(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スイッチが操作されていない場合は、前記電力経路制御部は、前記制御部を介して前記電力源と前記ピストン駆動力生成部とを接続し、前記電力源からの電力を前記制御部を介して前記ピストン駆動力生成部に提供し、
前記スイッチが操作されると、前記電力経路制御部は、前記制御部を介して前記電力源と前記ピストン駆動力生成部とを接続しつつ、前記ピストン駆動力生成部と前記電力源とを直接に接続して前記電力源からの電力を前記ピストン駆動力生成部に直接に提供する、
請求項1に記載の薬剤注入装置。
前記スイッチが操作されていない場合は、前記電力経路制御部は、前記制御部を介して前記電力源と前記ピストン駆動力生成部とを接続し、前記電力源からの電力を前記制御部を介して前記ピストン駆動力生成部に提供し、
前記スイッチが操作されると、前記電力経路制御部は、前記電力源及び前記制御部を接続し、前記ピストン駆動力生成部と前記制御部との接続を解放し、前記ピストン駆動力生成部と前記電力源とを直接に接続して前記電力源からの電力を前記ピストン駆動力生成部に直接に提供する、
請求項1に記載の薬剤注入装置。
前記操作部の一部は他の部分よりも突出している突出部からなり、前記突出部への前記外圧の印加により前記係止受部が手動で移動し、前記係止受部と前記ホルダ係止部との係止を解放する、
請求項6に記載の薬剤注入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の薬剤注入装置において、何らかの原因で薬剤注入装置を電気的に駆動するための電子制御部に不具合が発生したとする。そして、エンド・ストップ・スイッチが動作できなくなったとする。この場合、エンド・ストップ・スイッチは、ピストンが当接したとしても、ピストンが薬剤カートリッジから最大限に引き出されたことを検知することができない。よって、薬剤カートリッジの止め装置が解除されず、使用者は、薬剤注入装置から薬剤カートリッジを取り出すことが出来ない。
そこで、本発明では、電力駆動により薬剤注入装置を自動で駆動できない場合であっても、薬剤注入装置から薬剤カートリッジを取り出すことができる薬剤注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る薬剤注入装置は、本体ケースと、カートリッジホルダと、係止受部と、駆動部と、操作部と、を備える。カートリッジホルダは、収容空間と、ホルダ係止部とを有する。収容空間は、本体ケースのケース側面に対して開閉可能に本体ケースの内部に設けられており、薬剤カートリッジを収容可能な空間である。係止受部は、カートリッジホルダの閉状態又は開状態に応じて、ホルダ係止部を係止又は解放する。駆動部は、電力を受けて係止受部を駆動することで係止受部とホルダ係止部との係止を自動で解放する。操作部は、外圧を受けて係止受部を移動させることで係止受部とホルダ係止部との係止を手動で解放する。駆動部又は操作部が、係止受部とホルダ係止部との係止を開放する。
ここで、カートリッジホルダは、薬剤カートリッジを収容するためのホルダである。カートリッジホルダが本体ケースに対して閉状態となっている場合、カートリッジホルダのホルダ係止部が係止受部に係止され、薬剤カートリッジは本体ケース内部に収容されている。
【0006】
上記構成によれば、駆動部又は操作部が、係止受部とホルダ係止部との係止を開放する。
つまり、薬剤カートリッジを交換する際には、使用者は所定のボタン等を操作する。この操作により駆動部が電力を受けて係止受部を自動で駆動する。これにより、係止受部とカートリッジホルダのホルダ係止部との係止が自動で解放され、カートリッジホルダが開状態となる。
あるいは、使用者は、薬剤カートリッジを交換するために、操作部を手動で操作してもよい。操作部の手動操作によって、電力を受けることなく係止受部が移動される。そして、係止受部とカートリッジホルダのホルダ係止部との係止が解放され、カートリッジホルダが開状態となる。
【0007】
このように、カートリッジホルダは、駆動部又は操作部によって開状態となる。つまり、係止受部は、電力を受けた駆動部により自動で駆動されるか、または電力を受けることなく操作部が手動で操作されることにより移動されるか、によって操作可能である。例えば、電力の供給源等に問題が発生し、係止受部が電力により自動で駆動できない場合がある。このような場合であっても、使用者は、電力によらず係止受部を手動で移動させてして係止受部とホルダ係止部との係止を解放することができる。よって、使用者は、カートリッジホルダを開状態とし、薬剤カートリッジを取り出すことができる。
【0008】
第2の発明に係る薬剤注入装置は、第1の発明に係る薬剤注入装置であって、ホルダ係止部及び係止受部は、外圧により操作部が係止受部を移動する方向に沿って形成されている。
上記構成において、ホルダ係止部と係止受部とが互いに嵌め合わされることにより、ホルダ係止部が係止受部に係止している。ここで、ホルダ係止部及び係止受部の形状は、外圧により係止受部が手動で移動される方向に沿っている。
より具体的には、ホルダ係止部と係止受部とが互いに係止する部分の突出方向は、係止受部が手動で移動される方向に沿っている。よって、係止受部がホルダ係止部から離れる方向は、外圧により係止受部が移動される方向に沿っている。これにより、外圧により係止受部を手動で移動することにより、ホルダ係止部と係止受部との係止を解放することができる。
【0009】
第3の発明に係る薬剤注入装置は、第1の発明に係る薬剤注入装置であって、操作部の一部は他の部分よりも突出している突出部からなり、突出部への外圧の印加により係止受部が手動で移動し、係止受部とホルダ係止部との係止を解放する。
上記構成によれば、操作部は突出部を有するため、使用者は突出部を指で引っかけるなどして操作部を容易に操作することができる。そして、この突出部の手動操作により係止受部を容易に操作することができる。よって、電力の供給源等に問題が発生し、係止受部が電力により駆動できない場合であっても、電力によらず係止受部を手動で移動させてカートリッジホルダを開状態とすることができる。
第4の発明に係る薬剤注入装置は、第3の発明に係る薬剤注入装置であって、突出部は、本体ケース内部の開口に設けられている。
上記構成によれば、突出部は本体ケース内部の開口に設けられている。そのため、突出部が使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
【0010】
第5の発明に係る薬剤注入装置は、第4の発明に係る薬剤注入装置であって、開口は、突出部が外圧を受けて移動可能な範囲を規定する。
上記構成によれば、本体ケース内部の開口に突出部が設けられる。突出部は、この開口の範囲内で移動可能である。使用者は突出部を開口の範囲内でスムーズに移動させることでき、この突出部の移動により係止受部とホルダ係止部との係止を解放することができる。
第6の発明に係る薬剤注入装置は、第4の発明に係る薬剤注入装置であって、本体ケースの内部には、取り外し可能な電力源を収容するための電力源収容空間が設けられている。ここで、本体ケースの開口は、電力源収容空間に設けられている。
上記構成において、薬剤注入装置の内部には、例えば電池などの取り外し可能な電力源を収容するための電力源収容空間が設けられている。この電力源収容空間に開口が設けられており、開口に操作部の突出部が位置している。
電力の供給源等に問題が発生し、係止受部が電力により駆動できない場合、まず使用者は電力源を取り外す。次に、電力源の電力源収容空間の開口内の突出部を操作し、係止受部を手動で移動させる。これにより、電力によらず係止受部を手動で移動させて係止受部とホルダ係止部との係止を解放することができる。よって、使用者は、カートリッジホルダを開状態とすることができる。
突出部が本体ケースの電力源収容空間内に設けられており、突出部が本体ケース外部に露出していない。よって、突出部が使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
【0011】
第7の発明に係る薬剤注入装置は、第1の発明に係る薬剤注入装置であって、電力源と、ピストンと、ピストン駆動力生成部と、制御部と、電力経路制御部と、スイッチとをさらに備える。ピストンは、薬剤カートリッジ内に挿入又は引き出される。ピストン駆動力生成部は、ピストンに提供する駆動力を生成する。制御部は、電力源からの電力を受けてピストン駆動力生成部を制御する。電力経路制御部は、電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供可能とする。スイッチは、電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供するか否かの命令を受け付け、電力経路制御部に命令を伝達する。
【0012】
上記構成において、ピストン駆動力生成部は、ピストンが薬剤カートリッジ内に挿入されるか、薬剤カートリッジ内から引き出すのに必要な駆動力を生成する。スイッチが操作されていない場合は、ピストン駆動力生成部は、電力源からの電力を受けた制御部の制御に基づいてピストンの駆動力を生成する。よって、ピストンは制御部の制御に基づいて生成された駆動力により駆動される。
一方、スイッチが操作されると、スイッチは電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供することを受け付ける。そして、電力経路制御部は、スイッチの操作に基づいて、電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供する。例えば、電力経路制御部は、電力源とピストン駆動力生成部とを電気的に直接に接続する電力経路を生成する。このスイッチの操作によって、電力源からの電力は制御部の制御によることなく、直接にピストン駆動力生成部に提供される。
