(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261623
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】成形式プリントバー
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20180104BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20180104BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20180104BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
B41J2/16 515
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/155
B41J2/16 101
B41J2/175 153
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-560146(P2015-560146)
(86)(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公表番号】特表2016-511717(P2016-511717A)
(43)【公表日】2016年4月21日
(86)【国際出願番号】US2013028216
(87)【国際公開番号】WO2014133517
(87)【国際公開日】20140904
【審査請求日】2015年9月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チエン−フア
(72)【発明者】
【氏名】カンビー,マイケル,ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,シラム,ジェイ
【審査官】
藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−501655(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0225131(US,A1)
【文献】
特開2004−148827(JP,A)
【文献】
特開2003−063010(JP,A)
【文献】
特開平11−208000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントバーの作製方法であって、該プリントバーが、細長い一体型の本体内に成形された複数のプリントヘッドダイを備えており、該複数のプリントヘッドダイが、前記本体の全長に渡ってほぼ端から端まで配置されており、該本体がその内部にチャネルを有しており、該チャネルを介して流体が前記複数のプリントヘッドダイへ直接通過することが可能であり、該方法が、
キャリア上に可撓性回路を付与し、
前記複数のプリントヘッドダイの各々のオリフィスが前記可撓性回路の開口内に位置するよう該複数のプリントヘッドダイを該可撓性回路上に配置し、
該複数のプリントヘッドダイの各々の電気端子を該可撓性回路の導体に接合し、
該複数のプリントヘッドダイ上にチャネルを有する成形体をウェハレベル成形ツールを用いて形成し、及び、
前記可撓性回路から前記キャリアを取り外す
ことを含み、
前記複数のプリントヘッドダイ及び前記チャネルがウェハレベルで同時に作製される、プリントバーの作製方法。
【請求項2】
前記複数のプリントヘッドダイの各々が薄いダイからなる、請求項1に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項3】
複数の前記薄いダイの各々が細長い薄片からなる、請求項2に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項4】
複数の前記細長い薄片からなるダイの各々が、
前記チャネルに接続された複数の穴であって、該チャネルから該複数の穴へとプリンティング流体が直接流れることが可能となっている、複数の穴と、
該複数の穴に接続されたマニホールドであって、該複数の穴から該マニホールドへと前記プリンティング流体が直接流れることが可能となっている、マニホールドと、
該マニホールドに接続された複数の噴出チャンバであって、該マニホールドから該複数の噴出チャンバへと前記プリンティング流体が流れることが可能となっている、複数の噴出チャンバと
を含む、請求項3に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項5】
前記複数の穴の各々が、前記チャネルにおける幅の広い部分から前記マニホールドにおける幅の狭い部分へとテーパーがつけられており、
前記チャネルが、前記本体内に成形され、及び前記複数の穴から離れた幅の広い部分から該複数の穴における幅の狭い部分へとテーパーがつけられている、
請求項4に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項6】
前記複数の細長い薄片からなるダイが、前記本体の全長に渡って互い違いの構成で複数の行内に配置され、その各行における該複数の細長い薄片からなるダイが、該行内の他の細長い薄片からなるダイと重なっており、
