(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遠位先端部アセンブリが前記ガイドアセンブリに対して遠位方向に移動し、前記ガイドアセンブリ及び前記遠位先端部アセンブリが第二相対位置にある時に前記ケーブルの第二端部が前記遠位先端部アセンブリの近位端の近位にある、
請求項4に記載のステントグラフト送達システム。
前記ガイドアセンブリがガイド部品を含み、前記ガイド部品のテーパ状の遠位部の外表面上に形成される溝を通じて各ケーブルが延在し、前記ケーブルの中間部が前記ステントグラフト人工補綴具のステントの最端クラウンを越えて延在しかつ前記ステントグラフト人工補綴具のステントの最端クラウンを覆う、
請求項1に記載のステントグラフト送達システム。
前記ガイドアセンブリが前記遠位先端部アセンブリに対して近位方向に移動し、前記ガイドアセンブリと前記遠位先端部アセンブリが第二相対位置にある時に前記ケーブルの第二端部が前記遠位先端部アセンブリの近位端の近位にある、
請求項7に記載のステントグラフト送達システム。
前記遠位先端部アセンブリの内表面が前記ガイドアセンブリの外表面上のスレッドと嵌合するスレッドを含み、前記細長いシャフトの回転により前記遠位先端部アセンブリが回転し、結果として前記ガイドアセンブリが長手方向に移動することになる、
請求項8に記載のステントグラフト送達システム。
【背景技術】
【0002】
生体における血管またはその他同様の器官に埋め込むための人工補綴具は、医療技術において一般的によく知られている。例えば、生体適合性材料から構築される人工血管ステントグラフトは、損傷を受けた又は閉塞した生体の血管の代替品として、またはそれをバイパスするために使用されてきた。一般に血管内移植片は、血管内の目的の位置に適した移植材から成る管状移植片を保持するように作動する、移植片固定用の部品を通常含む。移植片固定用の部品は、1つまたは複数の半径方向に圧縮可能なステントである場合が最も一般的であり、その半径方向に圧縮可能なステントは、血管壁または解剖学的導管の内壁に管状移植片を固定するために、生体内原位置において半径方向に拡張される。血管内移植片は通常このようにして、機械的係合及び半径方向に拡張可能なステントにより加えられた反対方向の力から起きる摩擦によって固定される。
【0003】
移植手技は動脈瘤の治療法としても知られている。加齢、疾病及び/または血管内の血圧の少なくともいずれか1つにより「膨張(balloon)」あるいは拡張し、もろく薄くなった血管壁が動脈瘤の原因となる。その結果、動脈瘤のある血管には破裂する可能性が生じ、そうなった場合には内出血を引き起こし、生命を脅かす病態を招く恐れがある。動脈瘤または他の血管異常を正常血圧から隔離して、もろくなった血管壁への圧力を減少させ、血管破裂の危険性を減らすために、移植片はしばしば用いられる。このように動脈瘤を通して新たな流路及び人工的な流路導管を作りだし、それによって血圧の動脈瘤に対する働きを、ほとんど除去してしまうまでには至らなくとも減少させるために、管状血管移植片を動脈瘤のある血管内部に留置する場合がある。
【0004】
一般に、外傷性及び侵襲性が高くなる可能性がある切開手術手技を実施してバイパス移植片を埋め込むのではなく、ステントグラフトと称されることもある血管内移植片を、より侵襲性が低い管腔内送達手法により展開する場合がある。より具体的には、都合がよくより外傷性の低いエントリポイントより経皮的に管腔あるいは脈管構造にアクセスし、ステントグラフトを、血管系を経由して人工補綴具を展開する部位まで至らせる。管腔内展開は通常、軸方向相対移動を行うように設けた同軸の内管及び外管を有する送達カテーテルを用いて実施される。例えば自己拡張型ステントグラフトは、内部部材に固定した止め具の遠位側にある外側のカテーテルチューブの遠位端部内に圧縮されて配置される場合がある。その後カテーテルの操作が行われ、通常は体内管腔を経由して、カテーテルの端部及びステントグラフトを目的とする治療部位に至らせる。内部部材上に位置する止め具はその後、送達カテーテルの外管を引き出す間、静止状態に保持される。止め具は、ステントグラフトがシースとともに引き出されることを防ぐ。シースを引き出すにつれ、ステントグラフトがシースの範囲から解放されて半径方向に自己拡張し、ステントグラフトの少なくとも一部が周囲を覆う管腔の内部、例えば血管壁や解剖学的導管などの一部に接触し、それに実質的に一致する。
【0005】
近年では、ステントグラフトの展開や位置決定の際の最適な制御及びアラインメントの実現を目的として、ステントグラフト人工補綴具の経皮的送達のために利用される送達システムの中に、様々なチップキャプチャスピンドルが組み込まれている。チップキャプチャには、筒状カバーシャフトやシースといった他の送達システム部品によって可能となる本体の保持と併せて、半径方向に圧縮した構成のステントグラフトの近位端ステントの保持が含まれる。解放のタイミングを定める、療法のタイプやステントグラフトのタイプ、特定の解剖学的条件などにより決定される多くのシステムの特徴に適合するように、チップキャプチャスピンドルは、ステントグラフトが展開される間はいつでも作動させることができる。チップキャプチャの解放は通常、ステントグラフト本体の一部または全体が解放された後に実施され、それにより位置決定及びその後の再位置決めの間にステントグラフトを保持する方法を提供する。ステントグラフトのさらなる保持は、操作者が解剖学的指標に関連してステントグラフトの正確な位置決定を行おうと試みる際の重要な特性である。チップキャプチャの保持はまた、ステントグラフトをグラフトカバーあるいはシースから解放する際の拡張の急激な力を低下させる一助ともなる。
【0006】
例えば、いずれも本明細書において全体に参考として組み込まれている、Arbefuielle氏他による米国特許出願公開第2006/0276872号及びGlynn氏他による米国特許出願公開第2009/0276027号は、ステントグラフトの近位端以外の部分が拡張する間ステントグラフトの近位端ステントを保持し、その後、近位端ステントを解放するチップキャプチャ機構について説明している。近位端ステント(時にアンカーステントと称される場合もある)は、「オープンウェブ(open web)」または「フリーフロー(free flow)」近位端構成を有するようにステントグラフトの移植材に取り付けられ、その近位端構成では、その最近位端クラウンは移植材を通過するかまたは越えて延在している。それにより最近位端クラウンが露出されるかまたはむき出しであり、このようにしてチップキャプチャ機構と自由に相互作用し、ステントグラフト人工補綴具を送達システムに結合する。
