特許第6261511号(P6261511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261511
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】グリセロール含有機能性流体
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20180104BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 129/84 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 137/10 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 139/00 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 159/20 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 159/22 20060101ALI20180104BHJP
   C10M 159/24 20060101ALI20180104BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20180104BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20180104BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20180104BHJP
【FI】
   C10M169/04
   C10M101/02
   C10M129/84
   C10M135/10
   C10M137/10 A
   C10M139/00 A
   C10M159/20
   C10M159/22
   C10M159/24
   C10N10:04
   C10N40:04
   C10N40:08
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-541038(P2014-541038)
(86)(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公表番号】特表2014-533313(P2014-533313A)
(43)【公表日】2014年12月11日
(86)【国際出願番号】US2012046688
(87)【国際公開番号】WO2013074155
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2014年9月4日
【審判番号】不服2016-1942(P2016-1942/J1)
【審判請求日】2016年2月8日
(31)【優先権主張番号】13/297,030
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユエ − ロン
(72)【発明者】
【氏名】プラヴァック、フランク
(72)【発明者】
【氏名】フラジアー、ロールズ
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 日比野 隆治
【審判官】 木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−25891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)50重量%以上の潤滑粘度のオイル、及び
(b)0.15重量%以上のグリセロールカーボネー
含む、機能性流体
【請求項2】
前記機能性流体は少なくとも一の洗浄剤も含む、請求項1に記載の機能性流体
【請求項3】
前記少なくとも一の洗浄剤は、少なくとも一の低過塩基性スルホネート、少なくとも一の中過塩基性スルホネート、少なくとも一の高過塩基性スルホネート、又は少なくとも一の非スルホネート洗浄剤を更に含む、請求項2に記載の機能性流体
【請求項4】
前記低過塩基性スルホネートは低過塩基性カルシウムスルホネートである、請求項3に記載の機能性流体
【請求項5】
前記非スルホネート洗浄剤は少なくとも一のフェネート洗浄剤又は少なくとも一のカルボキシレート洗浄剤である、請求項3に記載の機能性流体
【請求項6】
前記高過塩基性スルホネートは高過塩基性カルシウムスルホネートである、請求項3に記載の機能性流体
【請求項7】
前記機能性流体は少なくとも一の付加的耐摩耗添加剤も含む、請求項1の機能性流体
【請求項8】
前記少なくとも一の耐摩耗添加剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛である、請求項7に記載の機能性流体
【請求項9】
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛は第一級アルコールから誘導される、請求項8に記載の機能性流体
【請求項10】
前記機能性流体はトラクタ油圧流体である、請求項1に記載の機能性流体
【請求項11】
前記機能性流体は2.0重量%以下のグリセロールカーボネートを含む、請求項1に記載の機能性流体
【請求項12】
前記機能性流体は1.5重量%以下のグリセロールカーボネートを含む請求項11に記載の機能性流体
【請求項13】
機能性流体は1.0重量%以下のグリセロールカーボネートを含む請求項12に記載の機能性流体
【請求項14】
a.50重量%以上の潤滑粘度のオイル、
b.0.15重量%以上のグリセロールカーボネート、
c.5.0重量%以下の少なくとも一の低過塩基性スルホネート洗浄剤、
d.5.0重量%以下の少なくとも一の高過塩基性スルホネート洗浄剤、及び
e.少なくとも一の耐摩耗添加剤
を含む、機能性流体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部分のトランスミッション流体、油圧流体及び/又は潤滑を必要としている系に有用な機能性流体に関する。特に、本発明は、トラクタ油圧流体に使用するための有機摩耗防止剤を含有する機能性流体に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の潤滑油配合物は、相手先商標製造会社によってしばしば定められる厳しい仕様に対して調製される。この種の仕様を満たすために、潤滑粘度の基油と共に、さまざまな添加剤が用いられる。用途に応じて、典型的潤滑油組成物は、少し例を挙げれば、分散剤、洗浄剤、抗酸化剤、摩耗防止剤、防錆剤、腐食防止剤、発泡防止剤及び摩擦修飾剤を含むことができる。異なる用途は、潤滑油組成物に入る添加剤の種類に影響を与える。
