(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
背表紙部を介して二つ折りに折り畳み可能な一対の筐体と、該一対の筐体の内面間に亘って設けられ、二つ折りに折り畳み可能なディスプレイとを備えた携帯用情報機器であって、
少なくとも一方の前記筐体の内面に、前記背表紙部と該背表紙部の反対側の開放端部側との間となる位置で前記ディスプレイの裏面を支持する支持台を有し、
前記支持台は、一端部が前記筐体の開放端部に対して固定され、他端部が前記開放端部と前記背表紙部との間となる位置で前記筐体の内面に固定されており、
前記支持台は、前記ディスプレイの開放端部側の一部を、前記一対の筐体を二つ折りに折り畳んだ状態と折り畳んだ状態から開いた状態とで同位置に保持するものであり、
前記筐体の前記背表紙部と前記支持台との間となる部分には、前記一対の筐体間を二つ折りに閉じた状態から開いた場合に、前記ディスプレイを前記筐体の内面から上昇する方向に押し上げる押上機構が設けられており、
前記筐体の前記背表紙部と前記支持台との間となる部分には、前記ディスプレイを前記筐体の内面に向かって下降する方向に押し下げる押下弾性部材が設けられていることを特徴とする携帯用情報機器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る携帯用情報機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
1.携帯用情報機器の全体構成の説明
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯用情報機器10の平面図であり、一対の筐体12A,12B間を開いた状態を示している。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器10を閉じた状態での斜視図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10は、一対の筐体12A,12Bと、背表紙部14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態では携帯用情報機器10としてタブレット型PCを例示するが、携帯用情報機器10は携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等であってもよい。
【0019】
各筐体12A,12Bは、それぞれ背表紙部14以外の3辺に側壁を設けた板状部材である。各筐体12A,12Bは、その内面側にディスプレイ16を支持している。筐体12A,12B間は背表紙部14を介して二つ折りに折り畳み可能に連結されている。筐体12A,12Bは、背表紙部14がヒンジ側となり、背表紙部14の反対側が開放端部12Aa,12Baとなる。筐体12A,12Bの内面とディスプレイ16の裏面との間には、演算装置やメモリ等の各種電子部品が収納されている。
【0020】
背表紙部14は、一対の筐体12A,12B間を二つ折りに折り畳む際の折曲部となる。背表紙部14は、ディスプレイ16を内側にして一対の筐体12A,12B間を二つ折りに折り畳んだ場合にディスプレイ16の折曲部分の裏面を覆いつつ支持する。背表紙部14には、その両端側にそれぞれ配置された一対の可動ヒンジ18A,18Bと、一対の可動ヒンジ18A,18B間に亘って延在する可動背板20とが備えられる。
【0021】
ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、筐体12A,12Bを折り畳んだ際に一緒に折り畳み可能な構造であり、例えば柔軟性の高いペーパー構造を持ったフレキシブルディスプレイである。ディスプレイ16は、その両端部が各筐体12A,12Bの開放端部12Aa,12Ba近傍に位置決め固定されており、筐体12A,12Bの開閉動作に伴い開閉する。
【0022】
以下、
図1及び
図2に示すように、携帯用情報機器10について、背表紙部14から開放端部12Aa,12Baに向かう方向をX方向、背表紙部14の長手方向に沿う方向をY方向、筐体12A,12Bの厚み方向をZ方向と呼んで説明する。X方向については、背表紙部14から一方の開放端部12Aaに向かう方向をX1方向、背表紙部14から他方の開放端部12Baに向かう方向をX2方向と呼ぶこともある。Z方向については、
図2に示すように筐体12A,12Bを閉じた場合は2つの筐体12A,12Bが重なる方向、筐体12A,12Bを開いた場合は各筐体12A,12Bの板厚方向を指すものとする。
【0023】
2.背表紙部の説明
背表紙部14について説明する。背表紙部14は、可動ヒンジ18A,18Bと、可動背板20とを備える。
