(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
掘削坑壁と覆工体との間に形成されるテールボイドに対向するようにシールド掘進機のスキンプレートの後端部に配設される面板に、前記テールボイドに先端側開口部を臨ませるように取り付けられる裏込め材注入管と、前記裏込め材注入管の軸方向視で前記スキンプレートの周方向に前記裏込め材注入管と並ぶように配設され、モルタルを供給するモルタル供給管と、前記裏込め材注入管の軸方向視で前記スキンプレートの周方向に前記裏込め材注入管と並ぶように配設され、凝結剤を供給する凝結剤供給管とを備え、前記モルタル供給管からのモルタルと前記凝結剤供給管からの凝結剤とを混合して裏込め材とし、この裏込め材を前記裏込め材注入管の先端側開口部から前記テールボイドへと注入するようにした裏込め材注入装置において、
前記モルタル供給管を複数の分割モルタル供給管を所要の継手によって順次連結してなる構成とするとともに、前記裏込め材注入管の先端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管の基端側に継手を介して先頭の分割モルタル供給管の先端側を着脱可能に接続し、前記スキンプレートの周方向に突出するように前記先頭の分割モルタル供給管の先端部寄りに凝結剤供給ノズルを接続し、この凝結剤供給ノズルの内部にチェック弁を組み込み、このチェック弁を介して前記凝結剤供給管を前記先頭の分割モルタル供給管に接続し、前記凝結剤供給ノズルを、前記先頭の分割モルタル供給管との成す角度が鋭角となるように前記モルタル供給管の基端側に傾倒させて設け、かつ前記チェック弁の先端部を前記先頭の分割モルタル供給管の内周面から所要量内部に突出させたことを特徴とする裏込め材注入装置。
前記裏込め材注入管の基端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管の基端側に洗浄水を供給するための洗浄水供給管を接続し、前記洗浄水供給管からの洗浄水が前記裏込め材注入管を通って前記モルタル供給管へと流れる流路と、前記裏込め材が前記裏込め材注入管を通って前記テールボイドへと流れる流路とを切り換えるためのピストンを往復運動可能に前記裏込め材注入管の内部に組み込み、前記ピストンを往復駆動するために前記裏込め材注入管に連結されるジャッキが、流体圧の作用を受けて推進される複数のピストンを直列に接続して各ピストンの推力を合力した軸力を発生する構成であることを特徴とする請求項1または2に記載の裏込め材注入装置。
【背景技術】
【0002】
テールボイドに裏込め材を注入する裏込め材注入工法は、シールド掘進機の掘進と同時に行われることが重要で、シールド掘進機の掘進に対し遅れが生じると、周辺地盤の緩みを生じさせて、地盤沈下等を招く恐れがある。
【0003】
従来、シールド掘進機の掘進と同時に裏込め材注入工法を行うために、シールド掘進機のテール部のスキンプレートに裏込め材注入装置を付設し、シールド掘進機の掘進と同時に裏込め材注入装置により裏込め材をテールボイドに注入するようにしている。
【0004】
裏込め材注入装置は、テールボイドに臨ませるようにシールド掘進機の後部に配設された面板に取り付けられる裏込め材注入管と、この裏込め材注入管に接続されるモルタル供給管および洗浄水供給管と、モルタル供給管に接続される凝結剤供給管とを備えて構成されている。裏込め材注入装置においては、モルタル供給管を通して供給されるモルタルと、凝結剤供給管を通して供給される凝結剤とを混合して得られるゲル状の裏込め材を、裏込め材注入管を通してテールボイドに注入するとともに、例えば注入作業の区切り時間帯を利用して、洗浄水供給管を通して供給される洗浄水で裏込め材注入管やモルタル供給管の管内を水洗して次の注入作業を円滑に行うようにしている。
【0005】