【0003】
機能性流体は、限定されるものではないが、トラクタ用油圧流体、オートマチックトランスミッション流体、連続可変トランスミッション流体、及び手動トランスミッション流を含む動力伝達流体、トラクタ油圧流体、ギアオイル、パワーステアリング流体、風力タービンに使用される流体、及び伝導機構部品に関連した流体を含む油圧流体を含む、様々な流体を包含する用語である。例えば自動車のトランスミッション流体のようなこれらの流体の各々には、著しく異なる機能的特徴を持つ流体が必要になるという結果につながる異なるデザインを有する様々なトランスミッションのため、異なるタイプの様々な流体がある点に留意する必要がある。
【0004】
トラクタ油圧流体に関して、これらの流体は、エンジンを潤滑させることを除いて、トラクタにおける全ての潤滑用途のために用いられる多目的な製品である。また、エンジンも潤滑させるいわゆるスパートラクタオイルユニバーサル流体(Super Tractor Oil Universal流体)、すなわちSTOU流体は、本発明の目的のトラクタ油圧流体として含まれる。これらの潤滑用途は、ギアボックス、動力取出し及びクラッチ装置、後車軸、減速ギア、湿式制動装置、及び油圧アクセサリの潤滑を含むことができる。最終的な結果として得られる流体組成物が異なる用途で必要とされるすべての必須の特徴を提供するように、トラクタ流体の範囲内に含まれる成分は慎重に選択されなければならない。この種の特徴は、同時に湿式制動装置を作動させて、動力取出し(PTO)クラッチ性能を提供する能力を提供すると共に、オイル浸漬制動装置の湿式制御装置作動音を防止するための適切な摩擦特性を提供する能力を含むことができる。トラクタ流体は、充分な耐摩耗性及び極圧特性、並びに水耐性/水ろ過性の能力を提供しなければならない。螺旋斜角試験並びに連続平歯車試験(straight spur gear test)に合格する流体の能力によって、歯車装置の用途において重要なトラクタ流体の極圧(EP)特性を示すことができる。トラクタ流体が青銅・黒鉛複合体及びアスベストから構成されるオイル浸漬ディスクブレーキにおいて使われるとき、トラクタ流体は十分な湿式制動能力を提供すると共に、制御作動音試験に合格する必要があってもよい。トラクタ流体は、黒鉛及び青銅クラッチを含むそれらのクラッチのような動力変速クラッチに摩擦保持を提供するその能力を示す必要があってもよい。
【0005】
機能性流体がオートマチック変速流体の場合に、オートマチック変速流体は、力を伝達するためのクラッチプレートのために十分な摩擦を有しているはずである。しかしながら、操作の間、流体が加熱するにつれて、温度効果のため流体の摩擦係数は低下する傾向を有している。トラクタ油圧流体又はオートマチック変速流体は、その高い摩擦係数を高温で維持することが重要である。さもなければ、制動システム又はオートマチック変速機は故障する場合がある。
【0006】
遅い速度での歯車の保護を維持するトラクタ油圧流体に使用するための代替有機耐摩耗剤が必要である。
【0007】
特開平05−105895号公報は農業、建築、その他の産業機械におけるその他の使用の中で、動力変速ユニットで使用される湿式クラッチ及び制御装置のための潤滑油組成物を教示している。ここで、潤滑油組成物は、100重量部の基油当たり2以上のヒドロキシル基を有する0.01−10重量部のC−C14脂肪族化合物を含有する。特に、特開平05−105895号公報は、この種のオイルが特にトランスミッション流体として有用であることを教示する。グリセロールは、2以上のヒドロキシル基を有するこの種のC−C14脂肪族化合物として開示されているが、例示されていない。
【0008】
ベイルズ,ジュニア(Bayles,Jr.)らの米国特許第5,284,591号は、主要量の炭化水素オイル及び少量だが流体の特徴を改善するのに十分である新規添加剤からなる多目的機能性流体に関する。添加剤は、カルシウム塩複合体、グループII金属のジチオリン酸塩、ホウ素化エポキシド、カルボン酸可溶化剤及び硫化組成物からなる。
【0009】
ストファ(Stoffa)らの米国特許第5,635,459号は、潤滑粘度のオイル、及びそれに加えられる、(a)ホウ素化及び/又は非ホウ素化塩の形のアルカリ又はアルカリ土類金属塩複合物;(b)トリフェニルホスファイト又はオレフィンと共に加熱したジアルキルホスホロジチオイック酸及び2−エチルヘキサン酸の亜鉛塩の混合物を含むEP/耐摩耗剤、そして(c)ホウ素化エポキシドを含む、改良したギア性能を有する機能流体組成物に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、(a)主要量の潤滑粘度のオイル、及び(b)油溶性量のグリセロールカーボネート又は油溶性量のホウ素化グリセロールを含む機能性流体に関する。
【0011】
1つの態様において、本発明は、主要量の潤滑粘度のオイル、約0.1重量%超のグリセロールカーボネート;少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の低過塩基性スルホネート洗浄剤、少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の高過塩基性スルホネート洗浄剤、及び少なくとも一の耐摩耗添加剤を含む機能性流体にも関する。
【0012】
1つの態様において、本発明は、主要量の潤滑粘度のオイル;約0.1重量%よ超のホウ素化グリセロールであって、0.5重量%以下のホウ素化グリセロール;少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の低過塩基性スルホネート洗浄剤;少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の高過塩基性スルホネート洗浄剤;及び少なくとも一の耐摩耗添加剤を含む機能性流体にも関する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、希釈油中に、油溶性量のa)ホウ素化グリセロール又はb)グリセロールカーボネートを含む添加剤濃縮物であって、前記添加剤濃縮物は、約1重量%から約99重量%の前記希釈油を含有する添加剤濃縮物に関する。
