(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261435
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】水中軸受
(51)【国際特許分類】
F04D 29/046 20060101AFI20180104BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20180104BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20180104BHJP
F16C 17/24 20060101ALI20180104BHJP
F16C 27/02 20060101ALI20180104BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
F04D29/046 A
F16C37/00 A
F16C17/02 Z
F16C17/02 B
F16C17/24
F16C27/02 Z
F04D13/00 D
F04D13/00 L
F04D29/046 B
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-79869(P2014-79869)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200234(P2015-200234A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150336(JP,A)
【文献】
特開2006−105309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/046
F04D 13/00
F16C 17/02
F16C 17/24
F16C 27/02
F16C 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の外周部を取り囲むカバーケースと、
前記カバーケースの内側に配設され、前記回転軸の軸方向に貫通した結合孔を有する摺動体と、
前記回転軸の軸方向に沿って延びるように前記摺動体の前記結合孔に配設され、前記摺動体と前記カバーケースとを結合する熱伝導性を有する結合部材と
を備えることを特徴とする水中軸受。
【請求項2】
前記摺動体は、
第1摺動体と、
前記第1摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って隣接配置された第2摺動体と
を含み、
前記結合孔は、前記第1摺動体と前記第2摺動体の両方に、互いに連通するようにそれぞれ設けられ、
前記第1摺動体と第2摺動体は、前記結合部材によって結合されていることを特徴とする請求項1に記載の水中軸受。
【請求項3】
前記摺動体は、前記第2摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って前記第1摺動体とは反対側に隣接配置された第3摺動体を更に含み、
前記結合孔は、前記第2摺動体と前記第3摺動体の両方に、互いに連通するように設けられ、
前記第2摺動体と第3摺動体は、前記結合部材によって結合されていることを特徴とする請求項2に記載の水中軸受。
【請求項4】
前記第1摺動体と前記第3摺動体は、前記第2摺動体よりも耐摩耗性が高い素材からなることを特徴とする請求項3に記載の水中軸受。
【請求項5】
前記第1摺動体と前記第2摺動体は、前記回転軸の軸方向に隙間をあけて配設されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の水中軸受。
【請求項6】
前記第2摺動体と前記第3摺動体は、前記回転軸の軸方向に隙間をあけて配設されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の水中軸受。
【請求項7】
前記第1摺動体は、前記第2摺動体より発熱性が高く、
前記結合部材は、前記第1摺動体と結合する第1結合部が、前記第2摺動体と結合する第2結合部より、断面積が大きいことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の水中軸受。
【請求項8】
前記第3摺動体は、前記第2摺動体より発熱性が高く、
前記結合部材は、前記第3摺動体と結合する第1結合部が、前記第2摺動体と結合する第2結合部より、断面積が大きいことを特徴とする請求項3、4、6のいずれか1項に記載の水中軸受。
【請求項9】
前記カバーケースと前記摺動体との間に緩衝部材を配設したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の水中軸受。
