特許第6261565号(P6261565)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローディア オペレーションズの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261565
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】フルオロポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20180104BHJP
   C08J 3/02 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180104BHJP
   C09D 127/16 20060101ALI20180104BHJP
   C09D 127/20 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08J3/02 ZCEW
   C09D7/12
   C09D127/16
   C09D127/20
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-506060(P2015-506060)
(86)(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公表番号】特表2015-520255(P2015-520255A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】CN2012074101
(87)【国際公開番号】WO2013155659
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】チョン, シューチン
(72)【発明者】
【氏名】ブールデッテ, アルノー
【審査官】 中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−003406(JP,A)
【文献】 特開2008−184608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08J 3/00−3/28
C08K 3/00−13/08
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I)
C(=O)NR (I)
(式中、
− Rは水素又は脂肪族飽和基であり、前記脂肪族飽和基は−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NR(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)のうちの1つ以上の官能基で最終的に置換されている、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐であってもよい脂肪族飽和基であり、
− R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基であり、
、R及びRは、−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NR(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)のうちの1つ以上の官能基で最終的に置換されている4〜6個の炭素原子を含む環を形成することができる)
の化合物と
b)ジメチルスルホキシド(DMSO)と、
の溶媒ブレンド物を含む、フルオロポリマーを可溶化するための組成物。
【請求項2】
が式−Z−C(=O)OR’の基であり、式中、Zは2〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の二価のアルキレン基であり、R’は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(I)の化合物が、MeO(O=)C−Z−C(=O)NRであり、式中、Z、R、及びRは上で定義したとおりである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(I)の化合物が、
− Rが−CH(CH−CH)−CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
− Rが−CH−CH(CH−CH)−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
− Rが−CH(CH)−CH−CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物、及び
− Rが−CH−CH−CH(CH)−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
を含むブレンド物である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ブレンド物が、Rが−(CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物も含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の化合物が、RNC(=O)−Z−C(=O)NRであり、式中、R、R、R及びRは上で定義したとおりである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の化合物が、
− RO(O=)C−Z−C(=O)NRと、
− RNC(=O)−Z−C(=O)NRと、