図1A及び
図1Bは、オープンウェブまたはフリーフロー近位端構成16を有するステントグラフト14に結合する、またはそれと相互作用するように設計されたチップキャプチャスピンドル12を有する送達システム10を示す。より具体的には、最端クラウン18は、チップキャプチャスピンドル12の引き込み可能なアームまたは保持要素20の周辺で係合または係止する。送達システム10は少なくとも3つの同心軸、すなわち外側送達シースまたはグラフトカバー22、チップキャプチャスピンドル12に結合された中間軸24、遠位先端部アセンブリ28に結合された細長い内軸26を含む。グラフトカバー22が引込められて引き込められ、ステントグラフト14が自己拡張することが可能になると、端ステント15の最端クラウン18が、
図1Aに示すようにチップキャプチャ保持要素20の周辺で係止された状態になる。チップキャプチャスピンドル12に結合された中間軸24は、端ステント15を解放するために、内軸26に対して長手方向に引き込められてチップキャプチャスピンドル12を引き込む。これにより、
図1Bで示すように端ステント15がチップキャプチャスピンドル12から解放され、自己拡張できるようになる。カリフォルニア州サンタローザのMedtronic Vascular, Inc.により製造されたCaptivia送達システムは、上述したチップキャプチャ機構を有する送達システムの一例であり、カリフォルニア州サンタローザのMedtronic Vascularにより製造されたValiant Thoracicステントグラフト等の血管内ステントグラフトを送出するために使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態がここで図を参照して述べられ、同じ参照番号は同一のまたは機能的に同様の要素を示す。実施形態がここで図を参照して述べられ、同じ参照番号は同一のまたは機能的に同様の要素を示す。送達システムについて別途指示しない限り、用語「遠位の(distal)」及び「近位の(proximal)」は、治療を行う臨床医に対する位置または方向に関して以下の説明で使用される。「遠位の」及び「遠位に(distally)」は、臨床医から遠い位置または臨床医から離れる方向であり、「近位の」及び「近位に(proximally)」は、臨床医から近い位置または臨床医に向かう方向である。ステントグラフト人工補綴具の場合、「近位」は血液流路の点で心臓により近い部分であり、一方、「遠位」は血液流路の点で心臓からより遠いステントグラフトの部分である。さらに、用語「自己拡張型(自己拡張型)」は、本明細書において人工補綴具の1つまたは複数のステント構造を参照して以下の説明で使用され、圧縮されたまたは収縮された送達構成から拡張され展開された構造へと構造を戻す機械的メモリを備え得る材料から、構造が形作られるか形成されることを伝える意図を持つ。非網羅的で例示的な自己拡張型材料は、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金またはニチノール等の擬弾性金属、様々なポリマ、あるいはいわゆる超合金を含み、それらはニッケル、コバルト、クロムまたは他の金属の卑金属を有することができる。機械的メモリは熱処理によってワイヤまたはステント構造に与えられ、例えばステンレス鋼のスプリングテンパーを達成するか、または、ニチノール等の影響を受けやすい金属合金に形状記憶を与えることができる。ポリノリボルネン、トランスポリイソプレン、スチレンブタジエン及びポリウレタン等のポリマを含む、形状記憶特性を有するように作られ得る様々なポリマもまた、本明細書に記載の実施形態で使用するのに適する場合がある。同様に、ポリL−Dラクティックコポリマ、オリゴカプリラクトン及びポリシクロオクチンは、他の形状記憶ポリマとは別途、あるいは他の形状記憶ポリマと共に使用され得る。
【0013】
以下の詳細な説明は本質的には例示的に過ぎず、本発明あるいは本発明の用途及び使用を制限することを意図しない。本発明の説明は大動脈、冠状動脈、頸動脈及び腎動脈等の血管の治療の文脈において行われるが、本発明はまた本発明が有用であると思われるその他任意の身体通路で使用することができる。さらに先行する技術分野、背景技術、発明の概要あるいは以下の詳細な説明において提示され、明示されるかまたは示唆される任意の理論によって、束縛されることを意図しない。
【0014】
本明細書に記載の実施形態は、ステントグラフト人工補綴具の部分的なまたは漸進的な展開及び再位置決めを可能にする複数の細長いケーブルを備えたチップキャプチャ機構を有するステントグラフト送達システムに関する。ステントグラフト人工補綴具が生体内原位置において所望通りに位置決定されている間、ステントグラフト人工補綴具の最端クラウンの漸進的な連続的な半径方向への拡張及び収縮のいずれをも可能にするために、ケーブル張力を選択的に調整することができる。本明細書に記載の実施形態によると、より具体的には、ステントグラフト人工補綴具230の部分的な展開及び再位置決めを可能にするチップキャプチャ機構を有する送達システム200は、
図2−5に関連して示され、説明される。
図2及び
図2A−2Cは、自己拡張型ステントグラフト人工補綴具230を、圧縮された構成で脈管構造内に送達する送達システム200を示す。
図2は、システム200の模式的側面図であり、一方、
図2Aは
図2のA−A線における断面図、
図2Bは
図2のB−B線における断面図、
図2Cは
図2BのC−C線における断面図そして
図2Dは
図2Bの一部の拡大図である。
図2E及び
図2Fは、例証のためにのみ送達システムから取り外されたガイドアセンブリの部品の斜視図である。
図3及び