【0013】
ここで、例えばピストンが薬剤カートリッジ内に挿入された状態で、制御部によるピストン駆動力生成部の制御ができなくなったとする。よって、ピストン駆動力生成部は、制御部の制御に基づいてピストンの駆動力を生成できない。このとき、ピストンが薬剤カートリッジ内に挿入されているため、薬剤カートリッジを取り出すことができない。
このような場合であっても、使用者がスイッチを操作することによって、ピストン駆動力生成部は電力源からの電力の提供を直接に受けて、ピストンの駆動力を生成することができる。つまり、制御部による制御が不能となった場合であっても、ピストン駆動力生成部はピストンの駆動力を生成することができる。そのため、薬剤カートリッジ内に挿入された状態のピストンを、薬剤カートリッジ内から引き出すことができる。また、薬剤カートリッジからピストンが引き出されれば、カートリッジホルダから薬剤カートリッジを支障なく取り出すことができる。
【0014】
第8の発明に係る薬剤注入装置は、第7の発明に係る薬剤注入装置であって、スイッチが操作されていない場合は、電力経路制御部は、制御部を介して電力源とピストン駆動力生成部とを接続し、電力源からの電力を制御部を介してピストン駆動力生成部に提供する。一方、スイッチが操作されると、電力経路制御部は、制御部を介して電力源とピストン駆動力生成部とを接続しつつ、ピストン駆動力生成部と電力源とを直接に接続して電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供する。
上記構成によれば、スイッチが操作された場合であっても、電力源からの電力を制御部に供給したまま、電力源からの電力をピストン駆動力生成部にも直接に提供することができる。制御部がピストン駆動力生成部を制御できないにしても、他の駆動部を制御できる場合もある。よって、スイッチが操作された場合であっても、電力源からピストン駆動力生成部に直接に電力を供給してピストンを駆動させつつ、制御部に電力を供給して制御部が制御可能な駆動部を動作させておくことができる。
さらに、動作不能であった制御部が動作可能となった場合に、ピストン駆動力生成部は制御部からの電力に基づいてピストンの駆動力を生成することもできる。
【0015】
第9の発明に係る薬剤注入装置は、第7の発明に係る薬剤注入装置であって、スイッチが操作されていない場合は、電力経路制御部は、制御部を介して電力源とピストン駆動力生成部とを接続し、電力源からの電力を制御部を介してピストン駆動力生成部に提供する。一方、スイッチが操作されると、電力経路制御部は、電力源及び制御部を接続し、ピストン駆動力生成部と制御部との接続を解放し、ピストン駆動力生成部と電力源とを直接に接続して電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供する。
上記構成によれば、スイッチが操作された場合であっても、制御部に電力源からの電力を供給したまま、電力源からの電力をピストン駆動力生成部にも直接に提供することができる。制御部がピストン駆動力生成部を制御できないにしても、他の駆動部を制御できる場合もある。よって、スイッチが操作された場合であっても、電力源からピストン駆動力生成部に直接に電力を供給してピストンを駆動させつつ、制御部が制御可能な駆動部を動作させておくことができる。
また、スイッチが操作された場合、制御部とピストン駆動力生成部とは接続されない。よって、ピストン駆動力生成部は、制御部が誤動作した場合であっても、制御部からの誤った制御の影響を受けない。
【0016】
第10の発明に係る薬剤注入装置は、第7の発明に係る薬剤注入装置であって、スイッチが操作されている場合に限り、電力経路制御部は電力源からの電力をピストン駆動力生成部に直接に提供する。
上記構成によれば、スイッチの操作と、電力源及びピストン駆動力生成部を電気的に直接に接続する電力経路の生成と、を連動させることができる。つまり、使用者は、電力源の電力を駆動力生成部に直接に提供する場合にはスイッチを操作する。
逆に、使用者は、電力源の電力を制御部を介して提供し、電力源の電力を駆動力生成部に直接に提供しない場合にはスイッチの操作を辞める。このように、駆動力生成部に電力源から直接に電力を提供するのか、駆動力生成部に制御部を介して電力源から電力を供給するのかが、スイッチの操作の可否によって決まる。
よって、駆動力生成部に電力をどのように供給するかが使用者にとって明確であり操作性が良い。
【0017】
第11の発明に係る薬剤注入装置は、第7の発明に係る薬剤注入装置であって、スイッチは、本体ケースの外壁の孔部内に設けられている。
上記構成によれば、スイッチは本体ケースの外壁の孔部内に設けられているため、スイッチが使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
好ましくは、薬剤注入装置は、本体ケースと、カートリッジホルダと、注射針装着部と、を備える。カートリッジホルダは、収容空間と、ホルダ側接続部とを有する。収容空間は、薬剤カートリッジを収容可能な空間である。ホルダ側接続部は、収容空間の端部に設けられている。注射針装着部は、略円筒状であり、注射針部をカートリッジホルダに接続する。注射針装着部は、本体部と、凸部と、第1接続部とを有する。凸部は、本体部の外面から突出する。第1接続部は、カートリッジホルダのホルダ側接続部に接続され、本体部に連続して形成されている。
【0018】
上記構成において、カートリッジホルダは、薬剤カートリッジを収容するためのホルダである。通常、薬剤カートリッジを交換する際に、使用者が所定のボタン等を操作すると、駆動部が駆動してカートリッジホルダを開状態とする。使用者は、開状態となったカートリッジホルダから使用済みの薬剤カートリッジを取り出し、新たな薬剤カートリッジをカートリッジホルダに挿入する。
ここで、カートリッジホルダを開状態とする駆動部に不具合が生じたり、駆動部の制御部及び駆動部に電力を供給する電力源等に不具合が生じる場合がある。このような場合、前述のように駆動部によりカートリッジホルダを開状態とすることができず、薬剤カートリッジを取り出すことができない。
上記薬剤注入装置によれば、注射針装着部は、注射針装着部の第1接続部とカートリッジホルダのホルダ側接続部とが接続されることで、カートリッジホルダに固定される。このとき、第1接続部のみがホルダ側接続部と接続されるため、凸部は、カートリッジホルダの外面から突出している。使用者は、工具又は手等により引っ張る又は回転させる等の圧力を凸部に印加して、注射針装着部をカートリッジホルダから引き離すことができる。
【0019】
よって、使用者は、注射針装着部が取り外されたカートリッジホルダから、工具又は手等を用いて薬剤カートリッジを取り出すことができる。つまり、カートリッジホルダの駆動部、制御部及び電力源等に不具合が生じた場合であっても、カートリッジホルダから薬剤カートリッジを取り出すことができる。
好ましくは、ホルダ側接続部は、カートリッジホルダの端部に設けられている。また、ホルダ側接続部に注射針装着部の第1接続部が接続されると、凸部はカートリッジホルダの端部から突出する。
上記薬剤注入装置によれば、注射針装着部は、注射針装着部の第1接続部とカートリッジホルダのホルダ側接続部とが接続されることで、カートリッジホルダに固定される。このとき、凸部は、カートリッジホルダの端部から突出している。
【0020】
よって、カートリッジホルダの駆動部、制御部及び電力源等に不具合が生じた場合には、使用者は、カートリッジホルダの端部から突出している凸部に例えば工具又は手等を用いて圧力を印加することで、注射針装着部をカートリッジホルダから引き離すことができる。よって、使用者は、注射針装着部が取り外されたカートリッジホルダから薬剤カートリッジを取り出すことができる。
好ましくは、注射針装着部は、第2接続部をさらに有する。第2接続部は、本体部に対して第1接続部とは反対側に設けられ、注射針部が接続される。
上記構成において、注射針装着部は、注射針部が接続される第2接続部と、凸部と、ホルダ側接続部に接続される第1接続部と、を有する。そして、第2接続部を介して注射針部を注射針装着部に取り付けることができる。これにより、注射針装着部を介してカートリッジホルダの端部に注射針部を取り付けることができる。
【0021】
好ましくは、第1接続部、凸部、本体部及び第2接続部が一体に形成されている。
上記構成において、注射針装着部において第1接続部、凸部、本体部及び第2接続部が一体に形成されているため、注射針部を注射針装着部に取り付けた場合のがたつきを抑制することができる。また、第1接続部、凸部、本体部及び第2接続部が別体である場合に比べて、注射針装着部の製造が容易である。
好ましくは、凸部は、本体部のうち、第2接続部側よりも第1接続部側に形成されている。
上記構成において、注射針装着部は、注射針装着部の第1接続部とカートリッジホルダのホルダ側接続部とが接続されることで、カートリッジホルダに固定される。駆動部等の不具合によりカートリッジホルダを開状態とするができない場合には、使用者は工具又は手等により凸部に圧力を印加することで、注射針装着部をカートリッジホルダから引き離す。
【0022】
ここで、凸部は、本体部のうち、第2接続部側よりも、カートリッジホルダと接続されている第1接続部側に形成されている。つまり、第2接続部よりも、カートリッジホルダと注射針装着部との接続部分に近い部分に凸部が設けられている。そのため、凸部に圧力を印加した場合、カートリッジホルダと注射針装着部との接続を解放する力が凸部を介して接続部分に伝達されやすい。これにより、使用者は、凸部に圧力を印加することにより、注射針装着部をカートリッジホルダから容易に引き離すことができる。
