特許第6261699号(P6261699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261699超音波エンコーダとこれを用いた位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6261699
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】超音波エンコーダとこれを用いた位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20180104BHJP
   G01N 29/22 20060101ALI20180104BHJP
   G01N 29/26 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G01N29/265
   G01N29/22
   G01N29/26
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-198913(P2016-198913)
(22)【出願日】2016年10月7日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198318
【氏名又は名称】株式会社IHI検査計測
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 拓
(72)【発明者】
【氏名】引地 達矢
(72)【発明者】
【氏名】大森 征一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝明
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/151676(WO,A1)
【文献】 特開平09−054067(JP,A)
【文献】 特開2014−092363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
G01D 5/48
G01B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いて対象物の位置を検出する超音波エンコーダであって、
前記対象物の移動方向に沿って延びる検出面と、該検出面から所定深さに位置決めされた超音波反射源とを有するガイドレールと、
前記対象物に固定され前記検出面に接触して移動可能な複数の超音波素子と、
複数の前記超音波素子による垂直探傷により前記超音波反射源からの反射エコーをそれぞれ受信し、前記反射エコーの複数のハーフパスから前記対象物の位置を演算する演算装置と、を備え
複数の前記超音波反射源が、前記移動方向に第1間隔を隔てて位置決めされており、
複数の前記超音波素子は、前記移動方向に沿って前記第1間隔を超える第2距離の範囲に配置され、かつ前記第1間隔より1桁以上小さいピッチを互いに隔てている、超音波エンコーダ。
【請求項2】
複数の前記超音波素子を有する超音波アレイ素子を備え、
複数の前記反射エコーの開口合成により前記対象物の位置を演算する、請求項1に記載の超音波エンコーダ。
【請求項3】
前記対象物に固定され、前記超音波アレイ素子を保持し、前記ガイドレールに沿って移動可能な検出ホルダを備える、請求項2に記載の超音波エンコーダ。
【請求項4】
複数の前記超音波反射源は、前記移動方向に直交する平面内において、前記検出面に平行に延びる線状反射源である、請求項1に記載の超音波エンコーダ。
【請求項5】
前記ガイドレールは、前記移動方向に直線状に延びる直線部材である、請求項1に記載の超音波エンコーダ。
【請求項6】
前記ガイドレールは、前記移動方向に円弧状に延びる円弧部材である、請求項1に記載の超音波エンコーダ。
【請求項7】
請求項1に記載の超音波エンコーダを用い、前記対象物の位置を検出する位置検出方法であって、
(A)複数の前記超音波素子を前記ガイドレールの前記検出面に接触させて位置決めし、
(B)複数の前記超音波素子による垂直探傷により前記超音波反射源からの反射エコーをそれぞれ受信し、
(C)前記反射エコーから各超音波素子の複数の前記ハーフパスを検出し、
各超音波素子の超音波入射点を中心とし、前記ハーフパスを半径とする複数の円の交点座標を計算し、