【請求項10】
回転軸の外周部を取り囲むカバーケースと、
前記カバーケースの内側に配設された第1摺動体と、
前記第1摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って隣接するように、前記カバーケースの内側に配設され、前記第1摺動体とは耐摩耗性が異なる第2摺動体と、
前記第2摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って前記第1摺動体とは反対側に隣接するように、前記カバーケースの内側に配設され、前記第2摺動体とは耐摩耗性が異なる第3摺動体と
を備え、
前記第1摺動体と前記第3摺動体は、前記第2摺動体よりも耐摩耗性が高い素材からなることを特徴とする水中軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポンプに用いられる水中軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
雨水排水用のポンプ設備においては、降雨強度や急な出水に対処するために、吸水槽内の水の有無に拘わらず、予め先行してポンプを運転しておく、いわゆる先行待機型のポンプが用いられる。このポンプは、インペラより高い水位の場合には通常の排水運転が行われ、インペラより低い水位の場合には気中運転が行われる。回転軸を回転可能に支持する水中軸受は、通常の排水運転時には排水によって冷却されるため常温であるが、気中運転時には摩擦熱により150℃まで昇温する。水中軸受が昇温すると、回転軸に当接する摺動体が熱により膨張し、最悪の場合には焼き付いてしまう。
【0003】
特許文献1には、熱伝導性が良好なピンを摺動体の径方向外側から肉厚方向に結合し、摺動体の熱をピンを介してケースに伝え、放熱できるようにした軸受が記載されている。しかし、この軸受は、ピンを摺動体の肉厚方向に差し込んで結合するため接触面積が少なく、十分な放熱効果を得ることができないため、使用可能な期間(製品寿命)の改善は困難である。なお、複数のピンを摺動体に配設すれば放熱効率を向上できるが、この場合には摺動体の剛性が低下する。また、軸受は、経時的に摺動体が摩耗するとピンが回転軸に接触するため、この点でも製品寿命が短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5211758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、回転軸への焼き付きを確実に防止し、製品寿命を延ばすことが可能な水中軸受を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の水中軸受は、回転軸の外周部を取り囲むカバーケースと、前記カバーケースの内側に配設され
、前記回転軸の軸方向に貫通した結合孔を有する摺動体と、前記回転軸の軸方向に沿って延びるように
前記摺動体の前記結合孔に配設され、前記摺動体と前記カバーケースとを結合する熱伝導性を有する結合部材とを備える。なお、結合部材は、摺動体より熱伝導性が良好な材質からなる。
【0007】
この水中軸受は、回転軸の軸方向に延びるように結合部材を摺動体に配置するため、摺動体の剛性を低下させることなく、結合部材と摺動体の接触面積を確保できる。よって、摺動体の熱を結合部材を介してカバーケースに放熱できるため、摺動体の昇温を抑えることができる。その結果、回転軸への焼き付けを確実に防止できるとともに、製品寿命を長くすることができる。
【0008】
この水中軸受では、前記摺動体は
、第1摺動体と
、前記第1摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って隣接配置され
た第2摺動体
とを含み、前記結合孔は、前記第1摺動体と前記第2摺動体の両方に、互いに連通するようにそれぞれ設けられ、前記第1摺動体と第2摺動体は、前記結合部材によって結合されている。また、前記摺動体は、前記第2摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って
前記第1摺動体とは反対側に隣接配置され
た第3摺動体を更に
含み、前記結合孔は、前記第2摺動体と前記第3摺動体の両方に、互いに連通するように設けられ、前記第2摺動体と第3摺動体は、前記結合部材によって結合されている。そして、前記第1摺動体と前記第3摺動体は、前記第2摺動体よりも耐摩耗性が高い素材からなる。このように、回転軸への装着位置に応じて特性が異なる摺動体を配設すれば、焼き付けを確実に防止しつつ、製品寿命を長くすることができる。
【0009】
異なる特性
