特許第6261621号(P6261621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261621アルファ−シヌクレイン抗体及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261621
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】アルファ−シヌクレイン抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20180104BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180104BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   C07K16/18ZNA
   C12N15/00 A
   A61K39/395 D
   A61K39/395 N
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/00
   A61P25/18
   G01N33/53 D
   G01N33/531 A
【請求項の数】23
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2015-559593(P2015-559593)
(86)(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公表番号】特表2016-511254(P2016-511254A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】IB2014059287
(87)【国際公開番号】WO2014132210
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】13/781,158
(32)【優先日】2013年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/138,347
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513208009
【氏名又は名称】ユナイテッド アラブ エミレーツ ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】UNITED ARAB EMIRATES UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エル−アグナフ,オマル
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−512634(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/177972(WO,A1)
【文献】 Protein Engineering Design & Selection, 2006, vol.19, no.11, p.497-502
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−シヌクレインオリゴマーに対する高結合親和性と、α−シヌクレインのフィブリルへの高結合親和性と、α−シヌクレインモノマーに対する低結合親和性とを有する抗体又はそのフラグメントであって、
前記抗体又はそのフラグメントは、
免疫グロビン重鎖の可変領域(VH)と免疫グロビン軽鎖の可変領域(VL)とを備え、
該VH鎖において、CDR1領域が、配列番号16,28又は40のアミノ酸配列を有し、
該VH鎖において、CDR2領域が、配列番号17,29又は41のアミノ酸配列を有し、
該VH鎖において、CDR3領域が、配列番号18,30又は42のアミノ酸配列を有し
VL鎖において、CDR1領域が、配列番号22,34又は46のアミノ酸配列を有し、
該VL鎖において、CDR2領域が、配列番号23,35又は47のアミノ酸配列を有し、
該VL鎖において、CDR3領域が、配列番号24,36又は48のアミノ酸配列を有する、該抗体又はそのフラグメント。
【請求項2】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントにおいて
VHが、配列番号2,6又は10に示されるアミノ酸配列を備える抗体又はそのフラグメント。
【請求項3】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントにおいて
VLが、配列番号4,8又は12に示されるアミノ酸配列を備える抗体又はそのフラグメント。
【請求項4】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントにおいて
VHとVLとが、それぞれ、配列番号2と4か、配列番号6と8か、又は配列番号10と12かに示されるアミノ酸配列を備える抗体又はそのフラグメント。
【請求項5】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、ヒトのα−シヌクレインのオリゴマー及びフィブリルに対して10−7Mより小さい解離定数Kdを有する抗体又はそのフラグメント。
【請求項6】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、モノマーのα−シヌクレインに対して10−5Mより大きい解離定数Kdを有する抗体又はそのフラグメント。
【請求項7】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントにおいて、
抗体が、α−シヌクレインのオリゴマー形態に対してよりもα−シヌクレインのフィブリルに対して高い親和性を有する抗体又はそのフラグメント。
【請求項8】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、α−シヌクレインのC末端領域を備えるエピトープに結合する抗体又はそのフラグメント。
【請求項9】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、立体構造の抗体である抗体又はそのフラグメント。
【請求項10】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、α−シヌクレインの線形エピトープを認識しない抗体又はそのフラグメント。
【請求項11】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントにおいて、
抗体が、単クローン抗体である抗体又はそのフラグメント。
【請求項12】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントと、医薬的に容認可能な希釈剤又はキャリアとを備える医薬組成物。
【請求項13】
薬物として使用する請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項14】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントであって、
それを個体に投与して、該個体におけるα−シヌクレインの病理による神経変性疾患治療に使用するためのものである、抗体又はそのフラグメント
【請求項15】
請求項14記載の抗体又はそのフラグメントにおいて、
前記神経変性疾患が、パーキンソン病、レビー小体型認知症、アルツハイマー病、多系統萎縮症、精神病、統合失調症又はクロイツフェルト・ヤコブ病である抗体又はそのフラグメント
【請求項16】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントを備える、神経変性疾患を個体が有するか否かの決定方法に使用するテストキット。
【請求項17】
α−シヌクレインのフィブリル及び凝集物を検出する方法であって、
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントを生物学試料に加えるステップと、
α−シヌクレインのフィブリル及び/又は凝集物と、抗体又はそのフラグメントとの間に形成される複合体の存在を検出するステップとを備える方法。
【請求項18】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントであって、
それを被験者からの生物学試料に加えることと、
α−シヌクレインの凝集物と、抗体又はそのフラグメントとの間に形成される複合体の存在又は非存在を検出することを備える方法による、
α−シヌクレインに関係する神経変性疾患の診断に使用するためのものである、抗体又はそのフラグメント
【請求項19】
メージング剤として使用する請求項1記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項20】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントであって、
それを個体に投与することと、
抗体を検出することとを備える方法による、
α−シヌクレイン凝集物のイメージングに使用するためのものである、抗体又はそのフラグメント
【請求項21】
請求項20記載の抗体又はそのフラグメントにおいて、
前記抗体は検出可能な標識を備える抗体又はそのフラグメント
【請求項22】
請求項1記載の抗体又はそのフラグメントが、検出可能な標識によって結合されている抗体又はそのフラグメント。
【請求項23】
請求項22記載の抗体又はそのフラグメントにおいて、
前記検出可能な標識は、蛍光標識、放射性標識、又は造影剤から選択されたものである抗体又はそのフラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−シヌクレイン凝集物(例:アミロイドのフィブリル(fibril)、プロトフィブリル(protofibril)及びオリゴマー)に対する高親和性とα−シヌクレインモノマーに対する低親和性とを有する抗体又はそのフラグメントに関する。本発明は、また、α−シヌクレインに関係する神経病理学の診断、治療及び予防におけるこれらの抗体及びフラグメントの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シヌクレインは、神経組織において高レベルで表現される14kDaの小タンパク質のファミリーである。ファミリーのうちの3つのメンバーは、α−,β−,及びγ−のシヌクレインである。
【0003】
α−シヌクレインは、主に脳組織に発現し、主に神経のシナプス前終末に位置する。α−シヌクレインのヒト形態の主要構造は、140アミノ酸ポリペプチドから成る。ヒトのα−シヌクレインの野生型の配列は図20(配列番号:49)に見出すことができる。α−シヌクレインは、通常、可溶性モノマータンパク質として存在するが、その環境に関係して幾つかの折り重なった確認(confirmations)を採ることができる。モノマーのα−シヌクレインは、また、凝集して、オリゴマー及び高分子量不溶性フィブリルになることができる。
【0004】
シヌクレインの異常性に関係する病気は、しばしばシヌクレイン病(synucleinopathies)として参照付けられる。シヌクレイン病は、神経変性疾患の病態、パーキンソン病(PD)、レビー小体型認知症(DLB)及び多系統萎縮症(MSA)を含む。シヌクレイン病では、PD及びDLBの脳ホモジネートの可溶性α−シヌクレインオリゴマーが正常の脳に比して上昇することが示されている。さらに、しばしばPD及びDLBの最終段階を特徴付ける腫瘍性病変(neuropathologic lesions)(レビー小体)は、フィブリルのα−シヌクレインの沈着物からなることが広く判明している。
【0005】
商業的に使用されているα−シヌクレイン抗体が、知られており、脳のPD病理を特徴付けることに広く使用されている。しかし、そのような抗体は、非特異性であり(non-specific)、α−シヌクレインのモノマー形態及び凝集形態を共に認識しない。そして、α−シヌクレインのすべての凝集形態を認識しないかもしれない。
【0006】
Syn−1(BDバイサイエンス(BD Biosciences)社製)及びmAb 211(サンタ クルツ バイオテクノジィ(Santa Cruz Biotechnology)社製)を含んでいる。知られているα−シヌクレイン抗体は、α−シヌクレインのモノマー及び凝集形態に等しく結合することが知られている。
【0007】
国際公開WO2011/104696号公報は、α−シヌクレインのプロトフィブリル形態を特異的に認識する抗体を開示する。これらの抗体は、α−シヌクレインのフィブリルとモノマーとに低結合親和性(low binding affinity)を示す。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、α−シヌクレイン凝集物に対する高結合親和性とα−シヌクレインのモノマー形態に対する低結合親和性とを有する抗体及びフラグメントを目指している。
【0009】
本発明は、また、そのような抗体又はそのフラグメントを備える組成と、該抗体又はフラグメントを使って、α−シヌクレインの凝集物の存在を検出する方法、及びα−シヌクレインに関係する病気の診断でのそれらの使用とを目指している。
【0010】
