(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なプラズマジェット点火プラグでは、中心電極と接地電極間で放電させた後に、直流電流もしくは交流電流を重畳させて電極間に印加することにより、中心電極と絶縁体の内周面とで囲まれたキャビティと呼ばれる円筒状の空間内にプラズマを発生させる。しかし、プラズマが発生するキャビティは微小な空間であるため、絶縁体の内周面上で放電が生じることにより、プラズマの発生効率が低下したり絶縁体が損耗したりする場合がある。そのため、プラズマの発生効率が低下することや絶縁体が損耗することを抑制可能な点火プラグが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、点火プラグが提供される。この点火プラグは、筒状の主体金具と;軸孔を有し、前記主体金具内に保持される筒状の絶縁体と;を備え、外部から入力されたレーザビームを集光するレンズが前記軸孔内に配置され、前記絶縁体の内周面及び前記レンズの先端面とで形成される空間内に前記レーザビームを集光させることを特徴とする。このような形態の点火プラグによれば、レーザビームによって、絶縁体の内周面とレンズの先端面とで形成される空間、すなわち、キャビティ内にプラズマを発生させることができるので、絶縁体の内周面上で放電が生じることがない。そのため、プラズマの発生効率が低下することや絶縁体が損耗することを抑制することができる。また、上記形態の点火プラグでは、プラズマが生成されるキャビティの周囲に絶縁体を配置しているため、キャビティの周囲を金属で構成するよりも、プラズマ生成時の熱損失を抑制することができる。そのため、プラズマの発生効率を高めることができる。
【0007】
(2)上記形態の点火プラグにおいて、前記絶縁体の25℃における体積抵抗率が、10
12Ω・m以上であってもよい。このような形態の点火プラグによれば、プラズマがキャビティの側壁によって消炎してしまうことを抑制することができるので、プラズマの発生効率を高めることができる。
【0008】
(3)上記形態の点火プラグにおいて、前記空間の開口端から前記レンズの先端面までの長さをL1、前記レンズの先端面から前記空間内における前記レーザビームの集光位置までの距離をL2としたときに、
0.3<L2/L1<0.8
の関係を満たしてもよい。このような形態の点火プラグによれば、キャビティの中央部にレーザビームを集光することができるので、プラズマを効率的に生成することができる。
【0009】
(4)上記形態の点火プラグにおいて、前記空間の開口端側に、前記空間に連通する貫通孔を有する蓋部を備えてもよい。このような形態の点火プラグによれば、蓋部の貫通孔によって、プラズマの噴出を整流することができる。
【0010】
(5)上記形態の点火プラグにおいて、前記空間の直径をD1、前記貫通孔の直径をD2としたときに、
0.2<D2/D1<0.5
の関係を満たしてもよい。このような形態の点火プラグによれば、プラズマが噴出する貫通孔が適度に絞られるため、プラズマを良好に噴出させることができる。
【0011】
(6)上記形態の点火プラグにおいて、前記貫通孔の周囲における、前記蓋部の軸線方向における厚みが0.2mm以上1.0mm以下であってもよい。このような形態の点火プラグによれば、貫通孔によって、プラズマが整流される効果が薄れることや、プラズマの噴出が阻害されてしまうことを抑制することができる。
【0012】
(7)上記形態の点火プラグにおいて、前記蓋部は、前記絶縁体と一体に構成されてもよい。このような形態の点火プラグによれば、オリフィスの先端部と蓋部との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0013】
(8)上記形態の点火プラグにおいて、前記軸孔内において前記レンズの先端面よりも先端側に、前記レーザビームを透過する隔壁を有し、前記空間は、前記絶縁体の内周面と前記隔壁の先端面とで形成されてもよい。このような形態の点火プラグによれば、レーザが照射されるレンズが汚れることを抑制することができるので、プラズマの発生効率が低下することを抑制することができる。
【0014】
(9)上記形態の点火プラグにおいて、前記空間の直径が、0.5mm以上3.0mm以下でもよい。このような形態の点火プラグであれば、キャビティの直径が適度な大きさになるので、キャビティの直径が大きすぎることにより、プラズマがキャビティの径方向に広がってその発生効率が低下してしまうことや、キャビティの直径が小さすぎることにより、キャビティの側壁においてプラズマが消炎してしまうことを抑制することができる。
【0015】