【0014】
1つの態様において、主要量の潤滑粘度のオイル、及び(i)油溶性量のグリセロールカーボネート又は(ii)油溶性量のホウ素化グリセロールを含む機能性流体と金属表面とを接触させることを含む摩擦を低減する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細に本発明について述べる前に、明示的に反対のことを述べられない限り、以下の用語は以下の意味を有する。
【0016】
定義
用語「アルカリ土類金属」は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム又はそれらの混合物を言う。
【0017】
用語「アルキル」は、直鎖及び分岐鎖の両方のアルキル基を言う。
【0018】
用語「金属」は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属又はそれらの混合物を言う。
【0019】
用語「基質に対する金属比」は、基質の価数に対する金属の総価数の比を言う。過塩基スルホネート洗浄剤は、典型的に12.5から40:1、一つの態様では13.5:1から40:1、別の態様では14.5:1から40:1、さらに別の態様では15.5:1から40:1、そして、さらに別の態様では16.5:1から40:1の金属比を有する。
【0020】
TBNの数値は、より多くのアルカリ生成物、それゆえ、より大きいアルカリ蓄積量を反映する。サンプルのTBNは、ASTMテストNo.D2896又はその他の同様な手順によって決定できる。一般的な用語で、TBNは、価数中和をもたらす水酸化カリウムのmg(ミリグラム)に等しい数として表される潤滑組成物の1グラムの中和能力である。したがって、TBNが10であることは、組成物1グラムが、水酸化カリウムの10mgと同じ中和能力を有する。活性体(actives)のTBNが測定されるべきである。
【0021】
用語「低過塩基性」又は「LOB」は、約0から約60の活性体の低TBNを有する過塩基性洗浄剤を言う。
【0022】
用語「中過塩基性」又は「MOB」は、約60超から約200の活性体の中TBNを有する過塩基性洗浄剤を言う。
【0023】
用語「高過塩基性」又は「HOB」は、約200超から約400の活性体の高TBNを有する過塩基性洗浄剤を言う。
【0024】
上記のように、本発明は、ホウ素化グリセロール又はグリセロールカーボネートのいずれかの摩耗防止剤を機能性流体に加えることによって、機能性流体の制動及びクラッチ能力を改善する方法を提供する。
【0025】
機能性流体
本発明の機能性流体は、鉱油、合成油又は植物油から誘導される基油を使用する。本発明の潤滑油組成物に用いられる潤滑粘度の基油は、典型的に主要量で存在し、例えば、前記組成物の総重量に基づいて、50重量パーセント以上、好ましくは約70重量パーセント超、より好ましくは、約80から約99.5重量パーセント、最も好ましくは約85から約98重量パーセントである。本明細書で用いられる、語句「基油」は、同じ仕様(供給元又は製造業者の場所から独立している)に対する単一の製造業者によって製造され;同じ製造業者の仕様を満たし;単一の式、製造識別番号、又はその両方によって特定される潤滑成分である、ベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。本明細書において、使用するための基油は、いくつかの又はすべてのこの種の用途(例えば、エンジンオイル、海洋シリンダーオイル、油圧オイル、ギアオイル、トランスミッション流体のような機能性流体、その他)のための潤滑油組成物を配合する際に使用する基油として当該分野で公知の基油のいずれにもすることができる。ただし、潤滑粘度のオイルはカルボン酸エステルを含まない。
【0026】
当業者が容易に理解するように、基油の粘度は用途に依存する。したがって、本明細書において使用するための基油の粘度は、通常摂氏100°(℃)で約2から約2000センチストークス(cSt)の範囲にする。通常、個々に、エンジンオイルとして使用する基油は、100℃で、約2cStから約30cSt、好ましくは約3cStから約16cSt、最も好ましくは約4cStから約12cStの動的粘度範囲を有し、望まれる最終仕様及び完成したオイル中の添加剤に依存して選択され、ブレンドされ、エンジンオイルの望まれる等級を与える。潤滑油組成物は、SAE粘度等級0W、0W−20、0W−30、0W−40、0W−50、0W−60、5W、5W−20、5W−30、5W−40、5W−50、5W−60、10W、10W−20、10W−30、10W−40、10W−50、15W、15W−20、15W−30又は15W−40である。ギアオイルとして使用するオイルは、100℃で約2cStから約2000cStの範囲の粘度を有することができる。
【0027】
ベースストックは、限定されるものではないが、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー形成、及び再精製を含む様々な異なる方法を使用して製造することができる。再精製済ストックは、製造、汚染又は以前の使用を通じて導入される材料を、実質的に含まない。本発明の潤滑油組成物の基油は、天然又は合成潤滑基油のいずれにもすることができる。ただし、潤滑粘度のオイルはカルボン酸エステルを含まない。適切な炭化水素合成油は、限定されるものではないが、ポリアルファオレフィン、すなわち、PAOオイルのようなポリマーを提供する、エチレンの重合又は1−オレフィンの重合から、又は、一酸化炭素と水素ガスとを用いた、フィッシャー−トロプシュ法におけるような炭化水素合成手順から調製されるオイルを含む。例えば、適切な基油は、あったとしても極めてわずかで重い画分、例えば、あったとしても極めてわずかで100℃で20cSt以上の粘度の潤滑油画分を含む基油である。
【0028】
基油は、天然潤滑油、合成潤滑油又はそれらの混合物から誘導できる。適切な基油は、合成ワックス及びスラックワックスの異性化によって得られたベースストック、並びに、原油の芳香族極性成分の(溶媒抽出よりもむしろ)水素化分解をするによって生成される水素化分解ベースストックを含む。適切な基油は、API出版物1509、第14版、付録I、1998年12月で定義してある、すべてのAPIカテゴリI、II、III、IV及びVにおけるそれらを含む。グループIV基油は、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループV基油は、I、II、III又はIVに含まれない他の全ての基油を含む。