のブレンド物であり、式中、R、R、R、R、R及びZは上で定義したとおりである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(I)の化合物とDMSOとの重量比が1/99〜99/1である、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
可溶化したフルオロポリマーを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記フルオロポリマーが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、並びにフッ化ビニリデン(VDF)とコモノマーであるヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とのコポリマーである、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記フルオロポリマーの量が0.1〜15重量%である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
−式(I)の化合物とジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を製造する工程と、
−撹拌下、フルオロポリマー中に溶媒ブレンド物を入れる工程と、
−室温以上100℃以下の温度で混合物を加熱する工程と、
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項13】
−式(I)の化合物とジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を製造する工程と、
−室温以上100℃以下の温度で溶媒ブレンド物を加熱する工程と、
−溶媒ブレンド物中にフルオロポリマーを入れる工程と、
を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【請求項14】
−混合物を冷却する工程、
を更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
膜、発泡体、バインダーを製造するための原材料としての、又は基材をコーティングするための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
基材の一面若しくは二面上に、又はその一部に、請求項1〜11のいずれか1項に記載の本発明の組成物を塗布する工程と、前記溶媒を除去する工程とを含む、基材のコーティング方法。
【請求項17】
前記基材が電池セパレータ材料である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
太陽電池パネル基材から及びワイヤーコーティングから回収されるフルオロポリマーのリサイクルの分野での、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
リチウムイオン電池用の正極電極及び負極電極のスラリー製造工程で使用されるバインダー材料としての、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルオロポリマーを可溶化するための組成物に関する。本発明は、得られるフルオロポリマー組成物、その製造方法、及びその使用にも関する。本発明はコーティング用途へのフルオロポリマー組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデンなどのフルオロポリマーは、多くの技術分野で見られる。
【0003】
テトラフルオロエチレンの合成フルオロポリマーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、フライパンや他の調理器具の焦げ付き防止コーティングとして、ケーブル及びコネクタ部品の絶縁材として、及びマイクロ波周波数で使用されるプリント回路基板用の材料として、使用されている。これは、反応性及び腐食性の化学薬品用のコンテナや配管で使用されることも多い。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、配管製品、シート、チューブ、フィルム、プレート、膜、粉体塗装、発泡体、及び配線用絶縁材料として使用することができる。これは、射出、成型、あるいは溶接することができ、化学製品、半導体、太陽電池パネルにおいてのみならず、リチウムイオン電池でも一般的に用いられている。
【0005】
様々な用途で、特にはフルオロポリマーが電池に用いられる場合や水濾過用の膜を作製するために用いられる場合に、フルオロポリマーを可溶化させる工程が存在することがある。
【0006】
バッテリー駆動の電子装置の需要増加に伴って、高い比エネルギーを有する再充電可能な電気化学電池の需要が増大している。
【0007】
リチウムイオン二次電池は、従来のニッケルカドミウム二次電池と比較して高い電圧と大きい容量を有している。特に、正極活物質としてLiCoOやLiMnなどのリチウム遷移金属複合酸化物を使用し、負極活物質としてグラファイトや炭素繊維などの炭素質材料を使用した場合、高電圧かつ大容量とすることができ、また短絡などの副作用が起こらない。そのため、リチウム二次電池は、携帯電話やノートパソコンやデジタルカメラなどのモバイル電子機器用の電源として広く用いられている。
【0008】
リチウム二次電池は、一般的には金属フィルム上に活物質とポリマーバインダーとからなるスラリーを塗布し、スラリーを乾燥し、フィルムを加圧することで製造される。バインダーとして様々な樹脂が用いられてきたが、一般的には、材料集電体及び活物質によく接着する、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系樹脂が使用されている。
【0009】
