(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261715
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置
(51)【国際特許分類】
F15B 7/00 20060101AFI20180104BHJP
F15B 15/00 20060101ALI20180104BHJP
F15B 15/10 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
F15B7/00 Z
F15B7/00 A
F15B15/00 A
F15B15/10 G
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-503577(P2016-503577)
(86)(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公表番号】特表2016-516950(P2016-516950A)
(43)【公表日】2016年6月9日
(86)【国際出願番号】EP2014050729
(87)【国際公開番号】WO2014146804
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年11月25日
(31)【優先権主張番号】102013205044.5
(32)【優先日】2013年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク バッハマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリト エーベルスベアガー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート フライターク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゲデッケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ツェルス
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−525897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 7/00− 7/10
F15B 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ユニット(3)と被駆動ユニット(19)とを備えたアクチュエータ装置(1)であって、前記被駆動ユニット(19)が、第1の被駆動装置(7)を備えた第1の並進ユニット(15)と、管路システム(27)を介して前記第1の並進ユニット(15)に流体接続された、第2の被駆動装置(8)を備えた第2の並進ユニット(16)とを有し、前記駆動ユニット(3)が、前記管路システム(27)に流体接続されており、前記駆動ユニット(3)を用いて、流体が、前記第1の並進ユニット(15)と前記第2の並進ユニット(16)との間で、前記第1、第2の被駆動装置(7,8)を変位させるために交換可能であり、前記第1の並進ユニット(15)と前記第2の並進ユニット(16)とが、それぞれ1つのプリロードエレメント(12,25)を有する、アクチュエータ装置(1)において、
前記両プリロードエレメント(12,25)が、可動に支持された緊締部(4)に、互いに逆向きに支持されていることを特徴とする、アクチュエータ装置(1)。
【請求項2】
前記第1の並進エレメント(14)と前記第2の並進エレメント(24)とが、同一寸法に設定された液圧的な横断面を有する、請求項1記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項3】
前記第1のプリロードエレメント(12)と前記第2のプリロードエレメント(25)とが、同一のばね率を有する、請求項2記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項4】
前記第1のプリロードエレメント(12)と前記第2のプリロードエレメント(25)とが、同一のプリロード力を有する、請求項3記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項5】
前記第1の並進エレメント(14)および/または前記第2の並進エレメント(24)が、液圧シリンダ(14,24)である、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項6】
前記第1の並進エレメント(14)および/または前記第2の並進エレメント(24)が、ベローズ(14,24)である、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項7】
前記ベローズ(14,24)が、金属ベローズ(14,24)またはダイヤフラムベローズ(14,24)であって、前記ベローズ(14,24)が、同一のばね率を有する、請求項6記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項8】
前記流体チャンバ(9,11,17)と前記流体管路(18,21,22)とが、圧媒液で完全に満たされている、請求項1から7までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ装置に関する。
【0002】
アクチュエータ装置は公知である。アクチュエータ装置は通常、要求された変位を所定の範囲内で実現するという役目を有する。このためには、アクチュエータ装置は往動をも復動をも可能にしなければならない。両方向への運動を保証するためには、アクチュエータ装置内に含まれている圧媒液がプリロード(予荷重)をかけられていなければならない。このプリロードは、公知のアクチュエータ装置においては、変位量と共に変化する。このことは、最大可能な変位量を制限する圧力差および、一定ではない力発揮を生ぜしめる。
