(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
1.携帯用情報機器の全体構成の説明
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10を閉じて収納形態とした状態を示した斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて使用形態とした状態を模式的に示した斜視図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、電子機器10は、一対の筐体12A,12Bと、背板部材14と、ディスプレイ16とを備える。本実施形態では電子機器10として本のように二つ折りに折り畳み可能な携帯用情報機器であるタブレット型PCを例示する。電子機器10は携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等であってもよい。
【0020】
各筐体12A,12Bは、それぞれ背板部材14に対応する辺以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材である。筐体12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板や炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。筐体12A,12Bの内面側には、ディスプレイ16が取付固定されている。筐体12A,12Bの内面とディスプレイ16の裏面との間には、演算装置やメモリ等の各種電子部品が収納されている。
【0021】
筐体12A,12Bは、互いに隣接配置された一端部同士がヒンジ機構18を介して連結される。ヒンジ機構18は一対設けられ、背板部材14の両端部に配置されている。ヒンジ機構18は、筐体12A,12B間を
図1に示す収納形態と
図2に示す使用形態とに折り畳み可能に連結している。背板部材14は、ディスプレイ16を内側にして筐体12A,12B間を二つ折りに折り畳んだ場合にディスプレイ16の折曲部16aの裏側を覆った状態で該折曲部16aから接離する方向に移動する。
【0022】
各筐体12A,12Bは、背板部材14側の内端面12Aa,12Baがヒンジ側となり、背板部材14側とは反対側の外端面12Ab,12Bbが開放端部側となる。
【0023】
ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ16は、筐体12A,12Bを折り畳んだ際に一緒に折り畳み可能な構造である。ディスプレイ16は、例えば柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイである。ディスプレイ16は、筐体12A,12Bの開閉動作に伴って折曲部16aを介して開閉する。ディスプレイ16は、折り畳み構造以外、例えば各筐体12A,12Bの内面にそれぞれ設けられた2画面構造であってもよく、例えば一方の筐体12Aのみに設けられた1画面構造であってもよい。
【0024】
図2に示すように、ディスプレイ16は、筐体12A,12Bの内面側に取付固定された状態で、その表面の外周縁部にベゼル部材20が配設される。ベゼル部材20は、ディスプレイ16の表面の表示領域(アクティブ領域)R1を除く外周縁部の非表示領域(非アクティブ領域)R2を覆うように設けられる。
【0025】
このように当該電子機器10は、一対の筐体12A,12Bを開閉することでその内側に設けたディスプレイ16を開閉し、
図1に示す収納形態と
図2に示す使用形態とに変形させることができる。
【0026】
以下、
図1及び
図2に示すように、電子機器10について、背板部材14から外端面12Ab,12Bbに向かう方向をX方向、背板部材14の長手方向に沿う方向をY方向と呼んで説明する。X方向については、背板部材14から一方の外端面12Abに向かう方向をX1方向、他方の外端面12Bbに向かう方向をX2方向と呼ぶこともある。すなわち、
図1に示す収納形態ではX1方向及びX2方向は互いに同一又は略同一方向を示し、
図2に示す使用形態ではX1方向及びX2方向は互いに逆方向を示す。
【0027】
2.ヒンジ機構及びこれと連動する機構の説明
ヒンジ機構18及びこれと連動する機構について説明する。
図3Aは、使用形態にある電子機器10のヒンジ機構18の周辺部を拡大した斜視図である。
図3Bは、
