(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリアミド用の、酸化防止剤、核形成剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、他の加工助剤、および熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、請求項1または2に記載のマスターバッチ組成物。
前記添加剤は、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである、請求項3に記載のマスターバッチ組成物。
前記マスターバッチ中におけるオレフィン−無水マレイン酸共重合体の濃度は、10%から40%、または10%から35%、または10%から30%、または15%から25%である、請求項1または2に記載のマスターバッチ組成物。
ポリアミド用の、酸化防止剤、核形成剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、他の加工助剤、熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される1種類以上の添加剤を加える工程をさらに含む、請求項10に記載のプロセス。
前記添加剤は、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである、請求項11に記載のプロセス。
前記1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体は、重量平均分子量(MWw)が1,000から800,000ダルトン、50,000から500,000ダルトン、または60,000ダルトンである、請求項14に記載のプロセス。
前記リサイクルされたポリアミドと比較して、引張強度が高い、伸縮性が改善されている、衝撃強さが大きい、曲げ弾性率が高い、加熱撓み温度が高い、あるいはこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項16に記載のポリアミド配合物。
前記配合工程は、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機、振動スクリュー押出機、連続ミキサー、バンバリーミキサー、または遊星型多軸スクリュー押出機で行われる、請求項20に記載のプロセス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
たとえばポリアミドとの重合体配合物を形成するのにオレフィン−無水マレイン酸共重合体を用いる(WO 2012/024268 A1に記載)など、使用する添加剤の反応性が高い場合、マスターバッチの調製には、いくつかの課題が伴う。マスターバッチの調製時に生じるひとつの課題が、マスターバッチで使用する化学的に相溶であるような成分の選択(すなわち、マスターバッチ中の成分が互いに反応しないこと)にある。もうひとつの課題は、オレフィン−無水マレイン酸共重合体を含有するマスターバッチが相分離しないようにすることにある。相分離は、オレフィン−無水マレイン酸共重合体が担体樹脂と化学的に相溶ではない場合に起こり得る。マスターバッチで相分離が起こると、重合体配合物への添加剤の取り込みが均一ではなくなる危険がある。3つ目の課題は、オレフィン−無水マレイン酸共重合体とポリアミドとの反応が速いことに起因し得る、ポリアミドとの配合時の極めて高い粘度と、結果として極めて高くなるトルクを回避することである。この粘度の上昇は、第1段落で説明した従来の重合体またはプラスチックの配合の大半では起こらない。マスターバッチの調製に用いられている一般的な担体樹脂のほとんどが、1つ以上の問題を抱えており、オレフィン−無水マレイン酸共重合体のマスターバッチの製造には適していない。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で説明するのは、オレフィン−無水マレイン酸共重合体と1種類以上の追加の添加剤とを担体樹脂のマトリックス中に含むマスターバッチ組成物である。また、本明細書で説明するのは、マスターバッチと配合されるポリアミドまたはポリアミド(商品)を含む重合体配合物の加工および特性を向上させるための、マスターバッチの使用方法である。マスターバッチの望ましい特性として、以下のものなどがある。マスターバッチが最終組成物への添加剤取り込みの均一性を改善する、マスターバッチが加工時に最終重合体組成物のトルクを低減する、マスターバッチの形成に用いられる担体樹脂が添加剤と反応しない、添加剤が担体樹脂から相分離しない、担体樹脂が調製中の重合体から相分離しない、ポリアミド(商品)およびポリアミドの加工に一般に用いられている加工温度および加工条件下で、担体樹脂が熱的に安定したままである、重合体配合物中における担体樹脂の存在が調製される重合体の性能に悪影響をおよぼさない。
【0004】
本明細書に記載のマスターバッチ組成物の形成時に用いられるオレフィン−無水マレイン酸共重合体は、分子鎖1つあたり1つまたは2つの無水マレイン酸基を含むグラフト共重合体ではなく、複数の無水マレイン酸基が重合体の主鎖にある真の共重合体である。一実施形態では、オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、オレフィンと無水マレイン酸の交互共重合体である。もうひとつの実施形態では、オレフィンモノマーと無水マレイン酸モノマーとのモル比が1:1である。例示した一例では、エチレン−無水マレイン酸共重合体が、ZeMac(登録商標)の商標名で販売されている1:1交互共重合体のひとつである。
【0005】
オレフィン−無水マレイン酸共重合体は一般に、さまざまな分子量の粉末であり、鎖延長剤として作用して押出プロセスでポリアミドと反応できる。一実施形態では、マスターバッチは、1種類以上の添加剤と、熱的に安定した高溶融流動性重合体と、相溶の担体樹脂と、を含む。例示的な添加剤としては、ポリアミド用の酸化防止剤、核形成剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、他の加工助剤、熱安定剤があげられるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載する例示的な実施例に示すように、ポリアミドとオレフィン−無水マレイン酸共重合体マスターバッチとの配合によって形成されたポリアミド配合物における機械特性の向上に対し、想定外の相乗効果が認められる。