本発明は、上述した点火プラグとしての形態に限らず、種々の形態で実現することが可能である。例えば、点火プラグを備えた点火装置や、点火プラグの製造方法等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.点火プラグの実施形態:
図1は、本発明の一実施形態としての点火プラグの部分断面図である。
図2は、点火プラグの先端部分の拡大断面図である。以下では、点火プラグ100の軸線O方向を各図面における上下方向とし、下側を点火プラグ100の先端側、上側を後端側として説明する。また、
図2以降では、各部の断面に対するハッチングを適宜省略している。
【0018】
図1に示すように、点火プラグ100は、筒状の主体金具10と、主体金具10内に保持される筒状の絶縁体20と、を備えている。
【0019】
絶縁体20は、アルミナ等を焼成して形成され、軸線O方向に沿った軸孔30を有する筒状の絶縁部材である。絶縁体20には、軸線O方向の略中央に、外径の最も大きな鍔部21が形成されている。鍔部21より後端側には後端側胴部22が形成されている。鍔部21より先端側には後端側胴部22より外径の小さな先端側胴部23が形成されている。先端側胴部23よりも先端側には先端側胴部23よりも更に外径の小さな先端部24が形成されている。先端側胴部23と先端部24との間には段部25が形成されている。
【0020】
絶縁体20に形成された軸孔30のうち、先端部24の内周にあたる部分は、先端側胴部23、鍔部21および後端側胴部22の内周にあたる部分よりも縮径された小径部31として形成されている。小径部31よりも後端側は、小径部31よりも拡径された大径部32として形成されている。絶縁体20の小径部31の内周面と、後述するレンズ50の先端面51とで形成される空間のことを、以下、キャビティ90という。
【0021】
主体金具10は、内燃機関のエンジンヘッドに点火プラグ100を固定するための円筒状の金具である。主体金具10は、絶縁体20を取り囲むようにして保持している。主体金具10は鉄系の材料より形成され、プラグレンチが嵌合する工具係合部11と、エンジンヘッドに設けられたプラグホールに螺合するねじ山(図示省略)が形成されたねじ部12とを備えている。
【0022】
主体金具10の工具係合部11より後端側には加締部13が設けられている。工具係合部11から加締部13にかけての主体金具10と、絶縁体20の後端側胴部22との間には円環状のリング部材14,15が介在されており、更に両リング部材14,15の間にタルク(滑石)16の粉末が充填されている。加締部13が加締められることにより、リング部材14,15およびタルク16を介して絶縁体20が主体金具10内で先端側に向け押圧される。すると、先端部24と先端側胴部23との間の段部25が、主体金具10の内周面に段状に形成された係止部17に環状のパッキン26を介して支持されて、主体金具10と絶縁体20とが一体にされる。このパッキン26によって、主体金具10と絶縁体20との間の気密は保持され、燃焼ガスの流出が防止される。工具係合部11とねじ部12との間には鍔部18が形成されており、鍔部18の座面19にはガスケット40が嵌挿されている。
【0023】
主体金具10は、先端に蓋部80を備えている。蓋部80は、キャビティ90の開口端91側に位置している。蓋部80は、キャビティ90に連通する貫通孔を有する。貫通孔のことを、以下では、オリフィス81という。このオリフィス81を通じてキャビティ90が燃焼室内に連通する。
【0024】
軸孔30の大径部32の最も先端側には、小径部31の後端面に接するように、レンズ50が配置されている。レンズ50の後端側には、レーザダイオード55が配置されている。レーザダイオード55には、軸孔30の後端から挿入された光ファイバケーブル56が接続されている。光ファイバケーブル56を通じて外部のレーザ光源から入力されたレーザビームは、レーザダイオード55によってエネルギ密度が高められ、レンズ50により、キャビティ90内に集光される。キャビティ90内にレーザビームが集光されると、キャビティ90内の気体がプラズマ化して膨張し、オリフィス81から噴出する。なお、本実施形態では、レーザダイオード55が点火プラグ100内に設けられているが、レーザダイオード55は、点火プラグ100の外部に設けられていてもよい。
【0025】