上記の裏込め材注入装置をシールド掘進機のテール部のスキンプレートに設置する方法としては、例えば、スキンプレート上にカバー部材を付設し、このカバー部材とスキンプレートとの間に裏込め材注入装置を組み込んで設置するという方法や、スキンプレートの一部に切れ込みを形成し、この切れ込みの中に裏込め材注入装置を上下の鉄板で挟み込むように覆って設置するという方法がある。しかし、前者の方法の場合、シールド掘進機の外周側にカバー部材が突出するので、突出量が大きすぎると掘進動作の妨げになり、後者の方法の場合、スキンプレートの強度不足を招く恐れがある。このため、裏込め材注入装置の基本性能を維持しながら裏込め材注入装置そのものの厚みを薄くするという裏込め材注入装置の薄型化への要望が大きい。
なお、裏込め材注入装置の厚みとは、裏込め材注入装置をスキンプレートに設置した際におけるスキンプレートの径方向の厚みのことであり、通常、裏込め材注入装置の厚み寸法と裏込め材注入装置の高さ寸法とは同義で使用される。
【0006】
ところで、上記の裏込め材注入装置では、洗浄水供給管を通して供給される洗浄水で裏込め材注入管等の管内を適時水洗して洗浄するようにされているが、使用が進むに従って、次第に裏込め材の一部が管内壁面に付着凝結し、これがモルタルコレステロールとして成長すると、管路が狭められて閉塞し、裏込め材の注入が阻害されることがある。
【0007】
そこで、裏込め材注入管の先端側開口部寄りにできる限り近い位置にモルタルと凝結剤との混合部を配置するとともに、管閉塞が最も生じ易いモルタル供給管は勿論のこと、凝結剤供給管や洗浄水供給管を分割脱着可能な構成として、メンテナンスを容易に行えるようにしたものが例えば特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3530338号公報
【0009】
特許文献1においては、
図6(a)に示されるような裏込め材注入装置と、
図6(b)に示されるような裏込め材注入装置とが開示されている。
【0010】
図6(a)に示される裏込め材注入装置100においては、裏込め材注入管101の先端側開口部寄りにベンド管102が取り付けられ、このベンド管102の他端にモルタル供給管103が着脱可能に接続されている。そして、ベンド管102とモルタル供給管103との接続部には、凝結剤供給管104がモルタル供給管103の外部から内部に導入され、その凝結剤供給管104の端部にチェック弁105がモルタル供給管103の軸心と合致するように配設されている。
この裏込め材注入装置100では、ベンド管102とモルタル供給管103との接続部から裏込め材注入管101の先端側開口部までの区間が裏込め材の混合部とされている。
【0011】
この裏込め材注入装置100によれば、ベンド管102からモルタル供給管103を取り外せば、モルタル供給管103と共に凝結剤供給管104およびその凝結剤供給管104の端部に装着されたチェック弁105が同時に取り外されるので、モルタル供給管103におけるチェック弁105が配置されている箇所の内周面のモルタルコレステロール付着状態を確認することができる。これにより、混合部でのモルタルコレステロール付着状態を把握することができ、裏込め材注入装置100の全体のメンテナンスを行う時期を容易に判断することができる。
【0012】
しかしながら、上記従来の裏込め材注入装置100では、ベンド管102とモルタル供給管103との接続部に凝結剤供給管104が外部から導入され、その凝結剤供給管104の端部にチェック弁105がモルタル供給管103の軸心と合致するように配設されており、裏込め材注入の基本性能を維持する上で必要なモルタル供給管内流量を確保するために、モルタル供給管103の外径と共にベンド管102とモルタル供給管103との接続部における外径が大きくなり、その結果、裏込め材注入装置100の高さ寸法が大きくなり、前述した裏込め材注入装置の薄型化への要望に応えられないという問題点がある。
【0013】
一方、
図6(b)に示される裏込め材注入装置110においては、凝結剤供給管111がモルタル供給管112の外部から内部に導入されるのではなく、モルタル供給管112とは独立して並行に凝結剤供給管111が配設され、ベンド管113の中間部における適所に凝結剤供給管111がチェック弁114を介して脱着可能に接続されている。