さらなる実施形態では、本発明は、そのような抗体又はそのフラグメントを備える組成と、該抗体又はフラグメントを使って、α−シヌクレインの病理学に関係する病気を治療又は診断する方法とを目指している。
【0011】
α−シヌクレイン凝集物に対する特異性のある抗体を用いることは、PD及び他のシヌクレイン病の新規な病理学を現出させる助けとすることができる。
【0012】
α−シヌクレインの凝集物に特異性がありかつα−シヌクレインのモノマーに対して低結合親和性を有する抗体を生産することによって、本発明は、α−シヌクレインに関係する神経変性疾患の進行を追尾する新規のツールを提供する。本発明の抗体は、また、α−シヌクレインに関係する病気の治療に使用することができる抗体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】α−シヌクレインのフィブリルに免疫のある宿主(宿主19,22及び23)及びα−シヌクレインのオリゴマーに免疫のある宿主(宿主210,211及び212)とに対する力価検査の結果を示し、例1で説明される図。力価検査の結果を示し、例1で説明される図。
図2】α−シヌクレイン凝集物(フィブリル(F)、オリゴマー(O)及びモノマー(M))に対する雑種細胞の特異性をスクリーニングしたドットプロットの結果を示し、例2で説明される図。
図3】抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04、並びにSyn−1(BD Bioscience)の抗体をコントロールとして用いて抑制ELISAの結果を示し、例4で説明される図。
図4】異なるタンパク質で形成されたアミロイドフィブリルに対する抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04、並びに抗体Syn−1の交差反応性を示し、例5(A)で説明される図。
図5】β−シヌクレイン及びγ−シヌクレインによって形成されたアミロイドフィブリルに対する抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04の抗体、並びにSyn−1の抗体の交差反応性を示し、例5(B)で説明される図。
図6】α−シヌクレインのペプチドNAC(61−98),NAC(61−75),及び切断されたα−シヌクレイン(1−122)に対する抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04の抗体、並びに抗体Syn−1の交差反応性を示し、例5(C)で説明される図。
図7】Biacore(商標)を使ってのmAbのSyn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04,Syn−03,Syn−04及びmAb211(Santa Cruz Biotechnology社製)についてのセンサーグラムの結果を示し、例6で説明される図。についてのセンサーグラムの結果を示し、例6で説明される図。
図8】mAbのSyn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04、並びにSyn−1の抗体(コントロールとしての抗体)についてのペプスカン(社名Pepscan)結果を、エピトープ決定のドットプロットにより示し、例7で説明される図。
図9】ELISAによるペプスカン結果を示し、例7で説明され、プレートが本発明A)Syn−F1,B)Syn−F2,C)Syn−01,D)Syn−02,E)Syn−03及びF)Syn−04、並びにプレートがコントロール抗体G),Syn211,H)N−19,I)FL−1,J)Syn−1,抗体K)3B6及びL)5C2により調べられている図。
図10】ペプスカンELISAのプレート上に置かれたのX線フィルムのプロットを示し、例7で説明され、コントロール抗体N−19,FL−140,5C2,Syn−1,Syn−211,3B6のプロットは図10のAに示され、本発明の抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04は、図10のBに示されている図。
図11】α−シヌクレイン凝集物の検出についてのサンドイッチ法のELISAの結果を示し、例8で説明され、抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04、並びにSyn−1の抗体が捕獲抗体として使用され、FL−140が検出抗体として使用された図。
図12】リン酸化したSer129−α−シヌクレイン凝集物の検出についてのサンドイッチ法のELISAの結果を示し、例9として説明され、抗体Syn−02及びSyn−F2,並びにSyn−1が捕獲抗体として使用され、ウサギの抗p−S129−α−シヌクレインが検出抗体として使用された図。
図13】パーキンソン病無しの被験者のコントロール症例からの組織の免疫組織化学分析を示し、例10で説明される図。
図14】パーキンソン病の症例からの組織の免疫組織化学分析を示し、例10で説明される図。
図15】多系統萎縮症の症例からの組織の免疫組織化学分析を示し、例10で説明される図。
図16】パーキンソン保持PD患者(A)、進行性DLB患者(B)及び古典的なPD患者からの組織試料におけるSyn−02の染色の結果を示し、例11で説明される図。
図17】海馬のCA2領域の脳セクション(A)と嗅内皮質に脳セクション(B)との治療のSyn−F2抗体の染色結果を示し、例12で説明され、各セクションは次の治療:1)前処理無しか、2)クエン酸緩衝における10分、120℃のオートクレーブか、3)15分間のギ酸におけるオートクレーブか、又は4)20μg/mlのプロテアーゼKを受け、5)Syn−1抗体をもつコントロールがギ酸により15分、処置された組織試料上で実施された図。
図18】BiFC蛍光分析による穿刺(矢頭)の形成を示す入手写真を示し、例14で説明される図。
図19】各試験の抗体の斑点陽性細胞の%を示し、例14で説明される図。
図20】ヒトα−シヌクレインの野生型配列を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、α−シヌクレイン凝集物に対する高い結合親和性とα−シヌクレインモノマーに対する低い結合親和性とを有する抗体に関する。抗体は、モノマーのα−シヌクレイン形態に比してα−シヌクレイン凝集物に結合する親和性を増大されている。
【0015】
1つの実施形態では、本発明は、α−シヌクレイン凝集物に対する高い結合親和性と、α−シヌクレインモノマーに対する低い結合親和性とを有する抗体又はそのフラグメントに関する。
【0016】
別記しない限り、術語のα−シヌクレイン凝集物は、α−シヌクレインの早期可溶性の凝集物形態(例えば、プロトフィブリルを含む低分子量及び高分子量の可溶性オリゴマー)、及びα−シヌクレインの成熟した不溶性の凝集物形態(例えば成熟したフィブリル)をカバーすると、意図される。特に、抗体及びそのフラグメントは、α−シヌクレインのフィブリルに対する高結合親和性とα−シヌクレインのオリゴマーに対する高結合親和性とを有する。
【0017】
α−シヌクレイン凝集物に対する高親和性を有することは、抗体又はフラグメントが、α−シヌクレイン凝集物に対して10−7Mより小さい解離定数Kdを有することを意味する。好ましくは、抗体は、10−8Mより小さいか若しくは10−9Mより小さいKdを有し、又はさらに好ましくは、10−10Mより小さいか又は10−11Mより小さいKdを有する。好ましくは、α−シヌクレインは、ヒトのα−シヌクレインである。
【0018】
フィブリルは、α−シヌクレインの不溶性の高分子量の凝集物形態である。
【0019】
α−シヌクレインの可溶性のオリゴマー形態は、種々のサイズでかつ形態で現れ、二量体、三量体、四量体及び多量体を含む。プロトフィブリルは、モノマー形態からα−シヌクレインフィブリルの形成途中の中間段階である。術語としてのα−シヌクレインのオリゴマー形態は、プロトフィブリルを含むことを意図される。
【0020】
抗体に対するそのフラグメントとは、その活性フラグメント、すなわち、本発明による抗体の定義に使用される特徴と同一特徴を有するフラグメントを意味する。すなわち、α−シヌクレイン凝集物に対する高結合親和性と、α−シヌクレインモノマーに対する低結合親和性とを有すると言う特徴である。便宜上、術語としての抗体を使用するときは、該同一特徴を示すそのフラグメントも、考慮される。
【0021】
α−シヌクレインモノマーに対する低結合親和性を有することは、α−シヌクレインモノマーに対する抗体又はフラグメントの結合度が、α−シヌクレイン凝集物に対する結合度より少なくとも100倍小さく、好ましくは、α−シヌクレイン凝集物に比較してα−シヌクレインモノマーに対して約500倍又は約1000倍、低い結合親和性であることを意味する。1つの実施形態では、抗体又はそのフラグメントはモノマーのα−シヌクレインに対して10−5Mより大きい解離定数Kdを有する。
【0022】
1つの実施形態では、抗体は、α−シヌクレインのオリゴマー形態に対してよりもα−シヌクレインのフィブリルに対して高い親和性を有してもよい。
【0023】
抗体の結合親和性は、当該技術で認識されている種々の方法を使って決めることができる。該方法は、等温熱量及び表面プラズモン共鳴法を基本とするアプローチを含み、例えば、図6で説明する。結合(binding)は、例えばELISAやRIAsのような免疫測定法(immunoassays:イノムアッセイ)を用いて評価することもできる。好ましくは、結合親和性は、BIACoreTMX−100を用いた表面プラズモン共鳴法のアッセイを用いて決められる。
【0024】
1つの実施形態では、抗体は、立体構造の抗体である。抗体は、立体構造のエピトープを認識する。すまわち、抗体が認識する該エピトープは、α−シヌクレインの凝集物の三次構造を含む。1つの実施形態では、抗体は、表5に記載されているように、直鎖ペプチドエピトープのどれよりもα−シヌクレインフィブリルに強く結合する。特に、抗体の結合度は、表5に記載されているように、直鎖ペプチドエピトープに対してよりもα−シヌクレインフィブリルに対しての方が少なくとも10倍高く、好ましくは500倍より高いか、又は好ましくは1000倍より高い。
【0025】
本発明の抗体は、α−シヌクレインのアミノ酸領域の127−140の範囲内の直鎖エピトープに弱く結合してもよい。弱く結合することによってとは、本発明の抗体の結合親和性が、α−シヌクレインのアミノ酸領域の127−140の範囲内の直鎖エピトープに対して、α−シヌクレイン凝集物に対する抗体の結合親和性よりも、少なくとも100倍小さいこと、特には、α−シヌクレインフィブリルよりも少なくとも100倍小さいことを意味する。好ましくは、α−シヌクレインのアミノ酸領域127−140の範囲の直鎖エピトープに対する結合親和性は、α−シヌクレイン凝集物に対する抗体の結合親和性にして、α−シヌクレイン凝集物に対する抗体の結合親和性より1000倍小さい。1つの実施形態では、抗体は、α−シヌクレインの直鎖エピトープを認識しないか、結合しない。
【0026】
1つの実施形態では、抗体によって認識されるエピトープは、α−シヌクレインのC末端領域を備える。α−シヌクレインのC末端領域を備えるエピトープを認識することによってとは、抗体がその能力で結合するエピトープの少なくとも一部がα−シヌクレインのC末端領域の少なくとも一部を含むことを意味する。
【0027】
1つの実施形態では、本発明の抗体は、リン酸化したα−シヌクレインの凝集した形態にも結合できる。該抗体は、リン酸化されたα−シヌクレインの凝集形態に比較して、リン酸化されたα−シヌクレインのモノマー形態に対して低結合親和性を示す。例えば、該抗体の結合親和性は、凝集されてリン酸化されたα−シヌクレインに比較して、モノマーのリン酸化されたα−シヌクレイン形態に対して少なくとも100倍小さく、好ましくは500倍小さく、もっと好ましくは1000倍小さい。α−シヌクレインのリン酸化は、Ser129に起こすことができる。
【0028】
本発明の抗体は、また、他のアミロイドのタンパク質に対して低結合親和性を示す。該他のアミロイドのタンパク質には、β−シヌクレイン、γ−シヌクレインのモノマー、IAPP(islet amyloid polypeptide:膵島アミロイドポリペプチド)、β−アミロイドモノマー、Tau及びABriが含まれる。例えば、該抗体の結合親和性は、α−シヌクレイン凝集物に対してよりも、これらのペプチド/タンパク質の1つ又はそれより多くに対しての方が少なくとも100倍小さい。
【0029】
1つの実施形態では、本発明のα−シヌクレイン凝集物の抗体の結合親和性は、α−シヌクレイン凝集物に対してよりもβ−シヌクレインに対して少なくとも100倍小さく、好ましくは1000倍小さい。特に、該抗体の結合親和性は、α−シヌクレインのフィブリルに対する結合親和性よりも、β−シヌクレインに対して、少なくとも100倍、好ましくは1000倍小さい。
【0030】
1つの実施形態では、本発明のα−シヌクレイン凝集物の抗体の結合親和性は、α−シヌクレイン凝集物に対してよりもγ−シヌクレインに対して少なくとも100倍小さく、好ましくは1000倍小さい。特に、該抗体の結合親和性は、α−シヌクレインフィブリルに対する結合親和性よりも、γ−シヌクレインに対して、少なくとも100倍、好ましくは1000倍小さい。
【0031】
本発明のさらなる実施形態は、可変重(VH)鎖及び可変軽(VL)鎖上のCDRI−3領域の定義されたアミノ酸配列を備える。
