(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1記載の構造では、2つの躯体の片側に設けたばねを圧縮しまたは伸長させることで上下方向に変位可能としている。しかしながら、このような構造ではばねの伸縮範囲でしか変位できないため、上下方向の可動範囲を大きくすることに限界があった。なお、伸縮量の大きいばねを使用すればある程度は上下方向の可動範囲を大きくすることができるが、ばねが大きく伸縮することでばねの逆側に設けられた第1係合部88及び第2係合部89係合部(特許文献1の
図1等参照)に大きな負荷がかかるため、ホルダ部材47が破損するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上下方向の可動範囲を大きくすることができるとともに、上下方向に大きく変位した場合でも破損するおそれがないエキスパンションジョイント構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明は、2つの躯体間の間隙を覆うエキスパンションジョイント構造であって、前記間隙を覆うジョイントカバーと、前記間隙の長手方向に一定の間隔をおいて配置される複数のホルダ部材と、一方の躯体と前記ホルダ部材との間に設けられ、前記ホルダ部材を前記ホルダ部材の長手方向である第1の水平方向に移動可能に支持する第1摺動支持手段と、一方の躯体と前記ホルダ部材との間に設けられ、前記ホルダ部材を上下方向に揺動可能に支持する第1揺動支持手段と、他方の躯体と前記ホルダ部材との間に設けられ、前記ホルダ部材を前記第1の水平方向に直交する第2の水平方向に移動可能に支持する第2摺動支持手段と、他方の躯体と前記ホルダ部材との間に設けられ、前記ホルダ部材を上下方向に揺動可能に支持する第2揺動支持手段と、を備え
、前記第2摺動支持手段は、他方の躯体に固定される案内レールと、前記案内レールに摺動可能に係合する受レールと、を備え、前記第2揺動支持手段は、前記受レールの下部において前記受レールと前記ホルダ部材とを揺動可能に連結することを特徴とする。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
請求項
2に記載の発明は、上記した請求項
1記載の発明の特徴点に加え、前記ジョイントカバーを、前記ホルダ部材に固定される第1カバー材と、前記他方の躯体に固定される第2カバー材と、に分割したことを特徴とする。
【0013】
請求項
3に記載の発明は、上記した請求項
2に記載の発明の特徴点に加え、前記第1カバー材は、前記一方の躯体の縁部及び前記間隙を覆い、前記第2カバー材は、前記他方の躯体の縁部を覆うことを特徴とする。
【0014】
請求項
4に記載の発明は、上記した請求項1〜
3のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、前記2つの躯体は天井躯体と壁躯体であり、壁躯体に前記第2摺動支持手段及び前記第2揺動支持手段を取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、ホルダ部材を第1の水平方向に移動可能に支持する第1摺動支持手段を、一方の躯体と前記ホルダ部材との間に設け、ホルダ部材を第2の水平方向に移動可能に支持する第2摺動支持手段を、他方の躯体と前記ホルダ部材との間に設けたため、この2つの摺動支持手段を同じ躯体側に取り付けた場合と比較してそれぞれの方向への可動範囲を大きくすることができ、地震等による大きな変位にも対応することができる。
【0016】
また、ホルダ部材を上下方向に揺動可能に支持する第1揺動支持手段及び第2揺動支持手段をホルダ部材の両側にそれぞれ取り付けているため、上下方向の可動範囲を大きくすることができるとともに、上下方向に大きく変位した場合でも破損しにくくすることができる。
【0017】
また、
ホルダ部材を第2の水平方向(平面視におけるホルダ部材の短手方向)に移動可能に支持する第2摺動支持手段は、他方の躯体に固定される案内レールと、前記案内レールに摺動可能に係合する受レールと、を備え、前記受レールは、前記複数のホルダ部材にまたがって固定された長尺材