計算された交点座標のうち最も多い前記移動方向の座標を検出して前記対象物の位置を演算する、位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて対象物の位置を検出する超音波エンコーダとこれを用いた位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の位置を検出する装置として、位置検出エンコーダ(リニアエンコーダ及びロータリーエンコーダ)が広く知られている。これらの位置検出エンコーダは、位置の基準となるスケール(目盛)と、スケールから位置情報を検出するヘッド(検出器)とで構成される。またこれらの位置検出エンコーダは、検出に光を用いる光学式と、磁気を用いる磁気式があり、それぞれ絶対位置測定を行うアブソリュート式と、相対位置測定のインクリメント式がある。
【0003】
従来のロータリーエンコーダは、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、超音波を用いた位置検出エンコーダが、特許文献2に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された構成では、ワークを検査する超音波探触子を、歯車列(動力歯車、中間歯車、及び周方向回転歯車)を介して回転させ、回転検出エンコーダで中間歯車の回転を検出して超音波探触子の回転位置を求めるものである。
【0006】
特許文献2に開示された「一次元トランスデューサーアレイ」は、1つの一次元トランスデューサーアレイからの超音波が2以上の平面に集束されるように、2以上の互いに直交するコードのそれぞれに異なる送信遅延を加えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−74712号公報
【特許文献2】特開2013−255806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、フェーズドアレイUT検査(UPA)や高度UT技術には、検査と同時に位置情報を取得し、検査結果と位置情報を1対1に対応させるデータ取得が要望されている。
【0009】
この要望を満たすために、一般的には、上述した光学式又は磁気式の位置検出エンコーダ(以下、「従来の位置検出エンコーダ」)が用いられる。
しかし、従来の位置検出エンコーダは、精密に形成されたパターンを有するスケールと、このパターンを光学的又は磁気的に検出するヘッドとを備え、スケールに沿ってヘッドを正確に移動させる必要がある。
そのため、これらの位置検出エンコーダは、スケールに対してヘッドを正確に移動させるガイド機構を備えた機器として構成されている。
このような位置検出エンコーダを用いて、対象物の位置を検出する場合、スケールを含むガイド機構を固定部分に固定し、対象物の移動をヘッドの移動に変換する位置変換装置を準備する必要がある。
【0010】
このような位置変換装置は、例えば、特許文献1に開示された歯車列、或いはリンク機構、ワイヤと滑車、などで構成される。そのため、対象物の移動をヘッドの移動に正確に変換することは困難であり、バックラッシュ、ガタ、ワイヤの伸びなどに起因する誤差が発生する。
また、このような位置変換装置は、通常大型であり、例えば小口径管の周方向溶接部を超音波により検査するよう場合には、適用が困難、又は実質的に不可能な場合がある。
【0011】
一方、特許文献2に開示された「一次元トランスデューサーアレイ」の場合、一般的に64〜256個のトランスデューサー配列素子を利用して、超音波ビームを電子的にスイッチング又はステアリングしてフォーカシングする。
しかし、この手段では、多数のトランスデューサー配列素子を同時駆動するため駆動負荷が大きく、かつ同時処理するデータが重いため演算負荷が大きく、演算時間が長くなる。また、取得できる範囲が探触子の有効範囲のみで広い範囲はカバーできない。広い範囲の画層取得を行うにはエンコーダ等による対象物の移動量に合わせたデータ取得が必要である。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、位置変換装置による誤差を無くすことができ、演算負荷を低減でき、かつ対象物の位置を高い精度で検出できる超音波エンコーダとこれを用いた位置検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、超音波を用いて対象物の位置を検出する超音波エンコーダであって、
前記対象物の移動方向に沿って延びる検出面と、該検出面から所定深さに位置決めされた超音波反射源とを有するガイドレールと、
前記対象物に固定され前記検出面に接触して移動可能な複数の超音波素子と、
複数の前記超音波素子による垂直探傷により前記超音波反射源からの反射エコーをそれぞれ受信し、前記反射エコーの複数のハーフパスから前記対象物の位置を演算する演算装置と、を備え
複数の前記超音波反射源が、前記移動方向に第1間隔を隔てて位置決めされており、