本実施形態の点火プラグ100によれば、電極間の放電ではなくレーザビームによってキャビティ90内にプラズマが発生するため、キャビティ90の内周面上で放電が発生することがない。そのため、プラズマの発生効率が低下することやキャビティ90の周囲の絶縁体20が損耗することを抑制することができる。また、本実施形態によれば、絶縁体20が損耗することを抑制することができるので、キャビティ90の大きさを小さくすることができる。そのため、プラズマの発生効率を高めることが可能になり、更に、点火プラグ100を小型化することも可能になる。また、上記形態の点火プラグ100では、プラズマが生成されるキャビティ90の周囲に絶縁体20を配置しているため、キャビティ90の周囲を金属で構成するよりも、プラズマ生成時の熱損失を抑制することができる。そのため、プラズマの発生効率を高めることができる。
【0026】
以上で説明した本実施形態の点火プラグ100は、以下の仕様1〜5のうち1以上の仕様を満たしていることが好ましい。
【0027】
(仕様1)点火プラグ100が備える絶縁体20の25℃における体積抵抗率が、10
12Ω・m以上である。
【0028】
(仕様2)キャビティ90の開口端91からレンズ50の先端面51までの長さをL1、レンズ50の先端面51からキャビティ90内におけるレーザビームの集光位置P1までの距離をL2としたときに、
0.3≦L2/L1≦0.8
の関係を満たす。なお、キャビティ90の開口端91からレンズ50の先端面51までの長さL1のことを、以下では、キャビティ90の長さL1ともいう。
【0029】
(仕様3)キャビティ90の直径をD1、オリフィス81の直径をD2としたときに、
0.2≦D2/D1≦0.5
の関係を満たす。
【0030】
(仕様4)オリフィス81の周囲における、蓋部80の軸線O方向の厚みtが0.2mm以上1.0mm以下である。
【0031】
(仕様5)キャビティ90の直径D1が、0.5mm以上3.0mm以下である。
【0032】
以下、点火プラグ100がこれらの仕様を満たしていることが好ましい理由を、実験結果に基づき説明する。なお、以下で説明する
図3,5,7,9,11には、各実験の判定結果として、「△」、「○」、「◎」、「☆」、「☆☆」の各記号を示しているが、これらの記号は、それぞれの実験内における相対的な優劣を示しており、実験間における絶対的な優劣を示すものではない。
【0033】
B.実験結果:
<仕様1について>
図3および
図4は、キャビティ90の周囲の側壁の材料を変化させてプラズマの噴出距離を測定した実験結果を示す図である。側壁の材料としては、体積抵抗率がそれぞれ異なる、鉄、SIC(炭化ケイ素)、ジルコニア、アルミナ、を用いた。ジルコニア、アルミナについては、体積抵抗率が異なる複数の種類について実験を行った。実験を行った雰囲気は、温度が25℃で、大気圧(0.1MPa)の空気雰囲気である。また、点火プラグ100に入力したレーザビームは、パルス幅が10μ秒で、エネルギが100mJのパルスレーザである。キャビティ90の直径D1およびオリフィス81の直径D2は、ともに、3.0mmである。また、キャビティ90の長さL1は、4.0mmであり、オリフィス81の周囲の蓋部80の厚みtは1.0mmである。各材料の体積抵抗率は、JIS C 2139に基づいて測定した。また、プラズマの噴出距離は、噴出したプラズマの画像を撮影し、その画像を解析することで測定した。
【0034】
図3および
図4に示した実験結果によれば、金属である鉄、および、半導体であるSIC、ジルコニアによってキャビティの側壁を形成した場合には、噴出距離が4.0mm以下であり、一般的なプラズマジェット点火プラグよりも劣る性能であった。これに対して、複数種類のアルミナのうち、体積抵抗率が10
12Ω・mを超え、絶縁体として機能するアルミナを用いてキャビティの側壁を形成した場合には、プラズマの噴出距離が6mm以上であった。そのため、キャビティ90の周囲の側壁を構成する材料は、上述した仕様1のとおり、25℃における体積抵抗率が、10
12Ω・m以上の絶縁体であることが好ましい。キャビティ90の周囲の側壁の体積抵抗率が高ければ、それだけ、プラズマが消炎することが抑制され、噴出効率が高まるためだと推測される。
【0035】
<仕様2について>
図5および
図6は、キャビティ90の長さL1に対する、レンズ50の先端面51からキャビティ90内におけるレーザビームの集光位置P1までの距離L2の比L2/L1を変化させてプラズマの噴出距離を測定した実験結果を示す図である。実験を行った雰囲気は、温度が25℃で、0.4MPaの圧縮空気雰囲気である。また、点火プラグ100に入力したレーザビームは、パルス幅が10μ秒で、エネルギが100mJのパルスレーザである。キャビティ90の直径D1およびオリフィス81の直径D2は、ともに、3.0mmであり、オリフィス81の周囲の蓋部80の厚みtは1.0mmである。キャビティ90の側壁の材質は、25℃における体積抵抗率が10
14Ω・mのアルミナである。本実験では、キャビティ90の長さL1は4.0mmに固定し、距離L2を調整することで、比L2/L1の値を変化させた。