の摺動体を用いる構成は、摺動体を結合部材によってカバーケースに結合する構成に限定されない。即ち、水中軸受は、回転軸の外周部を取り囲むカバーケースと、前記カバーケースの内側に配設された第1摺動体と、
前記第1摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って隣接
するように、前記カバーケースの内側に配設され、前記第1摺動体とは耐摩耗
性が異なる第2摺動体と
、前記第2摺動体に対して前記回転軸の軸方向に沿って前記第1摺動体とは反対側に隣接するように、前記カバーケースの内側に配設され、前記第2摺動体とは耐摩耗性が異なる第3摺動体とを備え
、前記第1摺動体と前記第3摺動体は、前記第2摺動体よりも耐摩耗性が高い素材からなるようにしてもよい。
【0010】
このように、両端の第1および第3摺動体の耐摩耗性を高くすることにより、間に位置する第2摺動体の摩耗も抑制できる。よって、製品寿命を長くすることができる。また、摩耗または損傷した摺動体だけを交換すればよいため、トータルコストを低減できる。
【0011】
前記第1
摺動体と前記第2摺動体は、前記回転軸の軸方向に隙間をあけて配設され
ている。
また、前記第2摺動体と前記第3摺動体も、前記回転軸の軸方向に隙間をあけて配設されている。なお、摺動体間の隙間は、摺動体の熱変形量より大きく設定される。また、摺動体の内径は、回転軸(軸受スリーブ)の外径より大きく形成される。このようにすれば、熱膨張による摺動体の軸方向および径方向の延びを吸収できる。よって、アライメント変化による振動を防止できる。
【0012】
前記第1摺動体は、前記第2摺動体より発熱性が高く、前記結合部材は、前記第1摺動体と結合する第1結合部が、前記第2摺動体と結合する第2結合部より、断面積が大きい。
また、前記第3摺動体は、前記第2摺動体より発熱性が高く、前記結合部材は、前記第3摺動体と結合する第1結合部が、前記第2摺動体と結合する第2結合部より、断面積が大きい。このようにすれば、発熱性が高い第1摺動体
または第3摺動体を効率的に放熱できる。
【0013】
前記カバーケースと前記摺動体との間に緩衝部材を配設することが好ましい。このようにすれば、回転軸からの衝撃荷重を緩和できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水中軸受では、回転軸の軸方向に延びるように結合部材を配置するため、結合部材と摺動体の接触面積を確保できる。よって、摺動体の剛性を低下させることなく昇温を抑えることができるため、焼き付けの問題を確実に防止できるとともに、製品寿命を長くすることができる。また、回転軸への装着位置に応じて特性が異なる摺動体を配設するため、焼き付けの問題を確実に防止しつつ、製品寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の水中軸受を用いた立軸ポンプを示す断面図。
【
図3】第1実施形態の水中軸受の構成を示す断面図。
【
図6】第2実施形態の水中軸受の構成を示す断面図。
【
図8】第4実施形態の水中軸受の構成を示す断面図。
【
図9】第5実施形態の水中軸受の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る水中軸受30A,30Bを備える立軸ポンプ10を示す。この立軸ポンプ10は、鉛直方向に延びる直管状の揚水管11を備える。揚水管11の下端には、インペラ16を配設するベーンケース12が連結され、このベーンケース12の下端に円錐筒状の吸込ベルマウス13が連結されている。また、揚水管11の上端には、90度湾曲した吐出ベンド14が連結され、この吐出ベンド14に吐出管(図示せず)が連結される。
【0018】
揚水管11には、軸方向に沿って回転軸15が配設されている。この回転軸15の下端はベーンケース12内に位置し、吸水槽内の液体を排出するためのインペラ16が配設される。回転軸15の上端は吐出ベンド14を貫通して外側に突出し、回転軸15を回転駆動するための駆動手段であるモータ(図示せず)が連結される。
【0019】
ベーンケース12内には、インペラ16の上部に軸受ケーシング17が設けられている。この軸受ケーシング17は、放射状に延びるガイドベーン18を介してベーンケース12内に固定されている。軸受ケーシング17の軸心には筒状の支持部19が設けられ、この支持部19内に回転軸15が回転可能に挿通されている。この支持部19の上下端部に、
図2に示す水中軸受30A,30Bが配設されている。なお、
図2は支持部19の下端に配設される水中軸受30Aであり、上端の水中軸受30Bは上下逆向きに配設されるだけで同一構成である。
【0020】