【0006】
このマスターバッチ組成物は、ポリアミドの鎖延長によってポリアミドの機械特性を高めると思われる。このことの有用な用途の一つに、リサイクルされたポリアミド(商品)またはポリアミドのアップグレードがある。この文脈で、「リサイクルされた」とは、再処理ポリアミド、リグラインドポリアミド、再生ポリアミドを含み得る。しかしながら、鎖延長剤すなわちオレフィン−無水マレイン酸共重合体が反応するのが速すぎたりランダムであったりすると、これとポリアミドとの配合がポリアミドの特性に悪影響をおよぼすこともあると思われる。オレフィン−無水マレイン酸共重合体を含むマスターバッチを使用すると、配合段階でのオレフィン−無水マレイン酸共重合体とポリアミド重合体に存在する反応性部分との早期の反応が防止され、重合体全体へのオレフィン−無水マレイン酸共重合体の分散が増し、オレフィン−無水マレイン酸共重合体が局所的に高濃度となる可能性が最小限になるため、ゲル化が防止されると思われる。もうひとつの実施形態では、本明細書に記載のマスターバッチを使用すると、添加したオレフィン−無水マレイン酸共重合体の溶融に必要な時間が長くなり、局所的な(スポット)反応の発生が低減または排除される。反応時間が遅れることで、鎖延長剤はポリアミド重合体全体に十分に分散できるようになり、均一な鎖延長が促進されると思われる。
【0007】
本明細書に記載のマスターバッチは、ペレット、フレーク、スフェア、顆粒や、その他の形態で製造されてもよい。
【0008】
本明細書に記載のマスターバッチの最終的な変換用に一般に適用されるプロセスのひとつとして射出成形を用いるが、本明細書に記載のマスターバッチは、ブロー成形、回転二次成形、繊維形成、フィルム押出およびシート押出、熱成形などの他のプロセスにも有用であることに注意されたい。
【0009】
本明細書に記載の例は、マスターバッチを使用すると、ポリアミドを用いる反応性の押出(すなわち、反応性配合)の際に、マスターバッチの形ではないオレフィン−無水マレイン酸共重合体が不均一に供給されることに起因するような、多くの加工上の問題の深刻さが排除または低減されて、よりスムースな加工および一層均一なトルク値をもたらすことも示している。ポリアミドとの配合時のオレフィン−無水マレイン酸共重合体が不均一に供給されると、サージング、ストランド直径の不均一、泡立ち、ストランドの頻繁な破断、プロセスの不安定性につながる。
【0010】
本明細書に記載されるのは、オレフィン無水マレイン酸共重合体と任意の安定添加剤パッケージとを担体樹脂中に含むマスターバッチ組成物である。また、本明細書に記載されているのは、担体樹脂中に任意の安定添加剤パッケージとともにエチレン無水マレイン酸共重合体(EMAH)を含むマスターバッチ組成物である。この安定剤パッケージは、個々にまたは組み合わせで用いられる添加剤を含む。安定剤パッケージ中の例示的な添加剤としては、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)](Irganox(登録商標) 1098およびBNX1098など)などの1種類以上のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgaphos(登録商標) 168およびBenefos(登録商標) 1680など)などの亜リン酸塩、チオエステル、ヨウ化第一銅(CuI)、ヨウ化カリウム(KI)および/または他の安定剤があげられるが、これらに限定されるものではない。重合体配合の分野の当業者であれば、ポリアミド用の添加剤または安定剤パッケージおよび/または加工条件の適当な組み合わせを選択できることは、理解できよう。例示した一例では、安定化パッケージは、最終的な組成物中で重合体配合物全体の約0.01%から約5.0%w/wあるいは、約0.1%から約2.0%w/wまたは約0.25%から1.0%w/w、マスターバッチ中では約1.0%から約30%w/wまたは約5.0から約15%w/wの範囲である。
【0011】
用途ごとの要件に応じて、当業者に知られた可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、他の添加剤を任意に混合物に加えてもよい。例示的な添加剤としては、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、重合調整剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、ガラス繊維、その他の強化用もしくは非強化用充填材、またはこれらの混合物があげられる。
【0012】
本明細書に記載の一実施形態は、1:1エチレン無水マレイン酸交互共重合体(EMAH)を用いてオレフィン−無水マレイン酸共重合体マスターバッチを製造するためのプロセスである。一実施形態では、このプロセスは、押出配合工程を含む。押出配合工程は、当業者に知られた設備を用いて達成可能である。プラスチック業界において、配合とは、1以上の工程で1種類以上の重合体を1種類以上の添加剤と混合してプラスチックコンパウンドを製造するプロセスである。フィード(配合のプロセスに投入されるコンパウンドおよび/または重合体成分)は、ペレット、フレーク、チップ、粉末および/または液体の形態であってもよい。マスターバッチ生成物は通常、ペレット形態に成形され、押出、熱成形、ブロー成形および/または射出成形などの他のプラスチック成形プロセスで用いられる。かさ密度の低い粉末を扱うために押出機にフィーダーが取り付けられている場合、低めの溶融温度でより良い混合状態が得られるため、二軸スクリュー押出機または連続ミキサーの使用が好ましい。それらの大半は、スクリューと、混合、搬送、ガス抜き、添加剤供給用のセグメントで構成されたバレルとを有する。担体樹脂がもっと柔らかいのであれば、配合用の一軸スクリュー押出機、振動スクリュー押出、連続ミキサー、バンバリーミキサー、遊星型多軸スクリュー押出機など、他のプラスチック配合装置を用いると都合がよいこともある。各セグメントまたはゾーンの温度、送り速度、滞留時間、スクリュー速度などの加工パラメーターは、用途ごとに当業者が調整可能である。