この裏込め材注入装置110では、ベンド管113の中間部から裏込め材注入管115の先端側開口部までの区間が裏込め材の混合部とされている。
【0014】
この裏込め材注入装置110によれば、凝結剤供給管111がモルタル供給管112の外部から内部に導入されるのではなく、モルタル供給管112とは独立して並行に凝結剤供給管111が配設されているので、裏込め材注入装置110の高さ寸法を抑制することができ、前述した裏込め材注入装置の薄型化への要望に応えることができる。
【0015】
しかしながら、上記従来の裏込め材注入装置110では、ベンド管113からチェック弁114と共に凝結剤供給管111を取り外し、取り外したチェック弁114等を点検しても、ベンド管113の中間部内周面のモルタルコレステロール付着状態を確認することができず、混合部でのモルタルコレステロール付着状態を把握することができないため、裏込め材注入装置110の全体のメンテナンスを行う時期を判断することができないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、裏込め材注入の基本性能を維持しながら薄型化を図ることができるとともに、メンテナンスの実施時期を容易に判断することができる裏込め材注入装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するために、本発明による裏込め材注入装置は、
掘削坑壁と覆工体との間に形成されるテールボイドに対向するようにシールド掘進機のスキンプレートの後端部に配設される面板に、前記テールボイドに先端側開口部を臨ませるように取り付けられる裏込め材注入管と、前記裏込め材注入管の軸方向視で前記スキンプレートの周方向に前記裏込め材注入管と並ぶように配設され、モルタルを供給するモルタル供給管と、前記裏込め材注入管の軸方向視で前記スキンプレートの周方向に前記裏込め材注入管と並ぶように配設され、凝結剤を供給する凝結剤供給管とを備え、前記モルタル供給管からのモルタルと前記凝結剤供給管からの凝結剤とを混合して裏込め材とし、この裏込め材を前記裏込め材注入管の先端側開口部から前記テールボイドへと注入するようにした裏込め材注入装置において、
前記モルタル供給管を複数の分割モルタル供給管を所要の継手によって順次連結してなる構成とするとともに、前記裏込め材注入管の先端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管の基端側に
継手を介して先頭の分割モルタル供給管の先端側を着脱可能に接続し、前記スキンプレートの周方向に突出するように前記
先頭の分割モルタル供給管の先端部寄りに凝結剤供給ノズルを接続し、この凝結剤供給ノズルの内部にチェック弁を組み込み、このチェック弁を介して前記凝結剤供給管を前記
先頭の分割モルタル供給管に接続し
、前記凝結剤供給ノズルを、前記先頭の分割モルタル供給管との成す角度が鋭角となるように前記モルタル供給管の基端側に傾倒させて設け、かつ前記チェック弁の先端部を前記先頭の分割モルタル供給管の内周面から所要量内部に突出させたことを特徴とするものである(第1発明)。
【0018】
本発明において、
前記モルタル供給管を構成する複数の分割モルタル供給管のそれぞれは、メンテナンス窓を通して出し入れできる長さ寸法とされるのが好ましい(第2発明)。
【0019】
前記裏込め材注入管の基端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管の基端側に洗浄水を供給するための洗浄水供給管を接続し、前記洗浄水供給管からの洗浄水が前記裏込め材注入管を通って前記モルタル供給管へと流れる流路と、前記裏込め材が前記裏込め材注入管を通って前記テールボイドへと流れる流路とを切り換えるためのピストンを往復運動可能に前記裏込め材注入管の内部に組み込み、前記ピストンを往復駆動するために前記裏込め材注入管に連結されるジャッキが、流体圧の作用を受けて推進される複数のピストンを直列に接続して各ピストンの推力を合力した軸力を発生する構成であるのが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