図3Aは、ステントグラフト人工補綴具230が部分的に展開された送達システム200の遠位部を示すが、ステントグラフト人工補綴具の本体の一部は半径方向に拡張されるものの、ステントグラフト人工補綴具の最端クラウンは半径方向に拡張されない構成となる。
図4及び
図4Aは、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウンが部分的に展開されるかまたは半径方向に拡張される構成となっているが、それでもなおチップキャプチャ機構を介して捕捉されている状態の、送達システム200の遠位部を示す。
図5及び5Aは、ステントグラフトの最端クラウンがチップキャプチャ機構から解放されて、ステントグラフト人工補綴具230が完全に展開される構成となっている、送達システム200の遠位部を示す。
【0015】
ステントグラフト送達システム200は、その近位端部214に結合されるハンドル220及び(
図2Bに示されるように)その遠位端部216に結合される遠位先端部アセンブリ228を有する細長い内軸212、ステントグラフト人工補綴具230を解放可能な状態で送達システム200に結合する複数の細長いケーブル226、ケーブル226を誘導しその方向を決定するために内軸212上に摺動可能に配置されるガイドアセンブリ224ならびに、送達システムが体管腔内を展開部位まで追跡される間、ステントグラフト人工補綴具230を拘束したあるいは圧縮した直径構成に保持するためにガイドアセンブリ224上に摺動可能に配置される外側のシースまたはグラフトカバー202を含む。
図2Bを参照すると、ステントグラフト人工補綴具230は、第一縁部または端部234を有する管状移植片232と、第二縁部または端部236及びそれらの間にあってステントグラフト人工補綴具230を通じて管腔(図示せず)を画定する本体238を含む。実施形態において、従来は送達システムのチップキャプチャ機構に結合される端部である管状移植片232の第一端部234は、管状移植片232の近位端部及びステントグラフト人工補綴具230の近位端部と称することができ、また管状移植片232の第二端部236は、管状移植片232の遠位端部及びステントグラフト人工補綴具230の遠位端部と称することができる。管状移植片232は任意の適した移植材、例えば、低多孔率の織られたあるいは編まれたポリエステル、DACRON材料、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、シリコンなど、しかしそれらに限定されないその他適した材料から形成することができる。別の実施形態においては、移植材はまた、心膜等の生得材料または腸の粘膜化組織等のその他膜組織であり得る。ステントグラフト人工補綴具230はまた、移植材を支持するために管状移植片232に結合され、身体血管(図示せず)の内壁と並置するように自己拡張できるよう動作可能な、少なくとも1つの半径方向に圧縮可能なステントまたはスキャフォールド240を含む。
図2Bに示す実施形態では、ステントグラフト人工補綴具230は、一連の5つの独立したまたは別個の円柱ステント240を含む。各ステント240は、ニチノール等の自己拡張型材料またはばね材料から構築され、複数のクラウンまたは屈曲部242及び複数のストラットまたは直線部244を含む正弦波パターンのリングであり、各クラウンは一対の対向するストラット間に形成される。5つのステント240に関して示されてはいるが、ステントグラフト人工補綴具230の所望の長さ及び/またはステントグラフト人工補綴具230の意図される用途の少なくともいずれか1つに応じて、ステントグラフト人工補綴具230が5つより多いあるいは少ない数のステント240を含むことを、当業者なら理解するであろう。説明のためにのみ、管状移植片232の第一端部234に隣接しかつ近接して結合されるステントは、本明細書においては第一端ステント240Aと称され、管状移植片232の第二端部236に隣接しかつ近接して結合されるステントは、本明細書においては第二端ステント240Bと称されるが、ステントはすべて同一のまたは異なるパターンあるいは構成を有する可能性があるということを、当業者なら理解するであろう。ステント240は、スティッチまたは当業者に知られている他の手段によって管状移植片232に結合される。
図2に示す実施形態では、ステント240は管状移植片232の外表面に結合される。しかしステント240は、代替的に管状移植片232の内側表面に結合することもできる。ステントグラフト人工補綴具230が動脈瘤の治療のために使用される場合、ステント240は、ステントグラフト人工補綴具230を体管腔の内壁に一致するように係合させ、過剰な漏れを回避し、動脈瘤への加圧を防止する、すなわち、漏れ防止シールを提供するために十分な半径方向のばね力及び柔軟性を有する。血液またはその他体液の一部の漏れが生じ、ステントグラフト人工補綴具230によって隔離された動脈瘤に流入することがあるが、最適なシールを用いれば、動脈瘤への加圧及びその結果生じる破裂の危険性は減少することになる。
【0016】
図2及び
図2Bにおける圧縮された送達構成においては、ステントグラフト人工補綴具230は、ガイドアセンブリ224のマルチルーメンシャフト246上に配置され、グラフトカバー202は、ステントグラフト人工補綴具230を圧縮した直径構成に保持するためにマルチルーメンシャフト246を越えて延在する。マルチルーメンシャフト246については、本明細書にてより詳細に説明される。
図2及び
