【実施例1】
【0018】
図1は、プリント配線基板1の平面図である。プリント配線基板1は、フレキシブル基板、リジット基板、リジットフレキシブル基板として形成してもよい。プリント配線基板1は、片面基板、両面基板、多層基板のいずれであってもよい。
【0019】
プリント配線基板1には、少なくともその一方の面に、銅箔や金箔などの導電性材料からなるランド部2が設けられている。ランド部2は、マイクロフォンチップ4のケース40(
図4で後述)と接続するためのケース用ランド22と、マイクロフォンチップ4の下面の所定位置に設けられるマイクロフォン42(
図5で後述)を取り囲むようにして設けられるマイク用ランド21とを含む。マイク用ランド21は「第1ランド部」の例であり、ケース用ランド22は「第2ランド部」の例である。これらマイク用ランド21およびケース用ランド22は、グランド電位を取るためのランドとして形成されている。
【0020】
ケース用ランド22は、
図1において縦方向に配置される2つのランド23と横方向に配置される2つのランド24とから全体として矩形状をなすように形成されている。縦方向のランド23の両端は、横方向のランド24の縁部から外側に向けて突出する突出部23Eとなっている。同様に、横方向のランド24の両端は、縦方向のランド23の縁部から外側に向けて突出する突出部24Eとなっている。
【0021】
換言すれば、縦横のランド23,24を井桁に組むことにより、ケース用ランド22は構成されている。縦横のランド23,24の両端部の突出部23E,24Eは、「第3ランド部」の例である。後述のように、リフロー時に、突出部23E,24Eへマイク用ランド21およびケース用ランド22で余った半田が流れ込む。
【0022】
マイク用ランド21は、一対の縦方向ランド23のうち一方の縦方向ランド23(例えば
図1中の左側のランド23)に連続して、略円環状に形成されている。マイク用ランド21は、プリント配線基板1の裏面(
図1に示す面と逆側の面)から音を取り込むための音取り入れ穴1Hを環状に取り囲むようにして形成されている。マイクロフォンチップ4のマイク42が音取り入れ穴1Hに位置するようにして、マイクロフォンチップ4はプリント配線基板1に搭載される。
【0023】
ケース用ランド22の内側には、マイク用ランド21に対向するようにして、複数の(例えば4個の)端子用ランド25が設けられている。各端子用ランド25は、マイクロフォンチップ4の入出力端子(不図示)に接続される。
【0024】
図1では、マイクロフォンチップ4の外形(ケース40の外形)を二点鎖線で示す。突出部23E,24Eは、マイクロフォンチップ4の外形線よりも外側に突出して形成されている。一方、
図1では、例えばカバーレイフィルムまたはレジストなどのカバー部材5の縁部を一点鎖線で示す。カバー部材5は、ケース用ランド22との間に空間50を確保するために、ケース用ランド22から所定寸法離れて設けられている。また、縦方向ランド23の突出部23Eと横方向ランド24の突出部24Eとで挟まれた領域にも、空間50が形成されている。ケース用ランド22の外側などに設けられる空間50は、半田内のボイドを外部に排出するための空間である。なお、ケース用ランド22で囲まれた内側領域には、空間51が形成されている。
【0025】
図2は、プリント配線基板1のランド部2にペースト状の半田を印刷した状態を示す平面図である。例えば、スキージを用いてペースト状の半田をメタルマスクの上から塗り込むことで、ランド部2の表面には分割状態の半田31が形成される。
【0026】
縦方向の突出部23Eと横方向の突出部24Eとの交差する領域にも、半田32が形成されている。半田31と半田31の間と、半田31と半田32の間にはそれぞれ隙間Sが形成されている。
【0027】
縦方向ランド23および横方向ランド24には分割状態の半田31を形成する必要があるが、縦方向ランド23の突出部23Eと、横方向ランド24の突出部24Eには、状況に応じて半田32を印刷すればよく、常に半田を印刷する必要はない。例えば、ランドが銅で形成されている場合は、突出部23E,24Eに防錆加工を施すべく、突出部23E,24Eにも半田32を印刷する。これに対し、ランドが金で形成されている場合は、突出部23E,24Eに防錆加工を施す必要がないため、突出部23E,24Eに半田32を印刷する必要はない。
【0028】