好ましくは、凸部の外径は、第1接続部の外径より小さく、第2接続部の外径より大きい。
上記構成において、凸部の外径が第1接続部の外径より小さいため、注射針装着部をカートリッジホルダに接続する際に凸部が邪魔になりにくい。また、凸部の外径が第2接続部よりも大きい。よって、注射針装着部をカートリッジホルダから引き離す際に第2接続部が障害とならず、使用者は、第2接続部側から工具又は手等により凸部を操作しやすい。
好ましくは、凸部は、注射針部の穿刺方向から見た外形が多角形状である。
【0023】
上記構成において、注射針部の穿刺方向から見ると、凸部は多角形状の外形を有する。よって、例えば多角形の対向する2片を工具又は手等により把持することにより、凸部を引っ張る又は回転させるなどの操作を容易にすることができる。
好ましくは、凸部は、注射針部の穿刺方向から見た外形が正六角形状である。
上記構成において、注射針部の穿刺方向から見ると、凸部は概ね正六角形状の外形を有する。例えば正六角形の対向する2片を工具又は手等により把持することにより、凸部を容易に操作することができる。特に、六角レンチ等の市販の工具により凸部を容易に操作することができる。
好ましくは、注射針装着部は、本体ケースの端部に設けられている。
【0024】
上記構成において、注射針装着部は本体ケースの端部に設けられている。注射針装着部の第1接続部とカートリッジホルダのホルダ側接続部との接続により、注射針装着部がカートリッジホルダに固定される。この場合、凸部が本体ケースの端部から突出する。カートリッジホルダの駆動部等に不具合が発生した場合に、使用者は、工具又は手等により本体ケースの端部から突出した凸部を容易に操作することができる。
好ましくは、第1接続部及び凸部の中央部には、薬剤カートリッジが貫通可能な貫通孔が設けられている。
上記構成において、注射針装着部の第1接続部をホルダ側接続部に接続することで、注射針装着部をカートリッジホルダの先端に装着することができる。次に、薬剤カートリッジをカートリッジホルダの先端に向かって押し出すことで、薬剤カートリッジの先端は第1接続部及び凸部の貫通孔を通過する。このような状態において、薬剤カートリッジを取り出すためにカートリッジホルダを開状態にすることができなくなったとする。
【0025】
そこで、使用者は、工具又は手等により凸部に圧力を印加することで、注射針装着部をカートリッジホルダから取り外す。このとき、薬剤カートリッジは貫通孔を貫通していた分だけ、カートリッジホルダから突出している。使用者は、例えば突出している薬剤カートリッジの先端を工具又は手等で把持することにより、薬剤カートリッジをカートリッジホルダから取り出すことができる。
好ましくは、注射針装着部材は、本体部と、凸部と、第1接続部と、を備える。注射針装着部材は、注射針部をカートリッジホルダに接続する。凸部は、本体部の外面から突出する。ここで、カートリッジホルダは、収容空間とホルダ側接続部とを有する。収容空間は、薬剤カートリッジを収容可能な空間である。ホルダ側接続部は、収容空間の端部に設けられている。第1接続部は、カートリッジホルダのホルダ側接続部に接続され、本体部に連続して形成されている。
【0026】
上記注射針装着部材がカートリッジホルダに取り付けられた場合には、上記の薬剤注入装置と同様の作用効果を得ることができる。この注射針装着部材を薬剤注入装置に適用する場合、注射針装着部材はカートリッジホルダに固定される。より具体的には、注射針装着部材の第1接続部と、薬剤注入装置のカートリッジホルダのホルダ側接続部とが接続される。このとき、第1接続部のみがホルダ側接続部と接続されるため、凸部は、カートリッジホルダの外面から突出している。使用者は、工具又は手等により引っ張る又は回転させる等の圧力を凸部に印加して、注射針装着部材をカートリッジホルダから引き離すことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電力駆動により薬剤注入装置を自動で駆動できない場合であっても、薬剤注入装置から薬剤カートリッジを取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1実施形態例に係る薬剤注入装置100について、以下に説明する。
[第1実施形態例]
図1は、第1実施形態例に係る薬剤注入装置100の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1の薬剤注入装置100のカートリッジホルダ11の開状態を示す斜視図である。
図3Aは、
図1の薬剤注入装置100の内部構成を示す前面断面図である。
図3Bは、
図1の薬剤注入装置100のカートリッジホルダ11が開状態である場合において、内部構成を示す前面断面図である。
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」方向とは、
図1、
図2等に示す矢印の方向に相当するものとする。つまり、後述の薬剤注入スイッチ4、表示部5及び設定スイッチ6が設けられている側が「前」であり、「前」の反対側が「後」である。また、後述のカートリッジホルダ11が設けられている側が「左」であり、「左」の反対側が「右」である。また、後述の電源スイッチ2が設けられている側が「上」であり、「上」の反対側であり、後述のキャップ部1bが設けられている側が「下」である。
【0030】
まずは、薬剤注入装置100の外観構成について説明する。
(1)外観構成
図1、
図2、
図3Aに示すように、第1実施形態例に係る薬剤注入装置100は、本体ケース1aと、キャップ部1bと、蓋1c(
図3A参照)とを備える。
(1−1)本体ケース1a、キャップ部1b、蓋1c
本体ケース1aは、縦長の筒状であり、概ね六方体状の外形を有している。本体ケース1aは、使用者が把持可能な程度の長さ及び幅に構成されている。
キャップ部1bは、本体ケース1aの下部を覆うように、本体ケース1aに着脱自在に装着されている。後述の注射針装着部13は本体ケース1aの下部に設けられており、キャップ部1bは注射針装着部13の周辺を覆う部材である。このキャップ部1bは薬剤の投与時に、皮膚当て部分として機能する。しかし、皮膚当て部分が不要の場合には、本体ケース1aにキャップ部1bを設けなくてもよい。つまり、注射針装着部13の周辺が本体ケース1aから露出していてもよい。
【0031】
本実施形態例においては、後述のカートリッジホルダ11は、
図1、
図2に示すように本体ケース1aの左側部分に設けられている。一方、本体ケース1aの右側部分には、電力源40を収容する電力源収容空間41を開閉するための蓋1c(
図3A参照)が設けられている。つまり、カートリッジホルダ11と、電力源収容空間41及び蓋1cとは対向する位置に設けられている。なお、これらの位置関係は本実施形態例に限定されず、例えばカートリッジホルダ11が右側部分に、電力源収容空間41及び蓋1cが左側部分に設けられてもよい。この配置に対応して、本体ケース1a内部のその他の部材の配置も変わり得る。
【0032】
(1−2)各種スイッチ2,4,6、表示部5
本体ケース1aの上面には電源スイッチ2が設けられている。また、本体ケース1aの前面部分には、上方から下方に向かって、薬剤注入スイッチ4、表示部5、設定スイッチ6が順に設けられている。
例えば、薬剤注入スイッチ4は、本体ケース1aの前面部分のうち上方に設けられている。また、設定スイッチ6は、例えば本体ケース1aの前面部分のうち概ね中央部分に設けられている。
設定スイッチ6は、薬剤投与量を設定するためのスイッチであり、中央スイッチ6a、左スイッチ6b及び右スイッチ6cを含む。中央スイッチ6aは、例えば、設定された投与量を確定するためのスイッチであり得る。また、左スイッチ6b及び右スイッチ6cは、例えば、それぞれ投与量の増量又は減量を調整するためのスイッチであり得る。
表示部5は、設定スイッチ6での設定が確認し易いように、本体ケース1aの前面部分のうち設定スイッチ6の上方に設けられている。表示部5としては、例えばLCD(liquid crystal display)パネル及び有機EL(Organic Electro-Luminescence)パネル等の表示装置を用いることができる。
【0033】
(2)内部構成
次に、薬剤注入装置100の内部構成について説明する。
薬剤注入装置100は、
図3Aに示すように、例えばカートリッジホルダ機構10、ピストン駆動機構20、取出機構30、電力源40及びピストン45を含む。
(2−1)電力源40
電力源40は、電力を発生可能な部材であり、例えば電池等である。
図3Aに示すように、本体ケース1aの内部には、電力源40を収容可能な電力源収容空間41が設けられている。また、電力源収容空間41を開閉するための蓋1cが設けられている。
電力源40は、電力源収容空間41に対して着脱可能である。よって、電力源40の充電残量が無くなった場合には、使用者は、蓋1cを外して電力源収容空間41から使用済みの電力源40を取り出し、新たな電力源40を組みこむことが可能である。
電力源40が発生する電力は、後述の駆動部31、ピストン駆動力生成部24及び制御部50等に供給される。
なお、電力源40は、別途の電源からケーブル等を介して電力を供給される部材であってもよい。
【0034】
(2−2)ピストン45
図3A及び
図3Bに示すように、ピストン45は、内部が空洞の筒状の筐体である。ピストン45は、本体ケース1a内のカートリッジホルダ11の上方に設けられている。ピストン45は、カートリッジホルダ11に収容された薬剤カートリッジ9内に挿入又は薬剤カートリッジ9内から引き出される。
