特許第6261475号(P6261475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261475通信トラヒック予測方法、プログラムおよび装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261475
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】通信トラヒック予測方法、プログラムおよび装置
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/36 20060101AFI20180104BHJP
   H04L 12/24 20060101ALI20180104BHJP
   H04M 3/00 20060101ALI20180104BHJP
   H04W 16/00 20090101ALI20180104BHJP
【FI】
   H04M3/36 A
   H04L12/24
   H04M3/00 E
   H04W16/00
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-166139(P2014-166139)
(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公開番号】特開2016-42666(P2016-42666A)
(43)【公開日】2016年3月31日
【審査請求日】2017年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】小頭 秀行
(72)【発明者】
【氏名】上坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】泉川 晴紀
【審査官】 石井 則之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−061535(JP,A)
【文献】 特開2003−037553(JP,A)
【文献】 特開2004−080315(JP,A)
【文献】 特開2010−062681(JP,A)
【文献】 特開2009−130728(JP,A)
【文献】 特開2013−236182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04L 12/00−12/28
12/44−12/955
H04M 3/00
3/08−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04Q 1/20−1/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信トラヒック量を予測する通信トラヒック予測装置において、
監視エリアを地理依存で分割した単位地域ごとに、コール数および1コール当たりのトラヒック量を含むトラヒック特性を測定するトラヒック特性測定手段と、
地理依存で分割された単位地域の一部をそのトラヒック特性に基づいて統合し、トラヒック特性依存の単位地域に再編する単位地域再編手段と、
再編後の単位地域ごとに、将来のコール数および1コール当たりのトラヒック量のうち少なくともコール数を予測するトラヒック予測手段と、
前記コール数の予測結果に基づいて予測トラヒック総量を前記再編後の単位地域ごとに算出する予測トラヒック総量算出手段とを具備したことを特徴とする通信トラヒック予測装置。
【請求項2】
前記単位地域再編手段は、トラヒック特性が類似する複数の単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項1に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項3】
前記単位地域再編手段は、各単位地域を相似形状に多段階に拡張し、所定のトラヒック特性に関する標準偏差が当該単位地域よりも減少かつ最小化する拡張範囲内の単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項1または2に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項4】
前記単位地域再編手段は、全ての単位地域を所定のトラヒック特性に基づいてクラスタリングし、同一クラスタの単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項1または2に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項5】
前記単位地域再編手段は、クラスタごとに、統合後の標準偏差が統合前の各単位地域の標準偏差よりも減少し、かつ最小化する組み合わせの単位地域を統合することを特徴とする請求項4に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項6】