図3Aに示すヒンジ機構18の周辺部を異なる角度から見た斜視図である。
図3A及び
図3Bでは、ディスプレイ16や筐体12A,12B内に配置される電子部品等を省略しており、
図4〜
図8Dについても同様である。
【0028】
図2、
図3A及び
図3Bに示すように、各筐体12A,12Bの表面には、一対の開口部22a,22bと、一対のシャッター部材24a,24bとが設けられている。
【0029】
各開口部22a,22bは、それぞれ各筐体12A,12Bの表面を形成するベゼル部材20に設けられた切欠部である。各開口部22a,22bは、ヒンジ機構18と重なる位置に設けられている。一方の開口部22aは一方の筐体12Aの内端面12Aaの上方に設けられ、他方の開口部22bは他方の筐体12Bの内端面12Baの上方に設けられている。開口部22a,22bは、筐体12A,12Bの開閉時にヒンジ機構18がベゼル部材20と干渉することを防止するための逃げ孔である。開口部22a,22bは、
図3Aに示す使用形態で筐体12A,12Bの内端面12Aa,12Baを跨いで互いに連通し、1つの大きな開口部を形成する。
【0030】
各シャッター部材24a,24bは、各開口部22a,22bを同時に開閉する。一方のシャッター部材24aは一方の筐体12A側の開口部22aを開閉し、他方のシャッター部材24bは他方の筐体12B側の開口部22bを開閉する。各シャッター部材24a,24bは、開口部22a,22bを閉塞した状態で互いの先端面同士が当接又はほとんど隙間なく近接する。各シャッター部材24a,24bは開口部22a,22bを開放した状態では、それぞれベゼル部材20の裏側に収納される(
図8D参照)。
【0031】
図4は、シャッター部材24a,24bを省略した構造でヒンジ機構18の周辺部を拡大した斜視図である。
【0032】
図4に示すように、仮に電子機器10からシャッター部材24a,24bを省略した構造を考える。この構造では、使用形態で平板状に構成された筐体12A,12Bの表面で開口部22a,22bが大きく開口している。このため電子機器10は外観品質が損なわれるだけでなく、開口部22a,22bから筐体12A,12B内へとごみや塵、液体等の異物が侵入する懸念もある。そこで当該電子機器10では、開閉式のシャッター部材24a,24bを設けて開口部22a,22bを開閉可能に構成している。
【0033】
2.1 ヒンジ機構の説明
先ず、ヒンジ機構18について説明する。
図5は、使用形態にある電子機器10のヒンジ機構18の周辺部の内部構造を示した斜視図である。
図6は、
図5に示す電子機器10からシャッター部材24a,24bを省略してヒンジ機構18付近を拡大した図である。
図7は、収納形態にある電子機器10のヒンジ機構18の周辺部の内部構造を示した斜視図である。
【0034】
図5〜
図7に示すように、ヒンジ機構18は、一対のヒンジアーム(アーム部材)26a,26bと、これらヒンジアーム26a,26bの回動動作を同期させるギア部28とを有する。
【0035】
一方のヒンジアーム26aは、背板部材14と一方の筐体12Aとの間を回動可能に連結している。ヒンジアーム26aは、一端部が第1ヒンジ軸30によって背板部材14に回動可能に支持され、他端部が第2ヒンジ軸31によって筐体12Aに回動可能に支持されている。背板部材14の長手方向両端部の内面には、凹状部14aが設けられている。ヒンジアーム26aの一端部及び第1ヒンジ軸30は凹状部14a内に配設されている。本実施形態の場合、第2ヒンジ軸31は、筐体12Aの側壁に取付固定したブラケット板29aに対して固定されている。
【0036】
他方のヒンジアーム26bは、背板部材14と他方の筐体12Bとの間を回動可能に連結している。ヒンジアーム26bは、一端部が第1ヒンジ軸32によって背板部材14に回動可能に支持され、他端部が第2ヒンジ軸33によって筐体12Bに回動可能に支持されている。ヒンジアーム26bの一端部及び第1ヒンジ軸32は凹状部14a内に配設されている。ヒンジアーム26bの一端部及び第1ヒンジ軸32は、ヒンジアーム26aの一端部及び第1ヒンジ軸30とX方向に並んで近接配置されている。本実施形態の場合、第2ヒンジ軸33は、筐体12Bの側壁に取付固定したブラケット板29bに対して固定されている。
【0037】
ギア部28は、互いに噛み合いした一対のギア28a,28bを有する。一方のギア28aは、一方のヒンジアーム26aの第1ヒンジ軸30に軸支された一端部に設けられている。他方のギア28bは、他方のヒンジアーム26bの第1ヒンジ軸32に軸支された一端部に設けられている。
