(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記画面データ生成部は、前記診療工程に関する複数の項目を該診療工程の順に配置し、前記各項目について対応する要素ごとに求めた分析情報を表示する画面データを生成する、
請求項1に記載の診療情報分析装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一つの実施形態に係る診療情報分析システムについて図を参照しつつ説明する。
【0017】
本発明を適用した診療情報分析システムは、患者の診療工程に関する複数の項目を含む複数の診療情報を記憶する診療情報データベースを有する。この診療情報分析システムは、複数の項目のそれぞれに対して設定された項目の細目を表す複数の要素ごとに、複数の診療情報を母集団とした統計データである分析情報を求め、各項目に対応させて要素ごとに求めた分析情報を表示装置に表示する。入力手段を介してユーザが複数の項目のうちの特定の項目について着目する要素を選択すると、複数の診療情報のうちから特定の項目に着目する要素が登録された診療情報を抽出する。そして、抽出した診療情報を新たな母集団として特定の項目以外の項目の分析情報を再度求め、この分析情報を表示装置に表示する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る医療情報分析システムの構成例を示す図である。
【0019】
診療情報分析システム1は、
図1に示すように、複数の端末装置2−1〜2−n(nは2以上の整数)と、サーバ装置3とを有し、複数の端末装置2−1〜2−nとサーバ装置3とはネットワーク4を介して相互に接続されている。
【0020】
複数の端末装置2−1〜2−nは、例えば、それぞれ医療施設100−1〜100−n内に設置されている。サーバ装置3は、データベースサーバとウェブサーバとを有している。サーバ装置3は、医療施設100−1〜100−nの外部の施設に設置され、各医療施設100−1〜100−nに設置された端末装置2−1〜2−nから定期的(例えば一月ごと)に診療した患者の診療情報を受信する。
【0021】
以下、本実施形態における診療情報の詳細について説明する。
【0022】
図2は、診療情報の一例を示す図である。
【0023】
診療情報200は、
図2に示すように、施設コード210、患者コード220、入院日230、退院日240、入院経路250、診断群分類(Diagnosis Procedure Combination;DPC)上六桁260、手術フラグ270、及び退院先280等といった複数の項目を含んでいる。診療情報200に含まれる項目は、これらのものに限定されず、例えば年齢、性別等の患者の属性情報や、診療月、診療報酬、診療科等の医療機関での診療記録に関する他の情報が含まれてもよい。診療情報200の各項目の細目を表す分類情報を、以下では「要素」と呼ぶ。そして、各項目には、それぞれ1以上の要素が設定可能になっている。診療情報200は、患者の入院から退院までの診療レコードに相当するものであり、該医療機関での診療が修了となった時点で作成される。
【0024】
施設コード210は、各医療施設100−1〜100−nを特定するためのコードで、医療施設100−1〜100−nごとに割り当てられている。患者コード220は、患者を特定するためのコードで、患者ごとに割り当てられている。
【0025】
入院日230は、患者が入院した年月日を示す項目である。退院日340は、患者が退院した年月日を示す項目である。
【0026】
入院経路250は、患者が入院した経路を示す項目である。本実施形態において、入院経路250には、その要素として「救急」、「紹介」、「外来」、及び「不明」のうちのいずれかが設定される。「救急」は、救急で来院した患者がそのまま入院した場合を示している。「紹介」は、他の医療施設から紹介された患者が入院した場合を示している。「外来」は、外来で来院した患者が入院した場合を示している。「不明」は、「救急」、「紹介」、及び「外来」とのうちいずれの経路で患者が入院したかが不明な場合を示している。
【0027】
DPC上六桁260は、DPCコードに基づいて、患者の傷病名を特定するための項目である。
【0028】
DPCコードは、2,873(平成26年度診療報酬改訂による)ある全ての診断群分類に対して割り振られた十四桁の数字から構成され、三層に大別される。一層目は、「傷病名」に基づく層であり、疾病及び関連保健問題の国際統計分類(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)第10回修正(ICD−10)で定義される。二層目は、「手術」の有無に基づく層であり、医科点数表により定義されている。三層目は、その他の層であり、「処置」、「副傷病名」、及び「重症度」等が含まれる。
【0029】
