(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261726
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】光学繊維を用いた光増幅器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/067 20060101AFI20180104BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-516458(P2016-516458)
(86)(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公表番号】特表2016-520262(P2016-520262A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】KR2014004868
(87)【国際公開番号】WO2014193197
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2015年11月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0062753
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0106034
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507373508
【氏名又は名称】クヮンジュ・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114720
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】シン ウジン
【審査官】
島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−228194(JP,A)
【文献】
特開平11−087811(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0262416(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0156818(US,A1)
【文献】
特開平04−283731(JP,A)
【文献】
特開平11−087824(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第2000−0027961(KR,A)
【文献】
特開2005−322696(JP,A)
【文献】
特開平06−112576(JP,A)
【文献】
特開平03−109785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S3/00−3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エルビウムとツリウムが同時に添加された単一モード光学繊維と、
前記光学繊維内の希土類イオンを励起(excitation)させるポンピング光を生成するポンピング光源と、
前記光学繊維の両端に具備され、励起された希土類イオンから発生した一定波長帯域の光を全反射する第1光学繊維格子及び第2光学繊維格子と、
前記光学繊維と連結されて光源から生成された2μm波長帯域の光信号と前記ポンピング光源から出力された980nm波長帯域の前記ポンピング光とを前記光学繊維に伝達する光結合器と、を含み、
前記励起されたエルビウムイオンから発生した1560nm波長帯域の光は、前記第1光学繊維格子及び前記第2光学繊維格子によって全反射されながら前記光学繊維内に拘束されて、前記光学繊維内のツリウムイオンを励起させて前記光信号と同じ2μm波長帯域の光を生成し、
前記光学繊維では、2μm波長帯域の光信号を増幅するために、前記エルビウムとツリウムのドーピング割合を1:5とすることを特徴とする光学繊維を用いた光増幅器。
【請求項2】
前記光源から生成された光信号は、1800〜2100nm波長帯域であることを特徴とする、請求項1に記載の光学繊維を用いた光増幅器。
【請求項3】
前記エルビウムのドーピング濃度は、1000ppmであり、前記ツリウムのドーピング濃度は、5000ppmであることを特徴とする、請求項2に記載の光学繊維を用いた光増幅器。
【請求項4】
前記光源から生成された光信号は、1800〜2100nm波長帯域であり、前記第1光学繊維格子及び前記第2光学繊維格子は、1550〜1610nm波長帯域で特定波長の光を全反射することを特徴とする、請求項1に記載の光学繊維を用いた光増幅器。
【請求項5】