前記単位地域再編手段は、所定の時間帯ごとに単位地域を再編することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項7】
前記トラヒック特性が、コール数、1コール当たりのトラヒック量、コール数の増減率、および1コール当たりのトラヒック量の増減率の少なくとも一つであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項8】
前記予測トラヒック総量算出手段は、前記単位地域ごとに、前記コール数の予測結果と前記1コール当たりのトラヒック量の統計値とに基づいて将来の予測トラヒック総量を算出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項9】
前記予測トラヒック総量算出手段は、前記単位地域ごとに、前記コール数および1コール当たりのトラヒック量の各予測結果に基づいて将来の予測トラヒック総量を算出することを特徴とする請求項8に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項10】
前記予測トラヒック総量算出手段は、前記予測トラヒック総量を通信方式ごとに予測することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項11】
前記予測トラヒック総量算出手段は、予測トラヒック総量を全ての通信方式の合算値として予測し、その後、当該合算値を各通信方式の比率に基づいて分割することを特徴とする請求項10に記載の通信トラヒック予測装置。
【請求項12】
通信トラヒック量をコンピュータにより予測させる通信トラヒック予測プログラムにおいて、
監視エリアを地理依存で分割した単位地域ごとに、コール数および1コール当たりのトラヒック量を含むトラヒック特性を測定する手順と、
地理依存で分割された単位地域の一部をそのトラヒック特性に基づいて統合し、トラヒック特性依存の単位地域に再編する手順と、
再編後の単位地域ごとに、将来のコール数および1コール当たりのトラヒック量のうち少なくともコール数を予測する手順と、
前記コール数の予測結果に基づいて予測トラヒック総量を前記再編後の単位地域ごとに算出する手順とを、コンピュータに実行させる通信トラヒック予測プログラム。
【請求項13】
前記単位地域を再編する手順では、トラヒック特性が類似する複数の単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項12に記載の通信トラヒック予測プログラム。
【請求項14】
前記単位地域を再編する手順では、各単位地域を相似形状に多段階に拡張し、所定のトラヒック特性に関する標準偏差が当該単位地域よりも減少かつ最小化する拡張範囲内の単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項12または13に記載の通信トラヒック予測プログラム。
【請求項15】
前記単位地域を再編する手順では、全ての単位地域を所定のトラヒック特性に基づいてクラスタリングし、同一クラスタの単位地域を一つの単位地域に統合することを特徴とする請求項12または13に記載の通信トラヒック予測プログラム。
【請求項16】
通信トラヒック量をコンピュータにより予測する通信トラヒック予測方法において、
監視エリアを地理依存で分割した単位地域ごとに、コール数および1コール当たりのトラヒック量を含むトラヒック特性を測定する手順と、
地理依存で分割された単位地域の一部をそのトラヒック特性に基づいて統合し、トラヒック特性依存の単位地域に再編する手順と、
再編後の単位地域ごとに、将来のコール数および1コール当たりのトラヒック量のうち少なくともコール数を予測する手順と、
前記コール数の予測結果に基づいて予測トラヒック総量を前記再編後の単位地域ごとに算出する手順とを含む通信トラヒック予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信トラヒック予測方法、プログラムおよび装置に係り、特に、通信端末のコール数に基づいて将来の通信トラヒック量を予測する通信トラヒック予測方法、プログラムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラヒック特性の実績値に基づいて将来の通信トラヒックを算出する技術が特許文献1−4に開示されている。
【0003】