DPCコードを構成する十四桁の数字のうちの上六桁の数字は一層目を示し、九及び十桁目の数字は二層目を示し、残りの数字は三層目を示している。そして、一層目を構成する六桁の数字のうちの上二桁の数字は主要診断群(Major Diagnostic Category;MDC)を示し、三〜六桁目の数字は各MDCにおける分類コードを示している。
【0030】
MDCは、傷病を18群に分類するものである。例えば、「01」は、神経系疾患を示し、「04」は、呼吸器系疾患を示し、「05」は、循環器系疾患を示し、「16」は、外傷・熱傷・中毒を示している。
【0031】
分類コードは、医療資源を最も投入した傷病が分類されるグループのコードである。そして、MDCと分類コードとによって具体的な傷病名が特定される。例えば、「050050」は、「脳梗塞狭心症、慢性虚血性心疾患」を示し、「020110」は、「白内障、水晶体の疾患」を示し、「010060」は、「脳梗塞」を示し、「160080」は、「股関節大腿近位骨折」を示している。
【0032】
本実施形態において、DPC上六桁260には、患者の傷病名を特定するために、DPCコードの上六桁の数字が要素として設定される。なお、患者の傷病を特定するための情報は、DPCコードの上六桁の数字に限定されるものではなく、例えばDPCコードの上二桁の数字、すなわちMDCのみであってもよいし、患者を診療した診療科を特定するための情報であってもよい。
【0033】
手術フラグ270は、患者に手術をしたか否か示すフラグで、例えば患者に手術をしていなければオフとなっており、患者に手術をしていればオンとなっている。
【0034】
退院先280は、患者が退院した後の行き先(所在)を示すものである。本実施形態において、退院先280には、「逆紹介」、「外来(自院)」、「外来(他院)」、「転院」、「終了」、「転棟」、「介護施設」、及び「その他」のいずれかが選択される。「逆紹介」は、退院した患者を紹介元の医療施設に再び紹介した場合を示している。「外来(自院)」は、退院した患者を引き続き外来で診療している場合を示している。「外来(他院)」は、紹介していない他の医療施設が退院した患者を外来で診療している場合を示している。「転院」は、患者が他の医療施設に転院した場合を示している。「終了」は、患者の診療が終了した場合を示している。「転棟」は、患者が入院した病棟以外の病棟に転棟した場合を示している。「介護施設」は、退院した患者が介護施設に入所した場合を示している。「その他」は、上記以外の場合を示している。
【0035】
次に、本実施形態に係る端末装置2−1〜2−nの詳細について説明する。なお、各端末装置2−1〜2−nの構成は同じであるため、以下では代表して端末装置2−1について説明する。
【0036】
図3は、端末装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【0037】
端末装置2−1は、
図3に示すように、通信処理部21と、表示部22と、操作部23と、記憶部24と、制御部25と、を有している。端末装置2−1には、所謂パーソナルコンピュータを用いることができる。
【0038】
通信処理部21は、端末装置2−1をネットワーク4に接続するためのインターフェース回路等を含んでいる。通信処理部21は、制御部25の制御に従って、各種の情報及び要求をネットワーク4を介してサーバ装置3へ送信する。また、通信処理部21は、ネットワーク4を介してサーバ装置3から受信した各種の情報を制御部25に供給する。
【0039】
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ等の表示ディスプレイから構成され、制御部25から受け取った各種情報等を表示する。
【0040】
操作部23は、端末装置2−1の利用者が端末装置2−1を操作するための操作インターフェースである。操作部23は、キーボード、テンキー等の入力デバイスから構成され、利用者からの各種操作を受け付け、それらの操作に対応する信号を制御部23へ出力する。なお、表示部22と操作部23とは、タッチパネルディスプレイとして一体的に構成されてもよい。
【0041】
記憶部24は、半導体メモリ、磁気記録媒体及びそのアクセス装置、並びに光記録媒体及びそのアクセス装置のうちの少なくとも一つを有している。記憶部24は、端末装置2−1を制御するためのコンピュータプログラム、各種パラメータ、及びデータ等を記憶している。
【0042】
制御部25は、一個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有している。本実施形態において、制御部25は、表示部22に表示されるウェブブラウザを介してサーバ装置3にアクセスし、分析情報の表示画面の表示を要求する画面表示要求を通信処理部21を介してサーバ装置3に送信する。この画面表示要求は、端末装置2−1を特定するための端末コード、及び端末装置2−1が設置された医療施設100−1を特定するための施設コード等を含んでいる。制御部25は、分析情報の表示画面を表示するための画面データを通信処理部21を介して受信すると、ウェブブラウザ上に医療施設100−1の分析情報の表示画面を表示する。
【0043】