とすれば、第2の水平方向への摺動をガイドする受レールの幅が大きいので、ホルダ部材の摺動時に受レールの角が案内レールに引っ掛かりにくい構造となっており、ホルダ部材がスムーズに摺動できずに破損するといった問題が発生しにくい。
【0018】
また、
前記第2揺動支持手段は、前記受レールの下部において前記受レールと前記ホルダ部材とを揺動可能に連結するので、躯体が複雑な動きをした場合であっても、この動きに追従してジョイントカバーを変位させることができる。
【0019】
【0020】
また、請求項
2に記載の発明は上記の通りであり、前記ジョイントカバーを、前記ホルダ部材に固定される第1カバー材と、前記他方の躯体に固定される第2カバー材と、に分割した。このような構成によれば、地震などにより2つの躯体が互いに第2の水平方向への摺動したときに、第1カバー材は一方の躯体とともに移動し、第2カバー材は他方の躯体とともに移動することとなる。よって、2つの躯体にまたがるようにジョイントカバーを配置した場合でも、分割されたジョイントカバーが別々に移動するため、ジョイントカバーが躯体に衝突して破損することを防止できる。
【0021】
なお、従来のように一体型のジョイントカバーの場合には、例えば特開2007−291620号公報などに示されるように、コーナ部に間隙を設け、その間隙部に可動コーナーカバー材を設けることで、ジョイントカバーが躯体に衝突して破損することを防止していた。しかしながら、上記した構成によれば、可動コーナーカバー材を設けなくてもジョイントカバーが躯体に衝突して破損することを防止できる。
【0022】
また、請求項
3に記載の発明は上記の通りであり、前記第1カバー材は、前記一方の躯体の縁部及び前記間隙を覆い、前記第2カバー材は、前記他方の躯体の縁部を覆っている。このような構成によれば、他方の躯体と間隙との境目においてジョイントカバーが分割されているので、ジョイントカバーが躯体に衝突して破損することをより確実に防止することができる。
【0023】
また、請求項
4に記載の発明は上記の通りであり、前記2つの躯体は天井躯体と壁躯体であり、壁躯体側に前記第2摺動支持手段を取り付けたものである。このような構成によれば、壁躯体の壁面に沿ってジョイントカバーを摺動させることができるので、ジョイントカバーが壁躯体の壁面に衝突し難い構造となり、ジョイントカバーが躯体に衝突して破損することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、
図1〜9を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態に係るエキスパンションジョイント構造は、相対する2つの躯体C1,C2間の間隙Gを覆うために躯体C1,C2間に固定されるものである。本実施形態においては、
図1に示すように、いずれも天井躯体である一方の躯体C1及び他方の躯体C2の間にエキスパンションジョイント構造を設けている。
【0027】
このエキスパンションジョイント構造は、
図1及び
図3に示すように、間隙Gを覆うジョイントカバー10と、間隙Gの長手方向に一定の間隔をおいて配置される複数のホルダ部材20と、一方の躯体C1とホルダ部材20との間に設けられるスライド板21(第1摺動支持手段)と、スライド板21を揺動可能に支持する第1回動部材22と、第1回動部材22を付勢する第1ダブルコイルバネ23と、第1回動部材22を一方の躯体C1に回動可能に固定するための第1固定部材24及び第1軸部材25と、他方の躯体C2とホルダ部材20との間に設けられる第2摺動支持手段30(案内レール31及び受レール32)と、他方の躯体C2とホルダ部材20との間に設けられる挿入板42と、挿入板42を揺動可能に支持する第2回動部材43と、第2回動部材43を付勢する第2ダブルコイルバネ44と、第2回動部材43を受レール32に回動可能に固定するための第2固定部材45及び第2軸部材46と、を備える。
【0028】
