流量制御手段で、前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を減少するように制御することを特徴とする
(13)に記載のタール含有ガスの改質システム。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、タール含有ガスの流量を直接正確に測定し、当該測定値を用いてタール含有ガスの流量を制御することにより、タール含有ガスを効率的かつ安定的に改質することが可能となる。特に、改質に際して触媒を使用する場合には、本発明は、触媒の劣化に合せてタール含有ガスの流量を調整することができるため、タール含有ガスの改質をより効率的かつ安定的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を実施するための形態を詳細に述べる。
本実施形態に係るタール含有ガスの改質方法は、炭素質原料が熱分解されて生じた付着性の高いタール含有ガスを、流量制御して改質工程(すなわち改質処理装置)に導入し、前記タール含有ガスを安定的に改質するものである。具体的には、前記タール含有ガスを連続して導入するタール含有ガス導入工程と、前記連続して導入したタール含有ガスに、不活性ガスを所定流量で連続して注入する不活性ガス注入工程と、前記不活性ガスが注入された後のタール含有ガスに含まれる前記不活性ガスの濃度を測定する不活性ガス濃度測定工程と、前記所定流量で連続して注入される不活性ガスの流量と前記測定される不活性ガスの濃度から前記連続して導入されるタール含有ガスの流量を算出するタール含有ガス流量算出工程と、前記算出された前記タール含有ガスの流量を制御するタール含有ガス流量制御工程と、前記流量制御後のタール含有ガスを改質するタール含有ガス改質工程と、を有することを特徴とする。
【0035】
すなわち、本実施形態の主な特徴は、炭素質原料を加熱して発生するタール含有ガスに対し、外部から一定の流量で不活性ガスを導入することで混合ガスを生成し、この混合ガスに含まれる不活性ガスの濃度をガス分析計で計測し、計測値からタール含有ガスの流量を逆算することである。これにより、本実施形態は、タール蒸気を含むウエットなガス、即ちタール含有ガスの流量を、非接触でリアルタイム、且つ、正確に計測することができ、それを基にガス流量を制御することができる。これにより、本実施形態は、改質処理システムの能力を最大限かつ長時間安定に発現することができる。
【0036】
本実施形態に係る炭素質原料とは、炭素を含み、熱分解してタールを生成する原料である。炭素質原料は、石炭、バイオマス、プラスチックの容器包装類等、構成元素に炭素を含む広範なものである。中でもバイオマスは、木質系廃棄物(例えば林地残材、間伐材、未利用樹、製材残材、建設廃材、稲わら等)、木質系廃棄物を原料とした二次製品(例えば木質チップ、ペレット等)、再生紙として再利用できなくなった製紙系廃棄物(例えば古紙等)、農業残渣、厨芥類等の食品廃棄物、活性汚泥等である。
【0037】
また、炭素質原料の熱分解とは、上記炭素質原料などの有機化合物を、酸素の存在しない非酸化性雰囲気下、高温にすることによって行われる化学分解を意味する。
【0038】
さらに、炭素質原料を熱分解した際に発生するタールとは、熱分解される原料により性状が異なるが、炭素原子を5個以上含む化学構造を有し、常温で液体の有機化合物である。より具体的には、タールは、鎖式炭化水素や芳香族炭化水素等からなる混合物である。石炭の熱分解によって生成されるタールは、例えば、ナフタレン、フェナンスレン、ピレン、アントラセン等の縮合多環芳香族等を主成分として含み、木質系廃棄物の熱分解によって生成されるタールは、例えば、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェノール等を主成分として含む。食品廃棄物の熱分解によって生成されるタールは、例えば、上記以外に窒素等の異種元素を含む六員環又は五員環、即ち複素環を有するヘテロ化合物(例えばインドール、ピロール等)も含む。もちろん、本実施形態のタールは、上記のものに限られない。タールは、炭素質原料の熱分解直後の高温状態ではガス状で存在する。また、タールは、ほぼ室温に冷却された精製後の石炭乾留ガス中ではミスト状又は液滴状で存在する。
【0039】
なお、炭素質原料の熱分解に用いられる装置、すなわち、タール含有ガス発生装置としては、石炭を原料とする場合には一般にコークス炉が用いられ、バイオマスを原料とする場合には外熱式ロータリーキルンや移動床炉、流動床炉等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0040】
また、不活性ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどからなる群から選ばれるガスである。不活性ガスは、タール含有ガスに含まれる成分、例えば有機化合物(例えば、タール、メタン等)、水素、一酸化炭素等との間で反応を起こさずに安定に存在する。不活性ガスは、タール含有ガスを連続して導入する期間中、変質せずに一定の流量を保つことができる。
【0041】
タール含有ガス中の不活性ガス濃度は、例えば、以下の方法で測定することができる。
(1)タール含有ガス発生装置からタール含有ガス改質処理装置へ向かう配管の途中で、不活性ガスを一定流量導入する(不活性ガス導入後のガス、即ちタール含有ガスと不活性ガスとが混合されたガスを「混合ガス」とも言う)。
【0042】
(2)次に、混合ガスの一部を抜き出し、当該抜き出した混合ガス中の不活性ガス濃度を分析する。