複数の前記超音波素子は、前記移動方向に沿って前記第1間隔を超える第2距離の範囲に配置され、かつ前記第1間隔より1桁以上小さいピッチを互いに隔てている、超音波エンコーダが提供される。
【0014】
複数の前記超音波素子を有する超音波アレイ素子を備え、
複数の前記反射エコーの開口合成により前記対象物の位置を演算する。
【0015】
前記対象物に固定され、前記超音波アレイ素子を保持し、前記ガイドレールに沿って移動可能な検出ホルダを備える。
【0017】
複数の前記超音波反射源は、前記移動方向に直交する平面内において、前記検出面に平行に延びる線状反射源である。
【0018】
前記ガイドレールは、前記移動方向に直線状に延びる直線部材である。
【0019】
前記ガイドレールは、前記移動方向に円弧状に延びる円弧部材である。
【0020】
また本発明によれば、上述した超音波エンコーダを用い、前記対象物の位置を検出する位置検出方法であって、
(A)複数の前記超音波素子を前記ガイドレールの前記検出面に接触させて位置決めし、
(B)複数の前記超音波素子による垂直探傷により前記超音波反射源からの反射エコーをそれぞれ受信し、
(C)前記反射エコーから各超音波素子の複数の前記ハーフパスを検出し、
各超音波素子の超音波入射点を中心とし、前記ハーフパスを半径とする複数の円の交点座標を計算し、
計算された交点座標のうち最も多い前記移動方向の座標を検出して前記対象物の位置を演算する、位置検出方法が提供される。
【0021】
複数の前記超音波素子を有する超音波アレイ素子を準備し、
前記(C)において、複数の前記反射エコーの開口合成により前記対象物の位置を演算する。
【0022】
前記(C)において、
前記反射エコーから各超音波素子の複数の前記ハーフパスを検出し、
各超音波素子の超音波入射点を中心とし、前記ハーフパスを半径とする複数の円の交点座標を計算し、
計算された交点座標のうち最も多い前記移動方向の座標を検出する。
【発明の効果】
【0023】
上記本発明によれば、ガイドレールが対象物の移動方向に沿って延びる検出面と、検出面から所定深さに位置決めされた超音波反射源とを有する。また、複数の超音波素子が対象物に固定され、検出面に接触して移動可能に構成されている。
従って、複数の超音波素子が対象物に固定されているので、対象物の移動を複数の超音波素子の移動に変換する位置変換装置(例えば歯車列)が不要であり、この位置変換装置による誤差を無くすことができる。
【0024】
また、本発明によれば、複数の超音波素子による垂直探傷により超音波反射源からの反射エコーをそれぞれ受信し、反射エコーの複数のハーフパスから対象物の位置を演算する演算装置を備える。
従って、演算装置は、複数の超音波素子を順に駆動して反射エコーをそれぞれ受信するので、演算負荷を低減して演算時間を短縮することができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、複数の反射エコーの開口合成を適用できるので、超音波を用いて対象物の位置を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による第1実施形態の超音波エンコーダの全体構成図である。
図2図1の主要部を示す図である。
図3】本発明の原理図であり、図2の部分拡大図である。
図4】反射エコーの一例を示す図である。
図5】エレメント位置とハーフパスとの関係を示す図である。
図6】開口合成の説明図である。
図7】本発明による第2実施形態の超音波エンコーダの全体構成図である。
図8】本発明による位置検出方法の全体フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0028】
図1は、本発明による第1実施形態の超音波エンコーダ10の全体構成図であり、(A)は側面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
本発明の超音波エンコーダ10は、超音波を用いて対象物Wの位置を検出する位置検出エンコーダである。
【0029】
図1において、本発明の超音波エンコーダ10は、ガイドレール12、複数の超音波素子14、及び演算装置16を備える。
【0030】
ガイドレール12は、対象物Wの移動方向Aに沿って延びる検出面12aと、検出面12aから所定深さに位置決めされた超音波反射源13とを有する。
【0031】
対象物Wは、例えばワーク(図示せず)の溶接部を超音波検査するための超音波装置である。なお、対象物Wは、超音波装置に限定されず、その他の検査機器であってもよい。
【0032】