ジョイントカバー10は、2つの躯体C1,C2の間の間隙Gを下方から覆う押出形材等からなる長尺のカバー材である。このジョイントカバー10の幅は間隙Gの幅よりもやや大きく設定されており、底面視で躯体C1,C2にオーバーラップするように配置される。このため、ジョイントカバー10によって一方の躯体C1の縁部と他方の躯体C2の縁部とが覆われている。
【0029】
本実施形態に係るジョイントカバー10は、
図1及び
図3に示すように、ホルダ部材20に固定される第1カバー材11と、案内レール31に固定される第2カバー材12と、に分割されている。第1カバー材11と第2カバー材12とは互いに連続して設けられているため、下から見たときにあたかも一枚のカバー材のような外観となっている。
【0030】
第1カバー材11は、一方の躯体C1の縁部及び前記間隙Gを覆うものであり、ホルダ部材20の下面に固定されて支持されている。このため、ホルダ部材20と一体的に移動するようになっている。なお、この第1カバー材11の両端縁には、第2カバー材12や一方の躯体C1に臨む位置に緩衝材13が取り付けられている。
【0031】
第2カバー材12は、他方の躯体C2の縁部を覆うものであり、案内レール31を介して他方の躯体C2の下部に固定されている。なお、この第2カバー材12の側辺端部12aには、他方の躯体C2に臨む位置に緩衝材13が取り付けられている。
【0032】
なお、第1カバー材11と第2カバー材12との間には、上下方向に見て間隙Gと他方の躯体C2との境界線に重なる位置にやや隙間が設けられており、この隙間は緩衝材13で埋められている。このように、第1カバー材11と第2カバー材12との境界位置を、間隙Gと他方の躯体C2との境界線に重なる位置とすることで、第1カバー材11と第2カバー材12とが別々に動いた場合でもジョイントカバー10が躯体C1,C2に衝突しにくい構造となっている。
【0033】
ホルダ部材20は、ジョイントカバー10(第1カバー材11)を支持するために、一方の躯体C1から他方の躯体C2へと水平に延びるように配設される部材である。このホルダ部材20の下面には、
図1等に示すように、ネジ部材39,40によって第1カバー材11が固定される。なお、第1カバー材11の長手方向には複数のホルダ部材20が一定の間隔をおいて川の字状に複数配置される。例えばジョイントカバー10を長い距離に渡って設ける場合には、ホルダ部材20の数を多くすることでジョイントカバー10を安定的に支持することができる(なお、
図3において1本のホルダ部材20しか表していないのは説明の便宜上であり、実際には1枚のジョイントカバー10を支持するために複数のホルダ部材20が使用される)。
【0034】
このホルダ部材20は、
図1〜3に示すように、両側の側壁部20aと、両側の側壁部20aの下端を接続する平坦部20bと、を備えた略コ字形の柱状部材である。両側の側壁部20aの内側にはそれぞれ第1突出片20c及び第2突出片20dの2つの突出片が設けられており、この2つの突出片によって水平方向に延びるガイド溝20eが形成されている。このガイド溝20eは、ホルダ部材20の長手方向に全長に渡って形成されており、スライド板21や挿入板42を端部開口から挿入できるように形成されている。
【0035】
スライド板21は、第1回動部材22や第1固定部材24を介して一方の躯体C1に取り付けられ、ホルダ部材20をホルダ部材20の長手方向である第1の水平方向に移動可能に支持する第1摺動支持手段として機能するものである。このスライド板21は、
図3等に示すように、板状の挿入板部21aと、挿入板部21aの端部に設けられた回動部材係合部21bと、を備えている。挿入板部21aは、ホルダ部材20のガイド溝20eに摺動可能に挿入される部分である。躯体C1,C2が互いに第1の水平方向Xに変位したときには、この挿入板部21aがガイド溝20eの内部で摺動することで、スライド板21(言い換えると一方の躯体C1)とホルダ部材20とが互いに第1の水平方向Xに変位可能となっている。また、回動部材係合部21bは、後述する第1回動部材22の円軸部22bに回動自在に係合する部分である。なお、挿入板部21aと回動部材係合部21bとを別部材として形成し、これらを組み合わせてスライド板21を構成してもよい。