具体的には、一部抜き出した混合ガスを冷却して、ガス中のタール及び水分を除去することで、混合ガスをドライガスとする。そして、ドライガスを分析装置に導入し、分析装置によって不活性ガス濃度を分析することが好ましい。混合ガスからタール及び水分を除去しない場合、タール及び水分が分析装置内で凝縮、固着しないように、即ちタール及び水分がガス状態を維持するために混合ガスを高温に保持する必要がある。したがって、加熱装置が別途必要になるので、本実施形態を実現するためのコストが高くなる。また、加熱装置の設置は極めて難しい。
【0043】
タール含有ガスに含まれるタール及び水分の割合自体は、タール含有ガスの流量が変動しても、余り変動しない場合が多い。このため、ドライ化されたタール含有ガス(以下、ドライ化タール含有ガスとも称する)の流量を測定し、測定値が安定するようにタール含有ガスの流量を制御することで、タール改質反応を安定して進めることができる。
【0044】
また、タール含有ガスを冷却した場合でも、タール及び水分も含めた正確なガス流量を求めることは可能である。具体的には、タール、水分及びそれらを除去したドライガスを各々個別にバッチサンプリングで回収してそれぞれの量を測定する。そして、タール及び水分の単位時間当たりの回収量をガス流量に換算し、計測装置により求めたドライガスの流量に、当該換算ガス流量を加えることで、トータルガス流量を求めればよい。タール含有ガス中のタール及び水蒸気の割合が、例えば、10%以上と多い場合には、ドライガス流量よりも、水分及びタールを含むトータルのガス流量に基づいてタール含有ガスの流量を調整することが精度的には好ましいことがある。ただし、水分及びタールを含むトータルのガス流量を測定する方法では、分析に数時間以上を要することから、短期のガス流量変動に対応することは難しい。したがって、タール含有ガスの流量が頻繁に変わる場合には、ドライ化タール含有ガスの流量に基づいて、タール含有ガスの流量を制御することが好ましい。
【0045】
(3)そして、不活性ガスの導入流量と、分析した不活性ガス濃度とに基づいて、以下のようにドライ化タール含有ガスの流量を算出する。すなわち、不活性ガスを一定流量導入した後の混合ガスを、タール及び水分を除去した後に分析装置へ導入し、不活性ガスを含む各成分の濃度を測定する。そして、不活性ガスの濃度と前記不活性ガス流量から逆算して、ドライ化タール含有ガスの流量を割り出す。
【0046】
例えば、不活性ガスの流量(導入流量)がXNm
3/h、混合ガス中の不活性ガス濃度がY%であった場合、ドライ化タール含有ガスそのものの流量は以下の(1)式で表わされる。
【0047】
(ドライ化タール含有ガスの流量)=X/Y×100−X ・・・(1)
【0048】
上記測定方法により、経時変化するタール含有ガスの流量を、間接的に(すなわち、ドライ化タール含有ガスの流量として)、かつ正確に測定することができる。このため、本実施例では、当該測定値に基づいて、タール含有ガス発生装置からのタール含有ガス導入量(すなわちタール含有ガスの流量)を制御することで、タール改質処理装置へ導入されるタール含有ガス流量を安定的に制御できる。これにより、タール改質反応も安定的に進めることができる。
【0049】
以下に、本実施形態の一例を挙げて、さらに詳細に説明する。
<装置構成および概要>
図1を用いて、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る改質処理システムは、タール含有ガス発生装置1と、抽気管2と、導入管2’と、開閉弁3と、不活性ガス定量供給装置4と、不活性ガス濃度分析装置5(以下、単に「分析装置5」とも称する)と、タール含有ガス改質処理装置6(以下、単に「改質処理装置6」とも称する)と、冷却装置7と、改質ガス分析装置8と、ブロワー9と、流量調節装置10と、バイパス弁11と、改質ガス貯留装置12とを備える。
【0050】
タール含有ガス発生装置1には、抽気管2、開閉弁3、及び導入管2’が接続され、導入管2’にはタール含有ガス改質処理装置6が接続される。タール含有ガス発生装置1から発生したタール含有ガスは、抽気管2、開閉弁3、及び導入管2’を通ってタール含有ガス改質処理装置6に導入される。
【0051】
導入管2’(即ち、開閉弁3と改質処理装置6とを連結する流路)の途中に不活性ガス定量供給装置4を組み入れ、導入管2’のうち、不活性ガス定量供給装置4が組み込まれた部分よりも下流側の部分に不活性ガス濃度分析装置5を配する。
【0052】
ここで、不活性ガス定量供給装置4は、ヘリウム、アルゴン、クリプトンなどの不活性ガスを設定した任意の流量で改質処理装置6に安定して供給することができれば良い。ここで、不活性ガスの流量を制御する方法としては、流量センサーを不活性ガス定量供給装置4と導入管2’との間の流路に配置し、当該流路を通過した不活性ガスの流量に比例した温度変化を検出し、当該温度変化に基づいて不活性ガスの流量を制御する方法が挙げられるが、それに制限されるものではない。
【0053】
ここで、不活性ガスの濃度は、不活性ガス濃度を分析する分析装置の分析精度にもよるが、例えば、混合ガスの総体積に対して1%〜50%(体積%)であることが好ましい。不活性ガスの濃度が1%未満だと、分析値の変動差が小さいため、濃度の計測値に基づいてタール含有ガスの流量を高精度に制御することが困難になる恐れがある。タール含有ガス中のArガス含有量は少ないため、不活性ガスとしてArガスを使用した場合であっても、1%以上の濃度があれば問題無く本発明を適用できる。一方、不活性ガスの濃度が50%を超えてしまうと、処理すべきタール含有ガスの濃度が低くなるため、タール含有ガスの処理量が大幅に低下する恐れがある。尚、混合ガスの分析装置5への抜き出し量は分析装置5に最低限必要な量であればよく、分析装置としてガスクロマトグラフ分析装置を用いる場合には、例えば、機種にもよるが、200Ncm
