(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および前記第2の走査用ミラーの各々の反射面には、第1の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れαと第2の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れβとがα=β+n×360°(nは整数)の関係を満たすように、コーティング処理が施された、請求項2記載のレーザ加工装置。
前記レーザ光出力部と前記偏光状態変換部の前記偏光部材との間のレーザ光の経路上に配置され、レーザ光の一部を反射するとともに残りのレーザ光を透過させる第1の光学部材と、
前記第1の光学部材により反射されたレーザ光の一部を受光して前記レーザ光出力部から出射されるレーザ光の出力を検出する出力検出器とをさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、レーザマーキング装置の分野では、短時間で多数のワークにマーキングを行うことができるように(タクトタイムの短縮化)、マーキングに用いられるレーザ光のさらなる高出力化が求められている。
【0006】
レーザ光の高出力化を実現するために、例えば上記の発振器の後段に増幅器を設け、発振器により生成されたレーザ光を増幅器により増幅することが考えられる。ここで、マーキングが行われる際には、ワークに照射されたレーザ光の少なくとも一部が戻り光として反射する。
【0007】
戻り光がレーザマーキング装置のレーザ光の出射部に逆方向から入射すると、その戻り光はレーザマーキング装置内のレーザ光の経路を逆方向に進行する。具体的には、ワークで反射したレーザ光の戻り光は、増幅器に逆方向から入射し、増幅される。増幅された戻り光は、さらに出力ミラーを透過し、発振器に入射する。それにより、発振器内のレーザ媒質が戻り光によって破損する場合がある。
【0008】
上記のような戻り光による発振器の損傷を防止するために、例えば特許文献2に記載されたファイバレーザ加工装置には、ファラデー効果を用いた光アイソレータが設けられる。しかしながら、特許文献2に記載された光アイソレータは構造が複雑であり高価である。
【0009】
本発明の目的は、高出力でのレーザ加工を可能にするとともに簡単な構成かつ低コストで戻り光による破損が防止されたレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することにより対象物を加工するレーザ加工装置であって、励起光を出射する励起光生成部と、励起光生成部により出射された励起光に基づいて直線偏光のレーザ光を出射するレーザ光出力部と、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光を円偏光のレーザ光に変換するとともに対象物により反射されるレーザ光がレーザ光出力部に入射されることを防止する偏光状態変換部と、偏光状態変換部により変換された円偏光のレーザ光を対象物の表面上で走査するレーザ光走査部とを備え、レーザ光出力部は、励起光生成部により出射された励起光を第1の励起光および第2の励起光に分離する励起光分離部と、励起光分離部により分離された第1の励起光により励起される第1のレーザ媒質を有し、第1のレーザ媒質において発生される誘導放出光をレーザ光として出射する発振器と、励起光分離部により分離された第2の励起光により励起される第2のレーザ媒質を有し、第2のレーザ媒質において発振器により出射されたレーザ光を増幅させる増幅器とを含み、偏光状態変換部は、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光が第1の偏光で入射されるように配置され、第1の偏光で入射されるレーザ光を反射しかつ第1の偏光とは異なる第2の偏光で入射されるレーザ光を透過する偏光部材と、偏光部材により反射された直線偏光のレーザ光を円偏光のレーザ光に変換する位相変換部材とを含むものである。
【0011】
そのレーザ加工装置においては、励起光生成部から出射される励起光がレーザ光出力部の励起光分離部により第1の励起光および第2の励起光に分離される。第1の励起光により第1のレーザ媒質が励起されることにより、第1のレーザ媒質において発生される誘導放出光がレーザ光として発振器から出射される。また、第2の励起光により第2のレーザ媒質が励起されることにより、発振器から出射されたレーザ光が増幅器により増幅される。
【0012】
この場合、第1の励起光の出力は励起光生成部から出射された励起光の出力に比べて低いので、第1のレーザ媒質の熱レンズ効果の発生が抑制される。また、第1のレーザ媒質により発生されたレーザ光が第2の励起光により増幅されるので、レーザ光出力部から出射されるレーザ光の出力が高くなる。したがって、高出力のレーザ光がレーザ光走査部により対象物の表面上で走査される。
【0013】
増幅された直線偏光のレーザ光は、第1の偏光で偏光部材に入射することにより、偏光部材で反射される。偏光部材で反射された直線偏光のレーザ光は、位相変換部材により円偏光のレーザ光に変換される。変換された円偏光のレーザ光は、レーザ光走査部により対象物の表面上で走査される。
【0014】
対象物の表面で反射する円偏光のレーザ光は、回転方向が逆転した状態で、戻り光としてレーザ光走査部を通して位相変換部材に入射する。それにより、円偏光の戻り光が直線偏光に変換される。このとき、直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。それにより、直線偏光の戻り光が第2の偏光で偏光部材に入射する。この場合、戻り光は偏光部材を透過し、レーザ光出力部に入射しない。
【0015】
これらの結果、高出力のレーザ光でのレーザ加工が可能になるとともに簡単な構成かつ低コストで戻り光によるレーザ光出力部の破損が防止される。
【0016】
(2)レーザ光走査部は、レーザ光を対象物の表面上で第1の方向に走査するために、偏光状態変換部により変換された円偏光のレーザ光を反射する第1の走査用ミラーと、レーザ光を対象物の表面上で第1の方向に交差する第2の方向に走査するために、第1の走査用ミラーにより反射されたレーザ光を反射する第2の走査用ミラーとを含み、第1および第2の走査用ミラーは、第2の走査用ミラーにより反射されたレーザ光が円偏光のレーザ光になるように構成されてもよい。
【0017】
この場合、偏光状態変換部により変換された円偏光のレーザ光が第1の走査用ミラーにより反射されることにより、レーザ光が対象物の表面上で第1の方向に走査される。また、第1の走査用ミラーにより反射されたレーザ光が第2の走査用ミラーにより反射されることにより、レーザ光が対象物の表面上で第2の方向に走査される。
【0018】
このとき、第2の走査用ミラーにより反射されたレーザ光が円偏光のレーザ光になるので、対象物の表面で反射される戻り光も円偏光となる。円偏光の戻り光は、レーザ光走査部を通して位相変換部材に入射する。円偏光の戻り光は位相変換部材により直線偏光の戻り光に正確に変換される。直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。それにより、直線偏光の戻り光は、第2の偏光で偏光部材に入射することにより偏光部材を透過し、レーザ光出力部に入射しない。その結果、レーザ光出力部の破損が防止される。
【0019】
(3)第1の走査用ミラーは、当該第1の走査用ミラーの反射面に平行な第1の回転軸の周りで回転することによりレーザ光を第1の方向に走査し、第2の走査用ミラーは、当該第2の走査用ミラーの反射面に平行な第2の回転軸の周りで回転することによりレーザ光を第2の方向に走査し、第1の回転軸と第2の回転軸とは互いに直交し、第1および第2の走査用ミラーは、レーザ光を走査可能な領域の中心にレーザ光が照射された状態でレーザ光の入射角が45°となるように配置されてもよい。
【0020】
この場合、第1の走査用ミラーが第1の回転軸の周りで回転することにより、レーザ光が対象物の表面上で第1の方向に走査される。また、第2の走査用ミラーが第2の回転軸の周りで回転することにより、レーザ光が対象物の表面上で第2の方向に走査される。
【0021】
上記の構成によれば、レーザ光を走査可能な領域の中心にレーザ光が照射された状態で、第1の走査用ミラーに第1の偏光で入射して反射された後第2の走査用ミラーに入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れと、第1の走査用ミラーに第2の偏光で入射して反射された後第2の走査用ミラーに入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れとが等しくなる。
【0022】
それにより、第1の走査用ミラーに円偏光のレーザ光が入射する場合には、そのレーザ光が第1および第2の走査用ミラーにより反射された後、円偏光のレーザ光として対象物に照射される。
【0023】
上記のように、円偏光のレーザ光が対象物の表面に照射されることにより発生する円偏光の戻り光は、位相変換部材に入射することにより直線偏光のレーザ光に変換される。直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。したがって、直線偏光の戻り光は第2の偏光で偏光部材に入射することにより偏光部材を透過し、レーザ光出力部に入射しない。その結果、レーザ光出力部の破損が防止される。
【0024】
(4)第1および第2の走査用ミラーの各々の反射面には、第1の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れαと第2の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れβとがα=β+n×360°(nは整数)の関係を満たすように、コーティング処理が施されてもよい。
【0025】
この場合、第1および第2の走査用ミラーの各々においては、第1の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れαと第2の偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れβとが実質的に等しい。
【0026】
それにより、偏光状態変換部により変換された円偏光のレーザ光は、第1の走査用ミラーにより直線偏光または楕円偏光のレーザ光に変換されることなく円偏光のレーザ光として反射される。また、第1の走査用ミラーにより反射された円偏光のレーザ光は、第2の走査用ミラーにより直線偏光または楕円偏光のレーザ光に変換されることなく円偏光のレーザ光として反射される。このようにして、第2の走査用ミラーにより反射されたレーザ光が円偏光のレーザ光になる。
【0027】
上記のように、円偏光のレーザ光が対象物の表面に照射されることにより発生する円偏光の戻り光は、位相変換部材に入射することにより直線偏光のレーザ光に変換される。直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。したがって、直線偏光の戻り光は第2の偏光で偏光部材に入射することにより偏光部材を透過し、レーザ光出力部に入射しない。その結果、レーザ光出力部の破損が防止される。