【0029】
有用な天然油は、液体石油系油、パラフィン性、ナフテン性、混合パラフィン−ナフテン性の溶媒処理済又は酸処理済鉱物潤滑油、石炭、頁岩由来のオイルなどの鉱物潤滑油を含む。
【0030】
有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、重合及び共重合済みオレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン−イソブチレン共重合体、塩素化ポリブチレン、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)等、及びそれらの混合物のような、炭化水素油及びハロ置換炭化水素油;デシルベンゼン、テトラデジルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2−エチルヘキシル)−ベンゼン等のアルキルベンゼン;ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル等のポリフェニル;アルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、及びそれらの誘導体、類似体、及びその同族体等が含まれる。
【0031】
他の有用な合成潤滑油には、限定されるものではないが、5未満の炭素原子のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、ペンテン及びそれらの混合物)を重合することによって作られるオイルが含まれる。この種のポリマー油を調製する方法は、当業者に周知である。
【0032】
追加の有用な合成炭化水素油は、適当な粘性を有するアルファオレフィンの液体ポリマーを含む。特に有用な合成炭化水素油は、例えば1−デセントリマー等のCからC12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマーである。
【0033】
有用な合成潤滑油の他のクラスは、限定されるものではないが、アルキレンオキシドポリマー(すなわち、単独重合体、共重合体、及びその誘導体であって、末端ヒドロキシル基が例えばエーテル化により修正されたもの)が含まれる。これらのオイルは、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの重合によって調製されるオイル、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキル及びフェニルエーテル(例えば、1,000の平均分子量を有するメチルポリプロピレングリコールエーテル、500−1,000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、1,000−1,500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)によって、例示される。
【0034】
例えば、ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケートオイルのようなシリコン系オイルは、合成潤滑油の有用なその他のクラスを含む。これらの具体例は、限定されるものではないが、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチル−ヘキシル)シリケート、テトラ(p−tert―ブチルフェニル)シリケート、ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサン、ポリ(メチルフェニル)シロキサン、などを含む。更に、また有用な合成潤滑油は、限定されるものではないが、酸を含有する液体リン酸エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デカンリン酸ジエチルエステル)、重合テトラヒドロフランなどを含む。
【0035】
潤滑油は、未精製、精製済、及び再精製済のオイルで、天然、合成又は本明細書において上で開示した種類のそれらの2以上の混合物から誘導できる。未精製オイルは、天然又は合成源(例えば、石炭、シェール又はタールサンドビチューメン)から、さらに精製又は処理することなく直接得られるそれらであってもよい。未精製オイルの例は、レトルト乾留操作(retorting operations)から直接得られたシェールオイル又は蒸留から直接得られた石油であって、これらの各々は、一つ以上の精製工程で更に処理をしないで使用するものが含まれる。精製油は、それらが一つ以上の特性を改良するために一つ以上の精製工程で更に処理したこと以外は、未精製油と類似している。これらの精製技術は当業者に知られていて、例えば、溶媒抽出、第二蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレーション、水素化処理、脱蝋、等を含む。再精製油は、精製油を得るために用いられるそれらと類似の方法で使用されるオイルを処理することによって得られる。この種の再精製油は、再生又は再加工されたオイルとしても公知で、使用済添加剤及びオイル分解生成物の除去を対象とした技術によって、しばしば追加的に加工される。
【0036】
ワックスの水素化異性化から誘導される潤滑油ベースストックは、単独で、又は、上述した天然及び/又は合成ベースストックと組み合わせて用いることもできる。この種の異性化オイルは、水素化異性化触媒による、天然又は合成ワックス又はそれらの混合物の水素化異性化によって製造される。
【0037】
天然ワックスは、典型的に、鉱油の溶媒脱蝋により回復されるスラックワックスである。合成蝋は、典型的に、フィッシャー−トロプシュ法により製造されるワックスである。
【0038】
それは、本発明の潤滑油において、主要量の基油を使用することは好ましい。本明細書で定義される基油の主要量は、グループI、II、III、及びIV基油の少なくとも一の50重量%又はそれ以上、好ましくは約70重量パーセント超、より好ましくは約80から約99.5重量パーセントであり、最も好ましくは約85から約98重量%である。本明細書において重量%が使われるときは、それは特に明記しない限り潤滑油の重量%を言う。