特許文献1には、日時によって変動する通信地域のトラヒック量を予測する方式として、移動体・携帯通信網における位置登録情報を監視・測定し、かつ発呼した移動体端末の発呼状況も監視・測定し、これらの過去の実績値に基づいて将来の日時および地域毎の発呼状況を予測する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、変動する通信地域のトラヒックを予測する方式として、電気通信設備におけるトラヒックおよび電気通信設備のサービス提供地域から地図上の各位置(単位領域)に依存したトラヒックを算出し、この位置依存トラヒックの実績値から将来の位置依存トラヒックを予測する技術が開示されている。各単位領域のトラヒック量は、電気通信設備のサービス提供地域と観測単位領域との面積比により、電気通信設備間のトラヒックを観測単位領域間のトラヒックとして算出される。
【0005】
特許文献3には、バックボーン回線やINET回線など固定網の通信トラヒック量を予測する方式として、ネットワーク上でパケットが流れた時間およびパケットのサイズを測定し、かつトラヒック量およびその変動に影響を与える外的要因(カレンダ情報やイベントの状況など)を管理し、これらの情報に統計解析手法を適用して将来のトラヒック量を予測する技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、新規サービス普及時に発生するであろう通信トラヒック量を予測する方式として、新規サービスのトラヒック量に影響を与えるサービス加入者数や、過去の同様サービス普及時のトラヒック量の傾向・実績等を管理・測定し、これらに基づいて将来の新規サービス普及時のトラヒック量を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-80315号公報
【特許文献2】特開2001-168985号公報
【特許文献3】特開2012-253445号公報
【特許文献4】特開2012-182677号公報
【特許文献5】特願2013-203895号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、位置登録に関する信号情報、シグナリングを測定することで呼数を予測し、呼数の予測結果に基づいて通信トラヒックの量を予測する。したがって、端末ユーザが位置登録に関する在圏地域(位置登録で管理する地域・エリアの単位)の境界領域において移動を繰り返すと、必要以上に位置登録情報が発生して位置登録情報数がユーザ数に比例しなくなる。その結果、位置登録情報数とトラヒック量との相関関係も低くなり、トラヒック量の予測精度が低下してしまう。
【0009】
特許文献2−4は、トラヒック量の実績値に時系列予測方式を適用して予測トラヒック量を直接算出している。しかしながら、時系列予測の精度は通信トラヒックの総量や一通信当たりのトラヒック量の変動幅が大きくなるほど低下するため、今日のように一通信当たりのトラヒック量が多い通信と少ない通信とが混在するトラヒック環境下では予測精度が低下するという技術課題があった。
【0010】
さらに、特許文献2では単位領域ごとに地理依存トラヒックが測定されるものの、各単位領域のトラヒック量は、各地域が住宅街、商店街、オフィス街等のいずれであるかとは無関係に、総トラヒック量に対する面積比として算出される。しかしながら、各単位領域の面積比率とトラヒック比率とは等価とは限らないので、トラヒック量を高精度で予測することができなかった。
【0011】
このように、従来技術では将来のトラヒック量を予測する際、過去ないし現在のトラヒック量に基づく時系列予測手法等を用いていた。しかしながら、コンテンツ及びサービスの多様化に伴い、一通信当たりのトラヒック量の偏差が大きくなるため、十分な予測精度を確保できないという技術課題があった。
【0012】
また、通信装置毎や回線毎に予測を実施していたため、通信装置や回線を増設/撤去した際にトラヒック量が非線形に変化し、トラヒック予測を当該変化に追従させることが困難であるという技術課題があった。
【0013】
一方、このような技術課題を解決するために、本発明の発明者等は、監視エリアを地理依存でメッシュ状に区分した単位地域ごとにトラヒック特性を測定し、この測定結果に基づいて、単位地域ごとに将来のコール数や1コール当たりのトラヒック量を予測し、さらに将来の予測トラヒック総量を算出する技術を発明し、特許出願した(特許文献5)。
【0014】
しかしながら、特許文献5では単位地域のサイズおよび形状が固定的であっため、端末ユーザが物理的、空間的に同一位置に所在していたとしても、GPSや三点測位の計算処理精度の問題で、端末位置の計算結果にばらつきが生じ得る。
【0015】
また、特に端末位置を三点測位で算出する場合、端末ユーザが物理的、空間的に同一位置に所在し、かつ三点測位の計算処理精度にばらつきがなくても、端末と当該端末が接続する基地局との間の電波伝搬環境や、基地局の負荷状況により(負荷に応じて隣接基地局に接続指示する等)、端末位置の計算結果にばらつきが生じ得る。
【0016】
さらに、端末ユーザの日々の活動場所そのものは同一であって、行動範囲や移動範囲が同一(ルーチン)であったとしても、毎日、毎回、厳密に同じ位置に所在する訳ではなく、数m〜数十mのばらつきは普通に生じ得る。
