(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ハイドロフルオロカーボンは、半導体、液晶などの微細加工用のエッチングガスとして有用であり、特にフッ化メチル(CH
3F)は、最先端の微細構造を形成するためのエッチングガスとして注目されている。
【0003】
フッ化メチルの製造方法としては、例えば、原料化合物を気相状態で熱分解させることにより、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスを得る方法等が知られている(特許文献1)。
【0004】
上記において、得られた混合ガスに含まれるフッ化メチルと酸フルオリドを分離する方法としては、混合ガスを冷却することによって、フッ化メチル(沸点−79℃)を主成分とする低沸点成分からなるガス成分と、酸フルオリド(例えば、3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパノイルフルオライド(沸点32℃)等)を主成分として、さらに未反応原料(1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(沸点68.5℃)等)を含むことのある高沸点成分からなる液成分に分離する方法が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、別の分離方法として、得られた混合ガスを水又はアルカリ水溶液等と接触させて酸フルオリドを水相中に溶解させて除去する方法も提案されている(特許文献1)。この場合、水及びアルカリ水溶液の代わりに、アルコールを用いることも提案されている。アルコールを接触させてエステルを生成させることにより、燃焼処理しやすくなる。従来の方法では、このようにして得られた、フッ化メチルを多く含むガスをさらに精留操作に供してフッ化メチルを精製することが行われていた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法は、フッ化メチルの製造方法であって、
(1)原料化合物を気相状態で熱分解させることにより、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスを得る工程;及び
(2)前記工程(1)で得られた混合ガスを精留することによりフッ化メチルを得る工程
を含む方法
である。
【0013】
1.
原料化合物
本発明で用いる原料化合物は、気相状態で熱分解させることにより、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスを生じる化合物であればよく、特に限定されない。
【0014】
気相状態で熱分解させることにより、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスを生じる反応は既に知られており、例えば、特開2014−114277号公報等に開示されている。
【0015】
本発明では、原料化合物としては、好ましくは、一般式(1)で表される含フッ素メチルエーテルを用いる。
【0017】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、置換されていてもよい、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基若しくは一価の環状脂肪族炭化水素基;水素原子又はハロゲン原子である)。
【0018】
原料化合物として用いる含フッ素メチルエーテルの製造方法については特に限定はなく、任意の方法で得られた化合物を用いることができる。
【0019】
上記一般式(1)において、好ましくはR
1及びR
2は、同一又は異なって、置換されていてもよい、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価の環状脂肪族炭化水素基である。より好ましくは、R
1及びR
2は、同一又は異なって、置換されていてもよい、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜10の一価の環状脂肪族炭化水素基である。
【0020】
上記において、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。
【0021】
具体的には、炭素数1〜10のアルキル基として、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基、2−メチルエチル基、ヘキシル基及びオクチル基等が挙げられる。
【0022】
炭素数1〜10のアルキル基の中では、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がさらに好ましい。
【0023】
炭素数6〜10の一価の芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、メチルフェニル基及びエチルフェニル基等が挙げられる。
【0024】
炭素数6〜10の一価の環状脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基及びエチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
上記において、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子からなる群より選択される少なくとも一種のヘテロ原子で、水素原子の少なくとも一つが置換されていてもよく、また全ての水素原子が置換されていてもよい。
【0026】
上記において、ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子子であり、より好ましくはフッ素原子である。
【0027】
特に限定されないが、原料として用いることができる具体的な化合物の例として、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル等が挙げられる。
【0028】
特に、フッ素樹脂の原料として使用するヘキサフロオロプロペンを製造する際に副生するパーフルオロイソブチレン((CF
3)
2C=CF
2))は、従来不要物として廃棄されていたが、これをメタノールと反応させることによって1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルを得ることができ、これを本発明方法の原料として用いることによって、廃棄物の有効利用を図ることができ、低コストの原料を用いて、安価に目的物を得ることが可能となる。なお、本発明において、原料とする1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルが、「パーフルオロイソブチレンとメタノールを反応させて得られるものである」というときは、その1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルが、かかる反応により得られたものに限定され、他の反応により得られたものではないことを意味する。パーフルオロイソブチレンとメタノールとを反応させて1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルを得る方法は、公知の方法であり、公知の反応条件に従えばよい。例えば、特表2001−506261号公報に記載の方法に従って反応を行えばよい。
【0029】
2.