3/min程度が好ましい。
【0054】
抽気管2、開閉弁3、導入管2’、改質処理装置6の一連の機械要素は、保温・加熱機構を備えており、タール含有ガス改質時には、温度を600℃以上、より好ましくは、800℃以上に保持して、各機器内でのタールの凝縮を防止する。
【0055】
タール含有ガス改質処理装置6で処理されたガスは、適宜冷却装置7で冷却されて改質ガス貯留装置12に供給される。
【0056】
タール含有ガスの改質処理装置6への流入量、すなわちタール含有ガスの流量は、不活性ガス定量供給装置4からの不活性ガスの導入流量と不活性ガス濃度分析装置5により分析された不活性ガスの濃度とに基づいて相対的に(すなわち、ドライ化タール含有ガスの流量として)算出される。そして、タール含有ガスの流量は、流量調節装置10がブロワー9の通気能力とバイパス弁11の開度を調整することにより所望の値に制御される。
【0057】
タール含有ガス改質処理装置6内での通気抵抗が大きい場合には、冷却後の改質ガスをブロワー9で吸引することで、タール含有ガスの流量を確保してもよい。但し、ブロワー能力限界近くまで通気抵抗が上昇した場合には、バイパス弁11を開放すればよい。これにより、改質ガスの一部がブロワーから分岐した流路を通って改質ガス貯留装置へ流れるようになる。
【0058】
また、冷却装置7によって常温程度まで冷却された改質ガスは、タール分の除去されたドライなものであるので、その操作には市販の一般的なブロワー、弁等を用いることができる。冷却装置7には、市販のスクラバー等を用いることができる。また、改質ガス中のダストによる閉塞の恐れがある場合には、管路系の途中に適宜、サイクロン等の集塵機を設けてもよい。分析装置8は、改質ガスの性状、流量等を分析するものである。
【0059】
なお、タール含有ガスと不活性ガスとの混合ガスを分析装置5に流入させる流路、すなわち、不活性ガス定量供給装置4と不活性ガス濃度分析装置5との間の流路と、タール含有ガス改質処理装置6と改質ガス分析装置8との間の流路との双方に、タールを除去するトラップ(除去槽)、ガス洗浄瓶、及びガス前処理装置などを配置することで、ガス中のタール・油、水やダスト・チャー成分を十分に除去することが特に好ましい。一方で、これらの機器の内容積が大きくなりすぎると、ガスが分析装置5または8に流入するまでに時間がかかり、ひいてはタイムリーな分析が行えない場合がある。このため、これらの機器の内容積が大きすぎることは好ましくない。具体的な内容積は、分析装置5または8が行う分析処理の間のインターバル時間に応じて適宜決定されれば良い。
【0060】
トラップの容器は筒状でも箱状でも良く、内部のフィルターは、タール蒸気、液滴を効率的に吸着除去し、且つ、圧力損失が高くならないものが好ましい。このようなフィルターの好適な例としては、例えば、繊維状のフィルター、円筒濾紙、セラミックキャンドルフィルターなどが挙げられる。ガス洗浄瓶は一般的なもので良く、瓶の内部はタールを含有した有機化合物成分を溶解する能力のある有機溶媒、例えば、ジクロロメタン、水等で満たされていることが好ましい。また、ガス前処理装置は市販のものを使うことができる。ガス前処理装置は、分析装置5または8の故障の原因となる被検ガス中の微粒子(例えば水分やダスト・チャーなどで構成される微粒子)を除去する構成、これらの微粒子が除去された被検ガスを一定の流量で安定的にポンプ輸送する構成を備えていることが好ましい。ここで、水分を除去する構成の好適な例としては、電子クーラーにより水分を凝縮し、凝縮された水分をドレンとしてガス前処理装置外へ排出する構成が挙げられ、ダストやチャーを除去する構成の好適な例としては、濾紙などのフィルターが据え付けられている構成が挙げられる。
【0061】
また、タール含有ガスの流量を制御する具体的な方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。すなわち、タール含有ガス改質処理装置6を操業する一方で、分析装置5によりタール含有ガスに導入した不活性ガスの濃度を連続的に分析する。このような分析装置5としては、ガスクロマトグラフ分析装置や質量分析装置などが挙げられる。そして、分析装置5から得られた不活性ガス濃度の分析値と、不活性ガスの導入流量とから逆算してタール含有ガスの流量を相対的に算出する。そして、この値が所望の値になるように、ブロワー9の通気能力とバイパス弁11の開度を調整する。タール含有ガスの流量を制御する他の方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、本システムを模擬した試験装置を用いて、タール含有ガスの流量とブロワー9の通気能力及びバイパス弁11の開度との対応関係を予め求める。そして、実際のシステムでは、当該対応関係と、タール含有ガスの流量の測定値(混合ガス中の不活性ガス濃度と不活性ガスの導入流量とに基づいて逆算された値)とに基づいて、ブロワー9の通気能力及びバイパス弁11の開度を調整する。もちろん、タール含有ガスの流量を制御する方法は、これらに限られない。
【0062】
さらに、以下で示すタール含有ガス改質処理装置に触媒を充填した場合、タール含有ガスの連続的な流入により、ガス中の不純物やタール等で触媒表面が被毒、汚染されて時間と共に機能が低下する。そこで、触媒の機能低下(劣化)に応じてタール含有ガスの流量を調整することが好ましい。触媒の劣化に応じてタール含有ガスの流量を調整する方法としては、例えば、タール含有ガス改質処理装置6前後に配するガス分析装置5、8で分析されたガス組成やガス流量の変化に基づいて触媒機能の劣化程度を推定し、推定結果に基づいて、ブロワー9の通気能力及びバイパス弁11の開度を微調整することなどを挙げることができる。
