(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。本発明の実施例は、発明の要旨が変更されない限り、多様な形態に変形可能である。しかし、本発明の権利範囲が以下の実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明の要旨をあいまいにすることができると判断されれば、公知の構成及び機能についての説明は省略する。この明細書において、“含む”とは、特に他の記載がない限り、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0022】
本発明はキムチから分離した新規の植物性乳酸菌であるラクトバシラス・プランタラムLLP5193(寄託番号KCCM11598P)を提供する。
【0023】
近年、野菜や果物などの植物、キムチなどの果菜類を発酵した食品から分離した植物性乳酸菌が動物性乳酸菌に比べて優れた効果を持つという研究結果が相次いで発表されている。
【0024】
動物性乳酸菌(牛乳発酵乳酸菌)は培地栄養分として炭水化物とともに蛋白質、脂肪などを使う。したがって、長期間の発酵過程で蛋白質と脂肪によって腐敗する菌株の数が増加する欠点がある。一方、植物性乳酸菌は培地栄養分として炭水化物のみを使うので、発酵時に腐敗しない。
【0025】
また、植物性乳酸菌は動物性乳酸菌に比べて栄養分が足りない所で生存するので、低pH、高塩濃度などの苛酷な環境でも強い生存力を持ち、培養が容易であり、腸内に安定的に到逹することができるという利点がある。さらに、韓国人は植物性食品を主食とするので、植物性乳酸菌に適した腸内環境を持つ。
【0026】
本発明によるラクトバシラス・プランタラムLLP5193は優れた耐酸性、耐胆汁性を持つ。
【0027】
乳酸菌が整腸作用及び静菌作用に役立つためには、腸内に確実に到逹しなければならない。したがって、胃酸によって死滅せずに胃を通過するために、優れた耐酸性を持たなければならなく、十二指腸の上部から分泌される胆汁酸に対しても耐性を持たなければならない。
【0028】
本発明によるラクトバシラス・プランタラムLLP5193は優れた細胞付着能を持つ。乳酸菌が腸内で効果を発揮するためには腸管細胞(Intestinal cell)に付着しなければならないので、細胞付着能が重要である。
【0029】
本発明はラクトバシラス・プランタラムLLP5193に賦形剤を一定含量で添加することで、食感が良くて食べるのに適し、摩損率が低くて剤形化に有利な凍結乾燥物を提供する。
【0030】
特に、嬰児や幼児は粉末がたくさん飛ぶような食品や硬い食品を食べにくいので、本発明による凍結乾燥物を使えば嬰児や幼児のための乳酸菌含有製品を製造するのに大いに役に立つことができる。
【0031】
本発明は、キムチ試料を採取し、これから耐酸性、耐胆汁性及び細胞付着能に優れた菌株を選別する過程によって選択された乳酸菌であるラクトバシラス・プランタラムLLP5193を提供する。
【0032】
また、本発明は、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193を特定の条件で培養した後、特定の条件で発酵して発酵乳を製造する。また、前記発酵乳に一定含量の賦形剤を添加し、特定の条件で凍結乾燥して凍結乾燥物を製造する。
【0033】
前記ラクトバシラス・プランタラムLLP5193は、MRS培地または脱脂粉乳が2〜10重量%(Skim milk 20〜100g/L)含む商用牛乳培地で25〜42℃で18〜36時間培養できる。
【0034】
前記ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の培養液0.5〜2重量%を脱脂粉乳が2〜10重量%含まれた商用牛乳培地に添加した後、25〜42℃で12〜24時間発酵して発酵乳を製造することができる。
【0035】
前記発酵乳にタピオカ澱粉1〜5重量%を添加し、零下70℃で2〜6時間凍結させた後、50mtorr及び零下80℃を維持する凍結乾燥器で18〜36時間凍結乾燥して凍結乾燥物を製造することができる。
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0037】
