特許第6261518号(P6261518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧

特許6261518廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置及び燃料化方法
<>
  • 特許6261518-廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置及び燃料化方法 図000003
  • 特許6261518-廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置及び燃料化方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261518
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置及び燃料化方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/44 20060101AFI20180104BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20180104BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20180104BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20180104BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20180104BHJP
   B07B 1/00 20060101ALI20180104BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20180104BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20180104BHJP
   C10L 5/48 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C04B7/44ZAB
   C04B7/38
   B29B17/02
   B29B17/04
   B07B1/28 Z
   B07B1/00 B
   B09B3/00 Z
   B09B5/00 C
   C10L5/48
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-557351(P2014-557351)
(86)(22)【出願日】2013年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2013082432
(87)【国際公開番号】WO2014112223
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年10月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-5831(P2013-5831)
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】和田 肇
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242146(JP,A)
【文献】 特開2010−194860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/36−7/60
B09B 1/00−5/00
C10L 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックを含む廃棄物を破砕する破砕装置と、
該破砕装置によって破砕した廃棄物を、所定の粒径範囲にある空間燃焼が困難な破砕物と、その他の破砕物とに分離する分離装置と、
該分離装置によって分離された前記空間燃焼が困難な破砕物をフィルム状に薄片化する圧延装置と、
該圧延装置によって薄片化された破砕物をセメント焼成装置に供給する供給装置とを備えることを特徴とする廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項2】
前記供給装置によって、前記その他の破砕物を、前記圧延装置によって薄片化された破砕物と共にセメント焼成装置に供給することを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項3】
前記廃プラスチックを含む廃棄物は、自動車シュレッダーダストであって、
前記破砕装置は、口径がXmmのスクリーンを備え、
前記分離装置は、前記破砕装置の下流側に位置し、前記破砕装置によって破砕した廃棄物を篩い分ける篩分装置であって、
前記空間燃焼が困難な破砕物は、前記篩分装置によって分離されたX/3mm以上4X/5mm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項4】
前記スクリーンの口径Xは、5mm以上100mm以下であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項5】
前記圧延装置は、前記空間燃焼が困難な破砕物を加熱しながら圧縮する加熱式の圧縮ロールを備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項6】
前記廃プラスチックを含む廃棄物は、硬質プラスチックと軟質プラスチックとを含み、
前記分離装置は、前記破砕装置の下流側に位置する風力選別機であることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置。
【請求項7】
廃プラスチックを含む廃棄物を破砕し、