前記チャネルが複数のチャネルを含み、その各チャネルが、前記複数の細長い薄片からなるダイのうちの1つ以上へと流体が直接通過することを可能にするものである、
請求項3に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項7】
前記複数の細長い薄片からなるダイの各々が、
オリフィスを有する正面であって、該オリフィスを介して該細長い薄片からなるダイから流体を分配することが可能である、正面と、
該正面の反対側の背面と、
該正面と該背面との間の側面と
を含み、
前記複数の細長い薄片からなるダイの各々の少なくとも1つの前記側面に沿ってチャネルが配設される、
請求項6に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項8】
前記複数の細長い薄片からなるダイの各々が、
オリフィスを有する正面であって、該オリフィスを介して該細長い薄片からなるダイから流体を分配することが可能である、正面と、
該正面の反対側の背面と、
該正面と該背面との間の側面と
を含み、
前記複数の細長い薄片からなるダイの各々の前記背面に沿ってチャネルが配設される、
請求項6に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項9】
前記一体型の本体が、前記複数の細長い薄片からなるダイを単一の平面内で支持する、請求項6に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項10】
プリントバーの作製方法であって、該プリントバーが、複数の薄いプリントヘッドダイの周囲に成形された本体を備えており、該成形された本体が、複数のチャネルを有しており、該複数のチャネルを介して該複数の薄いプリントヘッドダイ内へと流体が直接通過することが可能となっており、及び該複数の薄いプリントヘッドダイが、複数の行内にほぼ端から端まで互い違いの構成で配置されており、その各行における該複数の薄いプリントヘッドダイが該行内の他のプリントヘッドダイと重なっており、該方法が、
キャリア上に可撓性回路を付与し、
前記複数の薄いプリントヘッドダイの各々のオリフィスが前記可撓性回路の開口内に位置するよう該複数の薄いプリントヘッドダイを該可撓性回路上に配置し、
該複数の薄いプリントヘッドダイの各々の電気端子を該可撓性回路の導体に接合し、
該複数の薄いプリントヘッドダイ上にチャネルを有する成形体をウェハレベル成形ツールを用いて形成し、及び、
前記可撓性回路から前記キャリアを取り外す
ことを含み、
前記複数の薄いプリントヘッドダイ及び前記複数のチャネルがウェハレベルで同時に作製される、
プリントバーの作製方法。
【請求項11】
前記本体が、一体型の本体からなり、及び単一の平面内で該本体内に前記複数の薄いプリントヘッドダイを支持する、請求項10に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項12】
前記本体が、前記導体及び前記電気端子の周囲に成形される、請求項10に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項13】
プリントバーの作製方法であって、該プリントバーが、
複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイであって、該複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイの各々が、複数の噴出チャンバと、該複数の噴出チャンバへと流体が通過することを可能にする複数の通路と、前記噴出チャンバからの流体を噴出させることが可能なオリフィスを有する正面と、該正面と反対側の背面とを含む、複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイと、
該複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイを部分的に密閉する成形体であって、該成形体内の複数のチャネルが、前記複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイ内の前記複数の通路に直接接続されている、成形体と
を備えており、
該方法が、
キャリア上に可撓性回路を付与し、
前記複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイの前記オリフィスが前記可撓性回路の開口内に位置するよう該複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイを該可撓性回路上に配置し、
該複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイの各々の電気端子を該可撓性回路の導体に接合し、
該複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイ上に複数のチャネルを有する成形体をウェハレベル成形ツールを用いて形成し、及び、
前記可撓性回路から前記キャリアを取り外す
ことを含み、
前記複数の細長い薄片からなるプリントヘッドダイ及び前記複数のチャネルがウェハレベルで同時に作製される、プリントバーの作製方法。