図2Bにおいて、グラフトカバー202は、引き込められていない送達構成にある。グラフトカバー202は近位端部204から遠位端部206まで延在し、管腔208を画定する。グラフトカバー202は、マルチルーメンシャフト246に沿って、また、それに対して軸方向に移動可能であり、移植片送達システムの近位部まで延在し、マルチルーメンシャフト246の周辺に配置されたステントグラフト人工補綴具230を選択的に拡張するために、ハンドル210等のアクチュエータを介して制御されることができる。ハンドル210は、グラフトカバー202の近位端部204に取り付けられまたは接続されたプッシュプルアクチュエータである場合がある。アクチュエータは代替的に、ノブが回転するときにグラフトカバー202が近位方向に引き込められて移植片が拡張するように、グラフトカバー202の近位端部204に取り付けられまたは接続された回転可能なノブ(図示せず)であってもよい。例えばいずれも本明細書において全体に参考として組み込まれている、Shiu氏他による米国特許第7,419,501号、Argentine氏による米国特許公開第2011/0257718号、Argentine氏による米国特許公開第2011/0270371号及びArgentine氏による米国特許公開第2011/0270372号において説明されているように、アクチュエータは代替的に回転及び摺動の組み合わせを利用して、グラフトカバー202を引込めてもよい。このようにして、アクチュエータが操作される時、すなわち手動により回されるか引かれる時、グラフトカバー202は内軸212上で近位方向に向かって近位に引き込められる。グラフトカバー202は、これらに限定されないが、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ナイロン、ポリエチレン、PEBAXを含む任意の適した柔軟なポリマ材料、もしくは混合または共押出のいずれかによるそれらの組み合わせによって構築されてもよい。
【0017】
内軸212は、NiTi (ニチノール
TM)、ステンレス鋼または同種のものから成る柔軟な金属管から構築されてもよく、あるいは、PEEK、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドまたは同種のものから成る硬いプラスチック管から構築されてもよい。内軸212は、そこからガイドワイヤ222を受けることにより、ガイドワイヤルーメン218を画定してもよい。代替として、内軸212は代わりに、その中に延在する管腔を持たない中実ロッド(図示せず)であってもよい。内軸212が中実ロッドである実施形態においては、遠位先端部アセンブリ228のテーパ状の柔軟なノーズコーン258により、内軸212は標的部位まで追跡される。本明細書において後述するように、遠位先端部アセンブリ228はまた、ノーズコーン258から近位に延在し、ステントグラフト人工補綴具230の展開において機能するスリーブ部260を含む。スリーブ部の近部は、遠位先端部アセンブリ228の近位端部264を画定する。遠位先端部アセンブリ228のノーズコーン258及びスリーブ部260については、単一のユニットによる形成され、かつ/または個々のパーツあるいは部品により組み立てられるかの方法が可能であることを、当業者なら理解するであろう。遠位先端部アセンブリ228に適した材料には、PEBAX、ウレタン、シリコン、その他柔軟なポリマまたは同種のものが含まれる。またそれら材料のいずれも、患者の体内にステントグラフトを送達するためにX線透視法を用いる際に、臨床医に視覚的な手掛かりを与えるために、放射線不透過性添加剤を含んでもよい。
【0018】
ガイドアセンブリ224は、
図2Aの断面図で示す通り、マルチルーメンシャフト246が内軸212上に配置されるように、メインまたはセントラルルーメン248を画定する細長いマルチルーメンシースまたはシャフト246を含む。マルチルーメンシャフト246は、これらに限定されないが、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ナイロン、ポリエチレン、PEBAXを含む任意の適した柔軟なポリマ、もしくは混合または共押出のいずれかによるそれらの組み合わせによって構築されてもよい。本明細書に記載の他の実施形態において、マルチルーメンシャフト246は、ステンレス鋼をスパイラルカットしたシャフトまたは管から構築されてもよい。セントラルルーメン248に加え、マルチルーメンシャフト246もまた、その中のセントラルルーメン248の周辺で同心円に配置される複数の管腔250を画定する。実施形態においては必要ではないが、送達の間の、任意の所望の液体の流路及び/またはステントグラフト人工補綴具230における管状移植片232のフォールディングのために、管腔250の間の材料の量を最小限にし、それによってマルチルーメンシャフト246及びグラフトカバー202の間の管腔内の間隔を増大させてマルチルーメンシャフト246の柔軟性をも増大させることができるよう、マルチルーメンシャフト246の外表面247は一般的にでこぼこであるかまたは波打っている。マルチルーメンシャフト246は代替的に、滑らかな外表面を持つ円柱であってもよい。管腔250の数はケーブル226に等しく、ケーブル226の数はステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aの数に等しい。また各管腔250は、中にケーブルを摺動可能に受けることができるような大きさである。6つのケーブル226が示されてはいるが、最端クラウン242Aの数及びステントグラフト人工補綴具230の大きさに応じて、6つより多いあるいは少ない数のケーブルを用いてもよいことを、当業者なら理解するであろう。各ケーブル226は、(
図2に示すように)送達システムの近位端部まで延在する第一端部または近位端部266及び、(
図2B及び
図2Dに示すように)ステントグラフト人工補綴具230を越えて遠位に延在する第二端部または遠位端部268を含む、材料の細長いストランドである。ケーブル226の典型的な材料には、単一繊維またはポリプロピレン等のプラスチックの縫合材料が含まれるが、これに限定されない。後述するように、各ケーブル226の中間部270は、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aの周囲を囲むかまたはその周囲で係止し、また、それを拘束し、それによって一時的にまたは解放可能な状態で、ステントグラフト人工補綴具を、
図2B及び
図2Cに示される送達構成における送達システムに結合させる。
【0019】
マルチルーメンシャフト246に加え、ガイドアセンブリ224もまたマルチルーメンシャフト246の遠位端部256上に形成されるかまたは配置されるガイド部品252及び環状止め具254を含む。ガイド部品252及び環状止め具254は、マルチルーメンシャフト246の周辺で周方向に延在し、最初に
図2B及び
図2Cの断面図で示されている。環状止め具254及びガイド部品252は
図2E及び