【0036】
第1回動部材22は、一方の躯体C1とホルダ部材20との間に設けられ、ホルダ部材20を上下方向Zに揺動可能に支持する第1揺動支持手段として機能するものである。この第1回動部材22は、
図3等に示すように、中央の板状部22aと、板状部22aの一端に形成された円軸部22bと、板状部22aの他端に形成された円弧部22cと、を備えた板状部材であり、スライド板21を一方の躯体C1に対して上下方向Zに揺動可能に支持している。円軸部22bは、前述したスライド板21の回動部材係合部21bを回動自在に係合させる軸状部である。円弧部22cは、後述する第1軸部材25に回動自在に係合する部分である。
【0037】
第1ダブルコイルバネ23は、上記したスライド板21と第1回動部材22とを常時閉じ状態に付勢するためのものである。この第1ダブルコイルバネ23は、
図3等に示すように、金属線を螺旋状に巻いた両側のコイル部23aと、両側のコイル部23aを接続する中途部を外方にコ字形に突出させたコ字形係合部23bと、金属線の両端部をL字形に曲折したL字形係合部23cと、を備えている。この第1ダブルコイルバネ23は、コイル部23aが第1回動部材22の円軸部22bに嵌合するように取り付けられ、コ字形係合部23bとL字形係合部23cとでスライド板21と第1回動部材22とを挟み込むように保持して閉じ方向に付勢する。このように第1ダブルコイルバネ23を取り付けることで、自然状態においては、スライド板21と第1回動部材22とが円軸部22bを中心に閉じ状態(重なった状態)となる。
【0038】
第1固定部材24は、
図3等に示すような板状部材であり、一方の躯体C1の下面に接触して固定される固定板部24aと、第1軸部材25を保持する軸支持部24bと、を備えている。この第1固定部材24は、固定板部24aを貫通するネジ部材41によって一方の躯体C1に固定される。軸支持部24bが保持する第1軸部材25には、前述した第1回動部材22の円弧部22cが回動自在に係合する。具体的には、軸支持部24bの中間に設けられた切欠部24cに第1回動部材22の円弧部22cを嵌め込むことで、第1軸部材25に円弧部22cを係合させる。
【0039】
案内レール31は、受レール32と協働して、ホルダ部材20及び第1カバー材11を前記第1の水平方向Xに直交する第2の水平方向Yに移動可能に支持する第2摺動支持手段30を構成するものである。この案内レール31は、
図1及び
図3に示すように、他方の躯体C2の下面に接触して固定される基部31aと、基部31aの一端から下方に延設された支持脚部31bと、基部31aの他端から水平方向に延設された突出腕部31dと、を備えている。
【0040】
このうち、基部31aは、ネジ部材37によって他方の躯体C2の下面に固定される。また、支持脚部31bは、先端をL字状に屈折させた先端片31cを備えており、この先端片31cに第2カバー材12がネジ部材36によって固定されている。
【0041】
また、突出腕部31dは、間隙G内に突出しており、先端部にガイドレール31eを備えている。ガイドレール31eは、
図1(b)に示すように、下方に突出した2本の垂下片31fの先端に丸棒部31gを形成することで構成されている。丸棒部31gは、互いに外側に突出して形成されており、曲面で受レール32に接触することで摺動がスムーズとなるように形成されている。このガイドレール31eは、
図3に示すように、案内レール31の第2の水平方向Yの全長に渡って形成されている。
【0042】
受レール32は、案内レール31に摺動可能に係合する長尺部材である。この受レール32は、平板な基部32aの両端縁から半円状の抱持部32bを形成した略C字形の部材であり、内側に案内レール31のガイドレール31eを係合させることで、案内レール31に対して第2の水平方向Yに摺動可能に係合している。この受レール32の下面には、第2固定部材45がネジ部材38によって固定されている。また、受レール32の下面には、第2固定部材45を係合させるための突当片32cが突出形成されている。
【0043】