【0028】
(5)レーザ加工装置は、レーザ光出力部と偏光状態変換部の偏光部材との間のレーザ光の経路上に配置され、レーザ光の一部を反射するとともに残りのレーザ光を透過させる第1の光学部材と、第1の光学部材により反射されたレーザ光の一部を受光してレーザ光出力部から出射されるレーザ光の出力を検出する出力検出器とをさらに備えてもよい。
【0029】
この場合、レーザ光出力部から出射されるレーザ光の出力が出力検出器により検出される。それにより、レーザ光出力部から出射されるレーザ光の出力を監視することができる。したがって、使用者は、レーザ光出力部の動作状態を容易に確認することができる。
【0030】
また、第1の光学部材はレーザ光出力部と偏光部材との間に設けられる。この場合、戻り光は偏光部材を透過するので、戻り光が第1の光学部材に入射しない。それにより、戻り光の一部が出力検出器に入射することが防止され、出力検出器による誤検出が防止される。
【0031】
(6)レーザ加工装置は、レーザ光が有する第1の波長の光を反射するとともに第1の波長とは異なる第2の波長の光を透過する第2の光学部材と、第2の光学部材を透過する第2の波長の光を受光する撮像装置とをさらに備え、第2の波長は、可視光領域の波長であり、第2の光学部材は、偏光部材により反射されたレーザ光を反射させて位相変換部材に導くようにかつレーザ光走査部を通して入射する可視光の少なくとも一部を透過させて撮像装置に導くように配置されてもよい。
【0032】
この場合、偏光部材により反射されたレーザ光および対象物からの戻り光は第1の波長を有するので、レーザ光および戻り光は第2の光学部材により反射される。一方、レーザ光走査部を通して入射する可視光の少なくとも一部は第2の波長を有するので、可視光の少なくとも一部は第2の光学部材を透過して撮像装置に導かれる。それにより、レーザ光が照射される対象物の表面を撮像することが可能になる。したがって、使用者は、撮像により得られる画像に基づいて対象物の表面を観察することができる。
【0033】
また、レーザ光および戻り光が第2の光学部材により反射されることにより、撮像装置には高出力のレーザ光および戻り光が入射しない。その結果、撮像装置の破損が防止される。
【0034】
(7)第1のレーザ媒質は、レーザ光を出射可能な第1の端部および第2の端部を有し、発振器は、第1のレーザ媒質の第2の端部から出射されるレーザ光を当該第2の端部に向かって反射するように配置される第1の反射部材と、第1のレーザ媒質の第1の端部から出射されるレーザ光を当該第1の端部に向かって反射するように配置される第2の反射部材と、第1の反射部材と第2の反射部材との間のレーザ光の経路上に配置されるQスイッチとを含んでもよい。
【0035】
この場合、Qスイッチによりレーザ光をパルス発振させることができる。それにより、高出力のレーザ光を短いパルス幅で出射することが可能となる。したがって、高出力のレーザ光を微小な時間間隔で対象物の表面に照射することができる。それにより、レーザ光による対象物の加工時間が短縮される。
【0036】
(8)増幅器の第2のレーザ媒質は、第3の端部および第4の端部を有し、レーザ光出力部は、発振器から出射されるレーザ光を第2のレーザ媒質の第3の端部に入射させて第4の端部から出射させる第3の光学部材と、励起光分離部により分離された第2の励起光を第2のレーザ媒質の第4の端部に入射させる第4の光学部材とをさらに含んでもよい。
【0037】
この場合、発振器から出射されるレーザ光が第2のレーザ媒質の第3の端部に入射して第4の端部から出射される。第2の励起光が第2のレーザ媒質の第4の端部に入射する。それにより、第2のレーザ媒質においては、第2の励起光が第3の端部に入射する場合に比べて効率よくレーザ光を増幅することができる。また、レーザ光出力部内で第1の光学部材および第2の光学部材の配置自由度を高め、レーザ加工装置の組み立てを容易化することができる。
【0038】
(9)レーザ光出力部は、第2のレーザ媒質の第4の端部から出射されるレーザ光をレーザ光走査部に向かうように反射する第5の光学部材をさらに含んでもよい。それにより、簡易な構成にて、第2のレーザ媒質により増幅されたレーザ光がレーザ光走査部に導かれる。
【0039】
(10)レーザ加工装置は、レーザ光出力部とレーザ光走査部との間に設けられる焦点位置調整部をさらに備え、焦点位置調整部は、レーザ光出力部からレーザ光走査部へのレーザ光の経路に配置される第1および第2のレンズと、第1のレンズと第2のレンズとの間の相対距離を変化させることにより対象物に照射されるレーザ光の焦点の位置を調整するレンズ移動部とを含んでもよい。
【0040】
この場合、焦点位置調整部の第1のレンズと第2のレンズとの間の相対距離が変化することにより、対象物に照射されるレーザ光の焦点の位置が調整される。それにより、対象物の表面に高出力のレーザ光の焦点を合わせることができる。その結果、レーザ加工の短時間化が実現されつつレーザ加工の精度が向上する。
【0041】
(11)なお、本発明に係るレーザ加工装置は、一端部および他端部を有し、励起光生成部により出射された励起光を一端部から他端部へ伝達する励起光伝達媒体をさらに備え、レーザ光出力部は、励起光伝達媒体により伝達された励起光に基づいて直線偏光のレーザ光を出射してもよい。また、励起光生成部は、励起光を出射する単一の発光点をそれぞれ有する複数の光源と、複数の光源の発光点からそれぞれ出射される励起光を励起光伝達媒体の一端部に集光する集光光学機構とを含んでもよい。
【0042】
この場合、レーザ光出力部において、励起光伝達媒体の他端部から出射される励起光が、励起光分離部により第1の励起光および第2の励起光に分離(または分岐)される。ここで、励起光生成部から出射される励起光は、単一(1本)の励起光伝達媒体を通してレーザ光出力部に伝達されてもよい。
【0043】
この場合、増幅器に設けられた第2のレーザ媒質を励起するにあたり、単一(1本)の励起光伝達媒体を通して伝達されてきた高出力の励起光の一部が有効活用される。これにより、レーザ光出力部内に第2のレーザ媒質を励起するための励起光源を別途用意する必要がなく、レーザ光出力部内の部品点数を減らすことができ、ひいてはレーザ光出力部の内部構造を簡素化し、レーザ加工装置の組み立てを容易化することができる。
【0044】
また、レーザ光出力部内に励起光源を別途用意する必要がある装置を考えた場合、その励起光源が故障すると、レーザ加工装置としての機能を維持することができなくなる。これに対し、上記の構成を有するレーザ加工装置では、励起光を生成するための励起光生成部に複数の光源を設けているので、仮に、これらの光源うちいずれか一つが故障しても、レーザ加工装置としての機能を維持することができ、ひいてはレーザ加工装置の利便性を高めることができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、高出力でのレーザ加工が可能になるとともに簡単な構成かつ低コストで戻り光による破損が防止される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置について図面を参照しつつ説明する。以下では、レーザ加工装置の一例として対象物(以下、ワークと呼ぶ。)上でレーザ光を走査することによりワークへのマーキング(印字)を行うレーザマーキング装置を説明する。
【0048】
(1)レーザ加工システムの概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工システムの概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、レーザ加工システム1000は、レーザマーキング装置100、レーザ加工データ設定装置900および複数の外部機器910を備える。
【0049】
レーザマーキング装置100は、本体部1、マーキングヘッド部2、表示部3および操作部4を含む。本体部1とマーキングヘッド部2とは、1本の電線ケーブルECおよび1本の光ファイバケーブルOCにより互いに接続される。光ファイバケーブルOCの長さは例えば2m以上である。レーザマーキング装置100においては、本体部1で励起光が発生される。発生された励起光は、光ファイバケーブルOCを通してマーキングヘッド部2に伝達される。マーキングヘッド部2に伝達された励起光は、マーキングヘッド部2内の後述する第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2(
図5)に入射する。それにより、第1のレーザ媒質LM1を含む共振器によりレーザ光が発生される。また、発生されたレーザ光が、第2のレーザ媒質LM2により増幅される。増幅されたレーザ光がワークWに照射される。予め設定されたレーザ加工データに基づいてワークW上でレーザ光が走査されることによりワークWへのマーキングが行われる。本体部1およびマーキングヘッド部2の構成の詳細については後述する。
【0050】
表示部3は、例えば液晶ディスプレイパネルまたは有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルにより構成され、本体部1に接続される。表示部160には、レーザ加工データに基づく種々の情報が表示される。種々の情報には、レーザマーキング装置100の動作条件およびマーキングされるべき画像または文字列等の情報が含まれる。
【0051】
操作部4は、キーボードおよびポインティングデバイスを含み、本体部1に接続される。ポインティングデバイスはマウスまたはジョイスティック等を含む。操作部4は、レーザマーキング装置100によるワークWのマーキングが行われるとき等に使用者により操作される。
【0052】
レーザ加工データ設定装置900は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、本体部1に接続される。また、レーザ加工データ設定装置900は、表示部および操作部を含む。レーザ加工データ設定装置900においては、使用者による操作部の操作に基づいてレーザ加工データが生成される。レーザ加工データには、マーキングパターン、マーキングに用いるレーザ光の出力、ワークW上でのレーザ光の走査速度、および後述するQスイッチ50Q(
図5)の駆動周波数等の情報が含まれる。生成されたレーザ加工データは、本体部1に与えられる。
【0053】
複数の外部機器910は、必要に応じてレーザマーキング装置100の本体部1に接続される。
図1の例では、複数の外部機器910として、画像認識装置911、距離測定装置912およびPLC(プログラマブルコントローラ)913が示される。
【0054】
画像認識装置911は、例えばライン上で搬送されるワークWの種別および位置を判定するために用いられる。画像認識装置911として、イメージセンサ等を用いることができる。距離測定装置912は、例えばワークWとマーキングヘッド部2との間の距離を測定するために用いることができる。また、PLC913は、予め定められたシーケンスに従ってレーザ加工システム1000の外部の機器を制御するために用いることができる。
【0055】
(2)本体部
図2は、
図1の本体部1の構成を説明するためのブロック図である。
図2に示すように、本体部1は、制御部10、メモリ部20、電源装置30およびレーザ励起部40を含む。