図2に示すように、回転軸15の外周部には、支持部19内に位置するように軸受スリーブ20が配設され、この軸受スリーブ20の外周に水中軸受30A,30Bが配設される。この水中軸受30A,30Bは、軸受スリーブ20を取り囲むように配設されるカバーケース31を備え、このカバーケース31内に、バックシェル35と、緩衝部材39と、第1から第3の摺動体(セグメント)40A〜40Cと、結合部材45A,45Bとが配設されている。
【0021】
図2および
図3に示すように、カバーケース31は円筒状であり、一(外)端に軸受ケーシング17の支持部19に固定するためのフランジ部32を備えている。立軸ポンプ10のケーシングの一部である軸受ケーシング17にカバーケース31を接触させて配設することにより、水中軸受30A,30Bで発生した熱を伝熱により放熱できるようにしている。カバーケース31には、内部にバックシェル35、緩衝部材39および摺動体40A〜40Cを保持するために、両端の開口に円環状の端部プレート33,33が取り付けられている。この端部プレート33には、結合部材45A,45Bを結合するための結合孔34が設けられている。
【0022】
バックシェル35は円筒状であり、例えばステンレス、銅合金、合成樹脂等によって形成される。このバックシェル35は、カバーケース31の内側に配設され、熱伝導性が良好な連結部材36によってカバーケース31に固定されている。この連結部材36によってバックシェル35の熱を伝熱によりカバーケース31に放熱できるようにしている。バックシェル35の両端外周部には緩衝部材配設部37が設けられている。また、バックシェル35には、摺動体40A〜40Cの装着部材41を装着するため装着孔38が設けられている。
【0023】
緩衝部材39は、バックシェル35を介してカバーケース31と摺動体40A〜40Cとの間に配設される。この緩衝部材39を緩衝部材配設部37に配設した状態で、バックシェル35をカバーケース31に配設することにより、バックシェル35とカバーケース31との間に緩衝用の空間が形成される。緩衝部材39はゴム等の弾性部材であり、回転軸15の片当たりを緩和するとともに、振動に対する減衰作用を得ることができる。
【0024】
摺動体40A〜40Cは円筒状であり、カバーケース31の内側にバックシェル35を介して配設されている。本実施形態では、回転軸15の軸方向に沿って3個の摺動体40A〜40Cが隣接配置される。摺動体(第1摺動体)40Aは、本実施形態のように支持部19に水中軸受30A,30Bを1組として配設する場合には、全て(6個)の両端に位置するように、上流側の水中軸受30Aには排水方向上流側に配設され、下流側の水中軸受30Bには排水方向下流側に配設される。一方、水中軸受30A,30Bを単独で配設する場合には、摺動体40Aは上流側に配設される。摺動体(第2摺動体)40Bは、水中軸受30A,30Bを1組として配設する場合には、摺動体40A,40Aの中間側に隣接配置される。一方、水中軸受30A,30Bを単独で配設する場合には、摺動体40Bは摺動体40Aの排水方向下流側に配設される。摺動体(第3摺動体)40Cは、水中軸受30A,30Bを1組として配設する場合には、全て(6個)の中央に位置するように、上流側の水中軸受30Aには排水方向下流側端部に配設され、下流側の水中軸受30Bには排水方向上流側端部に配設される。一方、水中軸受30A,30Bを単独で配設する場合には、摺動体40Cは摺動体40Bの下流側に配設される。
【0025】
水中軸受30A,30Bの端部に配置される摺動体40A,40Cと中央に配置される摺動体40Bとは、耐摩耗性、摺動性、発熱性等の特性が異なる。即ち、摺動体40A〜40Cは、回転軸15への装着位置に応じて特性が異なるように設定される。具体的には、摺動体40A,40Cは、摺動体40Bより硬度が硬く、耐摩耗性が優れている。また、摺動体40Bは、摺動体40A,40Cより摺動性が優れ、発熱性が低い。本実施形態では、摺動体40A,40Cを同一素材による同一特性としているが、これらも異なるように形成してもよい。例えば摺動体40A〜40Cは、高い耐熱性を有し、機械的特性でも優れた樹脂であるポリベンゾイミダゾールにより形成される。摺動体40A,40Cは、高い硬度と耐摩耗性を得るために、ポリベンゾイミダゾールを圧縮成形して形成されている。摺動体40Bは、高い摺動性を得るために、ポリベンゾイミダゾールにカーボンファイバー、窒化ホウ素、グラファイトを充填し、射出成形により形成されている。
【0026】
各摺動体40A〜40Cは、回転軸15の軸方向に沿って所定間隔(隙間S1,S2)をあけて配設されている。また、摺動体40A〜40Cの内径を軸受スリーブ20の外径より大きくし、これらの間にも所定間隔の隙間が形成されている。これらの隙間は、摺動体40A〜40Cが摩擦熱によって昇温した際の熱変形量より大きく設定される。本実施形態では、バックシェル35の内側に隙間S1,S2をあけて摺動体40A〜40Cを位置決めするために、バックシェル35に装着部材41を配設するとともに、摺動体40A〜40Cに装着溝43を設けている。