の裏込め材注入装置によれば、裏込め材注入管の先端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管の基端側にモルタル供給管の先端側が着脱可能に接続され、スキンプレートの周方向に突出するようにモルタル供給管の先端部寄りに凝結剤供給ノズルが接続され、この凝結剤供給ノズルの内部にチェック弁が組み込まれ、このチェック弁を介して凝結剤供給管がモルタル供給管に接続されているので、ベンド管からモルタル供給管を取り外せば、モルタル供給管の先端部内周面のモルタルコレステロール付着状態や、凝結剤供給ノズルの先端部内周面のモルタルコレステロール付着状態、チェック弁の周辺のモルタルコレステロール付着状態を確認することができる。これにより、裏込め材注入管の先端側開口部寄りに先端側が接続されたベンド管内面や裏込め材注入管内面でのモルタルコレステロール付着状態を把握することができ、裏込め材注入装置の全体のメンテナンスを行う時期を容易に判断することができる。
また、裏込め材注入装置の高さ寸法が増大しないようにするために、凝結剤供給ノズルがスキンプレートの周方向に突出するようにモルタル供給管に接続され、その凝結剤供給ノズルの内部にチェック弁が組み込まれるので、従来のように裏込め材注入の基本性能を維持する上で必要なモルタル供給管内流量を確保するために、モルタル供給管103の外径と共にベンド管102とモルタル供給管103との接続部における外径が大きくなるようなことがなくなり、裏込め材注入装置の高さ寸法を抑制することができ、裏込め材注入の基本性能を維持しながら裏込め材注入装置の薄型化を図ることができる。
さらに、凝結剤供給ノズルを、モルタル供給管との成す角度が鋭角となるようにモルタル供給管の基端側に傾倒させて設け、かつチェック弁の先端部をモルタル供給管の内周面から所要量内部に突出させるように構成しているので、スキンプレートの周方向における凝結剤供給ノズルの張り出し量
を抑え
ることができ、裏込め材注入装置におけるスキンプレートの周方向の長さ寸法、つまり裏込め材注入装置の幅寸法を抑制することができる
とともに、モルタルの流れの阻害を許容範囲に抑えつつモルタルと凝結剤との撹拌効率を最大限に高めることができる。
【0021】
第2発明の構成を採用することにより、
メンテナンス窓を通して分割モルタル供給管を順次継手を介して連結して組み立てることができ、また順次継手の箇所で分割しながら取り出して分解することができる。
【0022】
第3発明の構成を採用することにより、必要な軸力を確保しつつジャッキの径を細くすることができるので、裏込め材注入の基本性能を維持しながら裏込め材注入装置の薄型化に貢献することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明による裏込め材注入装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
<シールド掘進機によるトンネル施工方法の概略説明>
図示による詳細説明は省略するが、シールド掘進機は、前方の地山を掘削する一方で、後方でセグメント組立装置を用いてセグメントをリング状に組み立てて覆工体を形成し、覆工体と掘削坑壁との空隙部(テールボイド)に裏込め材を裏込め材注入装置1により注入してトンネルを構築する。
【0026】
<裏込め材注入装置の説明>
図1(a)に示される裏込め材注入装置1は、シールド掘進機の外周部に円周方向に沿って所要の配分で複数箇所に配設され、
図2(a)および(b)に示されるように、スキンプレート2とそのスキンプレート2上に付設されるカバー部材3との間に設置されている。
図1(a)、