【0063】
さらに、タール含有ガス改質処理装置6が触媒を用いない高温ガス化炉となる場合、タール含有ガスの連続的な流入により、高温で分解した煤を含むチャーなどの固形物が管内壁へ付着、堆積する。この結果、ガス流路が徐々に詰まり、圧力損失が高まる。したがって、タール含有ガス改質処理装置6が高温ガス化炉となる場合には、ガス流路の圧力損失を推定し、推定結果に基づいて、ブロワー9の通気能力及びバイパス弁11の開度を微調整してもよい。すなわち、改質処理装置6の種類に応じてシステムの劣化程度を示すパラメータは異なるが、これらのパラメータに応じてタール含有ガスの流量を調整してもよい。
【0064】
以下、各装置について詳細に説明する。
<タール含有ガス発生装置>
タール含有ガス発生装置は、例えば炭素質原料を、無酸素雰囲気、あるいは、低酸素濃度雰囲気の下で加熱する装置である。炭素質原料の加熱によって、主に水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素を含んだガス(気体)と、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素成分やメタノール、酢酸、アセトンなどの鎖式炭化水素成分を含んだタールなどの油分(液体)と、煤などの純粋な炭素や灰分とからなるチャー(固体)が発生する。タール含有ガスは、これらの成分を含む。タール含有ガスの温度は特に制限されないが、コークス炉から発生するタール含有ガスは、600℃以上の温度を有する。タール含有ガスの温度の上限値は特に制限されないが、1000℃であることが好ましい。タール含有ガスの温度が1000℃を超えると、無触媒で高温分解反応が進んでしまう可能性があるからである。
【0065】
本実施形態で用いられるタール含有ガス発生装置(すなわち加熱装置)としては、特に制限するものではない。タール含有ガス発生装置の好適な例としては、ガス化溶融炉、コークス炉、石炭ガス化炉、ロータリーキルン式熱分解炉(外部加熱式熱分解炉)、一括投入型熱分解炉(自燃式熱分解炉)または焼成炉等が挙げられる。
【0066】
<タール含有ガス改質処理装置>
タール含有ガス改質処理装置は、例えば、タール含有ガス中のタールを、常温で気体の水素、メタン、一酸化炭素を含む炭化水素に改質する装置である。タール含有ガス改質処理装置には、例えば、水蒸気改質触媒、二酸化炭素改質触媒、部分酸化改質触媒、及び、シフト触媒の群から選ばれる少なくとも1種類からなる金属酸化物触媒を充填した触媒充填槽が配置される。ただし、本装置にタール含有ガスを供給しても圧力損失を生じることのないような触媒充填槽を用いることが好ましい。また、本装置は600℃以上1000℃以下程度の温度に加熱されるため、本装置並びに触媒充填槽に関しても、その温度に耐え得る材質且つ構造のものであることが好ましい。本装置並びに触媒充填槽を構成する素材としては、例えば、SUS310S等の耐熱ステンレス、耐熱ニッケル合金、又は、耐熱セラミックスを好適に用いることができる。なお、本実施形態のタール含有ガス改質処理装置は、触媒を含んでいなくてもよい。このような改質処理装置としては、例えば上述した高温ガス化炉等が挙げられる。
【0067】
<抽気管及び導入管>
抽気管2及び導入管2’としては、SUS310S等の耐熱ステンレス製、耐熱ニッケル合金製、又は、耐熱セラミックス製の管を使用することができる。本実施形態では、タール含有ガスをタール改質反応が促進される温度以上(例えば700℃以上)1000℃以下に保持することが必要である。一方、管路の長さが長くなる場合は、温度低下が懸念される。したがって、抽気管2及び導入管2’は、ヒーター付の管であることが好ましい。当該温度域では、タールの凝縮は生じにくいものの、高温でのタール含有ガス熱分解による管路内面への炭素の析出は避けられない。このため、管路閉塞防止の観点から、ヒーター付抽気管2及び導入管2’の内径は、ヒーターの加熱能力やタール含有ガス発生装置及び他設備の配置制約を考慮に入れながらも、できるだけ大きいことが好ましい。
【0068】
<開閉弁>
開閉弁3は、高温下でタールやダストを含んだタール含有ガスが流通する経路の中間に配置され、必要都度、ガスの流通や閉止を高い精度で行うためのものである。より具体的には、開閉弁3は、タール含有ガス発生装置内の温度、具体的には、600℃以上、より好ましくは、800℃以上の高温に耐え、コーキングによるカーボンの析出や、ダストの噛み込みによっても動作が阻害されないものであればどのような形式のものであってもよい。本実施形態の開閉弁3としては、例えば、耐熱ボール弁や耐熱ニードル弁などが好適に利用できる。
【0069】
<構造材の材質>
タール含有ガス発生装置や、タール含有ガス改質処理装置の内部に配置される材料は、常温から1000℃程度の高温までの環境において、所要の強度、剛性、耐久性、耐硫黄腐食性を有したものであればどのようなものであってもよい。例えば、熱で変形する恐れのある部品(例えば、導入管など)には、SUS310S等の耐熱ステンレス鋼、又は、インコネルやハステロイ等の耐熱ニッケル合金等の金属を用いることができる。これ以外の部品には、前記の材料に加えて、シリカ、アルミナ等の一般的な耐熱用セラミックスを用いることができる。尚、耐酸化性の低い材料を用いる場合には、炉内を非酸化性雰囲気、例えば、窒素雰囲気に維持すればよい。
【0070】
<冷却装置>