【0017】
したがって、特に各単位地域の境界近傍に所在している端末については、そのトラヒック特性を各単位地域と正確に紐付けることができず、これがトラヒックの予測精度に誤差を及ぼすという技術課題があった。
【0018】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、端末需要を変動させる各種イベントの有無にかかわらず、コール数に基づいて将来の通信トラヒック総量を精度よく予測できる通信トラヒック予測方法、プログラムおよび装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するために、本発明は、通信トラヒック量を予測する通信トラヒック予測装置において、以下の構成を具備した点に特徴がある。
【0020】
(1) 監視エリアを地理依存で分割した単位地域ごとに、コール数および1コール当たりのトラヒック量を含むトラヒック特性を測定するトラヒック特性測定手段と、単位地域の一部をそのトラヒック特性に基づいて統合し、トラヒック特性依存の単位地域に再編する単位地域再編手段と、再編後の単位地域ごとに、将来のコール数および1コール当たりのトラヒック量のうち少なくともコール数を予測するトラヒック予測手段と、コール数の予測結果に基づいて予測トラヒック総量を前記再編後の単位地域ごとに算出する予測トラヒック総量算出手段とを具備した。
【0021】
(2)単位地域再編手段は、トラヒック特性が類似する複数の単位地域を一つの単位地域に統合するようにした。
【0022】
(3) 単位地域再編手段は、各単位地域を相似形状に多段階に拡張し、所定のトラヒック特性に関する標準偏差が当該単位地域よりも減少かつ最小化する拡張範囲内の単位地域を一つの単位地域に統合するようにした。
【0023】
(4) 単位地域再編手段は、全ての単位地域を所定のトラヒック特性に基づいてクラスタリングし、同一クラスタの単位地域を一つの単位地域に統合するようにした。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
(1) コール数(C)および1コール当たりのトラヒック量(V/C)の積の総量として算出されるトラヒック総量の将来の日常的な予測値を算出するにあたり、予測範囲を、地理依存の単位地域ごとではなく、トラヒック特性依存の単位地域ごととしたので、予測範囲内でのトラヒック特性や実績のばらつきを抑えることができ、予測精度を向上させることができる。また、単位地域数が地理依存の場合に比べて減少するので、予測に伴う計算処理が軽減される。
【0025】
(2) 例えば、2つの単位地域の境界近傍において、多数の端末ユーザが頻繁に移動し、あるいは多数の端末ユーザが所在し、各端末位置の計算結果のばらつきが原因で、多数の端末のトラヒックが、その都度、一方の単位地域と紐付けられたり他方の単位地域と紐付けられたりする場合でも、2つの単位地域を統合して一つの単位地域とみなすことで、各単位地域に紐付いたトラヒックのばらつきを防止できるようになる。
【0026】
(3)トラヒック総量の将来の日常的な予測値を算出するにあたり、コンテンツやサービスといった通信内容の差異や変化の影響による突発的あるいは一時的な変動が少ないコール数を予測し、予測コール数および1コール当たりのトラヒック量代表値の積の総和としてトラヒック総量の将来の日常的な予測値を算出する一方、突発的あるいは一時的な変動成分・変動要因が多いために日常的な予測には不向きな1コール当たりのトラヒック量は予測に用いないので、将来の日常的な通信トラヒック総量を正確に予測できるようになる。
【0027】
(4)1コール当たりのトラヒック量の変化に、例えば規則性や選択性などが認められて高い予測精度を期待できる場合には、コール数のみならず1コール当たりのトラヒック量についても予測するようにしたので、将来の日常的な通信トラヒック総量を更に正確に予測できるようになる。
【0028】
(5)コール数と1コール当たりのトラヒック量とを別々に予測できるので、それぞれのサンプル数やサンプル条件等を異ならせた独立予測が可能になる。その結果、
【0029】
(4a)例えば、配信動画の高解像度化(例えば、フルHD化)のスケジュール等が別途に与えられる場合には、これを1コール当たりのトラヒック量に反映させることで、将来のトラヒック総量をより正確に予測できるようになる。
【0030】
(4b)例えば、人気端末の新発売や新規顧客の獲得キャンペーンなどが予定されている場合には、当該キャンペーンの実施により見込まれる新規顧客数をコール数に反映させることで、将来のトラヒック総量をより正確に予測できるようになる。
【0031】
