特許第6261773号(P6261773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261773
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20180104BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20180104BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
   F16H57/04 N
   F16H57/04 D
   F16H57/04 J
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-569151(P2016-569151)
(86)(22)【出願日】2015年1月13日
(86)【国際出願番号】JP2015050675
(87)【国際公開番号】WO2016113847
(87)【国際公開日】20160721
【審査請求日】2017年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 優
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−91098(JP,A)
【文献】 実開昭60−129545(JP,U)
【文献】 特開2013−92217(JP,A)
【文献】 特開平07−18280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車の内側に同軸に配置されているカップ形状をした可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車の内側に装着され、当該外歯歯車を非円形に撓めて前記内歯歯車に対して部分的にかみ合わせている波動発生器と、
前記外歯歯車と前記波動発生器によって囲まれる区画部に入れた潤滑性粉体と、
前記区画部内において前記波動発生器と一体回転して、前記波動発生器の内部接触部および前記波動発生器と前記外歯歯車の間の接触部に向かう方向に、前記潤滑性粉体を導く第1粉体ガイドと、
前記波動発生器と一体回転して、前記区画部から前記波動発生器を通り抜けて移動する前記潤滑性粉体を、前記外歯歯車および前記内歯歯車の歯面部に向かう方向に導く第2粉体ガイドと、
を有していることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
前記波動発生器は、前記区画部に面する内側端面部分を備え、
前記第1粉体ガイドは、前記内側端面部分に固定された固定部と、装置中心軸線の方向に同軸に延びる筒状胴部とを備え、
前記筒状胴部は、前記装置中心軸線の方向の両端が開口し、前記内側端面部分に接近するに連れて半径方向の外方に広がる円錐台形状をしており、
前記筒状胴部の内周面および外周面のそれぞれは、少なくとも一部分が、前記区画部内の前記潤滑性粉体に接触している、
請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項3】
前記筒状胴部の前記円錐台形状の頂角が、10deg〜30degまでの範囲内の角度となるように規定されている請求項2に記載の波動歯車装置。
【請求項4】
前記筒状胴部の外周表面には複数の凹部あるいは複数の凸部が形成されている請求項2に記載の波動歯車装置。
【請求項5】
前記波動発生器は、剛性のプラグと、当該プラグの非円形輪郭をしたプラグ外周面に装着した波動発生器軸受けとを備え、
前記波動発生器の前記内部接触部は前記波動発生器軸受けの構成部品の間の接触部分であり、
前記第2粉体ガイドは前記プラグに同軸に固定した円板状の部材であり、
前記第2粉体ガイドは、前記波動発生器軸受けの軌道部に対して、装置中心軸線の方向において前記区画部とは反対側から対峙している外周側部分と、前記プラグに固定された内周側部分とを備えている
請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項6】
前記内歯歯車が固定される固定側部材を有し、
前記装置中心軸線の方向において、前記固定側部材に形成した円環状端面と前記波動発生器軸受けとの間に、前記第2粉体ガイドの前記外周側部分が位置し、
前記外周側部分は、前記円環状端面に摺動可能な状態で接している、
請求項5に記載の波動歯車装置。
【請求項7】
前記区画部内に配置した潤滑性粉体除湿用のヒーターを有している請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項8】