【0039】
摩耗防止剤
典型的には、機能性流体は少なくとも一の摩耗防止剤も含む。前記少なくとも一の摩耗防止剤は、油溶性量のホウ素化グリセロール又は油溶性量のグリセロールカーボネートでもよい。
【0040】
1つの態様において、本発明の機能性流体は一般にホウ素化グリセロールとして公知である摩耗防止剤添加物を含有する。それは典型的には、それは後述するように合成される。
【0041】
グリセロールの総量は、窒素下で約50℃に加熱される。ホウ酸の総量は、グリセロールに加えられて、約90℃に加熱される。混合物は、約30分間保たれる。混合物は約220℃に更に加熱され、水を除去するための窒素スイープイングをしながら追加的に約30分間保たれる。約3部のグリセロールは、1部のホウ酸に加えられる。
【0042】
1つの態様において、本発明の機能性流体は、摩耗防止剤添加物、すなわち、グリセロールカーボネートを含む。そして、それは、JEFFSOLグリセリンカーボネートの商品名を有し、テキサス州、ウッドランズのハンツマンケミカル社(Huntsman Chemical Corporation)から購入することができる。
【0043】
1つの態様において、機能性流体は、約0.1重量%超のグリセロールカーボネートを含む。1つの態様において、機能性流体は、約0.1重量%超から約2.0重量%のグリセロールカーボネートを含む。より好ましくは、機能性流体は、約0.15重量%から約1.5の重量%のグリセロールカーボネートを含む。最も好ましくは、機能性流体は、約0.15重量%から約1.0の重量%のグリセロールカーボネートを含む。
【0044】
1つの態様において、機能性流体は、0.1重量%超のホウ素化グリセロール及び約0.5重量%以下のホウ素化グリセロールを含む。1つの態様において、機能性流体は、0.1重量%超のホウ素化グリセロールから約0.4重量%のホウ素化グリセロールを含む。より好ましくは、機能性流体は、0.1重量%超のホウ素化グリセロールから約0.3重量%のホウ素化グリセロールを含む。
【0045】
1つの態様において、機能性流体は、(i)約0.1重量%超のグリセロールカーボネート、又は、(ii)0.1重量%超のホウ素化グリセロールであって、約0.5重量%以下のホウ素化グリセロールを含む。
【0046】
1つの態様において、本発明の機能性流体は、少なくとも一の低過塩基性洗浄剤、少なくとも一の高過塩基性洗浄剤、及び少なくとも一の耐摩耗性添加剤を含むこともとできる。
【0047】
過塩基性洗浄添加剤
過塩基性洗浄添加剤は、当該分野で公知であり、好ましくはアルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性洗浄添加剤である。この種の洗浄添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物と、基質及び炭酸ガスとを反応させることによって調製する。基質は、典型的に酸、通常、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、及び脂肪族置換フェノールからなる群から選択される酸である。
【0048】
用語「過塩基性」は、金属塩、好ましくは、スルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩に関するものであり、ここで、存在する金属の総量は、化学量論を超える。この種の塩が100%超(すなわち、それらは、酸をその「通常の」、「中性」塩に変換するために必要な金属の理論量の100%超を含む)の転換レベルを有すると、言われている。語句「金属比」(しばしばMRと略記される)は、従来技術で使われていて、本明細書では、周知の化学反応性及び化学量論に従って、中性塩における金属の化学当量に対する過塩基性塩における金属の総化学当量の比率を指定する。したがって、通常の又は中性の塩において、金属比は1であり、そして、過塩基性塩において、MRは1を超える。それらは、一般に過塩基性であるか、超塩基性であるか、スーパー塩基性の塩と呼ばれており、通常有機硫黄酸、カルボン酸又はフェノールの塩である。
【0049】
過塩基性洗浄剤は、典型的に、少なくとも1.1:1、好ましくは少なくとも2:1、より好ましくは、少なくとも4:1又は少なくとも10:1の金属対基質比率(基質に対する金属の比率)を有する。
【0050】
スルホン酸は、単一又は多核芳香族又は脂環式化合物を含み、これらは、過塩基性ときに、スルホネートと呼ばれる。
【0051】
本発明に有用なスルホン酸の具体例は、マホガニースルホン酸;ブライトストックスルホン酸;100°Fにおける約100秒から210°Fにおける約200秒のセーボルト粘度を有する潤滑油留分に由来のスルホン酸;ワセリンスルホン酸;ベンゼン、ナフタレン、フェノール、ジフェニルエーテル、ナフタレンジスルフィド、ジフェニルアミン、チオフェン、α−クロロナフタレンなどのモノ及びポリワックス置換スルホン及びポリスルホン酸;アルキルベンゼンスルホン酸(アルキル基が少なくとも8の炭素を有する)、セチルフェノール、一硫化スルホン酸、ジセチルチアントレン二スルホン酸、ジラウリル−β−ナフチルスルホン酸、ジカプリルニトロナフタレンスルホン酸、及びアルカリルスルホン酸(例えばドデシルベンゼン「ボトム」スルホン酸など)である。
【0052】
ボトム酸は、プロピレンテトラマー又はイソブテントリマーでアルキル化され、ベンゼン環上の1、2、3又はそれ以上の分岐鎖C12置換基を導入したベンゼンから誘導される。ドデシルベンゼンボトム、主にモノ及びジドデシルベンゼンの混合物)は、家庭用洗浄剤の製造からの副産物として入手できる。直鎖状アルキルスルホネート(LAS)の製造中に形成されるアルキル化ボトムから得られる類似生成物も、本発明で使用するスルホネートを作る際に有用である。
【0053】
例えば、SOとの反応による洗浄剤製造生成品からのスルホネートの生産は、当業者に周知である。例えば、論文「スルホネーション及びスルフェーション(Sulfonation and Sulfation)」、第23巻、146ページ以下参照、及び、論文「スルホン酸(Sulfonic Acids)」、第23巻、194ページ以下参照;両方ともニューヨーク州のジョン・ワイリー(John Wiley)及びサンズ(Sons)により発表される、第4版、「カーク・オテーマー(Kirk Othmer)化学技術の百科事典」(1997)にある。