スラリーを製造するためには、通常はポリマーバインダーを溶媒に溶解させ、溶媒中に約1〜15%のバインダーが含まれる溶液を作る。典型的にはバインダー溶液はN−メチルピロリドン(NMP)を用いて製造される。NMPが最も有効であると考えられている。
【0010】
しかし、作業者と環境に対する安全面のリスクが恒常的な懸念点である。
NMPは、欧州で2009年6月からMutagen Cat2/Reprotoxic R61に分類され、またNMPは有害化学物質排出目録(Toxic Release Inventory)での報告対象となっている(SARA タイトルIII セクション313)。良好な安全性及び/又は環境プロファイルを示す他の溶媒が必要とされている。
【0011】
中国特許出願公開第1277236−A号明細書及び中国特許第1120210−C号明細書では、ポリフッ化ビニリデン樹脂3〜15重量%と、N−メチルピロリドン又はジメチルアセトアミド85〜95重量%と、カップリング剤としてのγ−アミノプロピルトリエトキシシリコーン又はγ−プロピルメタクリレートトリメトキシシリコーン又はエチルアミノアミドプロピルトリメトキシシリコーン1〜5重量%とからなる接着剤処方が開発されている。
【0012】
米国特許出願公開第2005/048368−A1号明細書、特開2005−072009−A号公報、中国特許出願公開第1591939−A号明細書、韓国特許出願公開第2005/023179−A号明細書、及び中国特許第100411232−C号明細書はセパレータ 処方に関するものであり、使用されている有機溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセテート、アセトン、及び/又はN−メチル−2−ピロリドンからなる。ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドもCMR(発癌性物質/変異原性物質/生殖毒性物質)に分類されている。
【0013】
韓国特許出願公開第2003/047038−A号明細書では、リチウム電池用の複合バインダーが開発されている。複合電極バインダーには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリイミドが含まれている。好ましくは、ポリイミドはピロメリット酸二無水物と4,4’−ジアミノフェニルエーテルとを1/1の割合で混合し、この混合物をN−メチルピロリドンに溶解させることによって製造される20%ポリイミド溶液である。
【0014】
特開2002−246029−A号公報、国際公開第2002/73720−A2号パンフレット、AU特許出願公開第2002/257642−A1号明細書及びAU特許出願公開第2002/257642−A8号明細書には、特定の有機溶媒に溶解するフッ素樹脂Aと、その有機溶媒に全く溶解しないか部分的に溶解しないフッ素樹脂Bとを含む新規なバインダー組成物が記載されている。フッ素樹脂Aは、その8重量%のN−メチルピロリドン溶液が0.3〜20Pa.sの粘度を有するフルオロポリマーA1と、極性基が組み込まれているフルオロポリマーA2とを含有している。A/Bの重量比は99/1〜1/99である。
【0015】
リチウム電池用のポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)を主成分とする膜が、Journal of Membrane Science(2008),310(1+2),349〜355に開示されている。ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF−HFP)コポリマー膜は、添加剤としてのポリ(エチレングリコール)と、溶媒としてのTHF、アセトン、又はDMFとを用いた転相によって作製される。
【0016】
液体溶媒中で膨潤した、ポリ(フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−プロピレン)/Super−Sカーボンブラックの、リチウムイオン電池用の電極バインダーとしての機械特性及び電気特性は、Journal of Applied Polymer Science(2004), 91(5),2958〜2965に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
様々な用途において、フルオロポリマー溶液を製造するための、より健康的で、より安全であり、より優れた環境プロファイルを有する溶媒を見出すことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的及びその他の目的は本発明の手段によって達成され、したがってその主題は、少なくとも
a)式(I)
C(=O)NR (I)
(式中、
− Rは水素又は脂肪族飽和基であり、この脂肪族飽和基は−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NRなど(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)の1つ以上の官能基で最終的に置換されている、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐であってもよい脂肪族飽和基であり、
− R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基であり、
、R及びRは、−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NRなど(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)の1つ以上の官能基で最終的に置換されている4〜6個の炭素原子を含む環を形成することができる)
の化合物と、
b)ジメチルスルホキシド(DMSO)と、