【0032】
本発明の1つの実施形態では、抗体は、可変重鎖(VH)を備え、該VHは、配列番号(SEQ ID NO)2,6又は10において示されるアミノ酸配列を備える。
【0033】
抗体又はフラグメントは、免疫グロビン の軽鎖の可変領域(VL)を備えることができる。該VLは、配列番号4,8,又は12において示されるアミノ酸配列を備える。
【0034】
特に、抗体又はフラグメントは、免疫グロビンの重鎖の可変領域(VH)と免疫グロビン の軽鎖の可変領域(VL)とを備え、:
該VHが配列番号2において示されるアミノ酸配列を備え、該VLが配列番号4において示されるアミノ酸配列を備えるか;
該VHが配列番号6において示されるアミノ酸配列を備え、該VLが配列番号8において示されるアミノ酸配列を備えるか;又は
該VHが配列番号10において示されるアミノ酸配列を備え、該VLがは配列番号12において示されるアミノ酸配列を備える。
【0035】
1つの実施形態では、抗体又はそのフラグメントは、VH鎖を備えることができ、該VH鎖において:
CDR1領域は、配列番号16,28,又は40のアミノ酸配列を有し、;
CDR2領域は、配列番号17,29,又は41のアミノ酸配列を有し、;かつ、
CDR3領域は、配列番号18,30,又は42のアミノ酸配列を有する。
【0036】
特には、抗体又はその結合フラグメントは、VH鎖を備え、該VH鎖において、CDR1領域は配列番号16のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号17のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号18のアミノ酸配列を有する。
【0037】
特には、抗体又はその結合フラグメントは、VH鎖を備え、該VH鎖において、CDR1領域は配列番号28のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号29のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号30のアミノ酸配列を有する。
【0038】
特には、抗体又はその結合フラグメントは、VH鎖を備え、該VH鎖において、CDR1領域は配列番号40のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号41のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号42のアミノ酸配列を有する。
【0039】
さらなる実施形態では、抗体又はそのフラグメントは、VL鎖を備え、該VL鎖において:
CDR1領域は、配列番号22,34,又は46のアミノ酸配列を有し、;
CDR2領域は、配列番号23,35,又は47のアミノ酸配列を有し、;かつ
CDR3領域は、配列番号24,36,又は48のアミノ酸配列を有している。
【0040】
特には、抗体又はそのフラグメントは、VL鎖を備え、該VL鎖において、CDR1領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号23のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号24のアミノ酸配列を有する。
【0041】
特には、抗体又はそのフラグメントは、VL鎖を備え、該VL鎖において、CDR1領域は配列番号34のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号35のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号36のアミノ酸配列を有する。
【0042】
特には、抗体又はそのフラグメントは、VL鎖を備え、該VL鎖において、CDR1領域は配列番号46のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号47のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号48のアミノ酸配列を有する。
【0043】
1つの実施形態では、抗体又はそのフラグメントはVH鎖とVL鎖とを備え、:
該VH鎖において、CDR1領域は配列番号16のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号17のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号18のアミノ酸配列を有し、 ;かつ
該VL鎖において、CDR1領域は配列番号22のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号23のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号24のアミノ酸配列を有する。
【0044】
特には、抗体又はその結合フラグメントはVH鎖とVL鎖とを備え、:
該VH鎖において、CDR1領域は配列番号28のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号29のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号30のアミノ酸配列を有し、;かつ
該VL鎖において、CDR1領域は配列番号34のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号35のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号36のアミノ酸配列を有する。
【0045】
特には、抗体又はその結合フラグメントはVH鎖とVL鎖とを備え、:
該VH鎖において、CDR1領域は配列番号40のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号41のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号42のアミノ酸配列を有し、;かつ
該VL鎖において、CDR1領域は配列番号46のアミノ酸配列を有し、CDR2領域は配列番号47のアミノ酸配列を有し、CDR3領域は配列番号48のアミノ酸配列を有する。
【0046】
したがって、1つの実施形態では、本発明による抗体又は結合フラグメントは、6つのCDR配列(VH−CDR1,VH−CDR2,VH−CDR3,VL−CDR1,VL−CDR2及びVL−CDR3)によって特徴付けられる。該6つのCDR配列は、表Aにおける次のそれぞれの複数群のうちの各群から任意の組合せで独立に選択される。
【0047】
【表1】
【0048】
さらに、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、ヒトのα−シヌクレインに特異的に結合するフラグメントが提供される。該抗体又は該フラグメントはVHとVLとを備え、該VLは、配列番号2又は6又は10に少なくとも90%,95%又は100%、同一であるポリペプチド配列を備える。さらに、単離された抗体、又はその抗原結合フラグメントであって、ヒトのα−シヌクレインに特異的に結合するフラグメントが提供される。該抗体又は該そのフラグメントはVHとVLとを備え、該VLは、配列番号4又は8又は12に少なくとも90%,95%又は100%、同一であるポリペプチド配列を備える。
【0049】
任意の特定のポリペプチドが、他のポリペプチドと少なくとも90%又は95%同一であるかは、当該技術において知られているコンピュータプログラム/ソフトウェアを用いて決めることができる。これらの変異ポリペプチドは、対応する親配列を有するポリペプチドと同一の性質を本質的に保持する。そのような変異体は、基準化合物に対して保存的な置換、例えば広義で同一の分子性質のアミノ酸間の変更を有する。例えば、“非本質的な”アミノ酸において保存置換又は変更につながるアミノ酸置換が行われてもよい。アミノ酸置換は、天然起源又は非天然のアミノ酸に1つ又はそれより多くのアミノ酸の置換を含むことができる。保存的な置換は、典型的には次の群のうちの置換:グリシン及びアラニン;バリン、イソロイシン及びロイシン;アスパラギン酸及びグルタミン酸;アスパラギン及びグルタミン;セリン及びスレオニン;リジン及びアルギニン;並びにフェニルアラニン及びチロシンを含む。
【0050】
ポリペプチドは、融合してインフレームになるか、又はリンカー若しくは他の配列に抱合されるかしてもよい。ポリペプチドは、例えばα−シヌクレイン抗体又はそのフラグメントをコード化した部分と、少なくとも1つの異種性の部分とを備える融合部分を備えてもよい。
【0051】
抗体、又はその抗原結合フラグメントをコード化している単離されたポリヌクレオチドが提供される。該ポリヌクレオチドは、例えば、1つ若しくはそれより多くのCDR、又はここで説明するα−シヌクレイン抗体可変重鎖領域若しくは可変軽鎖領域をコード化している核酸である。核酸はDNA及びRNAを含む。
【0052】
本発明の1つの観点は、ここで説明するα−シヌクレイン抗体のVH鎖をコード化しているポリヌクレオチドを提供する。特には、本発明の1つの実施態様は、単離されたポリヌクレオチドを提供する。該ポリヌクレオチドは、配列番号2,6又は10のアミノ酸をコード化している核酸を備える。さらなる実施態様は、配列番号1,5,又は9の核酸配列を備えるポリヌクレオチドを提供する。
【0053】
本発明の別の観点は、α−シヌクレイン抗体のVL鎖をコード化しているポリヌクレオチドを提供する。1つの実施態様では、該ポリヌクレオチドは、配列番号4,8又は12のアミノ酸配列をコード化している核酸を備える。さらなる実施態様は、配列番号3,7,又は11の核酸配列を備えるポリヌクレオチドを提供する。
【0054】
1つの実施態様では、ポリヌクレオチドは、α−シヌクレイン抗体の重鎖のCDR1,CDR2及び/又はCDR3の領域をコード化している。該ポリヌクレオチドは、配列番号13,14,15,25,26,27,37,38,及び/又は39の核酸配列を備えることができる。
【0055】
さらに、α−シヌクレイン抗体の軽鎖のCDR1,CDR2,及び/又はCDR3領域をコード化しているポリヌクレオチドが提供される。該ポリヌクレオチドは、配列番号19,20,21,31,32,33,43,44,及び/又は45の核酸配列を備えることができる。
【0056】
1つの実施態様では、本発明による抗体又はその結合フラグメントは、6つのCDR配列(VH−CDR1,VH−CDR2,VH−CDR3,VL−CDR1,VL−CDR2及びVL−CDR3)によって特徴付けられる。各領域は、表Bからの、CDR配列の次のそれぞれの複数群のうちの各群から任意の組合せで独立に選択した配列を有するポリヌクレオチドによってコード化されている。
【0057】
【表2】
【0058】
さらに、VH−CDR1,VH−CDR2及びVH−CDR3の領域についての核酸配列を備えるポリヌクレオチドが提供される。各領域は、表Bから任意の組合せで、VH−CDRの配列のそれぞれの複数群のうちの各群から独立に選択される。
【0059】
さらに、VL−CDR1,VL−CDR2及びVL−CDR3の領域についての核酸配列を備えるポリヌクレオチドが提供される。各領域は、表Bから任意の組合せで、VL−CDRの配列のそれぞれの複数群の各群から独立に選択される。
【0060】
さらに、ここで定義されるポリヌクレオチド配列のポリヌクレオチド変異体が提供される。ポリヌクレオチド変異体は、ここで定義されるα−シヌクレイン抗体又はフラグメントをコード化しているポリヌクレオチド配列に実質的な同一性(identity)を有していてもよい。典型的には、ポリヌクレオチド変異体は、1つ又はそれより多くの置換、付加、削除及び/又は挿入を含むだろう。これらの置換等は、好ましくは、変異体のポリヌクレオチドによってコード化された抗体の結合親和性が実質的にここで明細に説明されるポリヌクレオチド配列によってコード化されている抗体に対して実質的に減らないように、される。例えば、コード化されたポリペプチドにおける非本質的なアミノ酸の残基において保存的な置換又は変更につながるヌクレオチド置換がなされてもよい。任意の特別のポリヌクレオチドが他のものに実質的に同一であるかは、当該技術において知られている方法、コンピュータのプログラム/ソフトウェアを用いて決めることができる。
【0061】
軽鎖及び/又は重鎖の少なくとも可変ドメインをコード化しているポリヌクレオチドは、2つ又は唯一の免疫グロビン鎖の可変ドメインをコード化することができる。1つの実施態様は、ポリヌクレオチドを備える発現ベクターを提供する。
【0062】
さらなる実施態様は、発現ベクターを備える宿主細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は単離されている。1つの実施態様では、宿主細胞は、非ヒトの細胞である。発現ベクターは、挿入されたポリヌクレオチドを指示(direct)及び/又はコントロールする核酸配列を備えることができる。そのような核酸配列は制御配列(regulatory sequence)を含むことができる。該制御配列は、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化、配列、及びエンハンサー配列を含む。種々の細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現は知られている。