【0036】
図5および
図6に示した実験結果によれば、比L2/L1の値が、0.3以上0.8以下の場合には、比L2/L1の値が0.3未満および0.8を超える場合に比べて、プラズマの噴出距離が顕著に長くなった。そのため、比L2/L1の値は、上述した仕様2のとおり、0.3以上0.8以下であることが好ましい。比L2/L1の値がこの範囲内であれば、キャビティ90の軸線O方向における中央部にレーザを集光することができるので、レンズ50や蓋部80によって吸熱されることが抑制され、効率的にプラズマを生成することができるためであると推測される。なお、
図5,6に示した実験結果において、
図3,4に示した実験結果よりも噴出距離が短いのは、大気圧よりも圧力の高い雰囲気下において実験を行ったためである。
【0037】
<仕様3について>
図7および
図8は、キャビティ90の直径D1に対するオリフィス81の直径D2の比D2/D1を変化させてプラズマの噴出距離を測定した実験結果を示す図である。実験を行った雰囲気は、温度が25℃で、0.4MPaの圧縮空気雰囲気である。また、点火プラグ100に入力したレーザビームは、パルス幅が10μ秒で、エネルギが100mJのパルスレーザである。キャビティ90の側壁の材質は、25℃における体積抵抗率が10
14Ω・mのアルミナである。キャビティ90の長さL1は、4.0mmであり、オリフィス81の周囲の蓋部80の厚みtは1.0mmである。本実験では、キャビティ90の直径D1は3.0mmに固定し、オリフィス81の直径D2を調整することで、比D2/D1の値を変化させた。
【0038】
図7および
図8に示した実験結果によれば、比D2/D1の値が、0.2以上0.5以下である場合には、比D2/D1の値が0.2未満および0.5を超える場合に比べて、プラズマの噴出距離が顕著に長くなった。また、比D2/D1が1の場合、つまり、オリフィス81の直径D2がキャビティ90の直径D1に対して絞られていない場合には、プラズマの噴出距離は最も短くなった。そのため、比D2/D1の値は、上述した仕様3のとおり、0.2以上0.5以下であることが好ましい。比D2/D1の値がこのような範囲内であれば、オリフィス81が適度に絞られることによって、プラズマが良好にキャビティ90から噴出されるからであると推測される。
【0039】
<仕様4について>
図9および
図10は、オリフィス81の周囲の蓋部80の厚みtを変化させてプラズマの噴出距離を測定した実験結果を示す図である。実験を行った雰囲気は、温度が25℃で、0.4MPaの圧縮空気雰囲気である。また、点火プラグ100に入力したレーザビームは、パルス幅が10μ秒で、エネルギが100mJのパルスレーザである。キャビティ90の側壁の材質は、25℃における体積抵抗率が10
14Ω・mのアルミナである。キャビティ90の長さL1は、4.0mmである。本実験では、キャビティ90の直径D1を3.0mmに、オリフィス81の直径D2を1.0mmにそれぞれ固定し、厚みtを変化させた。
【0040】
図9および
図10に示した実験結果によれば、厚みtが、0.2mm以上1.0mm以下の場合には、厚みtが0.2mm未満および1.0mmを超える場合に比べて、プラズマの噴出距離が顕著に長くなった。そのため、厚みtは、上述した仕様4のとおり、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。厚みtが0.2mm未満であると、プラズマを整流する効果が薄れ、厚みtを1.0mm超とすると、プラズマの噴出を阻害してしまうからであると推測される。
【0041】
<仕様5について>
図11および
図12は、キャビティ90の直径D1を変化させてプラズマの噴出距離を測定した実験結果を示す図である。実験を行った雰囲気は、温度が25℃で、1.2MPaの圧縮空気雰囲気である。キャビティ90の側壁の材質は、25℃における体積抵抗率が10
14Ω・mのアルミナである。キャビティ90の長さL1は、4.0mmであり、オリフィス81の周囲の蓋部80の厚みtは1.0mmである。本実験では、オリフィス81の直径D2は、キャビティ90の直径D1の0.5倍とした。また、キャビティ90の各直径D1に対して、それぞれ、以下の3種類のレーザを用いて測定を行った。
(1)パルス幅が5μ秒で、エネルギが40mJのパルスレーザ。
(2)パルス幅が10μ秒で、エネルギが100mJのパルスレーザ。
(3)パルス幅が20μ秒で、エネルギが200mJのパルスレーザ。
【0042】
図11および