前記光源から生成された光信号は、1800〜2100nm波長帯域であり、前記ポンピング光源は、970〜990nm波長帯域のポンピング光を生成することを特徴とする、請求項1に記載の光学繊維を用いた光増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学繊維を用いた光増幅器に関する。さらに詳細には、本発明は、複数の希土類元素を同時に添加した光学繊維を用いた光増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、2μm帯域のレーザー技術が多様な応用性の出現のため活発に研究されている。このうち、ツリウム添加光学繊維は、従来の光学繊維レーザーの優れた光学的特性と2μm帯域の光信号の発生が可能な特徴により現在活発に研究されている分野である。
【0003】
ツリウム添加光学繊維を用いて光学繊維レーザーを製作する場合、希望する大きさの光信号を獲得するためにツリウム添加光学繊維を用いた多段の光学繊維増幅器が必要である。このようなツリウム添加光学繊維増幅器を具現するためには増幅媒質とポンプ光源が要求される。ツリウム添加光学繊維を用いて2μm帯域の光信号の発生及び増幅のためには800nm帯域のポンプ光源あるいは1560nm帯域のポンプ光源が使用される。
【0004】
図1は、従来の2μm帯域の低出力光信号増幅のための構造を図示した図である。
【0005】
図1においては、2μm帯域の入力光信号に対して単一モードツリウム添加光学繊維とエルビウム添加光学繊維を用いて光学繊維増幅器を具現した。
【0006】
高出力増幅器の場合、800nm帯域の多重モード形態の高出力レーザーダイオードを使用して光学繊維クラッドポンピング方式の構造で具現が可能である。小さい大きさの信号を増幅する低出力増幅器の場合には、光学繊維コアポンピング方式を用いて具現すべきであるが、このための800nm帯域の高出力単一モードレーザーダイオードと関連する光結合素子の不在により具現が不可能である。
【0007】
このような問題点を解決するために
図1に図示したようにエルビウム添加光学繊維を用いた1560nm帯域のエルビウムレーザーと単一モードツリウム添加光学繊維を用いて低出力コアポンピング方式の光増幅器を具現している。
【0008】
しかし、このような構造は、ポンピング光源のためにエルビウム添加光学繊維を用いなければならないため、構造が複雑であり、製作費用が多く要求されるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前記のような問題点を解決するために、複数の希土類元素が同時に添加された光学繊維を用いて簡単な構造で光信号を増幅させることができる光学繊維を用いた光増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明は、
エルビウムとツリウムが同時に添加された単一モード光学繊維と、前記光学繊維内の希土類イオンを励起(excitation)させるポンピング光を生成するポンピング光源と、前記光学繊維の両端に具備され、励起された希土類イオンから発生した一定波長帯域の光を全反射する第1光学繊維格子及び第2光学繊維格子と、前記光学繊維と連結されて光源から生成された
2μm波長帯域の光信号と前記ポンピング光源から出力された
980nm波長帯域の前記ポンピング光とを前記光学繊維に伝達する光結合器と、を含み、前記励起された
エルビウムイオンから発生した
1560nm波長帯域の光は、前記第1光学繊維格子及び前記第2光学繊維格子によって
全反射されながら前記光学繊維内に拘束されて、前記光学繊維内の
ツリウムイオンを励起させて前記光信号と同じ
2μm波長
帯域の光を生成
し、前記光学繊維では、2μm波長帯域の光信号を増幅するために、前記エルビウムとツリウムのドーピング割合を1:5とすることを特徴とする光学繊維を用いた光増幅器を提供する。
【0012】
前記光源から生成された光信号は、1800~2100nm波長帯域であ
り得る。
【0013】
前記エルビウムのドーピング濃度は1000ppmであり、前記ツリウムのドーピング濃度は
5000ppmであり得る。
【0014】
前記光源から生成された光信号は1800〜2100nm波長帯域であり、前記第1光学繊維格子及び前記第2光学繊維格子は1550〜1610nm波長帯域で特定波長の光を全反射することができる。
【0015】
前記光源から生成された光信号は1800〜2100nm波長帯域であり、前記ポンピング光源は970〜990n
m波長帯域のポンピング光を生成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学繊維を用いた光増幅器によると、複数の希土類元素が添加された光学繊維を用いた簡単な構成で効果的な光信号の増幅が可能である。
【0017】
特に、2μm波長帯域の光信号を簡単で効果的に増幅させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、従来の2μm波長帯域の低出力光信号増幅のための構造を図示した図である。
【
図2】
図2は、本発明において提案するツリウムとエルビウムが添加された光学繊維を用いて具現した光増幅器を図示した図である。