図4は、分析情報の表示画面の一例を示す模式図である。
【0044】
分析情報の表示画面400には、患者が入院してから退院するまでの経過(段階)である診療工程に関する複数の項目が表示される。診療工程には入院前、退院後の工程を含めてもよく、性別や年齢等の患者の属性情報を含めてもよい。診療工程を示す各項目は、利用者が分析情報を表示したい項目を選択するためのアイコンとして、
図4に示すように、入院経路アイコン401と、DPC上六桁アイコン402と、手術アイコン403と、入院期間アイコン404と、退院先アイコン405とが表示される。
【0045】
表示画面400には、入院経路アイコン401と、DPC上六桁アイコン402と、手術アイコン403と、入院期間アイコン404と、退院先アイコン405とが左側から診療工程の順に表示される。このように、患者が入院してから退院するまでの過程で各項目に設定される要素が決まる順に表示する項目を配置することで、利用者は入院から退院までの流れに沿って分析結果を俯瞰することができる。さらに、表示画面400には、アイコンの他に、分析対象とする診療情報200の範囲(期間など)や、分析対象とする統計指標を特定するためのプルダウンメニュー等を表示してもよい。
【0046】
利用者が操作部23を介していずれかのアイコンを選択すると、制御部25には、利用者が選択した項目を特定可能な分析要求を生成し、その分析要求を通信処理部21を介してサーバ装置3に送信する。この分析要求は、利用者が選択した項目の他に、端末装置2−1を特定するための端末コード、及び端末装置2−1が設置された医療施設100−1を特定するための施設コード等を含んでいる。また、分析要求は、分析対象となる診療情報200の範囲を特定するための情報を含んでもよい。そして、制御部25は、サーバ装置3から送信される、利用者が選択した項目の分析情報の画面データを通信処理部21を介して受信する。
【0047】
そして、制御部25は、受信した分析情報の画面データに基づいて、分析情報を表示画面400上に表示するとともに、選択されたアイコンの表示態様を変化させる。
【0048】
図4に示す例では、利用者によって入院経路アイコン401とDPC上六桁アイコン402と退院先アイコン405とが選択され、選択されていない手術アイコン403と入院期間アイコン404とは、白色の背景に黒色の文字で項目を示す情報が記されている。これに対して、選択された入院経路アイコン401とDPC上六桁アイコン402と退院先アイコン405とは、黒色の背景に白色の文字で項目を示す情報が記されている。
【0049】
そして、表示画面400上には、入院経路の各要素について求められた分析情報411と、DPC上六桁の各要素について求められた分析情報412と、退院先の各要素について求められた分析情報415とが項目アイコンと同様、左側から診療工程の順に表示される。
【0050】
入院経路の分析情報411と、DPC上六桁の分析情報412と、退院先の分析情報415とのそれぞれには、各項目に設定された要素ごとに、要素名420とともに退院数421と在院日数422と占有率423とが要素別の分析情報として示されている。
【0051】
ここで、要素名420は、要素を特定するためのものであるとともに、利用者が注目したい要素を選択するためのアイコンとしての機能も有する。要素名420は、利用者が選択していない場合、白色の背景に黒色の文字で要素を示す情報が記されている。また、要素名420は、利用者が選択した場合、黒色の背景に白色の文字で要素を示す情報が記された表示態様に変化する。そして、制御部25は、利用者が操作部23を介していずれかの要素名420を選択した場合、制御部25は、利用者が選択した要素、及びこの要素が設定されている項目を特定可能な再分析要求を生成し、その再分析要求を通信処理部21を介してサーバ装置3に送信する。この再分析要求は、利用者が選択した要素、及びこの要素が設定されている項目の他に、端末装置2−1を特定するための端末コード、及び端末装置2−1が設置された医療施設100−1を特定するための施設コード等を含んでいる。再分析要求の詳細については、サーバ装置3の詳細とともに後述する。
【0052】
退院数421及び在院日数422は、分析対象なる病院経営に関する指標であり、各要素に該当する診療情報200を部分母集合として算出された各指標の統計データである。退院数421は、退院した患者の人数を示し、在院日数422は、退院した患者の在院日数の平均値を示している。この他、延べ入院日数を示す延べ患者数や、入院1日当りの診療報酬を示す日当円などを指標として用いてもよい。
また、占有率423は、予め設定され又は利用者に選択された指標に関する、各要素に該当する統計値がその項目内に占める割合である。
図4の例では、各項目に設定された要素ごとの退院数が全退院数に占める割合を示している。なお、この例では、占有率423は、利用者が各項目における要素間の偏りを認識できる重要な情報であり、特に知りたい情報であるため、退院数421及び在院日数422等の他の情報よりも強調して大きく表示画面400上に表示される。