(4c)トラヒック量を予測する際の地理依存性や時間依存性を、コール数と1コール当たりのトラヒック量とに分離して独立に反映できるので、地理依存性や時間依存性をトラヒック総量の予測値により正確に反映できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1実施形態に係る通信トラヒック予測装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態の動作を示したフローチャートである。
図3】地域再編の手順(その1)を示したフローチャートである。
図4】単位地域の統合例(その1)を示した図である。
図5】単位地域の統合が可能か否かの判定基準を示した図である。
図6】地域再編の手順(その2)を示したフローチャートである。
図7】単位地域の統合例(その2)を示した図である。
図8】予測結果の一例を示した図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る通信トラヒック予測装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図10】本発明の第3実施形態に係る通信トラヒック予測装置の主要部の構成を示した機能ブロック図である。
図11】通信方式ごとに第1の実施形態を適用して単位地域ごとに予測トラヒック総量を算出する予測処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る通信トラヒック予測装置の主要部の構成を示した機能ブロック図であり、ここでは、本発明の説明に不要な構成は図示が省略されている。このような通信トラヒック予測装置は、汎用のコンピュータやサーバに各機能を実現するアプリケーション(プログラム)を実装して構成できる。あるいは、アプリケーションの一部がハードウェア化またはROM化された専用機や単能機として構成しても良い。
【0034】
位置情報付き通信ログ収集部5は、各通信端末の通信ログとして、1コール(通信試行単位)ごとに時刻情報、送信元情報、宛先情報ならびに各通信端末が通信した際に見えた(通信可能であった)基地局および当該各基地局との間の通信遅延時間を含む各種の情報を収集し、さらに各通信遅延時間を利用した測位結果(例えば、三点測位)または各通信端末に搭載されたGPS機能により推定された位置を位置情報として記録する。
【0035】
位置情報付き通信ログDB1は、別途に与えられる分割情報に基づいて、監視エリアを仮想的にメッシュ状に分割することで地理依存の単位地域(たとえば、100m×100mの矩形)を多数定義し、前記各通信ログを、その位置情報に基づいていずれかの単位地域と紐付けてデータベース化する。前記分割情報は、分割対象のエリアと、たとえば国土地理院や総務省が規定するメッシュ基準・単位(サイズ)に関する情報とを含んでいる。
【0036】
トラヒック特性測定部2は、コール数測定部21、トラヒック量測定部22および単位地域再編部23を含み、各計測部21,22は、各単位地域と紐つけられた通信ログに基づいて、単位地域ごとにコール数(Attempt数)Cおよび1コール当たりのトラヒック量V/Cを含むトラヒック特性を測定する。単位地域再編部23は、単位地域ごとに求まるトラヒック特性の測定結果に基づいて、トラヒック傾向が類似する単位地域同士を統合することにより、地理依存の地域編成をトラヒック特性依存の地域編成に再編成する。
【0037】
トラヒック予測部3は、再編後の単位地域ごとに、コール数Cの現在までの測定結果に適宜の予測手法を適用して将来のコール数Cfを単位地域および単位時間ごとに予測する。予測手法としては、例えば、Autoregressive(自己回帰)、Moving Average(移動平均)またはARIMA (Autoregressive Integrated Moving Average)のような時系列予測手法を適用できる。
【0038】
あるいはSeasonal成分(季節や周期変動)を考慮し、かつ固有のパラメータを過去の実績データから自動的に算出して予測に反映するSeasonal Auto ARIMAのような時系列予測手法を適用しても良い。さらには、上記のような時系列予測手法以外にも、SVM(サポートベクターマシーン)やNN(ニューラルネットワーク)、遺伝アルゴリズムや機械学習アルゴリズムなどの予測手法を適用しても良い。
【0039】
前記単位時間は、固定時間(例えば、1時間周期)であっても良いし、あるいはトラヒック量の多い単位地域はより短い時間周期とする一方、トラヒック量の少ない単位地域はより長い時間周期とするなど、各単位地域のトラヒック特性に応じて動的に変更しても良い。
【0040】
予測トラヒック総量算出部4は、単位時間ごとに前記コール数Cの予測結果Cfと前記1コール当たりのトラヒック量の統計値(実績値)M(=V/C)とを乗じることで、将来の予測トラヒック総量Vf(=Cf×V/C)を単位地域ごとに算出する。
【0041】
図2は、本実施形態の動作を示したフローチャートであり、ステップS1では、前記トラヒック特性測定部2において、前記位置情報付き通信ログDB1に蓄積されている通信ログに基づいて、単位地域ごとにコール数Cの実績値が測定され、さらに1コール当たりのトラヒック量V/Cの統計値が算出される。