【0056】
制御部10は、CPU(中央演算処理装置)11、ROM(リードオンリメモリ)12およびRAM(ランダムアクセスメモリ)13を含む。ROM12は、CPU11の制御プログラム等を記憶する。RAM13は、種々のデータを記憶するとともにCPU11の作業領域として機能する。CPU11は、ROM12に記憶された制御プログラムを実行する。
【0057】
メモリ部20は、例えばハードディスクまたはメモリカードにより構成される。メモリ部20には、
図1のレーザ加工データ設定装置900から与えられるレーサ加工データが記憶される。それにより、本体部1にレーザ加工データが設定される。この場合、CPU11は、設定されたレーザ加工データに基づいて電源装置30、レーザ励起部40およびマーキングヘッド部2を制御する。
【0058】
レーザ励起部40は、ケーシング40C、複数(本例では3つ)のシングルエミッタLD(レーザダイオード)41、複数(本例では3つ)のVBG(ボリュームブラッググレーティング:狭帯域化素子)49、複数(本例では3つ)のファーストアクシスコリメートレンズ42、複数(本例では3つ)のスローアクシスコリメートレンズ43および1つの集光レンズ44を含む。また、レーザ励起部40には、本体部1とマーキングヘッド部2とを接続する光ファイバケーブルOCの一端が接続される。本実施の形態においては、シングルエミッタLD41は、単一のエミッタ(発光点)を有するレーザダイオードである。
図2では、レーザ励起部40の構成が模式的平面図で示される。また、
図2では、各シングルエミッタLD41の単一のエミッタが点線で示される。
【0059】
複数のシングルエミッタLD41、複数のVBG49、複数のファーストアクシスコリメートレンズ42、複数のスローアクシスコリメートレンズ43および1つの集光レンズ44は、ケーシング40Cの内部に固定される。
【0060】
図2の例では、3つのシングルエミッタLD41からそれぞれ出射される光の方向(以下、出射方向と呼ぶ。)が互いに平行となるようにかつ3つのシングルエミッタLD41が出射方向に直交する方向に一定間隔で並ぶように、3つのシングルエミッタLD41が配置される。隣り合う各2つのシングルエミッタLD41間の距離は、例えば1mm以上20mm以下に設定される。シングルエミッタLD41間の距離が20mmを超えると、コンパクトなケースに納めることが難しくなる。一方、その距離が1mmより短くなると、放熱性の効果が得られ難くなる。よって、放熱性の向上およびコンパクト化を両立するために、シングルエミッタLD41間の距離は凡そ5mmに設定されるのが好ましい。
【0061】
このように、複数のシングルエミッタLD41が分散配置されることにより、複数のシングルエミッタLD41の駆動時に各シングルエミッタLD41から発生される熱が放散されやすい。それにより、発熱に起因する各シングルエミッタLD41の短寿命化が抑制される。
【0062】
各シングルエミッタLD41のエミッタの前部にVBG49が設けられる。VBG49は、シングルエミッタLD41から出射される光のうち予め定められた波長領域の光を反射することにより、シングルエミッタLD41の外部共振器として機能する。それにより、シングルエミッタLD41からVBG49を通して出射される光の波長は、予め定められた波長領域の範囲内に制限される。予め定められた波長領域には第1のレーザ媒質LM1の励起波長が含まれる。
【0063】
この場合、シングルエミッタLD41の温度が変化することによりシングルエミッタLD41において発生される光の波長が変化する場合でも、予め定められた波長領域の光のみがシングルエミッタLD41から出射される。本実施の形態では、予め定められた波長領域は879nmを中心とする一定幅の範囲に設定される。各シングルエミッタLD41からVBG49を通して出射される光は主として879nmの波長を有する。
【0064】
各シングルエミッタLD41に設けられるVBG49の前方に、ファーストアクシスコリメートレンズ42およびスローアクシスコリメートレンズ43がこの順で並ぶように配置される。ファーストアクシスコリメートレンズ42およびスローアクシスコリメートレンズ43は、シングルエミッタLD41から出射される光を平行光にする。
【0065】
全てのシングルエミッタLD41から出射された光が入射するように、複数のスローアクシスコリメートレンズ43の前方に集光レンズ44が配置される。集光レンズ44は、全てのシングルエミッタLD41から出射された光を光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光する。光ファイバケーブルOCの一端面E1の光は、高出力の励起光としてマーキングヘッド部2に伝達される。
【0066】
図2に一点鎖線で示すように、レーザ励起部40における複数のシングルエミッタLD41は直列に接続されている。電源装置30は、複数のシングルエミッタLD41から出射される全ての光の出力(エネルギー)の合計が例えば50W以上になるように、複数のシングルエミッタLD41を含む直列回路に電力を供給する。
【0067】
この場合、複数のシングルエミッタLD41が並列に接続される場合に比べて、複数のシングルエミッタLD41に供給される電流を小さくすることができる。それにより、電源装置30と複数のシングルエミッタLD41とをつなぐ配線を細くすることが可能となる。したがって、配線のレイアウトの自由度が高くなる。本実施の形態においては、複数のシングルエミッタLD41を含む直列回路に供給される電流の値は、例えば15Aである。
【0068】
レーザ励起部40において、複数のシングルエミッタLD41から出射される光を光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光するための構成は、
図2の例に限られない。レーザ励起部40は、以下の構成を有してもよい。
【0069】
図3は、レーザ励起部40の他の構成例を示す模式的平面図である。
図3のレーザ励起部40においては、集光レンズ44に加えて複数の全反射ミラー45a,45bがさらに設けられる。
【0070】
ここで、
図3の説明では、集光レンズ44の光軸上に位置するシングルエミッタLD41を第1のシングルエミッタLD41Aと呼び、第1のシングルエミッタLD41を挟むように配置された2つのシングルエミッタLD41を第2のシングルエミッタLD41Bと呼ぶ。
【0071】
各第2のシングルエミッタLD41Bの前方には、1つの全反射ミラー45aが配置される。また、全反射ミラー45aの位置から出射方向に直交する方向に1つの全反射ミラー45bが配置される。
【0072】
第1のシングルエミッタLD41Aから出射される光は、集光レンズ44の光軸に沿って集光レンズ44に入射し、光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。
【0073】
一方、各第2のシングルエミッタLD41Bから出射される光は、光ファイバケーブルOCの一端面E1に向かうように全反射ミラー45a,45bにより反射され、集光レンズ44に入射する。集光レンズ44に入射した光は、光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。この場合、隣り合うシングルエミッタLD41間に大きな距離を確保しつつ集光レンズ44を小さくすることができる。
【0074】
図4(a)はレーザ励起部40のさらに他の構成例を示す模式的平面図であり、
図4(b)は主として
図4(a)のシングルエミッタLD41a,41b,41cを集光レンズ44の位置から見た図であり、
図4(c)は
図4(a)の光ファイバケーブルOCの一端面E1における光の集光状態を示す図である。
【0075】
図4(a)〜(c)では、各3つのシングルエミッタLD41a,41b,41cからそれぞれ出射される光の方向(上記の出射方向に相当する方向)を第1の方向として矢印D1で表す。また、第1の方向D1に直交する方向を第2の方向として矢印D2で表す。さらに、第1および第2の方向D1,D2に直交する方向を第3の方向として矢印D3で表す。
【0076】
図4のレーザ励起部40においては、集光レンズ44に加えて複数の全反射ミラー45c,45d,45e,45fおよび台座MOがさらに設けられる。ここで、
図4の説明では、集光レンズ44の光軸上に位置するシングルエミッタLD41を第1のシングルエミッタLD41aと呼び、第1のシングルエミッタLD41を挟むように配置された2つのシングルエミッタLD41のうち一方を第2のシングルエミッタLD41bと呼び、他方を第3のシングルエミッタLD41cと呼ぶ。
【0077】
図4(b)では、レーザ励起部40の複数の構成要素のうち第1〜第3のシングルエミッタLD41a〜41c、複数の全反射ミラー45c〜45f、台座MOおよびケーシング40Cのみが図示される。
【0078】
図4(a),(b)に示すように、台座MOは、階段状に形成された3つの載置面MOb,MOa,MOcを有する。載置面MOb,MOa,MOcは、この順で第2の方向D2に並ぶとともに第3の方向D3に直交する。第3の方向D3において、載置面MOcのレベルは載置面MOa,MObよりも高い。また、載置面MOaのレベルは載置面MObよりも高い。
【0079】
第2、第1および第3のシングルエミッタLD41b,41a,41cが台座MOの載置面MOb,MOa,MOc上にそれぞれ配置される。本例の第2、第1および第3のシングルエミッタLD41b,41a,41cの各々のエミッタは、第2の方向D2の長さが第3の方向D3の長さよりも大きい。
【0080】
第2のシングルエミッタLD41bの前方には、1つの全反射ミラー45cが配置される。また、全反射ミラー45cの位置から第2の方向D2に1つの全反射ミラー45eが配置される。全反射ミラー45eは、第3の方向D3に沿ってレーザ励起部40を見た場合に、集光レンズ44の光軸に重なるように配置される。
【0081】
第3のシングルエミッタLD41cの前方には、1つの全反射ミラー45dが配置される。また、全反射ミラー45dの位置から第2の方向D2に1つの全反射ミラー45fが配置される。全反射ミラー45fは、第3の方向D3に沿ってレーザ励起部40を見た場合に、集光レンズ44の光軸に重なるように配置される。
【0082】
第1のシングルエミッタLD41aから出射される光は、集光レンズ44の光軸に沿って集光レンズ44に入射し、光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。
図4(c)に、第1のシングルエミッタLD41aから一端面E1に集光される光のスポットが、符号spaで示される。
【0083】
一方、第2のシングルエミッタLD41bから出射される光は、全反射ミラー45cにより反射された後全反射ミラー45eにより反射される。全反射ミラー45eにより反射された光は、集光レンズ44に入射し、光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。
図4(c)に、第2のシングルエミッタLD41bから光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される光のスポットが、符号spbで示される。