図4A,Bおよび
図5に示すように、装着部材41は、熱伝導性が良好な材料(例えば銅合金)からなり、バックシェル35に着脱可能に固定される。装着部材41の内側端部には、断面積が大きくなるように外向きに突出する頭部42を備える。装着溝43は断面凸字形状に形成され、摺動体40A〜40Cの下端から全高の中央まで軸方向に沿って延びる。装着溝43の閉鎖端に頭部42が当接することにより、摺動体40A〜40Cをバックシェル35の内側の所定位置に位置決めできる。カバーケース31の下端側に端部プレート33を配設し、下端側に装着部材41を固定して摺動体40A,40Cを装着する。ついで、中央に装着部材41を固定して摺動体40Bを装着した後、上側に装着部材41を固定して摺動体40C,40Aを装着する。
【0027】
図3および
図4A,Bに示すように、摺動体40A〜40Cには、結合部材45A,45Bを配設するための結合孔44A〜44Cが軸方向に沿って貫通して設けられている。発熱性が高い材料からなる摺動体40A,40Cの結合孔44A,44Cの直径d1,d3は、発熱性が低い摺動体40Bの結合孔44Bより直径d2が大きくなるように形成されている(d1,d3>d2)。結合孔44A〜44Cに結合部材45A,45Bを配設することにより、摺動体40A,40Bが互いに結合され、摺動体40B,40Cが互いに結合されている。なお、結合孔44A,44Cは、本実施形態では同一直径d1,d3で形成されているが、摺動体40A,40Cの発熱量に応じて異なる直径d1,d3で形成してもよい。
【0028】
結合部材45A,45Bは、熱伝導性に優れた金属材料(例えば銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金等)からなる。結合部材45A,45Bは、第1結合部46と、第1結合部46より断面積が小さい第2結合部47とを備える。第1結合部46は、端部プレート33の結合孔34および摺動体40A,40Cの結合孔44A,44Cに結合される。第2結合部47は、摺動体40Bの結合孔44Bに結合される。これにより、結合部材45A,45Bは、カバーケース31内において回転軸15の軸方向に沿って延び、摺動体40A〜40Cとカバーケース31とを熱伝導可能に結合する。本実施形態では、同一の結合部材45A,45Bを用いているが、結合部46,47の直径や形成材料が異なる結合部材45A,45Bを用いてもよい。
【0029】
この水中軸受30A,30Bは、回転軸15の軸方向に延びるように結合部材45A,45Bを配設して摺動体40A〜40Cに結合するため、摺動体40A〜40Cの剛性を低下させることなく、結合部材45A,45Bと摺動体40A〜40Cの接触面積を確保できる。よって、回転軸15との摩擦によって発生した摺動体40A〜40Cの熱を結合部材45A,45Bを介してカバーケース31に放熱できる。また、装着部材41、バックシェル35および連結部材36を介してカバーケース31に放熱できる。その結果、摺動体40A〜40Cの昇温を抑えることができるため、先行待機型の立軸ポンプ10を気中運転させても、回転軸15の焼き付けを確実に防止できるとともに、製品寿命を長くすることができる。
【0030】
しかも、本実施形態では、回転軸15への装着位置に応じて特性が異なる摺動体40A〜40Cを配設しているため、焼き付けを確実に防止しつつ、製品寿命を長くすることができる。具体的には、両端の摺動体40A,40Cの耐摩耗性を高くしているため、中央の摺動体40Bの摩耗を抑制できる。しかも、中央の摺動体40Bは、摺動性を高くし、発熱性を低くしているため、焼き付きを防止し、製品寿命を長くすることができる。また、摩耗または損傷した摺動体40A〜40Cだけを交換することが可能であるため、トータルコストを低減できる。
【0031】
また、各摺動体40A〜40Cは、軸方向に隙間S1,S2をあけて配設され、回転軸15に対しても隙間をあけて配設されているため、熱膨張による延び(熱膨張)を吸収できる。よって、アライメント変化による振動を防止できる。また、摺動体40A〜40Cの発熱量に応じて結合部材45A,45Bと結合する断面積を変更しているため、効率的な放熱を実現できる。また、摺動体40A〜40Cは、バックシェル35および緩衝部材39を介してカバーケース31内に配設されているため、回転軸15からの衝撃荷重を確実に緩和できる。