実施例1−ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の選別
【0039】
以下の[表1]のように全国各地の伝統在来市場で約150種のキムチ試料を採取した。
【0041】
採取した試料に滅菌蒸溜水を添加して希釈液を作った後、粉砕均質器(Stomacher、商品名Pro−Media SH−001、ELMEX社製)で試料の内部を均質化した。
【0042】
前記希釈液を滅菌食塩水で段階別に希釈した後、0.1mlを取った。これを0.002重量%のBCP(Bromocresol purple)と1.5重量%の寒天(Agar)が添加されたMRS固体培地に塗抹し、37℃で維持される培養器で48時間培養した。
【0043】
培養後、黄色の環を現すコロニー(Colony)を選別し、個体別に同一培地に2〜3回継代培養することによって各菌株を純粋分離した。
【0044】
前記菌株を個体別にMRS液体培地に接種し、37℃で48時間再培養した後、4℃で冷蔵保管しながら使用した。
【0046】
カコ−2(Caco−2)細胞を用いて前記菌株の中で腸管細胞付着能に優れた菌株を選別した。
【0047】
Caco−2細胞は6−ウェルプレート(6−well plate)に2×10
5cells/ml濃度で接種した後、37℃、5%CO
2の条件を維持する培養器で約15日間培養し、単層(monolayer)を形成したものを使った。
【0048】
前記菌株をMRS液状培地に接種し、37℃で24時間培養した後、遠心分離(8,000rpm、10分)して菌体を回収した後、リン酸緩衝液(Potassium phosphate buffer)を添加して菌株懸濁液を用意した。
【0049】
前記菌株懸濁液を、Caco−2細胞が入っている6−ウェルプレートに1ml添加し、37℃、5%CO
2の条件で2時間反応させた後、リン酸緩衝液で3回繰り返し洗浄した。
【0050】
洗浄の終了した6−ウェルプレートにMRS液状培地2mlを添加した後、滅菌されたスクレーパー(Scraper)でCaco−2細胞及び菌株を掻き出した。これを10mlチューブに移した後、滅菌食塩水で多段希釈した。適正倍数の希釈液0.1mlをMRS平板培地に接種した後、37℃で48時間培養した。MRS平板培地上で培養されたコロニー数を確認して菌数を測定した。
【0051】
菌株の最初に添加した菌体の濃度と洗浄後の菌体濃度をそれぞれ測定して付着率(洗浄後菌体濃度/最初菌体濃度)を確認した。一番優秀な付着率を示した菌株を最終的に選別した。
【0052】
最終的に選別された菌株をMRS液体培地に接種し、37℃で48時間培養して増殖させ、遠心分離(10,000g、10分)して菌体を獲得した。前記菌体をMRS液体培地:グリセロール(Glycerol)が4:1の割合で含まれた凍結保存溶液(Freezing solution)に1ml添加した後、クリオチューブ(Cryo−tube)に入れ、−70℃で凍結保存した。凍結保存された菌株を後続のテストのためのスターターとして使った。
【0055】
選別された菌株の形態学的及び生化学的特徴を分析した。以下の[表2]を参照して、前記菌株はグラム陽性、桿菌、胞子形成能及びカタラーゼ(Catalase)は陰性と確認された。
【0058】
前記菌株の糖利用性をAPI 50 CHLキット(Biomerieux社製、France)で分析した。以下の[表3]及び
図1を参照して、ラクトバシラス・プランタラム標準菌株(Lactobacillus plantarum 1)と99.7%一致するが、トレハロース(Trehalose)に対する利用性は96%違うことが確認された。
【0060】
前記菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列は、[配列表]に示す配列番号1の通りである。塩基配列の分析結果、前記菌株はラクトバシラス属菌株と最大99%の相同性を持つ。これは
図2から確認することができる。
【0061】
よって、本発明者は前記菌株を新規のラクトバシラス・プランタラム菌株に同定し、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193と名付け、韓国微生物保存センターに2014年11月3日付けで寄託した(寄託番号KCCM11598P)。