の溶媒ブレンド物を含有する組成物、特にはフルオロポリマーを可溶化するための組成物である。
【0019】
本発明で使用される溶媒ブレンド物は、CMR化学物質を含まず、良好なHSEプロファイルを示す。したがって、人間の健康及び環境に対するリスクが大幅に低減される。そのため、本発明によって、CMRに分類されていない溶媒を用いてフルオロポリマーを可溶化することができる。
この溶媒ブレンド物は、フルオロポリマーに対する優れた溶解力を有している。
【0020】
溶媒ブレンド物はDMSOよりも低い凝固点を有しており、この用途に非常に都合がよい。DMSOの凝固点は室温付近と高く(18℃)、凝固する可能性があることから、これは非常に有利である。更に、本発明のブレンド物は水に可溶である。
【0021】
本発明の別の主題は、可溶化させたフルオロポリマーと、上述したような溶媒ブレンド物と、場合により臭気マスキング剤及び/又は凍結防止剤とを含有する、その得られる組成物でもある。
【0022】
用語「フルオロポリマー組成物」は、本発明においてはこの得られる組成物を定義するために使用される。本発明に従って得られるフルオロポリマー組成物は、溶液の形態であってもゲルの形態であってもよい。
【0023】
「ゲル」は、少なくとも2つの成分からなる固体であり、その1つ(ポリマー)が他の成分(溶媒)媒体中で3次元ネットワーク構造を形成しており、ゲルが弾性特性を保持するためには最小限の液体で十分である。物理的ゲルの一般的な特徴は降伏点の存在である。
【0024】
したがって、本発明はフルオロポリマーの溶液及び/又はゲルの製造のための溶媒ブレンド物を提示する。
【0025】
本発明との関係においては、用語「溶液」には「ゲル」が包含されているものとする。
【0026】
本発明は、可溶化したフルオロポリマーを含有する組成物及びその製造方法にも関する。
【0027】
本発明は、基板上に膜又はコーティングを作製するための、特には電池材料のコーティング用バインダーポリマーとしての、この組成物の使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の主題は、上述したような、フルオロポリマーを可溶化させるための組成物である。
【0029】
本発明の別の主題は、可溶化したフルオロポリマーと上述したような溶媒ブレンド物とを含有するフルオロポリマー組成物である。
【0030】
この組成物は、典型的には0.1〜15重量%のフルオロポリマーを含有する。
【0031】
この組成物は、室温で、好ましくは27℃で、通常1000cPより低い粘度を有する。
【0032】
フルオロポリマーがPVDFの場合、PVDFが本発明の溶媒ブレンド物中にある、この得られた溶液は、室温で好ましくは250〜400cP、より好ましくは300〜400cPの範囲の粘度を有する。
【0033】
フルオロポリマー
本発明の組成物に含まれているポリマーはフルオロポリマーである。
【0034】
フルオロポリマーに関して、これは、重合するために開くことができるビニル結合を含み、この二重結合に直接結合している少なくとも1つのフッ素原子、1つのフルオロアルキル基、又は1つのフルオロアルコキシ基を有しているモノマーから選択される少なくとも1種のフルオロモノマーを、ポリマー鎖中に50重量%より多く、好ましくは75重量%より多く有するポリマーを意味する。
【0035】
フルオロポリマーは、ホモポリマーであってもよいし、フッ素原子で完全に置換されたオレフィンモノマーから、又は、1つのモノマーにつきフッ素原子と、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子のうちの少なくとも1つとの組み合わせによって完全に置換されたオレフィンモノマーから少なくとも部分的に誘導されたコポリマーであってもよい。
【0036】
フルオロホモポリマー又はフルオロコポリマーの例は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、及びブロモトリフルオロエチレン由来のポリマー又はコポリマーである。
【0037】
このようなフルオロポリマーは、例えばフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、及びパーフルオロ(メチルビニル)エーテル又はパーフルオロ(エチルビニル)エーテルなどのビニルパーフルオロアルキルエーテル等の、少なくとも炭素原子と同じ数のフッ素原子を含む他のエチレン性不飽和モノマー由来の繰り返し単位も含んでいてもよい。
【0038】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ポリマー(ホモポリマー又はそのコポリマー)が特に好ましい。
【0039】
フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのコモノマーとのコポリマーであってもよい。コモノマーは有利にはHFPである。
【0040】
PVDFは、重量基準で少なくとも50%、より優先的には少なくとも75%、更に優先的には少なくとも85%のVDFを含む。
【0041】
コモノマーの量は典型的には0〜25重量%、好ましくは0〜10重量%とすることができる。
【0042】
このような適切なPVDFポリマーの例としては、Arkema社から入手可能なKynar 301F、Kynar 741、及びKynar 461、並びに、Solvay社から入手可能なSolef 6020及びSolef 5130が挙げられる。
【0043】
フルオロポリマーはホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、これはエチレンやプロピレンなどの非フッ化モノマーも好ましくは25%未満の量で含んでいてもよい。
【0044】