より具体的には、ピストン45が下方に移動して薬剤カートリッジ9内に挿入されると、薬剤カートリッジ9内の薬剤が排出又は人体等に投与される。一方、ピストン45が上方に移動すると薬剤カートリッジ9内から引き出されるため、薬剤カートリッジ9が交換可能となる。
【0035】
(2−3)カートリッジホルダ機構10、取出機構30
カートリッジホルダ機構10は、
図3A、
図3B等に示すように、カートリッジホルダ11、注射針装着部13、支点部15、取出バネ17を含む。取出機構30は、駆動部31、係止受部本体32、係止受部33、駆動バネ34、操作部35を含む。
(a)カートリッジホルダ11
カートリッジホルダ11は、
図1、
図2に示すように、本体ケース1aの内部に収容可能な部材であり、本体ケース1aに対して開閉自在に設けられている。
カートリッジホルダ11は、外壁部11aと、収容空間11bと、ホルダ係止部11cとを有する。
外壁部11aは、カートリッジホルダ11が閉じられて本体ケース1a内に収容された場合に、本体ケース1aの外表面と面一となる。
【0036】
カートリッジホルダ11の収容空間11bは、例えば筒状の薬剤カートリッジ9を収容する空間である。なお、薬剤カートリッジ9内には、薬剤注入装置100により投与するための薬剤が封入されている。
ホルダ係止部11cは、後述の取出機構30の係止受部33に係止する。カートリッジホルダ11が閉じられてホルダ係止部11cが係止受部33に係止することで、カートリッジホルダ11が本体ケース1a内に収容される。ここで、本体ケース1a内に収容されたカートリッジホルダ11は、後述の取出バネ17によって開状態にする方向に付勢力を受けている。よって、ホルダ係止部11cは、取出バネ17の付勢力に抗して、カートリッジホルダ11を本体ケース1aに対して閉じた状態で保持する。ホルダ係止部11cは、係止受部33に係止可能なように、係止受部33側に突出するように形成されている。
【0037】
(b)支点部15
支点部15は、カートリッジホルダ11の下端部に設けられている。カートリッジホルダ11は、支点部15を介して本体ケース1aに取り付けられている。この支点部15によってカートリッジホルダ11が軸支されることで、カートリッジホルダ11が本体ケース1aに対して開閉自在になっている。
(c)取出バネ17
取出バネ17は、カートリッジホルダ11と本体ケース1aとを接続する。取出バネ17は、カートリッジホルダ11が閉状態(
図3A参照)である時に、カートリッジホルダ11を開状態(
図3B参照)にする向きに付勢力が生じるように配置されている。
(d)係止受部本体32、係止受部33
係止受部本体32は、係止受部33が設けられる台座である。係止受部33は、係止受部本体32に一体に設けられている。カートリッジホルダ11が本体ケース1a内に収容されている場合に、ホルダ係止部11cが係止受部33に係止している。係止受部33は、ホルダ係止部11cが係止可能なように、ホルダ係止部11c側に突出するように形成されている。
【0038】
(e)駆動部31、駆動バネ34
駆動バネ34は、係止受部33を下方に付勢するように、つまり、カートリッジホルダ11のホルダ係止部11c側に係止受部33を付勢するように、係止受部本体32に取り付けられている。例えば、
図3Aに示すように、駆動バネ34は、ホルダ係止部11c及び係止受部33が設けられている側とは反対側に配置されている。つまり、駆動バネ34と、ホルダ係止部11c及び係止受部33と、は互いに対向するように配置されている。
また、駆動部31は、係止受部33を上方、つまり係止受部33がホルダ係止部11cから離れる方向に引っ張る力を発生する。よって、係止受部33は、駆動部31及び駆動バネ34の作用により上下に移動する。駆動部31としては例えばソレノイドが挙げられる。
【0039】
より具体的に説明すると、係止受部33は通常は駆動バネ34の付勢力により下方、つまりカートリッジホルダ11側に位置している。そして、係止受部33は、駆動部31によって引っ張られた時にのみ、上方、つまりカートリッジホルダ11から離れた場所に位置する。ここで、係止受部33の下方位置は、とホルダ係止部11cが係止受部33に係止する位置である。一方、係止受部33の上方位置は、ホルダ係止部11cが係止受部33との係止から解放される位置である。
次に、薬剤カートリッジ9を交換する場合の駆動部31及び駆動バネ34の動作について説明する。
薬剤カートリッジ9を交換する場合、使用者は、カートリッジホルダ11を開くために所定のスイッチ等を操作する。駆動部31は、スイッチ等の操作を受けて、係止受部本体32及び係止受部33等を上方へ引っ張る。これにより、ホルダ係止部11cが係止受部33から離れ、ホルダ係止部11cと係止受部33との係止が自動で解放される。そして、カートリッジホルダ11は、取出バネ17の付勢力により支点部15を中心に回転し、本体ケース1aの外側方向(
図2の矢印A1方向)へ開く。
【0040】
次に、使用者は、カートリッジホルダ11の収容空間11bから、矢印B1に沿って不要な薬剤カートリッジ9を取り出す。そして、使用者は、新たな薬剤カートリッジ9を矢印B2に沿って薬剤カートリッジ9を挿入する。
その後、使用者は、カートリッジホルダ11を閉じるために所定のスイッチ等を操作する。これにより、駆動部31は、係止受部本体32及び係止受部33等の上方への引っ張りを停止する。そして、係止受部33は駆動バネ34の付勢力により下方へ移動する。
次に、使用者が、本体ケース1aの内側方向(
図2の矢印A2方向)へカートリッジホルダ11を閉じると、ホルダ係止部11cが係止受部33に係止する。以上の動作により、
図3Aに示すように、新たな薬剤カートリッジ9が、本体ケース1a内に装填される。
なお、上記では、使用者が所定のスイッチ等を操作した時に、駆動部31が係止受部本体32及び係止受部33等の上方への引っ張りを停止するとしている。しかし、駆動部31による係止受部本体32及び係止受部33等の引っ張りの停止は、動作開始から所定時間経過後でもよい。あるいは、駆動部31による引っ張りの停止は、図示しない検知手段によりカートリッジホルダ11が開状態であることを検知した後でもよい。
【0041】
(f)操作部35
図4は、薬剤注入装置100の本体ケース1aから蓋1c及び電力源40を取り外した状態を示す図である。
図3A、
図3Bに示すように、操作部35は、係止受部本体32及び係止受部33に一体に取り付けられている。操作部35は、使用者の手動による操作を受け付け、その手動操作に応じて係止受部本体32及び係止受部33を移動させる。
操作部35は、突出部35aと、突出部載置部35bとを有する。突出部載置部35bは突出部35aの台座となる部材である。突出部35aは突出部載置部35bから突出するように設けられている。突出部35aは、
図4に示すように、電力源収容空間41の開口41aにおいて露出するように設けられている。よって、使用者は、電力源収容空間41から電力源40を取り外せば、突出部35aを手動で操作することができる。また、突出部35aは本体ケース1aの開口41aに設けられているため、突出部35aが使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
【0042】
使用者が突出部35aを指で上方へとスライドさせると、係止受部33も上方へと移動する。よって、ホルダ係止部11cが係止受部33から離れ、係止受部33とホルダ係止部11cとの係止が手動で解放される。このように、使用者が突出部35aを操作することで、カートリッジホルダ11を手動で開状態にすることができる。
つまり、上記本実施形態例によれば、取出機構30の係止受部33は、電力を受けた駆動部31により自動で駆動、または電力を受けることなく手動で移動させることが可能である。
例えば、電力の供給源等に問題が発生し、取出機構30の係止受部33が電力により駆動できない場合がある。このような場合であっても、使用者が突出部35aを手動で操作することで、電力によらず係止受部33を手動で移動させて係止受部33とホルダ係止部11cとの係止を解放することができる。よって、使用者は、カートリッジホルダ11を開状態とし、薬剤カートリッジ9を取り出すことができる。
【0043】
ここで、開口41aの大きさは、突出部35aが開口41a内で移動することで、係止受部33とホルダ係止部11cとの係止が解放される大きさである。つまり、開口41aは、突出部35aが移動可能な範囲を規定している。よって、使用者は突出部35aを開口41aの範囲内でスムーズに移動させることできる。そして、この突出部35aの移動により係止受部33とホルダ係止部11cとの係止を手動で解放することができる。
操作部35は突出部載置部35bから突出した突出部35aを有するため、使用者は突出部35aを指で引っかけるなどして操作部35を容易に操作することができる。そして、この突出部35aの操作により係止受部33を容易に操作することができる。
なお、前述の通り、ホルダ係止部11cは、係止受部33側に突出するように形成されている。一方、係止受部33は、ホルダ係止部11c側に突出するように形成されている。つまり、カートリッジホルダ11が本体ケース1a内に収容されている状態においては、ホルダ係止部11cは上方に向かって突出しており、係止受部33は下方に向かって突出している。
【0044】
よって、ホルダ係止部11c及び係止受部33の上下方向の突出方向は、突出部35aの移動方向である上下方向に沿っている。つまり、係止受部33がホルダ係止部11cから離れる方向は、係止受部33がスライドされて移動される方向に沿っている。そのため、係止受部33に手動で外圧を与えて移動させることにより、ホルダ係止部11cと係止受部33との係止を手動で解放することができる。