【請求項14】
前記複数のチャネルが前記成形体内に成形される、請求項13に記載のプリントバーの作製方法。
【請求項15】
一体型の成形体内に埋設された複数の薄いプリントヘッドダイを備えたプリントバーの作製方法であって、該成形体が、該複数の薄いプリントヘッドダイへ流体が直接通過することを可能にする複数のチャネルを含み、該方法が、
キャリア上に可撓性回路を付与し、
前記複数の薄いプリントヘッドダイの各々のオリフィスが前記可撓性回路の開口内に位置するよう該複数の薄いプリントヘッドダイを該可撓性回路上に配置し、
該複数の薄いプリントヘッドダイの各々の電気端子を該可撓性回路の導体に接合し、
該複数の薄いプリントヘッドダイ上に複数のチャネルを有する成形体をウェハレベル成形ツールを用いて形成し、及び、
前記可撓性回路から前記キャリアを取り外す
ことを含み、
前記複数の薄いプリントヘッドダイ及び前記複数のチャネルがウェハレベルで同時に作製される、プリントバーの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インクジェットペン又はプリントバー内の各プリントヘッドダイは、噴出チャンバへとインクを伝搬する微細なチャネルを含む。インクは、該インクジェットペン又は該プリントバー上で(1つ以上の)前記プリントヘッドダイを支持する構造体内の通路を介して、インク供給源から前記プリントヘッドダイの前記チャネルへと分配される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
例えば、該プリントヘッドダイのコストを削減するために、ひいては該インクジェットペン又はプリントバーのコストを削減するために、各プリントヘッドダイのサイズを小さくすることが望ましい。しかし、一層小さなプリントヘッドダイを用いる場合には、該プリントヘッドダイを支持し且つ該プリントヘッドダイへインクを供給する通路を含む一層大きな前記構造体に変更を加える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第1の実施形態(1/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図2】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第1の実施形態(2/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図3】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第2の実施形態(1/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図4】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第2の実施形態(2/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図5】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第3の実施形態(1/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図6】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第3の実施形態(2/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図7】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第4の実施形態(1/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図8】成形体内にマイクロデバイスが埋設された新規の成形式流体構造の第4の実施形態(2/2)を示しており、該成形体は該マイクロデバイスへの直接の流体経路を有している。
【
図9】新規の流体構造(
図1ないし
図8に示した実施形態のうちの1つなど)を実施した流体システムを示すブロック図である。
【
図10】基体幅(substrate wide)プリントバー内のプリントヘッドに新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリンタを示すブロック図である。
【
図11】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図12】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図13】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図14】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図15】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図16】
図10のプリンタで使用されるようなプリントヘッドダイのための新規の流体構造の一例を実施したインクジェットプリントバーを示している。
【