【0063】
本発明による抗体の例は、伝統的な雑種細胞技術によって開発されている。抗体は、多クローンであるか、又は単クローンである。明細な実施形態では、抗体は単クローンである。
【0064】
典型的には、抗体は、哺乳類の抗体、例えば霊長目の動物、ヒト、齧歯動物、ウサギ、ヒツジ、ブタ、又はウマの抗体である。抗体は、任意のクラス又はアイソタイプ、例えばIgM又はIgGであり得る。好ましくは、抗体はIgGである。
【0065】
本発明の別の観点では、抗体は試料においてα−シヌクレイン凝集物の存在を検出する診断ツールとして用いることができる。抗体は。個体(individual)におけるα−シヌクレインに関係する神経変性疾患を監視及び/又は診断するのに用いられてもよい。
【0066】
これらの抗体は、α−シヌクレインに関係する神経変性疾患の診断ツールとして適切であってもよい。該神経変性疾患には、限定しないが、パーキンソン病、レビー小体型認知症及びその他のα−シヌクレイン関係の神経変性疾患を含む。
【0067】
1つの実施態様では、本発明は、α−シヌクレイン凝集物を検出する方法に関し、該方法は、:
抗体又はそのフラグメントを生物学試料に付加するステップ、;及び
α−シヌクレイン凝集物と抗体又はフラグメントとの間で形成される複合体の存在を検出するステップを備える。
【0068】
複合体の検出は、該試料におけるα−シヌクレイン凝集物の存在を指し示す。
【0069】
該方法は、さらに、形成された複合体のレベルを測定して、該レベルを基準レベルと比較するステップを備えることができる。該基準レベルは、典型的には、α−シヌクレイン症状を有しないと知られている個体(“正常な個体”)からの試料、又は試験される固体と同一の個体から早い段階の試験で得られた試料から計算される。
【0070】
該方法は、α−シヌクレインのフィブリル及びオリゴマーを検出することができる。
【0071】
該方法は、試験管内で組織の又は生物学流体の試料上で実施されることができる。個体から得られて試験される試料は、例えば脳脊髄液(CSF)、血液、尿、唾液、又は脳、腸、大腸、皮膚若しくは唾液腺の組織であってもよい。特に好ましい方法では、試料はCSF試料である。別の好ましい方法では、該試料は、脳組織の試料である。
【0072】
試料は、所定時間でかつ所定条件下で抗体と結合され、有効に試料内でのα−シヌクレイン凝集物に対する結合性を許容される。
【0073】
試料は、測定される前に標準の方法を用いて処理されてもよい。1つの実施形態では、組織の試料は、抗体で試験する前に、前処理無しとされる。前処理とは、得られる組織が例えばオートクレーブ(高圧蒸気殺菌)、ギ酸及び/又はプロテイナーゼK処理のような任意の処理を受けないことを意味する。
【0074】
当該技術において知られている標準の方法は、試料において抗体とα−シヌクレイン凝集物との間に形成された複合体のレベルを検出及び/又は測定することに用いられてもよい。
【0075】
α−シヌクレインの存在の分析は、例えば次の方法で実施することができる。放射免疫測定法、酵素に関係する免疫測定(ELISA :Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、サンドイッチ免疫測定法(sandwich immunoassay)、蛍光免疫法、沈降反応、ゲル免疫アッセイ、凝集アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動法(immunoelectrophoresis)、電気泳動法(electrophoresis)、ウエスタンブロット法である。試験する試料におけるα−シヌクレインの存在を測定及び/又は検出することができる他の適切な技術を用いることができる。
【0076】
1つの実施形態では、抗体は、表面上、例えばマイクロウェルプレート又は診断試験ストリップを被覆されてもよく、試料は、抗体に付加され、結合を許容するのに有効な状況下に結合される。その次に、複合体の存在が検出できる。
【0077】
好ましい方法では、ELISAアッセイ(測定)は、α−シヌクレイン凝集物の量を検出及び/又は定量化する。1つの実施形態では、本発明は、サンドイッチELISAに目指される。該サンドイッチELISAは、マイクロプレートの表面が本発明による抗体により被覆された該マイクロプレートに、試験される試料を付加し、;該抗体に結合する試料における任意のα−シヌクレイン凝集物試料の存在を許容し、;かつ任意の抗体/α−シヌクレインの凝集物複合体の存在を検出することを備える。検出は、α−シヌクレインに結合する標識抗体を用いて実施することができる。
【0078】
該方法は、神経変性疾患の診断及び/又は神経変性疾患の進行の監視に用いることができる。α−シヌクレイン凝集物の量及び/又はサイズが検出できる。
【0079】
該神経変性疾患は、限定されないが、パーキンソン病、認知症(dementia)、アルツハイマー病、ダウン症候群、多系統萎縮症、精神病(psychosis)、統合失調症(schizophrenia)又はクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)を含む。認知症は、レビー小体型認知症であってもよい。
【0080】
本発明は、α−シヌクレインに関係する神経変性疾患を診断する方法に関する。該方法は、本発明の抗体を個体に投与すること、及びα−シヌクレイン凝集物の存在又は非存在を検出することを備える。α−シヌクレイン凝集物と抗体との間に形成された複合体の存在又は非存在が検出できる。
【0081】
α−シヌクレイン凝集物の存在は、個体が神経変性疾患を有すること指し示し、α−シヌクレイン凝集物の非存在は、該被験者(個体)が神経変性疾患を有しないこと指し示す。
【0082】
1つの実施形態では、α−シヌクレインに関係する神経変性疾患を診断する方法は、:本発明の抗体を個体からの試料に付加すること、;α−シヌクレイン凝集物と抗体との間に形成された複合体の存在を検出すること、;及び個体がα−シヌクレインに関係する神経変性疾患を有するか否かを決定することを備える。
【0083】
個体がα−シヌクレインに関係する神経変性疾患を有するか否かを決定することは、試料に形成された複合体のレベルを基準レベルと比較すること、及び該試料に形成された複合体のレベルが基準レベルに対して減少しているかを決定することを含む。
【0084】
該方法は、さらに、神経変性疾患を治療するのに治療法上有効な量の薬を個体に投与することを備える。
【0085】
さらなる実施形態では、α−シヌクレインに関係する神経変性疾患の進行を監視する方法は、:本発明の抗体を個体からの試料に付加すること、:α−シヌクレイン凝集物と抗体との間に形成された複合体の存在を検出すること、;及び試料に形成された複合体のレベルを基準レベルと比較することを備える。
【0086】
該方法は、さらに、基準レベルに対する複合体の検出レベルの比較に基づいて個体の治療管理体制(treatment regime)を変更することを備える。該治療管理体制は、該病気の進行に関係して、該病気を治療するのに投与された薬を変更することによって、及び/又は薬の投与の頻度及び/又は量を変更することによって、変更することができる。ベースラインのレベルに比較される複合体の増大レベルは、個体がα−シヌクレイン症状を進める(develop)過程を有するか又は過程にあるかを典型的には指し示す。ベースラインレベルは、α−シヌクレイン症状を有しないことが知られている個体(“正常な個体”)からの試料からか又は試験される固体と同一の個体から早い段階の試験で得られた試料から典型的には計算される。
【0087】
相関が、CSFのα−シヌクレインオリゴマーレベルと疾患重症度との間に存在することが示されている。試料のオリゴマー又はフィブリルの存在及び/又は量を検出することは、特に、パーキンソン病及びその他のα−シヌクレイン症状に関係する病気のバイオマーカーとして抗体を用いることにより、神経変性疾患の進行及び/又は重症度を追尾することに使用できる。
【0088】
本発明の1つの実施形態では、抗体は、個体がパーキンソン病を有するかを診断することに用いられる。CSF試料は、患者から採取される。抗体は、複合体が抗体と試料に存在する凝集されたα−シヌクレインとの間に形成されることを許容するのに有効な条件で試料と接触する。次に、抗体複合体の存在が検出できる。形成される複合体の量が、測定されて、基準レベルと比較される。
【0089】
本発明の1つの実施形態では、抗体は、ELISAに用いられて、CFSにおける凝集されたα−シヌクレインを測定することができる。抗体は、試料内の凝集されたα−シヌクレインを他の抗体を使うELISAに比較して高い感度と特異性で測定することができる。特に、本発明の抗体を使用するELISAは、mAb211を捕獲抗体としてかつビオチン化211を検出抗体として使用するELISAに比較して、α−シヌクレインのオリゴマー及びプロトフィブリルを検出する感度及び特異性を高める。
【0090】
該方法は、分析の結果を用いることにより治療薬の有効性を監視することに用いることができる。有効な治療薬は、基準値に比較して、採取された試料に存在するα−シヌクレイン凝集物の減少を引き起こす薬として決めることができる。該基準値は、治療前に患者のα−シヌクレインの量を反映するか、未治療の患者に見い出されたα−シヌクレインの典型量を表すかもしれない。
【0091】
抗体は、検出可能な標識(label)によって標識化されてもよい。標識は、抗体がα−シヌクレイン凝集物に結合されたときに抗体の検出を許容する標識となる。検出可能な標識は、限定しないが、蛍光標識、放射性標識及び造影剤を含む。
【0092】
適切な放射標識は、例えばF18,1123,In111,1131,C14,H3,Tc99m,P32,1125及びガリウム68のようなものを含む。適切な蛍光標識は、蛍光及びローダミンを含むことができる。適切な造影剤は、例えばガドリニウム(GD)、ジスプロシウム及び鉄のようなレアアース、並びに磁性剤を含む。他の標識は、核磁気共嗚活性標識、PETスキャナにより検出可能なポジトロン放出アイソトープ、化学発光の及び酵素のマーカーを含む。
【0093】
抗体は、標準技術により標識化することができる。
【0094】
本発明の別の観点において、抗体は、イメージング剤として用いることができる。特に、抗体は、ヒト及び動物の組織におけるα−シヌクレイン凝集物の検出と局在性及び/又は定量化とに使用することができる。
【0095】
本発明は、α−シヌクレイン凝集物をイメージングする方法を提供する。該方法は、抗体へのα−シヌクレイン凝集物の結合を検出することをを備える。
【0096】
1つの実施形態では、本発明の抗体は、試料に接触でき、次に、α−シヌクレイン凝集物に結合する試料における抗体が検出され得る。抗体は、好ましくは、標識化された抗体である。α−シヌクレイン凝集物の存在又は非存在は、適切なイメージング技術を用いて体内の脳で検出されてもよい。そのような体内方法において、該方法は、さらに、抗体を個体に投与すること、および抗体を検出することを備える。
【0097】
適切なイメージング技術は、ポジトロン放出技術(PET)、ガンマシンチグラフィー、磁気共鳴画像法(MRI)、機能的磁気共鳴画像法(FMRI)、脳磁気図検査(MEG)及び単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)を含む。
【0098】
α−シヌクレイン凝集物の存在又は非存在は、また、試験管内、例えば脳セクションのような組織試料において検出することができる。そのような実施形態では、適切なイメージング技術は、また、電子顕微鏡、共焦点顕微鏡又は光学顕微鏡を含んでもよい。
【0099】
個体の脳に存在するα−シヌクレイン凝集物の個数及び/又はサイズは、病気に関係するα−シヌクレインの進行と相関関係がある。α−シヌクレイン凝集物の数及び/又はサイズの増大は、病気の進行を指し示し、α−シヌクレイン凝集物のサイズ又は個数の減少は、病気の退縮を指し示す。
【0100】
該診断方法は、獣医学の使用も可能である。
【0101】
本発明はキットにも関係する。該キットは、本発明による抗体を診断方法の実施用に備える。抗体は、インタクト(intact)の免疫グロビン又はそのフラグメント、例えばFab,F(ab)2又はFvフラグメントのようなフラグメントであってもよい。抗体は、上述したように標識化されてもよい。該キットは、個体が神経変性疾患を有するかを決定する方法の使用用であり得る。
【0102】
該キットは、該方法のどれもが実施できる1つ又はそれより多くの他の試薬又は器具を付加的に備えてもよい。そのような試薬又は器具は、限定はしないが、次の1又はそれより多くを含む。適切な緩衝液、個体から試料を得る手段、定量的反応がなされ得るウェルを備える支持体である。該キットは、上記の方法を実施する器具をオプションで備えてもよい。
【0103】
本発明の1つの実施形態では、抗体及びそのフラグメントは、薬物として使用することができる。
【0104】
本発明は、個体のα−シヌクレインに関係する神経変性疾患の治療に使用するための抗体又はそのフラグメントに関する。
【0105】
本発明は、個体のα−シヌクレイン症状をもつ神経変性疾患を治療する方法に関する。該方法は、抗体又はそのフラグメントの治療上の有効量を個体に投与することを備える。
【0106】