【0054】
パラフィンワックススルホン酸、不飽和パラフィンワックススルホン酸、ヒドロキシ置換パラフィンワックススルホン酸、ヘキサプロピレンスルホン酸、テトラアミレンスルホン酸、ポリイソブテンスルホン酸(ポリイソブテンは、20から7000又はそれ以上の炭素原子を含有する)、塩素置換パラフィンワックススルホン酸、ニトロパラフィンワックススルホン酸などの、脂肪族基において、少なくとも約7の炭素原子、しばしば少なくとも約12の炭素原子を含有する脂肪族スルホン酸;石油ナフテンスルホン酸、セチルシクロペンチルスルホン酸、ラウリルシクロヘキシルスルホン酸、ビス(イソブチル)シクロヘキシルスルホン酸などの脂環族スルホン酸も含まれる。
【0055】
本明細書において記載されているスルホン酸又はその塩に関して、用語「石油スルホン酸」又は「石油スルホネート」は、石油生成物から生じた全てのスルホン酸、又は、その塩を含むことが意図されている。石油スルホン酸の特に有益なグループは、スルホン酸プロセスによる石油ホワイトオイルの製造からの副産物として得られたマホガニースルホン酸(それらの赤褐色のため、そう呼ばれている)である。
【0056】
過塩基性スルホネート塩のその他の記載及びそれらを作る技術は、以下の文献からわかる;米国特許第2,174,110号;2,174,506号;2,174,508号;2,193,824号;2,197,800号;2,202,781号;2,212,786号;2,213,360号;2,228,598号;2,223,676号;2,239,974号;2,263,312号;2,276,090号;2,276,297号;2,315,514号;2,319,121号;2,321,022号;2,333,568号;2,333,788号;2,335,259号;2,337,552号;2,346,568号;2,366,027号;2,374,193号;2,383,319号;3,312,618号;3,471,403号;3,488,284号;3,595,790号;そして、3,798,012号。これらの特許の各々は、全体として本願明細書に組み込まれる。
【0057】
1つの態様において、低過塩基性洗浄剤が使用される。好ましくは、低過塩基性洗浄剤は、低過塩基性スルホネート洗浄剤である。より好ましくは、低過塩基性スルホネート洗浄剤は、低過塩基性アルカリ土類金属スルホネート洗浄剤である。最も好ましくは、当該アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、ストロンチウム又はバリウムから選択される。さらに好ましくは、低過塩基性アルカリ土類金属スルホネート洗浄剤は、低過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤である。
【0058】
1つの態様において、中過塩基性洗浄剤が使用される。好ましくは、中過塩基性洗浄剤は、中過塩基性カルシウムスルホネートである。
【0059】
好ましくは、高過塩基性洗浄剤は、高過塩基性スルホネート洗浄剤である。より好ましくは、高過塩基性スルホネート洗浄剤は、高過塩基性アルカリ土類金属スルホネート洗浄剤である。最も好ましくは、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はバリウムから選択される。さらに好ましくは、高過塩基性アルカリ土類金属スルホネート洗浄剤は、高過塩基性カルシウムスルホネート洗浄剤又は高過塩基性マグネシウム洗浄剤である。
【0060】
1つの態様において、スルホネート非含有洗浄剤が使用される。かかる洗浄剤としては、限定されるものではないが、カルボキシレート及びフェネート洗浄剤を含む。これらのカルボキシレート洗浄剤又はフェネート洗浄剤又はその両方は、グリセロール添加物を含有する機能性流体中にあってもよい。
【0061】
使用される典型的なカルボキシレート洗浄剤は、米国特許第7,163,911号;7,465,696号等に記載されているものである。これらの文献は参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0062】
使用される典型的なフェネート洗浄剤は米国特許第7,435,709号等に記載されているものである。この文献は参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0063】
耐摩耗添加剤
耐摩耗添加剤は、本発明の機能性流体に使用することができる。本発明において、使用することができる耐摩耗添加剤の例は、ジアルキル−1−ジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキル、及びアリールタイプ)、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フッ化アルキルポリシロキサン、ナフテン酸鉛、中和ホスフェート、ジチオホスフェート、及び硫黄遊離ホスフェートを含む。好ましくは、耐摩耗添加剤は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛である。より好ましくは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第一級アルコールから誘導される。
【0064】
本発明の機能性流体において、使用されるホウ素化グリセロール、グリセロールカーボネート、洗浄剤、及び耐摩耗添加剤の他に、機能性流体は、後述するその他の添加剤を含むこともできる。これらの添加成分は、いかなる順序においても混合することができて、成分の組合せとして混合することができる。
【0065】
他の添加成分
以下の添加成分は、本発明において好ましく使用することができるいくつかの成分の例である。添加剤のこれらの例は、本発明を例示するために設けられている、しかし、それらはそれを限定することを意図しない:
【0066】
A.金属洗浄剤
硫化又は非硫化アルキル又はアルケニルフェネート、合成又は天然フィードストック由来のスルホネート、カルボキシレート、サリチレート、フェナレート、マルチヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は非硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホン酸塩、硫化又は非硫化アルキル又はアルケニルナフテン酸塩、アルカン酸の金属塩、アルキル又はアルケニルマルチ酸の金属塩、これらの化学的及び物理的な混合物。