冷却装置7は、改質ガスをブロワー9の使用温度域まで効率的に冷却できる装置であればどのようなものであってもよい。冷却装置7としては、例えば、高温の改質ガスと対向流になるように常温付近の冷却水をフラッシングすることで改質ガスを冷却するスクラバー方式の装置を好適に使用することができる。また、この冷却装置7には、冷却水を循環して再利用するための循環ポンプを連結することが、冷却水の効率的使用の観点からより好ましい。また、冷却装置7には、改質ガスと冷媒とが直接接触しない間接式の熱交換器を使用することもできる。
【0071】
<触媒>
本実施形態の触媒、すなわちタール含有ガス改質処理装置に用いられる触媒には、タール含有ガス中のタール蒸気を初めとする600℃において気体状で存在する炭化水素化合物を、水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素等へ改質する機能を有し、炭化水素の水蒸気改質反応、二酸化炭素改質反応、部分酸化改質反応に用いられるNi系触媒、Co系触媒や、Ruなどの貴金属系触媒等を好適に用いることができる。
【0072】
また、本実施形態の触媒には、シフト反応(一酸化炭素転化反応)に用いられる酸化鉄系触媒、酸化銅系触媒等を好適に用いることができる。もちろん、本実施形態の触媒は、特にこれらに限定されるものではない。
【0073】
さらに、本実施形態の触媒は、粉末であってもよいし、成型体であっても良い。触媒が粉末となる場合、触媒の粒径や表面積を適宜調整することが好ましい。また、触媒が成型体となる場合、触媒の表面積と強度との兼ね合いを考慮しつつ、細孔容積、細孔径、形状等を適宜調整することが好ましい。成型体の形態は球状、シリンダー状、リング状、ホイール状、タブレット状、ペレット状、フレーク状、粒状等いずれでもよい。本実施形態の触媒は、さらに金属又はセラミックスのハニカム状基材へ触媒成分をコーティングしたもの等であってもよい。
【0074】
ここで、上記触媒は使用前に還元されることが好ましいが、タール含有ガス中に多量の水素が含まれるため反応中に還元が進行することから、還元されなくても良い。
【0075】
ただし、特に触媒が反応前に還元処理を必要とする場合、上記触媒は使用前に還元されることが特に好ましい。この場合の還元条件としては、比較的高温で且つ還元性雰囲気であれば特に制限されるものではないが、例えば、水素、一酸化炭素、メタンの少なくともいずれかを含むガス雰囲気下、又はそれら還元性ガスに水蒸気を混合したガス雰囲気下、又はそれらのガスに窒素等の不活性ガスを混合した雰囲気下であっても良い。
【0076】
また、還元温度は、例えば500℃〜1000℃が好適であり、還元時間は充填する触媒量にも依存し、例えば30分〜8時間が好適である。還元時間は、充填した触媒全体が還元するのに必要な時間であればよく、特にこの条件に制限されるものではない。
【0077】
なお、炭素質原料を熱分解した際に発生するタールは、熱分解される原料により性状が異なるが、炭素原子が5個以上含まれた常温で液体の有機化合物であって、鎖式炭化水素や芳香族炭化水素等からなる混合物である。石炭の熱分解によって生成されたタールは、例えば、ナフタレン、フェナンスレン、ピレン、アントラセン等の縮合多環芳香族等を主成分として含む。バイオマス、特に木質系廃棄物の熱分解によって生成されたタールは、例えば、ベンゼン、トルエン、ナフタレン、インデン、アントラセン、フェノール等を主成分として含む。食品廃棄物系バイオマスの熱分解によって生成されたタールは、例えば、上記以外にヘテロ化合物も含む。ヘテロ化合物は、例えば、酸素や窒素等の異種元素を含む六員環又は五員環、即ち複素環を含む化合物であり、ヘテロ化合物の具体例としては、インドール、ピロール等が挙げられる。本実施形態のタールは、上記で列挙した成分以外の成分を含んでいてもよい。また、タール含有ガス中のタール濃度(割合)は、炭素質原料の種類、熱分解方法、熱分解履歴や経過時間に大きく依存するが、例えば、1mg/Nm
3以上、数百g/Nm
3程度となることがある。さらに、タール含有ガス中の水分の濃度(割合)は、炭素質原料の種類だけでなく、保存期間中の水分との接触状態、期間などに大きく依存するが、例えば、数%以上、数十%程度となることがある。
【0078】
また、触媒反応器としては、触媒が粉末の場合には流動床形式や移動床形式の反応器等が、触媒が成型体であれば固定床形式や移動床形式の反応器等が好適に用いられる。触媒層の入口温度としては、600〜1100℃であることが好ましい。触媒層の入口温度が600℃未満の場合は、触媒活性が殆ど発揮されず、目的とする水素富化ガスが得られないため好ましくない。一方、触媒層の入口温度が1100℃を超える場合は、反応器の耐熱構造化が必要になる等、改質装置が高価になるため経済的に不利となる。また、触媒層の入口温度は、600〜1000℃であることがより好ましい。
【0079】
ここで、特にタール含有ガス発生装置がコークス炉となる場合、コークス炉からの抽気管をタール含有ガス改質処理装置6に直接配置することによって、コークス炉から発生した高温の粗コークス炉ガス(COG)を、温度を維持したままタール含有ガス改質処理装置6に供給することができる。この場合、本実施形態の改質システムは、水素富化コークス炉ガスを製造することができ、その結果、粗COGが有する顕熱を有効に利用することが可能になる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例2以降では、実施例1との相違点について特に説明する。
(実施例1)