工程(1)
本発明の工程(1)は、上記した原料化合物を気相状態で熱分解させることにより、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスを得る工程である。
【0030】
(i)触媒
触媒としては、気相における熱分解反応に対して活性を有する触媒であれば特に限定無く用いることができる。この様な触媒としては、金属酸化物、フッ素化された金属酸化物、金属フッ化物等を挙げることができ、これらを一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0031】
これらの内で、金属酸化物としては、アルミナ、酸化クロム、酸化チタン、酸化亜鉛、等が好ましい。また、これらの金属酸化物の一部をフッ素化したフッ素化金属酸化物を用いることもできる。前記フッ素化金属酸化物触媒は、あらかじめ金属酸化物触媒をフッ化水素などを用いてフッ素化したものであってもよく、本発明の製造方法の反応過程において、その一部がフッ素化された金属酸化物触媒を使用してもよい。金属フッ化物としては、AlF
3、TiF
4、CrF
3及びZnF
2等が好ましい。
【0032】
金属酸化物の中でも、アルミナが好ましく、α-アルミナ及び活性アルミナなどを使用できる。活性アルミナとしては、ρ-アルミナ、χ-アルミナ、κ-アルミナ、η-アルミナ、擬γ-アルミナ、γ-アルミナ、δ-アルミナ及びθ-アルミナなどが使用される。これらの中でもγ-アルミナ及びη-アルミナが好ましく、γ-アルミナが特に好ましい。また、複合酸化物としてシリカアルミナ(SiO
2/Al
2O
3)も触媒として用いることができる。シリカアルミナのシリカSiO
2の組成は、20重量%〜90重量%が好ましく、50重量%〜80重量%がより好ましい。
【0033】
触媒の細孔容積は大きいほど活性が高く、0.4ml/g以上であることが好ましく、0.5ml/g以上であることが特に好ましい。触媒の細孔容積の上限は特に限定されないが、通常、5ml/g以下であり、反応速度および触媒強度の点で、好ましくは2ml/g以下である。細孔容積は、ガス吸着法、水銀圧入法などで測定できる。
【0034】
また、触媒にKF、NaF及びMgF
2などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属のフッ化物を担持してもよい。
【0035】
上記したフッ素化された金属酸化物を得る方法については特に限定はないが、例えば、加熱下において、上記した金属酸化物を無水フッ化水素またはフロンと接触させることによって、フッ素化反応が進行してフッ素化された金属酸化物を得ることができる。金属酸化物とフッ化水素とを接触させる方法については特に限定的ではなく、触媒を充填した反応管中にフッ化水素を流通させる連続法でもよく、触媒を収容した容器にフッ化水素またはフロンを封入するバッチ式でもよい。特に、流通方式は、処理時間が短い点で好ましい。
フロンは、フッ素原子の数が多く、炭素原子の数が少ないものが好ましい。例えば、トリフルオロメタン、ジフルオロクロロメタン、オクタフルオロエタンなどがあげられる。
【0036】
金属酸化物のフッ素化の程度については、特に限定的ではないが、フッ素化された金属酸化物全体の重量を基準として、フッ素含有率が5〜50重量%程度であることが好ましい。
【0037】
金属酸化物のフッ素化処理の温度は、後述する熱分解反応より高温であることが好ましく、例えば、150〜500℃程度が好ましく、200℃〜400℃程度がより好ましく、250℃〜350℃程度が更に好ましい。フッ素化処理の温度が低すぎるとフッ素化が不十分であるために触媒の効果が小さく、処理温度が高すぎると耐熱材料が特別に必要になるために実用的でない。
【0038】
(ii)熱分解反応条件
含フッ素メチルエーテルの熱分解反応は、上記した触媒の存在下で、含フッ素メチルエーテルを気相状態で触媒に接触させることによって進行させることができる具体的な方法については特に限定的ではないが、例えば、管型の流通型反応器を用い、該反応器に上記した触媒を充填し、原料として用いる含フッ素メチルエーテルを該反応器に導入して、気相状態で触媒に接触させる方法を挙げることができる。
【0039】
熱分解反応の温度については、低すぎると原料の転化率が低下し、高すぎると不純物が多くなる傾向がある。このため、100℃〜400℃程度とすることが好ましく、100℃〜300℃程度とすることがさらに好ましく、100℃〜250℃程度とすることが特に好ましい。