前記内部接触部、前記接触部および前記歯面部を除き、前記潤滑性粉体に晒される表面部分の少なくとも一部は、粉体付着防止コーティングが施されている請求項1に記載の波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に充填した潤滑性粉体によって各部分が潤滑される波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置の多くは、オイルおよびグリースで潤滑している。特許文献1に開示の波動歯車装置では、潤滑が必要な部分に対して、グリース溜まりからグリースを供給する機構を備えている。特許文献2に記載の波動歯車装置では、カップ形状の外歯歯車の内部に、外歯歯車と一体回転するオイルタンクを配置し、潤滑が必要な部分に対して、遠心力を利用してオイルタンクからオイルを供給している。特許文献3に開示の動力伝達装置においては、摺動部材間の摩擦・摩耗を低減するために、摺動面を所定の表面粗さの面とし、当該摺動面を炭素系皮膜で覆い、さらに、炭素系皮膜で覆われた摺動面の間をグリース潤滑している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−92217号公報
【特許文献2】特開2011−64304号公報
【特許文献3】特開2009−41747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
波動歯車装置は一般に減速機として用いられ、波動発生器がモーター等によって高速回転する。波動発生器における外歯歯車との接触部分、および、波動発生器内部の接触部分を、オイルあるいはグリースで潤滑すると、高速回転する波動発生器による粘性抵抗ロスが大きくなる。このため、波動歯車装置における低負荷域、高速回転域での効率が低下する。
【0005】
本発明者は、このような課題を解決するために、潤滑剤として潤滑性の微小粉体を用いることにより、低負荷域、高速回転域での効率を大幅に向上させることが可能な波動歯車装置を提案している。
【0006】
微小粉体を用いた波動歯車装置においては、波動歯車装置の運転時の姿勢が異なると、あるいは運転時に波動歯車装置の姿勢が変化すると、微小粉体による各部分の潤滑を維持することができないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、運転時の姿勢の如何に拘わりなく、微小粉体による潤滑性能を維持することのできる機構を備えた波動歯車装置を提供することにある。
【0008】
具体的には、本発明の課題は、微小粉体を潤滑部分に確実に供給可能な機構を備えた波動歯車装置を提供することにある。また、本発明の課題は、吸湿による微小粉体の凝集、潤滑性能の低下を防止あるいは抑制可能な機構を備えた波動歯車装置を提供することにある。さらに、本発明の課題は、微小粉体が潤滑部分以外の部分に付着することを防止あるいは抑制可能な機構を備えた波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車装置は、
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車の内側に同軸に配置されているカップ形状をした可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車の内側に装着され、当該外歯歯車を非円形に撓めて前記内歯歯車に対して部分的にかみ合わせている波動発生器と、
前記外歯歯車と前記波動発生器によって囲まれる区画部に入れた潤滑性粉体と、
前記区画部内において前記波動発生器と一体回転して、前記波動発生器の内部接触部および前記波動発生器と前記外歯歯車の間の接触部に向かう方向に、前記潤滑性粉体を導く第1粉体ガイドと、
前記波動発生器と一体回転して、前記区画部から前記波動発生器を通り抜けて移動する前記潤滑性粉体を、前記外歯歯車および前記内歯歯車の歯面部に向かう方向に導く第2粉体ガイドと、
を有していることを特徴としている。
【0010】
波動歯車装置の運転時には、潤滑性粉体に接触した状態で第1粉体ガイドが波動発生器と一体回転する。回転する第1粉体ガイドによって潤滑性粉体が流動して、第1潤滑部分(波動発生器の内部接触部)および第2潤滑部分(波動発生器と外歯歯車の接触部)に向かう方向に潤滑性粉体がガイドされる。これにより、これらの潤滑部分に確実に潤滑性粉体が供給される。また、これらの潤滑部分に供給された潤滑性粉体の一部は、これらの潤滑部分を通り抜けて、第2粉体ガイドの側に移動する。第2粉体ガイドは波動発生器と一体回転しており、波動発生器を通り抜けた潤滑性粉体は遠心力によって第2粉体ガイドに沿って外周側に移動して第3潤滑部分(外歯歯車と内歯歯車の歯面部)に向けてガイドされる。したがって、区画部内において波動歯車装置の姿勢に応じて重力方向の下側となる部分に溜まる潤滑性粉体を、重力に逆らって、各潤滑部分に確実に供給できる。