図1において、ガイドレール12は、対象物Wの移動方向Aに直線状に延びる直線部材である。なお、ガイドレール12は直線部材に限定されず、移動方向Aに円弧状に延びる円弧部材であってもよい。
【0033】
図1において、ガイドレール12の断面形状は、矩形であり、図1(A)で上下に検出面12aと底面12bを有する。検出面12aと底面12bは、この例では互いに平行に構成されている。
以下、対象物Wの移動方向AをX軸、図1(A)においてX軸に直交する厚さ方向をY軸とする。
【0034】
この例において、複数の超音波反射源13は、対象物Wの移動方向Aに第1間隔L1を隔てて位置決めされている。
また、本発明の超音波反射源13は複数に限定されず、単一であってもよい。
【0035】
超音波反射源13は、この例では円形貫通孔であるが、本発明はこれに限定されず、超音波を反射できる限りで、他の形態、例えば異なる素材であってもよい。また、超音波反射源13の直径は、例えば2〜3mmであるが、超音波を反射できる限りで、2mm以下であってもよい。
【0036】
この例において、複数の超音波反射源13は、移動方向Aに直交する平面内において、検出面12aに平行に延びる線状反射源である。また超音波反射源13は、検出面12aと底面12bの中間に設けられている。
ガイドレール12は、予め設定された移動方向Aの原点Oを有し、各超音波反射源13の原点Oからの位置(X座標)は、予め正確に設定されている。
【0037】
複数の超音波素子14は、対象物Wに固定され検出面12aに接触して移動可能に構成されている。超音波素子14は、少なくとも2以上であればよい。
【0038】
この例において、複数の超音波素子14を有する超音波アレイ素子15を備える。
超音波アレイ素子15は、対象物Wに固定されガイドレール12の検出面12aに接触して移動可能に構成されている。
【0039】
この例において、本発明の超音波エンコーダ10は、さらに検出ホルダ18を備える。検出ホルダ18は、対象物Wに固定され、かつ超音波アレイ素子15を保持し、ガイドレール12に沿って移動方向Aに移動可能に構成されている。
【0040】
この例において、検出ホルダ18は、ガイドレール12の外面と嵌合する案内面18aを有し、ガイドレール12の外面に沿って対象物W及び超音波アレイ素子15を案内する。
また、検出ホルダ18は、予め設定された移動方向Aの基準位置Gを有し、この基準位置Gに対し、対象物W及び超音波アレイ素子15が予め正確に位置決めされている。
【0041】
演算装置16は、例えばコンピュータ(PC)であり、複数の超音波素子14による垂直探傷により超音波反射源13からの反射エコーをそれぞれ受信し、反射エコーの複数のハーフパスZから対象物Wの位置を演算する。
【0042】
図2は、図1の主要部を示す図である。
この図において、複数の超音波素子14(以下、エレメント14と呼ぶ)は、移動方向Aに沿って第1間隔L1を超える第2距離L2の範囲に配置され、かつ第1間隔L1より1桁以上小さいピッチPを互いに隔てている。
この構成により、第2距離L2>第1間隔L1であることから、複数のエレメント14のうち、少なくとも1つのエレメント14が、超音波反射源13の1つに最も近く位置する。
【0043】
図3は、本発明の原理図であり、図2の部分拡大図である。
この図において、ガイドレール12の厚さT(例えば10mm)と超音波反射源13の検出面12aからの距離y1(例えば6mm)は既知である。
以下、説明の都合上、この図で7つのエレメント14を、左から順にa,b,c,d,e,f,gとする。
【0044】
演算装置16は、超音波アレイ素子15を構成する複数のエレメント14による垂直探傷により超音波反射源13からの反射エコーをそれぞれ受信する。
垂直探傷とは、検出面12aに対して垂直に超音波を入射して探傷を行う方法である。垂直探傷により、ガイドレール12の検出面12aから入射した超音波は、厚さ方向に拡がりながら伝播し、超音波反射源13及びガイドレール12の底面12bで反射して、反射エコーとして同じエレメント14により検出される。
【0045】
図4は、反射エコーの一例を示す図である。この図において、横軸はハーフパスZ、縦軸は反射エコーの強度である。
「ハーフパス」とは、超音波の入射から反射エコーを取得するまでの取得時間を音速で計算した伝播距離を表す。すなわち、ハーフパスZは、超音波の入射点から超音波の反射点までの往復時間(取得時間)から反射を考慮して入射点から反射点までの距離を求めたものである。
この場合、反射点は、超音波反射源13及びガイドレール12の底面12bである。
【0046】