【0053】
また、入院経路の分析情報411及び退院先の分析情報415では、その項目に設定された各要素での要素名420と退院数421と在院日数422と占有率423とが、表示画面400の上側から予め定められた要素順に表示される。例えば、入院経路の分析情報411では、表示画面400の上側から要素名が「救急」、「紹介」、「外来」、及び「不明」の順に、その退院数421と在院日数422と占有率423とが表示される。また、退院先の分析情報415では、表示画面400の上側から要素名が「逆紹介」、「外来(自院)」、「外来(他院)」、「転院」、「終了」、「転棟」、「介護施設」、及び「その他」の順に、その退院数421と在院日数422と占有率423とが表示される。なお、手術及び入院期間の分析情報も、その項目に設定された各要素での退院数421と在院日数422と占有率423とが、表示画面400の上側から予め定められた要素順に表示される。
【0054】
これに対して、DPC上六桁の分析情報412では、その項目に設定された各要素での要素名420と退院数421と在院日数422と占有率423とが、その占有率423が高い要素順に表示画面400の上側から表示される。すなわち、DPC上六桁の分析情報412では、DPC上六桁260に設定されたDPCコードの上六桁の数字が示す傷病名を示す要素名420と退院数421と在院日数422と占有率423とが、その占有率423が高い傷病名順に表示画面400の上方から表示される。このように、傷病名に関するDPC上六桁の分析情報412を占有率が高い順に表示するのは、他の項目と比較して傷病に関する項目はその数が非常に多く、固定の順番のまま表示してしまうと一覧性に欠き、全体像が把握できないためである。これは、医療施設ごとに取り扱っている傷病、及び傷病ごとの患者の人数が異なっていることにも起因する。このように項目ごとに並べ方を変えることで、利用者は、各項目の分析情報の把握が容易になる。
なお、表示画面400の制御の詳細については、サーバ装置3の詳細とともに後述する。
【0055】
続いて、本実施形態に係るサーバ装置3の詳細について説明する。
【0056】
図5は、サーバ装置の構成例を示すブロック図である。サーバ装置3は、
図5に示すように、通信処理部31と、記憶部32と、制御部33と、を有している。
【0057】
通信処理部31は、サーバ装置3をネットワーク4に接続するためのインターフェース回路等を含んでいる。通信処理部31は、各端末装置2−1〜2−nからネットワーク4を介して送信される各種の情報及び要求を受信して制御部33に供給する。また、通信処理部31は、制御部33の制御に従って、各種の情報をネットワーク4を介して各端末装置2−1〜2−nへ送信する。
【0058】
記憶部32は、半導体メモリ、磁気記録媒体及びそのアクセス装置、並びに光記録媒体及びそのアクセス装置のうちの少なくとも一つを有している。記憶部32は、サーバ装置3を制御するためのコンピュータプログラム、各種パラメータ、及びデータ等を記憶している。
【0059】
本実施形態において、記憶部32は、診療情報データベース321と、分析用データベース322とを記憶している。
【0060】
診療情報データベース321は、通信処理部31を介して受信した診療情報200を医療施設100−1〜100−nごとにそのまま記憶する。医療施設ごとにデータ構成が相違する場合には、統一のデータ構成に変換して記憶する。
【0061】
分析用データベース322は、診療情報データベース321に記憶されている診療情報200のうち、端末装置2−1〜2−nでの分析情報の表示に用いる項目の情報等を記憶する。
【0062】
図6は、分析用データベースの構成例を示す図である。
【0063】
図6に示すように、分析用データベース322は、診療情報200ごとに、その診療情報200から抽出したDPC上六桁260と、入院経路250と、手術フラグ270と、退院先280と、患者コード220と、在院日数610とを対応付けて記憶する。この他にも、分析用データベース322には、施設コード、入院日、及び退院日、入院に要した診療報酬等、分析対象となる診療情報を絞り込むために利用される情報が対応付けて記憶されているが、
図6では簡単のため、その図示を省略する。
【0064】
なお、在院日数610は、患者が入院していた期間を示すもので、その期間は、診療情報200に含まれる入院日230及び退院日240が示す年月日から求められる。
【0065】
制御部33は、一個または複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有している。そして、制御部33は、各項目の要素ごとの退院数と在院日数と占有率とを求める際に用いる分析用データベース322を生成する。また、制御部33は、利用者が端末装置に表示される分析情報の表示画面上でアイコンを選択した場合、分析情報として、そのアイコンが示す項目に設定された各要素での退院数と在院日数と占有率とを求める。さらに、制御部33は、利用者が表示画面上に表示されている複数の項目の分析情報のうち、いずれかの項目の分析情報で着目する要素を選択した場合、その項目について着目する要素を持つ診療情報に限定して、表示画面上に分析情報が表示されているその他の項目について、各要素の退院数と在院日数と占有率とを求める。そして、制御部33は、求めた各要素の退院数と在院日数と占有率とを示す分析情報の表示画面を生成する。