【
図3】
図3は、ツリウムとエルビウムが同時に添加された光学繊維を用いて2μm波長帯域の光信号が増幅される原理を図示した図である。
【
図4】
図4は、エルビウムイオンの濃度が高い場合、エルビウム−ツリウム同時添加光学繊維の蛍光特性を示したグラフである。
【
図5】
図5は、ツリウムイオンの濃度が高い場合、エルビウム−ツリウム同時添加光学繊維の蛍光特性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例を添付された図面を参照して詳しく説明する。まず、各図面の構成要素に参照符号を付加することにおいて、同一な構成要素に対しては、たとえ、他の図面上に表示されていてもできる限り同一な符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、以下で本発明の好ましい実施例を説明するが、本発明の技術的思想はこれに限定されたり制限されず、当業者により変形されて多様に実施されることができることは勿論である。
【0020】
図2は、本発明において提案するツリウムとエルビウムが添加された光学繊維を用いて具現した光増幅器を図示した図である。
【0021】
本発明による光増幅器(20)は、光源(10)から出力された光信号の入力を受けて増幅して出力するものとして、光増幅器(20)の入力端には第1光アイソレータ(12)が具備され、光増幅器(20)の出力端には第2光アイソレータ(14)が具備されて光の進行方向を光源(10)から光増幅器(20)の方向に制限することができる。
【0022】
図2を参照すると、本発明の一実施例による光増幅器(20)は、ツリウムとエルビウムが同時に添加された単一モード光学繊維(22)と、前記光学繊維(22)の両端に具備された第1光学繊維格子(24)及び第2光学繊維格子(30)と、光を増幅させるためのポンピング光を生成するポンピング光源(26)と、ポンピング光源から出力されたポンピング光を光学繊維(22)に伝達するための光結合器(28)とを含む。
【0023】
光学繊維(22)は、複数の希土類元素が同時に添加される。増幅させようとする光信号の波長帯域により希土類元素の種類は変わってもよい。本実施例においては、2μm波長帯域の光信号を効果的に増幅させるためにツリウム(thulium)及びエルビウム(erbium)が同時にドーピング(doping)された光学繊維(22)を使用した。
【0024】
第1光学繊維格子(24)及び第2光学繊維格子(30)は、光学繊維ブラッグ格子(Bragg‘s grating)として設けられ、光学繊維(22)の両端に設けられて一定波長帯域の光を全反射する。本実施例において第1光学繊維格子(24)及び第2光学繊維格子(30)は、1560nm波長帯域の光を全反射して光学繊維(22)を間に置いて共振させる。
【0025】
ポンピング光源(26)は、光学繊維(22)内の希土類イオンを励起(excitation)させるポンピング光を生成する。本実施例において、ポンピング光源(26)は、980nm波長帯域のポンピング光を生成して光結合器(28)により光学繊維(22)に伝達することによって光学繊維(22)内のエルビウムイオンのエネルギーを活性化させる。
【0026】
光結合器(28)は、光学繊維(22)と連結されて光源(10)から生成された光信号とポンピング光源(26)から出力されたポンピング光とを結合して光学繊維(22)に伝達する。
【0027】
このような構成を有する光増幅器(20)の作用に対して説明すると、次のようである。
【0028】
先に、
図2に図示されたように、光源(10)から入力された2μm波長帯域の光信号をツリウムとエルビウムが同時に添加された単一モード光学繊維(22)に入射させる。光信号の進行方向は、第1光アイソレータ(12)及び第2光アイソレータ(14)により光源(10)から光増幅器(20)方向に制限される。
【0029】
光結合器(28)は、光源(10)から入力された2μm波長帯域の光信号とポンピング光源(26)から生成された980nm波長帯域のポンピング光とを光学繊維(22)に伝達する。
【0030】
図3は、ツリウムとエルビウムが同時に添加された光学繊維を用いて2μm波長帯域の光信号が増幅される原理を図示した図である。
【0031】
図2及び
図3を参照すると、光学繊維(22)内に伝達された980nm波長帯域のポンピング光は、光学繊維(22)内にエルビウムイオンのエネルギーを活性化させ、励起されたエルビウムイオンにおいては1560nm波長帯域の光が発生する。
【0032】
エルビウムイオンから発生された1560nm波長帯域の光は、光学繊維(22)の両端に設けられる第1光学繊維格子(24)及び第2光学繊維格子(30)により全反射され、光学繊維(22)を間に置いて1560nm波長帯域の光が共振する。
【0033】
光学繊維(22)を間に置いて共振する1560nm波長帯域の光は、光学繊維(22)内のツリウムイオンを励起させ、活性化されたツリウムイオンから2μm波長帯域の光が発生されることにより、光源(10)から入力された2μm帯域の光信号が増幅される。