図2(a)および(b)に示されるように、裏込め材注入装置1は、掘削坑壁と覆工体との間に形成されるテールボイド4に対向するようにシールド掘進機のスキンプレート2の後端部に配設される面板5に、テールボイド4に先端側開口部を臨ませるように取り付けられる裏込め材注入管6と、裏込め材注入管6の軸方向視でスキンプレート2の周方向に裏込め材注入管6と並ぶように裏込め材注入管6の一側方に配設され、モルタル(以下、「A液」と称する。)を供給するモルタル供給管7と、裏込め材注入管6の軸方向視でスキンプレート2の周方向に裏込め材注入管6と並ぶようにモルタル供給管7の一側方に配設され、凝結剤(以下、「B液」と称する。)を供給する例えば耐圧ゴムホースからなる凝結剤供給管8と、裏込め材注入管6の軸方向視でスキンプレート2の周方向に裏込め材注入管6と並ぶように裏込め材注入管6の他側方に配設され、洗浄水を供給する洗浄水供給管9とを備え、モルタル供給管7からのA液と凝結剤供給管からのB液とを混合して裏込め材とし、この裏込め材を裏込め材注入管6の先端側開口部からテールボイド4へと注入するように構成されている。
【0027】
モルタル供給管7は、複数の分割モルタル供給管7aが所要の継手10によって連結されて構成されている。裏込め材注入管6とモルタル供給管7との間には、裏込め材注入管6からモルタル供給管7に向かって順にベンド管11および継手12がそれぞれ配設されている。ベンド管11の先端側は、裏込め材注入管6の先端側開口部寄りに接続され、ベンド管11の基端側には、継手12を介してモルタル供給管7の先端側が着脱可能に接続されている。
【0028】
継手10としては、互いに隣り合う分割モルタル供給管7aの一方の分割モルタル供給管7aの基端側に段付きテーパ孔もしくは段付きストレート孔を形成し、他方の分割モルタル供給管7aの先端側にその段付きテーパ孔もしくは段付きストレート孔に嵌り合う外形の段付き軸部を形成して、両者の嵌め合い部にOリングを介在させてシールする形式のものが採用されている。
なお、互いに隣り合う分割モルタル供給管7aの嵌め合い部の外周(一方の分割モルタル供給管7aの基端部外周)には、裏込め材注入装置5の高さ寸法が増大しないようにするために、スキンプレート2の周方向一方側に向けて突出するようにセットビス用台座13が固着され、このセットビス用台座13にねじ込まれるセットビス14の締め付けによって互いに隣り合う分割モルタル供給管7aの連結状態が保持されるようになっている。
【0029】
また、継手12としては、例えば、ベンド管11の基端部に固着される継手雌部と、モルタル供給管7の先端部に形成される継手雄部とを備え、継手雌部にテーパ孔もしくはストレート孔を形成し、継手雄部をそのテーパ孔もしくはストレート孔に嵌り合う外形にして両者の嵌め合い部にOリングを介在させてシールする形式のものが着脱操作を容易にし、しかも液漏れを防止するのに好ましい。また、必要に応じてねじ継手やカップラーのようないわゆるワンタッチ式の継手を採用することができる。
【0030】
モルタル供給管7は、分解・組立式の管構造であり、モルタル供給管7を構成する複数の分割モルタル供給管7aのそれぞれは、メンテナンス窓15を通して出し入れできる長さ寸法に設定されており、メンテナンス窓15を通して複数の分割モルタル供給管7aを順次に継手10で繋ぎながら先頭の分割モルタル供給管7aを継手12を介して連結することでモルタル供給管7を組み立てることができる。これとは逆に、継手12からモルタル供給管7を取り外した後、複数の分割モルタル供給管7aを順次に継手10の箇所で分割しながらメンテナンス窓15を通して取り出すことでモルタル供給管7を分解することができる。
【0031】
裏込め材注入管6と洗浄水供給管9との間には、ベンド管16が配設されている。ベンド管16の先端側は、裏込め材注入管6の基端側開口部寄りに接続され、ベンド管16の基端側には洗浄水供給管9の先端側が接続されている。
【0032】
<凝結剤供給ノズルの説明>
モルタル供給管7を構成する複数の分割モルタル供給管7aのうち、先頭の分割モルタル供給管7aの先端部寄りの外周面には、スキンプレート2の周方向に突出するように円筒状の凝結剤供給ノズル20が分割モルタル供給管7aの内部に通じるように接続されている。
【0033】
図3に示されるように、凝結剤供給ノズル20は、スキンプレート2の周方向における当該凝結剤供給ノズル20の張り出し量を抑えるために、分割モルタル供給管7aとの成す角度θが鋭角となるように分割モルタル供給管7aの基端側に傾倒させるようにして分割モルタル供給管7aに接続されている。