本発明は、フルオロポリマーが、少量(50重量%未満)の別のポリマー(ポリウレタン、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、グリコールジアクリレート、及びこれらの組み合わせなど)と混合されている場合を包含する。
【0045】
溶媒
式(I)の化合物とDMSOとの重量比は、好ましくは1/99〜99/1であり、好ましくは20/80〜80/20であり、好ましくは70/30〜30/70である。これらの比率にすることで良好なHSEプロファイルだけでなく良好な特性も得られる。
【0046】
溶媒ブレンド物は追加的な溶媒を含有していてもよい。
【0047】
追加的な溶媒の例としては、
−脂肪族炭化水素、より詳しくは、特にはペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、又はシクロヘキサンなどのパラフィン;ナフタレン;芳香族炭化水素、より詳しくは、特にはベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、及びアルキルベンゼンの混合物からなる石油留分などの芳香族炭化水素、
−脂肪族又は芳香族のハロゲン化炭化水素、より詳しくは、特にはテトラクロロエチレンやヘキサクロロエタンなどのパークロロ化炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ぺンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1−クロロブタン、1,2−ジクロロブタンなどの部分的に塩素化された炭化水素;モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、又は、異なるクロロベンゼン類の混合物、
−脂肪族、脂環式、又は芳香族のエーテルオキシド、より詳しくは、ジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルtertブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
−エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル、
−エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル、
−メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール、
−アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン、
−イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ−ブチロラクトンなどの直鎖又は環状のエステル、
−N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、又はN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの直鎖又は環状のカルボキサミド、
−例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチル、炭酸エチルメチル、炭酸エチレン、炭酸ビニレンなどの有機炭酸塩、
−リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチルエチルなどのリン酸エステル、
−テトラメチル尿素、テトラエチル尿素などの尿素、
が挙げられる。
【0048】
追加的な溶媒の量は、好ましくは式(I)の化合物及び/又はDMSOの量よりも少ない量である。追加的な溶媒の量は、好ましくは溶媒総量の50重量%よりも少なく、好ましくは25%よりも少ない。
【0049】
本発明のある実施形態では、追加的な溶媒は少量であることが好ましい。
【0050】
本発明のある実施形態では、溶媒はCMRフリーで、実質的にNMP、DMF、DMACを含まないように選択される。
【0051】
本発明のある実施形態では、溶媒は実質的に追加的な溶媒を含まない。
【0052】
式(I)の化合物
本発明によれば、組成物は少なくとも式(I)
C(=O)NR (I)
(式中、
− Rは水素又は脂肪族飽和基であり、この脂肪族飽和基は−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NRなど(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)の1つ以上の官能基で最終的に置換されている、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐であってもよい脂肪族飽和基であり、
− R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基であり、
、R及びRは、−OH、−OR、−C(=O)OR、及び−C(=O)NRなど(Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R及びRは同じであるか又は異なり、メチル基又はエチル基である)の1つ以上の官能基で最終的に置換されている4〜6個の炭素原子を含む環を形成することができる)
の化合物を含む。
【0053】
は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の脂肪族非環式飽和基を表す。より好ましくは、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルであってもよい。これらのアルキル基が分岐している場合又は置換されている場合、イソプロピル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、及び1−メチルペンチルも挙げることができる。