【0024】
図3は、背表紙部14の構成を示す要部拡大斜視図であり、
図4は、
図3に示す背表紙部14の分解斜視図である。
図5〜
図8は、一方の可動ヒンジ18A付近を拡大した斜視動作図であり、それぞれ筐体12A,12B間を180度、135度、90度、0度とした状態を示している。
図9A〜
図9Dは、可動背板20の動作を示す要部拡大側面断面図であり、それぞれ筐体12A,12B間を180度、135度、90度、0度とした状態を示している。
【0025】
2.1 可動ヒンジの構成の説明
先ず、可動ヒンジ18A,18Bの構成を説明する。以下、一方の可動ヒンジ18Aを代表的に説明する。他方の可動ヒンジ18Bは、背表紙部14の長手方向中心を基準として一方の可動ヒンジ18Aと線対称構造である以外は同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0026】
図3及び
図4に示すように、可動ヒンジ18A(18B)は、第1スライド部材22A及び第2スライド部材22Bと、ヒンジ軸部24とを有する。
【0027】
第1スライド部材22Aは、一方の筐体12Aの内面上で背表紙部14から開放端部12Aaに向かうX方向にスライド可能に支持されている。
図5に示すように、第1スライド部材22Aには、そのスライド方向に沿う長孔23が形成され、長孔23には筐体12Aの内面から突出したガイドピン25が摺動可能に挿入されている。ガイドピン25のガイド作用下に、第1スライド部材22AはX方向にスライドする。
【0028】
図5に示すように、第1スライド部材22Aの一端部はヒンジ軸部24に対して回転可能に連結されている。第1スライド部材22Aの他端部には第1弾性部材26Aが取り付けられている。第1弾性部材26Aは例えばコイルばねである。第1弾性部材26Aは、一端部が第1スライド部材22Aに取り付けられ、他端部が筐体12Aの内面から突出した取付ピン27に取り付けられている。第1弾性部材26Aは、第1スライド部材22Aを筐体12Aの内面上で背表紙部14から開放端部12Aaに向かう方向(X1方向)に常時付勢している。
【0029】
第2スライド部材22Bは、他方の筐体12Bの内面上で背表紙部14から開放端部12Baに向かうX方向にスライド可能に支持されている。
図5に示すように、第2スライド部材22Bには、そのスライド方向に沿う長孔23が形成され、長孔23には筐体12Bの内面から突出したガイドピン25が摺動可能に挿入されている。ガイドピン25のガイド作用下に、第2スライド部材22BはX方向にスライドする。
【0030】
図5に示すように、第2スライド部材22Bの一端部はヒンジ軸部24に対して回転可能に連結されている。第2スライド部材22Bの他端部には第2弾性部材26Bが取り付けられている。第2弾性部材26Bは例えばコイルばねである。第2弾性部材26Bは、一端部が第2スライド部材22Bに取り付けられ、他端部が筐体12Bの内面から突出した取付ピン27(
図13参照)に取り付けられている。第2弾性部材26Bは、第2スライド部材22Bを筐体12Bの内面上で背表紙部14から開放端部12Baに向かう方向(X2方向)に常時付勢している。
【0031】
ヒンジ軸部24は、第1スライド部材22Aと第2スライド部材22Bとの間を回動可能に連結する。ヒンジ軸部24は、互いに回動可能に連結された第1回転部材28A及び第2回転部材28Bを有する。
図4に示すように、第1回転部材28Aは、一端部が軸ピン30を介して第2回転部材28Bと回動可能に連結され、他端部が軸ピン31を介して第1スライド部材22Aと回転可能に連結されている。第2回転部材28Bは、一端部が軸ピン30を介して第1回転部材28Aと回動可能に連結され、他端部が軸ピン32を介して第2スライド部材22Bと回転可能に連結されている。ヒンジ軸部24は、中央の軸ピン30を回動軸として第1回転部材28Aと第2回転部材28Bとの間を0度(
図8参照)から180度(
図5参照)まで回動可能に連結している。
【0032】
2.2 可動背板の構成の説明
次に、可動背板20の構成を説明する。
【0033】
図3及び
図4に示すように、可動背板20は、第1背板34Aと、第2背板34Bとを有する。
【0034】
第1背板34A及び第2背板34Bは、互いに係合する凹凸形状を互いの対向面に設けて連結されている。第1背板34A及び第2背板34Bは、係合した凹凸形状の中心をY方向に貫通した長尺な軸バー35によって互いに回動可能に連結されている。軸バー35は、一対の可動ヒンジ18A,18Bのそれぞれのヒンジ軸部24の中央の軸ピン30に対して同軸で回転不能に嵌挿されている。
【0035】