図17】新規のプリントヘッドダイの流体構造を作製するためのプロセスの一例(1/5)を示す断面図である。
【
図18】新規のプリントヘッドダイの流体構造を作製するためのプロセスの一例(2/5)を示す断面図である。
【
図19】新規のプリントヘッドダイの流体構造を作製するためのプロセスの一例(3/5)を示す断面図である。
【
図20】新規のプリントヘッドダイの流体構造を作製するためのプロセスの一例(4/5)を示す断面図である。
【
図21】新規のプリントヘッドダイの流体構造を作製するためのプロセスの一例(5/5)を示す断面図である。
【
図23】
図11ないし
図16に示すプリントバーのような新規のインクジェットプリントバーを作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示す斜視図である。
【
図24】
図11ないし
図16に示すプリントバーのような新規のインクジェットプリントバーを作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示す斜視図である。
【
図25】
図11ないし
図16に示すプリントバーのような新規のインクジェットプリントバーを作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示す斜視図である。
【
図26】
図11ないし
図16に示すプリントバーのような新規のインクジェットプリントバーを作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示す斜視図である。
【
図27】
図11ないし
図16に示すプリントバーのような新規のインクジェットプリントバーを作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示す斜視図である。
【
図29】プリントヘッドダイのための新規の流体構造の別の一例を示している。
【
図30】プリントヘッドダイのための新規の流体構造の別の一例を示している。
【
図31】プリントヘッドダイのための新規の流体構造の別の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0004】
全ての図面において、同一の符号は、同一又は同様の要素を示している。それら図面は必ずしも実際の縮尺にはなっていない。図示の例を一層明瞭に示すために要素によっては該要素間の相対的なサイズが誇張されている。
【0005】
基体幅プリントバーアセンブリを用いたインクジェットプリンタは、プリンティング速度の向上及びプリンティングコストの削減に資すべく開発されてきた。従来の基体幅プリントバーアセンブリは、プリンティング流体供給源から小さなプリントヘッドダイへとプリンティング流体を伝搬する複数の部分を含み、該プリントヘッドダイから用紙その他のプリント基体へと該プリンティング流体が噴出される。該プリントヘッドダイのサイズ及び間隔の縮小は、コスト削減のために重要であり続け、一層大きなインク供給要素から遙かに小さくて一層密に隔置されたダイへのプリンティング流体の搬送は、複雑な流路構造及び製造プロセスを必要とし、これは実際にコストを増大させ得るものである。
【0006】
基体幅インクジェットプリンタにおけるコストの削減に資する一層小さなプリントヘッドダイ及び一層小型のダイ回路の使用を可能にする新規の流体構造が開発された。該新規の流体構造の一例を実施したプリントバーは、成形可能材料からなる細長い一体型の(monolithic)本体へと成形された複数のプリントヘッドダイを含む。該本体内に成形された複数のプリンティング流体チャネルは、各ダイにおける複数のプリンティング流体通路へプリンティング流体を直接伝搬する。該成形された本体は、外部的な流体接続を行うため及び該ダイを他の構造に取り付けるために、各ダイのサイズを事実上拡大するものとなり、これにより、一層小さなダイを使用することが可能となる。該プリントヘッドダイ及びプリンティング流体チャネルは、プリンティング流体チャネルを内蔵した新規の複合型プリントヘッドウェハを形成するようウェハレベルで成形することが可能なものであり、これにより、シリコン基板にプリンティング流体チャネルを形成する必要がなくなり、及び一層薄いダイを使用することが可能となる。
【0007】
該新規の流体構造は、インクジェットプリンティングのためのプリントバー又はその他のタイプのプリントヘッド構造に限定されるものではなく、他の装置で及び他の流体用途のために実施することが可能である。このため、一実施形態では、該新規の構造は、成形体内に埋設されたマイクロデバイスを含み、該成形体は、該マイクロデバイス内へ又は該マイクロデバイス上へ流体を直接流入させるためのチャネル又はその他の流路を有するものである。該マイクロデバイスは、例えば、電子的な装置、機械的な装置、又はMEMS(Microelectromechanical system)デバイスとすることが可能である。前記流体の流れは、該マイクロデバイス内へ又は該マイクロデバイス上への冷却流体の流れ、又はプリントヘッド若しくはその他の流体を分配するマイクロデバイス内への流体の流れとすることが可能である。
【0008】
図示し以下で説明する上述その他の例は、本発明を例示するが本発明を限定するものではなく、本発明は特許請求の範囲で定義されるものである。
【0009】