【0084】
他方、第3のシングルエミッタLD41cから出射される光は、全反射ミラー45dにより反射された後全反射ミラー45fにより反射される。全反射ミラー45fにより反射された光は、集光レンズ44に入射し、光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。
図4(c)に、第3のシングルエミッタLD41cから光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される光のスポットが、符号spcで示される。
【0085】
上記のように、エミッタの第2の方向D2の長さが第3の方向D3の長さよりも大きい場合には、光ファイバケーブルOCの一端面E1に形成される集光スポットも第2の方向D2の長さが第3の方向D3の長さよりも大きくなる。
【0086】
そこで、本例では、集光スポットspa,spb,spcが第3の方向D3に並ぶように第1のシングルエミッタLD41a、第2のシングルエミッタLD41b、第3のシングルエミッタLD41cおよび複数の全反射ミラー45c,45d,45e,45fが配置される。それにより、円形状を有する光ファイバケーブルOCの一端面E1において、より広い領域に効率よく光を導くことができる。また、本例においても、
図3の例と同様に、隣り合うシングルエミッタLD41間に大きな距離を確保しつつ集光レンズ44を小さくすることができる。
【0087】
(3)マーキングヘッド部
図5は、
図1のマーキングヘッド部2の構成を説明するためのブロック図である。
図5に示すように、マーキングヘッド部2は、レーザ光出力部50、ビームエキスパンダ70、ビームサンプラー21、ベンドミラー22、偏光ビームスプリッタ23、焦点位置調整部80、折り返しミラー24、1/4波長板25、走査部200、カバーガラス26、パワーモニタ110および撮像装置120を含む。
【0088】
光ファイバケーブルOCの他端面E2がレーザ光出力部50に接続される。レーザ光出力部50においては、本体部1のレーザ励起部40(
図2)から伝達される高出力の励起光に基づいてワークWに照射されるべきレーザ光が発生される。レーザ光出力部50の詳細を説明する。
【0089】
図5に示すように、レーザ光出力部50は、コリメートレンズ51、ビームスプリッタ52、折り返しミラー53,55,56,59,60,61,62、集光レンズ54,65、リアミラー57、出力ミラー58、Qスイッチ50Q、第1のレーザ媒質LM1および第2のレーザ媒質LM2を含む。
【0090】
光ファイバケーブルOCの他端面E2から出射される高出力の励起光は、コリメートレンズ51により平行光に調整され、ビームスプリッタ52に入射する。ビームスプリッタ52に入射した励起光は、互いに直交する2つの方向に分離される。
【0091】
ビームスプリッタ52により分離された一部の励起光は、折り返しミラー53により反射された後、集光レンズ54により集光されつつ折り返しミラー55に入射する。折り返しミラー55は、一面に入射する光を透過し、他面に入射する光を反射するミラーである。本例では、集光レンズ54から折り返しミラー55に入射する励起光は折り返しミラー55を透過して第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射する。
【0092】
第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射した励起光は、第1のレーザ媒質LM1から自然放出光(または誘導放出光)を発生させる。発生された自然放出光は、第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射される。第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射された自然放出光は、折り返しミラー56により反射された後、リアミラー57により反射され、第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射する。
【0093】
第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射した自然放出光は、第1のレーザ媒質LM1から誘導放出光を発生させる。発生された誘導放出光は、第1のレーザ媒質LM1の一端部から出射される。第1のレーザ媒質LM1の一端部から出射された誘導放出光は、折り返しミラー55により反射された後、Qスイッチ50Qを通して出力ミラー58に入射する。出力ミラー58は、入射した一部の誘導放出光を透過し、残りの誘導放出光を反射する。出力ミラー58により反射された誘導放出光は、Qスイッチ50Qを通して折り返しミラー55により反射され、第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射する。その後、誘導放出光は、第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射され、折り返しミラー56により反射された後、リアミラー57により反射され、第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射する。
【0094】
このようにして、誘導放出光が繰り返し第1のレーザ媒質LM1に入射することにより、第1のレーザ媒質LM1においてレーザ光が発生される。
【0095】
ここで、第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2として、Nd:YVO
4(ネオジム:イットリウム・バナデート)またはNd:YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)が用いられる。この場合、第1のレーザ媒質LM1において発生されるレーザ光の波長は1064nmである。上記のように、各シングルエミッタLD41からVBG49を通して出射される光は主として879nmの波長を有する。すなわち、励起光は879nmの波長を有する。そのため、第1のレーザ媒質LM1における量子効率は凡そ83%となる。
【0096】
このように、第1のレーザ媒質LM1においては、高い量子効率でレーザ光が発生される。それにより、レーザ光が発生される際に第1のレーザ媒質LM1に発生する熱が低減され、熱レンズ効果の発生が抑制される。
【0097】
第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2の各々の結晶の長さは、10mm以上であり、15mm以上であることが好ましい。また、第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2は、それぞれの結晶のc軸方向が互いに平行となるように配置される。
【0098】
本実施の形態では、折り返しミラー55,56、リアミラー57、出力ミラー58、Qスイッチ50Qおよび第1のレーザ媒質LM1がレーザ光の発振器として機能する。その発振器においては、Qスイッチ50Qに図示しない駆動装置から高周波の駆動信号が印加されることによりレーザ光のパルス発振が行われる。Qスイッチ50Qとしては、例えば水晶からなるAOM(音響光学素子:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。第1のレーザ媒質LM1において発生されたレーザ光は、パルス発振により出力ミラー58から折り返しミラー59に向かって断続的に出射される。出射されたレーザ光は、折り返しミラー59により反射され、第2のレーザ媒質LM2の一端部に入射する。
【0099】
上記の発振器においては、1つ以上(本例では2つ)の折り返しミラー55,56が用いられる。したがって、第1のレーザ媒質LM1に励起光が入射する方向における発振器のコンパクト化が実現される。
【0100】
ビームスプリッタ52により分離された残りの励起光は、折り返しミラー61,62により反射され、集光レンズ65により集光されつつ折り返しミラー60に入射する。折り返しミラー60は、一面に入射する光を透過し、他面に入射する光を反射するミラーである。
【0101】
集光レンズ65から折り返しミラー60に入射する励起光は折り返しミラー60を透過して第2のレーザ媒質LM2の他端部に入射する。この場合、第2のレーザ媒質LM2においては、励起光が第2のレーザ媒質LM2の一端部に入射する場合に比べて、第2のレーザ媒質LM2の一端部から他端部に向かって進行するレーザ光を効率よく増幅することができる。このように、第2のレーザ媒質LM2は増幅器として機能する。
【0102】
また、上記のように、第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2は、それぞれの結晶のc軸方向が互いに平行となるように配置される。それにより、第2のレーザ媒質LM2においては、第1のレーザ媒質LM1により発生されたレーザ光がより効率よく増幅される。
【0103】
なお、第2のレーザ媒質LM2は、例えば2つ以上のNd:YVO
4またはNd:YAGの結晶を連結することにより作製されてもよい。それにより、第2のレーザ媒質LM2に入射するレーザ光をより大きく増幅させることができる。したがって、レーザ光の出力をより高くすることができる。
【0104】
第2のレーザ媒質LM2の他端部から出射されたレーザ光は、折り返しミラー60により反射され、ビームエキスパンダ70に向かって出射される。
【0105】
高出力のレーザ光をQスイッチ50Qによりパルス発振させることは難しい。そこで、上記のレーザ光出力部50においては、ビームスプリッタ52により折り返しミラー53に向かって分離される励起光の出力は例えば35W以下に設定される。この場合、レーザ光のパルス発振を正確に行うことが可能になるとともに、発振器においてから出射されるレーザ光のビーム径を理想的なビーム径の1.5倍以下にすることが可能となる。
【0106】
さらに、上記のレーザ光出力部50においては、ビームスプリッタ52により折り返しミラー61に向かって分離される励起光の出力は例えば35W以下であることが好ましい。この場合、第2のレーザ媒質LM2に入射する励起光のエネルギーが過剰に高いことによる熱レンズ効果の発生が抑制される。それにより、第2のレーザ媒質LM2の他端部から所望のビーム径および強度分布を有するレーザ光が安定して出射される。
【0107】
ビームエキスパンダ70は、入射レンズ71および出射レンズ72を含む。入射レンズ71は平凹レンズからなり、出射レンズ72は平凸レンズからなる。レーザ光出力部50から出射されるレーザ光のビーム径は小さい。そこで、ビームエキスパンダ70は、入射するレーザ光のビーム径を、そのレーザ光が焦点位置調整部80に入射するために適したビーム径に調整する。それにより、ワークWに照射されるレーザ光のビーム径を高い精度で正確に調整することが可能となる。なお、ワークWに照射されるレーザ光のビーム径に高い精度が求められない場合には、ビームエキスパンダ70は設けられなくてもよい。
【0108】