図2Fそれぞれにおいて、例証のために送達システムから取り外されて示されている。
図2Bに示されるガイドアセンブリ224及び遠位先端部アセンブリ228の第一相対位置においては、本明細書にてより詳細に後述するように、遠位先端部アセンブリ228のスリーブ部260はガイド部品252及び環状止め具254を越えて延在し、それによってケーブル226の遠位端部268を拘束する。ガイドアセンブリ224のガイド部品252及び環状止め具254については、単一のユニットによる形成される、かつ/または個々のパーツあるいは部品により組み立てられるかの方法が可能であることを、当業者なら理解するであろう。ガイド部品252及び環状止め具254に適した材料には、金属材料と同様に、PEBAX、ナイロン、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン(ABS樹脂)、ポリカーボネート及び同様のポリマが含まれる。
【0020】
図2B〜
図2Fに関しては、ケーブル226の中間部270を受けるため、傾斜したまたはテーパ状のガイド部品252の外表面274上に、溝またはチャネル272が形成される。さらに、ケーブル270の中間部270を受けるため、環状止め具254の外表面278上に、溝またはチャネル276が形成される。ガイドアセンブリ224及び遠位先端部アセンブリ228の第一相対位置においては、ガイド部品252の溝272及び276ならびに環状止め具254はそれぞれ、ガイド部品及び環状止め具の周辺に巻き付けられたケーブル226の中間部270を保持するかまたは受ける。より具体的には、ケーブル226はマルチルーメンシャフト246の管腔250を通って延在し、管腔250から出ていく。ケーブル226は、ガイド部品252の遠位端部周辺で半径方向に延在し、その後ガイド部品252におけるテーパ状の外表面274上の溝272内で、近位方向に向かって長手方向に延在する。外表面274のテーパや傾斜と同様に、通常丸みを帯びているガイド部品252の遠位端部によりケーブル226が環状止め具254の方向に向けられまたは誘導され、ケーブル226のもつれ及び/または「からまり」を防ぐ一助となる。外表面274のテーパまたは傾斜の程度あるいは角度については、示された状態から異なる設計構成及び用途に順応するように変化する可能性がある。ケーブル226はその後、環状止め具254の内表面上に形成される溝またはチャネル279内にまたはそれらを通って延在する。ケーブル226はその後、環状止め具254の近位端に隣接するまたは当接する、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aの周辺で、半径方向に延在するかまたはその周辺を囲む。ケーブル226はその後、環状止め具254の外表面278上の溝276内で、遠位方向に向かって長手方向に延在する。取り付けられたまたは一体的に形成されたボールまたは球体280を含むケーブル226の遠位端部268は、遠位先端部アセンブリ228における、環状止め具254の遠位端部、ガイド部品252のテーパ状の外表面274及びスリーブ部260の内表面の間に形成される間隔または隙間282の中で、拘束されるかまたは挟まれる。球体280は、ケーブル226の直径または幅より広い直径を有し、球体280の直径は、環状止め具254の外表面278上の溝276の幅よりも広く、球体が環状止め具の溝276を通過できないようになっている。したがって、ケーブル226の遠位端部が、環状止め具254とガイド部品252との間で拘束されまたは挟まれ、さらに遠位アセンブリ228に覆われた状態で、ケーブル226の中間部270はステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aの周辺を囲みまたはその周辺で係止し、ステントグラフト人工補綴具を環状止め具254に対してしっかりとまたは確実に引く。ケーブル226の近位端部266に張力が作用してケーブル226の全体が緊張し、ケーブル226の中間部270が最端クラウン242Aを環状止め具254に対して確実にまたはしっかりと保持する。実施形態においては、スリーブ部260は、組立ての間にケーブル226の中間部270へのアクセスを可能にする複数の穴262(
図2を参照)を含む。
【0021】
人工補綴具230の最初のまたは部分的な展開が所望される場合には、
図3及び
図3Aに示されるように、グラフトカバー202が部分的に引き込められ、人工補綴具230の本体238の少なくとも一部を自己拡張させることが可能になる。
図3Aに示される通り、第一または近位ステント240Aの最端クラウン242Aが、ケーブル226の中間部270を介して、環状止め具254に対してしっかりとまたは確実に引かれた状態にある間、ステントグラフト人工補綴具230の本体238は拡張することが可能である。遠位先端部アセンブリ228及びガイドアセンブリ224はなお第一相対位置にあり、第一相対位置では、遠位先端部アセンブリ228のスリーブ部260がガイドアセンブリ224の遠位部すなわちガイド部品252及び環状止め具254を越えて延在し、ケーブル226の遠位端部268が拘束される。ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aがなお、ケーブル226を介して送達システム200に結合された状態のままで、所望であればステントグラフト人工補綴具を再位置決めしてもよい。
図3の実施形態においては、グラフトカバー202の遠位端部206が人工補綴具230の近位部または第一端部を覆うことまたは拘束することがなくなり、また本体238の少なくとも一部を覆うことがなくなるようにグラフトカバー202が部分的に引き込められ、それによって人工補綴具230の近位部または第一端部234が、ケーブル226に拘束される場合を除いては自己拡張が可能になる。しかし、