【0032】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の水中軸受30A,30Bを示す。この第2実施形態では、摺動体40A〜40Cの結合孔44A〜44Cおよび結合部材45A,45Bを円錐(テーパ)状に形成した点で、第1実施形態と相違する。具体的には、結合孔44A〜44Cは、摺動体40A,40C側の直径d1,d3が摺動体40B側の直径d2より大きい円錐状としている。この結合孔44A〜44Cに装着する結合部材45A,45Bは、対応する円錐形状とすることにより、第1結合部46の断面積が第2結合部47の断面積より大きくなるようにしている。このようにした第2実施形態の水中軸受30A,30Bは、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0033】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態の水中軸受30A,30Bの摺動体40A〜40Cを示す。この第3実施形態では、全ての装着部材41をバックシェル35に装着した状態で摺動体40A〜40Cを配設できるようにするために、装着溝43の他に挿通溝48を更に設けた点で、第1実施形態と相違する。このようにした第3実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができるうえ、組立時の作業性を向上できる。
【0034】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態の水中軸受30A,30Bを示す。この第4実施形態では、摺動体40A〜40Cを周方向に分割して形成し、また、各摺動体40A〜40Cに軸方向に延びる複数の凹溝50を設けた点で、各実施形態と相違する。摺動体40A〜40Cは、複数(本実施形態では4個)の分割部材49をカバーケース31内に配設することにより、円筒形状に形成される。各分割部材49の内面側には、軸方向に延びる凹溝50が形成されている。この凹溝50の形成位置と径方向に一致しないように、各分割部材49に装着部材41の装着溝43および結合部材45A,45Bの結合孔44A〜44Cが形成されている。このようにした第4実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0035】
(第5実施形態)
図9は第5実施形態の水中軸受30A,30Bを示す。この第5実施形態では、摺動体40A〜40Cを更に多数の分割部材51に分割して構成し、装着部材41は用いることなく配設するようにした点で、各実施形態と相違する。各分割部材51には、各実施形態と同様に結合孔44A〜44Cが形成されている。また、バックシェル35には、各分割部材51に対応する配設溝52が形成されている。そして、このようにした第5実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0036】
なお、本発明の水中軸受30(30A,30B)は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、各実施形態では、軸方向に3個の摺動体40A〜40Cを配設したが、
図10に示すように、4個の摺動体40A〜40Dを配設してもよい。この場合、一端側の摺動体(第1摺動体)40Aと他端側の摺動体(第3摺動体)40Dとを、中央の摺動体(第2摺動体)40B,40Cより硬度が硬く、耐摩耗性が優れたものとする。また、摺動体40B,40Cを、摺動体40A,40Dより摺動性が優れ、発熱性が低いものとする。また、摺動体は、軸方向に5個以上配設してもよいうえ、2個だけ配設してもよい。
【0038】
また、摺動体40A〜40Cを周方向に分割した第4および第5実施形態では、各分割部材49,51を結合部材によって周方向に結合してもよい。また、第1から第4実施形態では、各摺動体40A〜40Cを装着部材41によって隙間S1,S2をあけて配設したが、位置決めして配設する構成は、希望に応じて変更が可能である。また、第1および第3の摺動体40A,40Cと第2の摺動体40Bとは、断面積が異なる結合部46,47を有する結合部材4545A,45Bによって結合したが、同一断面積の結合部材によって結合してもよい。
【0039】
また、水中軸受30を配設するポンプは、
図1に示す先行待機型の立軸ポンプ10に限らず、種々のポンプに適用可能である。また、本発明の水中軸受30は、ポンプに限らず、例えば船尾のスクリューの軸受等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10…立軸ポンプ
15…回転軸
17…軸受ケーシング
20…軸受スリーブ
30A,30B…水中軸受
31…カバーケース
35…バックシェル
36…連結部材
39…緩衝部材
40A〜40D…摺動体
41…装着部材
44A〜44C…結合孔
45A,45B…結合部材
46…第1結合部
47…第2結合部