【0062】
実施例3−ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の耐酸性及び耐胆汁性測定
【0063】
口腔から乳酸菌を摂取すると、胃酸及び胆汁によって相当数が死滅する。したがって、小腸及び大腸まで到達する乳酸菌の数を増やすためには優れた耐酸性及び耐胆汁性が必要である。
【0064】
ラクトバシラス・プランタラムLLP5193をMRS平板培地に接種して37℃で24時間培養した。培養されたコロニーを採取し、MRS液状培地で37℃で24時間静置培養して種菌培養液を製造した。
【0066】
種菌培養液1%をMRS液体培地に接種し、37℃で24時間培養した。取得した培養液に10%H
2SO
4を添加してpH3.0の強酸性条件にし、2時間放置した。その後、試料を多段希釈した希釈液をMRS平板培地に塗抹し、37℃で24時間培養し、初期生菌数とpH3.0処理後の生菌数を測定した。本発明において、耐酸性は(初期生菌数/pH処理後の生菌数)の割合で示す。
【0068】
胆汁(bile)を0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%で添加して製造したMRS平板培地を用意した。それぞれのMRS平板培地に種菌培養液を接種した後、37℃で24時間培養し、増殖状態を確認した。
【0070】
それぞれの試験の比較群としてラクトバシラス・プランタラム標準菌株(KCTC21004、ATCC14917)を用いた。耐酸性試験及び耐胆汁性試験の結果は以下の[表4]の通りである。
【0072】
ラクトバシラス・プランタラムLLP5193はpH3.0の強酸性条件下で、約2時間処理しても99.6%の生存率を示した。また、0.5重量%の胆汁が添加された時にも生育が可能なことを確認した。
【0073】
したがって、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193は優れた耐酸性及び耐胆汁性を持って腸まで到逹する確率が高いため、食品または健康機能食品として摂取する場合、乳酸菌の多様な効能を効果的に発揮することができる。
【0074】
実施例4−ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の腸管細胞付着能測定
【0075】
以上の実施例3からラクトバシラス・プランタラムLLP5193は耐酸性及び耐胆汁性に優れており腸まで到達する割合が他の乳酸菌に比べて高いことを確認した。
【0076】
しかし、乳酸菌が腸まで到達しても腸管細胞に付着しなければ遺失してしまうため、効果を正常に発揮することができない。したがって、細胞付着能が耐酸性及び耐胆汁性よりもっと重要な特性であると言える。
【0077】
ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の腸管細胞付着能を定量的に測定するとともに、付着形態を顕微鏡で観察した。
【0079】
前記実施例1においてCaco−2細胞を用いた腸管細胞付着能試験と同様の方法でラクトバシラス・プランタラムLLP5193の腸管細胞付着能を測定した。その結果は以下の[表5]の通りである。
【0081】
総6回の試験を繰り返し遂行した。平均値で調べると、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193が約4.5×10
9CFU/ml投与されたとき、付着反応後、約5.1×10
8CFU/mlが付着していた。これから、一般的に微生物の濃度を示すログ値を取って付着率を計算したところ、約90.2%[(8.71log/9.65log)×100]と非常に高かった。
【0082】
一般的なプロバイオティックス乳酸菌製品の摂取基準が1×10
8CFU/ml(8.0log)であることを考慮すれば、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193の腸管細胞付着能が非常に優れることが分かる。
【0084】
Caco−2細胞を用いた付着試験において、付着反応の終了後、培養液を一部採取した。前記培養液をスライドガラスに適量移した後、グラム染色(Gram staining)でラクトバシラス・プランタラムLLP5193を染色した。その結果は