【0011】
ここで、前記第1粉体ガイドは、前記波動発生器における前記区画部に面する内側端面部分に固定された固定部と、装置中心軸線の方向に同軸に延びる筒状胴部とを備え、前記筒状胴部は、前記装置中心軸線の方向の両端が開口し、前記内側端面部分に接近するに連れて半径方向の外方に広がる円錐台形状をしており、前記筒状胴部の内周面および外周面のそれぞれは、少なくとも一部分が、前記区画部内の前記潤滑性粉体に接触していることが望ましい。
【0012】
円錐台形状をした筒状胴部が回転すると、その遠心力により筒状胴部の内周面に沿って潤滑性粉体が第1、第2潤滑部分に向けて移動する。また、筒状胴部の外周面に沿ってその円周方向に潤滑性粉体が流動し、当該外周面と、この外周側に位置する外歯歯車の内周面との間の速度差によって、流動する潤滑性粉体は外歯歯車の内周面に沿って第1、第2潤滑部分に向けて移動する。したがって、潤滑性粉体を確実に第1、第2潤滑部分に供給できる。
【0013】
第1粉体ガイドに円錐台形状をした筒状胴部が備わっている場合には、頂角が10deg〜30degまでの範囲内の角度となるように、前記筒状胴部の前記円錐台形状を規定することが望ましい。10deg以上とする理由は、見かけ比重の小さな微小な潤滑性粉体を、遠心力により円錐状の内周面に沿って確実に移動させることができるようにするためである。また、30deg以下とする理由は、微小な潤滑性粉体の安息角より、静止状態において、重力により筒状胴部の円錐状の内周面に沿って潤滑性粉体が滑り落ちることができるからである。
【0014】
また、前記筒状胴部の外周表面には複数の凹部あるいは複数の凸部が形成されていることが望ましい。例えば、外周表面に、円周方向に所定のピッチで浅い溝を付けることにより、この外周面と外歯歯車の内周面との間に形成される潤滑性粉体の流動を強くすることができる。
【0015】
一方、前記波動発生器は、一般に、剛性のプラグと、当該プラグの非円形輪郭をしたプラグ外周面に装着した波動発生器軸受けとが備わっている。前記第1潤滑部分(前記波動発生器の前記内部接触部)は、前記波動発生器軸受けの構成部品の間の接触部分である。この場合には、前記第2粉体ガイドとして、前記プラグに同軸に固定した円板状の部材を用いることができる。この形状の前記第2粉体ガイドは、前記波動発生器軸受けに対して、前記装置中心軸線の方向において前記区画部とは反対側から対峙している外周側のガイド板部分と、前記プラグに固定された内周側の固定板部分とが備わっていればよい。
【0016】
この場合には、前記装置中心軸線の方向において、前記内歯歯車が固定される固定側部材に形成した円環状端面と前記波動発生器軸受けとの間に、前記第2粉体ガイドの前記ガイド板部分を配置し、前記ガイド板部分の一部を、前記円環状端面に摺動可能な状態で接触させておくことが望ましい。このようにすれば、外部に潤滑性粉体が漏れ出ることを抑制できる。例えば、波動発生器にモーター回転軸等の入力シャフトが連結されている場合に、入力シャフト側に潤滑性粉体が侵入してしまうことを抑制できる。
【0017】
次に、本発明の波動歯車装置において、潤滑性粉体が吸湿により凝集すること、および、吸湿により潤滑性能が低下することを防止あるいは抑制できるように、潤滑性粉体を貯める前記区画部内に、潤滑性粉体除湿用のヒーターを配置しておくことが望ましい。
【0018】
また、前記内部接触部、前記接触部および前記歯面部を除き、前記潤滑性粉体に晒される表面部分の少なくとも一部は、粉体付着防止コーティングで覆われていることが望ましい。
【0019】
なお、本発明における前記潤滑性粉体は、層状の結晶構造を持つ所定粒径および所定硬さの無機系の潤滑性粉体である。潤滑性粉体は、波動歯車装置の運転時に、各接触面の間で押しつぶされ、接触部分を形成している双方の接触面に移着して薄い表面膜を形成する。また、薄く圧延され、さらに細分化されて接触部分の内部(接触面の間)に進入しやすい形状に変化する。
【0020】
このように形状変化した微粉末と、双方の接触面に形成された薄い表面膜とによって、接触部の潤滑が維持される。また、接触面に移着した薄い表面膜および圧延され細分化された微粉末も粘性が無いので、波動歯車装置の低負荷域および高速回転域での高効率を実現できる。さらに、このように運転条件による効率変化が少なくなるので、波動歯車装置の制御性も向上する。
【0021】