【0067】
B.抗酸化剤
抗酸化剤は、稼働中に悪化する鉱油の傾向を減少させる。ここで悪化は、金属面上に沈着した泥及びワニスのような酸化物の生成物よって、及び粘度の増加によって示される。抗酸化剤は、限定されるものではないが、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチルデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6’−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−キシレノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−1−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、2,6−ジ−tert−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N´−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、及びビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)のような、フェノールタイプ(フェノールの)酸化防止剤としての抗酸化剤が挙げられる。ジフェニルアミンタイプ酸化防止剤は、限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン及びアルキル化α−ナフチルアミンが挙げられる。その他のタイプの酸化防止剤は、金属ジチオカーバメート(例えば、ジチオカルバミド酸亜鉛)及びメチレンビス(ジブチルジチオカーバメート)が挙げられる。抗酸化剤は、通常、エンジンオイルの総量当たり、約0から約10重量%の、好ましくは0.05から約3.0重量%の量でオイルに組み込まれる。
【0068】
C.耐摩耗/超圧添加剤
それらの名前が意味するように、これらの添加剤は可動する金属部品の摩耗を減らす。この種の添加剤の例は、限定されるものではないが、ホスフェート、ホスファイト、カーバメート、エステル、硫黄含有化合物、モリブデン錯体、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキル及びアリールタイプ)、硫化オイル、硫化イソブチレン、硫化ポリブテン、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタリン、フルオロアルキルポリシロキサン及びナフテン酸鉛が挙げられる。
【0069】
D.錆阻害剤(防錆剤)
1)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート及びポリエチレングリコールモノオレアート。
2)他の化合物:ステアリン酸及び他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分的なカルボン酸エステル及びリン酸エステル。
【0070】
E.抗乳化剤
アルキルフェノール及びエチレンオキシドの付加生成物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0071】
F.摩擦修飾剤
脂肪族アルコール、1,2−ジオール、ホウ素化1,2−ジオール、脂肪酸、アミン、脂肪酸アミド、ホウ素化エステル、及びその他のエステル。
【0072】
G.多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカーバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物及び硫黄含有モリブデン錯体化合物。
【0073】
H.粘度指数向上剤
ポリメタクリレート系ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレン共重合体、水素化スチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、及び分散系粘度指数向上剤。
【0074】
I.流動点降下剤
ポリメタクリル酸メチル。
【0075】
J.消泡剤
アルキルメタクリレート重合体及びジメチルシリコーンポリマー。
【0076】
K.金属不活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、チアジアゾール誘導体、及びメルカプトベンゾイミダゾール。
【0077】
L.分散剤
アルケニルスクシンイミド、他の有機化合物で修正したアルケニルスクシンイミド、エチレンカーボネート又はホウ酸を使用した後処理により修正したアルケニルスクシンイミド、多価アルコール及びポリイソブテニルコハク酸無水物のエステル、フェネート−サリチレート、そして、それらの後処理した類似物、アルカリ金属又は混合アルカリ金属、アルカリ土類金属ボレート、水和アルカリ金属ボレートの分散剤、アルカリ土類金属ボレートの分散剤、ポリアミド無灰分散剤など、又はこの種の分散剤の混合物。
【0078】
添加剤パッケージ
他の態様において、本発明は、油溶性量のホウ素化グリセロール又は油溶性量のグリセロールカーボネートを含有する機能性流体のための添加剤濃縮物に関する。ホウ素化グリセロール含有添加剤濃縮物又はグリセロールカーボネート含有添加剤濃縮物は、添加剤パッケージ又は濃縮物として提供される。これらは、実質的に不活性で、通常液状の有機希釈剤(例えば添加剤濃縮物を形成する鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエン又はキシレン)に組み込まれる添加剤パッケージ又は濃縮物である。これらの濃縮物は、通常、この種の希釈液の約1%から約99重量%、そして、一つの態様において、約10%から約90重量%を含む。合成油ならびに添加剤及び完成した潤滑油と相溶性のある他の有機液体も使うことができるが、典型的に、100℃で約4から約8.5cStの粘度、好ましくは100℃で約4から約6cStの粘度を有する中性油が希釈液として使用される。
【0079】
1つの態様において、本発明は、潤滑粘度の主要量のオイルと、(i)油溶性量のグリセロールカーボネート又は(ii)油溶性量のホウ素化グリセロールを含む機能性流体を、金属表面に接触させる工程を含む摩擦を低減する方法に関する。