本書で用いる場合、「マイクロデバイス」とは、30mm以下の1つ以上の外寸を有する装置を意味し、「薄い」とは、650μm以下の厚さを意味し、「細長い薄片(sliver)」とは、少なくとも3の長さ/幅(L/W)比を有する薄いマイクロデバイスを意味し、「プリントヘッド」及び「プリントヘッドダイ」とは、インクジェットプリンタ又は1つ以上の開口から流体を分配するインクジェットタイプの分配装置(dispenser)の一部を意味する。プリントヘッドは、1つ以上のプリントヘッドダイを含む。「プリントヘッド」及び「プリントヘッドダイ」は、インクその他のプリンティング流体を用いたプリンティングに限定されるものではなく、プリンティング以外の用途のため及び/又は他の流体のインクジェットタイプの分配も含むものである。
【0010】
図1及び
図2は、新規の流体構造10の一実施形態を示す正面図及び平面図である。
図1及び
図2を参照すると、構造10は、プラスチック又はその他の成形可能材料からなる一体型の本体14内に成形されたマイクロデバイス12を含む。成形された本体14は、本書では成形体14とも称す。例えば、マイクロデバイス12は、電子的な装置、機械的な装置、又はMEMSデバイスとすることが可能である。チャネル又はその他の適当な流路16が、マイクロデバイス12と連絡した状態で本体14内に成形され、該チャネル16内の流体が該デバイス12内又は該デバイス上(又はその両方)へ直接流れることが可能となっている。この実施形態では、チャネル16は、マイクロデバイス12内の流体通路18に接続され、及び該マイクロデバイス12の外部表面20に対して露出している。
【0011】
図3及び
図4に示すもう1つの実施形態では、成形体14内の流路16は、空気又はその他の流体が(例えばマイクロデバイス12の冷却のために)マイクロデバイス12の外部表面20に沿って流れることを可能にする。また、この実施形態では、電気端子24においてデバイス12に接続される信号トレース又はその他の導体22が成形体14内に成形されている。
図5及び
図6に示す別の実施形態では、マイクロデバイス12は、本体14内に成形され、及びチャネル16の反対側に露出表面26を有している。
図7及び
図8に示す更に別の実施形態では、マイクロデバイス12A,12Bは、本体14内に成形され、及び流体チャネル16A,16Bを有している。この実施形態では、流体チャネル16Aは、外側のデバイス12Aの縁部に接触し、流体チャネル16Bは、内側のデバイス12Bの底部に接触している。
【0012】
図9は、新規の流体構造10(例えば、
図1ないし
図8に示した流体構造10のうちの1つ)を実施したシステム28を示すブロック図である。
図9を参照すると、システム28は、流体構造10内の流路16へ流体を移送するよう構成された流体移送手段32に動作可能な状態で接続された流体源30を含む。該流体源30は、例えば、電子的なマイクロデバイス12を冷却するための空気の源としての大気、又はプリントヘッドのマイクロデバイス12のためのプリンティング流体源を含む。流体移送手段32は、ポンプ、ファン、重力、又は流体源30から流体構造10へと流体を移送するための他の任意の適当な機構を表すものである。
【0013】
図10は、基体幅プリントバー36において新規の流体構造10の一例を実施したインクジェットプリンタ34を示すブロック図である。
図10を参照すると、プリンタ34は、プリント基体38の幅全体にまたがるプリントバー36、該プリントバー36に関連する流量調整手段40、基体搬送機構42、インクその他のプリンティング流体供給源44、及びプリンタコントローラ46を含む。該コントローラ46は、プログラミング、(1つ以上の)プロセッサ及びそれに関連するメモリ、及びプリンタ10の動作可能な要素を制御するために必要な電子回路及び構成要素を表すものである。プリントバー36は、シート紙、連続するウェブ紙、又はその他のプリント基体38上にプリンティング流体を分配するための配列をなす複数のプリントヘッド37を含む。以下で詳述するように、各プリントヘッド37は、1つの成形体内に1つ以上のプリントヘッドダイを含み、該1つ以上のプリントヘッドダイへプリンティング流体を直接供給するチャネル16を有している。各プリントヘッドダイは、流体供給源44から流量調整手段40及びプリントバー36内のチャネル16を介した流路を介してプリンティング流体を受容する。
【0014】
図11ないし
図16は、新規の流体構造10の一例を実施したインクジェットプリントバー36(例えば、
図10に示したプリンタ34で使用することが可能なもの)を示している。先ず
図11の平面図を参照すると、複数のプリントヘッド37は、細長い一体型の成形体14内に埋設され、及び複数の行48内で互い違いの構成でほぼ端から端まで配置され、各行内の複数のプリントヘッドはその行内の他のプリントヘッドと重なるようになっている。4つの行48をなす互い違いに配置された複数のプリントヘッド37を(例えば、4つの異なる色をプリントするために)示したが、他の適当な構成を用いることが可能である。
【0015】
図12は、
図11の12-12断面図である。
図13ないし
図15は、
図12を詳細に示したものであり、
図16は、
図12ないし
図14のプリントヘッドダイの流体構造10の特徴の一部のレイアウトを示す平面図である。
図11ないし