第1背板34Aは、一端部がワッシャ36を介して一方の可動ヒンジ18Aの軸ピン31に対して同軸で回転不能に嵌挿され、他端部がワッシャ36を介して他方の可動ヒンジ18Bの軸ピン31に対して同軸で回転不能に嵌挿される。これにより第1背板34Aは、第1回転部材28Aと一体的に回転可能に固定され、第1スライド部材22Aと回転可能に連結される。
【0036】
第2背板34Bは、一端部がワッシャ36を介して一方の可動ヒンジ18Aの軸ピン32に対して同軸で回転不能に嵌挿され、他端部がワッシャ36を介して他方の可動ヒンジ18Bの軸ピン32に対して同軸で回転不能に嵌挿される。これにより第2背板34Bは、第2回転部材28Bと一体的に回転可能に固定され、第2スライド部材22Bと回転可能に連結される。
【0037】
図4に示すように、第1背板34Aと第2背板34Bの互いに対向する部分には、その長手方向に沿う複数箇所に凹部34Aa,34Baがそれぞれ形成されている。第1背板34Aの各凹部34Aaは、第1背板34Aの板厚を低減した部分に形成されており、この板厚を低減した部分にはカバー部材38Aが配置される。第2背板34Bの各凹部34Baは、第2背板34Bの板厚を低減した部分に形成されており、この板厚を低減した部分にはカバー部材38Bが配置される。カバー部材38A,38Bによって凹部34Aa,34Baが閉塞されることで、凹部34Aa,34Baは各筐体12A,12B間で配線39を配策するための貫通孔を形成する。
【0038】
図3〜
図5に示すように、第1背板34Aの可動ヒンジ18A,18Bにそれぞれ近接した端部には、第2背板34B側と反対側に向かって突出した摺動凸部40Aがそれぞれ形成されている。第2背板34Bの可動ヒンジ18A,18Bにそれぞれ近接した端部には、第1背板34A側と反対側に向かって突出した摺動凸部40Bがそれぞれ形成されている。摺動凸部40A,40Bは、その先端面が円弧状の曲面で形成されている。
【0039】
第1背板34Aの摺動凸部40Aは、一方の筐体12Aの内面に形成された第1傾斜面42Aに摺動可能に配置される。第1傾斜面42Aは、筐体12Aの内面上に形成された略三角形状の突起の第1背板34Aに対向する面である。第1傾斜面42Aは、開放端部12Aa側から背表紙部14側に向かう方向で筐体12Aの内面に向かって傾斜した傾斜面である。第2背板34Bの摺動凸部40Bは、他方の筐体12Bの内面に形成された第2傾斜面42Bに摺動可能に配置される。第2傾斜面42Bは、筐体12Bの内面上に形成された略三角形状の突起の第2背板34Bに対向する面である。第2傾斜面42Bは、開放端部12Ba側から背表紙部14側に向かう方向で筐体12Bの内面に向かって傾斜した傾斜面である。
【0040】
このように各傾斜面42A,42Bは、一対の筐体12A,12B間を二つ折りに折り畳んだ場合に、開放端部12Aa,12Ba側から背表紙部14側に向かう方向で筐体12A,12B間の中心から外側に向かって傾斜した構成である(
図9D参照)。
【0041】
2.3 背表紙部の動作及び作用の説明
次に、背表紙部14を構成する可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20の動作及び作用を説明する。
【0042】
先ず、
図1に示すように筐体12A,12B間を180度に開いた状態では、各可動ヒンジ18A,18Bは、第1スライド部材22Aと第2スライド部材22Bがヒンジ軸部24を中心として平面状に一列に並んだ配置となる(
図5参照)。この状態では、第1スライド部材22Aが第1弾性部材26Aの付勢力によって最も開放端部12Aa側(X1方向)にスライドした位置にある。第2スライド部材22Bは第2弾性部材26Bの付勢力によって最も開放端部12Ba側(X2方向)にスライドした位置にある。その結果、
図9Aに示すように、第1背板34Aの摺動凸部40Aが第1傾斜面42Aの上端位置に配置され、第2背板34Bの摺動凸部40Bが第2傾斜面42Bの上端位置に配置されている。
【0043】
従って、略一枚板状に形成された筐体12A,12Bの内面上で可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20が横臥した配置となる。このため、ディスプレイ16の背表紙部14に対応する部分の裏面が可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20によって確実に且つ安定して支持される。その結果、ディスプレイ16の背表紙部14に対応する部分についてもタッチ操作やペン入力を安定して行うことができる。
【0044】