【0040】
熱分解反応時の反応管内の圧力は、低すぎると空気の混入の可能性などがあるので操作上煩雑になり、高すぎると機器の耐圧を考慮する必要があり、漏えいの可能性も高くなる。これらの点から、0.05〜1MPa程度とすることが好ましく、0.1〜0.5MPa程度とすることが好ましく、特に、反応操作上、大気圧(約0.1MPa)程度の圧力が好ましい。
【0041】
反応させるための接触時間については特に限定的ではないが、反応管に供給する原料ガスである含フッ素メチルエーテルの流量F(0℃、一気圧(約0.1MPa)での流量:cc/sec)に対する触媒の充填量W(g)の比率:W/F(g・sec/cc)で表される接触時間を、1〜100g・sec/cc程度とすることが好ましく、1〜50g・sec/cc程度とすることがより好ましい、5〜30g・sec/cc程度とすることが更に好ましい。接触時間が長すぎると、生成物を得るのに長時間を要するので、生産量を上げるためには接触時間を短くすることが好ましいが、接触時間が短すぎると、転化率が下がる傾向がある。このため、使用する触媒の種類、触媒量、反応条件などに応じて、原料の転化率と目的物の選択率の点から最も生産性が高くなる接触時間を選べばよい。通常は、使用する触媒の種類、触媒量、反応条件などに応じて、転化率が100%になる接触時間を選択して反応を行うことが望ましい。
【0042】
(iii)混合ガス
工程(1)により、フッ化メチル及び酸フルオリドを含む混合ガスが得られる。混合ガスには、目的物であるフッ化メチル(沸点−79℃)に加えて、同時に熱分解により生成する酸フルオリドを含んでおり、さらに、原料化合物及び副生成物、並びに不純物のいずれか少なくとも一種を含んでいてもよい。原料化合物によっても異なるが、副生成物としては、例えば、プロペン(沸点−47.7℃)、塩化メチル(沸点−24℃)、五フッ化プロペン(沸点−21.1℃)及びプロパン(沸点−1.4℃)等が挙げられる。
【0043】
3.
工程(2)
本発明の工程(2)は、前記工程(1)で得られた混合ガスを精留することによりフッ化メチルを得る工程である。
【0044】
これにより、分留操作や、水洗又はアルコールによる酸フルオリドの除去等を精製の前に予め行う必要がなく、簡便にフッ化メチルを酸フルオリドから分離できる。
【0045】
酸フルオリドは、例えば3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパノイルフルオライドの沸点が32℃であるように、通常、沸点が室温以上であり、フッ化メチル(沸点−79℃)より相当沸点が高い。混合ガスにはフッ化メチルと酸フルオリドがモル比1:1で存在している。混合ガスをそのまま室温近辺の環境下に置くと、酸フルオリドが凝縮することが予想されるところ、本発明者らは、意外にも、これら二成分間に相互作用が生じ、混合ガスが全体として室温近辺でも(所定圧力条件下では)凝縮しないガスとしてふるまうという現象を見出した。本発明ではこの知見を利用して、この混合ガスをそのまま精留操作に供して、フッ化メチルを効率的に分離することができる。
【0046】
工程(2)においては、好ましくは、前記工程(1)で得られた混合ガスを精留塔に供給する。この供給を、大気圧を超える圧力で行うことが好ましい。これにより、精留塔に混合ガスを送り込むことが容易になる。このときの圧力は、0.2MPa〜0.15MPaであればより好ましい。この範囲内の圧力であれば、混合ガスの凝縮を避けつつ、精留塔に効果的に混合ガスを供給することができる。反応後のガスの温度が高いほど高い圧力で精留塔に反応ガスを送り込むことができる。通常は圧縮機にて反応後のガスを精留塔に送ることが多い。また、精留塔の温度を冷却することにより、精留塔の圧力が下がるため、圧縮機のガスの吸入側と排出側との圧力差が生まれやすくなり、精留塔に混合ガスを供給しやすくなる。精留塔の冷却において特に液が溜まっている精留塔の釜を冷却することで精留塔の圧力を下げる効果が大きくなり、精留塔への混合ガスの供給が容易になる。
【0047】