【0042】
ステップS2では、前記単位地域再編部23において、単位地域ごとに求まるトラヒック特性、すなわちコール数C(実績値)や1コール当たりのトラヒック量V/C(統計値)、またはこれらの統計値に基づいて、トラヒック傾向が類似する複数の単位地域を統合して一つの単位地域にまとめる地域再編が行われる。
【0043】
図3は、前記ステップS2における地域再編手順の一例を示したフローチャートであり、ステップS201では、監視エリア内の一の単位地域が今回の注目単位地域に選択される。ステップS202では、図4(a)に示したように、注目単位地域を所定の方向へ相似状に一回り拡張可能か否かが判断される。
【0044】
本実施形態では、図5に示したように、監視エリアを基地局またはそのセクタが唯一となる地域A,C、および複数の基地局またはそのセクタのカバレッジが重複する地域Bに区別し、地域Aに属する単位地域同士および地域Cに属する単位地域同士の統合は許可する一方、地域Bに属する単位地域同士や、地域A,Cに属する単位地域と地域Bに属する単位地域との統合を許可しないようにしている。したがって、拡張範囲の単位地域が全て地域AまたはCに属していれば拡張可能と判断され、他の地域の単位地域を一つでも含めば拡張不適と判断される。
【0045】
あるいは、複数の基地局またはそのセクタを管理、制御する上位のネットーワーク機器(例えば、基地局制御装置)に着目し、このネットワーク機器を単位として、単位地域の拡張可能判定を実施するようにしても良い。このようにすれば、基地局またはそのセクタのカバレッジが重複する地域同士も統合可能な地域とすることができる。
【0046】
前記ステップS202において、拡張可能と判断されればステップS205へ進み、拡張範囲内の全ての単位地域(ここでは、4つの地域)が一の単位地域に仮統合される。ステップS206では、仮統合された単位地域のトラヒック特性の標準偏差が計算される。
【0047】
次のステップS202では、図4(b)に示したように、注目単位地域を所定の方向へ相似状に二回り拡張可能か否かが判断される。拡張可能と判断されればステップS205へ進み、拡張範囲内の全ての単位地域(ここでは、9つ地域)が一の単位地域に仮統合される。ステップS206では、仮統合された単位地域のトラヒック特性の標準偏差が計算される。
【0048】
次のステップS202では、図4(c)に示したように、注目単位地域を所定の方向へ相似状に三回り拡張可能か否かが判断される。拡張可能と判断されればステップS205へ進み、拡張範囲内の全ての単位地域が一の単位地域に仮統合される。ステップS206では、仮統合された単位地域のトラヒック特性の標準偏差が計算される。
【0049】
次のステップS202では、図4(d)に示したように、注目単位地域を所定の方向へ相似状に四回り拡張可能か否かが判断され、拡張不可と判断されるとステップS203へ進む。ステップS203では、今回の注目単位地域に関して前記拡張範囲ごとに得られた標準偏差が参照される。そして、注目単位地域の標準偏差よりも減少し、かつ最小の標準偏差を与える拡張範囲が選択され、当該拡張範囲に含まれる全ての単位地域が一の単位地域に統合される。
【0050】
ステップS204では、全ての単位地域が注目済みか否かが判断される。注目済みではない単位地域が存在すればステップS201へ戻り、注目単位地域を、統合済みを除く他の単位地域に切り替えながら上記の各処理が繰り返される。
【0051】
なお、前記ステップS203において拡張範囲を決定するための指標として、ステップS206において計算されるトラヒック特性は標準偏差に限定されるものではなく、拡張範囲ごとに、実績データ期間の一部を教師・学習データ、その他一部を答え合わせ用データに分離し、適用する時系列予測(例えばARIMA)等の予測精度、すなわち予測と答え合わせ実績の誤差・差分が注目単位地域よりも減少し、かつ最小となる拡張範囲で統合するようにしても良い。
【0052】
図6は、前記ステップS2における地域再編手順の他の一例を示したフローチャートであり、ステップS251では、全ての単位地域が、そのトラヒック特性に基づいてクラスタリングされる。
【0053】
例えば、トラヒック特性として1コール当たりのトラヒック量の絶対値に着目するのであれば、1コール当たりのトラヒック量が100kByte/call以下の第1クラスタ、100k-200Byte/callの第2クラスタ、200k-300Byte/callの第3クラスタ…を用意し、各単位地域をいずれかのクラスタに分類する。
【0054】