次に、180度に開いた状態の筐体12A,12Bを0度まで閉じる場合は、筐体12A,12Bを背表紙部14を回動中心として互いに閉じ動作させる。そうすると、互いに閉じ動作する筐体12A,12Bの内面に設けられた第1傾斜面42A及び第2傾斜面42Bも閉じ方向に移動する。第1傾斜面42Aに第1背板34Aの摺動凸部40Aが摺動し、第2傾斜面42Bに第2背板34Bの摺動凸部40Bが摺動する。これにより、第1背板34Aと第2背板34Bが軸ピン30(軸バー35)を回動中心として互いに閉じる方向に回動する。その結果、可動背板20は、第1背板34Aと第2背板34Bとの間が閉じ方向に回動しつつ、開放端部12Aa,12Baから背表紙部14に向かう方向(X1方向及びX2方向と逆方向)に移動する(
図9A〜
図9D参照)。
【0045】
同時に、各可動ヒンジ18A,18Bのヒンジ軸部24についても、第1回転部材28A及び第2回転部材28Bが軸ピン30を回動中心とし、第1背板34A及び第2背板34Bと一体となって閉じ方向に回動する。この際、開放端部12Aa,12Baから背表紙部14に向かう方向に移動する。また第1スライド部材22A及び第2スライド部材22Bは、それぞれ第1弾性部材26A及び第2弾性部材26Bの付勢力に抗して筐体12A,12Bの内面上で開放端部12Aa,12Baから背表紙部14に向かう方向にスライドする(
図5〜
図8参照)。
【0046】
このように筐体12A,12Bを閉じ動作させると、各傾斜面42A,42Bにそれぞれ各背板34A,34Bの摺動凸部40A,40Bが摺動する。その結果、背表紙部14全体(可動背板20及び可動ヒンジ18A,18B)が各弾性部材26A,26Bの付勢力に抗して開放端部12Aa,12Baから離間する方向に移動する。
【0047】
例えば筐体12A,12B間が135度になった状態では、
図6及び
図9Bに示すように背表紙部14が各傾斜面42A,42Bによって開放端部12Aa,12Baから離間する方向に多少移動した位置となる。筐体12A,12B間が90度になった状態では、
図7及び
図9Cに示すように背表紙部14が各傾斜面42A,42Bによって開放端部12Aa,12Baから離間する方向にさらに移動した位置となる。最終的に筐体12A,12B間が0度になった状態では、
図8及び
図9Dに示すように背表紙部14が各傾斜面42A,42Bによって開放端部12Aa,12Baから最も離間する方向に移動した位置となる。なお、
図6〜
図8では、第2弾性部材26Bの図示を省略している。
【0048】
一方、0度に閉じた状態の筐体12A,12Bを180度まで開く場合は、上記した閉じ動作の逆動作が生じる。筐体12A,12Bを開き動作させると、各傾斜面42A,42Bにそれぞれ各背板34A,34Bの摺動凸部40A、40Bが摺動する。これにより、背表紙部14全体(可動背板20及び可動ヒンジ18A,18B)が各弾性部材26A,26Bの付勢力によって開放端部12Aa,12Baに近接する方向に移動する。
【0049】
ところで、本実施形態に係る携帯用情報機器10では、上記した通りディスプレイ16の両端部が各開放端部12Aa,12Ba近傍に固定されている。このため、筐体12A,12Bを開いた状態から閉じ動作させた場合、内側にあるディスプレイ16と外側にある筐体12A,12Bとの間で周長差を生じる。その結果、ディスプレイ16の折曲部分である背表紙部14に対応する部分が背表紙部14からせり出すように突出する変形を生じる。そうすると、ディスプレイ16を円滑に折り曲げることができず、閉じた筐体12A,12Bの内側でディスプレイ16に過度な負荷が生じて意図しない変形をし、破損や不具合を生じる懸念がある。
【0050】
この点、当該携帯用情報機器10の背表紙部14には、筐体12A,12B間を回動可能に連結し、筐体12A,12B間を開いた状態から二つ折りに折り畳んだ場合に筐体12A,12Bの内面上で開放端部12Aa,12Ba側から背表紙部14側に向かって移動する可動ヒンジ18A,18Bと、ディスプレイ16の背表紙部14に対応する部分の裏面を支持し、筐体12A,12Bを開いた状態から二つ折りに折り畳んだ場合に、可動ヒンジ18A,18Bと共に開放端部12Aa,12Ba側から背表紙部14側に向かって移動する可動背板20とを備えている。換言すれば、当該携帯用情報機器10は、筐体12A,12Bの開閉動作に応じて移動する背表紙部14を備える。また当該携帯用情報機器10は、このような可動構造の背表紙部14を備えることで、筐体12A,12B間の開閉角度にかかわらず常に背表紙部14でディスプレイ16の裏面を支持することができる(
図9A〜
図9D参照)。
【0051】
従って、
図9A〜