精留は、特に限定されないが、通常、精留塔を二つ設け、最初の精留塔においてメタン又はエチレン等の低沸点成分を塔頂部から抜き出し、残りのフッ化メチル及び酸フルオリドを含む成分を塔底部から得て、これをさらに二つ目の精留塔に供して、塔頂部からフッ化メチルを抜き出すことができる。この際、二つの精留塔の塔頂部から最終的に得られるフッ化メチルの純度は、99.999重量%以上である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0049】
150℃に加熱したγ−アルミナ触媒を充填した反応器に、1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルをガス状態で流入し熱分解させた。熱分解反応後のガスを0.15MPaの圧力をかけて、冷却した第一精留塔に捕集した。捕集した反応ガスの組成は、以下の通りであった。
メタン0.002mol%
エチレン0.0036mol%
フッ化メチル46.17mol%
プロピレン0.0092mol%
1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル7.58mol%
酸フルオリド46.17mol%
その他成分0.0652mol%
第一精留塔でメタン及びエチレンなどの低沸点化合物を除去した後、残りの成分を第二精留塔に移送した。第二精留塔で精製して精留塔の塔頂からフッ化メチルを抜出し捕集した。得られたフッ化メチルの純度は99.999mol%であった。フッ化水素などの酸分や水分が発生しないため、酸分除去のための水洗塔、アルカリ塔及び水分除去のためのモレキュラーシーブスなどの入った乾燥塔等がいずれも不要であった。
【0050】
第二精留塔の精留釜に残った高沸点成分はそのままステンレス配管を通して焼却炉に導入し分解処理することができた。
【0051】
<比較例1>
実施例と同じようにして得られた熱分解反応後の反応ガスを、水洗塔、5%水酸化カリウム水溶液の入ったアルカリ塔及びモレキュラーシーブスの入った乾燥塔に順次通過させた。その後、第一精留塔に移送した。第一精留塔で、メタン及びエチレンなどの低沸点化合物を除去した後、残りの成分を第二精留塔に移送した。第二精留塔で還流させながら精製して精留塔の塔頂からフッ化メチルを抜出し捕集した。得られたフッ化メチルの純度は99.999mol%であった。
【0052】
しかし、この比較例1の方法では、水洗塔及びアルカリ塔の追加設備が必要になり設備費が高くなっただけでなく、水洗塔及びアルカリ塔には未反応の1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルと酸フルオリドとが加水分解してできたカルボン酸及びフッ化水素酸を含んだ混合溶液が蓄積した。この廃棄物は、有機物と水溶物との混合溶液であるため、産業廃棄物として処理にしにくいという問題がある。また、この廃液は酸性度が高く金属を腐食させるため、ステンレスなどの金属配管にそのまま通すことができず、焼却炉に移送することが困難であった。この廃液を移送するためにはフッ素樹脂などのライニングした配管または容器が必要になった。またこの廃液は水分を多量に含んでいるため、燃焼させるのに余分なエネルギーを要した。
【0053】
<比較例2>
実施例と同じようにして得られた熱分解反応後の反応ガスを、メタノール水溶液の入った吸収塔及びモレキュラーシーブスの入った乾燥塔に順次通過させた後、第一精留塔に移送した。第一精留塔で、メタン及びエチレンなどの低沸点化合物を除去した。その後、残りの成分を第二精留塔に移送した。第二精留塔で還流させながら精製して精留塔の塔頂からフッ化メチルを抜出し捕集した。得られたフッ化メチルの純度は99.999mol%であった。
【0054】
しかし、多量のメタノール及び吸収塔の追加設備も必要になり、薬剤費と設備費が高くなっただけでなく、吸収塔には、未反応の1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルと酸フルオリドとがメタノールと反応してできたエステル及びフッ化水素を含んだ混合溶液が蓄積した。この廃棄物は、有機物であるがフッ化水素を含むため産業廃棄物として処理にしにくい問題が生じた。この廃液は有機物が主成分であるため酸性度は高くないが、フッ化水素が徐々に金属を腐食させるため、長時間、ステンレスなどの金属配管に流すことができず、焼却炉に移送することが困難であった。この廃液を移送するためにはフッ素樹脂などのライニングした配管または容器が必要になった。またこの廃液はフッ化水素を多量に含んでいるため、燃焼させるのに余分なエネルギーを要した。