【0054】
炭化水素化鎖には、OやSなどの1つ以上のヘテロ原子、又は、カルボニルなどの1つ以上の官能基が最終的に挿入されていてもよく、あるいは、ホルミル基などの1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0055】
は同様に3〜6個の炭素原子、より好ましくは5〜6個の炭素原子を有する環状基を表していてもよい。シクロペンチル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0056】
本発明によれば、RとRとが又はRとRとが一体に環を形成する場合、前記環は同様に−CON−基を含んでいてもよい。
【0057】
が式−Z−C(=O)OR’の基(Zは2〜5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の二価のアルキレン基であり、R’はメチル基などの1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である)である式(I)の化合物が好ましい。
【0058】
式(I)の化合物は、式MeO(O=)C−Z−C(=O)N(式中、Z、R、及びRは上で定義したとおりである)の化合物であってもよい。好ましくは、式(I)の化合物は、式MeO(O=)C−Z−C(=O)NR(式中、R、及びRは上で定義したとおりであり、Zは2〜4個の炭素原子を有する分岐アルキル基である)の化合物である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物は、
− Rが−CH(CH−CH)−CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
− Rが−CH−CH(CH−CH)−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
− Rが−CH(CH)−CH−CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物、及び
− Rが−CH−CH−CH(CH)−C(=O)OMeである式(I)の化合物、
を含むブレンド物である。
【0060】
前記ブレンド物は、Rが−(CH−C(=O)OMeである式(I)の化合物も含有していてもよい。
【0061】
この時、本発明の組成物は、式MeO(O=)C−(CH−C(=O)NR(式中、R、及びRは上で定義したとおりである)である式(I)の化合物を含んでいてもよい。
【0062】
組成物は、RNC(=O)−Z−C(=O)NR(式中、R、R、R、及びRは上で定義したとおりである)のような式(I)の化合物も含有していてもよい。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、Rは水素である。
【0064】
本発明の別の実施形態によれば、Rは1−ヒドロキシエチル基である。
【0065】
本発明のある実施形態によれば、R及びRはメチル基である。
【0066】
この時の本発明の化合物(I)の具体的な群は、式RC(=O)NMeのものである。
【0067】
本発明の別の実施形態によれば、R及びRが一体に環を形成し、前記環が4個の炭素原子を有し、カルボニル炭素原子を含み、Rがメチル基であるとされていてもよい。
【0068】
式(I)の化合物は特には国際公開第2009/092795号パンフレットに記載されている方法に従って製造することができる。
【0069】
式(I)の化合物は,
− RO(O=)C−Z−C(=O)NRと、
− RNC(=O)−Z−C(=O)NRと、
のブレンド物であってもよい。
【0070】
好ましい式(I)の化合物の1つは、Rhodia社のRhodiasolv(登録商標) Polarcleanとして知られる、ペンタン酸,5−(ジメチルアミノ)−2−メチル−5−オキソ−,メチルエステル(CAS番号:1174627−68−9)(R=R=CH、R=−Z−COOMe、Zは分岐のアルキレンC4基)である。
【0071】
溶媒ブレンド物
本発明は、本発明を実施するために特に有用な溶媒混合物にも関する。
【0072】
混合物(あるいはブレンド物)中の式(I)の化合物とDMSOとの重量比は1/99〜99/1であり、好ましくは20/80〜80/20であり、好ましくは70/30〜30/70である。
【0073】
溶媒には、式(I)の化合物及びDMSOとは別に、上述したような追加的な溶媒が含まれていてもよい。追加的な溶媒の量は、好ましくは式(I)の化合物及び/又はDMSOの量よりも少ない量である。追加的な溶媒の量は、好ましくは溶媒総量の50重量%よりも少なく、好ましくは25%よりも少ない。
【0074】
組成物は、エステル、アルデヒド、アルコール、炭化水素、及び/又はケトンを含む化合物などの臭気マスキング剤を含有していてもよい。臭気マスキング剤はブレンド物中に含まれていてもよく、式(I)の化合物/DMSOブレンド物と臭気マスキング剤との重量比は0.1/99.9〜1/99であることが好ましい。
【0075】
組成物は凍結防止剤、特には例えばエチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコール系凍結防止剤も含有していてもよい。凍結防止剤は含まれていてもよく、式(I)の化合物/DMSOブレンド物と凍結防止剤との重量比は1/99〜10/99であることが好ましい。
【0076】
フルオロポリマー組成物の製造方法
本発明の別の目的は、「フルオロポリマー組成物」と呼ばれる、フルオロポリマーを含む組成物の製造方法である。
【0077】
本発明の組成物は、
−式(I)の化合物とジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を製造する工程と、