図1に示す改質システムを用いてタール含有ガスの改質反応を実施した。ここで、タール含有ガス改質工程で用いる触媒は、以下のようにして作成した。硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムを各金属元素のモル比が1:9になるように精秤して、これらの混合物の水溶液、即ち混合水溶液を調製した。この混合水溶液を60℃に加温し、60℃に加温した炭酸カリウム水溶液を加えて、ニッケルとマグネシウムを水酸化物として共沈させた。ついで、混合水溶液をスターラーで十分に攪拌した。その後、混合水溶液を60℃に保持したまま一定時間攪拌を続けることで熟成を行った。ついで、混合水溶液の吸引ろ過を行うことで沈殿物を回収し、回収した沈殿物を80℃の純水で十分に洗浄を行った。洗浄後に得られた沈殿物を120℃で乾燥し粗粉砕した後、空気中600℃で焼成(か焼)した。ついで、か焼後の沈殿物をビーカーに入れ、アルミナゾルをビーカーに加えて攪拌羽を取り付けた混合器でこれらを十分混合した。ついで、混合物をなすフラスコに移し、なすフラスコをロータリーエバポレーターに取り付けた。ついで、混合物を攪拌しながら吸引することで、水分を蒸発させた。なすフラスコ壁面に付着したニッケルとマグネシウムとアルミナの混合物を蒸発皿に移して120℃で乾燥し、600℃でか焼した。か焼後の粉末を金型を用いて、外径約20mmφ、内径約5mmφで高さが約20mmの一穴リング状にプレス成型することで、リング成型体を得た。その成型体を空気中1100℃で焼成することで、Ni
0.1Mg
0.9Oにアルミナがアルミナ及びNi
0.1Mg
0.9Oの総質量に対して50質量%の割合で混合された触媒成型体を調製した。
【0081】
次に、本触媒を用いたタール含有ガスの改質方法を以下に示す。電気加熱方式の箱型炉(タール含有ガス発生装置)に石炭を80kg充填し、800℃に昇温することで、石炭乾留タール含有ガスを発生させた。タール含有ガス中のタール濃度を質量分析計およびガスクロマトグラフ分析計で測定したところ、約0.04g/Lであった。ここで得られたタール含有ガスは、一旦室温付近に冷却された後に加熱ヒーターで約800℃になるよう昇温された。昇温後のタール含有ガスを実験に用いた。このタール含有ガス発生装置の後段に、タール含有ガス改質処理装置として800℃に加熱した電気炉を設置した。そして、この電気炉の内部に反応管を配置し、反応管の中央部に上記の要領で調製した触媒成形体を設置した。触媒充填量は約1Lとした。
【0082】
改質処理を始める前に、水素を10NL/minで反応管内に通じて触媒を2時間還元した。その後、大量の窒素ガスを反応管内に流通させることにより装置内を一旦、窒素で置換した。その後、装置内へアルゴンを、マスフローコントローラー(図中不活性ガス定量供給装置4に相当)を用いて500Ncm
3/minとなるように制御して注入した。注入場所は、触媒層よりも電気炉の入口側とした。アルゴンの注入は、不活性ガス定量供給装置4からタール含有ガスに不活性ガスを注入する処理に相当する。その後、箱型炉から発生したガスを装置内に導くことにより、石炭乾留タール含有ガス及び随伴実タールの触媒分解活性を5時間継続して評価した。
【0083】
ここで、反応管入口から混合ガス(アルゴン及び反応前のタール含有ガスを含むガス)の一部(約200Ncm
3/min)を抜き出した。そして抜き出した混合ガスからタールトラップでタールを、冷媒で冷やした水トラップで水を除去した。なお、これらのトラップは後述する実施例2以降のシステムにも備えられている。その後、タール及び水分が除去された混合ガス、すなわちドライガスをガスクロマトグラフ分析計へ導き、ガス成分中のアルゴン濃度を分析した。そして、アルゴン濃度から逆算することで、ドライ化タール含有ガスの流量を算出した。そして、算出されたドライ化タール含有ガスの流量が10NL/minとなるように吸引装置(ブロワー9に相当)を調整した。以下、電気炉の入口に導入されるタール含有ガスを「入口ガス」とも称する。尚、入口ガス組成は実コークス炉ガスとほぼ同じ組成であることを質量分析計およびガスクロマトグラフ分析計で確認した。
【0084】
具体的には、入口ガス中には、原料である石炭に含まれている約質量8%(石炭の総質量に対する質量%)の水分が揮発し、水蒸気となって含まれていた。さらに、入口ガス中にはタールが0.6g/min、硫化水素が1200〜1600ppmの割合(濃度)で含まれていることを確認した。ここで、入口ガス中のタール濃度は、以下の方法で評価した。すなわち、触媒層の入口と出口部に取り付けた開閉可能なコックに、予め真空状態にした1Lの真空捕集瓶を取り付けた。そしてコックを開けることにより、各々のガス、すなわち入口ガスと触媒層を通った後の入口ガス(すなわち出口ガス)を捕集した。そして、捕集瓶内をジクロロメタンで洗浄し、常温でジクロロメタンを完全に除去した後の液体成分の質量を定量した。そして、入口ガスに含まれる液体成分の質量を入口ガス中のタール成分の質量とした。そして、この質量に基づいて、入口ガス中のタール濃度を算出した。そして、タール分解率は、前記手法で捕集した入口ガス中タール成分の質量に対する出口ガス中タール成分の質量の割合から求めた。
【0085】
その結果、入口ガス流量(具体的には、ドライ化タール含有ガスの流量)を10±0.2NL/minで制御でき、入口ガス中水素モル数に対する出口ガス中水素モル数の比で表わされる水素増幅率は、反応開始初期は3を超える数値を示したが、その後原料中の硫黄分による被毒で触媒の活性が劣化して徐々に下がり、約2.2前後で落ち着いた。なお、水素増幅率は、質量分析計およびガスクロマトグラフ分析計で測定した。それ以降は活性の劣化が見られなかったことから、原料ガスの流量は10NL/minのままで保持するよう制御して、ガス発生が停止する5時間の間、試験運転を行った。この間、触媒槽内の圧力損失(槽入口と出口の圧力差)を圧力計を用いて測定したが、特に高くなることなく安定に稼働させることができ、最終的にタール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で88%、水素増幅率は運転期間(5時間)平均で約2.2という結果が得られた。