挿入板42は、第2回動部材43や第2固定部材45を介して受レール32に取り付けられ、受レール32に対してホルダ部材20を固定するための橋渡しとなる部材である。この挿入板42は、
図3等に示すように、板状の挿入板部42aと、挿入板部42aの端部に設けられた回動部材係合部42bと、を備えている。挿入板部42aは、ホルダ部材20のガイド溝20eに挿入される部分である。この挿入板部42aは、
図2(a)に示すように、ホルダ部材20のガイド溝20eに挿入され、ホルダ部材20の第1突出片20cをかしめることで、第1突出片20cと第2突出片20dとによって挟み込んで固定される。また、回動部材係合部42bは、後述する第2回動部材43の円軸部43bに回動自在に係合する部分である。なお、挿入板部42aと回動部材係合部42bとを別部材として形成し、これらを組み合わせて挿入板42を構成してもよい。
【0044】
第2回動部材43は、他方の躯体C2とホルダ部材20との間に設けられ、ホルダ部材20を上下方向Zに揺動可能に支持する第2揺動支持手段として機能するものである。この第2回動部材43は、
図3等に示すように、上記した第1回動部材22と同一部材である。すなわち、中央の板状部43aと、板状部43aの一端に形成された円軸部43bと、板状部43aの他端に形成された円弧部43cと、を備えた板状部材であり、挿入板42を他方の躯体C2に対して上下方向Zに揺動可能に支持している。円軸部43bは、前述した挿入板42の回動部材係合部42bを回動自在に係合させる軸状部である。円弧部43cは、後述する第2軸部材46に回動自在に係合する部分である。
【0045】
第2ダブルコイルバネ44は、挿入板42と第2回動部材43とを常時閉じ状態に付勢するためのものであり、上記した第1ダブルコイルバネ23と同一部材である。この第2ダブルコイルバネ44は、コイル部44aが第2回動部材43の円軸部43bに嵌合するように取り付けられ、コ字形係合部44bとL字形係合部44cとで挿入板42と第2回動部材43とを挟み込むように保持して閉じ方向に付勢する。このように第2ダブルコイルバネ44を取り付けることで、自然状態においては、挿入板42と第2回動部材43とが円軸部43bを中心に閉じ状態(重なった状態)となる。
【0046】
第2固定部材45は、
図3等に示すように第1固定部材24と同一部材であり、受レール32の下面に接触して固定される固定板部45aと、第2軸部材46を保持する軸支持部45bと、を備えている。この第2固定部材45は、固定板部45aを貫通するネジ部材38によって受レール32に固定される。軸支持部45bが保持する第2軸部材46には、前述した第2回動部材43の円弧部43cが回動自在に係合する。具体的には、軸支持部45bの中間に設けられた切欠部45cに第2回動部材43の円弧部43cを嵌め込むことで、第2軸部材46に円弧部43cを係合させる。
【0047】
次に、地震や不同沈下などによって躯体C1,C2間に変位が生じた場合に、本実施形態に係るエキスパンションジョイント構造がどのように作用するかについて説明する。
まず、
図4を参照しつつ、躯体C1,C2間に第1の水平方向Xに変位が生じた場合について説明する。
【0048】
図4(a)は、第1の水平方向Xに変位が生じる前の状態を示す図である。この
図4(a)が示すように、変位が生じていない状態では、ジョイントカバー10の中間位置と間隙Gの中間位置とがほぼ同じ位置となるように設定されている。
【0049】
図4(b)は、躯体C1,C2が互いに離れる方向に移動した状態を示す図である。この
図4(b)が示すように、躯体C1,C2が互いに離れる方向に移動して間隙Gの幅が大きくなった場合には、スライド板21がホルダ部材20のガイド溝20eに沿って他方の躯体C2から離れる方向に摺動する。このようにスライド板21とホルダ部材20とが互いに摺動することで、ホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0050】
図4(c)は、躯体C1,C2が互いに接近する方向に移動した状態を示す図である。この