図15を参照すると、図示の例では、各プリントヘッド37は、一対のプリントヘッドダイ12を含み、その各プリントヘッドダイ12は、2行の噴出チャンバ50とそれに対応するオリフィス52とを有しており、該オリフィス52を介してプリンティング流体が該チャンバ50から噴出される。成形体14内の各チャネル16は、1つのプリントヘッドダイ12へプリンティング流体を供給する。プリントヘッド37の他の適当な構成もまた実施することが可能である。例えば、より多数又はより少数の噴出チャンバ50及びチャネル16を有する、より多数又はより少数のプリントヘッドダイ12を使用することが可能である。(プリントバー36及びプリントヘッド37は
図12ないし
図15では上方に向いているが、プリントバー36及びプリントヘッド37は通常はプリンタ内に配設される際に
図10のブロック図に示すように下方に向いている。)
プリンティング流体は、2行の噴出チャンバ50間で各ダイ12に沿って長手方向に延びるマニホールド54から各噴出チャンバ50内へと流入する。プリンティング流体は、ダイ表面20でプリンティング流体供給チャネル16に接続された複数のポート56を介してマニホールド54内に供給される。プリンティング流体供給チャネル16は、図示のようにプリンティング流体ポート56よりも大幅に広いものであり、プリントバー36内にプリンティング流体を伝搬する流量調整手段又はその他の部分における一層大きな緩く隔置された流路から、プリントヘッドダイ12内の一層小さな密に隔置されたプリンティング流体ポート56へと、プリンティング流体を伝搬するものである。このため、プリンティング流体供給チャネル16は、従来のプリントヘッドにおける別個の「ファンアウト(fan-out)」及びその他の流体経路指定構造の必要性を低減させ又はなくすことに資すことが可能なものである。更に、図示のようにプリントヘッドダイ表面20の大きな面積をチャネル16に対して直接露出させることにより、プリンティング中にチャネル16内のプリンティング流体がダイ12を冷却することが可能となる。
【0016】
図11ないし
図15におけるプリントヘッドダイ12を理想的に表現したものが、3つの層58,60,62であるが、これは、噴出チャンバ50、オリフィス52、マニホールド54、及びポート56を明示するための便宜上のものに過ぎない。実際のインクジェットプリントヘッドダイ12は、典型的には、シリコン基板58上に形成された複雑な集積回路(IC)構造となり、
図11ないし
図15には図示していない複数の層及び要素を有するものとなる。例えば、各噴出チャンバ50において基板58上に形成されたサーマル噴出要素又は圧電噴出要素が駆動されて、インク又はその他のプリンティング流体の小滴又は流れがオリフィス52から噴出する。
【0017】
成形された流体構造10は、長くて狭くて非常に薄いプリントヘッドダイ12を使用することを可能にする。例えば、長さが約26mmで幅が約500μmである厚さ100μmのプリントヘッドダイ12を厚さ500μmの本体14内に成形して、従来の厚さ500μmのシリコンプリントヘッドダイと置換できることが分かっている。シリコン基板内に供給チャネルを形成する場合と比較して、本体14内にチャネル16を成形するのがより安価かつ容易であるだけでなく、より薄いダイ12内にプリンティング流体ポート56を形成するのがより安価かつ容易である。例えば、厚さ100μmのプリントヘッドダイ12におけるポート56は、より厚い基板の場合には実用的でないドライエッチング又はその他の適当なマイクロマシニング技術により形成することが可能である。従来の溝の形成ではなく、薄いシリコン、ガラス、又はその他の基板58における直線又は僅かにテーパーのついた複数の貫通ポート56からなる高度に密集したアレイをマイクロマシン加工を行うことにより、適切なプリンティング流体の流れを提供したまま一層強固な基板を残すことが可能となる。テーパーのついたポート56は、例えば、基板58に付与された一体型又は多層のオリフィスプレート60/62内に形成されたマニホールド54及び噴出チャンバ50内からその外部へ気泡を移動させるのを助けるものとなる。現行のダイ操作機器及びマイクロデバイス成形ツール及び技術は、50μm程の薄さで最大150の長さ/幅比を有するダイ12の成形、及び30μm程の狭いチャネル16の成形に、適用することが可能であると予想される。また、成形体14は、複数行のかかるダイの細長い薄片を単一の一体型の本体内に支持することができる有効で安価な構造を提供する。
【0018】
図17ないし
図21は、新規のプリントヘッド流体構造10を作成するためのプロセスの一例を示している。
図22は、
図17ないし
図21に示すプロセスのフローチャートである。
図17を参照すると、導電トレース22及び保護層66を有する可撓性回路64は、熱放出テープ70を用いてキャリア68上に積層され、又はその他の態様でキャリア68に付与される(
図22のステップ102)。
図18及び
図19に示すように、プリントヘッドダイ12は、オリフィス側を下にしてキャリア68上で開口72内に配置され(
図22のステップ104)、導体22がダイ12上の電気端子24に接合される(
図22のステップ106)。
図20において、成形ツール74は、プリントヘッドダイ12の周囲の成形体14内にチャネル16を形成する(