なお、上記では、突出部35aは、本体ケース1a内部の開口41aに設けられている。しかし、突出部35aは、本体ケース1aの外壁の開口に設けられてもよい。この場合であっても、突出部35aは、本体ケース1a外壁の開口に設けられているため、突出部35aが使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
上記では、使用者の操作により突出部35aは上下に移動する。しかし、突出部35aが左右に移動することで係止受部33とホルダ係止部11cとの係止が解放されてもよい。
【0045】
その他、使用者が突出部35aを開口41a内部の奥側に移動することで、係止受部33とホルダ係止部11cとの係止が解放されてもよい。このとき、例えば、使用者が突出部35aを開口41aの奥側に移動すると、ホルダ係止部11cが押されて係止受部33とホルダ係止部11cとの係止が手動で解放される。
また、突出部35aと突出部載置部35bとは一体に成形されていてもよいし、それぞれの別体が結合されていてもよい。また、操作部35は、係止受部本体32及び係止受部33と一体に成形されていてもよいし、それぞれの別体が結合されていてもよい。
【0046】
(g)注射針装着部13
図5は、薬剤注入装置100の注射針装着部13に注射針部8を装着した状態を示す図である。
注射針装着部13は、略円筒状の部材であり、注射針部8をカートリッジホルダ11に接続するための部材である。注射針装着部13はカートリッジホルダ11の下方部分、つまり端部に設けられていている。注射針装着部13の上方からは薬剤カートリッジ9が挿入され、薬剤カートリッジ9の先端9a(
図2)が注射針装着部13内に位置する。一方、注射針装着部13の下方からは注射針部8が挿入される。ここで、注射針部8は、針部8bの基部である注射針基部8aと、中空針の針部8bと、取付部材8cとを含む。取付部材8cは、注射針装着部13と注射針部8とを接続するための部材である。取付部材8cを注射針装着部13に取り付けると、針部8bが薬剤カートリッジ9の内部へ貫通し、薬剤カートリッジ9内の薬剤を投与することが可能となる。
【0047】
(2−4)ピストン駆動機構20
図3Aに示すように、ピストン駆動機構20は、ピストン45を駆動するための機構であり、送りネジ22、歯車23、ピストン駆動力生成部24、駆動歯車25、エンコーダ26を含む。
ピストン駆動機構20は、ピストン45を駆動することにより、ピストン45を薬剤カートリッジ9内に挿入又は薬剤カートリッジ9内から引き出す。ピストン45は、薬剤カートリッジ9内の薬剤を排出または投与する時には下方へ移動し、薬剤カートリッジ9を交換する時には上方へ移動する。
詳細に説明すると、ピストン駆動力生成部24は、ピストン45を移動させるための駆動力を生成する。ピストン駆動力生成部24は、例えばモータなどの発動機である。モータであるピストン駆動力生成部24は、その駆動軸が、ピストン45の移動方向、つまり上下方向と略平行になるように配置されている。そして、ピストン駆動力生成部24の上側には、ピストン駆動力生成部24の駆動軸と連結された駆動歯車25が設けられている。
【0048】
また、ピストン45の上端にネジ孔が形成されており、そのネジ孔に送りネジ22が螺合している。送りネジ22は、ピストン45の上方に対応して設けられている歯車23に固定されている。歯車23は、駆動歯車25と噛み合っている。
ピストン駆動力生成部24が回転すると、その回転力が駆動歯車25及び歯車23を介して送りネジ22に伝達され、送りネジ22が回転する。この送りネジ22の回転により、ピストン45が下方向(
図3Aの矢印C方向)又は上方向(
図3Aの矢印D方向)に移動する。なお、ピストン45が下方向(
図3Aの矢印C方向)に移動することで、ピストン45が薬剤カートリッジ9内に挿入される。一方、ピストン45が上方向(
図3Aの矢印D方向)に移動することで、ピストン45が薬剤カートリッジ9内から引き出される。
ピストン駆動力生成部24にはエンコーダ26が接続されている。エンコーダ26は、モータであるピストン駆動力生成部24の回転量に応じて電気パルスを出力する。エンコーダ26は、電気パルスを後述の制御部50に送出する。制御部50は、エンコーダ26からの電気パルスに基づいて、ピストン45の移動量を算出できる。
【0049】
(3)制御ブロック構成
図6は、薬剤注入装置100の制御部50と制御部50に接続される各種部材との関係を示す制御ブロック図である。
薬剤注入装置100は、制御部50、制御部50に接続される電力源40、ピストン駆動力生成部24、エンコーダ26、駆動部31、ブザー61、表示部5及び各種スイッチ2,4,6を含む。
制御部50は、薬剤注入装置100の各種制御を行うために各種演算等を行う。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)52と、各I/Oインターフェースや駆動系とを有する。CPU52は、各I/Oインターフェースや駆動系と接続され、それらの制御を行う。各I/Oインターフェースや駆動系としては、例えばピストン制御回路53、駆動部制御回路54、ブザー駆動回路55、表示回路56、タイマ57及びメモリ58が挙げられる。
【0050】
具体的に、CPU52は、電源スイッチ2、薬剤注入スイッチ4及び設定スイッチ6などと接続され、各スイッチの入力をチェックする。
ピストン制御回路53は、ピストン45を移動させる駆動力を生成するために、ピストン駆動力生成部24を駆動するための回路である。CPU52は、ピストン制御回路53を介してピストン駆動力生成部24を制御する。ピストン駆動力生成部24にはエンコーダ26が接続されている。エンコーダ26は、ピストン駆動力生成部24の駆動に応じて電気パルスを出力し、CPU52に入力する。CPU52はこのエンコーダ26から入力された電気パルスに基づいてピストン45の移動量を推定する。
駆動部制御回路54は、ソレノイド等の駆動部31を駆動するための回路である。CPU52は駆動部制御回路54を介して駆動部31を制御する。
【0051】
ブザー駆動回路55は、音で報知を行うためのブザー61を駆動するための回路である。CPU52は、ブザー駆動回路55を介してブザー61を制御する。
表示回路56は、表示部5を制御するための回路である。CPU52は、表示回路56を介して表示部5に各種表示を行わせる。
タイマ57は時間を管理する。メモリ58は、薬剤の投与情報や装置の動作情報などを記録する。
【0052】
次に、本発明の第2実施形態例に係る薬剤注入装置100について、以下に説明する。
[第2実施形態例]
第2実施形態例では、ピストン45が薬剤カートリッジ9の内部に挿入されている状態のまま、ピストン45を制御部50の操作に基づいて薬剤カートリッジ9から取り出せない問題を解決する。
そのために、ピストン復帰スイッチ70が操作されている場合には、ピストン駆動力生成部24を電力源40と直接に接続する。このような方法として、例えば2通りの方法が挙げられる。
第1の方法として、制御部50とピストン駆動力生成部24との接続を維持したまま、電力源40を制御部50及びピストン駆動力生成部24の両方に接続する。
第2の方法として、制御部50とピストン駆動力生成部24との接続を切断し、電力源40を制御部50及びピストン駆動力生成部24の両方に接続する。
【0053】
以下に第1の方法及び第2の方法を説明する。
(1)第1の方法
図7は、第2実施形態例に係る薬剤注入装置200の後面の外観を示す斜視図である。
図8は、
図7の薬剤注入装置200の制御部50と制御部50に接続される各種部材との関係を示す制御ブロック図である。
図9Aは、第1の方法において、ピストン復帰スイッチ70が押されていない場合の電力経路を示す図である。
図9Bは、第1の方法において、ピストン復帰スイッチ70が押されている場合の電力経路を示す図である。第1実施形態例と同一の構成は同一の符号番号を付して説明を省略又は簡略化する。
本実施形態例は、薬剤注入装置200が、ピストン復帰スイッチ70(
図7)及び電力経路制御部75(
図8)を有する点で第1実施形態例と異なる。
ピストン復帰スイッチ70は、薬剤カートリッジ9の内部に挿入されているピストン45を、薬剤カートリッジ9の内部から引き出す命令を受け付けるスイッチである。本体ケース1aの裏面には孔部71が設けられている。ピストン復帰スイッチ70は、この孔部71の内部に設けられている。また、ピストン復帰スイッチ70は、押しボタン方式のプッシュスイッチである。孔部71は例えば微小な孔であり、使用者は、細いピンなどを用いて孔部71を通してピストン復帰スイッチ70を押すことができる。
電力経路制御部75は、ピストン復帰スイッチ70の操作の可否に応じた電力経路を生成する。
図9A、
図9Bに示すように、電力経路制御部75は、ピストン駆動力生成部24及び電力源40と、制御部50との間に設けられている。また、電力経路制御部75内にピストン復帰スイッチ70が設けられている。
【0054】
電力経路制御部75は、例えば4つの端子A、端子B、端子C、端子Dを有する。端子Aは電力源40と接続されている。端子Bはピストン駆動力生成部24と接続されている。端子Cは制御部50に接続されている。端子Dはピストン制御回路53と接続されている。電力経路制御部75内では、ピストン復帰スイッチ70の操作の可否に関わらず、端子Aと端子Cが結線され、端子Bと端子Dが結線されている。
ピストン復帰スイッチ70が操作されていない場合の電力経路は、
図9Aに示す通りである。この場合、ピストン復帰スイッチ70は操作されていないため、ピストン復帰スイッチ70は
図9Aに示すように開状態である。このとき、端子Aと端子Bとは接続されていない状態である。よって、電力源40は制御部50のみと接続され、ピストン駆動力生成部24は制御部50のみと接続される。そのため、ピストン駆動力生成部24は、制御部50に供給された電力を用いてピストン45を駆動するための駆動力を生成する。