【0003】
本発明の根底を成す課題は、これらの不都合を解消し、改善されたアクチュエータ装置を提供することである。
【0004】
この課題は、請求項1に記載のアクチュエータ装置によって解決される。本発明の別の有利な実施態様は、従属形式の各請求項に記載されていて、かつ明細書中で説明されている。
【0005】
本発明によるアクチュエータ装置は、駆動ユニットと被駆動ユニットとを有している。被駆動ユニットは、第1の被駆動装置を備えた第1の並進ユニットと、管路システムを介して第1の並進ユニットに流体接続された、第2の被駆動装置を備えた第2の並進ユニットとを含む。駆動ユニットは、前記管路システムに流体接続されている。被駆動装置を変位させるためには、流体が、駆動ユニットを用いて、第1の並進ユニットと第2の並進ユニットとの間で交換可能である。第1の並進ユニットと第2の並進ユニットとは、それぞれ1つのプリロードエレメントを有している。本発明によれば、これらのプリロードエレメントは、可動に支持された緊締部に、互いに逆向きに支持されている。
【0006】
緊締部を可動に支持することによって、この構成部分は、両被駆動装置と一緒に動かされる。これによって、有利には、両プリロードエレメントの間に差力が生じなくなる。したがって、流体チャンバ内の圧力は、ストロークとは無関係に一定に維持される。一方では、これによって、アクチュエータ装置の力は、変位量とは関係なく一定に維持され得る。なぜならば、流体の圧力差が変わらないからである。他方では、これによって最大のストロークも著しく増大され得る。
【0007】
本発明によるアクチュエータ装置の有利な実施態様では、第1の並進エレメントと第2の並進エレメントとが、同一寸法に設定された液圧的な横断面を有する。
【0008】
これによって、両被駆動装置の変位は、同一のストローク量を有する。したがって、緊締部は両被駆動装置の変位に対して均等に運動する。
【0009】
本発明によるアクチュエータ装置の別の有利な実施態様では、第1のプリロードエレメントと第2のプリロードエレメントとが、同一のプリロード力を有する。さらに、第1のプリロードエレメントと第2のプリロードエレメントとは、好ましくは同一のばね定数を有する。
【0010】
これによって、両方向で同じ特性を有する対称的なシステムが達成される。これによって、アッセンブリ内でのアクチュエータの使用が簡素化される。
【0011】
本発明によるアクチュエータ装置のさらに別の有利な実施態様では、第1の並進エレメントおよび/または第2の並進エレメントが液圧シリンダである。
【0012】
液圧シリンダは、有利には極めて小さな長手方向剛性を有し、したがってプリロードエレメントのばね率に影響を与えない。さらに、液圧シリンダは長い変位量に合わせて設計され得る。
【0013】
本発明によるアクチュエータ装置の択一的な別の有利な実施態様では、第1の並進エレメントおよび/または第2の並進エレメントがベローズである。ベローズは、この場合、有利には金属ベローズまたはダイヤフラムベローズであり、この場合、ベローズは同一のばね率を有する。
【0014】
ベローズ、特に金属ベローズによって、高いシステムシール性をより簡単に達成することができる。さらに、ベローズは比較的小さな重量を有する。
【0015】
本発明によるアクチュエータ装置のさらに別の有利な実施態様では、流体チャンバと流体管路とが圧媒液で完全に満たされている。
【0016】
これによって、流体は実質的に非圧縮性であり、システム内の種々異なる高さの圧力におけるアクチュエータ装置の均一な作動様式が保証されている。
【0017】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】アクチュエータ装置の並進ユニットの第1の実施形態を示す概略図である。
【
図3】アクチュエータ装置の並進ユニットの別の実施形態を示す概略図である。
【
図4】アクチュエータ装置の並進ユニットのさらに別の実施形態を示す概略図である。
【0019】
図1には、座標系13における本発明によるアクチュエータ装置1が例示的に示されている。図示したアクチュエータ装置1は、駆動ユニット3と、この駆動ユニット3に、第1の流体管路18を用いて流体を案内するように接続された被駆動ユニット19とを含む。
【0020】
駆動ユニット3は、アクチュエータ2と駆動エレメント20とを含む。駆動エレメント20は、駆動流体チャンバ17を有する。
【0021】
アクチュエータ2は、たとえばピエゾアクチュエータ2または磁気抵抗型のアクチュエータ2であってよい。駆動ユニット3は、アクチュエータ2の変位によって、駆動流体チャンバ17の容積の大きさに影響が与えられ得るように形成されている。
【0022】
このためには、アクチュエータ2が、少なくとも押圧方向で駆動エレメント20に摩擦結合式に結合されている。アクチュエータ2は、駆動エレメント20に形状結合式に、つまり係合に基づいた嵌合により、結合されていてもよい。アクチュエータは、押圧方向とは逆向きに、引張方向で駆動エレメント20に摩擦結合式に結合されていてもよい。押圧方向とは、この場合、アクチュエータ2の変位の方向である。
【0023】
図1に示した形式では、アクチュエータ2の変位量を増大させることによって、駆動エレメント20に押圧力が加えられている。アクチュエータ2の変位量を増大させることによって、駆動流体チャンバ17の容積は減少させられている。アクチュエータ2の変位量を減少させることによって、駆動流体チャンバ17の容積は少なくとも増大可能である。アクチュエータ2が、駆動エレメント20に引張方向で摩擦結合式に結合されている場合には、アクチュエータ2の変位量を減少させることによって、駆動流体チャンバ17の容積は増大させられている。駆動エレメント20において向きを変えることにより、アクチュエータ2の変位量と、駆動流体チャンバ17の容積との間の関係を、基本的に逆転させることもできる。
【0024】
駆動エレメント20はたとえば、ピストンを備えた液圧シリンダ、ベローズ、特に金属ベローズまたはダイヤフラムベローズであってもよい。