ビームサンプラー21は、ビームエキスパンダ70から出射された一部のレーザ光を透過し、残りのレーザ光を反射する。ビームサンプラー21により反射されたレーザ光は、パワーモニタ110に入射する。パワーモニタ110は、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光の出力(エネルギー)を検出するための出力検出器を含み、出力検出器の検出結果を
図2の制御部10に与える。出力検出器としては、サーモパイルまたはフォトダイオード等が用いられる。
【0109】
図2の制御部10は、与えられた出力検出器の検出結果を例えば
図2の表示部3に表示させる。それにより、使用者は、表示部3を見ることによりレーザ光出力部50の動作状態を容易に確認することができる。
【0110】
上記のビームサンプラー21としては、例えばコーティング等の表面処理が施されていないガラス板を用いることができる。この場合、ビームサンプラー21は温度変化による影響を受けにくい。したがって、低コストかつ高い精度でレーザ光出力部50から出射されるレーザ光の出力を監視することができる。
【0111】
ここで、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光は直線偏光である。本実施の形態では、レーザ光出力部50から出射された直線偏光のレーザ光がP偏光で入射するようにベンドミラー22が配置される。
【0112】
ベンドミラー22は、一面に入射する光を透過し、他面に入射する光を反射するミラーであり、P偏光で入射する直線偏光のレーザ光を偏光状態を変化させることなく偏光ビームスプリッタ23に向けて反射する。
【0113】
偏光ビームスプリッタ23は、S偏光で入射するレーザ光を反射し、P偏光で入射するレーザ光を透過させる。また、偏光ビームスプリッタ23は、ベンドミラー22で反射された直線偏光のレーザ光がS偏光で入射するように配置される。それにより、偏光ビームスプリッタ23は、S偏光で入射する直線偏光のレーザ光を偏光状態を変化させることなく焦点位置調整部80に向けて反射する。
【0114】
焦点位置調整部80は、入射レンズ81、コリメートレンズ82、出射レンズ83およびレンズ駆動部89を含む。入射レンズ81は平凹レンズからなり、コリメートレンズ82および出射レンズ83は平凸レンズからなる。入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83は、各光軸が共通の軸上に並ぶように配置される。偏光ビームスプリッタ23から焦点位置調整部80に向けて反射されたレーザ光は、入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83を透過して、折り返しミラー24に向かって出射される。
【0115】
ここで、焦点位置調整部80においては、レンズ駆動部89が光軸方向に入射レンズ81を移動させる。それにより、入射レンズ81と出射レンズ83との間の距離が変化し、ワークWに照射されるレーザ光の焦点位置が変化する。焦点位置調整部80およびその動作の詳細については後述する。
【0116】
折り返しミラー24は、焦点位置調整部80から出射された直線偏光のレーザ光を偏光状態を変化させることなく1/4波長板25に向けて反射する。1/4波長板25は例えば水晶により形成され、当該1/4波長板25に入射して透過するレーザ光の位相遅れが45°+n×360°(nは整数)となるように構成されることが好ましい。1/4波長板25は、例えば互いに直交する方向に光学軸を持つように2枚の水晶板が貼り合わされることにより作製されてもよい。
【0117】
1/4波長板25においては、折り返しミラー24から入射する直線偏光のレーザ光が円偏光のレーザ光に変換される。位相遅れが45°+n×360°(n=0)である1/4波長板25が用いられる場合には、1/4波長板25の温度によらず直線偏光のレーザ光を円偏光のレーザ光へ正確に変換することが可能となる。本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ23および1/4波長板25がレーザ光の偏光状態変換部として機能する。
【0118】
円偏光に変換されたレーザ光は走査部200に入射する。走査部200は、第1のガルバノミラーG1、第2のガルバノミラーG2、第1のモータM1および第2のモータM2を含む。走査部200に入射したレーザ光は、第1および第2のガルバノミラーG1,G2により反射され、カバーガラス26を透過してワークWの表面に照射される。
【0119】
第1および第2のガルバノミラーG1,G2は、第1および第2のガルバノミラーG1,G2により反射されたレーザ光が円偏光のレーザ光となるように構成される。換言すれば、第1および第2のガルバノミラーG1,G2は、走査部200に入射するレーザ光の偏光状態と走査部200から出射されるレーザ光の偏光状態とが等しくなるように構成される。走査部200から出射された円偏光のレーザ光がワークWに照射される。走査部200の詳細は後述する。
【0120】
第1のガルバノミラーG1が第1のモータM1により駆動され、第2のガルバノミラーG2が第2のモータM2により駆動される。それにより、ワークWの表面に照射されるレーザ光が互いに直交する2方向に走査され、ワークWの表面に線分等のマーキング(印字)が行われる。
【0121】
マーキングヘッド部2においては、レーザ光とは異なるワークW周辺の可視光がカバーガラス26を通して走査部200に入射する。さらに、走査部200に入射した可視光は、第1および第2のガルバノミラーG1,G2により反射され、1/4波長板25を透過して折り返しミラー24に入射する。
【0122】
ここで、折り返しミラー24は、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光の波長の光を反射し、レーザ光の波長以外の予め定められた波長の光を透過するように構成される。本実施の形態では、レーザ光の波長は1064nmであり、予め定められた波長は可視光領域(約400nm以上800nm以下の波長領域)の波長である。それにより、折り返しミラー24に入射する可視光のうちの少なくとも一部は、折り返しミラー24を透過する。
【0123】
本実施の形態では、折り返しミラー24を透過する可視光を受光するように撮像装置120が設けられる。撮像装置120は、例えば撮像素子およびレンズを含むCCD(電荷結合素子)カメラである。
【0124】
この場合、撮像装置120においては、カバーガラス26を通して走査部200に入射する可視光によりワークWの表面が撮像される。撮像装置120の出力信号は
図2の制御部10に与えられる。それにより、ワークWの表面の画像に対応する画像データが生成される。生成された画像データに基づいて、ワークWの表面の画像が表示部3に表示される。したがって、使用者は、マーキングを行うべきワークWの表面上の位置を表示部3を見ながら確認することができる。
【0125】
また、折り返しミラー24は、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光の波長の光を反射するので、後述する戻り光も反射する。したがって、撮像装置120には、高出力のレーザ光および戻り光が入射しない。それにより、高出力のレーザ光および戻り光による撮像装置120の破損が防止される。
【0126】
なお、上記のベンドミラー22には、レーザ光が入射する面と反対側の面に波長約620nmの赤色のガイド光が照射される。照射されたガイド光は、ベンドミラー22を透過し、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光と同じ経路をたどってワークW上に照射される。それにより、使用者は、ワークW上に照射された赤色のガイド光を視認することにより、レーザ光によるマーキングが行われる位置を容易に認識することができる。
【0127】
(4)戻り光
ワークWに照射されるレーザ光の少なくとも一部は、ワークWの表面で反射してカバーガラス26に入射する。以下の説明では、ワークWの表面で反射してカバーガラス26に入射するレーザ光を戻り光と呼ぶ。戻り光がレーザ光出力部50に入射すると、レーザ光出力部50内の第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2が破損する可能性がある。そこで、戻り光がレーザ光出力部50に入射することを防止するために上記の偏光ビームスプリッタ23および1/4波長板25が用いられる。そのメカニズムについて説明する。
【0128】
ワークWの表面で反射する円偏光のレーザ光は、回転方向が逆転した状態で戻り光として走査部200に入射する。上記のように、走査部200は、走査部200に入射するレーザ光の偏光状態と走査部200から出射されるレーザ光の偏光状態とが等しくなるように構成される。それにより、回転方向が逆転した円偏光の戻り光は、走査部200を通して1/4波長板25に入射する。この場合、1/4波長板25においては、円偏光の戻り光が直線偏光の戻り光に変換される。このとき、直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部50から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。具体的には、直線偏光の戻り光の偏光面は、レーザ光出力部50から出射される直線偏光のレーザ光の偏光面に対して90°回転する。それにより、1/4波長板25により変換された直線偏光の戻り光は、P偏光で偏光ビームスプリッタ23に入射する。
【0129】
上記の偏光ビームスプリッタ23は、S偏光で入射する光を反射し、P偏光で入射する光を透過するので、偏光ビームスプリッタ23にP偏光で入射する直線偏光の戻り光は、
図5に太い点線で示すように偏光ビームスプリッタ23を透過する。つまり、戻り光がレーザ光の経路から外れる。それにより、戻り光がレーザ光出力部50に入射しない。その結果、レーザ光出力部50内の第1および第2のレーザ媒質LM1,LM2の破損が防止される。
【0130】
(5)走査部
走査部200の詳細を説明する。
図6は、走査部200およびその周辺部材の構成を示す外観斜視図である。以下の説明では、第1のガルバノミラーG1によりワークW上でレーザ光が走査される方向をX方向と呼び、第2のガルバノミラーG2によりワークW上でレーザ光が走査される方向をY方向と呼び、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向と呼ぶ。また、走査部200によりレーザ光を走査可能な範囲Rの中心を原点Oと呼ぶ。
【0131】
図6に示すように、焦点位置調整部80は、その光軸がZ方向に平行となるように配置される。また、折り返しミラー24は、焦点位置調整部80から入射されるレーザ光をX方向に反射するように配置される。
【0132】
本実施の形態に係る走査部200においては、第1のガルバノミラーG1は、第1のモータM1から延びるZ方向に平行な回転軸S1によりその回転軸S1の周りで回転可能に支持される。第2のガルバノミラーG2は、第2のモータM2から延びるX方向に平行な回転軸S2によりその回転軸S2の周りで回転可能に支持される。
【0133】
第1のガルバノミラーG1は、原点Oにレーザ光が照射された状態で、1/4波長板25により変換された円偏光のレーザ光が45°の入射角で入射するように配置される。さらに、第2のガルバノミラーG2は、原点Oにレーザ光が照射された状態で、第1のガルバノミラーG1により反射されたレーザ光が45°の入射角で入射するように配置される。