そのために、制御部33は、そのプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールとして、登録部331と、分析部332と、再分析部333と、画面データ生成部334とを有する。
なお、制御部33が有するこれらの各部は、独立した集積回路、ファームウェア、マイクロプロセッサなどで構成されてもよい。
以下、制御部33の各部について詳細に説明する。
【0066】
登録部331は、診療情報データベース321を参照し、診療情報ごとに、その診療情報からDPC上六桁、入院経路、手術フラグ、退院先、患者コード、入院日、及び退院日を抽出する。次に、登録部331は、抽出した入院日と退院日とから在院日数を求める。そして、登録部331は、例えば医療施設100−1〜100−nごとの施設コードに、DPC上六桁、入院経路、手術フラグ、退院先、患者コード、及び在院日数を対応付けて分析用データベース322に登録する。
なお、以下では、端末装置2−1から要求を受けた場合を例にして説明するが、他の端末装置についても同様である。
【0067】
分析部332は、端末装置2−1の表示画面上で選択されたアイコンが示す項目に設定されている複数の要素ごとに、診療情報の分析情報を求める。
【0068】
分析部332は、まず、分析要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信する。次に、分析部332は、分析用データベース322から、分析要求から特定した医療施設100−1の診療情報200を抽出する。なお、分析要求が分析対象となる診療情報200の範囲を特定するための情報を含んでいる場合、分析部332は、その範囲に含まれる診療情報200を抽出すればよい。分析部332は、抽出した診療情報200を母集団として統計処理を実行して分析情報を求める。具体的には、分析要求から特定した項目に設定されている要素ごとに、退院数を求める。続いて、分析部332は、求めた各要素の退院数を全退院数で除算することにより、各要素の占有率を求める。さらに、分析部332は、抽出した診療情報200のうちの在院日数610から、各要素の在院日数の合計を求め、要素ごとに在院日数の合計を退院数で除算することにより、各要素の在院日数の平均値を求める。
分析部332は、求めた各要素の退院数と在院日数の平均値と占有率とを画面データ生成部334へ渡す。
【0069】
再分析部333は、二以上の項目の分析情報が端末装置2−1に表示されている場合において、ユーザによって二以上の項目のうちの特定の項目を、着目する要素に限定することが指示されたときに、分析用データベース322から、特定の項目に着目する要素が設定された診療情報を抽出する。そして、再分析部333は、抽出した診療情報を新たな母集団(部分母集合)として、二以上の項目のうち、特定の項目以外の項目の診療情報の分析情報を再度求める。
【0070】
再分析部333は、まず、再分析要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信する。次に、再分析部333は、再分析要求から特定した医療施設100−1の分析用データベース322から、再分析要求から特定した項目に利用者が選択した要素が設定されている診療情報を抽出し、これを新たな母集団とする。また、再分析部333は、利用者が選択した要素にかかる退院数を、新たな母集団の全退院数として置換する。
【0071】
そして、再分析部333は、再分析要求から特定した項目以外の項目に設定されている要素ごとに、退院数を再計算する。続いて、再分析部333は、求めた各要素の退院数を、新たな母集団の全退院数で除算することにより、各要素の占有率を求める。さらに、再分析部333は、新たな母集団に含まれる診療情報の在院日数610から、各要素の在院日数の合計を求め、要素ごとに在院日数の合計を退院数で除算することにより、各要素の在院日数の平均値を求める。
再分析部333は、求めた各要素の退院数と在院日数の平均値と占有率とを画面データ生成部334へ渡す。
【0072】
また、受信した再分析要求から特定される項目が2以上ある場合、それぞれの項目について利用者が選択した要素が設定されている診療情報を抽出し、重複して抽出された診療情報を新たな母集団とする。つまり、再分析要求において複数の項目が選択された場合には各項目をAND条件で検索して診療情報を抽出する。
一方、1つの項目について2以上の要素が選択されている場合、当該項目について利用者が選択した要素のいずれかが設定されている診療情報を抽出し、これを新たな母集団とする。つまり、再分析要求において1つの項目に複数の要素が選択された場合には各要素をOR条件で検索して診療情報を抽出する。