なお、着目するトラヒック特性は、1コール当たりのトラヒック量の絶対値に限定されるものではなく、1コール当たりのトラヒック量の分布グラフ(ヒストグラム)に着目するようにしても良い。この場合は、分布%ile値が10-20%のクラスタ、20-30%のクラスタ、30-40%のクラスタ…を用意し、各単位地域をいずれかのクラスタに分類する。また、注目するトラヒック特性として、コール数の実績値の絶対値や増減率を採用しても良い。
【0055】
ただし、1コール当たりのトラヒック量は、その値が小さければメッセージン系のアプリケーション、大きければ動画再生、中間であればWebブラウジング、といったように、通信の使われ方の指標となり得る。したがって、1コール当たりのトラヒック量を用いて各単位地域をクラスタ化すれば、各単位地域で利用される支配的な通信サービスやアプリケーションに基づく地域統合が可能になる。
【0056】
ステップS252では、クラスタの一つ、例えば100kByte/call以下の第1クラスタに注目する。ステップS253では、注目クラスタに属する一つの単位地域に注目する。ステップS254では、今回の注目単位地域と基地局またはそのセクタが同一の単位地域のみが前記注目クラスタから抽出されて統合候補とされる。
【0057】
ステップS255では、今回の注目単位地域と前記抽出された全ての単位地域とが統合されて新たな一の単位地域とされる。ステップS256では、注目クラスタに属する全ての単位地域が注目済みであるか否かが判断される。注目済みではない単位地域が存在すればステップS253へ戻り、注目単位地域を他の単位地域に切り替えながら上記の各処理が繰り返される。
【0058】
ステップS257では、全てのクラスタに注目済みか否かが判断される。注目済みではないクラスタが存在すればステップS252へ戻り、注目クラスタを他のクラスタに切り替えながら上記の各処理が繰り返される。
【0059】
図7は、上記の再編手順による単位地域の統合例を示した図であり、同図(a)では、4つの単位地域が統合され、統合前の単位地域と相似の新たな単位地域が編成されている。同図(b)では、3つの単位地域が統合され、統合前の単位地域と形状の異なる新たな単位地域が編成されている。同図(c)では、3つの単位地域が統合され、地理的に連続しない(分離した)単位地域が編成されている。
【0060】
なお、前記ステップS251において注目するトラヒック特性は、1コール当たりのトラヒック量の絶対値に限定されるものではなく、1コール当たりのトラヒック量の分布グラフ(ヒストグラム)に着目するようにしても良い。この場合は、分布%ile値が10-20%のクラスタ、20-30%のクラスタ、30-40%のクラスタ…を用意し、各単位地域をいずれかのクラスタに分類する。また、注目するトラヒック特性として、コール数の実績値の絶対値や増減率を採用しても良い。
【0061】
なお、上記の実施形態では、クラスタごとに統合可能な単位地域は全て統合されるものとして説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、クラスタごとに統合可能な単位地域の全ての組み合わせについて、統合後のトラヒック特性の標準偏差を計算し、統合後の標準偏差が統合前の各単位地域の標準偏差よりも減少し、かつ最小の標準偏差を与える組み合わせの単位地域のみを選択、統合するようにしても良い。
【0062】
図2へ戻り、ステップS3では、前記トラヒック予測部3において、前記コール数Cの実績値に適宜の予測手法を適用して将来の予測コール数Cfが、再編後の単位地域ごとに算出される。ステップS4では、前記予測トラヒック総量算出部4において、単位地域ごとにコール数Cの予測値Cfに1コール当たりのトラヒック量の統計値V/Cを乗じて予測トラヒック総量Vfが算出される。
【0063】
このとき、コール数Cが1時間単位の予測値であれば、予測トラヒック総量Vfも単位地域かつ1時間ごとに算出される。また、前記統計値V/Cに関しては、異常値やノイズ成分を除去するために、その平均や中央値、所定パーセント値(%ile、例えば99%ile)などを用いても良い。
【0064】
図8は、本実施形態による予測結果の一例を示した図であり、トラヒック特性依存の単位地域ごとに、現在までのトラヒック特性の実績に基づいて将来のトラヒック特性が予測されている。
【0065】
本実施例によれば、コール数(C)および1コール当たりのトラヒック量(V/C)の積の総量として算出されるトラヒック総量の将来の日常的な予測値を算出するにあたり、予測範囲を、地理依存の単位地域ごとではなく、トラヒック特性依存の単位地域ごととしたので、予測範囲内でのトラヒック特性や実績のばらつきを抑えることができ、予測精度が向上する。また、単位地域数が地理依存の場合に比べて減少するので、予測に伴う計算処理が軽減される。
【0066】
また、本実施形態によれば、コンテンツやサービスといった通信内容の差異や変化の影響である突発的あるいは一時的な変動が少ないコール数Cを予測する一方、突発的あるいは一時的な変動成分・変動要因が多いために日常的な予測には不向きな1コール当たりのトラヒック量は予測に用いないようにしたので、将来の日常的な通信トラヒック総量を正確に予測できるようになる。