図3の実施形態においては、グラフトカバー202はなお人工補綴具230の遠位部または第二端部236を拘束している。これにより、グラフトカバー202の遠位端部206が人工補綴具230の遠位部または第二端部236を覆うことがなくなるようにグラフトカバー202が引き込められる場合よりも、人工補綴具230の再位置決めが容易になる。しかし、本明細書の他の実施形態(図示せず)においては、遠位端部206が人工補綴具230の遠位部または第二端部236を覆うこと、また半径方向に拘束することがなくなるように、グラフトカバー202が引き込められてもよい。いずれの実施形態においても、再位置決めが正常に完了した後のある時点で、グラフトカバー202の遠位端部206が人工補綴具230の遠位部または第二端部236を覆うこと、または拘束することがなくなるようにグラフトカバー202が完全に引き込められ、それによって、遠位部または第二端部236を完全に拡張することが可能になる。
【0022】
遠位先端部アセンブリ228及びガイドアセンブリ224はなお第一相対位置にあり、第一相対位置では、遠位先端部アセンブリ228のスリーブ部260が、ガイドアセンブリ224の遠位部を越えて延在し、ケーブル226の遠位端部268が拘束される。ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aの、漸進的な連続的な 半径方向への拡張及び/または収縮可能にするために、ケーブル226の張力はその近位端部266(
図2を参照)を介して選択的に調整することができる。より具体的には、
図4及び
図4Aに関して、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aは、ケーブル226の張力を低下させることによって、連続的に漸進的にかつ半径方向に拡張されるかまたは展開される。ケーブル226の中間部270はなお、最端クラウン242Aの周辺で囲まれるかまたは係止されるが、最端クラウンは環状止め具254に対して引かれることがなくなる。むしろケーブル226の張力を低下させることによって、最端クラウン242Aは半径方向に自己拡張することが可能になり、最端クラウンが送達システム200のガイドアセンブリ224から半径方向に離間される。任意の再位置決めが所望される場合には、ケーブル226の張力を増大させ、最端クラウン242Aを
図3及び
図3Aで示される位置に向かうかまた戻るように半径方向に収縮させることができる。
【0023】
任意の及びすべての再位置決めが行われ、ステントグラフト人工補綴具230が所望通りに位置決定された後に、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aは、遠位アセンブリ228の移動を介して完全に展開され、送達システム200から解放されることができる。より具体的には、ステントグラフト人工補綴具を完全に展開するために、そこで結合された内軸212及び遠位先端部アセンブリ228が、遠位先端部アセンブリ228及びガイドアセンブリ224が第二相対位置に至るまで、ガイドアセンブリ224に対して遠位に前進し、第二相対位置においては遠位先端部アセンブリ228のスリーブ部260はガイドアセンブリ224の遠位部を越えて延在せず、かつ、ケーブル226の遠位端部268を拘束しない。つまり、そこで結合された内軸212及び遠位先端部アセンブリ228は、ケーブル226の遠位端部268が遠位先端部アセンブリ228の近位端部264に近接するまで、遠位に前進する。
図5及び
図5Aで示されるように、ケーブル226の遠位端部268が露出されるかまたは、遠位先端部アセンブリ228に覆われないようになり、このようにしてケーブル226は、ケーブル226の近位端部266上で引かれることにより、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aを解放するかまたはステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aから取り外される。こうしてステントグラフト人工補綴具は送達システム200に結合されないようになり、その後送達システムは、ステントグラフト人工補綴具230を生体内原位置において展開させたまま、患者から取り外されることが可能になる。ステントグラフト人工補綴具の最後の展開が、遠位先端部アセンブリ228の遠位の前進を介して説明されているが、遠位先端部アセンブリ228とガイドアセンブリ224との間で所望される相対的移動はガイドアセンブリ224の近位の引き込みを介しても達成可能であることを、当業者なら理解するであろう。
【0024】
図6〜
図8は、ステントグラフト人工補綴具の部分的なまたは漸進的な展開及び再位置決めを可能にする複数のケーブルを有するチップキャプチャ機構を含む、本明細書に記載の別の実施形態による送達システム600の遠位部を示す。本実施形態においてケーブルは、ステントグラフト人工補綴具の最端クラウンの周囲を囲むよりはむしろ、クラウンを選択的に拘束してステントグラフト人工補綴具を送達システムに結合するため、ステントグラフト人工補綴具の最端クラウンを越えて延在する。
図6〜8においては、ステントグラフト人工補綴具230の近位端ステント240Aのみが例証のために示されているが、送達システム600は、これに限定されないが、ステントグラフト人工補綴具230のようなステントグラフト人工補綴具を送達しまた展開する構成であることを、当業者なら理解するであろう。
図6は、圧縮された送達構成の近位端ステント240Aを示す。
図7は、部分的に展開されるかまたは半径方向にされた構成であるがなお、チップキャプチャ機構を介して捕捉された状態である、近位端ステント240Aの最端クラウン242Aを示す。また
図8は、ケーブルが取り外されてステントグラフト人工補綴具の最端クラウンがチップキャプチャ機構から解放された後の、ガイドアセンブリの位置を示す。
図6Aは、
図6のA−A線における断面図を示しており、例証のためにのみステントグラフト送達システムからケーブル及びステントグラフト人工補綴具を取り外しているが、一方、
図6Bでは例証のためにのみ、送達システムから取り外されたガイドアセンブリを示している。
【0025】