【0034】
<チェック弁の説明>
凝結剤供給ノズル20には、継手付チェック弁21が装着され、この継手付チェック弁21は、凝結剤供給ノズル20の内部に組み込まれるチェック弁22と、凝結剤供給ノズル20の外部に露出するようにチェック弁22に連設される継手部23とにより構成されている。チェック弁22は、主に、先端側が閉鎖された断面円筒状の弁体24と、この弁体24に被嵌する弾性体(例えばゴム質材、軟質のプラスチック材)のチューブ25とにより構成され、継手部23は、一端側において弁体24の基端部を支持する継手本体部の他端側に雌ねじ型の口金26が一体的に取り付けられて構成されている。
弁体24には、軸心において基端から先端部まで貫通することのない液通路が形成され、この液通路に直交して外周に開口する複数の液出口孔27が先端部適所に形成され、これら液出口孔27がチューブ25によって閉じられている。そして、凝結剤供給管8から弁体24内の液通路および液出口孔27を通じて送り出されるB液の供給圧力によって、被嵌される弾性体のチューブ25が押し拡げられ、その際に生じる弁体24とチューブ25との間隙を通じ弁体24の外周面に沿ってB液が分割モルタル供給管7aの内部に向けて先方に流出する。
【0035】
弁体24の軸線と口金26の軸線とは鈍角(180°−θ)を成すようにされており、これによって口金26の軸線が分割モルタル供給管6aの軸線と平行になり、口金26を介してチェック弁22に接続された凝結剤供給管8がモルタル供給管7と並行に配置される。
継手部23の一端部には、凝結剤供給ノズル20の基端部の内周面と係合可能な所要のOリング28が装着されており、凝結剤供給ノズル20に継手付チェック弁21を装着したときに、継手部23の一端部に装着された所要のOリング28が凝結剤供給ノズル20の基端部の内周面と係合して凝結剤供給ノズル20と継手付チェック弁21との間がシールされるようになっている。
なお、凝結剤供給ノズル20に継手付チェック弁21が装着された状態は所要のセットビス29の締付によって保持される。
【0036】
ここで、分割モルタル供給管7aと凝結剤供給ノズル20との成す角度θ、言い換えれば分割モルタル供給管7aとチェック弁22との成す角度θは、30°〜60°の範囲が好ましく、より好ましくは30°〜45°の範囲で、特に好ましいのは45°である。
また、チェック弁22の先端部は、A液とB液との攪拌効率を向上させるために分割モルタル供給管7aの内周面から内部へと突出されているが、その突出量dが大きすぎると、A液の流れを阻害することになる。そこで、A液の流れの阻害を許容範囲に抑えつつA液とB液との攪拌効率を最大限高めるために、前記突出量dは、分割モルタル供給管7aの内径をDとすると、0.1D〜0.3Dの範囲が好ましく、より好ましくは0.2D〜0.3Dの範囲で、特に好ましいのは0.2Dである。
【0037】
図1(a)に示されるように、裏込め材注入管6の内部には、往復運動可能にピストン30が組み込まれ、このピストン30を往復駆動するために裏込め材注入管6の基端側に同軸をなすようにジャッキ40が連結されている。
【0038】
ピストン30は、裏込め材が裏込め材注入管6を通ってテールボイド4へと流れる流路Q
1(
図1(a)参照)と、洗浄水供給管9からの洗浄水が裏込め材注入管6を通ってモルタル供給管7へと流れる流路Q
2(
図1(b)参照)とを切り換える役目をする。
【0039】
図4に示されるように、ジャッキ40は、主に、第1シリンダ41、第2シリンダ42、第1シリンダキャップ43、第2シリンダキャップ44、隔壁部材45、第1シリンダロッド46、第2シリンダロッド47、第3シリンダロッド48、第1ピストン49および第2ピストン50により構成されている。
【0040】