該神経変性疾患は、限定しないが、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、ダウン症候群、多系統萎縮症、精神病、統合失調症又はクロイツフェルト・ヤコブ病である。認知症は、レビー小体型認知症であってもよい。
【0107】
α−シヌクレイン凝集物は、抗体又はそのフラグメントの投与によって減少又は抑制され得る。抗体は、溶解可能なシヌクレインの種(species)を備える試料に投与されるか、又は個体に直接投与されてもよい。
【0108】
抗体は、α−シヌクレイン凝集物の沈着物の部位に、例えばレビー小体に投与されてよく、投与は、典型的には脳に血を供給する血管に又は脳それ自体に注入することによって行われる。
【0109】
個体は、ヒト又はヒトではない動物であってもよい。ここで述べる組成及び方法は、また、獣医学の実用に使用することができる。
【0110】
用語の“治療(treatment)”及び“処置する(treating)”等は、状況(condition)の治療(curing)、解放(relieving)、逆転(reversing)、軽減(alleviating)、 管理(managing)又は発症(onset)の遅延(delaying the onset)を含むこと、又は状況の発症(developing)若しくは悪化(worsening)のリスクを減少させることを意図されている。該用語は、また、状況の対症(palliative)、予防(prophylactic)及び防止(preventative)の治療を含めることを意図されている。
【0111】
本発明の1つの実施態様では、医薬組成物は、抗体又はそのフラグメント、及び医薬的に容認される希釈剤(diluent)又はキャリア(carrier)を備える。
【0112】
一般的には、該キャリアの性質は、採用される投与の特定のモードに関係するだろう。医薬形態は、固体、溶液及び懸濁液を含む。適切な医薬キャリアは、不活性の希釈剤又は賦形剤(filler)、水、及び種々の有機溶剤を含む。組成物は、また、香料、結合剤&賦形剤(xcipients)のような付加的な成分を含む。
【0113】
経口投与に適切な形態は、錠剤(tablet)、 カプセル(capsule)、 ピル(pill)、 粉(powder)、 徐放製剤(sustained release formulation)、溶液(solution)及び懸濁液(suspension)を含む。ペアレンタルインジェクション(parental injection)の適切な形態は、無菌の溶液、懸濁液又は乳濁液を含む。
【0114】
例示的なペアレンタル投与の形態は、無菌水溶液の状態、例えばプロピレン水溶液又はブドウ糖溶液のような無菌水溶液状態での懸濁液又は溶液を含む。
【0115】
例えば錠剤の例示的な経口形態は、:例えば澱粉、アルギン酸崩壊剤及び複雑珪酸塩のような崩壊剤(disintegrant)、;例えばショ糖、ゲラチン、アカシアのような結合剤、;並びに例えばステアリン酸マグネシウム、硫酸ラウリルナトリウム及び滑石のような潤滑剤を含む。固体組成は、また、固体又は固いゲラチンカプセルを含んでもよい。好ましい材料は、ラクトース、乳糖及び高分子量のポリエチレングリコールを含む。
【0116】
種々の医薬組成物の調製方法が当該技術において周知である。“レミントンの薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)”が参照される。
【0117】
本発明は、また、1つ又はそれより多くの治療薬と組み合わされる抗体及びフラグメントに関する。
【実施例】
【0118】
次の実施例は、説明上、提供され、本発明をこれらの明細な実施例に限定することは意図されない。
【0119】
例1
α−シヌクレイン凝集物抗体の調製
α−シヌクレインフィブリルの調製
【0120】
精製された組換え型のα−シヌクレインが用いられる。新しく調製されたα−シヌクレイン(50μM)の溶液が、凝集のためサーモミキサー(800rpm)内で37℃、7日間インキュベートされた。α−シヌクレインの凝集過程は、チオフラビン−S(Th−s)の結合アッセイにより監視される。凝集物が完成すると、フィブリルは、一定分量化されて、小さな試料とされ、使用までは−80℃で貯蔵された。
【0121】
α−シヌクレインオリゴマーの調製
新しく調製されたα−シヌクレイン溶液は、ドーパミンと分子量比1:7(α−シヌクレイン:ドーパミン)で混合され、サーモミキサー(800rpm)内で37℃、夜通しで混合された。翌日、オリゴマーを含む水溶液が、一定分量化されて、小さな試料とされ、使用までは−80℃で貯蔵された。
【0122】
免疫化
BALB/c系マウスが皮下免疫用にα−シヌクレインにより用いられた。各マウスは、フロイント完全アジュバントと(1:1v/v)混合された50μgのα−シヌクレイン溶液の初期免疫を受けた。初期免疫に後続して追加免疫は、3週間間隔で、フロイント不完全アジュバント(1:1v/v)と混合されたα−シヌクレインの25μgにより行われた。各追加免疫の10日目に、血が尻尾の静脈から収集され、血清が分離された。ELISAが実施されて、α−シヌクレインに対する宿主の免疫応答のチェックが実施された。
【0123】
宿主の免疫応答性をチェックするELISA
96のウェルのクリアのマキシソーププレート(96 well clear maxisorp plate (NUNC) )が、PBS内の夜通しのインキュベーションで1ウェルにつき100μl(70ng/ウェル)被覆された。プレートは、次に、PBST(0.05%のTween−20を含むPBS)で3回、洗浄し、次に、室温で1h(hは時間)、ブロッキングバッファ(2.25%のゲラチンを含むPBST)でインキュベートした。該プレートは、PBSで3回洗浄され、マウスからの連続して希釈された抗血清の100μl(1/100が10倍の希釈により後続される)が複製でウェル(複数)に付加され、該プレートは室温で1h、インキュベートされた。プレートがPBSTで洗浄された後、1:20000に希釈したヤギの抗マウスIgG−HRP(ウェルにつき100μl、Jackson Immunoresearch(ジャクソン免疫研究社))が各ウェルに付加され、室温で1h、インキュベートされた。プレートは、次に、PBSTで3回洗浄され、TMBの基質(KPL, Gaitherburg, USA(KPLガイサブルグUSA社))の100μlで色が着くまでインキュベートした。反応は、H2S04(0.6N,1ウェルに付き100μl)を付加して停止させ、450nmの吸光度がVictor(ビクター社)のX3マイクロタイタープレート読取器を使って測定された。良好な免疫反応を示す宿主が、次に、融合のため採取された。
【0124】
α−シヌクレインフィブリル(宿主19,22及び23)とα−シヌクレインオリゴマー(宿主210,211及び212)とにより免疫されている宿主の力価(titer)が採取され、結果が図1及び表1に示されている。宿主は、力価が前回の反応の半分に下がったときに融合のために採取された。
【0125】
【表3】
【0126】
α−シヌクレインフィブリルにより免疫されたマウスは、第1回の追加免疫直後、非常に高い力価を示した。したがって、これらのマウスにはそれ以上の追加免疫は与えなかった。α−シヌクレインオリゴマーにより免疫されたマウスは、第2回の追加免疫後、満足できる応答を示した。融合用のマウスを採取する前、融合前の力価(1月休養後)が実施された。幾つかの宿主は、α−シヌクレイン凝集物の高い抗原性のために、2月休養後でさえ高い力価を示した。
【0127】
Sp2/0の骨髄しゅ細胞による脾細胞の融合
前回の実験のマウスは、最後の腹腔内免疫に、初期の投与量の3倍、PBSで与えられた。3日後、マウスは犠牲になった。脾臓が無菌的に単離され、IMDM(Gibco(ギブコ社))で洗浄された。脾細胞が抽出され、計測され、50%のPEG4000(Merck(マーク社))を用いてSP2/0の骨髄しゅ細胞と融合された。融合された細胞は、IMDMの成長培地(2mMのグルタマクス(GlutaMAXTM Gibco社の登録商標)において再懸濁された。成長培地は、IX Penstrep(100U/mlのペニシリンと100μg/mlのストレプトマイシン;Sigma(シグマ社))、50μg/mlのゲンタマイシン(Sigma)、50μM 2−メルカプトエタノール(Sigma)で、HAT(IX,Sigma)とマクロファジとが追加された20%胎児ウシの血清(Hyclone(ハイクロネ社))、6×10細胞/プレート(5−6週間の古いBALB/c系マウスからの新しく単離された細胞)であった。該細胞は、(200μl/ウェル)蒔かれ、96−ウェルの組織培養皿(Nunc(ナンク社))とされ、37℃の5%COで成長された。1週間のインキュベーションの後、プレートからの培地が、新しく調製されてHT(IX,Sigma)が追加されたIMDA成長培地に変化した。雑種細胞が、培地色が黄色に変化するまで成長を許容された。培養表面は、陽性クローンのスクリーニングに用いられた。
【0128】
陽性クローンのスクリーニング
96のウェルのクリアのマキシソーププレート(96 well clear maxisorp plate (NUNC) )が、PBS内のα−シヌクレインのフィブリル又はオリゴマーのウェル当たり100μl(70ng/ウェル)で夜通しのインキュベーションにより被覆された。プレートは、PBST(0.05%のTween−20を含むPBS)で3回洗浄され、ブロッキングバッファ(0.05%のTween−20を含むPBST)で室温で1h、インキュベートされた。その後、プレートは、融合プレートからの培養表面の100μl/ウェルを付加された。プレートは、室温で1h、インキュベートされた。プレートがPBST(3X)で洗浄された後、1:20000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−HRP(ウェル当たり100μl,Jackson Immunoresearch)が各ウェルに付加されて、室温で1h、インキュベートされた。プレートはそれからPBSTで洗浄され、TMBの基質(KPL,Gaitherburg, USA)で、色が着くまでインキュベートされた。反応は、10μlのH2S04(0.6)を付加することによって停止させ、450nmの吸光度がVictorの1420マルチ標識マイクロタイタープレート読取器を使って測定された。陽性クローンは、24ウェルのプレートに移され、再びスクリーンされて、安定的なクローンを識別した(identify)。
【0129】
合計が1100の陽性クローンが初期のスクリーニングで得られ、(α−シヌクレインフィブリルで免疫されたマウスからの)57個の陽性クローンと、(α−シヌクレインオリゴマーで免疫されたマウスからの)43個のクローンとがさらなる特徴のために選択された。陽性クローンのアイソタイプが、アイソタイピングのキット(Sigma)を用いて識別された。IgGクローンが、多数回継代されて、安定なクローンを識別し、単一の細胞クローニングのために採取された。
【0130】
アイソタイプ
96のウェルのクリアのマキシソーププレート(NUNC)が、PBSのpH7.4において1/1000に希釈の抗マウスの重鎖の抗体(Sigma,アイソタイプキット)の100μl/ウェルで4℃での夜通しのインキュベーションにより被覆された。プレートは、PBST(0.05%のTweee20を含むPBS)で3回洗浄され、ブロッキングバッファ(2.5%のゲラチンと0.05%のTween20とを含むPBS;ウェル当たり400μl)で室温、1hでインキュベートされた。プレートは、次に、PBSTで3回洗浄され、各クローンから培養表面の100μlがウェルに付加された。プレートは、室温で1h、インキュベートされ、プレートがPBSTで洗浄された後、1:20000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−HRP(100μl/ウェル)が各ウェルに付加され、1h、室温でインキュベートされた。プレートは、それから、PBSTで洗浄され、色が着くまで、100μl/ウェルのTMB基質(KPL,Gaitherburg, USA)でインキュベートされた。反応は、100μl/ウェルのHS0(0.6N,)を付加することによって停止され、450nmの吸光度がVictor 1420マルチ標識マイクロタイタープレート読取器を使って測定された。IgGの陽性クローンがT−25フラスコに移され、単一細胞クローニングのために採取された。
【0131】
α−シヌクレインのフィブリル又はオリゴマーで免疫されたマウスから得られたアイソタイプのクローンが表2で示される。
【0132】
【表4】
【0133】
識別されかつ選択された100個のクローンから33個の親クローンが、IgGアイソタイプであることが判明した。残りのクローンは、IgMであるか又はIgGとIgMアイソタイプの混合であった。該IgM又は該混合されたアイソタイプのクローンは、冷凍され、さらなる特徴づけのために採取はしなかった。IgGクローンは、少なくとも3回継代され、14個の安定したクローンが選択された。10個のクローンはIgGIであると判明し、2個のクローンはIgG2aであると判明し、2個のクローンはIgG2bのアイソタイプであると判明した。
【0134】
単一細胞のクローニング