マイク用ランド21には、周方向に離間して半田33が印刷される。半田33と半田33の間には隙間Sが形成される。端子用ランド25には、その全体を覆うようにして半田34が形成される。端子用ランド25は面積が小さいため、半田を分割して印刷する必要はない。隙間Sは、メタルマスクを用いて半田をスクリーン印刷するために生じるものであり、もしも無くせるのであれば無くてもよい。なお、以下の説明では、分割状態の個々の半田を区別しない場合、半田3と呼ぶ。
【0029】
図3は、プリント配線基板1上にマイクロフォンチップ4をマウントしてリフローした場合の、半田の状態を示す説明図である。詳細は後述するが、マイクロフォンチップ4をマウントしたプリント配線基板1をリフロー工程に送ると半田が溶けて、マイクロフォンチップ4は自重で沈降し、その過程でマイクロフォンチップ4とマイク用ランド21およびケース用ランド22で余った半田が突出部23E,24Eに押し出される。リフロー工程において半田と半田の間の隙間Sにより形成されるボイドは、溶けた半田が繋がる過程で空間50に向けて押し出される。
【0030】
図4は、マイクロフォンチップ4とランド部2との関係と、リフロー工程においてマイクロフォンチップ4が半田3により半田付けされる様子を概略的に示す。
図4は、例えば
図3中の矢示IV−IV方向から見た図面であるが、カバー部材5は省略している。
【0031】
図4(1)は、マイクロフォンチップ4をプリント配線基板1の所定の位置にマウントした状態を示す。ベースフィルムなどの基板本体10には、ケース用ランド22などのランド部2およびプリント配線パターン(図示せず)が形成されており、ランド部2にはペースト状の半田3が厚みt1を持って印刷されている。
【0032】
マイクロフォンチップ4の下面には、マイク用ランド21およびケース用ランド22に対応するチップ側電極41が形成されている。ケース用ランド22の幅寸法W1は、チップ側電極41の幅寸法W2よりも大きく設定されている(W1>W2)。このため、ケース用ランド22の幅方向両端は、例えば、それぞれ寸法ΔWだけチップ側電極41よりも広がっている(ΔW*2=W1−W2)。
【0033】
上述の通りケース用ランド22には、ペースト状の半田3がスクリーン印刷される。半田3の中には、微小な気泡35が含まれている。この微小な気泡35は、分割状態の半田間に存在する隙間Sの空気と共に、ボイドの原因となる。
【0034】
図4(2)は、リフロー工程で半田3が溶融し、マイクロフォンチップ4が自重で溶融状態の半田3を押しつぶすようにして下降する様子を示す。半田3の一部は、チップ側電極41に押されることで、ケース用ランド22の幅方向両端側に向けて押される。その過程で、気泡35はケース用ランド22の周囲に画成された空間50に放出される。また、
図5および
図6で後述するように、半田3の他の一部は、ケース用ランド22を伝わって突出部23E,24Eに流入する。
【0035】
図4(3)は、マイクロフォンチップ4が半田付けされた状態を示す。チップ側電極41は厚みt2(<t1)の半田3によって半田付けされている。電極41の両側では、押し出された半田3が盛り上がってフィレット37を形成している。
【0036】
図4では、ケース用ランド22がチップ側電極41よりも幅広に形成されていることを説明した。これに対し、マイク用ランド21は、それに対応するチップ側電極41と略同一の幅寸法に形成されている。音取り入れ穴1Hとマイクロフォン42との位置決めのためである。
【0037】
もしもマイク用ランド21の幅寸法を対応するチップ側電極41よりも大きくした場合は、半田が径方向へも移動するため、この半田の動きによりマイクロフォンチップ4のマイクロフォン42の軸心が音取り入れ穴1Hの軸心からずれてしまう可能性がある。そこで、本実施例では、マイク用ランド21の幅寸法は対応するチップ側電極41の幅寸法と略同一に設定することで、マイクロフォン42の位置が音取り入れ穴1Hに一致するようにしている。ただし、この場合でも、マイク用ランド21上の半田33は、ケース用ランド22(詳しくは縦方向ランド23)を介して突出部23E,24Eへ若干流動する。マイク用ランド21で余った半田33が突出部23E,24Eへ若干流動することで、マイクロフォンチップ4はマイク用ランド21に引き寄せられ、チップ4とランド21との距離が縮まり、毛細管力が増加する。隣接する半田33同士は、毛細管力により吸引されて接触し、一体化する。これにより、マイク用ランド21上の半田33の隙間Sも無くなり、環状に連続した半田付けが実現する。
【0038】
図5および
図6は、プリント配線基板1にマイクロフォンチップ4を半田付けしてプリント回路を製造する工程を模式的に示す説明図である。
図5および
図6(5)は、例えば