図4において、ガイドレール12の厚さTと超音波反射源13の検出面12aからの深さy1が既知であることから、超音波反射源13からの反射エコーは、ハーフパスZが超音波反射源13の深さ近傍にあることがわかる。この例で、ハーフパスZは、例えば5〜7mmの範囲にあるといえる。
従って、この範囲において、反射エコーの強度が最大となる位置(矢印Bで示す)のハーフパスZが、エレメント14と超音波反射源13との距離に相当する。
【0047】
図3にエレメントa,b,cで検出された超音波反射源13のハーフパスZをそれぞれ破線の両矢印a’,b’,c’で示す。
この図では、エレメントbが左側の超音波反射源13に最も近接しており、その次にエレメントa,cが近くに位置する。
複数のエレメント14(この例ではエレメントa,b,c)による垂直探傷により、エレメントa,b,cから超音波反射源13までのハーフパスa’,b’,c’(すなわち距離)をそれぞれ算出することができる。
【0048】
従って、検出ホルダ18に保持された超音波アレイ素子15を、ガイドレール12に設けられた原点OからX方向に移動させて、複数の超音波反射源13を順に検出することにより、超音波アレイ素子15がどの超音波反射源13を現在検出しているのかがわかる。
【0049】
また、現在検出している超音波反射源13に対して、どのエレメント14が最も近接しているかをハーフパスZの大きさから検出することができる。従って、本発明の演算装置16により、第1間隔L1より1桁以上小さい精度(ピッチP)で、超音波アレイ素子15の位置(すなわち対象物W)を検出することができる。
【0050】
エレメント14が2つである場合、それぞれのハーフパスZ1,Z2を半径とする2つの円は、数1の式(1)(2)で表すことができる。ここで、2つのエレメント14の位置を(x1,y1),(x2,y2)とする。また、X,Yは2つの円上の点である。
2つの円の中心と2つのエレメント14のY座標は同じであり、これを0(基準)とすると、2つの円の交点のX座標は、式(3)で表すことができる。
従って、2つのエレメント14のX座標と、ハーフパスZ1,Z2から、式(3)により、エレメント14に対する超音波反射源13のX座標を求めることができる。
【0051】
【数1】
【0052】
なお、式(1)〜(3)は、ガイドレール12の検出面12aが平面の場合であるが、その他の場合も、円の交点として、エレメント14に対する超音波反射源13のX座標を求めることができる。
【0053】
図5は、エレメント位置とハーフパスZとの関係を示す図である。この図において、横軸は超音波アレイ素子15を構成するエレメント14の位置であり、縦軸はハーフパスZである。また、図中の白丸(○)は、各エレメント14のハーフパスZを示している。
【0054】
この例において、超音波アレイ素子15は、32個のエレメント14を有し、各エレメント14は、移動方向Aに沿って第1間隔L1を超える第2距離L2(=12.4mm)の範囲に配置されている。また各エレメント14は、第1間隔L1より1桁以上小さいピッチP(=0.4mm)を互いに隔てている。
また、この例では、移動方向Aにおいて、超音波反射源13の1つとエレメント位置6mmのエレメント14が一致している。
【0055】
図6は、開口合成の説明図である。上述したように、図5に示すハーフパスZは、各エレメントから超音波反射源13までの距離に相当する。
【0056】
本発明の演算装置16は、受信した複数の反射エコーの開口合成によりガイドレール12に対する超音波アレイ素子15(すなわち対象物W)の位置を演算する。
すなわち、図6に示すように、各エレメント14のハーフパスZを半径とする複数の円の交点座標を計算し、計算された交点座標のうち最も多い移動方向Aの座標(図中に白丸(○)で示す)を検出することで、超音波アレイ素子15の位置を演算することができる。
【0057】
図7は、本発明による第2実施形態の超音波エンコーダ10の全体構成図である。
この例において、ガイドレール12は、中空円筒形であり、中空管1の外周面1aに同軸かつ着脱可能に固定されている。すなわちガイドレール12は、移動方向A(中空管1の周方向)に円弧状に延びる円弧部材である。
複数の超音波反射源13は、移動方向Aに直交する平面内(半径方向の平面内)において、検出面12aに平行に延びる線状反射源である。
【0058】
この例において、対象物Wは、フェーズドアレイ探触子であり、検出ホルダ18に固定され、中空管1の表面近傍に存在する溶接部を超音波探傷検査するようになっている。
また、超音波アレイ素子15は、検出ホルダ18を介して対象物W(フェーズドアレイ探触子)に固定され、ガイドレール12の検出面12aに接触して移動可能に構成されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0059】