図9Dに示されるように、筐体12A,12Bを閉じ動作させた場合、背表紙部14がディスプレイ16から離間する方向に移動し、ディスプレイ16の折曲部分のせり出し移動を吸収することができる。その結果、ディスプレイ16を円滑に折り曲げることができ、閉じた筐体12A,12Bの内側でディスプレイ16が歪みのない二つ折り状の折曲形状となるため(
図15参照)、その破損や不具合の発生が防止される。また可動構造の背表紙部14を設けたことで、筐体12A,12Bの開閉時にディスプレイ16の両端部が開放端部12Aa,12Baからせり出して外観品質が低下することを防止できる。
【0052】
すなわち、従来は開閉時のディスプレイ16と筐体12A,12Bとの間で周長差を吸収するために、ディスプレイ16全体を筐体12A,12B内でスライドさせていた。これに対し、当該携帯用情報機器10では、ディスプレイ16を筐体12A,12Bに対して固定しておき、開閉時にはディスプレイ16ではなく背表紙部14をスライドさせることで周長差を吸収している。このため、ディスプレイ16と筐体12A,12Bとの間に摺動に必要な隙間を確保しておく必要がなく、ディスプレイ16を開いた際にディスプレイ16と筐体12A,12Bとの間に異物や水が侵入することを防ぐことができる。
【0053】
なお、各傾斜面42A,42Bに摺動する摺動凸部40A,40Bは、可動背板20ではなく可動ヒンジ18A,18Bに設けても同様な効果が得られる。
【0054】
当該携帯用情報機器10では、可動ヒンジ18A,18Bを構成する第1スライド部材22A及び第2スライド部材22Bを、それぞれ開放端部12Aa,12Baに向かう方向に付勢する第1弾性部材26A及び第2弾性部材26Bを備える。このため、可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20に対して常時弾性部材26A,26Bによる付勢力が作用するため、背表紙部14ががたつきを生じることを防止できる。
【0055】
当該携帯用情報機器10では、第1背板34Aと第2背板34Bとの間の回動軸となる軸バー35と、第1回転部材28Aと第2回転部材28Bとの間の回動軸となる軸ピン30とが同軸配置されている。このため、可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20を一体的に且つ円滑に移動させることができる。
【0056】
3.ディスプレイの押上機構の構成の説明
当該携帯用情報機器10では、筐体12A,12Bを開閉させた際、内側にあるディスプレイ16と外側にある筐体12A,12Bとの間で周長差によってディスプレイ16が筐体12A,12Bの内面上で上下動することになる。ところが、ディスプレイ16は柔軟な構造であるため、特に開いた使用状態で確実に筐体12A,12Bの内面上で上昇した位置となり、一枚の平面を形成することが好ましい。そこで、当該携帯用情報機器10では、筐体12A,12Bを開いた場合にディスプレイ16を押し上げる押上機構50を備えてもよい(
図10参照)。
【0057】
3.1 押上機構の構成の説明
押上機構50の構成を説明する。以下、一方の筐体12A側の押上機構50を代表的に説明する。他方の筐体12B側の押上機構50は、背表紙部14を基準として一方の筐体12A側の押上機構50と線対称構造である以外は同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0058】
図10は、押上機構50の構成を示す斜視図であり、一方の可動ヒンジ18A付近を拡大した図である。
図11Aは、筐体12A,12B間を0度に閉じた状態での押上機構50の状態を模式的に示す側面断面図であり、
図11Bは、筐体12A,12B間を180度に開いた状態での押上機構50の状態を模式的に示す側面断面図である。
【0059】
図10、
図11A及び
図11Bに示すように、押上機構50は、昇降ベース52と、受け部材54と、当接部56とを備える。
【0060】
昇降ベース(ベース板)52は、例えば矩形枠状の金属板である。昇降ベース52は、ディスプレイ16の裏面を支持したフレキシブルシート58の裏面側であって筐体12AのX方向略中央から背表紙部14に亘る位置に設けられている。昇降ベース52は、筐体12Aの内面上で開放端部12Aa側を揺動軸として背表紙部14側を上下に揺動可能な状態で支持されている。フレキシブルシート58は例えばステンレス等の薄板であり、ある程度の弾性を有する板ばね状シートである。昇降ベース52のY方向両側部には、背表紙部14側から開放端部12Aa側に向かって順に、受け部材54と突出片60とが設けられている。
【0061】