該破砕した廃棄物を、所定の粒径範囲にある空間燃焼が困難な破砕物と、その他の破砕物とに分離し、
該分離した空間燃焼が困難な破砕物をフィルム状に薄片化し、
該薄片化した破砕物をセメント焼成装置に供給することを特徴とする廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASR(自動車シュレッダーダスト)等の廃プラスチックを含む廃棄物を、セメント焼成装置において燃料として利用するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメント焼成装置では、ASR等の廃プラスチックを含む廃棄物をセメントキルンの燃焼用バーナーの代替燃料として利用している。例えば、特許文献1には、プラスチック類、スポンジ類、繊維類、ゴム類及び木質類からなる群より選択される一以上を主成分とする可燃性廃棄物を1次破砕機により粗砕する工程と、可燃性廃棄物に含まれる異物を除去する工程と、異物を除去した粗砕物を2次破砕機により破砕する工程と、破砕物をバーナーに吹き込む工程とを含み、粗砕物の水分を5質量%以下とした上で、2次破砕機の動力が一定になるように粗砕物を2次破砕機に供給する可燃性廃棄物の燃料化方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2012−153889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、廃棄物には様々な性状のものが含まれているため、廃棄物を単に破砕して得られる破砕物は、燃焼用バーナーによって完全に大気中で燃焼(空間燃焼)されない場合があり、そのような場合には、燃焼用バーナーに吹き込まれた廃棄物の一部がクリンカ上に着地して不完全燃焼を起こしたり、クリンカが還元反応を生じ、クリンカの品質や色相に影響を及ぼすという不具合があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、クリンカの品質へ悪影響を及ぼすことなく、廃プラスチックを含む廃棄物全体をセメント焼成用燃料として有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、廃プラスチックを含む廃棄物を破砕する破砕装置と、該破砕装置によって破砕した廃棄物を、所定の粒径範囲にある空間燃焼が困難な破砕物と、その他の破砕物とに分離する分離装置と、該分離装置によって分離された前記空間燃焼が困難な破砕物をフィルム状に薄片化する圧延装置と、該圧延装置によって薄片化された破砕物をセメント焼成装置に供給する供給装置とを備えることを特徴とする。ここで、空間燃焼が困難な破砕物とは、セメントキルンの燃焼用バーナーからキルン内に吹き込まれた場合に、クリンカ上に着地して不完全燃焼を起こすなどして、キルンの内部空間等において完全燃焼し難い破砕物をいう。
【0007】
本発明によれば、圧延装置によって、廃棄物に含まれる所定の粒径範囲にある空間燃焼が困難な破砕物をフィルム状に薄片化することで、燃焼用バーナーからセメントキルン等に吹き込んでも完全に空間燃焼させることができるため、クリンカの品質へ悪影響を及ぼすことなく、セメント焼成用燃料として有効利用することができる。
【0008】
前記供給装置によって、前記その他の破砕物を、前記圧延装置によって薄片化された破砕物と共にセメント焼成装置に供給することができる。これにより、廃プラスチックを含む廃棄物全体をセメント焼成用燃料として有効利用することができる。
【0009】
上記廃棄物の燃料化装置において、前記廃プラスチックを含む廃棄物を自動車シュレッダーダストとし、前記破砕装置は、口径がXmmのスクリーンを備え、前記分離装置は、前記破砕装置の下流側に位置し、前記破砕装置によって破砕した廃棄物を篩い分ける篩分装置であって、前記空間燃焼が困難な破砕物は、前記篩分装置によって分離されたX/3mm以上4X/5mm以下の範囲にあるものとすることができる。これによって、自動車シュレッダーダストの有効利用を促進することができる。また、不完全燃焼に起因する様々な汚染物質の量を減少させ、それと共に残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)類の排出量も低減することができる。
【0010】
また、前記スクリーンの口径Xを5mm以上100mm以下とすることができ、口径の小さいスクリーンで得られた破砕物を主にセメントキルンの燃焼用バーナーに吹き込むことができ、口径の大きいスクリーンで得られた破砕物をセメントキルンの窯尻に投入して燃料として使用することができる。
【0011】
上記廃棄物の燃料化装置において、前記圧延装置を、前記空間燃焼が困難な破砕物を加熱しながら圧縮する加熱式の圧縮ロールとすることができる。
【0012】
さらに、前記廃プラスチックを含む廃棄物を、硬質プラスチックと軟質プラスチックとを含むものとし、前記分離装置を、前記破砕装置の下流側に位置する風力選別機とすることができる。
【0013】
また、本発明は、廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化方法であって、廃プラスチックを含む廃棄物を破砕し、該破砕した廃棄物を、所定の粒径範囲にある空間燃焼が困難な破砕物と、その他の破砕物とに分離し、該分離した空間燃焼が困難な破砕物をフィルム状に薄片化し、該薄片化した破砕物をセメント焼成装置に供給することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、クリンカの品質へ悪影響を及ぼすことなく、空間燃焼が困難な破砕物をセメント焼成用燃料として有効利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、クリンカの品質への悪影響を回避しながら、廃プラスチックを含む廃棄物全体をセメント焼成用燃料として有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置の一実施形態を示す概略全体構成図である。