【0055】
ピストン復帰スイッチ70が操作されている場合の電力経路は、
図9Bに示す通りである。この場合、ピストン復帰スイッチ70が操作されているため、ピストン復帰スイッチ70は
図9Bに示すように閉状態である。このとき、電力経路制御部75内で端子Aと端子Bが接続されている。よって、電力源40は、制御部50だけでなく、ピストン駆動力生成部24にも接続される。
つまり、ピストン駆動力生成部24は電力源40と直接に接続される。そのため、ピストン駆動力生成部24は、制御部50からの電力によらず、電力源40からの電力を直接に受けてピストン45を駆動するための駆動力を生成することができる。具体的には、モータであるピストン駆動力生成部24は、電力源40からの電力を直接に受けて回転する。この時の回転方向は、ピストン45を薬剤カートリッジ9から引き抜く方向(上方向)へ移動させる方向である。また、電力源40とピストン駆動力生成部24とが直接接続される場合の結線の極性は、ピストン45を薬剤カートリッジ9から引き抜く方向である。
【0056】
ピストン復帰スイッチ70の使用方法について以下に具体的に説明する。
ピストン45が薬剤カートリッジ9の内部に挿入されている状態のまま、ピストン45を制御部50の操作に基づいて薬剤カートリッジ9から取り出せないとする。使用者は、ピストン45を薬剤カートリッジ9内から引き抜くために、ピストン復帰スイッチ70を十分に長い時間押す。その後、使用者は、第1実施形態例に示した突出部35aを手動で操作して、カートリッジホルダ11を開状態として薬剤カートリッジ9を取り出す。
あるいは、使用者は、ピストン45を薬剤カートリッジ9内から引き抜くためにピストン復帰スイッチ70を十分に長い時間押す。その後、突出部35aを操作する代わりに駆動部31を動作させる。ここで、
図9Bに示すように、ピストン復帰スイッチ70が操作されている場合には、電力源40は、ピストン駆動力生成部24及び制御部50の両方に電力を供給する。
図8に示すように、駆動部31は、電力を供給された制御部50のCPU52及び駆動部制御回路54の制御によって動作可能である。この駆動部31の上方向の動作により、ホルダ係止部11cと係止受部33との係止を自動で解放する。これにより、使用者は、カートリッジホルダ11を開状態として薬剤カートリッジ9を取り出す。
【0057】
上述の通り、制御部50の制御が不能になると、ピストン駆動力生成部24が、制御部50の制御に基づいてピストン45の駆動力を生成できなくなる。このとき、ピストン45が薬剤カートリッジ9内に挿入された状態では、ピストン45が障害となり薬剤カートリッジ9を取り出すことができない。
このような場合、上述の通り使用者がピストン復帰スイッチ70を操作する。これにより、ピストン駆動力生成部24は電力源40からの電力の提供を直接に受けて、ピストン45の駆動力を生成することができる。つまり、制御部50による制御が不能となった場合であっても、ピストン駆動力生成部24はピストン45の駆動力を生成することができる。そのため、薬剤カートリッジ9内に挿入された状態のピストン45を、薬剤カートリッジ9内から引き出すことができる。また、薬剤カートリッジ9からピストン45が引き出されれば、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を支障なく取り出すことができる。
【0058】
また、上記実施形態例では、ピストン復帰スイッチ70が操作された場合であっても、電力源40から制御部50に電力を供給する。制御部50がピストン駆動力生成部24を制御できないにしても、他の駆動部を制御できる場合もある。よって、ピストン復帰スイッチ70が操作された場合であっても、電力源40からピストン駆動力生成部24に直接に電力を供給してピストン45を駆動させつつ、制御部50に電力を供給して制御部50が制御可能な駆動部を動作させておくことができる。さらに、動作不能であった制御部50が動作可能となった場合に、ピストン駆動力生成部24は制御部50からの電力に基づいてピストン45の駆動力を生成することもできる。
また、ピストン駆動力生成部24に電力源40から直接に電力を提供するのか、ピストン駆動力生成部24に制御部50を介して電力源40から電力を供給するのかが、ピストン復帰スイッチ70の操作の可否によって決まる。つまり、ピストン復帰スイッチ70の操作と、電力源40とピストン駆動力生成部24とを電気的に直接に接続する電力経路の生成と、が連動している。よって、ピストン駆動力生成部24に電力をどのように供給するかが使用者にとって明確であり操作性が良い。さらに言い換えれば、ピストン復帰スイッチ70は、電力源40からの電力を直接に提供するか否かの命令を受け付ける。そして、電力経路制御部75は、ピストン復帰スイッチ70が受け付けた命令が伝達されると、その命令に基づいて上述のように電力経路を構築する。
また、ピストン復帰スイッチ70は本体ケース1aの外壁の孔部71内に設けられている。そのため、ピストン復帰スイッチ70が使用者の手やその他の部材等と接触して誤操作されるのを防止できる。
【0059】
(2)第2の方法
第2の方法において、薬剤注入装置200の外観及び制御ブロック図は、第1の方法の場合の
図7、
図8と同様である。第2の方法においては、ピストン復帰スイッチ70の操作の有無における電力経路が第1の方法と異なる。
図10Aは、第2の方法において、ピストン復帰スイッチ70が押されていない場合の電力経路を示す図である。
図10Bは、第2の方法において、ピストン復帰スイッチ70が押されている場合の電力経路を示す図である。
【0060】
電力経路制御部75は、例えば4つの端子A、端子B、端子C、端子Dを有する。端子Aは電力源40と接続されている。端子Bはピストン駆動力生成部24と接続されている。端子Cは制御部50に接続されている。端子Dはピストン制御回路53と接続されている。電力経路制御部75内では、ピストン復帰スイッチ70の操作の可否に関わらず、端子Aと端子Cが結線されている。
ピストン復帰スイッチ70は、第1スイッチ70a及び第2スイッチ70bを有する。ピストン復帰スイッチ70が操作されていない場合の電力経路は、
図10Aに示す通りである。この場合、ピストン復帰スイッチ70は操作されていないため、
図10Aに示すように、第1スイッチ70aは開状態であり、第2スイッチ70bは閉状態である。このとき、端子Aと端子Bとは接続されていない状態である。よって、電力源40は制御部50のみと接続され、ピストン駆動力生成部24は制御部50のみと接続される。そのため、ピストン駆動力生成部24は、制御部50に供給された電力を用いてピストン45を駆動するための駆動力を生成する。
【0061】
ピストン復帰スイッチ70が操作されている場合の電力経路は、
図10Bに示す通りである。この場合、ピストン復帰スイッチ70が操作されているため、
図10Bに示すように、第1スイッチ70aは閉状態であり、第2スイッチ70bは開状態である。このとき、電力経路制御部75内で端子Aと端子Bが接続されている。しかし、端子Bと端子Dとは接続されていない。
図10Bでは、電力源40は、制御部50だけでなく、ピストン駆動力生成部24にも接続される。よって、ピストン駆動力生成部24は電力源40と直接に接続される。そのため、ピストン駆動力生成部24は、制御部50からの電力によらず、電力源40からの電力に基づいてピストン45を駆動するための駆動力を生成することができる。
よって、第1の方法と同様の効果を得ることができる。
【0062】
つまり、ピストン復帰スイッチ70が操作されると、ピストン駆動力生成部24は電力源40からの電力の提供を直接に受ける。これにより、ピストン45の駆動力を生成することができる。よって、制御部50による制御が不能となった場合であっても、ピストン駆動力生成部24はピストン45の駆動力を生成することができる。そして、薬剤カートリッジ9内に挿入された状態のピストン45を、薬剤カートリッジ9内から引き出すことができる。また、ピストン復帰スイッチ70が操作された場合であっても、電力源40から制御部50に電力を供給する。制御部50がピストン駆動力生成部24を制御できないにしても、他の駆動部を制御できる場合もある。よって、ピストン復帰スイッチ70が操作された場合であっても、電力源40からピストン駆動力生成部24に直接に電力を供給してピストン45を駆動させつつ、制御部50に電力を供給して制御部50が制御可能な駆動部を動作させておくことができる。このときの、モータであるピストン駆動力生成部24の回転方向及び結線の極性は第1の方法と同様である。
図10Bでは、端子Bと端子Dとは接続されていないため、制御部50とピストン駆動力生成部24とは接続されていない。よって、ピストン駆動力生成部24は、制御部50が誤動作した場合であっても、制御部50からの誤った制御の影響を受けない。
【0063】
使用者によるピストン復帰スイッチ70の操作等は第1の方法と同様である。
なお、上記実施形態例の第1の方法及び第2の方法では、使用者は、ピストン45が薬剤カートリッジ9内から引き抜くためにピストン復帰スイッチ70を十分に長い時間押す。しかし、図示しない検知部が、ピストン45が薬剤カートリッジ9内から引きだされたことを検知してもよい。使用者は、この検知結果に基づいてピストン復帰スイッチ70の操作を停止することができる。
【0064】
[第3実施形態例]
第3実施形態例では、カートリッジホルダ11の駆動部31、制御部50及び電力源40等に不具合が生じた場合に、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出すための構成及び方法について説明する。