昇降ベース52のY方向両側方には、筐体12Aの内面上に取り付けられた押下弾性部材62が設けられている。押下弾性部材62は、X方向に沿う帯板状の板ばねである。押下弾性部材62は、背表紙部14側の端部が自由端とされた片持ち構造で筐体12Aの内面に取り付けられている。押下弾性部材62は突出片60を常時付勢しており、これにより昇降ベース52を常時筐体12Aの内面に向かって押し付ける押下方向に付勢している。
【0062】
受け部材54は、昇降ベース52のY方向両側部から突出するように設けられたブロック状の部材である。受け部材54は、開放端部12Aa側から背表紙部14側に向かう方向で筐体12Aの内面から上昇する方向に傾斜した傾斜面である受け面54aを有する。
【0063】
当接部56は、第1スライド部材22Aの開放端部12Aa側の端部から内方に向かって突出した円柱状のピンである。当接部56は、受け部材54の受け面54aと摺動可能に配置されている。
【0064】
3.2 押上機構の動作及び作用の説明
次に、押上機構50の動作及び作用を説明する。
【0065】
先ず、
図2に示すように筐体12A,12B間を0度に閉じた状態では、背表紙部14を構成する可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20が開放端部12Aa,12Baから最も離間した位置に移動している。このため、各可動ヒンジ18A,18Bでは、第1スライド部材22Aが開放端部12Aa側から最も離間した位置にあり、第2スライド部材22Bが開放端部12Ba側から最も離間した位置にある。
図11Aに示すように第1スライド部材22A(第2スライド部材22B)の当接部56は、受け部材54の受け面54aの最も上端側に位置しており、昇降ベース52は押下弾性部材62の付勢力によって押し下げられた位置にある。このため、昇降ベース52は背表紙部14側が筐体12Aの内面上に下降した押下姿勢にあり、ディスプレイ16も押下姿勢にある。
【0066】
この状態から筐体12A,12B間を開き動作させると、各可動ヒンジ18A,18Bの第1スライド部材22Aは、第1弾性部材26Aの付勢力によって開放端部12Aa側(X1方向)にスライドする。各可動ヒンジ18A,18Bの第2スライド部材22Bは、第2弾性部材26Bの付勢力によって開放端部12Ba側(X2方向)にスライドする。この開き動作時、
図11Bに示すように第1スライド部材22A(第2スライド部材22B)の当接部56は受け部材54の受け面54aを摺動し、押下弾性部材62の付勢力に抗して受け部材54(ディスプレイ16)を次第に押し上げる。
【0067】
図1に示すように筐体12A,12B間を180度に開いた状態では、第1スライド部材22A(第2スライド部材22B)が最も開放端部12Aa(12Ba)側にスライドした位置となる。この状態では、
図11Bに示すように当接部56が受け部材54の受け面54aを通過して受け部材54の下面に位置している。このため、受け部材54が当接部56によって最も上昇した位置に保持され、ディスプレイ16も最も押し上げられた位置に保持される。
【0068】
一方、180度に開いた状態の筐体12A,12Bを0度まで閉じる場合は、上記した閉じ動作の逆動作が生じる。つまり筐体12A,12Bを閉じ動作させると、受け面54aを当接部56が摺動することで、受け部材54が押下弾性部材62の付勢力によって次第に下降し、ディスプレイ16も押し下げられる。
【0069】
このように本実施形態に係る携帯用情報機器10では、一対の筐体12A,12B間を二つ折りに閉じた状態から開いた場合に、背表紙部14の移動と連動し、ディスプレイ16を筐体12A,12Bの内面から上昇する方向に押し上げる押上機構50を備える。従って、一対の筐体12A,12B間を開いた場合に、ディスプレイ16の特に背表紙部14周辺となる部分を筐体12A,12Bの内面上で上昇させることができる。その結果、ディスプレイ16を一枚の平面状に構成し保持することができ、一対の筐体12A,12B間を開いた使用状態でのディスプレイ16の視認性や操作性が向上する。
【0070】
押上機構50は、受け部材54を可動ヒンジ18A,18B側に設け、当接部56を昇降ベース52側に設けた構成でもよい。押上機構50は、可動ヒンジ18A,18Bではなく可動背板20の移動と連動する構成でもよく、可動ヒンジ18A,18B又は可動背板20の少なくとも一方と連動する構成であればよい。
【0071】
3.3 押上機構の変形例の説明
次に、変形例に係る押上機構70を説明する。以下、他方の筐体12B側の押上機構70を代表的に説明する。一方の筐体12A側の押上機構70は、背表紙部14を基準として他方の筐体12B側の押上機構70と線対称構造である以外は同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0072】