所定の潤滑効果が得られ、波動発生器のスムーズな回転を実現するためには、潤滑性粉体として平均粒径が15μm以下の微小粉体を用いることが望ましい。また、潤滑性粉体は、モース硬さが1.5以下の柔らかい粉体であることが望ましい。
【0022】
特に、波動歯車装置の運転初期から、潤滑効果が発揮され、波動発生器のスムーズな回転を実現するためには、潤滑性粉体を圧延して鱗片状に砕いて得られる微粉末を用いることが望ましい。
【0023】
層状の結晶構造を持つ潤滑性粉体としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、窒化ホウ素のうちのいずれか一つを用いることができる。二硫化モリブデン、グラファイトは、六方晶という層状の結晶構造を持ち、窒化ホウ素は、燐片状の結晶構造を持つ。なお、これらのうちの2種類以上の潤滑性粉体を組み合わせて使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略縦断面図であり、装置中心軸線が垂直方向を向き、波動発生器が上側に位置する垂直姿勢の状態を示す。
図2図1の第1粉体ガイドの一例を示す正面図、縦断面図および側面図である。
図3図1の第1粉体ガイドの頂角を示す説明図である。
図4図1の波動歯車装置を装置中心軸線が水平方向を向く水平姿勢の状態を示す概略縦断面図である。
図5】本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略半縦断面図である。
図6】本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略半縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本発明を適用した波動歯車装置の各実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明を適用した波動歯車装置の一例を示す概略縦断面図である。波動歯車装置1はカップ型と呼ばれ、円環状の剛性の内歯歯車2と、カップ形状をした可撓性の外歯歯車3と、楕円状輪郭の波動発生器4とを備えている。外歯歯車3は内歯歯車2の内側に同軸に配置されている。波動歯車装置1は、その装置中心軸線1aが垂直方向を向き、波動発生器4が上側に位置する垂直姿勢に設置されている。例えば、内歯歯車2は上側に位置する固定側部材である装置ハウジング5に固定され、波動発生器4は上側に位置するモーター回転軸等の入力シャフト6に連結固定され、外歯歯車3は下側に位置する出力軸7aに同軸に連結固定される。
【0027】
外歯歯車3はカップ形状をしており、その半径方向に撓み可能な円筒状胴部3aの開口端の側の外周面部分には、外歯3bが形成されている。円筒状胴部3aの反対側の端からは半径方向の内方に延びるダイヤフラム3cが形成されている。ダイヤフラム3cの内周縁には円環状の剛性のボス3dが形成されている。円環状の押さえ部材7bと出力軸7aの間にボス3dを挟み、この状態で、複数本の締結用ボルト7cによって、三部材が同軸に締結固定されている。
【0028】
波動発生器4は、剛性のプラグ4aと、この楕円状輪郭の外周面に装着された波動発生器軸受け4bとを備えている。波動発生器4は、外歯歯車3における円筒状胴部3aの外歯3bが形成されている部分の内側に装着されている。
【0029】
外歯歯車3の円筒状胴部3aの内部空間は、その開口端の側に装着されている波動発生器4と、ボス3dの側に取り付けたキャップ8とによって封鎖された区画部9となっている。区画部9には、波動歯車装置1の各潤滑部分を潤滑するための潤滑性微小粉体10が充填されている。静止状態においては、図に示すように、潤滑性微小粉体10は重力によって区画部9の下側に貯まる。
【0030】
潤滑性微小粉体10による波動歯車装置1の主要な潤滑部分は三ケ所ある。すなわち、波動発生器4の内部接触部11(波動発生器軸受け4bの構成部品の接触部)、波動発生器4と外歯歯車3の接触部12(波動発生器軸受け4bの外輪外周面と、外歯歯車3の円筒状胴部3aの内周面との接触部)、および、内歯歯車2と外歯歯車3の歯面部13である。
【0031】
ここで、波動発生器4には第1粉体ガイド20が取り付けられている。第1粉体ガイド20は、区画部9の内部において当該波動発生器4と一体回転して、潤滑部分である内部接触部11および接触部12に向かう方向に、潤滑性微小粉体10を導く。また、波動発生器4には第2粉体ガイド30が取り付けられている。第2粉体ガイド30は、波動発生器4と一体回転して、区画部9から波動発生器4を通り抜けて上側に移動する潤滑性微小粉体10を潤滑部分である歯面部13に向かう方向に導く。
【0032】