図22のステップ108)。用途によっては、成形ツール74の取り外しを容易化し又はファンアウトを増大させる(又はその両方の)ために、テーパー付きチャネル16が望ましい。成形後、プリントヘッド流体構造10がキャリア68から取り外されて(
図22のステップ110)、
図21に示す完成部品が形成され、該完成部品では、導体22は層66により覆われ、及び成形体14により取り囲まれている。
図20に示すようなトランスファー成形プロセスでは、チャネル16が本体14内に成形される。他の作製プロセスでは、プリントヘッドダイ12の周囲に本体14を成形した後にチャネル16を形成するのが望ましい場合がある。
【0019】
単一のプリントヘッドダイ12及び単一のチャネル16の成形が
図17ないし
図21に示されているが、複数のプリントヘッドダイ及び複数のプリンティング流体チャネルをウェハレベルで同時に成形することが可能である。
図23ないし
図28は、プリントバー36を作製するためのウェハレベルプロセスの一例を示している。
図23を参照すると、プリントヘッド37は、複数のプリントバーの所定のパターンでガラス又はその他の適当なキャリアウェハ68上に配置される。(「ウェハ」は、丸い基板を示すために使用され、一方、「パネル」は、矩形の基板を示すために使用される場合があるが、本書で用いる場合、「ウェハ」は、任意の形状の基板を含むものである。)プリントヘッド37は、通常は、
図17及び
図22のステップ102を参照して上述したように、最初に所定パターンの導体22及びダイ開口72を付与し又は形成した後にキャリア68に対して配置されることになる。
【0020】
図23に示す実施形態では、4行のプリントヘッド37をそれぞれ有する5組のダイ78がキャリアウェハ66上に載置されて5つのプリントバーが形成される。例えば、レターサイズ又はA4サイズの基体用の4行のプリントヘッド37を有する基体幅プリントバーは、約230mmの長さと約16mmの幅を有するものとなる。このため、5組のダイ78は、
図23に示すように、単一の270mm×90mmのキャリアウェハ66上に配置することが可能である。図示の実施形態では、一連の導体22は、プリントヘッド37の各行の縁部の近傍のボンディングパッド23へと延びる。導体22及びボンディングパッド23は、
図28の詳細に一層明確に見ることができる。(
図21の導体22のような、複数の噴出チャンバのそれぞれ又は複数の噴出チャンバグループへの導電性信号トレースは、他の構造的な特徴の妨げとならないよう省略されている。)
図24は、
図23における一組の4行のプリントヘッド37の24-24断面を示す拡大断面図である。明瞭化のためクロスハッチングは省略されている。
図23及び
図24は、
図23のステップ102-112が完了した後の製造過程のウェハ構造を示している。
図25は、チャネル16を有する本体14がプリントヘッドダイ12の周辺に成形される成形ステップ114が
図23で実施された後の
図24の断面を示している。個々のプリントバーストライプ78が分割され(
図26)、及びキャリア68から取り外されて(
図27)、5つの別個のプリントバー36が形成される(
図23のステップ116)。あらゆる適当な成形技術を使用することが可能であるが、テストを行った結果として、半導体デバイスのパッケージングに現在使用されているウェハレベル成形ツール及び技術は、
図21及び
図27に示したようなプリントヘッドダイの流体構造10の作製にコスト的に有効に適用し得るものであることが示唆されている。
【0021】
プリントヘッドダイ12を保持するために剛性を有する(又は少なくとも可撓性の一層低い)プリントバー36が望ましい場合には、一層硬い成形体14を使用することが可能である。可撓性プリントバー36が望ましい場合、例えば、別の支持構造が単一の平面内でプリントバーを剛性をもって保持する場合、又は非平面のプリントバー構成が望ましい場合には、一層低い硬さの成形体14を使用することが可能である。また、成形された本体14は通常は一体部分として成形されることが予想されるが、本体14は2つ以上の部分として成形することが可能である。
【0022】
図29ないし
図31は、プリントヘッドダイ12のための新規の流体構造10の別の実施形態を示している。かかる実施形態では、チャネル16は、例えば、
図17ないし
図21に関して上述したようなトランスファー成形プロセスを使用して、プリントヘッドダイ12の両側に沿って本体14内に成形される。プリンティング流体は、チャネル16からポート56を介して各噴出チャンバ50へと横方向に流れる。
図30の実施形態では、本体14を成形した後にオリフィスプレート62が付与されてチャネル16が閉鎖される。
図31の実施形態では、オリフィスプレート62上にカバー80が形成されてチャネル16が閉鎖される。チャネル16を部分的に画定する別個のカバー80が示されているが、本体14内に成形された一体型のカバー80を用いることも可能である。
【0023】
本書で最初に述べたように、図示し説明した実施形態は、本発明を例示するものであって本発明を制限するものではない。それらとは異なる実例もまた実施可能である。よって、上記説明は本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲において規定されるものである。