【0073】
画面データ生成部334は、分析情報等を端末装置2−1に表示するための画面データを生成する。
【0074】
画面データ生成部334は、まず、画面表示要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信する。そして、画面データ生成部334は、分析情報の表示画面を表示するための画面データを生成し、その画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する。これにより、端末装置2−1の表示部22のウェブブラウザ上には、
図7に示す表示画面700が表示される。
図7に示す表示画面700では、利用者が未だいずれの項目も選択していないため、全てのアイコンには、白色の背景に黒色の文字で項目を示す情報が記されている。また、アイコンは、上述したように、左側から診療工程の順に表示される。
【0075】
また、画面データ生成部334は、分析部332が求めた、利用者が選択したアイコンが示す項目に設定された各要素の退院数と在院日数の平均値と占有率とを特定可能な分析情報の表示画面を表示するための画面データを生成する。そして、画面データ生成部334は、生成した画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する。
【0076】
例えば利用者が入院経路アイコンとDPC上六桁アイコンと手術アイコンと退院先アイコンとを選択した場合、端末装置2−1の表示部22のウェブブラウザ上には、
図8に示す表示画面800が表示される。
図8に示す表示画面800において、利用者が選択した入院経路アイコン801とDPC上六桁アイコン802と手術アイコン803と退院先アイコン805とは、黒色の背景に白色の文字で項目を示す情報が記された表示態様に変化する。また、表示画面800には、入院経路の分析情報811とDPC上六桁の分析情報812と手術の分析情報813と退院先の分析情報815とがアイコンと同様、左側から診療工程の順に表示される。なお、各項目の分析情報は予め定められた要素順に配置するが、患者の傷病を特定するDPC上六桁の分析情報812については、求められた占有率が高い順に要素別の分析情報を配置する。
【0077】
さらに、画面データ生成部334は、再分析要求から特定される項目の利用者が選択した要素の退院数、在院日数の平均値、及び占有率(100%)と、再分析部333が求めた、それ以外の項目に設定された各要素の退院数、在院日数の平均値、及び占有率とを特定可能な再分析情報を表示するための画面データを生成する。そして、画面データ生成部334は、生成した画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する。
【0078】
例えば利用者が入院経路の分析情報の要素名「救急」を選択した場合、端末装置2−1の表示部22のウェブブラウザ上には、
図9に示す表示画面900が表示される。
図9に示す表示画面900において、利用者が選択した要素名「救急」920は、黒色の背景に白色の文字で要素を示す情報が記された表示態様に変化する。また、表示画面900において、入院経路の分析情報911では、要素名「救急」920のみの退院数921、在院日数922、及び占有率923が示され、占有率923は100%になっている。さらに、DPC上六桁の分析情報912と手術の分析情報913と退院先の分析情報915とには、再分析部333が求めた各要素の退院数921、在院日数922、及び占有率923等が示されている。ここで、DPC上六桁の分析情報912については、再分析により求められた各要素の占有率が高い順に要素別の分析情報を並べ替え処理する。
【0079】
その後さらに利用者がDPC上六桁の分析情報の要素名「股関節大腿近位骨折」を選択した場合、端末装置2−1の表示部22のウェブブラウザ上には、
図10に示す表示画面1000が表示される。
図10に示す表示画面1000において、利用者が選択した要素名「股関節大腿近位骨折」は、黒色の背景に白色の文字で要素を示す情報が記された表示態様に変化する。また、表示画面1000において、入院経路の分析情報1011は、「救急」の分析情報のみが表示されたままとなっている。さらに、DPC上六桁の分析情報1012は、要素名「股関節大腿近位骨折」のみの退院数1021、在院日数1022、及び占有率1023が示され、占有率1023は100%になっている。さらに、手術の分析情報1013と退院先の分析情報1015とには、再分析部333が求めた各要素の退院数1021、在院日数1022、及び占有率1023が示されている。
【0080】
このように、診療情報分析システムでは、端末装置の表示画面上に分析情報が表示されている二以上の項目のうち、いずれかの項目について利用者が観察したい着目要素を選択可能とする。そして、データベースに登録された診療情報のうち、着目要素に該当する診療情報に絞り込んだ新たな母集団を生成し、その母集団において、他の項目の分析情報を再度求め、分析結果を再表示する。これにより、利用者は、着目した要素と、その要素が設定される項目以外の項目との関連性を容易に把握することができる。