第1シリンダ41と第2シリンダ42とは同軸上に配され、第1シリンダ41の先端部と第2シリンダ42の基端部とに隔壁部材45が嵌め込まることによって両シリンダ41,42が連結されている。第1シリンダ41の基端部には、第1シリンダキャップ43が嵌め込まれる一方、第2シリンダ42の先端部には第2シリンダキャップ44が嵌め込まれている。第1シリンダ41の内部における第1シリンダキャップ43と隔壁部材45との間には、第1ピストン49が配される一方、第2シリンダ42の内部における第2シリンダキャップ44と隔壁部材45との間には、第2ピストン50が配されている。
【0041】
第1シリンダキャップ43の中心部には、第1シリンダロッド46が挿通され、第1シリンダロッド46の先端部が第1ピストン49の基端部に固定されている。第1シリンダロッド46の基端部には、
図1(a)および(b)に示されるように、後端(開)確認用の近接スイッチ51および前端(閉)確認用の近接スイッチ52と近接可能に位置検出片53が装着されており、裏込め材注入位置(
図1(a)参照)と洗浄位置(
図1(b)参照)とを検出することができるようになっている。
【0042】
図4に示されるように、隔壁部材45の中心部には、第2シリンダロッド47が挿通され、この第2シリンダロッド47によって第1ピストン49と第2ピストン50とが連結されている。
第2シリンダキャップ44の中心部には、第3シリンダロッド48が挿通され、第3シリンダロッド48の基端部が第2ピストン50の先端部に固定され、第3シリンダロッド48の先端部が、裏込め材注入管6内に組み込まれた前記ピストン30の基端部に固定されている。
【0043】
第1ピストン49の基端部には、第1シリンダ41の内部における第1シリンダキャップ43と第1ピストン49との間の第1油室55に開口する第1圧油通路孔56が形成されている。第2ピストン50の基端部には、第2シリンダ42の内部における隔壁部材45と第2ピストン50との間の第3油室57に開口する第2圧油通路孔58が形成されている。第2シリンダロッド47の内部には、第1圧油通路孔56と第2圧油通路孔58とを繋ぐように圧油が流通される圧油流通路59が形成されている。
【0044】
第1シリンダ41の基端部寄りの部位には、第1油室55に繋がる第1ポート61が形成され、この第1ポート61には、第1配管継手62が接合されている。第1シリンダ41の先端部寄りの部位には、第1シリンダ41の内部における第1ピストン49と隔壁部材45との間の第2油室63に繋がる第2ポート64が形成され、この第2ポート64には、第2配管継手65が接合されている。
第2シリンダ42の先端部寄りの部位には、第2シリンダ42の内部における第2ピストン50と第2シリンダキャプ44との間の第4油室66に繋がる第3ポート67が形成され、この第3ポート67には、第3配管継手68が接合されている。
【0045】
第1配管継手62には、押し油圧を作用させるための圧油を供給する第1油圧配管69が接続されている。第2配管継手65には、引き油圧を作用させるための圧油を供給する第2油圧配管70が接続されている。第2配管継手65と第3配管継手68とは、第3油圧配管71が接続されており、第2油圧配管70、第2配管継手65および第2ポート64を介して第2油室63へと供給される圧油の一部を第3油圧配管71、第3配管継手68および第3ポート67を介して第4油室66へと供給することができるようになっている。
【0046】
なお、配管継手62,65,68は、スキンプレート2の周方向他方側に向けてシリンダ41,42から突出するように固着され、しかも、裏込め材注入管6の軸方向視で、
図2(a)に示されるように、第2配管継手65と第3配管継手68とが重なり合うとともに、これら配管継手65,68と第1シリンダ41との間に第1配管継手62が配置されている。これにより、裏込め材注入装置1の高さ寸法hが増大しないようにすることができるとともに、裏込め材注入装置1の幅寸法を抑えることができる。
【0047】
ジャッキ40においては、押し油圧を作用させる圧油が、第1油圧配管69、第1配管継手62および第1ポート61を介して第1油室55に供給されると、この第1油室55に供給された圧油の一部が、第1圧油通路孔56、圧油流通路59および第2圧油通路孔58を介して第3油室57に供給される。これにより、第1ピストン49および第2ピストン50のそれぞれの基端面に押し油圧が作用することになり、各ピストン49,50の推力を合力した押し方向の軸力が発生し、該軸力によって前記ピストン30を押し出すことができる。