【0038】
当該電子機器10では、一対の筐体12A,12B間を開閉操作すると、各ヒンジアーム26a,26bがギア部28を介して互いに接離する方向に同期回動する。これにより、一対の筐体12A,12Bがその回動角度にかかわらず、がたつきや位置ずれを生じることなく円滑に開閉動作する。また、この開閉動作時、ヒンジアーム26a,26bによって背板部材14が押圧力を受ける。そうすると、背板部材14は筐体12A,12Bの一端部である内端面12Aa,12Baから接離する方向に移動する(
図8A〜
図8D参照)。その結果、筐体12A,12Bの内面側に固定されたディスプレイ16と、筐体12A,12Bとの間で生じる開閉時の周長差が背板部材14のスライド移動によって吸収される。
【0039】
2.2 シャッター部材の説明
次に、シャッター部材24a,24bについて、これらを筐体12A,12Bの開閉動作と連動させるリンク機構40と共に説明する。
図8A〜
図8Dは、電子機器10を使用形態から収納形態まで動作させる際の各角度位置(180度位置、90度位置、60度位置、0度位置)での各要素の動作状態を模式的に示した側面断面図である。
図8A〜
図8Dではブラケット板29a,29bの図示を省略している。
【0040】
シャッター部材24a,24bは、ヒンジ機構18による筐体12A,12Bの開閉動作とリンク機構40を介して連動し、開口部22a,22bを開閉する。シャッター部材24a,24bは、使用形態で開口部22a,22bを閉塞する一方、収納形態で開口部22a,22bを開放するものである。
【0041】
図8Aに示すように、シャッター部材24a,24bは、X方向に延在する側面視略L字状の薄板である。シャッター部材24a,24bは互いに左右対称形状である。一方のシャッター部材24aは、筐体12A(ベゼル部材20)とブラケット板29aとに支持されてX方向にスライド可能である。他方のシャッター部材24bは、筐体12B(ベゼル部材20)とブラケット板29bとに支持されてX方向にスライド可能である。
【0042】
シャッター部材24a,24bは、それぞれX方向外方(背板部材14側とは反対側)に受け片42が屈曲形成されている。各シャッター部材24a,24bの受け片42にはそれぞれシャッター押しばね44の一端が固定されている。各シャッター押しばね44の他端はそれぞれブラケット板29a,29b(又は筐体12A,12B)に設けられた支持部材45に固定されている。各シャッター押しばね44は、シャッター部材24a,24bを筐体12A,12B(ブラケット板29a,29b)に対して背板部材14側に向かう方向に常時付勢するコイルばねである。すなわち、各シャッター部材24a,24bはそれぞれ開口部22a,22bを閉塞するスライド方向に常時付勢されている。
【0043】
図5及び
図8Aに示すように、リンク機構40は、各シャッター部材24a,24bに対応し、各筐体12A,12Bにそれぞれ設けられている。各筐体12A,12Bのリンク機構40は、左右対称構造である以外は同一の構成、作用を有するため、以下では筐体12A側のリンク機構40について代表的に説明し、筐体12B側のリンク機構40については同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
リンク機構40は、スライド部材46と、リンク部材48とを有する。
【0045】
スライド部材46は、背板部材14の側部でブラケット板29a(筐体12A)に対してX方向にスライド可能に支持されている。スライド部材46は、X方向に延びたブロック状部材であり、筐体12Aの板厚方向に沿った当接面46aと、Y方向内方に突出した押圧面46bとを有する。
図5中の参照符号46cは、スライド部材46からY方向外方に突出したスライド軸である。スライド軸46cは、ブラケット板29aに形成された図示しないX方向の長孔に摺動可能に係合し、スライド部材46のX方向のスライドをガイドする。
【0046】
スライド部材46は、押圧面46b側の端面にスライダ押しばね50の一端が固定されている。スライダ押しばね50の他端は筐体12Aに設けられた支持部材51に固定されている。スライダ押しばね50は、スライド部材46を筐体12A(ブラケット板29a)に対して背板部材14側に向かう方向に常時付勢するコイルばねである。このため、スライド部材46は、当接面46aが背板部材14のX1側の側面14bに常時当接した状態に維持される。つまり、筐体12B側のスライド部材46は、スライダ押しばね50の付勢力によって当接面46aが背板部材14のX2側の側面14cに常時当接した状態に維持される。