送達システム200と同様に送達システム600は、その遠位端部616に結合される遠位先端部アセンブリ628を有する細長い内軸612、近位端ステント240Aを解放可能な状態で送達システム600に結合する複数の細長いケーブル626、ケーブル626を誘導しその方向を決定するために内軸612上に摺動可能に配置されるガイドアセンブリ624ならびに、送達システムが体管腔内を展開部位まで追跡される間、ステントグラフト人工補綴具230を拘束したあるいは圧縮した直径構成に保持する外側のシースまたはグラフトカバー602を含む。内軸612は上述の内軸212と同様であり、グラフトカバー602は上述のグラフトカバー202と同様である。しかし、本実施の形態においてガイドアセンブリ624は、内軸612上に摺動可能に配置されたシャフト646及び、シャフト646の遠位端部656上に形成されるかまたは配置されるアンビルまたはガイド部品652を含む。シャフト646は少なくとも最端クラウン242Aから遠位先端部アセンブリ628まで延在し、比較的短い。遠位先端部アセンブリ628における管状スリーブ部660の内表面は、ガイド部品652の外表面上でスレッド688と嵌合するスレッド686を含む場合がある。スレッド686、688は、スリーブ部660の内表面の外表面及びガイド部品652の外表面の周辺をそれぞれ包み、適合したまたは嵌合する一対のスレッドを形成する、連続的な螺旋凸条である。当業者には明らかであるように、また、本明細書にてより詳細に後述するように、スレッド686、688は、回転移動を並進移動または直線移動に転換するために使用される。
【0026】
各ケーブル626は、送達システム600の近位端部から、内軸612を越え、シャフト646を越えて延在し、また、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aを越えるかあるいはその周辺、そして、傾斜したまたはテーパ状のガイド部品652の外表面674上に形成される縦溝672内に延在する、材料の細長いストランドである。
図6で示されるガイドアセンブリ624及び遠位先端部アセンブリ628の第一相対位置においては、本明細書にてより詳細に後述するように、遠位先端部アセンブリ628の管状スリーブ部660は、ガイド部品652を越えて延在し、それにより、ケーブル626の遠位端部668を拘束する。
【0027】
より具体的には、取り付けられたまたは一体的に形成されたボールまたは球体680を含むケーブル626の遠位端部668は、ガイド部品652のテーパ状の外表面674上で形成された環状チャネルまたは溝684内で受ける。ケーブル626の遠位端部668は、ガイド部品652のテーパ状の外表面674とそれに対応する遠位先端部アセンブリ628のスリーブ部660のテーパ状の内表との間に形成される間隔682内で拘束されるかまたは挟まれる。球体680はケーブル626の直径または幅より広い直径を有し、球体680の直径は、縦溝672の幅よりも広く、球体がガイド部品の縦溝を通過できないようになっている。したがって、ケーブル626の遠位端部はガイド部品652と遠位アセンブリ628との間で挟まれまたは締付けられ、ケーブル626の中間部670はステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aを覆い、拘束する。ケーブル626の近位端部に張力が作用して、ケーブル626は最端クラウン242A上で、全体が真直ぐにまたは緊張した状態で保持され、それによってガイドアセンブリ624に向かってまたはそれに対して、最端クラウンを引くかまたは拘束する。
【0028】
人工補綴具630の最初のまたは部分的な展開が所望される場合には、
図3及び
図3Aに関して上述したように、グラフトカバー602が部分的に引き込められ、人工補綴具の本体の一部の自己拡張が可能になる。ケーブル626の中間部670によって最端クラウンが覆われてかつ拘束された状態にある間、ステントグラフト人工補綴具の本体の少なくとも一部が拡張する。遠位先端部アセンブリ628及びガイドアセンブリ624はなお第一相対位置にあり、第一相対位置では、遠位先端部アセンブリ628のスリーブ部660がガイド部品652を越えて延在し、ケーブル626の遠位端部668を拘束する。この状態で、ステントグラフト人工補綴具230における最端クラウン242Aの、漸進的な連続的な半径方向への拡張及び/または収縮を可能にするために、ケーブル626の張力を選択的に調整してもよい。より具体的には、
図7に関連して、ケーブル626の張力を低下させることにより、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aは、連続的に漸進的にかつ半径方向に拡張されるかまたは展開される。ケーブル626の中間部670はなお、最端クラウン242Aを越えて延在するが、最端クラウンはガイドアセンブリ624に対して引かれなくなる。むしろケーブル626の張力を低下させることにより、最端クラウン242Aは半径方向に自己拡張できるようになり、最端クラウンは送達システム600のガイドアセンブリ624から半径方向に離間される。任意の再位置決めが所望される場合には、ケーブル626の張力を増大させ、最端クラウン242Aを
図6で示される位置に向かうかまた戻るように半径方向に収縮させることができる。必要ではないが、ガイド部品652のテーパ状の外表面674は、ガイド部品652と管状スリーブ部660との間でケーブル626の遠位端部668を締付ける一助となる。近位端ステント240Aを選択的に拡張または収縮させるためにケーブル626の張力が変化させられあるいは調整されている際には、球体680の相対的に大きな寸法に加え、テーパ状の外表面674は、ケーブル626の遠位端部668が意図せずに縦溝672外に摺動することを防止する。
【0029】