図2】本発明に係る燃料化装置及び燃料化方法の試験例における各粒度群の内容物を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、本発明を自動車シュレッダーダスト(以下「ASR」という)の燃料化に適用した場合を例にとって説明する。尚、ASRとは、廃棄された自動車のエンジン等を取り除いた後の廃車ガラを工業用シュレッダーで粉々に粉砕して鉄等を回収した後、産業廃棄物として廃棄されるプラスチック、ガラス、ゴムなどの破片をいう。
【0017】
本発明に係る廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置(以下「燃料化装置」という)1は、図1に示すように、ASRを破砕する破砕装置10と、破砕物Cを篩い分ける篩分装置20と、篩い分けられた中間粒子群を薄片化する加熱式圧縮ローラ30とを備えている。尚、図1中の記号Aは粒度、及び記号Dはスクリーンの口径を各々示す。
【0018】
破砕装置10は、例えば、一軸破砕機であって、回転刃等を収容した箱状の本体10aと、本体10aの上方に位置し、ASRを投入するために開口したホッパー10bと、本体10aの下方に配置され、スクリーンを収容する排出部10c等を備える。ここで、スクリーンの口径DをXmmとする。
【0019】
篩分装置20は、上下方向に2段にわたって配置された2つの振動篩20A、20Bからなり、振動篩20Aの口径は、4/5・Xmm、振動篩20Bの口径は、1/3・Xmmに設定される。
【0020】
圧延装置としての加熱式圧縮ローラ30は、所定温度に設定された一対の発熱回転ローラ30aと、発熱回転ローラ30aを保持する一対のハウジング30b等で構成される。発熱回転ローラ30aには、外部高周波誘導発熱ロールや外部取付型高周波ヒートロール等を用いることができる。
【0021】
図示を省略するが、燃料化装置1によって燃料化されたASRを燃料として用いるセメント焼成装置は、セメント原料を予熱するためサイクロンを多段に重ねたプレヒータと、セメント原料を仮焼する仮焼炉と、バーナー等を備えてセメント原料を焼成するセメントキルン(ロータリーキルン)と、セメントキルンから排出されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラ等で構成される。
【0022】
次に、上記構成を有する燃料化装置1によるASRの燃料化方法について説明する。
【0023】
受け入れたASRを破砕装置10に投入して破砕する。ここで、破砕装置10のスクリーンの口径Xmmを所望の値に設定することにより、可燃物は回転刃により破砕されて所定の粒度になって排出部10cから破砕物Cとして排出される。スクリーンの口径Xmmは、10mm〜15mmに設定するのが好ましいが、5mm〜100mm程度に設定することができ、口径の小さいスクリーンで得られた燃料を主にセメントキルンの燃焼用バーナーに吹き込んで使用し、口径の大きいスクリーンで得られた燃料をセメントキルンの窯尻に投入して使用することができる。
【0024】
破砕装置10から排出された破砕物Cは、振動篩20Aに供給され、4/5・Xmmを超える粒子群(大径粒子群LP)は、そのまま代替燃料として用いられる。4/5・Xmm以下の粒子群は、振動篩20Bに供給され、1/3・Xmm以下の粒子群(小径粒子群SP)もそのまま代替燃料として用いられる。一方、1/3・Xmmを超え、4/5・Xmm以下の粒子群(中間粒子群MP)は、加熱式圧縮ローラ30に導入される。
【0025】
加熱式圧縮ローラ30において、中間粒子群MPの破砕物が、所定温度に設定された一対の発熱回転ローラ30aによって圧延され、フィルム状に薄片化される。薄片化された破砕物は、大径粒子群LP及び小径粒子群SPの破砕物と共に、セメントキルンの燃焼用バーナーに燃料として吹き込むことができる。
【0026】
次に、本発明に係る燃料化装置及び燃料化方法の試験例について説明する。
【0027】
スクリーンの口径Dを10mmに設定した破砕装置10にASRを投入し、破砕物Cを篩い分けすると、各粒度群(No.1〜5)において表1に示すような物が得られた。表1には、各粒度群における質量(%)、発熱量(cal/g)、熱量割合(%)、ig.loss(Ignition Loss:強熱減量)(%)及び内容物を示している。また、各粒度群における内容物の写真を図2に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記No.1〜5の破砕物について各々燃焼試験を行ったところ、No.1、2は燃焼し易く、質量が最も大きく、発熱量の高いNo.3が最も燃焼し難く、No.4、5については、綿状のため空中に浮遊して即座に空間燃焼することが判明した。
【0030】
そこで、本発明者は、上記No.3についても空間燃焼を可能とするため、加熱式圧縮ローラ30によりフィルム状に薄片化することとした。フィルム状に薄片化することで、比表面積が増大すると共に、燃焼用バーナー等を介してセメントキルン内に吹き込まれると、空中に漂って空間燃焼し易くなる。
【0031】
尚、上記実施の形態及び試験例では、廃プラスチックを含む廃棄物がASRの場合について説明したが、廃プラスチックを含む廃棄物が硬軟質混合プラスチックの場合には、破砕後に風力選別により硬質プラスチックと軟質プラスチックとに分級し、硬質プラスチックは空間燃焼し難いため、加熱式圧縮ローラによりフィルム状に薄片化する。一方、軟質プラスチックは、空間燃焼し易いのでそのままの状態で燃料となる。
【符号の説明】
【0032】
1 廃プラスチックを含む廃棄物の燃料化装置(燃料化装置)
10 破砕装置
10a 本体
10b ホッパー
10c 排出部
20 篩分装置
20A、20B 振動篩
30 加熱式圧縮ローラ
30a 発熱回転ローラ
30b ハウジング
C 破砕物
LP 大径粒子群
MP 中間粒子群
SP 小径粒子群
図1
図2