【実施例】
【0080】

本発明は以下の例で更に例示される。そして、それは特に有利な方法の態様を述べる。例が本発明を説明するために設けられているが、例は本発明を制限することを意図していない。本願は、添付の特許請求の範囲の主旨と範囲から逸脱することなく当業者によって、なすことができるそれらの様々な変更及び置換を網羅するものとする。
【0081】
例A
以下を含む基本的配合物を調製した:
(i)Caスルホネート洗浄剤の%27TBNオイル濃縮物を1.85重量%、
(ii)Caスルホネート洗浄剤の320TBNオイル濃縮物を1.89重量%、
(iii)、7.3重量%のリンを含む第一級アルコールから誘導されるジチオリン酸亜鉛のオイル濃縮物を1.53重量%
そして、
(iv)残り、グループII基油。
【0082】
例1
0.15重量%のグリセロールカーボネートで例Aをトップ処理することによって、潤滑油組成物を調製した。
【0083】
例2
1.00重量%のグリセロールカーボネートで例Aをトップ処理することによって、潤滑油組成物を調製した。
【0084】
例3
例Aの基本的配合物を0.15重量%のホウ素化グリセロールでトップ処理することによって、潤滑油組成物を調製した。グリセロール(100g、2当量)を丸底フラスコに加えることによって、ホウ素化グリセロールを調整した。フラスコは、窒素下で50℃に加熱した。そして、ホウ酸(33.6g、1当量)を、段階的に加熱済フラスコに加えた。混合物を、90℃に加熱し、30分間保持した。混合物は、220℃に更に加熱し、水を除去するための窒素スィーピングをしながら追加的に30分間保持した。約104グラムのゲルが、回収された。ホウ素含有量=6.87%。
【0085】
例B
実施例Aの基本的配合物を0.1重量%のグリセロールカーボネートでトップ処理することによって、潤滑油組成物を調製した。
【0086】
例C
実施例Aの基本的配合物を0.1重量%のホウ素化グリセロールでトップ処理することによって、潤滑油組成物を調製した。
【0087】
低速ギア性能の評価
低速ギア性能は、ZFグループのZFV3試験を使用して評価される。そして、それはS19−5試験としても公知である。この試験において、FZG標準は、速度(9回転数/分 入力速度、13回転数/分 ピニオン速度)、ロード(10段階)及び温度(40時間の90℃、40時間の120℃及び40時間の90℃)の調整した条件の下で、120時間作動する。試験ギアに、試験オイルをさした。ギア及びピニオンの重量を、試験の前後で測定した。ギア重量減少及びピニオン重量減少を、試験流体で得られた摩耗を評価するために用いる。試験に合格するために、総重量減少(ギア重量減少+ピニオン重量減少)は、30mg未満でなければならない。
【0088】
低速ギア性能結果を、表1に示す。様々な異なるグリセロールタイプの摩擦修飾剤を含有する潤滑油組成物の試験結果が含まれている。試験が80時間に30mg以上の総重量減少になった場合、試験はそこで中断された。
【0089】
【表1】

【0090】
120時間における総重量減少によって証明したように、グリセロールカーボネート及びホウ素化グリセロールは、120時間における、30mg未満の総重量減少をもたらす。それより、それらは良好な摩耗防止品質を提供することを示す。
以下を特許請求する。
[請求項1]
(a)主要量の、潤滑粘度のオイル、及び
(b)油溶性量のグリセロールカーボネート又は油溶性量のホウ素化グリセロール
を含む、機能性流体
[請求項2]
前記油溶性量のグリセロールカーボネートは約0.1重量%超のグリセロールカーボネートである、請求項1に記載の機能性流体
[請求項3]
前記油溶性量のホウ素化グリセロールは0.1重量%超のホウ素化グリセロールであり且つ約0.5重量%以下のホウ素化グリセロールである、請求項1に記載の機能性流体
[請求項4]
前記機能性流体は少なくとも一の洗浄剤も含む、請求項1に記載の機能性流体
[請求項5]
前記少なくとも一の洗浄剤は、少なくとも一の低過塩基性スルホネート、少なくとも一の中過塩基性スルホネート、少なくとも一の高過塩基性スルホネート、又は少なくとも一の非スルホネート洗浄剤を更に含む、請求項4に記載の機能性流体
[請求項6]
前記低過塩基性スルホネートは低過塩基性カルシウムスルホネートである、請求項5に記載の機能性体。
[請求項7]
前記非スルホネート洗浄剤は少なくとも一のフェネート洗浄剤又は少なくとも一のカルボキシレート洗浄剤である、請求項5に記載の機能性流体
[請求項8]
前記高過塩基性スルホネートは高過塩基性カルシウムスルホネートである、請求項5に記載の機能性流体
[請求項9]
前記機能性流体は少なくとも一の付加的耐摩耗添加剤も含む、請求項1の機能性流体
[請求項10]
前記少なくとも一の耐摩耗添加剤はジアルキルジチオリン酸亜鉛である、請求項9に記載の機能性流体
[請求項11]
前記ジアルキルジチオリン酸亜鉛は第一級アルコールから誘導される、請求項10に記載の機能性流体
[請求項12]
前記機能性流体はトラクタ油圧流体である、請求項1に記載の機能性流体
[請求項13]
前記機能性流体は0.1重量%超から約0.4重量%のホウ素化グリセロールを含む、請求項3に記載の機能性流体
[請求項14]
前記機能性流体は0.1重量%超から約0.3重量%のホウ素化グリセロールを含む、請求項13に記載の機能性流体
[請求項15]
前記機能性流体は約0.1重量%超から約2.0重量%のグリセロールカーボネートを含む、請求項2に記載の機能性流体
[請求項16]
前記機能性流体は約0.15重量%から約1.5重量%のグリセロールカーボネートを含む請求項15に記載の機能性流体
[請求項17]
機能性流体は、約0.15重量%から約1.0重量%のグリセロールカーボネートを含む請求項16に記載の機能性流体
[請求項18]
a.主要量の潤滑粘度のオイル、
b.約0.1重量%超のグリセロールカーボネート、
c.少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の低過塩基性スルホネート洗浄剤、
d.少なくとも約5.0重量%以下の少なくとも一の高過塩基性スルホネート洗浄剤、及び
e.少なくとも一の耐摩耗添加剤
を含む、機能性流体
[請求項19]
希釈油中に、油溶性量のa)ホウ素化グリセロール又はb)グリセロールカーボネートを含む添加剤濃縮物であって、前記添加剤濃縮物は、約1重量%から約99重量%の前記希釈油を含有する、前記添加剤濃縮物。