細胞は、陽性の雑種細胞クローンのT−25フラスコから収集された。該細胞は、計数され、IMDM内で希釈化され、〜100個の細胞が採取され、20mlの成長培地に付加された。成長培地は、グルタマクス(登録商標)(2mM,Gibco)と、ベンストレプ(Penstrep Sigma)と、50μg/mlのゲンタミシン(Gentamycin Sigma)と、50μMのベタ−ME(Sigma)と、20%の胎児ウシの血清(Hyclone)と、若いBALB/cから新たに単離されたマクロファジ(6000個の細胞/ウェル)とが追加されたIMDMであった。該細胞は、混合され、蒔かれた(200μl/ウェル)。該プレートは、37℃、5%のCOでインキュベーとされた。雑種細胞は、成長を許容された、それら細胞が集密的(confluent)になるまで、単一細胞を含むウェルがマークされた。単一コロニーを示すウェルからの培養表面が、ELISAによるスクリーニングのために採取され、陽性のウェルからの細胞が24ウェルのプレートに移され、T−25フラスコへの移し前に再度スクリーンされた。T−25フラスコからの培養表面が少なくとも3回スクリーンされて、安定したクローンを選択した。
【0135】
各クローンから得られた単一細胞のクローンは24ウェルのプレートに移され、さらに、安定のためにチェックされた。各親クローンからの少なくとも2つの単一細胞のクローンがさらなる特徴づけのためにT−25フラスコに移された。
【0136】
例2
ドットブロットによるα−シヌクレイン凝集物に対する雑種細胞の特異性のスクリーニング
【0137】
フィブリル(F)、オリゴマー(O)又はモノマー(M)におけるα−シヌクレインの50ng(PBS内の5μl)が、ニトロセルロース膜上にスポットされ、室温で30分間乾燥させた。該膜は、室温で1h、PBST(0.05%のTween20を含むPBS)において5%の脱脂粉乳がブロックされる。1:1で希釈された培養表面により探索する前に、PBSTで3回洗浄され、室温度で2h、インキュベートされた。Syn−1抗体は、コントロールとして用いられた。膜がPBSTで洗浄された後、1:20000の希釈されたヤギの抗体IgG−HRPが付加され、室温で1h、インキュベートされた。膜は、PBSTで洗浄され、その後、PBSで2回続けた。膜は、Super signal West pico Chemiluminescent(スーパー シグナル ウェスト ピコ ケミルミネセンス社)の基質(Pierce)により開発された。
【0138】
ドットプロットの残りが、図2に示される。ドットプロットにより試験された278個のクローンのうち、45個のクローンが安定であることが判明し、そのうちの14個がα−シヌクレイン凝集物に特異性があった。
【0139】
例3
単クローン抗体の大量の培養及び精製
【0140】
α−シヌクレイン凝集物に対して特異性であると識別された6個のクローンが大量培養のために採取された。これらのクローンは、Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04である。成長培地は、2mMグルタマクス (登録商標(Gibco)と、ペンストレプ(Penstrep Sigma)と、50μh/mlのゲンタミシン(Gentamycin(Sigma))と、50μMのベタ−ミー(beta-ME Sigma)とが追加されたCDM4mAb(ハイクローン社(Hyclone))であった。ひとたび細胞が集密でかつ培地色が黄色に変化すると、培養表面が集められ、−20℃で使用まで貯蔵される。単クローンの抗体は、Protein G-Agarose(プロタイン G−アガロス社)のコラム(column)が用意され、20mMリン酸塩バッファのpH7.2の20ベッドボリューム(bed volume)と平衡とされる。培養表面(200ml)は、4℃10分間、1500rpmでは遠心分離される。該表面は、収集され、〜1ml/分の流速を維持しつつ、コラムを還流する。該コラムは、20mMのリン酸塩バッファのpH7.2の15ベッドボリュームにより洗浄されて、タンパク質を除去される。結合抗体が、溶出バッファ(50mMグリシンのpH2.5)を用いて溶出される。500μlの部分として溶出された。精製された抗体は、最終的にPBSに対して透析された。別のバッチから精製された単クローンの抗体は、集められ、濃度がBCAアッセイにより決定された。これらの単クローンの抗体は、凍結乾燥され、100μgの一定分量として−20℃で使用まで貯蔵される。
【0141】
例4
精製された抗体の特徴づけ
抑制ELISA
【0142】
384個のウェルの黒のマキシソープ処理(NUNC)は、PBSのpH7.4において4℃の夜通しのインキュベーションによりα−シヌクレインフィブリルの1つのウェルにつき50μl(1.4μg/ml)で被覆される。プレートは、PBST(0.05%TweenをもつPBS)をもつ4回、洗浄され、ブロッキングバッファ(0.05%TeenをもつPBSにおける2.25%ゲラチン)により1h、室温でブロックされる。0.6mlのケイ素管におけるα−シヌクレインのフィブリル、オリゴマー又はモノマーの連続2回の希釈が、ブロッキングバッファにおいて行われた(18回の連続的な2倍希釈により後続される80μMからの出発)。各管に、等量20ng/mlの精製された単クローンの抗体(Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04)又はSyn−1(BD Bioscience)が、コントロールとして付加され、最終的に10ng/mlの濃度を付与し、室温で2.5h、混合によって管をインキュベートした。プレインキュベートされた溶液は、それから、ELISAのプレートに付加され、室温で10分間インキュベートされた。該プレートをPBSTで(4回)洗浄した後、1/15000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−URPの抱合体(Dako(ダコ社))が付加され、該プレートは、室温で1h、インキュベートされた。該プレートは、PBSTで洗浄され、50μlの基質(SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate, Thermo Scientific)が付加され、直ちに、VictorのX3マイクロタイタープレート読取器を用いて読み取られた。x軸上のα−シヌクレイン濃度とy軸上のCPS値とのログ希釈(log dilution)を採取して、グラフがプロットされた。
【0143】
抑制ELISAによるmAbの結合親和性の対比結果が図3及び表3に見出すことができる。
【0144】
【表5】
全ての単クローン抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04はα−シヌクレインのシヌクレインに特異性があることが見出された。
【0145】
例5
抗体−ドットブロットの交差反応性の試験
【0146】
A)種々のアミロイドのフィブリルとペプチドの異なるタンパク質50ng(5μlのPBS,pH7.4に存在する)によって形成されたアミロイドのフィブリルとの交差反応性を試験するために、α−シヌクレインからのフィブリル(F)とモノマー(M)、Tau,A−beta,IAPP及びABriがニトロセルロースの膜上にスポットされ、室温で30分、乾燥させた。該膜はPBST(0.05%のTeenを含むPBS)内の5%の脱脂粉乳でブロックされて、室温で1h、インキュベートされた。PBSTで3回洗浄後、該膜は、(PBST内の50ng/ml)、室温で2h、次のものでインキュベートされた。単クローンの抗体、Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04、又はコントロール抗体、α−シヌクレイン用のSyn−1(BD Bioscience)、Tau用の5E2(Gift from Dr. D. Walsh, Harvard Medical School(ハーバード大医学部のD.Walsh博士からの贈り物))、A−beta用の82EI(IBL)、IAPP用のRIO/99(Santa Cruz Biotechnology(サンタ クルツ バイオテクノロジイ社))、及びAbri用のウサギの抗ABri血清。該膜は、洗浄され、1/20000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−HRPの抱合体(Jackson ImmunoResearch(ジャクソン イミューンリサーチ社))か又は1/10000に希釈したヤギの抗ウサギのIgG−EfRPの抱合体(Jackson ImmunoResearch)かで室温で1h、インキュベートされた。ブロットが、それから、Super signal West Pico(スーパー シグナル ウェスト ピコ社)の化学発光基質で現像された。
【0147】
種々のタンパク質によって形成されたアミロイドフィブリルとの交差反応性の結果が図4に見られる。本発明による単クローンのの抗体は、α−シヌクレインのアミロイドフィブリルに対して特異性があることが見出され、他のアミロイドフィブリル又はモノマーとは交差反応しない。
【0148】
B)β−シヌクレイン及びγ−シヌクレインによって形成されたアミロイドフィブリルに対する本発明の、立体構造の単クローン抗体の交差反応性を試験するために、α−,β−及びγ−シヌクレインからのフィブリル(F)及びモノマー(M)の50ngが、ニトロセルロースの膜上にスポットされた。該膜は、PBSTにおける5%の脱脂粉乳により1h、ブロックされ、それから、我々の単クローン抗体(Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04)又はコントロール抗体、α−シヌクレイン用のSyn−1(BD Bioscience)、β−シヌクレイン用のAnti−Beta−synuclein(Santa Cruz Biotechnology)、及びγ−シヌクレイン用のC−20(Santa Cruz Biotechnology)で、2h、室温で探索した。膜は、洗浄され、1/20000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−HRPの抱合体(ジャクソン イミューンリサーチ社(ackson ImmunoResearch))か又は1/300000に希釈したチキンの抗ヤギのIgG−HRPの抱合体(Santa Cruz Biotechnology)かで室温で1h、インキュベートされた。ブロットが、それから、スーパー シグナル ウェスト ピスコ社(Super signal West Pico)の化学発光基質で現像された。
【0149】
β−シヌクレイン又はγ−シヌクレインによって形成されたアミロイドフィブリルとの交差反応性の結果が図5に見られる。本発明による単クローン抗体はα−シヌクレインフィブリルに対して特異性があることが見出され、フィブリル又はモノマーの形態においてβ−シヌクレイン及びγ−シヌクレインのいずれにも反応しない。
【0150】
C)α−シヌクレインの異なるフラグメントに対する我々の立体構造の単クローン抗体の交差反応性を試験するために、全長のα−シヌクレイン(1−140)及びペプチドフラグメントからのフィブリル(F)及びモノマー(M)、α−シヌクレイン(1−122)、NAC(61−95)並びにNAC(61−78)がニトロセルロースの膜上にスポットされた。膜は、PBST内の5%の脱脂粉乳により1h、ブロックされ、それから、我々の単クローン抗体(Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04)及びコントロール抗体、α−シヌクレイン用のSyn−1(BD Bioscience)、並びに5C2(Santa Cruz Biotechnology)で2h、室温で探索した。膜は、1/20000に希釈したヤギの抗マウスのIgG−HRPの抱合体(Jackson ImmunoResearch)か又は1/300000に希釈したチキンの抗ヤギのIgG−HRPの抱合体(Santa Cruz Biotechnology)かで室温で1h、インキュベートする前に、洗浄された。ブロットが、それから、Super signal West Picoの化学発光基質で現像された。
【0151】
異なるα−シヌクレインフラグメントによって形成されたフィブリルとの交差反応性は図6に見ることができる。本発明による単クローン抗体は、切断(truncated)α−シヌクレイン、NAC領域(61−95)又はNAC領域(61−78)のいずれかによって形成されたアミロイドフィブリルとは反応しなかったが、エビトープの部分がα−シヌクレインのC末端領域にあると暗示させる全長のα−シヌクレイン(1−140)によって形成されるフィブリルにのみ反応した。α−シヌクレインモノマーに対する我々のmAbの無反応性は、また、我々のmAbによって認識されるエピトープが立体構造特異性であるかもしれないことを暗示する。
【0152】
例6
運動定数の決定
ビアコア(Biacore:商標)分析
【0153】