【0134】
この場合、第1のガルバノミラーG1にP偏光で入射するレーザ光は、第1のガルバノミラーG1により反射され、第2のガルバノミラーG2にS偏光で入射する。また、第1のガルバノミラーG1にS偏光で入射するレーザ光は、第1のガルバノミラーG1により反射され、第2のガルバノミラーG2にP偏光で入射する。
【0135】
第1および第2のガルバノミラーG1,G2は、P偏光で入射して反射される光の位相遅れが互いに等しくなるようにかつS偏光で入射して反射される光の位相遅れが互いに等しくなるように構成されている。
【0136】
ここで、第1および第2のガルバノミラーG1,G2の各々にP偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れをφpとする。また、第1および第2のガルバノミラーG1,G2の各々にS偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れをφsとする。このとき、第1のガルバノミラーG1にP偏光で入射して第1および第2のガルバノミラーG1,G2により反射されるレーザ光には、(φp+φs)分の位相遅れが発生する。また、第1のガルバノミラーG1にS偏光で入射して第1および第2のガルバノミラーG1,G2により反射されるレーザ光には、(φs+φp)分の位相遅れが発生する。
【0137】
上記のように、第1のガルバノミラーG1にP偏光で入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れと第2のガルバノミラーG2にS偏光で入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れとの和は、第1のガルバノミラーG1にS偏光で入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れと第2のガルバノミラーG2にP偏光で入射して反射されるレーザ光に生じる位相遅れとの和に等しくなる。この場合、走査部200に入射するレーザ光は、その偏光状態が保持された状態で走査部200からワークWに向かって照射される。
【0138】
したがって、走査部200の第1のガルバノミラーG1に入射する円偏光のレーザ光は、第2のガルバノミラーG2により円偏光のレーザ光として反射され、ワークWに照射される。
【0139】
図6の例では、走査部200に入射するレーザ光の偏光状態とワークWに照射されるレーザ光の偏光状態とを等しくするために、レーザ光に対する第1および第2のガルバノミラーG1,G2の配置が定められる。走査部200に入射するレーザ光の偏光状態とワークWに照射されるレーザ光の偏光状態とを等しくするための構成は、上記の例に限られない。
【0140】
例えば、第1および第2のガルバノミラーG1,G2におけるレーザ光の反射面にゼロシフトコーティング処理が施されてもよい。ここで、ゼロシフトコーティング処理とは、ミラーの反射面においてP偏光で入射して反射される光の位相遅れをαとし、S偏光で入射して反射される光の位相遅れをβとした場合に、α=β+n×360°(nは整数)の関係が満たされるようにミラーの反射面に誘電体多層膜等の所定の膜を形成する処理をいう。
【0141】
この場合、第1および第2のガルバノミラーG1,G2の各々においては、P偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れαとS偏光で入射して反射されるレーザ光の位相遅れβとが実質的に等しい。そのため、走査部200に入射する円偏光のレーザ光は、第1のガルバノミラーG1により変換されることなく円偏光のレーザ光として反射される。また、第1のガルバノミラーG1により反射された円偏光のレーザ光は、第2のガルバノミラーG2により変換されることなく円偏光のレーザ光として反射される。それにより、円偏光のレーザ光がワークWに照射される。
【0142】
このように、第1および第2のガルバノミラーG1,G2にゼロシフトコーティング処理が施される場合には、各ミラーに対するレーザ光の入射角を45°に調整する必要はない。したがって、第1および第2のモータM1,M2のレイアウトの自由度が向上する。なお、本例では、原点Oにレーザ光が照射された状態での、第1および第2のガルバノミラーG1,G2の各々に対するレーザ光の入射角は、30°以上60°以下に設定されることが好ましく、45°に設定されることがより好ましい。
【0143】
(6)焦点位置調整部
図7および
図8は、焦点位置調整部80によりワークWに照射されるレーザ光の焦点位置が変化する例を説明するための側面図である。
図7および
図8では、焦点位置調整部80とともに走査部200、1/4波長板25およびカバーガラス26の側面図が示される。
【0144】
図7および
図8に示すように、焦点位置調整部80は、略円筒形状のケーシング80Cを有する。ケーシング80Cの両端部には、レーザ光を通過させるための開口が形成されている。ケーシング80Cの内部では、入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83がこの順でZ方向に並ぶ。
【0145】
入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83のうち、コリメートレンズ82および出射レンズ83はケーシング80Cの内部に固定される。一方、入射レンズ81はZ方向に移動可能に設けられる。レンズ駆動部89は、例えばモータを含み、入射レンズ81をZ方向に移動させる。それにより、入射レンズ81と出射レンズ83との間の相対的な距離が変化する。
【0146】
例えば、レンズ駆動部89により入射レンズ81と出射レンズ83との間の距離が小さくなるように調整される。この場合、
図7に示すように、出射レンズ83から出射されるレーザ光の集光角が小さくなることにより、ワークWに照射されるレーザ光の焦点位置fpがカバーガラス26から遠ざかる。一方、レンズ駆動部89により入射レンズ81と出射レンズ83との間の距離が大きくなるように調整される。この場合、
図8に示すように、出射レンズ83から出射されるレーザ光の集光角が大きくなることにより、ワークWに照射されるレーザ光の焦点位置fpがカバーガラス26に近づく。
【0147】
焦点位置調整部80においては、入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83のうち、入射レンズ81がケーシング80Cの内部に固定され、コリメートレンズ82および出射レンズ83がZ方向に移動可能に設けられてもよい。この場合、レンズ駆動部89は、コリメートレンズ82および出射レンズ83を入射レンズ81に対して相対的にZ方向に移動させてもよい。また、入射レンズ81、コリメートレンズ82および出射レンズ83がそれぞれ相対的にZ方向に移動可能に構成されてもよい。
【0148】
本実施の形態においては、焦点位置調整部80のレンズ駆動部89は、レーザ光のZ方向における走査手段として用いられる。
【0149】
(7)レーザマーキング装置の動作
図1のレーザ加工システム1000においては、例えば
図1のレーザ加工データ設定装置900により生成されたレーザ加工データが
図2のメモリ部20に記憶される。
図2の制御部10は、メモリ部20に記憶されたレーザ加工データを読み出すことにより、ワークWへのマーキングを行う。以下の例では、3本の線分からなる文字「A」がワークWにマーキングされる場合の
図1のレーザマーキング装置100の動作を説明する。
【0150】
図9は、文字「A」がワークWにマーキングされる場合のレーザマーキング装置100の動作を示すタイムチャートである。
図9においては、最上段に時刻が示され、2段目にマーキングを行う期間が示され、3段目に
図5の走査部200の動作状態が示される。また、4段目に
図2の複数のシングルエミッタLD41に供給される電流値が示され、5段目に
図5のQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルが示される。さらに、6段目にマーキングヘッド部2からワークWに照射されるレーザ光の出力レベルが示され、最下段にワークW上にマーキングされるマーキングパターンが示される。
【0151】
ここで、
図5の走査部200の第1および第2のモータM1,M2は、第1の状態V1、第2の状態V2および第3の状態V3で動作可能に構成される。走査部200は、第1の状態V1においてワークWに照射されるレーザ光を最も高い速度でX方向およびY方向に走査することが可能であり、第2の状態V2においてワークWに照射されるレーザ光を予め定められた均一な速度(以下、マーキング速度と呼ぶ。)でX方向およびY方向に走査することが可能であるものとする。さらに、走査部200は、第3の状態V3においてワークWに照射されるレーザ光の走査速度をマーキング速度に近づけることが可能であるものとする。
【0152】
初期状態において、
図2の複数のシングルエミッタLD41には予め定められた大きさの電流が供給されている。このときの電流値を予備電流値a2と呼ぶ。予備電流値a2は、各シングルエミッタLD41をオフ状態からオン状態に切り替える際の応答性を高めるために設定される。ここで、シングルエミッタLD41のオフ状態とは、シングルエミッタLD41において予め定められた出力よりも低い光が発生される状態および光が発生されない状態をいう。また、シングルエミッタLD41のオン状態とは、シングルエミッタLD41において予め定められた出力以上の光が発生される状態をいう。
【0153】
また、初期状態において、
図5のQスイッチ50Qには予め定められた信号レベルで一定の駆動信号が印加されている。このときの駆動信号の信号レベルを予備レベルp2と呼ぶ。予備レベルp2は、Qスイッチ50Qの発振動作の応答性を高めるために設定される。
【0154】
時刻t0で、
図2の制御部10はメモリ部20に記憶されたレーザ加工データを読み出す。また、制御部10は、読み出された加工データに基づいて、
図9の最上段に示すように、「A」を構成する3つの線分のそれぞれのマーキング期間を決定する。本例では、時刻t3から時刻t4の間、時刻t6から時刻t7の間および時刻t9から時刻t10の間に、各線分のマーキングが行われる。
【0155】
さらに、制御部10は、時刻t0において、走査部200を第1の状態V1に移行させるとともに走査部200を制御する。それにより、走査部200は、レーザ光の照射位置が1番目にマーキングされるべき線分の位置に向かうように動作する。
【0156】
次に、制御部10は、時刻t1でQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルを予備レベルp2からハイレベルp3に変更する。
【0157】
続いて、制御部10は、時刻t2で走査部200を第3の状態V3に移行させるとともに走査部200を制御する。それにより、走査部200は、レーザ光の照射位置が1番目にマーキングされるべき線分の位置に向かうようにかつそのレーザ光の走査速度がマーキング速度に近づくように動作する。また、制御部10は、時刻t2で複数のシングルエミッタLD41に供給される電流の値を予備電流値a2から設定電流値a3まで増加させる。設定電流値a3は、複数のシングルエミッタLD41をオン状態にするために設定される。