図1には、例示的に液圧シリンダ20が、駆動エレメント20として図示されており、液圧シリンダ20のピストンには、アクチュエータ2が摩擦結合式に結合されている。
【0025】
駆動流体チャンバ17には、第1の流体管路18が続いている。駆動流体チャンバ17の容積の減少時には、駆動流体チャンバ17内に存在する流体が、第1の流体管路18を通じて被駆動ユニット19へ向かって流れる。駆動流体チャンバ17の容積の増大時には、流体は駆動流体チャンバ17内へ流入することができる。
【0026】
被駆動ユニット19は、第1の並進ユニット15と第2の並進ユニット16とを有する。第1の並進ユニット15は、第2の並進ユニット16に流体接続されている。
【0027】
第1の並進ユニット15は、被駆動流体チャンバ11と、第1の並進エレメント14と、第1の被駆動装置7と、第1のプリロードエレメント12とを有する。第2の並進ユニット16は、リザーブ流体チャンバ9と、第2の並進エレメント24と、第2の被駆動装置8と、第2のプリロードエレメント25とを有する。
【0028】
図1に図示した構成では、第1の並進エレメント14と第2の並進エレメント24とが液圧シリンダ14,24として形成されており、プリロードエレメント12,25はコイルばね12,25として形成されている。液圧シリンダ14,24は、従来汎用のように摺動可能なピストンを有している。ピストンは、それぞれ被駆動装置7,8を形成している。流体チャンバ11,9の容積は、それぞれ被駆動装置7,8の位置に応じて決定されるか、もしくは被駆動装置7,8の変位量が、それぞれ流体チャンバ11,9の容積に関連している。プリロードエレメント12,25は、被駆動装置7,8、つまり本実施形態ではピストン7,8に、プリロード、つまり予荷重を加える。
【0029】
第1のプリロードエレメント12と第2のプリロードエレメント25とは、本発明によれば、両者とも1つの共通の緊締部4に支持されている。このためには、プリロードエレメント12,25が、互いにほぼ逆向きに配置されている。プリロードエレメント12,25は1直線上で作用する。緊締部4は剛性的で、かつ自由に運動可能である。緊締部4は浮動式に支持されている。プリロードエレメント12,25は、第1のプリロードエレメント12の加えられた力と、第2のプリロードエレメント25の加えられた力との間に力平衡が形成されるように、互いに作用する。緊締部4は、被駆動装置7,8の変位の方向に運動可能である。緊締部4は、被駆動装置7,8と一緒に運動する。
【0030】
第1の並進ユニット15の被駆動流体チャンバ11は、第2の並進ユニット16のリザーブ流体チャンバ9に、管路システム27を用いて流体接続されている。この管路システム27は、第2の流体管路21と第3の流体管路22とが互いに平行に配置され、かつ第4の流体管路26が、第2の流体管路21と第3の流体管路22とに対して直列に配置されるように形成されている。第2の流体管路21内には、吸込逆止弁6が配置されている。第3の流体管路22内には、吐出逆止弁5が配置されている。吸込逆止弁6は、吸込み方向で流れを遮断し、吐出逆止弁5は吸込方向とは逆向きに吐出方向で流れを遮断する。両逆止弁5,6は、互いに逆向きに配置されている。両逆止弁5,6は、それぞれ1方向にのみ開き、吸込逆止弁6は吐出方向に開き、吐出逆止弁5は吸込方向に開く。両逆止弁5,6にはプリロードがかけられているので、加えられる圧力が所定の圧力を越えたあとでしか開放は行われない。第1の流体管路18は、接続箇所23において第4の流体管路26に流体接続されている。
【0031】
図1に示した実施形態では、第2の流体管路21が、被駆動流体チャンバ11に配置されており、第4の流体管路26が、リザーブ流体チャンバ9に配置されている。第4の流体管路26は、付加的に絞り10を備えていてもよく、この絞り10により、第4の流体管路26の横断面が狭められる。
【0032】
流体チャンバ9,11,17と流体管路18,21,22,26とは、流体、特にシリコーンオイルまたはグリセリンのような圧媒液で満たされている。
【0033】
駆動ユニット3の往復運動を用いて、流体は第1の並進ユニット15と第2の並進ユニット16との間で交換可能である。これにより、被駆動装置7,8が変位される。アクチュエータ2の変位が行われる速度に関係して、流体は、リザーブ流体チャンバ9から被駆動流体チャンバ11内に導入可能となるか、または逆に、被駆動流体チャンバ11からリザーブ流体チャンバ9内に導入可能となる。
【0034】
流体を、第2の流体管路21または第3の流体管路22に通して案内するためには、プリロードをかけられた逆止弁5,6に基づいて、流体を第4の流体管路26に通して案内するための圧力よりも高い圧力が加えられることが必要である。この加えられる圧力とは、本発明の枠内では、弁の流入側と流出側との間の圧力差を指している。加えられる圧力は、アクチュエータ2の変位の速度と共に増大する。
【0035】
図2〜4には、並進ユニット15,16の変形例が、それぞれ第1の並進ユニット15の例で示されている。被駆動装置7は、プリロードユニット12を用いてプリロードがかけられている。プリロードユニット12は緊締部4に支持されている。被駆動装置7が距離Δsの分だけ運動することには、被駆動流体チャンバ17の相応する容積変化ΔVが伴う。流体質量流は、第2の流体管路21を通じて生ぜしめられる。
【0036】
図2には、
図1と同様に、並進ユニット15である液圧シリンダが図示されている。液圧シリンダのピストンは、被駆動装置7である。
【0037】
図3に示した実施形態では、並進ユニット15が金属ベローズであり、
図4に示した実施形態では並進ユニット15がダイヤフラムベローズである。被駆動装置7は、それぞれベローズに接触したピストン7によって形成されている。
【0038】
本発明を有利な実施形態につき詳細に説明したが、本発明は上記実施形態によって制限されるものではなく、当業者であれば、本発明の枠内から逸脱することなしに、別の変化形を引き出すこともできる。