図2(a)は第1粉体ガイド20を示す正面図であり、図2(b)はその2b−2b線で切断した部分の縦断面図であり、図2(c)はその側面図である。図3は第1粉体ガイド20の円錐台形状の説明図である。
【0033】
図1および図2を参照して説明すると、波動発生器4のプラグ4aは、下側の区画部9に面する内側端面4cと、上側を向く段状の外側端面4dとを備えている。第1粉体ガイド20は、プラグ4aの内側端面4cの外周側端面部分に同軸に固定された円環状の固定板部分21と、装置中心軸線1aの方向に同軸に延びる筒状胴部22とを備えている。固定板部分21の外周縁からは所定の角度間隔で複数の連結板部分23が外方に延びて、筒状胴部22に繋がっている。本例では90度の角度間隔で4枚の連結板部分23が形成されている。
【0034】
筒状胴部22は、下側から上側に向かって外方に広がる円錐台形状をしている。すなわち、装置中心軸線1aの方向に沿ってプラグ4aの内側端面4cに接近するに連れて外方に広がる円錐台形状をしている。また、筒状胴部22の上端開口部24の内径は、プラグ4aの内側端面4cの外径よりも大きく、上端開口部24に連結板部分23を介して取り付けられている固定板部分21の外径は内側端面4cの外径とほぼ同一である。また、筒状胴部22の下端開口部25の内径は、キャップ8および押さえ部材7bの外径よりも大きい。よって、筒状胴部22は区画部9の内部において、上下に開口している。
【0035】
さらに、図1から分かるように、円錐台形状の筒状胴部22における下半部分は、区画部9に貯まっている潤滑性微小粉体10に埋没している。よって、第1粉体ガイド20は、その筒状胴部22の一部分が常に潤滑性微小粉体10に接触した状態に維持される。
【0036】
ここで、円錐台形状の筒状胴部22の内周面26は平滑面となっている。その外周面27は、図2(c)において下半部分に示すように平滑面とすることもできるが、上半部分に示すように凹凸面とすることもできる。本例では、円周方向に沿って、一定幅で一定長さの長円形の浅い溝27aを一定のピッチで形成してある。
【0037】
また、図3に示すように、円錐台形状の筒状胴部22の内周面26および外周面27の中心軸線28に対する傾斜角度、すなわち、筒状胴部22の円錐台形状の頂角θは、10deg〜30degまでの範囲内の角度となるように設定することが望ましい。
【0038】
再び図1を参照して説明すると、第2粉体ガイド30は、波動発生器4のプラグ4aにおける段状の外側端面4dにおける外周側の端面部分に同軸に固定された円板状の部材である。この第2粉体ガイド30の外周側部分は、波動発生器軸受け4bに対して、区画部9とは反対側から対峙しているガイド板部分31であり、その内周側部分は、外側端面4dの外周側の端面部分に固定された固定板部分32である。ここで、装置ハウジング5には、波動発生器軸受け4bに対峙する円環状端面5aが形成されている。第2粉体ガイド30の外周側のガイド板部分31は、波動発生器軸受け4bと円環状端面5aの間に位置している。
【0039】
本例の波動歯車装置1では、高速運転時に、波動発生器4と一体となって第1粉体ガイド20および第2粉体ガイド30が高速回転する。第1粉体ガイド20の回転により生じる遠心力により、当該第1粉体ガイド20の内側の潤滑性微小粉体10は、円錐状の内周面26に沿って、潤滑部分である内部接触部11および接触部12に向けて上昇する。
【0040】
また、第1粉体ガイド20の外側の潤滑性微小粉体10は、高速回転する第1粉体ガイド20の円錐状の外周面27によって円周方向に流動させられる。特に、図2(c)の上半部分に示すように、外周面27が溝27a等の付いた凹凸面となっている場合には、潤滑性微小粉体10を強く流動させることができる。
【0041】
ここで、高速回転する第1粉体ガイド20に対して、これを取り囲んでいる外歯歯車3は減速回転する。したがって、第1粉体ガイド20の円錐状の外周面27と、外歯歯車3の円筒状胴部3aの円形内周面3eとの間には大きな速度差が生じる。この速度差により、円周方向に流動する潤滑性微小粉体10は、円形内周面3eに沿って、内部接触部11、接触部12に向けて上昇する。
【0042】
この結果、区画部9に貯まっていた潤滑性微小粉体10は、内部接触部11(波動発生器軸受け4b)および接触部12(波動発生器4と外歯歯車3の接触部)に供給され、これらの部分が潤滑される。
【0043】
さらに、波動発生器軸受け4bに供給された潤滑性微小粉体10の一部は、当該波動発生器軸受け4bの軌道部を通り抜けて上側に移動する。また、波動発生器4と外歯歯車3の間に供給された潤滑性微小粉体10の一部は、これらの間を通り抜けて上側に移動する。
【0044】