−撹拌下、フルオロポリマー中に溶媒ブレンド物を入れる工程と、
−混合物を15〜100℃に含まれる温度で加熱する工程と、
を含む方法に従って製造される。
【0078】
この操作は有利には30〜80℃で行われる。
【0079】
温度はフルオロポリマーが可溶化するまで維持される。
【0080】
この工程の終わりに、得られた組成物は通常室温まで冷却される。
【0081】
本発明の別の実施形態によれば、フルオロポリマー組成物の製造方法は、
−式(I)の化合物とジメチルスルホキシドとを混合することによって溶媒ブレンド物を製造する工程と、
−溶媒ブレンド物を15〜100℃に含まれる温度で加熱する工程と、
−溶媒ブレンド物中にフルオロポリマーを入れる工程と、
を含む。
【0082】
温度はフルオロポリマーが可溶化するまで維持される。
【0083】
この工程の終わりに、得られた組成物は通常室温まで冷却される。
【0084】
使用
本発明の溶媒ブレンド物は、フルオロポリマー材料の使用、好ましくはPVDFの使用に溶媒ルートが好ましいいずれの場合にも使用することができる。
【0085】
本発明の溶媒ブレンド物の別の用途は、フルオロポリマー、特にはPVDFのリサイクルの分野にある。したがって、PVDFを太陽電池パネルの基板やワイヤーコーティングから回収することができる。
【0086】
本発明の溶媒ブレンド物から得られるフルオロポリマー組成物は、例えば、膜や発泡体を製造するための、若しくは、基材をコーティングするための原材料として、又はバインダーとして、使用することができる。
【0087】
コーティングすることができる基材の例としては、金属(シート、フィルム、ワイヤー)、プラスチック、織物、ガラスなどが挙げられる。
【0088】
本発明は、本発明のフルオロポリマー組成物を基材の一面若しくは二面又は基材の一部に塗布する工程と、溶媒を除去する工程とを含む、基材をコーティングするための方法も提供する。
【0089】
溶媒の除去は、例えば温度を上げて蒸発させることによって、又は例えば水などの追加的な非溶剤を用いた転相技術によって、行うことができる。
【0090】
1つの具体的な用途はコーティングされた電池セパレータの製造方法である。
【0091】
セパレータ材料は、下に記載のようにコーティングされた、多孔質ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、又はこの2つの組み合わせから構成されていてもよい。
【0092】
他の可能なセパレータ材料としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ナイロン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
コーティングされた電池セパレータを製造するための本発明の方法は、
−セパレータ材料を準備する工程と、
−本発明のフルオロポリマー組成物をセパレータの一面若しくは二面又はセパレータの一部に塗布する工程と、
−溶媒を除去する工程と、
を含む。
【0094】
フルオロポリマー組成物は一回にセパレータ材料の片面に塗布されてもよく、別の実施形態では、両面に同時に塗布されてもよい。
【0095】
セパレータ材料の片面は本発明のフルオロポリマー組成物で一度にコーティングされてもよい。その後、このコーティングしたセパレータを溶媒の蒸発によって乾燥させることで、セパレータ材料の片面に多孔質フルオロポリマーコーティングが形成される。第1の面のコーティングの後、同じ方法を再び用いてセパレータの第2の面がコーティングされる。
【0096】
好ましい実施形態では、セパレータ材料をフルオロポリマー組成物の浸漬槽に通すことでセパレータを両面同時にコーティングしてもよい。コーティングされたセパレータ材料はその後蒸発によって乾燥される。
【0097】
乾燥後、セパレータ上にフルオロポリマーの多孔質コーティングが得られる。
【0098】
本発明は、本発明に従ってコーティングされたセパレータを有する電池の製造方法も提供する。
【0099】
本発明にかかる電気化学電池、特にはリチウム電池は、多孔質コーティングセパレータを他の電気化学電池の構成要素と共に用いることで製造することができる。
【0100】
リチウムイオン電池の3つの基本的な機能的構成要素は、負極と正極と電解液である。従来のリチウムイオン電池の負極は炭素(グラファイト)から作られる。正極は金属酸化物(例えばコバルト又はマンガンの二酸化物)である。電解液は典型的にはリチウムイオン錯体を含有する有機溶媒の混合物である。
【0101】
本発明にかかるリチウムイオン電池のための試料液状電解液組成物には、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジプロピル、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、及びこれらの組み合わせなどの溶媒と、カチオンとしてLi、アニオンとしてPF6−、AsF6−、BF4−、ClO4−、CFSO3−、N(CFSO2−のうちの1つを有するリチウム塩とが含まれていてもよい。
【0102】
簡潔には、本発明は、フルオロポリマーが多孔質電池セパレータ材料に塗布される電気化学電池の製造方法を提供する。
【0103】
本発明にかかるフルオロポリマー組成物は、フルオロポリマーを溶解し、これをセパレータにコーティングするために、良好なHSEプロファイルを有する高沸点溶媒を用いて配合されている。
【0104】