図12は、変形例に係る押上機構70の構成を模式的に示す平面図である。
図13は、変形例に係る押上機構70の構成を示す斜視図であり、筐体12Bの可動ヒンジ18A付近を拡大した図である。
図14Aは、筐体12A,12B間を0度に閉じた状態での
図12に示す押上機構70の状態を模式的に示す側面断面図であり、
図14Bは、筐体12A,12B間を180度に開いた状態での
図14Aに示す押上機構70の状態を模式的に示す側面断面図である。
【0073】
図12〜
図14Bに示すように、押上機構70は、昇降ベース52と、押下弾性部材72と、押上板74とを備える。
図13中の参照符号76は第2スライド部材22Bの上面側を保持する蓋部材であり、第1スライド部材22A側にも同様に設けられる。
【0074】
昇降ベース52は、押上機構50で用いた昇降ベース52と同様な構成である。押上機構70に押上機構50を併設しない場合、昇降ベース52は受け部材54及び突出片60を省略した構成でもよい(
図13参照)。
【0075】
押下弾性部材72は、X方向に沿う帯板状の板ばねである。押下弾性部材72は、背表紙部14側の端部が自由端とされた片持ち構造で筐体12Bの内面に取り付けられている。押下弾性部材72は昇降ベース52の背表紙部14側の押さえ部52aを上面側から付勢している。これにより押下弾性部材72は、昇降ベース52(ディスプレイ16)を筐体12Bの内面に向かって押し付ける押下方向に常時付勢している。
【0076】
押上板74は、第2背板34Bの外面から開放端部12Ba側(X2方向)に突出した板状部材であり、第2背板34Bと一体に回動可能且つ移動可能である。押上板74の先端は、昇降ベース52の下面側に当接配置されている。
【0077】
3.4 変形例に係る押上機構の動作及び作用の説明
次に、押上機構70の動作及び作用を説明する。
【0078】
先ず、
図2に示すように筐体12A,12B間を0度に閉じた状態では、第1背板34A及び第2背板34Bが軸バー35を回動中心として互いに屈曲した姿勢となっている。この状態では、
図14Aに示すように第1背板34A及び第2背板34Bの押上板74は、それぞれの先端部が筐体12A及び筐体12Bの内面に最も近接した回動位置にある。このため、昇降ベース52に対して押上板74からの押圧力が付与されず、昇降ベース52は押下弾性部材72の付勢力によって押し下げられた位置にある。その結果、昇降ベース52は背表紙部14側が筐体12Aの内面上に下降した押下姿勢にあり、ディスプレイ16も押下姿勢にある。
【0079】
この状態から筐体12A,12B間を開き動作させると、第1背板34A及び第2背板34Bが軸バー35を回動中心として開き方向に回動する。そうすると、
図14Bに示すように押上板74が昇降ベース52を押圧し、押下弾性部材72の付勢力に抗してディスプレイ16を次第に押し上げる。
【0080】
図1に示すように筐体12A,12B間を180度に開いた状態では、第1背板34A及び第2背板34Bが軸バー35を回動中心として平面状に配置される。この状態では、
図14Bに示すように押上板74が昇降ベース52を筐体12A,12Bの内面と略平行になる最も上昇した位置に保持し、ディスプレイ16が最も押し上げられた位置となる。
【0081】
一方、180度に開いた状態の筐体12A,12Bを0度まで閉じる場合は、上記した閉じ動作の逆動作が生じる。つまり筐体12A,12Bを閉じ動作させると、押上板74が昇降ベース52から離間する方向に回動する。その結果、昇降ベース52が押下弾性部材72の付勢力によって次第に下降し、ディスプレイ16も押し下げられる。
【0082】
押上機構70は、
図10〜
図11Bに示した押上機構50と併設してもよい。なお、押上機構70は、可動背板20の第1背板34A及び第2背板34Bの回動動作によって押上板74を回動させてディスプレイ16を押し上げる構成となっている。このため、押上機構70のみを設ける場合は、回動する2つの背板34A,34Bを用いた構成や回動する2つの回転部材28A,28Bを用いた構成であれば、必ずしもX方向に移動可能な背表紙部14を備える必要はない。押上板74は、各背板34A,34Bではなく各回転部材28A,28Bに設けてもよい。
【0083】
なお、押上機構50,70は、可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20を有する可動構造の背表紙部14と併用せずに単独で用いてもよい。すなわち、押上機構50,70を設けた構造は、ディスプレイ16の両端部が開放端部12Aa,12Ba側に固定されず、開閉時に該開放端部12Aa,12Ba側でスライドすることでディスプレイ16と筐体12A,12Bとの間の周長差を吸収する構成等とした携帯用情報機器10に用いてもよい。