また、引き油圧を作用させる圧油が、第2油圧配管70、第2配管継手65および第2ポート64を介して第2油室63に供給されるとともに、第2配管継手65から第3油圧配管71、第3配管継手68および第3ポート67を介して第4油室66に供給されると、第1ピストン49および第2ピストン50のそれぞれの先端面に引き油圧が作用することになり、各ピストン49,50の推力を合力した引き方向の軸力が発生し、該軸力によって前記ピストン30を引き戻すことができる。
【0048】
図1(a)に示されるように、ジャッキ40とモルタル供給管7との間には、これらジャッキ40およびモルタル供給管7に沿って延設されるガイド兼リブ板75がスキンプレート2に固着されている。このガイド兼リブ板75は、スキンプレート2を補強する役目をするとともに、モルタル供給管7を脱着する際のガイドの役目もする。
【0049】
<作用効果の説明>
以上に述べたように構成される裏込め材注入装置1によれば、裏込め材注入管6の先端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管11の基端側にモルタル供給管7の先端側が着脱可能に接続され、スキンプレート2の周方向に突出するようにモルタル供給管7の先端部寄りに凝結剤供給ノズル20が接続され、この凝結剤供給ノズル20の内部にチェック弁22が組み込まれ、このチェック弁22を介して凝結剤供給管8がモルタル供給管7に接続されているので、ベンド管11からモルタル供給管7を取り外せば、分割モルタル供給管7aの先端部内周面等に付着したモルタルコレステロール76(
図3参照)の付着状態を確認することができる。これにより、ベンド管11の内面や裏込め材注入管6の内面でのモルタルコレステロール付着状態を把握することができ、裏込め材注入装置1の全体のメンテナンスを行う時期を容易に判断することができる。
また、裏込め材注入装置1の高さ寸法h(
図2(a)参照)が増大しないようにするために、凝結剤供給ノズル20がスキンプレート2の周方向に突出するように分割モルタル供給管7aに接続され、その凝結剤供給ノズル20の内部にチェック弁22が組み込まれるので、従来のように裏込め材注入の基本性能を維持する上で必要なモルタル供給管内流量を確保するために、モルタル供給管103の外径と共にベンド管102とモルタル供給管103との接続部における外径が大きくなるようなことがなくなり、裏込め材注入装置1の高さ寸法を抑制することができ、裏込め材注入の基本性能を維持しながら裏込め材注入装置1の薄型化を図ることができる。
【0050】
以上、本発明の裏込め材注入装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0051】
上記の実施形態においては、裏込め材注入装置1をスキンプレート2に設置する方法として、スキンプレート2上にカバー部材3を付設し、このカバー部材3とスキンプレート2との間に裏込め材注入装置1を組み込んで設置する例を示したが、これに限定されるものではなく、
図5(a)および(b)に示されるように、スキンプレート2の一部に切れ込みを形成し、この切れ込みの中に裏込め材注入装置1を上下の鉄板80,81で挟み込むように覆って設置する態様もある。
【解決手段】スキンプレート2の周方向に並設される裏込め材注入管6、モルタル供給管7および凝結剤供給管8を備え、モルタル供給管7からのモルタルと凝結剤供給管8からの凝結剤とを混合してなる裏込め材を、裏込め材注入管6を通してテールボイド4へと注入するようにした裏込め材注入装置1において、裏込め材注入管6の先端側開口部寄りに先端側が接続されるベンド管11の基端側にモルタル供給管7の先端側を着脱可能に接続し、スキンプレート2の周方向に突出するようにモルタル供給管7の先端部寄りに凝結剤供給ノズル20を接続し、この凝結剤供給ノズル20の内部に組み込まれるチェック弁22を介して凝結剤供給管8をモルタル供給管7に接続する。