図4(c)が示すように、躯体C1,C2が互いに接近する方向に移動して間隙Gの幅が小さくなった場合には、スライド板21がホルダ部材20のガイド溝20eに沿って他方の躯体C2に近づく方向に摺動する。このようにスライド板21とホルダ部材20とが互いに摺動することで、ホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
次に、
図5を参照しつつ、躯体C1,C2間に第2の水平方向Yに変位が生じた場合について説明する。
【0051】
図5(a)(b)は、第2の水平方向Yに変位が生じる前の状態を示す図である。この
図5(a)(b)が示すように、変位が生じていない状態では、第1カバー材11と第2カバー材12とが第1の水平方向Xに連続するように配置されている。
【0052】
図5(c)(d)は、第2の水平方向Yに変位が生じた後の状態を示す図である。この
図5(c)(d)が示すように、躯体C1,C2が第2の水平方向Yに移動した場合、受レール32が案内レール31のガイドレール31eに沿って摺動する。このように受レール32と案内レール31とが互いに摺動することで、ホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0053】
このように受レール32と案内レール31とが互いに摺動するとき、第1カバー材11は一方の躯体C1とともに移動し、第2カバー材12は他方の躯体C2とともに移動する。よって、2つの躯体C1,C2にまたがるようにジョイントカバー10が配置されているにもかかわらず、分割されたジョイントカバー10が別々に移動するため、ジョイントカバー10が躯体C1,C2に衝突して破損することを防止できる。
図5(c)を例に具体的に説明すると、ジョイントカバー10が分割されていない場合には、ジョイントカバー10が一方の躯体C1とともに移動すると他方の躯体C2に衝突してしまうが、本実施形態においては、他方の躯体C2に衝突するおそれのある部分が第2カバー材12として分割されているので、ジョイントカバー10が他方の躯体C2に衝突することがない。
【0054】
なお、
図5(c)(d)とは逆方向に変位が生じた場合にも、
図5(e)に示すように、受レール32と案内レール31とが互いに摺動することで、ホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
次に、
図6を参照しつつ、躯体C1,C2間に上下方向Zに変位が生じた場合について説明する。
【0055】
図6(a)は、上下方向Zに変位が生じる前の状態を示す図である。この
図6(a)が示すように、変位が生じていない状態では、第1ダブルコイルバネ23及び第2ダブルコイルバネ44のバネ力により、第1回動部材22及び第2回動部材43が閉じた状態となっている。
【0056】
図6(b)は、他方の躯体C2が一方の躯体C1よりも上方に移動した状態を示す図である。この
図6(b)が示すように、他方の躯体C2が上方に移動した場合には、第2ダブルコイルバネ44のバネ力に抗して挿入板42が円軸部43bを中心にして揺動し、且つ、一方の躯体C1側の第1軸部材25を中心にして第1回動部材22が回動する。揺動且つ回動することで、ホルダ部材20が斜めに傾いてホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0057】
図6(c)は、一方の躯体C1が他方の躯体C2よりも上方に移動した状態を示す図である。この
図6(c)が示すように、一方の躯体C1が上方に移動した場合には、第1ダブルコイルバネ23のバネ力に抗してスライド板21が円軸部22bを中心にして揺動し、且つ、他方の躯体C2側の第2軸部材46を中心にして第2回動部材43が回動する。揺動且つ回動することで、ホルダ部材20が斜めに傾いてホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0058】