波動発生器軸受け4bの上側には、波動発生器4と一体となって高速回転している第2粉体ガイド30が配置されている。したがって、上側に通り抜けた後の潤滑性微小粉体10は、高速回転する第2粉体ガイド30の外周側のガイド板部分31によって外周側にガイドされて、潤滑部分である外歯および内歯の歯面部13に供給される。
【0045】
次に、図4は、波動歯車装置1が図1に示す垂直姿勢から水平姿勢になった場合を示す概略縦断面図である。装置中心軸線1aが水平方向を向く水平姿勢での静置状態では、重力により潤滑性微小粉体10は、区画部9内において、下側に位置する外歯歯車3の円筒状胴部3aの上に貯まった状態になる。
【0046】
水平姿勢での運転時には、第1粉体ガイド20の回転により生じる遠心力により、当該第1粉体ガイド20の内側の潤滑性微小粉体10は、円錐状の内周面26に沿って、円周方向に移動すると共に、潤滑部分である内部接触部11、接触部12に向けて移動する。
【0047】
第1粉体ガイド20の外側の潤滑性微小粉体10は、高速回転する第1粉体ガイド20の円錐状の外周面27によって円周方向に流動させられ、図4における上側まで移動する。また、第1粉体ガイド20の円錐状の外周面27と、外歯歯車3の円筒状胴部3aの円形内周面3eとの間の大きな速度差により、円周方向に流動する潤滑性微小粉体10は、円形内周面3eに沿って、潤滑部分である内部接触部11、接触部12に向けて移動する。
【0048】
更に言及すると、円錐状の外周面27と円形内周面3eの間隔は、潤滑部分である内部接触部11、接触部12に向かう方向に徐々に狭くなっている。したがって、外周面27と内周面3eの速度差によって、潤滑性微小粉体10のうちの相対的に微細な粉体が図の右側(波動発生器4の側)、相対的に粗い粉体が左側に分粒される。この結果、相対的に微細な粉体が優先的に潤滑部分である内部接触部11、接触部12に供給される。
【0049】
また、これら内部接触部11、接触部12を通り抜けて移動する潤滑性微小粉体10は、波動発生器4と一体となって高速回転している第2粉体ガイド30によって、潤滑部分である外歯および内歯の歯面部13に供給される。
【0050】
このように、波動歯車装置1の運転時の姿勢が変化しても、区画部9に貯まっている潤滑性微小粉体10は第1粉体ガイド20によって撹拌されて、潤滑部分に向けて供給される。したがって、潤滑性微小粉体の再凝集を防ぎ、各部分を確実に潤滑することができる。
【0051】
(その他の実施の形態)
図5は本発明を適用した波動歯車装置の他の例を示す概略半縦断面図である。この図に示す波動歯車装置1Aの基本構成は前述の波動歯車装置1と同一であるので、図において対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0052】
波動歯車装置1Aは、除湿用のヒーター41、42が備わっている。ヒーター41、42によって、区画部9内の潤滑性微小粉体10が吸湿により凝集し、潤滑性能が低下することを防止あるいは抑制できる。ヒーター41は外歯歯車3のダイヤフラム3cの内側端面に取り付けた円環状のヒーターであり、ヒーター42は、キャップ8の中心部分に取り付けた円盤状のヒーターである。一方のヒーターのみを用いることも可能であり、ヒーターの取付け場所は、他の部分であってもよい。
【0053】
また、波動歯車装置1Aでは、第2粉体ガイド30Aの外周側のガイド板部分31の外周縁部分33を、装置ハウジング5の円環状端面5aに摺動可能に接触させてある。これにより、第2粉体ガイド30Aと装置ハウジング5の間の隙間を通って、潤滑性微小粉体10が入力シャフト(図示せず)の側に侵入することをより確実に防止あるいは抑制できる。
【0054】
次に、図6は本発明を適用した波動歯車装置の別の例を示す概略半縦断面図である。この図に示す波動歯車装置1Bの基本構成も、前述の波動歯車装置1と同一であるので、図において対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0055】
本例の波動歯車装置1Bでは、潤滑部分である内部接触部11、接触部12、歯面部13を除き、区画部9に面している部分の表面に粉体付着防止コーティングを施してある。例えば、フッ素コーティングを施している。本例では、コーティングされている表面を二点鎖線で示してある。すなわち、外歯歯車3の円形内周面3e、第1粉体ガイド20の固定板部分21の内側表面21a、円錐台形状の筒状胴部22の表面全体、キャップ8の表面、締結ボルト51および止め板52の表面等である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6