我々のmAbと−シヌクレインフィブリルとの間のとの間の運動定数は、バイアコアX100(BIAcore X 100)器を用いて表面プラズモン共鳴測定器により決定された。α−シヌクレインフィブリルは、CM5センサーチョップに固定された。該チョップは、10mMの酢酸ナトリウムのバッファのpH4.5に120μg/mlの−シヌクレインフィブリルの35μlを注入することによって、−N(ヒドロキシコハク酸イミド)スクシンイミド(NHS)と、Nエチル−N(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(carbofiimide)(EDC)とに作動する。会合速度定数は、8つの異なる濃度のmAbをHBSの作動バッファに10μl/分の低速で注入することによって得られる。なお、該mAbは、Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04、及びmAb211(Santa Cruz Biotechnology)であり、該バッファは、10mMのヘペス、0.15mMのNaCl、3.4mMのEDTA、及び0.005%の界面活性物質P20のpH7.4である。解離速度は、40μl/分で測定された。センサーチップは、100mMのNaHCO3のpH9.6を用いて再生された。センサーグラム(Sensograms)は、BOA査定ソフトウェアを用いて分析された。
【0154】
バイアコア社(Biacore)によるmAbの比較を示す結果が図7及び表4に見ることができる。単クローン抗体は、10−8より小さいKdを有することが見出された。mAbのSyn−01は、KD15.9pMの最高の親和性を有していることが見出された。6つのmAbの中で最低の親和性は、2.6mMのSyn−F2であることが見出された。
【0155】
【表6】
【0156】
例7
mAbに対するエピトープのマッピング
【0157】
本発明のmAbが線形又は立体構造のエピトープを発見するかを見い出すために、抗体の親和性がα−シヌクレイン配列をカバーするペプチドに対して試験された。ペプチドは、14個分のアミノ酸長さであり、7つのアミノ酸が重複し、ヒトのα−シヌクレイン配列(表5参照)をカバーするものであり、このペプチドが合成された(Shanghai Hanhong Chemical Co., China(シャンハイ ハンホン ケミカル社 中国)。ペプチドは、高圧滅菌された水又はDMSOに溶解し、最終的に1mg/mlの濃度になる。
【0158】
【表7】
【0159】
ドットプロットによるペプスカン(Pepscan)
ニトロセルロースの膜は、0.1%のEDC(1−Etyl−3−[3−ジメチルアミノプロピル])のカルボジイミドと、PBS内で10分、室温で前処理され、空気乾燥される。200ng(5μlのPBSでph7.4において)のペプチド1−19(α−シヌクレインのペプチドライブラリ、表5)と、50ngのα−シヌクレインフィブリル(スポット20)が膜上にスポットされた。−空気乾燥後、膜は、PBST内の5%の脱脂粉乳をブロックし、1h、室温でインキュベートした。膜は、Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04、又はSyn−1の単クローンの抗体(PBST内の50n/ml)と共にインキュベートされる前に、3回、洗浄され、2h、室温でインキュベートされた。膜は、PBSTで洗浄され、(PBSTにおいて)1:20000で希釈したヤギ抗マウスIgG−HRP(ジャクソン免疫研究社(Jackson Immunoresearch)でインキュベートされた。ペプスカンの結果は図8において見ることができる。
【0160】
ドットプロットを用いたペプスカンの結果は、mAb、Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04、Syn−F1、Syn−F2は、線形のエピトープを認識しないことを暗示する。
【0161】
ELISAによるペプスカン
ドットプロットを用いたペプスカンの結果を確認するために、mAbは、また、ELISAを用いたペプスカンにより試験された。384のウェルの黒のマキシソーププレート(NUNC)は、完全な可能を可能にする37℃の夜通しのインキュベーションによって、0.2MのNaHCOのpH9.6、内の50μl(500ng/ウェル)のペプチド(表5に詳説されているα−シヌクレインペプチド1−19)と、PBSのpH7.4内の50μl(100ng/ウェル)のα−シヌクレインフィブリルとで被覆された。プレートは、PBSTで3回洗浄され、100μlのブロッキングバッファ(PBST内の2.25%ゲラチン)と共に1h、室温でブロックした。該プレートをPBSTで3回の洗浄後、次のmAbの50μl(100ng/ml)と次のコントロール抗体とが付加されて、1h、室温でインキュベートされた。該次のmAbとは、Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04である。該次のコントロール抗体とは、Syn−1(マウスの抗α−シヌクレイン;BD Bioscience)の50μl(100ng/ml)、N−19(ヤギの抗α−シヌクレイン;サンタ クルツ バイオテクノロジイ社(Santa Cruz Biotechnology))の50μl(100ng/ml)、211(マウスの抗α−シヌクレイン;Santa Cruz Biotechnology)の50μl(100ng/ml)、FL−140(ウサギの抗α−シヌクレイン;Santa Cruz Biotechnology)の50μl(200ng/ml)、5C2(マウスの抗α−シヌクレイン;Santa Cruz Biotechnology)の50μl(1μg/ml)、及び3B6(マウスの抗α−シヌクレイン;Santa Cruz Biotechnology)の50μl(1μg/ml)である。プレートはPBSTで洗浄され、次の付加物が付加され、1h、室温でインキュベートされる。該付加物とは、ヤギの抗マウスIgG−HRP抱合体(1/20000;ジャクソン免疫研究社(Jackson Immunoresearch))又はヤギの抗ウサギのIgG−HRP抱合体(1/5000;Jackson Immunoresearch)又は希釈されたチキンの抗ヤギのIgG−HRP抱合体(1/20000)である。該プレートは、PBSTで洗浄され、基質(SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate, Thermo Scientific)の50μlが付加され、直ちに、ビクターX3のマイクロタイタープレート読取器により読み取った。ELISAの信号が測定された後、該プレートは、X線フィルムに感光され、スポットが現像された。
【0162】
ELISAによるベプスカンのスクリーニング結果は、図9及び図10(コントロール抗体、A、本発明の抗体、B)に見ることができる。ELISAによるペプスカン方法は、また、抗体がいずれのペプチドにも反応しないが、C末端のペプチド(127−140)にはわずかに反応したことを示していた。このことは、立体構造のエピトープを形成することに関与していることを暗示する。
【0163】
例8
α−シヌクレイン凝集物を検出するサンドイッチELISA
384ウェルELISAの黒のミクロプレート(Nunc Maxisorb, NUNC, Denmark)は、200mMのNaHCOにおいて4℃での夜通しのインキュベーションにより我々の立体構造の単クローン抗体(Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03又はSyn−04)(50μm/ウェル)の1つの抗体の0.1μg/mlで被覆された。
【0164】
該プレートは、0.05%のTween−20(PBST)を含むPBSにより4回洗浄され、2h、37℃でブロッキングバッファ(2.5%のゲラチンと1%のBSAを含むPBST)の100μl/ウェルでインキュベートされた。
【0165】
該プレートは、PBSTで4回洗浄され、モノマー、オリゴ糖又は凝集物のα−シヌクレインの種々の濃度(PBS内で10,5,1,0.5,0.1,及び0.05nM)の50μlが付加された。該プレートは、それから、37℃で2.5h、インキュベートされた。
【0166】
PBSTでの4回の洗浄後、ブロッキングバッファ内で1:1000に希釈されたFL−140(ウサギの多クローン抗体,Santa Cruz Biotechnology)の50μlが、付加され、37℃で2h、インキュベートされた。
【0167】
ウェルがPBSTで4回洗浄され、ブロッキングバッファにおいて1:10,000に希釈されたヤギの抗ウサギのIgG HRP(Jackson ImmunoResearch)の50μl/ウェルが付加され、1.5h、37℃でインキュベートされた。
【0168】
該プレートは、PBSTで4回洗浄され、結合したHRPの活動度が、増強された化学発光基質(SuperSignal ELISA Femto, Pierce Biotechnology)を用いて化学発光によって、効力を検定され、その後、相対光単位で化学発光度がパーキンエルマー社(PerkinElmer)のミクロプレート読取器により直ちに測定された。
【0169】
立体構造のmAbがα−シヌクレインの凝集物形態のみ検出し、α−シヌクレインのモノマー形態を検出しないことを確認するために、上述のELISAアッセイが、Syn−1を捕獲抗体として用いて、コントロールとして実施された。
【0170】
結果が図11に示されている。該結果は、立体構造のmAbがSyn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04が、α−シヌクレインのオリゴマー形態及び凝集形態の方法に反応していることを示している。Syn−1は、α−シヌクレインのモノマー形態及び凝集形態の方法に反応していることを示している。
【0171】
ELISAは、α−シヌクレインのモノマー形態を検出せず、α−シヌクレインのオリゴマー形態及びフィブリル形態の両方を全mAb、検出することを示している。これに対し、ELISAの結果は、Syn−F1及びSyn−F2に対してα−シヌクレインのオリゴマー形態のα−シヌクレインフィブリルのα−シヌクレインフィブリルの方に幾分の特異性があることを示した。
【0172】
例9
凝集されリン酸化したSer129−α−シヌクレイン(p−S129−α−syn)
【0173】
384ウェルELISA黒ミクロプレート(Nunc Maxisorb, NUNC, Denmark )は、200mMのNaHCOにおいて4℃での夜通しのインキュベーションにより我々の立体構造の単クローン抗体(Syn−F2,Syn−02)(50μl/ウィル)のうちの1つの0.1μg/mlにより被覆された。
【0174】
該プレートは、0..05%のTween−20(PBST)を含むPBSにより4回洗浄され、ブロッキングバッファ(2.5%のゲラチンと1%のBSAを含むPBST)の100μ/ウェルにより2h、37℃でインキュベートされた。
【0175】
該プレートは、PBSTで4回洗浄され、モノマーのp−S129−α−シヌクレイン又は凝集物のp−S129−α−シヌクレインの種々の濃度(PBSにおいて1,0.5,0.1,0.05,0.01,0.005nM)の50μlが付加された。該プレートは、37℃で2.5h、インキュベートされた。
【0176】
PBSTで4回洗浄後、ブロッキングバッファにおいて1/1000に希釈されたウサギの抗p−S129−α−シヌクレイン(Epitomics(エピトミクス社))の50μlが付加され、37℃で2h、インキュベートされた。
【0177】
ウェルがPBSTで4回洗浄された後、ブロッキングバッファにおいて1:10,000希釈されたヤギの抗ウサギのIgG HRPの(Jackson ImmunoResearch)の50μl/ウェルが付加され、1.5h、37℃でインキュベートされた。
【0178】
該プレートは、PBSTで4回洗浄され、結合HRPの活性度が、増強された化学発光基質によって(SuperSignal ELISA Femto, Pierce Biotechnology)を用いて化学発光反応によって、効力を検定され、その後、相対光単位で化学発光度がPerkinElmer社のミクロプレート読取器により直ちに測定された。
【0179】
立体構造のmAbは、α−シヌクレインの凝集形態のみ検出され、α−シヌクレインのモノマー形態は検出れないのを確認するために、上述のさらなるELISAの効力検定が、Syn−1を捕獲抗体として用いて、コントロールとして実施される。
【0180】
その結果が図12に見ることができる。該結果は、立体構造のmAbのSyn−F2及びSyn−02が、凝集されてリン酸化されたα−シヌクレイン形態に反応していることを示している。Syn−1は、類似したものを示したが、両場合共に、リン酸化したS129 α−シヌクレインのモノマー形態及び凝集形態に低反応を示した。
【0181】
シヌクレインの凝集化及びリン酸化は、PDの病変形成において重要な役割を果たしていると考えられる。それ故に、生物学的な流体においてα−シヌクレインのリン酸化又は非リン酸化形態の検出は、PDに対して生物学的にマークする可能性として用いることができる。
【0182】
ELISAの効力検定は、α−シヌクレインの凝集形態は明細に検出し、α−シヌクレインのモノマー形態は検出しないように、開発が進んでいる。効力検定は、捕獲抗体として抗体Syn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,又はSyn−04を用いる開発が進められている。そして、凝集されたα−シヌクレイン用のFL−140(全長のα−シヌクレインに対して隆起するウサギの多クローン抗体,Santa Cruz Biotechnology)のような抗体、又はp−S129−α−シヌクレイン用にウサギの抗p−S129−α−シヌクレインが後続している。