このように、ホルダ部材20の両側に設けられた第1回動部材22及び第2回動部材43がホルダ部材20の両側を上下方向Zに揺動可能に支持しており、しかも第1回動部材22及び第2回動部材43は両側に回動軸を備えてフレキシブルに回動する。このような構造によれば、大きく躯体C1,C2が変位した場合でもジョイントカバー10やホルダ部材20を追従して移動させることができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、ホルダ部材20を第1の水平方向Xに移動可能に支持するスライド板21(第1摺動支持手段)を、一方の躯体C1とホルダ部材20との間に設け、ホルダ部材20を第2の水平方向Yに移動可能に支持する第2摺動支持手段30を、他方の躯体C2とホルダ部材20との間に設けたため、この2つの摺動支持手段を同じ躯体側に取り付けた場合と比較してそれぞれの方向への可動範囲を大きくすることができ、地震等による大きな変位にも対応することができる。
【0060】
また、ホルダ部材20を上下方向Zに揺動可能に支持する第1回動部材22及び第2回動部材43をホルダ部材20の両側にそれぞれ取り付けているため、上下方向Zの可動範囲を大きくすることができるとともに、上下方向Zに大きく変位した場合でも破損しにくくすることができる。
【0061】
また、ホルダ部材20を第2の水平方向Y(平面視におけるホルダ部材20の短手方向)に移動可能に支持する第2摺動支持手段30は、他方の躯体C2に固定される案内レール31と、前記案内レール31に摺動可能に係合する受レール32と、を備え、前記受レール32は、前記複数のホルダ部材20にまたがって固定された長尺材である。すなわち、第2の水平方向Yへの摺動をガイドする受レール32の幅が大きいので、ホルダ部材20の摺動時に受レール32の角が案内レール31に引っ掛かりにくい構造となっており、ホルダ部材20がスムーズに摺動できずに破損するといった問題が発生しにくい。
【0062】
また、第2回動部材43は、受レール32の下部において受レール32とホルダ部材20とを揺動可能に連結するので、躯体C1,C2が複雑な動きをした場合であっても、この動きに追従してジョイントカバー10を変位させることができる。
【0063】
また、前記ジョイントカバー10を、前記ホルダ部材20に固定される第1カバー材11と、前記他方の躯体C2に固定される第2カバー材12と、に分割した。このような構成によれば、地震などにより2つの躯体C1,C2が互いに第2の水平方向Yへの摺動したときに、第1カバー材11は一方の躯体C1とともに移動し、第2カバー材12は他方の躯体C2とともに移動することとなる。よって、2つの躯体C1,C2にまたがるようにジョイントカバー10を配置した場合でも、分割されたジョイントカバー10が別々に移動するため、ジョイントカバー10が躯体C1,C2に衝突して破損することを防止できる。
【0064】
また、前記第1カバー材11は、前記一方の躯体C1の縁部及び前記間隙Gを覆い、前記第2カバー材12は、前記他方の躯体C2の縁部を覆っている。このような構成によれば、他方の躯体C2と間隙Gとの境目においてジョイントカバー10が分割されているので、ジョイントカバー10が躯体C1,C2に衝突して破損することをより確実に防止することができる。
【0065】
なお、上記した実施形態においては、2つの躯体C1,C2をいずれも天井躯体としたが、これに限らない。例えば、
図7に示すように、2つの躯体C1,C2を天井躯体C1と壁躯体C2としてもよい。この場合、壁躯体C2側に前記第2摺動支持手段30を取り付けるようにすれば、壁躯体C2の壁面に沿ってジョイントカバー10を摺動させることができるので、ジョイントカバー10が壁躯体C2の壁面に衝突し難い構造となり、ジョイントカバー10が躯体C2に衝突して破損することを防止できる。
【0066】
また、上記した実施形態においては説明していないが、
図8及び
図9に示すように、案内レール31の後端部に、第2カバー材12の側辺端部12aを支持する係合片31hを設けてもよい。
図8及び
図9に示す例では、係合片31hが緩衝材13を介して側辺端部12aを下方から支持している。このような構成にすれば、第2カバー材12を取り付ける際にガタツキが抑制されるので施工時の作業性を向上させることができる。また、第2カバー材12の撓みを防止することもできる。
【0067】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、