【0086】
(実施例2)
タール含有ガス改質処理装置において、反応管入口部にガス化ヘッド部を設け、水蒸気と酸素をマスフローコントローラーで注入することができるようにし、触媒を用いないようにしたこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。ここで、ガス化ヘッド部に供給する酸素および水蒸気の供給量は、入口ガス中の炭化水素の炭素モル数に対する酸素モル数が0.5、炭素モル数に対する水蒸気のモル数が2.0とした。なお、入口ガス中の炭化水素の炭素モル数は、質量分析計およびガスクロマトグラフ分析計で測定した。また、ヘッド部内温度を1500℃以下に調整した。これらの処理により、タール含有ガスを部分酸化反応により改質した。その結果、反応開始当初から水素増幅率は約1.8前後で安定していたため、ドライ化タール含有ガスの流量は10NL/minのままで保持するよう制御して、5時間の間、試験運転を行った。この間、部分酸化反応が進行したため、ガス化ヘッド部には、タールの付着はなく、煤の堆積もほとんどなく、安定に稼働させることができた。最終的にタール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で98%、水素増幅率は運転期間(5時間)平均で約1.8という結果が得られた。
【0087】
(実施例3)
製鉄所内で主に燃料用に用いられる精製COGを、その配管から一部抽気して実験装置へ導入する以外は、実施例1と同様にして実験を行った。精製後のCOG中には、硫化水素が50〜60ppm、タール成分は0.1g/Nm
3含まれていた。各成分の濃度は、実施例1と同様に測定された。精製COGへアルゴンを500Ncm
3/min供給し、改質処理装置入口部から抜き出したガス成分の分析により、入口ガス流量(具体的には、ドライ化タール含有ガスの流量)を10NL/minとなるように精製COG供給装置を調整した。その結果、反応開始以降数時間に亘り、ガス分析計で測定された水素濃度が反応時間の経過と共に徐々に低下、すなわち触媒活性の指標となる水素増幅率が徐々に低下した。そこで、反応開始約6時間のタイミングでガス流量を9NL/minになるように絞り、その後、同様に水素増幅率の結果をみて、さらにガス流量を0.5NL/minずつ段階的に絞り、最終的に8NL/minまで落として、1000時間の間、試験運転を継続した。この間、触媒槽内の圧力損失は、反応開始後数時間の間で1kPaを超える数値を示したが、その後の原料流量制御によって低下して、以後ほぼ0.1〜0.2kPa程度で安定して稼働させることができた。最終的にタール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で約96%、水素増幅率は運転期間(5時間)平均で約2.4という結果が得られた。
【0088】
(実施例4)
図1記載の装置において、ロータリーキルン式の熱分解炉(図中タール含有ガス発生装置1に該当)とした。熱分解炉に、建築廃材チップ(粒度5cm以下に分級されたもの)を充填したホッパー及び定量供給機を接続した。ここで、分級には、篩を用いた。すなわち、目開きが5cmの篩を用意し、チップをこの篩にかけた。そして、篩から落ちたチップを使用した。熱分解炉を800℃に昇温した後、ホッパーから建築廃材チップを定量供給機により熱分解炉の中に10kg/hの供給速度で導入した。
【0089】
これにより、熱分解炉からバイオマスタール含有ガス(乾留ガス)を発生させ、誘引通風機(図中ブロワー9に相当)によりガス流量(具体的には、ドライ化タール含有ガスの流量)が約10Nm
3/hになるように流量を調整した状態で、そのタール含有ガス(乾留ガス)を触媒塔(図中タール含有ガス改質処理装置6に相当)に導入した。ここで、触媒塔としては、リング状成型触媒が充填され、約800℃に保温されたものを用いた。尚、触媒充填量は約15Lであった。そして、タール含有ガスを触媒と接触させることにより、タール含有ガスの触媒分解活性を8時間継続して評価した。その後、改質ガスをスクラバー(図中冷却装置7に相当)で水冷、油バブラーで除塵した後、フレアスタックで燃焼放散させた。
【0090】
尚、触媒塔へのタール含有ガスの投入前に、リング状成形触媒中に水素ガスを5Nm
3/hの流量で30分間通すことで、還元処理を行った。また、熱分解炉の出口にアルゴンガスをマスフローコントローラー(図中不活性ガス定量供給装置に相当)で10L/minで導入し、触媒塔入口部から連続的に混合ガスを採取し、混合ガスのアルゴン濃度をガスクロマトグラフ(図中分析装置5に相当)で分析した。そして、アルゴン濃度から逆算することで入口ガス流量を割り出し、入口ガス流量(具体的には、ドライ化タール含有ガスの流量)が約10Nm
3/hとなるように熱分解炉への原料供給量および誘引通風機の能力を制御した。制御は流量調節装置10により行われた。
【0091】
バイオマスから得られるタール含有ガスの組成はコークス炉ガスに近く、水素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素、タールを主成分とする組成であることを実施例1と同様の方法により確認した。また、そのガス(入口ガス)中には、原料である建築廃材に含まれている約16質量%(建築廃材の総質量に対する質量%)の水分が揮発し、水蒸気となって含まれていた。さらに、入口ガス中には、硫化水素が約25ppm含まれていた。入口ガス中のタール濃度は、約10g/Nm