PVDFなどのフルオロポリマー材料は、リチウムイオン電池用の正極電極と負極電極のスラリー製造工程で用いられるバインダー材料として使用することもできる。正極電極は典型的には活物質粉末と、バインダー粉末と、溶媒と、添加剤とを混合してスラリー又はペーストにし、このスラリーを塗布装置へ送ることによって作られる。負極電極も同様に、典型的には活物質としてのグラファイトを、バインダー、溶媒、及び添加剤と共に混合してスラリー又はペーストにし、このスラリーを塗布装置へ送ることによって作られる。塗布装置は、混合されたスラリーあるいはペーストを正極用及び負極用の箔の両面に広げることができる。コーティングされた箔は、その後電極の厚さをより均一にするためにカレンダー加工され、引き続き適切な電極サイズにするために切断が行われる。
【0105】
したがって、本発明は、リチウムイオン電池用の正極電極及び負極電極のスラリー製造方法で用いられるバインダー材料としての組成物の使用にも関する。
【0106】
本発明の実施例を以下に示す。これらの実施例は説明の目的で示されており、本質的に制限するものではない。
【実施例】
【0107】
比較例1
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、45.45%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び45.45%のRhodiasolv(登録商標) IRIS(Rhodia、ジエステル溶媒)と混合した。成分を混合し、温度が60℃になるまで加熱した。溶液は15分で透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約600cpと測定された。室温で6日保持すると溶液はゲル化した。
【0108】
比較例2.1
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、90.9%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。成分を室温で混合した。混合物を30分超撹拌しても透明溶液にはならなかった。混合物は濁ったままであった。
【0109】
比較例2.2
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、90.9%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。成分を混合し、温度が40℃になるまで加熱した。混合物を30分超撹拌しても透明溶液にはならなかった。混合物は濁ったままであった。
【0110】
比較例2.3
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、90.9%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。成分を混合し、温度が60℃になるまで加熱した。溶液は30分で半透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約900cpと測定された。室温で1日保持すると溶液はゲル化した。
【0111】
比較例2.4
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、90.9%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。成分を混合し、温度が70℃になるまで加熱した。溶液は20分で半透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約900cpと測定された。室温で1日保持すると溶液はゲル化した。
【0112】
実施例3.1
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、45.45%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び45.45%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。成分を室温で混合した。混合物を30分超撹拌しても透明にはならなかった。混合物は濁ったままであった。
【0113】
実施例3.2
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、45.45%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び45.45%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。溶液を混合し、温度が約40℃になるまで加熱した。溶液は30分で半透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約824cpと測定された。室温で2日保持すると溶液はゲル化した。
【0114】
実施例3.3
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、45.45%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び45.45%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。溶液を混合し、温度が約60℃になるまで加熱した。溶液は10分で透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約900cpと測定された。室温で30日保持した後も溶液はゲル化しなかった。
【0115】
実施例3.4
FLTCO(Sinochem)から販売されているPVDF9.1重量%を、45.45%のジメチルスルホキシド(DMSO)及び45.45%のRhodiasolv(登録商標) Polarclean(Rhodia)と混合した。溶液を混合し、温度が約70℃になるまで加熱した。溶液は10分で半透明になった。その後、溶液を室温まで冷却した。ゲル化は見られなかった。室温での溶液の粘度は約886cpと測定された。室温で30日保持した後も溶液はゲル化しなかった。