薬剤注入装置100の基本的構成は、第1実施形態例の
図1〜
図6で説明した構成と同様である。よって、第1実施形態例と異なる構成について以下に説明し、第1実施形態例と同様の構成については適宜説明を省略又は簡略化する。
カートリッジホルダ機構10は、
図3A、
図3B等に示すように、カートリッジホルダ11、注射針装着部13、支点部15、取出バネ17を含む。取出機構30は、駆動部31、係止受部本体32、係止受部33、駆動バネ34、操作部35を含む。以下に、第3実施形態例に係るカートリッジホルダ11及び注射針装着部13について説明する。
(1)カートリッジホルダ11
図11は、カートリッジホルダ11と注射針装着部13との接続部分の拡大前面断面図である。
図12は、注射針装着部13の外観斜視図である。 カートリッジホルダ11は、
図1、
図2に示すように、本体ケース1aの内部に収容可能な部材であり、本体ケース1aに対して開閉自在に設けられている。
【0065】
図1〜
図4、
図11に示すように、カートリッジホルダ11は、外壁部11aと、収容空間11bと、ホルダ係止部11cと、ホルダ側接続部11dを有する。
外壁部11aは、カートリッジホルダ11が閉じられて本体ケース1a内に収容された場合に、本体ケース1aの外表面と面一となる。
カートリッジホルダ11の収容空間11bは、例えば筒状の薬剤カートリッジ9を収容する空間である。なお、薬剤カートリッジ9内には、薬剤注入装置100により投与するための薬剤が封入されている。
ホルダ係止部11cは、取出機構30の係止受部33に係止する。カートリッジホルダ11が閉じられてホルダ係止部11cが係止受部33に係止することで、カートリッジホルダ11が本体ケース1a内に収容される。ここで、本体ケース1a内に収容されたカートリッジホルダ11は、取出バネ17によって開状態にする方向に付勢力を受けている。よって、ホルダ係止部11cは、取出バネ17の付勢力に抗して、カートリッジホルダ11を本体ケース1aに対して閉じた状態で保持する。ホルダ係止部11cは、係止受部33に係止可能なように、係止受部33側に突出するように形成されている。
【0066】
ホルダ側接続部11dは、注射針装着部13の第1接続部13aが接続される部分である。ホルダ側接続部11dはカートリッジホルダ11の端部に設けられている。ホルダ側接続部11dと第1接続部13aとの接続により、カートリッジホルダ11に注射針装着部13が固定されている。ホルダ側接続部11dは、カートリッジホルダ11の内壁に形成されている。ホルダ側接続部11dは、例えば樹脂材料のカートリッジホルダ11に、例えば金属製の注射針装着部13をインサート成型することによって、カートリッジホルダ11の内壁に形成される。
(2)注射針装着部13
図3A〜
図4、
図11、
図12等に示すように、注射針装着部13は、略円筒状の部材であり、注射針部8をカートリッジホルダ11に接続するための部材である。注射針装着部13はカートリッジホルダ11の下方部分、つまり端部に設けられている。注射針装着部13の上方からは薬剤カートリッジ9が挿入され、薬剤カートリッジ9の先端9a及び肩部9c(
図11)が注射針装着部13内に位置する。一方、注射針装着部13の下方からは注射針部8が挿入される。ここで、注射針部8は、針部8bの基部である注射針基部8aと、中空針の針部8bと、取付部材8cとを含む。取付部材8cは、注射針装着部13と注射針部8とを接続するための部材である。取付部材8cを注射針装着部13に取り付けると、針部8bが薬剤カートリッジ9の内部へ貫通し、薬剤カートリッジ9内の薬剤を投与することが可能となる。
【0067】
注射針装着部13は、第1接続部13a、第2接続部13b、凸部13c及び本体部13dを有する。第1接続部13a、本体部13d及び第2接続部13bは、針部8bの穿刺方向に沿って順に連結されている。凸部13cは、本体部13dの外面から突出するように、かつ第1接続部13aに隣接して形成されている。
また、円筒状の注射針装着部13の中央部には、
図11に示すように、貫通孔13−1が形成されている。貫通孔13−1は、第1接続部13aでの内径と、本体部13dの内径とが異なる。より具体的には、第1接続部13aの内径は、本体部13dの内径よりも大きい。第1接続部13aと本体部13dとの連結部分では、第1接続部13aから本体部13d方向に向かって徐々に内径が狭まる。
ここで、薬剤カートリッジ9は、
図11に示すように、先端9aと、薬剤カートリッジ本体9bと、肩部9cとを有する。先端9aは、薬剤カートリッジ9の先端部分であり、針部8bの先端が挿入される部分である。薬剤カートリッジ本体9bは、主として薬剤を保持する部分である。肩部9cは、先端9aと、薬剤カートリッジ本体9bとの間に設けられている。先端9aの外径は薬剤カートリッジ本体9bの外径よりも小さく、肩部9cにおいて薬剤カートリッジ本体9bから先端9aにかけて外径が狭まる。
よって、
図11に示すように、薬剤カートリッジ9は、その肩部9cが、内径が狭まる第1接続部13aと本体部13dとの連結部分において支持される。
【0068】
以下に各部の構成について説明する。
(2−1)本体部13d
本体部13dは、第1接続部13aと第2接続部13bとの間に設けられている。本体部13dの外径は、例えば、概ね第2接続部13bと同程度である。
前述の通り、円筒状の注射針装着部13の中央部には、貫通孔13−1が形成されている。よって、本体部13dは、概ね略円筒状に形成されており、
図11に示すように薬剤カートリッジ9の先端9aが貫通可能である。なお、前述の通り本体部13dの内径は第1接続部13aの内径より小さいため、本体部13dには薬剤カートリッジ9の先端9aのみが貫通する。
【0069】
(2−2)第1接続部13a
第1接続部13aは、
図12に示すように、第2接続部13bと反対側に、本体部13dに連結して形成される。また、第1接続部13aには、第2接続部13b側に凸部13cが形成されている。
第1接続部13aは、カートリッジホルダ11のホルダ側接続部11dと接続される。例えば、
図11に示すように、第1接続部13aの外面とホルダ側接続部11dとの内面とが接触した状態で、第1接続部13aとホルダ側接続部11dとが互いに嵌め合わさる。これにより、カートリッジホルダ11に注射針装着部13が固定される。
第1接続部13aの外径は、凸部13c、本体部13d及び第2接続部13bの外径よりも大きい。
【0070】
また、円筒状の注射針装着部13の中央部には、貫通孔13−1が形成されている。よって、第1接続部13aは、概ね略円筒状に形成されおり、
図11に示すように薬剤カートリッジ本体9bの端部及び先端9aが貫通可能である。なお、前述の通り第1接続部13aの内径は本体部13dの内径よりも大きいため、先端9aのみならず薬剤カートリッジ本体9bの端部も貫通する。
第1接続部13aは、例えば雄ネジ又は雌ネジで形成される。第1接続部13aが雄ネジである場合には、ホルダ側接続部11dは雌ネジである。一方、第1接続部13aが雌ネジである場合には、ホルダ側接続部11dは雄ネジである。
【0071】
(2−3)第2接続部13b
第2接続部13bは、
図12に示すように、第1接続部13aとは反対側に、本体部13dに連結して形成される。
第2接続部13bには、注射針部8が接続される。より具体的には、
図11に示すように、第2接続部13bを覆うように、円筒状の取付部材8cが第2接続部13bの外側に嵌め合わされる。
例えば、
図11に示すように第2接続部13bはネジで形成され、取付部材8cは円筒状に形成されており、第2接続部13bが取付部材8cの内壁に接触することで互いに接続される。あるいは、第2接続部13b及び取付部材8cがともにネジで形成されており、互いに嵌め合わさることで接続されてもよい。これにより、注射針装着部13の下方部分、つまり第2接続部13b側には、針部8b等を有する注射針部8が取り付けられる。
第2接続部13bは、概ね略円筒状に形成されている。よって、
図11に示すように、第2接続部13bの少なくとも一部において、薬剤カートリッジ9の先端9aが貫通可能である。
【0072】
(2−4)凸部13c
凸部13cは、本体部13dの外面から突出するように設けられている。言い換えれば、凸部13cは、本体部13dの径方向外側に向かって、本体部13dに対して突出するように形成されている。
また、凸部13cは、本体部13dにおいて第1接続部13aに隣接するように形成されている。つまり、凸部13cは、本体部13dのうち、第2接続部13b側よりも第1接続部13a側に形成されている。また、
図12では、凸部13cと第1接続部13aとは連結して形成されているが、凸部13c及び第1接続部13aが連動するならば互いに離隔していてもよい。
凸部13cは、第1接続部13aとホルダ側接続部11dとの接続を解放する際に、圧力の印加を受ける部分である。凸部13cには、工具又は手等により引っ張る又は回転させる等により圧力を印加することが可能である。
【0073】
ここで、ホルダ側接続部11dはカートリッジホルダ11の端部に設けられている。ホルダ側接続部11dに第1接続部13aを接続すると、凸部13cはカートリッジホルダ11の端部において突出する。よって、使用者は、カートリッジホルダ11の端部から突出している凸部13cに対して、工具又は手等により引っ張る又は回転させる等の操作をし易い。
また、凸部13cは、概ね略円筒状に形成されており、
図11に示すように薬剤カートリッジ9の先端9aが貫通可能である。なお、前述の通り本体部13dの内径(凸部13cの内径でもある)は第1接続部13aの内径より小さいため、凸部13cには薬剤カートリッジ9の先端9aのみが貫通する。