図12に示した実験結果によれば、どのレーザを用いた場合でも、キャビティ90の直径D1が、0.5mm以上3.0mm以下の場合には、キャビティ90の直径D1が0.5mm未満および3.0mmを超える場合に比べて、プラズマの噴出距離が顕著に長くなった。そのため、キャビティ90の直径D1は、上述した仕様5のとおり、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。キャビティ90の直径D1が大きすぎれば、プラズマがキャビティ90の径方向に広がって噴出効率が低下し、逆に、キャビティ90の直径D1が小さすぎれば、キャビティ90の側壁においてプラズマが消炎してしまうためであると推測される。
【0043】
また、本実験において、
図11に示すように、キャビティ90の直径D1が4.0mmの場合の噴出距離に対して、その他の直径における噴出距離の比を改善率として求めると、エネルギの小さいレーザほど、直径D1が0.5mm以上3.0mm以下の場合における改善率が高くなっている。つまり、キャビティ90の直径D1が0.5mm以上3.0mm以下であれば、レーザのエネルギが低い場合であっても、効率的にプラズマを噴出させることができるので、混合気を点火させるために要する電力量を低減することができる。
【0044】
以上で説明したとおり、上述した実施形態における点火プラグ100が、上記仕様1〜5のうち少なくともいずれか一つを満たすことが好ましいことが、各実験の結果から明らかとなった。
【0045】
C.変形例:
図13は、点火プラグの第1変形例を示す断面図である。上述した実施形態では、オリフィス81の形成された蓋部80は、主体金具10と一体に構成されている。つまり、上記実施形態では、蓋部80は金属によって構成されている。これに対して、
図13に示した第1変形例では、蓋部80aが、絶縁体20と一体に構成されている。つまり、第1変形例では、蓋部80aが絶縁体によって構成されている。このような構成であれば、キャビティ90の先端部と蓋部80aとの間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0046】
上記実施形態および第1変形例で示したように、オリフィス81が形成される蓋部80,80aは、金属であってもよく、絶縁体であってもよい。放電によってプラズマを生成する点火プラグでは、蓋部80は電極として機能するが、上記実施形態および本変形例では、蓋部80は、電極として機能しないからである。そのため、レーザによってプラズマを生成する点火プラグでは、設計の自由度が向上することになる。
【0047】
図14は、点火プラグの第2変形例を示す断面図である。上述した実施形態では、絶縁体20の内周面とレンズ50の先端面51とによって、キャビティ90が形成されている。これに対して、
図14に示した第2変形例では、軸孔30内においてレンズ50の先端面51よりも先端側に、レーザビームを透過する隔壁52が備えられ、絶縁体20の内周面と隔壁52の先端面53とによって、キャビティ90が形成されている。隔壁52は、先端面53と側壁54とを有する円筒状のガラス製部材である。隔壁52の内部には空間が形成されている。隔壁52の後端は開口しており、後端の外周部はレンズ50の外周部と接触している。このように、レンズ50がキャビティ90から離れて配置されていれば、燃焼室内の燃焼ガスによってレンズ50が汚れてしまうことを抑制することができ、この結果、プラズマの発生効率を高めることができる。なお、この場合、上記仕様2における長さL1は、キャビティ90の開口端91から隔壁52の先端面53までの長さとなり、距離L2は、隔壁52の先端面53からキャビティ90内におけるレーザビームの集光位置P1までの距離となる。
【0048】
図14に示した第2変形例では、キャビティ90の内周面がテーパ状に形成されている。このように、キャビティ90の内周面は、第2変形例に限らず、上記実施形態および上記第1変形例においても、テーパ状に形成されていてもよい。テーパの角度は、先端側および後端側のどちらに傾いていてもよい。キャビティ90の内周面がテーパ状に形成されている場合であっても、上述した仕様5のように、キャビティ90の直径は、テーパ状の内周面のどの位置においても、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。
【0049】
なお、
図13および
図14では、軸線O方向における絶縁体20の先端の位置と、主体金具10の先端の位置とが同一であるが、これらの位置は同一でなくてもよい。例えば、主体金具10の先端は、絶縁体20の先端よりも後端側であってもよい。
【0050】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や実施例、変形例の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。