【0013】
本明細書に記載されているのは、表記の1種類以上のオレフィン−無水マレイン酸共重合体マスターバッチと配合されたポリアミドを含む重合体配合物である。本明細書に記載されているのは、ポリアミドまたはポリアミド様の材料を表記のオレフィン−無水マレイン酸共重合体マスターバッチと配合するための方法である。一実施形態では、本明細書に記載されたようにしてポリアミドとオレフィン−無水マレイン酸重合体マスターバッチとを反応させることでポリアミドの重合体配合物を製造するための方法は、ポリアミドの分子量の増加および/または有益な構造的な変化をもたらし、たとえば引張強度、伸縮性、衝撃強さ、曲げ弾性率、加熱撓み温度の向上といった、特性および性能特性の改善につながる。
【0014】
本明細書に記載の配合ポリアミドを製造する方法の例示的な一実施形態において、本方法は、任意に、配合されたポリアミドの射出成形など、当業者に知られた方法を用いて、組成物を変換する工程をさらに含む。任意に、ポリアミドを、射出成形時に直接オレフィン−無水マレイン酸共重合体のマスターバッチと合わせてもよい。
【0015】
担体樹脂として使用される例示的な重合体は、エチレン−エステル共重合体(たとえば、エチレンとn−アクリル酸ブチル、アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルとの共重合体など)、ポリアミド、アミン末端基が(たとえば、アセチルまたは他の好適な基で)キャップされたポリアミド、あるいは、末端基がカルボン酸基でアミンではないポリアミド、末端基がアミンではないポリスルホニルアミド、無水マレイン酸とグラフト重合させたポリオレフィン、末端基がカルボン酸基でアルコールではないポリカーボネート、末端基がカルボン酸基でアルコールではないポリエステル、あるいはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。また、担体樹脂がさまざまなグレードで入手可能なことも、理解できよう。より低分子量で、よりメルトインデックスが高いグレードを選択すると、加工時の高トルク条件が最小限になるおよび/またはより広いプロセス窓が得られることがある。
【0016】
本明細書で使用する場合、マスターバッチに適用される「レットダウン」という用語は、マスターバッチを他の成分で希釈する、または両者を合わせることで、最終重合体配合物を形成することを意味する。
【0017】
ポリアミドは一般に、ジカルボン酸とジアミンとの反応あるいは、ラクタムの開環によって形成される縮合共重合体である。炭素数を調節することで、さまざまなポリアミドを生成可能である。本明細書にて使用する命名法では、ジアミンの炭素原子数を先に示し、二価酸の炭素原子数を2番目に示す。よって、ポリアミド−6,6は、ジアミンによって供される6個の炭素と、二価酸からの6個の炭素とを有し、ポリアミド−6,12は、ジアミンによって供される6個の炭素と、二価酸から供される12個の炭素とを有する。ポリアミド−6,6とは異なり、ポリアミド−6は、開環重合(たとえば、カプロラクタムの開環重合)によって形成される単独重合体である。ポリアミドという用語は、ナイロン−6−6,6共重合体と呼ばれる、ポリアミド−6,6とポリアミド−6との共重合体など、2つ以上のポリアミドの共重合体を含む。3つのポリアミドを有する共重合体のもうひとつの例が、ポリアミド−6、ポリアミド6,6、ポリアミド12の三元共重合体である。
【0018】
本明細書に記載する例示的な実施形態は、当業者に知られた設備を用いる押出配合などの加工方法の使用を含む。プラスチック業界において、配合とは、1以上の工程で1種類以上の重合体を1種類以上の添加剤と混合してプラスチックコンパウンドを製造するプロセスである。フィードは、ペレット、粉末および/または液体の形態であってもよいが、製品は通常ペレット状であり、押出および射出成形などの他のプラスチック成形プロセスで用いられる。
【0019】
本明細書に記載の方法の他の例示的な実施形態は、配合混合物をフィラメントや繊維、フィルム、シート、成形部品などの最終物品へと直接押し出すことを含む。配合工程は、混合物の1種類以上の成分同士の反応を含んでもよいことを、理解されたい。
【0020】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、1種類以上のUV安定剤またはUV吸収剤、ハロゲン化または非ハロゲン化難燃添加剤、鉱物などの強化材、あるいは、ガラス、炭素、グラファイト、セルロースなどの天然材料で作られた、繊維、布帛、粗紡フィラメント、管、および糸、および/または、芳香族高融点重合体(ときにはアラミドと呼ばれる)が含まれる。当業者に知られた可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤などの添加剤を任意に添加してもよい。例示的な添加剤としては、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、重合調整剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、ガラス繊維、他の強化用もしくは非強化用充填材、またはこれらの混合物があげられる。
【0021】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸は、エチレンと無水マレイン酸とのモル比が約1:1のエチレン無水マレイン酸交互共重合体(EMAH)であってもよい。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸は、エチレンと無水マレイン酸とのモル比が約1:99から約99:1のエチレン無水マレイン酸交互共重合体(EMAH)であってもよい。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、エチレンと無水マレイン酸とのモル比が、約1:50から約50:1、約1:20から約20:1、約1:10から約10:1、約1:5から約5:1、約1:2から約2:1の範囲の非交互共重合体またはランダム共重合体であってもよい。
【0022】