図3の通りである。
【0085】
染色されたラクトバシラス・プランタラムLLP5193がCaco−2細胞の周りに非常に多く付着されたことを確認することができる。
【0086】
ラクトバシラス・プランタラムLLP5193は耐酸性及び耐胆汁性に優れるので、腸まで安定的に到達することができ、優れた細胞付着能を持つので、腸管細胞に多数が付着することができる。したがって、ラクトバシラス・プランタラムLLP5193は乳酸菌としての効果をとてもよく発揮することができる。
【0087】
実施例5−ラクトバシラス・プランタラムLLP5193を有効成分として含む製品の製造
【0088】
(1)発酵乳の製造
ラクトバシラス・プランタラムLLP5193をMS固体(agar)培地に接種した後、37℃で24時間培養して活性化した。活性化したラクトバシラス・プランタラムLLP5193のコロニーを、牛乳100mlに脱脂粉乳を5重量%添加した培地に接種し、カード(curd)が作られるまで37℃で約12時間培養した。種菌培養物1重量%を脱脂粉乳が5重量%添加された牛乳1Lと混合した後、カード(curd)が形成されるまで37℃で約12時間培養して発酵乳を製造した。
【0090】
前記発酵乳に一定濃度の賦形剤を添加して作った凍結乾燥物の生菌数、食感及び摩損率を測定した。
【0091】
前記発酵乳にデキストリン、米粉、タピオカ澱粉を1重量%、3重量%、5重量%で添加した。その混合物を成形のためのモールドに投入し、極低温冷凍機(零下70℃維持)で2時間急速冷凍させた。これを凍結乾燥器(イルシンバイオベース、MCFD Series、大韓民国)に移した後、50mtorr、零下80℃で18時間凍結乾燥して凍結乾燥物を製造した。
【0092】
凍結乾燥物の生菌数を測定した。凍結乾燥物を滅菌食塩水で希釈した後、適度な希釈液を取った。これをMRS固体培地に塗抹し、37℃で48時間培養した後、コロニーを計数した。
【0093】
凍結乾燥物の食感を測定した。任意に5人を選別し、凍結乾燥物を摂取した後、硬さを評価した。
【0094】
凍結乾燥物の摩損率を測定した。凍結乾燥物をローリング機に投入した後、50回転させた。回転前の凍結乾燥物の重量と回転後の重量を測定した。摩損率は(回転前重量−回転後重量)/回転前重量×100で示した。
【0095】
賦形剤を添加した凍結乾燥物の生菌数、食感及び摩損率の結果は以下の表6の通りである。
【0098】
賦形剤を添加することで、無添加の場合に比べて生菌数が高くなることが分かった。ただ、賦形剤の種類による違いは大きくないことが確認された。
【0099】
賦形剤の添加による摩損率及び食感を調べたところ、賦形剤無添加の場合、食感は軟らかかったが、摩損率が66.7%と高く、凍結乾燥した形態を保存することがほぼできなかった。
【0100】
デキストリンと米粉を使用した場合、同一濃度のタピオカ澱粉を使用した場合に比べて食感はほぼ同じ程度であったが摩損率が高かった。一番優れた耐摩損性と食感が見られたものはタピオカ澱粉を3重量%添加した凍結乾燥物であった。
【0101】
したがって、タピオカ澱粉3重量%を添加したとき、耐摩損性が良くて粉末が多く発生せず、食感が良いので、嬰児や幼児のための食品を製造することができるという利点がある。
【0102】
凍結乾燥物にタピオカ澱粉を3重量%添加した実製品を
図4に示した。
【0103】
本発明によるラクトバシラス・プランタラムはキムチから分離した植物性乳酸菌として韓国人の腸内環境に適する。
【0104】
また、本発明によるラクトバシラス・プランタラムは耐酸性及び耐胆汁性に優れており腸内に確実に到逹することができる。
【0105】
また、本発明によるラクトバシラス・プランタラムは腸管細胞付着能に優れており腸内に安定的に定着することができるので、乳酸菌としての効果を十分に発揮することができる。
【0106】
また、本発明によるラクトバシラス・プランタラムから製造した製品は食感及び耐摩損性が良いので、剤形化に有利で、粉末が多く発生せず、食べやすい。
【0107】
以上、本発明について詳細に説明した。ただ、本発明の権利範囲はこれに限定されなく、以下の特許請求の範囲によって決定される。