図2中の矢示V−V方向から見た断面図であり、
図6(6)は、例えば
図3中の矢示VI−VI方向から見た断面図であるが、いずれもカバー部材5は省略している。
【0039】
図5(1)は、半田印刷前の状態を示す。
図5(2)は、ランド部2に半田を印刷した状態を示す。上述の通り、ケース用ランド22には、分割状態の半田31,31が印刷されており、突出部24Eにも半田32が印刷されている。
【0040】
図5(3)は、半田を印刷した後のプリント配線基板にマイクロフォンチップ4をマウントする直前の状態を示す。
図5(4)は、プリント配線基板にマイクロフォンチップ4をマウントした状態を示す。
【0041】
図6(5)は、マイクロフォンチップ4をマウントしたプリント配線基板をリフロー工程に送った状態を示す。半田は溶融し始め、マイクロフォンチップ4は沈んでいく。その過程で、半田内の気泡35や隙間Sの空気は、ケース用ランド22の周囲に画成された空間50に排出される。
【0042】
図6(6)は、リフロー工程が終了した状態を示す。マイクロフォンチップ4が下降するにつれて、マイク用ランド21およびケース用ランド22で余る半田が突出部23E,24Eに押し出され、盛り上がり部36を形成する。半田が突出部23E,24Eへ移動することに伴い、マイクロフォンチップ4は、マイク用ランド21およびケース用ランド22に引き寄せられる。マイクロフォンチップ4がランドに引き寄せられる過程で、チップ4とランドとの距離が縮まり、毛細管力が増して、半田と半田の隙間Sにも半田が広がっていく。
【0043】
ここで上述の通り、マイクロフォン42の周囲の電極41はマイク用ランド21に引き寄せられ、マイクロフォン42の軸心と音取り入れ穴1Hの軸心とが略一致する。なお、マイクロフォン42の位置が正確に決まればよく、他の部品との干渉などが生じない限り、ケース40の位置が多少ずれても構わない。音質に影響はないためである。
【0044】
このように構成される本実施例によれば、環状のマイク用ランド21と、マイク用ランド21を取り囲むようにして設ける矩形状のケース用ランド22と、マイクロフォンチップ4の外形よりも突出するようにしてケース用ランド22に連続して形成される突出部23E,24Eとを備えるため、リフロー工程において、チップ4とランド部2との間の余分な半田3を突出部23E,24Eに導くことができる。従って、隣接する半田同士の隙間Sを無くすことができ、余分な半田3によりブリッジが形成されたり、いわゆる半田ボールが生じたりするのを防止できる。
【0045】
特に、余分な半田3を突出部23E,24Eに導くことで、チップ4をランド部2に引き寄せてチップ4とランド部2との距離を縮めることができる。従って、チップ4とランド部2との間で働く毛細管力を強め、この毛細管力により隣接する半田同士の隙間Sに半田を導き、充填することができる。これにより、半田付けが途切れるのを防止でき、半田付けの品質を向上できる。
【0046】
本実施例では、上述のようにマイク用ランド21およびケース用ランド22に半田の途切れやブリッジなどが生じるのを防止できるため、マイクロフォン42が音取り入れ穴1Hを介して検出する音の品質を向上できる。
【0047】
本実施例では、ケース用ランド22の幅寸法W1を対応するチップ側電極41の幅寸法W2よりも大きくする。このためリフロー工程において、ケース用ランド22とチップ側電極41の間の半田3をランド22の幅方向に広げ、半田3が広がる過程で半田3内の気泡35を外部に排出できる。従って、ボイドの発生を抑制できる。
【0048】
本実施例では、ケース用ランド22の外側とカバー部材5との間に空間50を形成するため、リフロー工程において、隣接する半田間の隙間Sの空気を空間50に排出することができる。そして、上述した突出部23E,24Eによる毛細管力の増大効果と、空間50による隙間Sの空気排出効果とが相まって、ケース用ランド22に半田切れが生じるのをより効果的に防止することができる。
【0049】
本実施例では、マイク用ランド21の幅寸法を対応するチップ側電極41の幅寸法と略同一に設定するため、マイクロフォンチップ4のマイクロフォン42をマイク用ランド21上に正しく半田付けして、マイクロフォン42と音取り入れ穴1Hの位置を合わせることができる。この位置決め効果と、マイク用ランド21とマイクロフォンチップ4の電極41との半田付けの品質向上効果とが相まって、マイクロフォン42が検出する音の品質を高めることができる。この結果、プリント配線基板1にマイクロフォンチップ4を搭載したプリント回路の品質および信頼性が向上する。