さらに、凸部13cの外径は、第1接続部13aの外径より小さく、第2接続部13b及び本体部13dの外径より大きい。
【0074】
凸部13cは、
図12に示すように、注射針部8の針部8bの穿刺方向から見た外形が、概ね正六角形状に形成されている。なお、凸部13cの形状は正六角形状に限定されない。凸部13cは、例えば、二角形、三角形、四角形、五角形、六角形より辺の多い多角形を含む多角形状であってもよい。例えば、正六角形及び多角形の対向する2片を工具又は手等により把持することにより、凸部13cを引っ張る又は回転させるなどの操作を容易にすることができる。
また、凸部13cは、本体部13dから1辺の突起が突出するように形成されていてもよい。ただし、凸部13cは工具又は手等により容易に把持又は操作できるように、概ね平行に対向する2辺を有する多角形であるのが好ましい。
なお、工具としてレンチ及びスパナなどの締結工具が挙げられる。例えば、凸部13cは、市販のレンチにより容易に操作可能なように、既存の正六角レンチが噛み合う正六角形状に形成されている。スパナとは、例えば先端が開放されており、凸部13cの2端を把持することで締結又は解放を行うための工具である。また、レンチとは、概ねリング状であり、凸部13cに嵌め合わすことで締結又は解放を行うための工具である。
【0075】
ここで、注射針装着部13において、前述の第1接続部13a、第2接続部13b、凸部13c及び本体部13dは一体に形成されていてもよい。この場合、注射針部8を注射針装着部13に取り付けた場合のがたつきを抑制することができる。また、第1接続部13a、第2接続部13b、凸部13c及び本体部13dが別体である場合に比べて、注射針装着部13の製造が容易である。
【0076】
(3)薬剤カートリッジ9の取り出し手順
通常、使用者は、薬剤カートリッジ9を交換する際に、所定のボタン等を操作する。これにより、駆動部31が駆動してカートリッジホルダ11を開状態とする。使用者は、開状態となったカートリッジホルダ11から使用済みの薬剤カートリッジ9を取り出し、新たな薬剤カートリッジ9をカートリッジホルダ11に挿入する。
ここで、カートリッジホルダ11を開状態とする駆動部31に不具合が生じたり、駆動部31の制御部50及び駆動部31に電力を供給する電力源40に不具合が生じる場合がある。このような場合、前述のように駆動部31によりカートリッジホルダ11を開状態とすることができず、薬剤カートリッジ9を取り出すことができない。
そこで、使用者は、工具又は手等により引っ張る又は回転させる等の圧力を凸部13cに印加して、注射針装着部13をカートリッジホルダ11から引き離す。次に、使用者は、注射針装着部13が取り外されたカートリッジホルダ11から、工具又は手等を用いて薬剤カートリッジ9を取り出す。つまり、カートリッジホルダ11の駆動部31、制御部50及び電力源40等に不具合が生じた場合であっても、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出すことができる。
【0077】
以下に手順を具体的に説明する。
図13A〜
図13Cは、注射針装着部13を本体ケース1aから取り外す工程の一例を順に示す図である。
まず、
図13Aに示すように、使用者は、本体ケース1aからキャップ部1bを取り外す。注射針装着部13は、注射針装着部13の第1接続部13aとカートリッジホルダ11のホルダ側接続部11dとが接続されることで、カートリッジホルダ11に固定されている。このとき、第1接続部13aがカートリッジホルダ11内に接続されるため、凸部13c及び第2接続部13bはカートリッジホルダ11の端部から突出している。
次に、
図13Bに示すように、使用者は、注射針装着部13の凸部13cに例えばレンチ90を適用して、第1接続部13aとホルダ側接続部11dとの締結を解放する方向に回転させる。ここでは、リング状のレンチ90を凸部13cに適用しているが、前述の通り工具はレンチ90に限定されない。例えば、使用者は、凸部13cを手で回転させてもよい。
【0078】
レンチ90による凸部13cの回転により、第1接続部13aとホルダ側接続部11dとの接続が外れて注射針装着部13が回転する。これにより、
図13Cに示すように注射針装着部13が本体ケース1aから取り外される。
ここで、薬剤カートリッジ9の先端9aは、
図11に示すようにカートリッジホルダ11から突出している。よって、注射針装着部13がカートリッジホルダ11から取り外された際に、カートリッジホルダ11端部から薬剤カートリッジ9の先端9aが露出する。この場合、使用者は、工具又は手等を用いて、露出している薬剤カートリッジ9の先端9aを把持してカートリッジホルダ11から取り出すことができる。
一方、注射針装着部13がカートリッジホルダ11から取り外された際に、カートリッジホルダ11内部に薬剤カートリッジ9が収容されている場合がある。この場合、使用者は、細い工具をカートリッジホルダ11内に挿入し、薬剤カートリッジ9の先端9aを把持してカートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出すことができる。
【0079】
ここで、前述のように、注射針装着部13の中央部には、
図11に示すように薬剤カートリッジ9の先端9aが貫通可能な貫通孔13−1が設けられている。薬剤カートリッジ9は、注射針装着部13がカートリッジホルダ11の先端に装着された後、カートリッジホルダ11の下方、つまり先端に押し出される。これにより、薬剤カートリッジ9の先端9aは、注射針装着部13の貫通孔13−1を通過する。
このとき、注射針装着部13がカートリッジホルダ11から取り外されると、薬剤カートリッジ9は、貫通孔13−1を貫通していた分だけ、カートリッジホルダ11から突出している。よって、使用者は、突出している薬剤カートリッジ9の先端9aを工具又は手等で把持することにより、薬剤カートリッジ9をカートリッジホルダ11から取り出すことができる。
【0080】
また、前述の通り、凸部13cは、本体部13dのうち、第2接続部13b側よりも、カートリッジホルダ11と接続されている第1接続部13a側に形成されている。つまり、第2接続部13bよりも、カートリッジホルダ11と注射針装着部13との接続部分に近い部分に凸部13cが設けられている。そのため、凸部13cに圧力を印加した場合、カートリッジホルダ11と注射針装着部13との接続を解放する力が凸部13cを介して接続部分に伝達されやすい。これにより、使用者は、凸部13cに圧力を印加することにより、注射針装着部13をカートリッジホルダ11から容易に引き離すことができる。
また、前述の通り、凸部13cの外径が第1接続部13aの外径より小さいため、注射針装着部13をカートリッジホルダ11に接続する際に凸部13cが邪魔になりにくい。また、凸部13cの外径が第2接続部13bの外径よりも大きい。よって、注射針装着部13をカートリッジホルダ11から引き離す際に第2接続部13bが障害とならず、使用者は、第2接続部13b側から工具又は手等により凸部13cを操作しやすい。
【0081】
(4)変形例
(4−1)
上記第3実施形態においては、突出部35a及び突出部載置部35bを有する操作部35が設けられている。さらに、上記実施形態の注射針装着部13には、凸部13cが設けられている。しかし、操作部35は必ずしも設けられている必要は無い。
つまり、薬剤注入装置100には、駆動部31等に不具合が生じてカートリッジホルダ11を開状態にできない場合に備えて、凸部13cを有する注射針装着部13のみが設けられていてもよい。これにより、少なくとも、凸部13cを操作して注射針装着部13をカートリッジホルダ11から取り外し、カートリッジホルダ11内から薬剤カートリッジ9を取り出すことができる。
【0082】
ただし、凸部13cに加えて操作部35が設けられている場合には、使用者は、薬剤カートリッジ9を取り出すための操作を選択的に行うことができる。
つまり、第1に、使用者は、操作部35を操作してカートリッジホルダ11を開状態にし、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出してもよい。
第2に、使用者は、カートリッジホルダ11から注射針装着部13を取り外し、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出してもよい。
例えば、薬剤カートリッジ9がカートリッジホルダ11に挿入されているためカートリッジホルダ11を開くことができない場合がある。この場合には、使用者は、注射針装着部13を取り外してカートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出す。一方、薬剤カートリッジ9がカートリッジホルダ11に挿入されておらず、カートリッジホルダ11を開くことができる場合がある。この場合には、使用者は、操作部35を操作してカートリッジホルダ11を開状態にし、カートリッジホルダ11から薬剤カートリッジ9を取り出す。
【0083】
(4−2)
上記第3実施形態では、注射針装着部13の中央部には、
図11に示すように薬剤カートリッジ9が貫通可能な貫通孔13−1が設けられている。しかし、注射針装着部13の貫通孔13−1は、少なくとも注射針部8の針部8bが貫通可能な大きさであればよい。この場合、薬剤カートリッジ9の先端9aはカートリッジホルダ11の端部から突出しない。つまり、注射針装着部13をカートリッジホルダ11から取り外した場合であっても、薬剤カートリッジ9の先端9aはカートリッジホルダ11の端部から露出しない。この場合、使用者は、カートリッジホルダ11内に位置する薬剤カートリッジ9の先端9aを細い工具等で把持して、カートリッジホルダ11から取り出す。