【0183】
例10
免疫組織化学
【0184】
mAbは、パーキンソン病の症例からの脳セクションのペルオキシダーゼの免疫組織化学を用いて試験された。Syn−F1及びSyn−02は、10000分の1(0.1μg/ml)に希釈で用いられ、Syn−F2,Syn−01,Syn−03及びSyn−04は5000分の1(0.2μg/ml)の希釈で用いられた。マウスの陰性のコントロールスライド(control slide)が同時に処理され、すべての免疫組織化学的なステップが含まれるが、一次抗体は省略される。
【0185】
結果
mAbは、パーキンソン病(PD)及び多系統萎縮症(MSA)の症例においてペルオキシダーゼの免疫組織化学を用いて働きを向上してきた。すべての抗体は、PD脳のレビー小体及びレビー神経炎における強い免疫染色(図14)及び多系統萎縮症の白質グリア細胞質内封入体(図15)を生成した。マウスの陰性のコントロールスライド(control slide)もまた処理されたが、セクションにおいてどんな免疫反応性も生成しなかった。
【0186】
コントロール症例において(図13)、画像は、我々のmAbと、商業利用されているマウスの単クローンの抗α−シヌクレインの抗体(Syn−1)又はマウスの単クローンの抗リン酸化されたSer129のα−シヌクレイン(phospho-syn)とに対する免疫染色されたセクションを示し、コントロール症例からの前帯状皮質におけるものである。マウス及びウサギの陰性のコントロールスライドもまた同時に処理された。すべてのセクションが、神経核及び膜を視覚化するために、クレシルバイオレット(青)(Cresyl violet (blue))で対比染色された。明るさに対して同一の調整がすべての画像に適用された。スケールバーは、20μmを表している(全パネルに適用)。
【0187】
パーキンソン病の症例において(図14)、画像は、我々のmAbと、商業利用されているマウスの単クローンの抗α−シヌクレインの抗体(Syn−1)又はマウスの単クローンの抗リン酸化されたSer129のα−シヌクレイン(phospho-syn)とに対するレビー小体の免疫活性を示し、パーキンソン病症例からの前帯状皮質におけるものである。すべてのセクションが、神経核及び膜を視覚化するために、クレシルバイオレット(青)で対比染色された。明るさに対して同一の調整がすべての画像に適用された。スケールバーは、20μmを表している(全パネルに適用)。
【0188】
多系統萎縮症の症例において(図15)、画像は、我々のmAbと、商業利用されているマウスの単クローンの抗α−シヌクレインの抗体(Syn−1)又はマウスの単クローンの抗リン酸化されたSer129のα−シヌクレイン(phospho-syn)とに対するグリア細胞質内封入体の免疫活性を示し、MSAの症例からの被殻におけるものである。セクションが、神経核及び膜を視覚化するために、クレシルバイオレット(青)で対比染色された。明るさに対して同一の調整がすべての画像に適用された。スケールバーは、20μmを表している(全パネルに適用)。
【0189】
例11
神経変性疾患を有すると知られている患者からの感謝脳組織の試料がSyn−02抗体で試験された。抗体は、5000分の1(0.2μg/ml)の希釈で用いられた。抗体は、全ての患者の試料において強い染色を生成した。
【0190】
患者Aは、パーキンソン遺伝子内のヘテロ接合性エクソンの欠失に関係するヘテロ接合性のミスセンス(missense)の変異を有する常染色体性で劣性早発性パーキンソン症候群を有するとして知られていた。図16(A)に示されるように、オリゴマーのα−シヌクレインが、シナプスと細胞プロセス(矢頭)において観察された。非常に少数の凝集物が、僅かのニューロメラニン含有ニューロンの細胞質内に見ることができた。
【0191】
患者Bは、アプログレッシブ(aprogressive)なDLBのパテント(patent)である。図16(B)に示されるように、オリゴマーのα−シヌクレインの免疫活性がシナプス、レビー小体神経突起のような構造及び細胞外凝集物内に観察された。
【0192】
患者Cは、、後発性特発性パーキンソンをもつ。図16(C)に示されるように、オリゴマーのα−シヌクレインの免疫活性が、レビー小体類似の細胞質内封入体及び神経突起内に観察された。
【0193】
これらの結果は、本発明の抗体がα−シヌクレインに関係する神経変性の病気を診断するのに使えることを示している。
【0194】
例12
脳組織の試料の異なるセクション(海馬のCA2領域、嗅内皮質表面層1−3、嗅内皮質中性)が、Syn−01,Syn−02,Syn−03,Syn−04、Syn−F1及びSyn−V2抗体によって試験された。該抗体は、5000分の1の希釈で用いられた。脳の試料は、4つの処置、1)前処理無し、2)クエン酸緩衝内での120℃、10分のオートクレーブ、3)15分のギ酸、4)20μg/mlのプロテイナーゼK処理の4個のうちの1つで処理される。
【0195】
インキュベーションは4℃で夜通しであった。検出は、色素体としてのロムリン(Romulin)を有するヒストステイン(Histostain)HPキットにより行われた。コントロール抗体Syn−1は、1:1000の希釈で用いられた。コントロール抗体で試験された組織の試料はギ酸で15分前処理された。
【0196】
結果は、抗体が脳組織の前処置無しでさえ働いたことを示した。しかしながら、抗体は前処理により、より良く採取された。タンパク質Kの処理された試料は、より良い結果を示した。プロテイナーゼK処理は、異常なシヌクレイン(すなわち、細胞内凝集物)の免疫性を高め、かつシナプスの染色の拡散を減少させることが知られている。コントロール抗体と、海馬(A)及び海馬傍回(B)のCA2領域におけるsyn−F2抗体との結果が図17に示されている。
【0197】
例13
6つの抗体クローンSyn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04に対する重鎖及び軽鎖の種々の領域のポリヌクレオチド及びアミノ酸の配列が決定された。
【0198】
RNAが、技術マニュアルによる“TRIzol(登録商標) Plus RNA purification System” (Invitrogen)を用いて、雑種細胞のクローンSyn−F1,Syn−F2,Syn−01,Syn−02,Syn−03,及びSyn−04から抽出された。単離された全RNAは、アルゴスのゲルの電気泳動法によって分析された。
【0199】
全RNAは、技術マニュアルによる“SuperscriptTMIII First-strand synthesis System ”を使って、アイソタイプ−明細(isotype-specific)のアンチセンスのプライマー又は普遍的なプライマーを用いて、逆転転写され、cDNAにされた。VH及びVLの抗体フラグメントは、遺伝子記述のRACEの標準作動手続により増幅された。
【0200】
増幅された抗体フラグメントは、標準分子クローニング技術を用いて標準クローニングベクターにクローンされた。Colony PCRのスクリーニングが、正しいサイズの挿入によりクローンを識別するために実施された。正しいサイズのインサートを有し5より小さくない個数の単一クローンが各抗体フラグメントに配列された。
【0201】
DNA配列は、各VH及びVL領域ごとに決定され、対応のアミノ酸配列が決定された。先頭の配列、フレームワーク領域(FR1,FR2,FR3及びFR4)、及び相補性決定領域(complementarity determining regions)が、各重鎖及び軽鎖の変化領域ごとに決定された。結果は、表6に示されている。CDR1,CDR2及びCDR3のポリヌクチド及びアミノ酸の配列が配列番号13−48で示されている。
【0202】
Syn−F1のVH及びVL領域をコードしたDNA配列が配列番号1及び3で提供される。Syn−F1のVH及びVLのアミノ酸配列は、配列番号2及び4で提供される。Syn−F1のVH領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号13,14及び15でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号16,17及び18でそれぞれ提示される。Syn−F1のVL領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号13,14及び15でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号22,23及び24でそれぞれ提示される。
【0203】
Syn−F2のVH及びVL領域をコードしたDNA配列が配列番号5及び7で提供される。Syn−F2のVH及びVLのアミノ酸配列は、配列番号6及び8で提供される。Syn−F2のVH領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号25,26及び27でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号28,29及び30で提示される。Syn−F2のVL領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号31,32及び33でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号34,35及び36で提示される。
【0204】
Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04のVH及びVL領域をコードしたDNA配列が配列番号9及び11でそれぞれ提供される。Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04のVH及びVLのアミノ酸配列は、配列番号10及び12で提供される。Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04のVH領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号37,38及び39でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号40,41及び42で提示される。Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04のVL領域のCDR1,CDR2及びCDR3領域は、配列番号43,44及び45でそれぞれ提示されている。対応するアミノ酸配列は、配列番号46,47及び48で提示される。
【0205】
Syn−01,Syn−02,Syn−03及びSyn−04のVH及びVL領域の配列も同じであった。
【0206】
【表8】
【0207】
先頭配列はイタリック体とされ、CRD領域は下線付きとなっている。
【0208】
例14
BiFC培養システムにおけるq−シヌクレインの共凝集
【0209】
BiFC(bimolecular fluorescence complementation:二分子蛍光相補性)を確立するために、培養システム,SH−SY5Y細胞が、GN−link−αSyn(V1S)又はαSynGC(SV2)(Massachusetts General Hospital, Charlestown, MA(マサチューセッツ ゼネラル ホスピトル,チャールストン,MA))のパメラ マクリーン博士(Dr. Pamela McLean)から親切なギフト)による電気穿孔を用いて遺伝子導入された。遺伝子導入された細胞は、コロニーが現出するまでの2−3週間、600μg/ml G418(Invitrogen, Carlsbad, CA(インビトロゲン カールスバッド カリフォルニア))により選択された。この安定的な株化細胞は、200μg/mlのG418で保守された。
【0210】
SV2細胞は、ビーナス蛍光タンパク質のC端末のシヌクレインと融合する人のα−シヌクレインを安定的に過剰発現し、
μg/mlの正常マウスのIgG又はα−シヌクレイン抗体(274,Syn−01,Syn−02,Syn−F1,Syn−F2,BI 1D12,F7A11)の存在においてα−シヌクレインをタグしたN末端のビーナスフラグメントを過剰表現するVI Sの安定した株化細胞と共培養された。
【0211】
インキュベーションの3日後、BiFC蛍光は、Olympus(Tokyo, Japan)(オリンパス社(東京,日本))のF V1000の共焦点レーザースキャニング顕微鏡により分析された。
【0212】
斑点(puncta)形成がセル内に観察された(矢頭)。斑点形成を含む細胞の個数が計数され、斑点陽性細胞の比が計算された。結果は、図18及び図19に示される。グラフは、α−シヌクレイン凝集物を含む細胞のパーセンテージを指示している。ここで説明された特定の例及び実施形態は、性質の例示したものであり、本発明を限定することを意図しない。さらなる実施形態及びその例は、本明細書を考慮して、当業者に明らかであり、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図9-6】
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18-1】
図18-2】
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]