本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、重量平均分子量が約1000から約900,000、約20,000から約800,000、約40,000から約600,000、約50,000から約500,000または約60,000から約400,000の範囲である。本明細書に記載の方法または組成物のいずれにおいても、選択される1:1オレフィン−無水マレイン酸交互共重合体は、商標名ZeMac(登録商標) E−60(Vertellus Specialties Inc.、E60)で販売されているものなど、分子量約60,000のエチレンおよび無水マレイン酸の1:1交互共重合体(1:1EMA)であってもよいし、あるいは、選択される1:1EMAは、商標名ZeMac(登録商標) E−400(Vertellus Specialties Inc.、E400)で販売されているものなど、分子量が約400,000であってもよい。
【0023】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、米国特許法第119(e)により、発明の名称「Olefin−Maleic Anhydride Copolymer Compositions And Uses Thereof」で2012年7月6日にファイルされた米国仮特許出願第61/668,687号ならびに、発明の名称「Olefin−Maleic Anhydride Copolymer Compositions And Uses Thereof」で2013年3月15にファイルされた米国仮特許出願第61/788,941号の優先権の利益を主張する。これらの出願各々の開示内容全体を、本明細書に援用する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を、以下に列挙する項に記載する。
【0025】
1. オレフィン−無水マレイン酸共重合体と1種類以上の担体樹脂とを含む、ポリアミドからポリアミド配合物を調製するのに用いるためのマスターバッチ組成物。
2. 担体樹脂は、エチレン−エステル共重合体、ポリアミド、アミン末端基がキャップされたポリアミド、あるいは、末端基がカルボン酸基であってアミンではないポリアミド、末端基がアミンではないポリスルホニルアミド、末端基がカルボン酸基であるポリカーボネート、末端基がカルボン酸基であるポリエステル、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、第1項に記載のマスターバッチ組成物。
3. 担体樹脂は、エチレン−n−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、またはこれらの組み合わせである、第1項または第2項に記載のマスターバッチ組成物。
4. 担体樹脂は、エチレン−アクリル酸メチル共重合体である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
4.1 担体樹脂は、ポリアミドである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
4.2. 担体樹脂は、末端キャップポリアミドである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
5. ポリアミド用の、酸化防止剤、核形成剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、難燃剤、充填材および強化材、他の加工助剤、および熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される1種類以上の添加剤をさらに含む、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
6. 1種類以上の添加剤は、ポリアミド用の酸化防止剤および熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
7. 添加剤は、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
8. ポリアミドは、プライムポリアミド(prime polyamide)またはリサイクルされたポリアミドまたはこれらの組み合わせである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
9. ポリアミドは、プライムポリアミドである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
10. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6またはポリアミド−6,6またはこれらの組み合わせである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
11. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
12. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6,6である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
13. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1オレフィン−無水マレイン酸共重合体である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
14. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸共重合体である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
15. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1交互共重合体である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
16. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体であり、重量平均分子量(MW
w)が1,000から800,000ダルトンである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
17. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体であり、重量平均分子量(MW
w)が50,000から500,000ダルトンである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
18. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体であり、重量平均分子量(MW
w)が60,000ダルトンである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
18.1. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体であり、重量平均分子量(MW
w)が400,000ダルトンである、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
19. マスターバッチ中におけるオレフィン−無水マレイン酸共重合体の濃度は、約5%から約50%、または約10%から約40%、または約10%から約35%、または約10%から約30%、または約15%から約25%である、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物。
【0026】
20. オレフィン−無水マレイン酸共重合体と担体樹脂とを混合する工程を含む、前述の項のうちいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物を調製するためのプロセス。
21. 担体樹脂は、エチレン−エステル共重合体、ポリアミド、アミン末端基がキャップされたポリアミドまたは末端基がカルボン酸基であるポリアミド、末端基がアミンではないポリスルホニルアミド、末端基がカルボン酸基であるポリカーボネート、末端基がカルボン酸基であるポリエステル、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、第20項に記載のプロセス。
22. 担体樹脂は、エチレン−n−アクリル酸ブチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、またはこれらの組み合わせである、第20項または第21項に記載のプロセス。
23. 担体樹脂は、エチレン−アクリル酸メチル共重合体である、第20項から第22項のいずれか1項に記載のプロセス。
23.1 担体樹脂はポリアミドである、第20項から第23項のいずれか1項に記載のプロセス。
23.2. 担体樹脂は末端キャップポリアミドである、第20項から第23.1項のいずれか1項に記載のプロセス。
24. ポリアミド用の、酸化防止剤、核形成剤、着色剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、難燃剤、充填材および強化材、他の加工助剤、熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される1種類以上の添加剤を加える工程をさらに含む、第20項から第23.2項のいずれか1項に記載のプロセス。
25. 1種類以上の添加剤は、ポリアミド用の酸化防止剤および熱安定剤からなる群から各々の場合に独立して選択される、第20項から第24項のいずれか1項に記載のプロセス。
26. 添加剤は、ヨウ化第一銅、ヨウ化カリウム、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]およびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトである、第20項から第25項のいずれか1項に記載のプロセス。
27. ポリアミドは、プライムポリアミドまたはリサイクルされたポリアミドまたはこれらの組み合わせである、第20項から第26項のいずれか1項に記載のプロセス。
28. プライムポリアミドである、第20項から第27項のいずれか1項に記載のプロセス。
29. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6またはポリアミド−6,6またはこれらの組み合わせである、第20項から第28項のいずれか1項に記載のプロセス。
30. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1オレフィン−無水マレイン酸共重合体である、第20項から第29項のいずれか1項に記載のプロセス。
31. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1エチレン−無水マレイン酸共重合体である、第20項から第30項のいずれか1項に記載のプロセス。
32. オレフィン−無水マレイン酸共重合体は、1:1交互共重合体である、第20項から第31項のいずれか1項に記載のプロセス。
33. 1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体は、重量平均分子量(MW
w)が1,000から800,000ダルトンである、第20項から第32項のいずれか1項に記載のプロセス。
34. 1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体は、重量平均分子量(MW
w)が50,000から500,000ダルトンである、第20項から第33項のいずれか1項に記載のプロセス。
35. 1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体は、重量平均分子量(MW
w)が60,000ダルトンである.第20項から第34項のいずれか1項に記載のプロセス。
【0027】
36. 第1項から第19項のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と配合された、リサイクルされたポリアミドもしくはバージンポリアミドまたはこれらの組み合わせを含む、ポリアミド配合物であって、ポリアミドを第1項から第19項のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と配合する反応によって当該ポリアミドの分子量が高められている、ポリアミド配合物。