【0067】
さらに、本実施例によれば、コール数と1コール当たりのトラヒック量とを別々に予測できるので、例えば、配信動画の高解像度化(例えば、フルHD化)のスケジュール等が別途に与えられる場合には、これを1コール当たりのトラヒック量の変化(例えば、1000kB/Callが6か月先には1500kB/Callに増加など)に反映させることで将来のトラヒック総量をより正確に予測できるようになる。
【0068】
さらに、本実施例によれば、トラヒック量を予測する際の地理依存性や時間依存性を、コール数と1コール当たりのトラヒック量とに分離して独立に反映できるので、例えばある時間帯で通信トラヒック量が日常的に増加する場合でも、これがコール数の増加に起因するものであって1コール当たりのトラヒック量とは無関係であれば、この時間依存性はコール数のみに反映させ、1コール当たりのトラヒック量には反映させないようにできる。その結果、地理依存性や時間依存性をトラヒック総量の予測値に、より正確に反映できるようになる。
【0069】
図9は、本発明の第2実施形態の機能ブロック図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0070】
上記の第1実施形態では、トラヒック特性の測定結果に基づいてコール数Cのみを予測し、この予測結果Cfと1コール当たりのトラヒック量V/Cの統計値とを乗じることで将来の日常的な通信トラヒック総量Vfが予測されていた。
【0071】
これに対して、本発明の第2実施形態では、トラヒック予測部3がトラヒック特性の測定結果に基づいて将来のコール数Cfおよび1コール当たりのトラヒック量Mfのいずれをも予測し、予測トラヒック総量算出部4は、再編後の単位地域および単位時間ごとに各予測結果Cf,Mfを乗じることで、将来の予測トラヒック総量Vf(Cf×Mf)を単位地域ごとに算出する。
【0072】
本実施例によれば、コール数(C)および1コール当たりのトラヒック量(V/C)の積の総量として算出されるトラヒック総量の将来の日常的な予測値を算出するにあたり、コンテンツやサービスといった通信内容の変化、流行り廃りにかかわらず突発的あるいは一時的な変動がきわめて少ないコール数Cのみならず、1コール当たりのトラヒック量についても予測するようにしたので、1コール当たりのトラヒック量の変化に、例えば規則性や選択性などが認められて高い予測精度を期待できる場合には、将来の日常的な通信トラヒック総量を更に正確に予測できるようになる。
【0073】
なお、上記の各実施形態では通信方式等の相違に言及していないが、通信方式(3G方式やLTE方式)や周波数帯(バンドクラス)に関して複数種の通信が混在していれば、図10に示したように、トラヒック特性をさらに通信方式や周波数帯ごとに分析、予測しても良い。
【0074】
図11は、通信方式ごとに前記第1の実施形態を適用して単位地域ごとに予測トラヒック量Vfを算出する予測処理の流れを示したフローチャートである。
【0075】
ステップS21では、単位地域ごとに3G回線のコール数C_3gおよび1コール当たりのトラヒック量V/C_3gが測定・算出され、さらにLTE回線のコール数C_lteおよび1コール当たりのトラヒック量V/C_lteが測定・算出される。
【0076】
ステップS22では、単位地域ごとに3G回線およびLTE回線の各通信方式比率R_3g、R_lteが、例えば所定の期間内における各回線の総コール数の比率として算出される。
【0077】
ステップS23では、単位地域ごとに3G回線およびLTE回線の各コール数の実績値の合計(合計コール数)C_sumが算出される。ステップS24では、前記合計コール数C_sumの実績値に、例えば時系列予測方式に適用して予測コール数Cfが算出される。
【0078】
ステップS25では、1コール当たりのトラヒック量の平均{(V/C_3g+V/C_lte)/2}と前記予測コール数Cfとを乗じることで、3G方式およびLTE方式の予測トラヒック総量の合算値が算出される。このとき、前記1コール当たりのトラヒック量の平均値は通信方式比率R_3g、R_lteに応じた重み付け平均としても良い。
【0079】
ステップS26では、前記予測トラヒック総量の合算値に前記通信方式比率R_3g、R_lteを乗じることで、3G回線の予測トラヒック総量Vf_3gおよびLTE回線の予測トラヒック総量Vf_lteが算出される。
【符号の説明】
【0080】
1…位置情報付き通信ログDB,2…トラヒック特性測定部,3…トラヒック予測部,4…予測トラヒック総量算出部,5…位置情報付き通信ログ収集部,21…コール数測定部,22…トラヒック量測定部,23…単位地域再編部
図1
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図11