【0081】
図11は、サーバ装置により実行される分析情報表示処理の動作を示すフローチャートである。この例において、サーバ装置3には既に、分析用データベース322が構築されているものとする。
【0082】
サーバ装置3は、画面表示要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信すると、分析情報表示処理を開始する。
【0083】
サーバ装置3の画面データ生成部334は、まず、分析情報の表示画面を表示するための画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する(ステップS101)。
【0084】
次に、分析部332は、分析情報表示処理の終了を要求する終了要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信したか否かを判別する(ステップS102)。終了要求を受信していれば(ステップS102;Yes)、分析部332は、分析情報表示処理を終了する。
【0085】
終了要求を受信していなければ(ステップS102;No)、分析部332は、分析要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信したか否かを判別する(ステップS103)。分析要求を受信していなければ(ステップS103;No)、分析部332は、ステップS102へリターンする。
【0086】
分析要求を受信していれば(ステップS103;Yes)、分析部332は、分析用データベース322を参照して、分析要求から特定した項目の分析情報を求める(ステップS104)。
【0087】
続いて、画面データ生成部334は、分析部332が求めた分析情報の表示画面を表示するための画面データを生成する(ステップS105)。
【0088】
そして、画面データ生成部334は、生成した画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する(ステップS106)。
【0089】
次に、再分析部333は、分析情報表示処理の終了を要求する終了要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信したか否かを判別する(ステップS107)。終了要求を受信していれば(ステップS107;Yes)、分析情報表示処理を終了する。
【0090】
終了要求を受信していなければ(ステップS107;No)、再分析部333は、再分析要求を端末装置2−1から通信処理部31を介して受信したか否かを判別する(ステップS108)。再分析要求を受信していなければ(ステップS108;No)、再分析部333は、ステップS107へリターンする。
【0091】
再分析要求を受信していれば(ステップS108;Yes)、再分析部333は、分析用データベース322から、再分析要求から特定した項目に利用者が選択した要素が設定されている診療情報を抽出する(ステップS109)。
【0092】
そして、再分析部333は、抽出した診療情報を新たな母集団として、端末装置2−1の表示画面上に分析情報が表示されている項目のうち、再分析要求から特定される項目以外の項目の分析情報を再度求める(ステップS110)。
【0093】
続いて、画面データ生成部334は、再分析要求から特定される項目を利用者が選択した要素に限定した分析情報と、再度求めた分析情報とを表示するための画面データを生成する(ステップS111)。
【0094】
そして、画面データ生成部334は、生成した画面データを通信処理部31を介して端末装置2−1に送信する(ステップS112)。
【0095】
次に、診療情報分析システム1における端末装置2−1とサーバ装置3との間の動作シーケンスについて説明する。
【0096】
図12は、診療情報分析システム1における分析情報表示処理の動作シーケンスである。この例において、サーバ装置3には既に、分析用データベース322が構築されているものとする。
【0097】
端末装置2−1の制御部25は、まず、画面表示要求をサーバ装置3に送信する(ステップS201)。
【0098】
一方、サーバ装置3の画面データ生成部334は、画面表示要求を端末装置2−1から受信し(ステップS202)、分析情報の表示画面を表示するための画面データを生成して(ステップS203)、端末装置2−1に送信する(ステップS204)。
【0099】
端末装置2−1の制御部25は、画面データをサーバ装置3から受信し(ステップS205)、画面データに基づいて、分析情報の表示画面を表示する(ステップS206)。
その後、端末装置2−1の制御部25は、利用者が操作部23を介してアイコンを選択したことに応答して、分析要求をサーバ装置3に送信する(ステップS207)。
【0100】