36.1. 第1項から第19項のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と配合された、リサイクルされたポリアミドもしくはバージンポリアミドまたはこれらの組み合わせを含む、ポリアミド配合物であって、ポリアミドを第1項から第19項のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と配合する反応によって当該ポリアミドの分子量が高められている、ポリアミド配合物。
37. ポリアミドは、バージンポリアミドである、第36項または第36.1項に記載のポリアミド配合物。
38. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6もしくはポリアミド−6,6、またはこれらの組み合わせである、第36項、第36.1項、または第37項に記載のポリアミド配合物。
39. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6である、第36項から第38項のいずれか1項に記載のポリアミド配合物。
40. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミド−6,6である、第36項または第38項に記載のポリアミド配合物。
41. 熱安定剤、光安定剤、難燃剤、重合調整剤、可塑剤、潤滑剤、レオロジー調整剤、摩擦調整剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、ガラス繊維、他の強化用もしくは非強化用充填材、またはこれらの混合物をさらに含む、第36項から第40項のいずれか1項に記載のポリアミド配合物。
42. 配合されたポリアミドの平均分子量が高められている、第36項から第41項のいずれか1項に記載のポリアミド配合物。
42.1. 未変性のポリアミドと比較して、引張強度が高い、伸縮性が改善されている、衝撃強さが大きい、曲げ弾性率が高い、加熱撓み温度が高い、あるいはこれらの組み合わせであることを特徴とする、第36項から第42項のいずれか1項に記載のポリアミド配合物。
【0028】
43. ポリアミドを請求項1から19のいずれか1項に記載のマスターバッチ組成物と配合する反応の工程を含む、ポリアミド配合物を調製するためのプロセス。
44. ポリアミドは、バージンポリアミドまたはリサイクルされたポリアミドである、第43項に記載のプロセス。
45. ポリアミドは、バージンポリアミドである、第43項または第44項に記載のプロセス。
46. ポリアミドは、リサイクルされたポリアミドである、第43項または第44項に記載のプロセス。
47 配合工程の温度が約230℃から約280℃である、第44項から第46項のいずれか1項に記載のプロセス。
48. 配合工程は、二軸スクリュー押出機、一軸スクリュー押出機、振動スクリュー押出機、連続ミキサー、バンバリーミキサー、または遊星型多軸スクリュー押出機で行われる、第44項から第47項のいずれか1項に記載のプロセス。
49. ポリアミド配合物中のマスターバッチ組成物の濃度が、約0.5%から約10%、または約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約5%である、第44項から第48項のいずれか1項に記載のプロセス。
50. ガラス繊維または他の強化用充填材を添加する工程をさらに含む、第44項から第49項のいずれか1項に記載のプロセス。
【0029】
51. 第44項〜第50項に記載の変性ポリアミド配合物の射出成形、ブロー成形、回転二次成形、繊維形成、フィルム、異形押出およびシート押出、熱成形によって製造される、物品。
51.1 マスターバッチとポリアミドが混ぜ合わせられ、任意に他の成分と混ぜ合わせられてもよい、第36項〜第41項に記載の配合物のいずれかを用いて製造される物品。
51.2 変性ポリアミドが、任意に他の成分と混ぜ合わせられてもよい、第36項〜第41項に記載の配合物のいずれかを用いて製造される物品。
【0030】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態をさらに示すが、以下の例示的な実施例は、どのような形にしろ本発明を限定するものとは解釈されないものとする。
【実施例】
【0031】
方法および例示の材料
ともにリサイクルされた品質である、ポリアミド6(グレードPA6 NG320HSL)およびポリアミド6,6(グレードPA66 NG320HSL)を、Jamplast Inc.から入手し、受領時の状態のまま使用した。すべてのグレードが乾燥状態を保つよう注意を払った。使用した他のポリアミド−6は、Ultramid B3Sと呼ばれるBASF社からのプライム(prime)(バージンとも呼ばれる)グレードのものであった。
【0032】
メルトインデックスが110g/分のOptema(商標)グレードTC 141というエチレンアクリル酸メチル共重合体樹脂をExxonMobil Chemicalsから入手し、担体樹脂として使用した。Vertellus Specialties Inc.から得た、重量平均分子量(MW
w)が60,000の1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体グレードのZeMac(登録商標) E60(E60)を、例示的な実施例で使用した。Vertellus Specialties Inc.から得た、重量平均分子量(MW
w)が400,000の1:1エチレン−無水マレイン酸交互共重合体グレードのZeMac(登録商標) E400(E400)も、他の例示的な実施例で使用した。
【0033】
一般的な配合マスターバッチ調製
かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機(Berstorff.25mm)を、140℃、150℃、155℃、155℃、155℃、155℃、155℃、170℃のの温度プロファイルで駆動し、水槽中にて冷却し、ペレット化した。2フィーダーシステムを使用して、マスターバッチを調製した。添加剤(たとえば、安定剤、酸化防止剤、任意に潤滑剤粉末)をオレフィン−無水マレイン酸共重合体と事前に混合し、一方のフィーダーから供給するとともに、担体樹脂を他方のフィーダーから供給した。この実施形態で用いる担体樹脂の例示的な一実施例は、Optema(商標)グレードTC 141である。担体樹脂のもうひとつの例は、BASF社からのUltramid(登録商標) B24 N02、ポリアミド−6で、これはZeMac(登録商標) E60またはZeMac(登録商標) E400と反応しない。得られるペレットを50℃で12時間乾燥させ、残留水分を除去した。オレフィン−無水マレイン酸共重合体およびポリアミド−6を含むマスターバッチの製造に用いた配合物を、表1に示す。