3であった。ガス中のタール濃度(すなわち入口ガス中のタール濃度)は、以下の処理により測定された。すなわち、触媒層の入口と出口からガス(すなわち、入口ガス及び出口ガス)を一定時間吸引し、吸引したガスを、ジクロロメタンを充填した五連式インピンジャーに通すことでガス中のタール成分を捕集した。その後、ジクロロメタンを除去し、常温で液体の成分を定量した。これにより、入口ガス中のタールの質量及び出口ガス中のタールの質量を測定した。そして、タール分解率は、前記手法で捕集した触媒層入口ガス中タール成分の質量に対する触媒層出口ガス中タール成分の質量の割合から求めた。その結果、タール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で約95%、水素増幅率は運転期間(8時間)中、平均で約6.8と安定に推移し、本設備によりバイオマス乾留タール含有ガスに対して、触媒による改質反応が安定して進行していることを検証できた。
【0092】
(実施例5)
図1記載の装置において、製鉄所内のコークス炉(図中1に相当)の上昇管基部から高温の未精製COGを抽気し、ヒーター付き抽気管(図中2、及び2’に相当)でガス温度である800℃を低下させないように保持しながら、800℃に加熱した改質処理装置(図中6に相当)へ導入した。ここで、上昇管基部から抽気する部分に開閉弁として耐熱性のボールバルブ(図中3に相当)を設置し、必要に応じて開閉操作を行った。また、改質処理装置の手前に緊急遮断弁として砂ホッパーを設け、コークス炉操業中に改質処理装置側の火災、爆発等の何らかの不慮のトラブルがあった際にコークス炉操業に影響を与えないようにした。
【0093】
改質処理装置として電気炉を用い、その中に実施例1で用いたものと同じ触媒成形体を約40L充填した触媒反応器を配置した。これら一連の装置はSUS310Sの耐熱ステンレス鋼で製作した。さらに、改質処理装置の後段に冷却装置としてスクラバー(図中7に相当)を配置し、タール含有ガスの高温改質ガスを冷却すると共に、未反応のタールミストを凝縮、貯留した。さらに、その後段にルーツ式の周波数可変型ガス搬送機(図中9に相当)を配することで、コークス炉から抽気するガス流量を調整した。
【0094】
そして、改質処理装置入口部より、マスフローコントローラー(図中4に相当)を用いてアルゴンを20NL/minの流量で流し込み、質量分析器(図中5に相当)により測定される不活性ガスの濃度が4体積%となるように制御装置(図中10に相当)を用いてガス搬送機の吸引能力を調整した。すなわち、原料の高温未精製COGの入口ガス流量(具体的には、ドライ化タール含有ガスの流量)を30Nm
3/hとした。
【0095】
また、高温未精製COG中には、原料である石炭に含まれている約質量8%(石炭の総質量に対する質量%)の水分が揮発し、水蒸気となって含まれていた。さらに、この高温未精製COGには、タール成分が約50g/Nm
3、硫化水素が2000〜3000ppm含まれていた。また、運転成績の評価のためのタール捕集は、実施例1と同様にして行った。
【0096】
その結果、反応開始初期は水素増幅率が3を超える高い数値を示した。その後原料中の硫黄被毒で触媒の活性が劣化して徐々に下がり、反応開始1時間後に約1.8程度となったが、その後落ち着いた。一方、触媒槽内の圧力損失は、反応開始2時間後より徐々に高くなり、4時間後で約3kPaまで増加した。そのため、ガス流量を28〜29Nm
3/hまで若干下げた。この結果、圧力損失が低下して安定に運転できるようになった。それ以降、圧力損失値が3kPaを超えそうな場合に若干ガス流量の設定値を下げるといった方法で24時間の間、安定して運転を継続した。最終的にタール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で約70%、水素増幅率は運転期間を通じて約1.5で安定に推移し、本設備により高温の未精製コークス炉ガスに対しても、触媒による改質反応が安定して進行していることを検証できた。
【0097】
(実施例6)
箱型炉に実施例4で用いた建築廃材チップを充填し、保温配管並びに触媒充填反応管を600℃に加熱する他は、すべて実施例1と同様にして実験を行った。ここで、原料ガス中には、硫化水素が約110ppm含まれていることを確認した。その結果、タール分解率はタール含有ガスの性状が安定した時点で約60%、水素増幅率は運転期間(5時間)平均で約1.6という結果が得られ、特に触媒槽内での圧力損失が高まることなく、安定して運転することができた。
【0098】
(比較例1)
図1記載の装置において、外部からアルゴンを一定流量導入する代わりに、反応器入口部にオリフィス式の流量計を用いて、原料ガス流量を制御する他は、すべて実施例5と同様にして実験を行った。そうしたところ、反応開始当初から、流量計で計測された数値がフラクチュエーションを起こして不安定な状態となり、引き続き運転したところ、反応開始1時間経過後よりガス搬送機駆動用電流値が徐々に上昇して、最終的に反応開始1時間半後に電流の上限値を超過した。このため、本設備に緊急停止がかかって運転が中断されてしまった。また、その間、分析計から得られた反応成績も、入口ガス流量が大きく変動したことから、水素増幅率はほぼ1.0に近い値となってしまった。運転終了後、内部点検したところ、オリフィス板の開孔部にタールの固形物がびっしり詰まっていた。また、ガス搬送機内部の摺動部にも大量のタール固形物が入りこんでいた。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。