【0034】
このような構造は、従来の方式より非常に簡単で効果的に2μm帯域の光信号の増幅が可能である。また、現在、商用化が多くなされている1560nm帯域の光素子を用いることができるため、経済的なレーザーの開発が可能な効果がある。
【0035】
本実施例において光学繊維(22)は、エルビウムとツリウムが同時に添加されて2μm帯域の光信号を増幅させるが、この時、エルビウムとツリウムの添加の割合により増幅される光信号の波長帯域が変わり得る。以下においてはこれに対してより詳しく説明する。
【0036】
図4は、エルビウムイオンの濃度が高い場合、エルビウム−ツリウム同時添加光学繊維の蛍光特性を示したグラフであり、
図5は、ツリウムイオンの濃度が高い場合、エルビウム−ツリウム同時添加光学繊維の蛍光特性を示したグラフである。
【0037】
図4は、光学繊維(22)においてエルビウム:ツリウムのドーピングの割合が1:1(500ppm:500ppm)であり、
図5は、光学繊維(22)においてエルビウム:ツリウムのドーピングの割合が1:5(1000ppm:5000ppm)である時、光学繊維(22)の蛍光特性を示したグラフである。
【0038】
図4を参照すると、光学繊維(22)において、エルビウム:ツリウムのドーピングの割合が1:1(500ppm:500ppm)の場合、エルビウムによる強い蛍光(
図4のAグラフ)が現れ、相対的にツリウムによる蛍光(
図4のBグラフ)は1800nm波長帯域から現れる。
【0039】
図5を参照すると、光学繊維(22)において、エルビウム:ツリウムのドーピングの割合が1:5(1000ppm:5000ppm)の場合、エルビウムによる蛍光(
図5のAグラフ)は相対的に小さく現れ、ツリウムによる蛍光(
図5のBグラフ)が2μmの長波長帯域から強く現れて1450nm波長帯域でも現れる。
【0040】
上のような実験結果により、光源(10)から発生される光信号の波長によりエルビウムとツリウムとのドーピングの割合を相対的に決めることができる。
【0041】
本実施例においては、2μm波長帯域の光信号を増幅するためにエルビウムとツリウムが同時にドーピングされた光学繊維(22)を使用したため、前記のような実験結果によってエルビウム:ツリウムのドーピングの割合は1:5の比率を使用したが、ドーピングの濃度は、エルビウムは1000ppm、ツリウムは5000ppmで形成することが好ましい。しかし、本発明の権利範囲はこれに制限される必要はなく、エルビウムとツリウムとのドーピングの割合は1:2〜1:10の範囲においても2μm波長帯域の光信号を増幅することに効果がある。
【0042】
前述した実施例においては、2μm波長帯域の光信号を増幅したが、本発明の権利範囲がこれに制限される必要はなく、本発明の光学繊維を用いた光増幅器(20)は、1800〜2100nm波長帯域の光信号を増幅することに使用され得る。
【0043】
また、前述した実施例において、ポンピング光源(26)は、980nm(970~990nm範囲)波長帯域のポンピング光を生成して光学繊維(22)内のエルビウムイオンのエネルギーを活性化させたが、本発明の権利範囲はこれに制限される必要はなく、ポンピング光源(26)は、1480nm(1470~1490nm範囲)波長帯域のポンピング光を生成して光学繊維(22)内のエルビウムイオンのエネルギーを活性化させることもできる。この時、光学繊維(22)内に伝達された1480nm波長帯域のポンピング光は、光学繊維(22)内にエルビウムイオンのエネルギーを活性化させ、励起されたエルビウムイオンにおいては1610nm波長帯域の光が発生する。これにより第1光学繊維格子(24)及び第2光学繊維格子(30)は、エルビウムイオンから発生された1610nm波長帯域の光を全反射させて光学繊維(22)を間に置いて1610nm波長帯域の光が共振するように構成され得る。
【0044】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者であれば、本発明の本質的な特性から脱しない範囲内で多様な 修正、変更及び置換が可能である。従って、本発明に開示された実施例及び添付された図面などは、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例及び添付された図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、下記の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にあるすべての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0045】
10 光源
12 第1光アイソレータ
14 第2光アイソレータ
20 光増幅器
22 光学繊維
24 第1光学繊維格子
26 ポンピング光源
28 光結合器
30 第2光学繊維格子