図10〜14を参照しながら説明する。
【0068】
本実施形態の特徴点は、第1の実施形態の挿入板42、第2回動部材43、第2ダブルコイルバネ44、第2固定部材45、第2軸部材46に代えて、回動軸部材47、ナット部材48、支持金具49を設けた点にある。なお、本実施形態の基本的構成は第1の実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0069】
本実施形態に係る回動軸部材47、ナット部材48、支持金具49は、
図10〜12に示すように、他方の躯体C2とホルダ部材20との間に設けられ、ホルダ部材20を上下方向Zに揺動可能に支持する第2揺動支持手段を構成している。回動軸部材47は、支持金具49とホルダ部材20とを貫通するボルトである。また、ナット部材48は、回動軸部材47の先端に螺着されるナットである。支持金具49は、受レール32に固定される固定部49aと、この固定部49aの端部から直角に下方に延びるホルダ部材支持部49bと、を備えた側面視L字形の金具である。支持金具49は、ホルダ部材20の両側に2つずつ配置され、ホルダ部材支持部49bでホルダ部材20を挟み込むように配置される。
【0070】
支持金具49のホルダ部材支持部49bにはナット部材48を貫通させる支持孔49cが設けられており、また、ホルダ部材20にもナット部材48を貫通させる貫通孔20fが設けられている。回動軸部材47は、この支持金具49の支持孔49cとホルダ部材20の貫通孔20fとを貫通し、貫通した先端部にナット部材48を螺着して固定される。これによりホルダ部材20は回動軸部材47を軸として揺動可能に支持される。
【0071】
このため、
図13に示すように、躯体C1,C2間に上下方向Zに変位が生じた場合でもジョイントカバー10及びホルダ部材20を追従して移動させることができる。
【0072】
図13(a)は、上下方向に変位が生じる前の状態を示す図である。この
図13(a)が示すように、変位が生じていない状態では、ホルダ部材20が略水平な状態となっている。
【0073】
図13(b)は、他方の躯体C2が一方の躯体C1よりも上方に移動した状態を示す図である。この
図13(b)が示すように、他方の躯体C2が上方に移動した場合には、ホルダ部材20が回動軸部材47を軸として揺動し、且つ、第1軸部材25を軸として回動する。揺動且つ回動することで、ホルダ部材20が斜めに傾いてホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0074】
図13(c)は、一方の躯体C1が他方の躯体C2よりも上方に移動した状態を示す図である。この
図13(c)が示すように、一方の躯体C1が上方に移動した場合には、ホルダ部材20が回動軸部材47及び円軸部22bを軸として揺動する。揺動することで、ホルダ部材20が斜めに傾いてホルダ部材20及びジョイントカバー10に無理な負荷がかからないようになっている。
【0075】
このように、ホルダ部材20の両側に設けられた揺動支持手段がホルダ部材20の両側を上下方向Zに揺動可能に支持しており、しかも第1回動部材22は両側に回動軸を備えてフレキシブルに回動する。このような構造によれば、大きく躯体C1,C2が変位した場合でもジョイントカバー10やホルダ部材20を追従して移動させることができる。
【0076】
なお、この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に、2つの躯体C1,C2を天井躯体C1と壁躯体C2としてもよい。例えば、
図14に示すように、壁躯体C2側に前記第2摺動支持手段30を取り付けるようにすれば、壁躯体C2の壁面に沿ってジョイントカバー10を摺動させることができるので、ジョイントカバー10が壁躯体C2の壁面に衝突し難い構造となり、ジョイントカバー10が躯体C2に衝突して破損することを防止できる。
【0077】
また、特に図示しないが、第1の実施形態に係る
図8及び
図9と同様に、案内レール31の後端部に、第2カバー材12の側辺端部12aを支持する係合片31hを設けてもよい。