任意の再位置決めがすべて行われ、ステントグラフト人工補綴具630が所望通りに位置決定された後に、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aは、遠位アセンブリ628の回転を介して完全に展開され、送達システム600から解放されることができる。ステントグラフト人工補綴具を完全に展開するために、そこで結合された内軸612及び遠位先端部アセンブリ628が回転させられるかまたは回される。つまり遠位先端部アセンブリ628は、シャフトが回転することで遠位先端部アセンブリもまた回転する(すなわち、それらが互いに対して回転可能でない)ように、内軸612に結合されるかまたは取り付けられる。内軸612及び遠位先端部アセンブリ628が回転させられる際には、ガイド部品652の溝672、684内で固定され、あるいは保持された状態のケーブル626により、ガイドアセンブリ624の回転は防止される。本明細書に記載の別の実施形態(図示せず)においては、シャフト646は、送達システムの近位端まで延在できるような細長いシャフトであってもよいし、シャフト646の近位端部は、ガイドアセンブリ624の回転を防止するために静止状態に保持されてもよい。 ガイドアセンブリ624の回転が防止されるため、遠位先端部アセンブリ628及びガイド部品652のねじ状の関係により、遠位先端部アセンブリ628の回転移動は、遠位先端部アセンブリ628に対して近位方向に向かうガイドアセンブリ624の並進移動または直線移動に転換される。遠位先端部アセンブリ628及びガイドアセンブリ624が
図8で示すように第二相対位置におかれるまで、内軸612の回転は継続する。第二相対位置においては、遠位先端部アセンブリ628のスリーブ部660はケーブル626の遠位端部668を拘束しない。つまり、ケーブル626の遠位端部668が遠位先端部アセンブリ628の近位端に近接するまで、内軸612の回転は継続する。スリーブ部660は、ボール680を受ける環状溝684の少なくとも一部を露出して引き込められる。その時点でケーブル626の遠位端部668は、ガイド部品652のテーパ状の外表面674及びそれに対応する遠位先端部アセンブリ628におけるスリーブ部660のテーパ状の内表面の間で形成される間隔682を介して解放されるかまたは拘束を解かれてもよい。ケーブル626の遠位端部668が拘束されなくなる際には、ケーブル626の中間部670は、ステントグラフト人工補綴具230の最端クラウン242Aから解放されるかまたは取り外されてもよい。このようにして、ステントグラフト人工補綴具は送達システム600と結合されなくなり、その後送達システムは、ステントグラフト人工補綴具230を生体内原位置において展開させたまま、患者から取り外されることが可能になる。
【0030】
図6〜
図8は、ガイドアセンブリ624及び遠位先端部アセンブリ628の相対的移動が内軸612の回転を介して達成されることを示し、説明しているが、スレッド686、688を嵌合させる以外の構造関係を利用し、その結果としてガイドアセンブリ624及び遠位先端部アセンブリ628の間の相対的移動を可能にしてもよいことを、当業者なら理解するであろう。例えば別の実施形態(図示せず)においては、シャフト646は、内軸612を越えて送達システム600の近位端部まで延在する細長いシャフトであってもよく、また、その細長いシャフト646は、ステントグラフト人工補綴具を完全に展開するため、近位に引き込められてもよい。代替的に、そこで結合される内軸612及び遠位先端部アセンブリ628を細長いシャフト626内で遠位に前進させ、ガイドアセンブリ624と遠位先端部アセンブリ628との間の相対的移動を達成してもよい。
【0031】
さらに、本明細書に記載の実施形態においては、ステントグラフト人工補綴具230はオープンウェブまたはフリーフロー近位端構成を有すると示しているが、本明細書において説明する送達システムは、様々な構成を有するステントグラフトとともに利用することが可能である。オープンウェブ近位端構成により、埋め込みの最中及び/または埋め込み後における灌流のために、最端クラウン242Aを通して血液を流すことが可能となる。本明細書において利用されるように、「最端クラウン」とは、クラウンが移植材に結合されているか否か、またはクラウンが移植材の縁を越えて延在するか否かに関わらず、最近位端クラウンまたはステントグラフト人工補綴具の先端のことを指す。より具体的には、最端クラウン242Aが移植材を通過するかまたは越えて延在し、それにより最端クラウンが露出されるかまたはむき出しであるように、第一端ステント240Aは管状移植片232に取り付けられる。代替的に、ステントグラフト人工補綴具230はクローズドウェブ近位構成を有してもよい。クローズドウェブ構成においては、最端クラウンは移植材を通過するかまたは越えて延在せず、むしろ移植材に覆われる。用途によって、クローズドウェブ構成が必要となるかまたは選択される場合がある。すなわち、腹部大動脈瘤ではなく胸部大動脈瘤である場合及び/または利用者の選好による。本明細書において説明される送達システムを、クローズドウェブ構成を有するステントグラフト人工補綴具と共に利用する場合、ケーブル226/626は移植材とクラウンとの間でねじ状であってもよいし、または、移植材を通過してもよい。さらに上述の実施形態においては、ステントグラフト人工補綴具のスキャフォールディングまたはサポートは、一連の独立したまたは別個の自己拡張型ステント/正弦波パターンのリングと示されている。しかし当業者には明らかであるように、ステントグラフト人工補綴具のサポート構造またはスキャフォールディングは、自己拡張型ステントを形成するために互いに結合される一連の正弦波パターンのリングまたは単一の螺旋状ステントまたは一連の螺旋状ステント等の他の構成を有してもよい。別の実施形態においては、ステントグラフト人工補綴具のサポート構造またはスキャフォールディングは、レーザーカット管状ステント等の単一の管部品であってもよいが、これに限定されない。
【0032】
本発明による様々な実施形態について上述されたが、様々な実施形態が、制限としてではなく説明及び例示のみを提示したことが理解される。形態及び詳細の様々な変化が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われ得ることが当業者に明らかになるだろう。そのため、本発明の幅及び範囲は、上述した例示的な実施形態の任意の実施形態において制限されるべきではなく、添付特許請求の範囲及びその均等物に従ってのみ規定されるべきである。本明細書で論じられる各実施形態及び本明細書で引用される各参考文献の各特徴が、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせて使用され得ることも理解されるであろう。本明細書で論じられるすべての特許及び出版物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。