[表1]
*MB=マスターバッチ材料
1N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]
2トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト
3N,N’エチレンビス−ステアラミド
【0034】
リサイクルされたポリアミドを用いた、マスターバッチ組成物のコンパウンドの調製:
リサイクルされた配合ポリアミド(たとえば、ポリアミド配合物)と表1に示すZeMac(登録商標) E60またはE400マスターバッチ組成物との複合ペレットを、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機(Coperion ZSK−40)で調製した。リサイクルされたポリアミド−6およびプライムポリアミド−6単独の配合およびE60、E400およびマスターバッチサンプルを用いる配合を、温度設定230℃、240℃、240℃、240℃、240℃、250℃、250℃、250℃、250℃、250℃、245℃、240℃で実施し、リサイクルされたポリアミド−6,6およびプライムポリアミド−6,6単独およびE60、E400およびマスターバッチサンプルを、温度設定243℃、254℃、262℃、268℃、274℃、281℃、280℃、276℃、271℃、274℃で配合した。
【0035】
一般的な試験方法
それぞれASTM規格D−638、D−790、D−256、D−1238の方法を用いて、23℃にて、引張強度、曲げ強度、アイゾット衝撃強さ、メルトフローインデックスの測定を実施した。ASTM D−648の方法を用いて加熱撓み/熱変形温度(HDT)を測定した。これらの機械的試験および熱的試験は、追加の乾燥を行わずに実施した。サンプルは、ASTMプロトコールに記載されているように、試験片をコンディショニング後、成形した状態で使用した。吸収される水がすべて0.1%〜0.5%乾燥レベルになるよう平衡まで乾燥させた後、吸水試験を実施した。
【0036】
マスターバッチ組成物とリサイクルされたポリアミド−6との配合:
ポリアミド−6を、表1に示すさまざまなエチレン−無水マレイン酸共重合体マスターバッチおよびエチレン−無水マレイン酸共重合体粉末と直接配合した。リサイクルされたポリアミド−6とのコンパウンディング配合物を表2に示す。
[表2]
*F=配合物
【0037】
得られる配合材料の引張強度、伸び強度、ノッチ付きアイゾット衝撃強さを表3に示す。これらの結果は、マスターバッチMB−1(F−2)、MB−2(F−3)、MB−3(F−4)に対するポリアミドの配合量が、いずれもリサイクルされたポリアミド−6中2%であることを示している。2%のMB−1およびMB−2は、ZeMac(登録商標) E60粉末0.4%と等価であり、2%の量で用いられるMB−3は、ZeMac(登録商標) E60の0.66%と等価である。表3のデータは、マスターバッチ中のZeMac濃度を上げると、全体としての機械特性が高まることを示している。従来技術の知識に基づくと、E400は、E60粉末よりも反応性が高いため、MB−4は1%の量で使用しており、これはZeMac(登録商標) E400粉末0.2%と等価である。しかしながら、リサイクルされたポリアミド−6単独(F−1)の場合と比較すると、引張強度および衝撃だけが高まることが見いだされた。同じZeMac(登録商標) E60濃度すなわち0.5%を実施例F−7、F−8およびF−9で比較している。リサイクルされたポリアミド−6中2%の量としたMB−5含有配合物F−9は、ZeMac(登録商標) E60の0.5%と等価である。
[表3]
【0038】
一般に、ほとんどのプラスチックでは、何らかの変性によって曲げ強度が大きくなると、伸びと衝撃は小さくなり、逆もまた同様である。E60粉末またはマスターバッチを含有する配合物は、ともに衝撃および曲げ弾性率の増加を示し、これは曲げ弾性率が高まると衝撃特性が落ちるという従来の傾向とは反対である。この衝撃作用は、EMAH粉末よりもマスターバッチ配合物で一層顕著である。
【0039】
表3の実施例F−7は、ZeMac(登録商標) E60粉末を安定剤(CuI=0.01%、KI=0.09%、ヒンダードフェノール酸化防止剤=0.4%、ホスファイト安定剤=0.5%)とともに含有するが、これは、安定剤を含まない実施例F−8と比較すると、特性の改善が認められる。これは、特性を高めるには安定剤の組み合わせが必要だということを意味する。上述したように、MB−3(E60の投与量レベル0.66%)を用いて調製した実施例F−4のポリアミド配合物は、いくつかの特性で、E60粉末とマスターバッチMB−1、MB−2およびMB−4との単純な混合物を用いて調製したポリアミド配合物よりも、有意に良好な結果が認められる。これらの結果に基づくと、ポリアミド(商品)でアップグレードされた特性を最終的に得るためには、最適なレベルの安定剤およびE60粉末および安定剤の組み合わせが必要であるのは、明らかである。また、トルクのビルドアップとリサイクルされたポリアミド流の中に存在するさまざまな重合体不純物の相溶化に対応するには、相溶化剤および潤滑剤も望ましいことがある。このような配合物の一例が、最適な組み合わせのE60、安定剤、相溶化剤、潤滑剤を含有するMB−5である。配合物(F−9)は、マスターバッチMB−5をリサイクルされたポリアミド−6と配合すると、すべてのマスターバッチおよびEMAH粉末と比較して機械特性が最大になることを示しており、このマスターバッチ組成物が相乗効果を与えていることを示唆している。概して、表3に示す結果は、E60マスターバッチと配合したポリアミドは、分子量が極めて高くより均一で高度に分岐した構造に変性されており、これがポリアミドの衝撃強さを犠牲にすることなくより強く頑丈な配合ポリアミド(たとえば、ポリアミド配合物)を生むことを示していると思われる。