【0158】
その後、制御部10は、時刻t3でQスイッチ50Qに高周波の駆動信号を印加する。この場合、Qスイッチ50Qに印加される駆動信号は、一定周期でハイレベルp3とローレベルに切り替わる。それにより、時刻t3から時刻t4にかけて、マーキングヘッド部2からワークWに向かってレーザ光が照射される。
【0159】
また、制御部10は、時刻t3で走査部200を第2の状態V2に移行させるとともに走査部200を制御する。それにより、走査部200は、ワークWに照射されるレーザ光の照射位置が1番目にマーキングされるべき線分の一端から他端に向かってマーキング速度で移動するように動作する。それにより、
図9の最下段に示すように、時刻t3から時刻t4にかけて1番目の線分が複数のドットによりワークW上にマーキングされる。
【0160】
次に、制御部10は、時刻t4で複数のシングルエミッタLD41に供給される電流の値を設定電流値a3から予備電流値a2まで減少させる。また、制御部10は、時刻t4でQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルをハイレベルp3で一定に保持する。
【0161】
さらに、制御部10は、時刻t4において、走査部200を第1の状態V1に移行させるとともに走査部200を制御する。それにより、走査部200は、レーザ光の照射位置が2番目にマーキングされるべき線分の位置に向かうように動作する。
【0162】
その後、制御部10は、時刻t5から時刻t7にかけて、上記の時刻t2から時刻t4までの処理と同様の処理を行う。それにより、
図9の最下段に示すように、時刻t6から時刻t7にかけて2番目の線分が複数のドットによりワークW上にマーキングされる。
【0163】
さらに、制御部10は、時刻t8から時刻t10にかけて、上記の時刻t2から時刻t4までの処理および時刻t5から時刻t7までの処理と同様の処理を行う。それにより、
図9の最下段に示すように、時刻t8から時刻t10にかけて3番目の線分が複数のドットによりワークW上にマーキングされる。このようにして、文字「A」が完成する。
【0164】
次に、制御部10は、時刻t10で複数のシングルエミッタLD41に供給される電流の値を設定電流値a3から予備電流値a2まで減少させる。また、制御部10は、時刻t10でQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルをハイレベルp3で一定に保持する。さらに、制御部10は、時刻t10で走査部200の動作を停止させる。
【0165】
その後、制御部10は、時刻t11でQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルをハイレベルp3から予備レベルp2に変更する。また、制御部10は、時刻t12で複数のシングルエミッタLD41に供給される電流の値を、予備電流値a2から予備電流値a2よりも小さい節電用電流値a1まで減少させる。さらに、制御部10は、時刻t13でQスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルを予備レベルp2から予備レベルp2よりも低い節電レベルp1に変更する。このようにして、文字「A」のマーキングが終了する。
【0166】
上記のように、本例においては、走査部200が第1の状態V1または第3の状態V3である期間中に複数のシングルエミッタLD41に供給される電流の値が設定電流値a3まで増加される。また、Qスイッチ50Qに印加される駆動信号の信号レベルが予備レベルp2からハイレベルp3に変更される。それにより、各線分のマーキングが開始される時点で複数のシングルエミッタLD41およびQスイッチ50Qが安定して駆動される。その結果、各線分のマーキング開始時に複数のシングルエミッタLD41およびQスイッチ50Qに応答遅れが生じることが防止される。
【0167】
(8)効果
(8−1)上記のレーザマーキング装置100においては、レーザ励起部40から出射される高出力の励起光が光ファイバケーブルOCによりレーザ光出力部50に伝達される。光ファイバケーブルOCの他端面E2から出射される励起光が、ビームスプリッタ52により分離される。分離された一部の励起光により第1のレーザ媒質LM1が励起され、レーザ光が発生される。発生されたレーザ光が第2のレーザ媒質LM2に入射する。第2のレーザ媒質LM2には、ビームスプリッタ52により分離された残りの励起光が入射する。それにより、第2のレーザ媒質LM2が励起され、第1のレーザ媒質LM1から第2のレーザ媒質LM2に入射したレーザ光が増幅される。
【0168】
この場合、ビームスプリッタ52により分離される励起光の一部の出力は光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光された励起光の出力に比べて低いので、第1のレーザ媒質LM1の熱レンズ効果の発生が抑制される。また、第1のレーザ媒質LM1により発生されたレーザ光が、ビームスプリッタ52により分離される残りの励起光により増幅されるので、レーザ光出力部50から出射されるレーザ光の出力が高くなる。したがって、高出力のレーザ光が走査部200によりワークWの表面上で走査される。
【0169】
マーキングヘッド部2においては、レーザ光出力部50から出射された直線偏光のレーザ光は、S偏光で偏光ビームスプリッタ23に入射して反射される。偏光ビームスプリッタ23により反射された直線偏光のレーザ光は、1/4波長板25により円偏光のレーザ光に変換される。変換された円偏光のレーザ光は、走査部200によりワークWの表面上で走査される。
【0170】
ワークWの表面で反射する円偏光のレーザ光は、回転方向が逆転した状態で、戻り光として走査部200を通して1/4波長板25に入射する。それにより、円偏光の戻り光が直線偏光に変換される。このとき、直線偏光の戻り光の位相は、レーザ光出力部50から出射される直線偏光のレーザ光の位相に対してずれる。それにより、直線偏光の戻り光がP偏光で偏光ビームスプリッタ23に入射する。この場合、戻り光は偏光ビームスプリッタ23を透過し、レーザ光出力部50に入射しない。
【0171】
これらの結果、高出力のレーザ光でのレーザ加工が可能になるとともに簡単な構成かつ低コストで戻り光によるレーザ光出力部50の破損が防止される。
【0172】
(8−2)上記のレーザマーキング装置100においては、レーザ励起部40の複数のシングルエミッタLD41の単一のエミッタから出射される光が光ファイバケーブルOCの一端面E1に集光される。この場合、単一のエミッタを有する複数のシングルエミッタLD41を分散配置することができる。分散配置された各シングルエミッタLD41においては、駆動時に発生される熱が放散されやすい。それにより、発熱に起因する各シングルエミッタLD41の短寿命化が抑制される。また、複数のシングルエミッタLD41から出射される光が光ファイバケーブルOCの一端部に集光されることにより、高出力の励起光を光ファイバケーブルOCを通してマーキングヘッド部2のレーザ光出力部50に伝達することができる。
【0173】
(8−3)金属のレーザ加工においては、レーザ光のエネルギーが金属に吸収されることによりその金属が加工される。金属の表面のレーザ加工時には、金属の表面の少なくとも一部が変形する。例えば、レーザ加工により金属の表面に円形の孔を形成する場合には、レーザ加工中にレーザ光が照射される金属の部分がレーザ光の照射方向に向かって凹状に変形する。この場合、凹状部の内側にレーザ光に対して傾斜した面(以下、凹状傾斜面と呼ぶ。)が形成される。
【0174】
このようなレーザ加工に直線偏光のレーザ光が用いられると、金属に照射されるレーザ光は凹状傾斜面の一部にP偏光で入射し、凹状傾斜面の他の部分にS偏光で入射する。ここで、レーザ光が金属の表面にP偏光で入射する場合と、レーザ光が金属の表面にS偏光で入射する場合とでは、その金属に吸収されるエネルギーの大きさが異なる。具体的には、直線偏光のレーザ光が金属の表面にP偏光で入射する場合にその金属に吸収されるエネルギーは、直線偏光のレーザ光が金属の表面にS偏光で入射する場合にその金属に吸収されるエネルギーに比べて大きい。
【0175】
それにより、凹状傾斜面の一部に吸収されるエネルギーは大きくなり、凹状傾斜面の他の部分に吸収されるエネルギーは小さくなる。そのため、凹状傾斜面の一部は加工されやすく、凹状傾斜面の他の部分は加工されにくくなる。その結果、金属の表面には円形ではなく楕円形の孔が形成される。
【0176】
これに対して、円偏光のレーザ光を用いて金属の表面に円形の孔を形成する場合には、レーザ加工中に形成される凹状傾斜面の全ての部分にP偏光のレーザ光とS偏光のレーザ光とが同じ比率で照射される。それにより、円形の孔が正確に形成される。したがって、レーザ加工の加工精度(加工品質)が向上する。
【0177】
上記のマーキングヘッド部2によれば、円偏光のレーザ光によりワークWにマーキングを行うことができる。それにより、上記のレーザ加工の例と同様に、マーキングの加工精度(加工品質)が向上する。
【0178】
(8−4)レーザ励起部40においては、各シングルエミッタLD41のエミッタの前部にVBG49が設けられる。それにより、シングルエミッタLD41からVBG49を通して出射される光の波長は、第1のレーザ媒質LM1の励起波長を含む波長領域の範囲内に制限される。したがって、レーザ励起部40から出射される励起光に基づいて第1のレーザ媒質LM1を効率よく励起することができる。
【0179】
(8−5)本実施の形態では、本体部1とマーキングヘッド部2とが1本の光ファイバケーブルOCにより接続される。本体部1のレーザ励起部40から出射される励起光が、光ファイバケーブルOCによりマーキングヘッド部2のレーザ光出力部50に伝達される。このような構成により、レーザ光を出射するマーキングヘッド部2の小型化が可能となる。
【0180】
(8−6)上記のように、レーザ光出力部50においては、Qスイッチ50Qによりレーザ光をパルス発振させることができる。それにより、高出力のレーザ光を短いパルス幅で出射することが可能となる。したがって、高出力のレーザ光を微小な時間間隔でワークWの表面に照射することができる。それにより、レーザ光によるワークWのマーキング時間が短縮される。
【0181】
(8−7)マーキングヘッド部2においては、焦点位置調整部80によりワークWに照射されるレーザ光の焦点の位置が調整される。それにより、ワークWの表面に高出力のレーザ光の焦点を合わせることができる。その結果、レーザ光によるワークWのマーキング時間が短縮されるとともに加工精度が向上する。
【0182】
(8−8)レーザ光出力部50から出射されるレーザ光の出力を検出するために設けられるビームサンプラー21は、レーザ光出力部50と偏光ビームスプリッタ23との間のレーザ光の経路上に配置される。この場合、戻り光は偏光ビームスプリッタ23を透過するので、戻り光がビームサンプラー21に入射しない。それにより、戻り光の一部がビームサンプラー21を介してパワーモニタ110に入射することが防止される。それにより、パワーモニタ110における誤検出が防止される。