一方、サーバ装置3の分析部332は、分析要求を端末装置2−1から受信し(ステップS208)、分析要求から特定した項目の分析情報を求める(ステップS209)。
続いて、サーバ装置3の画面データ生成部334は、分析情報の表示画面を表示するための画面データを生成して(ステップS210)、生成した画面データを端末装置2−1に送信する(ステップS211)。
【0101】
端末装置2−1の制御部25は、画面データをサーバ装置3から受信し(ステップS212)、画面データに基づいて、分析情報を表示部22の表示画面上に表示する(ステップS213)。
その後、端末装置2−1の制御部25は、利用者が操作部23を介して着目する要素を選択したことに応答して、再分析要求をサーバ装置3に送信する(ステップS214)。
【0102】
一方、サーバ装置3の再分析部333は、再分析要求を端末装置2−1から受信する(ステップS215)。
続いて、サーバ装置3の再分析部333は、端末装置2−1に分析情報が表示されている項目のうち、再分析要求から特定した項目以外の項目の分析情報を再度求める(ステップS216)。
【0103】
さらに、サーバ装置3の画面データ生成部334は、再分析要求から特定される項目を利用者が選択した要素に限定した分析情報と、再度求めた分析情報とを表示するための画面データを生成する(ステップS217)。
そして、サーバ装置3の画面データ生成部334は、生成した画面データを端末装置2−1に送信する(ステップS218)。
【0104】
端末装置2−1の制御部25は、画面データをサーバ装置3から受信する(ステップS219)。
そして、端末装置2−1の制御部25は、画面データに基づいて、再分析要求から特定される項目を利用者が選択した要素に限定した分析情報と、再度求めた分析情報とを表示部22の表示画面上に表示する(ステップS220)。
【0105】
以上説明してきたように、本実施形態に係る診療情報分析システムは、患者の診療工程に関する複数の項目を含む複数の診療情報を記憶する診療情報データベースを有する。この診療情報分析システムは、複数の項目のうち、表示候補となる項目を選択するためのアイコンを端末装置上に表示させ、選択されたアイコンが示す項目に対して設定された前記項目の細目を表す複数の要素ごとに、複数の診療情報を母集団とした統計データである分析情報を求める。そして、この診療情報分析システムは、アイコンが示す項目に対応させて、その要素ごとに求めた分析情報を表示装置に表示する。
【0106】
さらに、この診療情報分析システムは、表示画面上で利用者が特定の項目について着目する要素を選択したとき、データベース上の診療情報のうちその要素に属する診療情報を抽出する。そして、抽出した診療情報を新たな母集団として各項目の分析情報を再度求め、その結果を反映した分析情報を表示装置に再表示する。
【0107】
このように、診療情報分析システムによれば、診療工程に関する複数の項目の中から表示したい項目を選択するだけで、利用者は分析情報を把握したい診療情報の項目を表示させることができる。また、診療情報分析システムによれば、項目に設定された複数の要素ごとの分析情報が画面表示され、選択された要素に基づいて分析情報を再生成・再表示するため、利用者は注目したい項目の要素を選択するだけで、特定の患者属性に限定した所望の分析情報を表示させることができ、他の工程の各要素との関連性を容易に把握することができる。
【0108】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。上記実施の形態では、サーバ装置が求めた分析情報等をネットワークを介して接続された端末装置上に表示させるものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、サーバ装置が求めた分析情報等をサーバ装置の表示部上に表示するものであってもよい。或いは、複数の医療施設の情報をサーバ装置にて管理し、分析する構成に代えて、各医療施設の端末装置で診療情報を記録して分析する、所謂スタンドアローン型の診療情報分析システムとしてもよい。
【0109】
また、上記実施の形態では、便宜上、端末装置での利用者による操作に基づき画面表示要求など各種の要求信号をサーバ装置へ送信する構成として説明したが、サーバ装置のウェブサーバ機能により、端末装置での画面上の操作(アイコンのクリック等)をサーバ装置側でコマンド認識する構成として実現されることは言うまでもない。
【0110】
また、上記実施の形態では、端末装置の表示画面上に分析情報が表示されている二以上の項目のうちの、いずれかの項目を一の要素に限定して、他の項目を再分析するものを例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、項目を二以上の要素に限定してもよい。この場合、再分析部は、再分析要求から特定した医療施設の分析用データベースから、再分析要求から特定した項目に利用者が選択した二以上の要素のうち、いずれかが設定されている診療情報を抽出し、これを新たな母集団とすればよい。