【0084】
4.ディスプレイの支持台の構成の説明
当該携帯用情報機器10では、柔軟なディスプレイ16が筐体12A,12Bの開閉動作に連動して筐体12A,12Bの内面上で上下動する。このため、各筐体12A,12Bの内面側には、ディスプレイ16の昇降スペースが必要となり、バッテリや演算装置等の電子部品の設置スペースが限られる。そこで、当該携帯用情報機器10では、ディスプレイ16の昇降スペースを最小限に抑えることができる支持台80を備えてもよい(
図15参照)。
【0085】
4.1 支持台の構成の説明
支持台80の構成を説明する。
【0086】
図15は、筐体12A,12B間を0度に閉じた状態での支持台80の構成を模式的に示す側面断面図である。
【0087】
図15に示すように、支持台80は、薄い金属板をL字状に屈曲成形した構成である。支持台80は、一端部が筐体12A,12Bの開放端部12Aa,12Baの内端部に対して固定され、他端部が開放端部12Aa,12Baと背表紙部14との間となる位置(略中央位置)で筐体12A,12Bの内面にそれぞれ固定されている。
【0088】
支持台80は、その上面でディスプレイ16の開放端部12Aa,12Ba側略半分の部分の裏面を支持する台座である。支持台80は、背表紙部14と開放端部12Aa,12Baとの間であると共に、各筐体12A,12Bの内面から上方に離間した位置でディスプレイ16の裏面を支持している。つまり、筐体12A,12Bを180度に開いた状態でディスプレイ16は、左右の筐体12A,12Bの支持台80の上面間に亘って平面状に形成される。一方、筐体12A,12Bを0度に閉じた状態でディスプレイ16は、左右の筐体12A,12Bの支持台80の背表紙部14側の端部80aを支点として僅かに筐体12A,12Bの内面側に曲げ変形された状態となる。
【0089】
このように支持台80は、ディスプレイ16の開放端部12Aa,12Ba側の一部(略半分)を、筐体12A,12Bを二つ折りに折り畳んだ状態と折り畳んだ状態から開いた状態とで同位置に保持する。このため、支持台80と各筐体12A,12Bの内面との間には、筐体12A,12Bの開閉動作時のディスプレイ16の上下動とは無関係に維持されるスペース82が形成されている。従って、このスペース82は、バッテリや演算装置等の電子部品の設置スペースとして利用できる。つまり、ある程度厚みのある電子部品であってもスペース82に収容することができ、筐体12A,12Bの薄型化を阻害することもない。
【0090】
ところで、
図15に示すように、押上機構50(70)の昇降ベース52と支持台80との間には、昇降ベース52の昇降動作やディスプレイ16の変形のための隙間84が形成されている。当該携帯用情報機器10では、昇降ベース52の上面と支持台80の上面との間に亘ってフレキシブルシート(シート状部材)58を設けており、このフレキシブルシート58で隙間84が覆われている。このため、隙間84の部分でディスプレイ16が意図しない変形や屈曲を生じることが防止されている。
【0091】
当該携帯用情報機器10では、筐体12A,12Bの背表紙部14と支持台80との間となる部分に押上機構50(70)を設けている。これにより、支持台80によってディスプレイ16の開放端部12Aa,12Ba側を筐体12A,12Bの内面より上方に保持した構造において、さらに支持台80より背表紙部14側の部分のディスプレイ16を押上機構50(70)によって確実に押し上げることができる。このため、筐体12A,12Bを180度に開いた状態でディスプレイ16を全幅に亘ってより確実に平面状に形成することができる。
【0092】
なお、支持台80は、可動ヒンジ18A,18B及び可動背板20を有する可動構造の背表紙部14や押上機構50(70)と併用せずに単独で用いてもよい。すなわち、支持台80を設けた構造は、ディスプレイ16の両端部が開放端部12Aa,12Ba側に固定されず、開閉時に該開放端部12Aa,12Ba側でスライドすることでディスプレイ16と筐体12A,12Bとの間の周長差を吸収する構成等とした携帯用情報機器10に用いてもよい。
【0093】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【解決手段】携帯用情報機器10は、背表紙部14を介して二つ折りに折り畳み可能な一対の筐体12A,12Bと、一対の筐体12A,12Bの内面間に亘って設けられ、二つ折りに折り畳み可能なディスプレイ16とを備える。少なくとも一方の筐体12Aの内面に、背表紙部14と背表紙部14の反対側の開放端部12Aa側との間となる位置でディスプレイ16の裏面を支持する支持台80を設けている。