【0183】
(9)他の実施の形態
(9−1)上記の実施の形態では、レーザ光出力部50に増幅器として1つのレーザ媒質(第2のレーザ媒質LM2)が設けられる。レーザ光出力部50に増幅器として設けられるレーザ媒質の数は、上記の例に限られない。レーザ光出力部50には、増幅器として2つ以上のレーザ媒質が設けられてもよい。
【0184】
図10は、他の実施の形態に係るレーザ光出力部50の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、本例のレーザ光出力部50は、コリメートレンズ151、ビームスプリッタ152,171、集光レンズ153,172,182、リアミラー154、折り返しミラー155,157,158,159,160,161,181、出力ミラー156、第1のレーザ媒質LM1、第2のレーザ媒質LM2および第3のレーザ媒質LM3を含む。
【0185】
上記の複数の折り返しミラーのうち、リアミラー154および折り返しミラー158,160は、一面に入射する光を透過し、他面に入射する光を反射するミラーである。また、第1のレーザ媒質LM1、第2のレーザ媒質LM2および第3のレーザ媒質LM3は、上記の実施の形態で用いられる第1のレーザ媒質LM1と同じ構成を有する。第1、第2および第3のレーザ媒質LM1,LM2,LM3は、それぞれの結晶のc軸方向が互いに平行となるように配置される。また、本例で用いられるQスイッチ50Qは、上記の実施の形態で用いられるQスイッチ50Qと同じ構成および動作を有する。
【0186】
本例においても、光ファイバケーブルOCの他端面E2から出射される高出力の励起光は、コリメートレンズ151により平行光に調整され、ビームスプリッタ152に入射する。ビームスプリッタ152に入射した励起光は、互いに直交する2つの方向に分離される。
【0187】
ビームスプリッタ152により分離された一部の励起光は、集光レンズ153により集光されつつリアミラー154を透過して第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射する。
【0188】
第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射した励起光は、第1のレーザ媒質LM1から自然放出光(または誘導放出光)を発生させる。発生された自然放出光は、第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射される。第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射された自然放出光は、Qスイッチ50Qを通して折り返しミラー155により反射され、出力ミラー156に入射する。出力ミラー156は、入射した一部の自然放出光を透過し、残りの自然放出光を反射する。出力ミラー156により反射された自然放出光は、折り返しミラー155により反射され、Qスイッチ50Qを通して第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射する。
【0189】
第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射した自然放出光は、第1のレーザ媒質LM1から誘導放出光を発生させる。発生された誘導放出光は、第1のレーザ媒質LM1の一端部から出射される。第1のレーザ媒質LM1の一端部から出射された誘導放出光は、リアミラー154により反射され、第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射する。
【0190】
その後、誘導放出光は、第1のレーザ媒質LM1の他端部から出射され、Qスイッチ50Qを通して折り返しミラー155により反射され、出力ミラー156に入射する。このとき、出力ミラー156は、入射した一部の誘導放出光を透過し、残りの誘導放出光を反射する。出力ミラー156により反射された誘導放出光は、折り返しミラー155により反射され、Qスイッチ50Qを通して第1のレーザ媒質LM1の他端部に入射する。その後、誘導放出光は、第1のレーザ媒質LM1の一端部から出射され、リアミラー154により反射され、再び第1のレーザ媒質LM1の一端部に入射する。
【0191】
このようにして、誘導放出光が繰り返し第1のレーザ媒質LM1に入射することによりレーザ光が発生される。第1のレーザ媒質LM1において発生されたレーザ光は、Qスイッチ50Qの動作により出力ミラー156から折り返しミラー157に向かって断続的に出射される。出射されたレーザ光は、折り返しミラー157により反射され、第2のレーザ媒質LM2の一端部に入射する。
【0192】
上記のように、本例では、リアミラー154、第1のレーザ媒質LM1、Qスイッチ50Q、折り返しミラー155および出力ミラー156がレーザ光の発振器として機能する。
【0193】
ビームスプリッタ152により分離された残りの励起光は、さらにビームスプリッタ171に入射する。ビームスプリッタ171に入射した励起光は、互いに直交する2つの方向にさらに分離される。
【0194】
ビームスプリッタ171により分離された一部の励起光は、折り返しミラー181により反射され、集光レンズ182により集光されつつ折り返しミラー158を透過して第2のレーザ媒質LM2の他端部に入射する。それにより、第2のレーザ媒質LM2においては、一端部から他端部に向かって進行するレーザ光が他端部から入射される励起光により効率よく増幅される。このように、第2のレーザ媒質LM2は増幅器として機能する。
【0195】
第2のレーザ媒質LM2により増幅されたレーザ光は、折り返しミラー158,159により反射され、第3のレーザ媒質LM3の一端部に入射する。
【0196】
ここで、ビームスプリッタ171により分離された残りの励起光は、集光レンズ172により集光されつつ折り返しミラー160を透過して第3のレーザ媒質LM3の他端部に入射する。それにより、第3のレーザ媒質LM3においては、一端部から他端部に向かって進行するレーザ光が他端部から入射される励起光により効率よく増幅される。このように、第3のレーザ媒質LM3は増幅器として機能する。
【0197】
第2および第3のレーザ媒質LM2,LM3により増幅されたレーザ光は、折り返しミラー160,161により反射され、
図5のビームエキスパンダ70に向かって出射される。
【0198】
図10の例では、第1のレーザ媒質LM1において発生されたレーザ光が、第2および第3のレーザ媒質LM2,LM3により増幅される。つまり、1つの発振器により発生されたレーザ光を2つの増幅器でそれぞれ増幅することができる。それにより、第1のレーザ媒質LM1に入射される励起光のエネルギーを低減しつつ、ワークWに向かって照射されるレーザ光をより高出力化することができる。
【0199】
(9−2)上記の実施の形態では、ワークWに円偏光のレーザ光が照射されるように、レーザ光の経路上に1/4波長板25が設けられる。このように、ワークWに円偏光のレーザ光を入射させるための構成は、上記の例に限られない。レーザ光出力部50と走査部200との間のレーザ光の経路上に1/4波長板25を設ける代わりに、走査部200の第1のガルバノミラーG1および第2のガルバノミラーG2のうちの一方に直線偏光を円偏光に変換する波長板を設けるとともに、他方のミラーにゼロシフトコーティングを施してもよい。この場合、一方のミラーにより直線偏光のレーザ光が円偏光のレーザ光に変換され、変換された円偏光のレーザ光がワークWに照射される。また、ワークWからの円偏光の戻り光は、一方のミラーに入射することにより直線偏光のレーザ光に変換され、反射される。
【0200】
(9−3)上記の実施の形態では、レーザ光出力部50内のレーザ光の経路において、Qスイッチ50Qは第1のレーザ媒質LM1と出力ミラー58との間に配置されるが、Qスイッチ50Qの設けられる位置は上記の例に限られない。Qスイッチ50Qは、第1のレーザ媒質LM1と出力ミラー58との間に代えて、第1のレーザ媒質LM1とリアミラー57との間に設けられてもよい。
【0201】
(9−4)上記の実施の形態では、本発明をレーザマーキング装置に適用した例であるが、これに限らず、ワークWに孔を形成する装置、トリミングを行う装置、またはスクライビングを行う装置等に本発明を適用してもよい。このように、本発明は、マーキングに限らず、溶融、剥離、酸化、切削および変色等のレーザ光を用いた種々の処理に利用することができる。
【0202】
(10)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0203】
上記の実施の形態においては、ワークWが対象物の例であり、レーザマーキング装置100がレーザ加工装置の例であり、レーザ励起部40が励起光生成部の例であり、レーザ光出力部50がレーザ光出力部の例であり、偏光ビームスプリッタ23および1/4波長板25が偏光状態変換部の例であり、走査部200がレーザ光走査部の例であり、ビームスプリッタ52が励起光分離部の例であり、第1のレーザ媒質LM1が第1のレーザ媒質の例である。
【0204】
また、
図5の折り返しミラー55,56、リアミラー57、出力ミラー58、Qスイッチ50Qおよび第1のレーザ媒質LM1を含む構成、および
図10のリアミラー154、第1のレーザ媒質LM1、Qスイッチ50Q、折り返しミラー155および出力ミラー156を含む構成が発振器の例であり、第2のレーザ媒質LM2および第3のレーザ媒質LM3が第2のレーザ媒質および増幅器の例である。
【0205】
また、S偏光が第1の偏光の例であり、P偏光が第2の偏光の例であり、偏光ビームスプリッタ23が偏光部材の例であり、1/4波長板25が位相変換部材の例であり、X方向が第1の方向の例であり、第1のガルバノミラーG1が第1の走査用ミラーの例であり、Y方向が第2の方向の例であり、第2のガルバノミラーG2が第2の走査用ミラーの例である。
【0206】
また、回転軸S1が第1の回転軸の例であり、回転軸S2が第2の回転軸の例であり、範囲Rがレーザ光を走査可能な領域の例であり、原点Oがレーザ光を走査可能な領域の中心の例であり、ゼロシフトコーティング処理がコーティング処理の例であり、ビームサンプラー21が第1の光学部材の例であり、パワーモニタ110が出力検出器の例であり、折り返しミラー24が第2の光学部材の例であり、撮像装置120が撮像装置の例である。
【0207】
また、リアミラー57および出力ミラー156が第1の反射部材の例であり、出力ミラー58およびリアミラー154が第2の反射部材の例であり、Qスイッチ50QがQスイッチの例であり、折り返しミラー59、157,159が第3の光学部材の例であり、折り返しミラー62,181およびビームスプリッタ171が第4の光学部材の例である。
【0208】
また、折り返しミラー60,161が第5の光学部材の例であり、焦点位置調整部80が焦点位置調整部の例であり、入射レンズ81が第1のレンズの例であり、出射レンズ83が第2のレンズの例であり、レンズ駆動部89がレンズ移動部の例である。
【0209】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。