【0040】
配合時、粘度とトルクの両方の増加が観察された。トルクは、E60粉末などの鎖延長剤を用いてポリアミドの分子量を増すときに問題となる。表4の結果は、潤滑剤を含有するマスターバッチ組成物F−9を使用すると、2%のMB−5(有効E60添加量0.5%)によって配合された場合のポリアミドのトルクを、同じ濃度の0.5%E60粉末を含む配合物F−8と比較して効果的に低減できることを示している。
[表4]
【0041】
表5に示すように、粘度がより高くなることを表すメルトフローレートの減少によって、分子量の増加が確認された。メルトフローの減少は、すべてのマスターバッチ組成物ならびにE60粉末を用いた場合に認められる。
[表5]
【0042】
表6は、本発明のマスターバッチを用いる場合と用いない場合のリサイクルされたポリアミド−6と30%ガラス繊維の配合を示す。
[表6]
*F=配合物
1PPG Chop Vantage HP 3540
【0043】
リサイクルされたポリアミドの配合物での機械特性の結果を表7に示す。ガラス繊維とリサイクルされたポリアミド−6との複合体にマスターバッチMB−5を配合した結果は、ガラス繊維とリサイクルされたポリアミド−6との複合体自体の場合と比較して、加熱撓み温度を損なうことなく曲げ弾性率と衝撃強さの改善を示している。
[表7]
【0044】
リサイクルされたポリアミド−6,6との配合:
リサイクルされたポリアミド−6,6とE60粉末およびさまざまなマスターバッチとの配合で得られる配合物を表8に示す。
[表8]
*F=配合物
【0045】
表9からわかるように、ポリアミド−6での結果と同様、ポリアミド−6,6の機械特性も改善される。概して、これらの結果は、マスターバッチとE60粉末の両方と配合されたポリアミド配合物の3つの特性すべての改善を示している。結果を表9にまとめておく。この表は、実施例F−12およびF−13における同一のZeMac(登録商標) E60濃度すなわち、0.3%でのものを示している。MB−5との配合物F13が、衝撃を維持しつつ特性向上の最も良いバランスを示している。
[表9]
【0046】
表10は、マスターバッチおよびZeMac(登録商標) E60粉末と配合した、リサイクルされたポリアミド−6,6におけるメルトフローレートの低下を示す。メルトフローレートの低下は、ポリアミドにおける鎖延長反応の良い指標である。
[表10]
【0047】
表11は、本発明のマスターバッチMB−5を用いる場合と用いない場合の、リサイクルされたポリアミド−6,6と30%ガラス繊維との配合を示す。
[表11]
*F=配合物
1PPG Chop Vantage HP 3540
【0048】
配合された、リサイクルされたポリアミドの機械特性の結果を表12に示す。これらの結果は、マスターバッチMB−5を、ガラス繊維とリサイクルされたポリアミド−6,6との複合体における有効ZeMac E60粉末0.4%相当の1.6%で使用すると、熱変形温度(HDT)および衝撃強さを損なうことなく、この複合体の曲げ弾性率が高まることを示している。
[表12]
【0049】
プライムポリアミド−6との配合:
E60粉末とマスターバッチ(MB−6)の両者のプライムポリアミド−6との配合物を表12に示す。BASF Corpから販売されているUltramid B3S(プライムポリアミド−6)を配合物中に使用した。
[表12]
【0050】
表13は、リサイクルされたポリアミド−6(F20)と比較して、引張強度、曲げ弾性率、衝撃特性が改善されたマスターバッチ(F18)およびE60粉末(F17)を示す。
[表13]
【0051】
マスターバッチとE60粉末との間には、取り混ぜた結果が見られる。E60粉末はマスターバッチより引張強度が改善されることが見いだされたが、マスターバッチでは曲げ弾性率と衝撃の両方で改善が認められる。
【0052】
プライムポリアミド−6,6との配合:
表15に示すように、プライムポリアミド−6,6(Ultramid A34、BASF社)を、E60粉末および2種類の異なるマスターバッチMB−6およびMB−7と配合した。両方のマスターバッチの組成の主な違いは担体樹脂である。MB−6は、エチルアクリル酸メチル樹脂を用いて作られているのに対し、MB−7は、末端キャップしたプライムナイロン−6を用いて作られている。使用したプライムナイロン−6は、末端キャップされた樹脂であるという事実は、アミン基が保護され、ZeMacとの反応に利用できない状態を保証する。他の末端キャップポリアミド理解できよう。
[表15]
【0053】
表16の結果は、ここでもE60粉末および両方のマスターバッチについて、プライムポリアミド−6,6と比較して、すべての事例で機械特性の向上が認められることを示している。また、これらの結果は、どちらのマスターバッチでも、マスターバッチ組成物における担体樹脂、安定剤、潤滑剤とE60粉末との組み合わせの相乗効果がゆえ、E60粉末より特性が向上することも示している。マスターバッチMB−6(F21)では、M−7(F22)より曲げ強度と引張強度の改善が認められ、これは、やわらかい担体樹脂ほど短時間で溶融してE60をナイロンに暴露し、よってナイロンとE60との間の反応が促進されるゆえであると考えられる。ナイロンを担体樹脂として有するマスターバッチM−7は、比較的ゆっくり溶融するため、押出はプライムポリアミド−6,6に含まれるアミン基との反応を伴うものにすらなり、F21配合物と比較して引張強度が改善される。
[表16]
【0054】
表17は、表16に示す配合物の配合時に生じるトルクの値を示している。0.5%エチレン−無水マレイン酸共重合体という等価な添加量において、マスターバッチは、E60粉末よりもトルクがかなり小さい。
[表17]
【0055】
広義の発明概念から逸脱することなく、上述した実施形態に対して変更を施し得ることは、マスターバッチ製造の分野の当業者であれば理解できよう。したがって、本発明はここに開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、先の発明(WO 2012/024268 A1に記載)の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲に規定されているような改変内容を包含することを意図している。