この例において、超音波アレイ素子15と対象物W(フェーズドアレイ探触子)は、同一のフェーズドアレイ探触子を分岐させたものである。また、超音波アレイ素子15の制御ケーブル19aと、対象物Wの制御ケーブル19bとは、単一の制御ケーブル19を途中から分岐させたものである。
【0060】
この構成により、単一の制御ケーブル19を同一の演算装置16に接続して、フェーズドアレイ探触子により、中空管1の表面近傍に存在する溶接部を超音波探傷検査すると同時に、その検査箇所(この例では周方向位置)を、本発明の超音波エンコーダ10により検出することができる。
従って、フェーズドアレイ探触子による検査と同時に超音波エンコーダ10により位置情報を取得し、検査結果と位置情報を1対1に対応させることができる。
【0061】
図8は、本発明による位置検出方法の全体フロー図である。
この図において、本発明の位置検出方法は、S1〜S3の各ステップ(工程)からなる。
ステップS1において、複数の超音波素子14(エレメント14)をガイドレール12の検出面12aに接触させて位置決めする。
ステップS2において、複数のエレメント14による垂直探傷により超音波反射源13からの反射エコーをそれぞれ受信する。
ステップS3において、複数の反射エコーの複数のハーフパスZから対象物Wの位置を演算する。
【0062】
ステップS3では、複数のエレメント14を有する超音波アレイ素子15を準備し、複数の反射エコーの開口合成により対象物Wの位置を演算する、ことが好ましい。
【0063】
すなわち、図8において、ステップS3は、T1〜T3の各ステップ(工程)からなる。
ステップT1において、反射エコーから各エレメント14の複数のハーフパスZを検出する。
ステップT2において、各エレメント14の超音波入射点を中心とし、ハーフパスZを半径とする複数の円の交点座標を計算する。
ステップT3において、計算された交点座標のうち最も多い移動方向Aの座標を検出する。
【0064】
上述した本発明によれば、ガイドレール12が対象物Wの移動方向Aに沿って延びる検出面12aと、検出面12aから所定深さに位置決めされた超音波反射源13とを有する。また、複数の超音波素子14が対象物Wに固定され、検出面12aに接触して移動可能に構成されている。
従って、複数の超音波素子14が対象物Wに固定されているので、対象物Wの移動を複数の超音波素子14の移動に変換する位置変換装置(例えば歯車列)が不要であり、この位置変換装置による誤差を無くすことができる。
【0065】
また、本発明によれば、複数の超音波素子14による垂直探傷により超音波反射源13からの反射エコーをそれぞれ受信し、反射エコーの複数のハーフパスZから対象物Wの位置を演算する演算装置16を備える。
従って、演算装置16は、複数の超音波素子14を順に駆動して反射エコーをそれぞれ受信するので、演算負荷を低減して演算時間を短縮することができる。
【0066】
さらに、本発明によれば、複数の反射エコーの開口合成を適用できるので、超音波を用いて対象物Wの位置を高い精度で検出することができる。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
A 移動方向、L1 第1間隔、L2 第2距離、O 原点、P ピッチ、
W 対象物、y1 深さ、Z,Z1,Z2 ハーフパス、
10 超音波エンコーダ、12 ガイドレール、12a 検出面、
12b 底面、13 超音波反射源(線状反射源)、
14 超音波素子(エレメント)、15 超音波アレイ素子、
16 演算装置(コンピュータ)、18 検出ホルダ、18a 案内面、
19,19a,19b 制御ケーブル
【要約】      (修正有)
【課題】位置変換装置による誤差を無くすことができ、演算負荷を低減でき、かつ対象物の位置を高い精度で検出できる超音波エンコーダとこれを用いた位置検出方法を提供する。
【解決手段】ガイドレール12、複数の超音波素子14、及び演算装置16を備える。ガイドレール12は、対象物Wの移動方向Aに沿って延びる検出面12aと、検出面12aから所定深さに位置決めされた超音波反射源13とを有する。複数の超音波素子14は、対象物Wに固定され検出面12aに接触して移動可能に構成されている。演算装置16は、複数の超音波素子14による垂直探傷により超音波反射源13からの反射エコーをそれぞれ受信し、反射エコーの複数のハーフパスZから対象物Wの位置を演算する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8