【0047】
リンク部材48は、その長手方向中心が回転軸52によって筐体12A(ブラケット板29a)に対して回動可能に支持されている。リンク部材48は、スライド部材46の押圧面46bのY方向内側部に近接配置された板状部材である。回転軸52は、ブラケット板29a又は筐体12Aに対して固定されている。リンク部材48は、一端部に押圧部48aが設けられ、他端部に受圧部48bが設けられている。押圧部48a及び受圧部48bは、X方向外方(背板部材14側とは反対側)を向いた突出部である。なお、リンク部材48は、受圧部48bとスライド部材46の押圧面46bとの干渉により、或いは図示しない回動規制構造により、
図8Aに示す回動角度から反時計方向(筐体12B側のリンク部材48では時計方向)の回動が規制されている。
【0048】
2.3 電子機器の動作及び作用の説明
次に、電子機器10を使用形態と収納形態に変化させる動作及び作用を説明する。
【0049】
図8Aに示すように筐体12A,12B間を180度に開いて平板状の使用形態とした状態では、内端面12Aa,12Ba同士が当接又は近接し、背板部材14が筐体12A,12Bの内側に完全に収納された状態にある。この状態では、各ヒンジアーム26a,26bは、筐体12A,12Bの板厚の範囲内に収納され、開口部22a,22bから離間した位置にある。具体的には、各ヒンジアーム26a,26bは、それぞれX1,X2方向に向かって筐体12A,12Bの表面(ベゼル部材20)側に傾斜した回動角度にある。
【0050】
各スライド部材46は、背板部材14の側面14b,14cからの押圧力により、スライダ押しばね50の付勢力に抗してそれぞれ最もX1,X2方向(背板部材14から離間する方向)に後退した位置にある。この際、リンク部材48の受圧部48bはスライド部材46の押圧面46bによる押圧力を受けていない。このため、各シャッター部材24a,24bはリンク部材48の押圧部48aからの押圧力を受けていない。従って、各シャッター部材24a,24bは、シャッター押しばね44からの付勢力により、それぞれX2,X1方向に最もスライドし、開口部22a,22bを閉塞した位置にある。
【0051】
このように電子機器10は、使用形態で筐体12A,12Bの表面にある開口部22a,22bが閉塞される。その結果、電子機器10の外観品質が確保されると共に、開口部22a,22bから筐体12A,12B内へと異物が侵入することが防止される。なお、使用形態ではヒンジアーム26a,26bは開口部22a,22bから離間しているため、シャッター部材24a,24bに干渉しない。
【0052】
使用形態の筐体12A,12Bを収納形態まで閉じる場合は、筐体12A,12Bをヒンジ機構18を回動中心として互いに閉じ動作させる。そうすると各ヒンジアーム26a,26bは、背板部材14に連結された第1ヒンジ軸30,32を回動中心として互いに近接する方向に同期回動する。具体的には、ヒンジアーム26aは
図8A中で反時計方向に回動し、ヒンジアーム26bは
図8A中で時計方向に回動する。この際、背板部材14は、次第に離間する内端面12Aa,12Baから離間する方向(
図8A中では下方)に向かって移動する。これにより筐体12A,12Bは、第2ヒンジ軸31,33を介してヒンジアーム26a,26bに対して回動しつつ、互いに二つ折りに閉じられる方向に回動する。
【0053】
例えば、
図8Aに示す180度位置から
図8Bに示す90度位置まで筐体12A,12B間が閉じられた場合、互いの内端面12Aa,12Baが離間する。この状態では、各ヒンジアーム26a,26bは、筐体12A,12Bの板厚の範囲内に収納されてはいるものの、開口部22a,22bに近接し、筐体12A,12Bの表面(ベゼル部材20)に近接した回動角度にある。
【0054】
この動作時、背板部材14は
図8Aから45度回動した状態となる。この際、背板部材14は、互いに離間した内端面12Aa,12Baの隙間から一部が外方に飛び出した位置まで移動している。このため、背板部材14の側面14b,14cのX方向位置は各当接面46aから離間する方向に移動している。すなわち、各スライド部材46の当接面46aには、移動する背板部材14の側面14b,14cが摺動する。そして、各スライド部材46は、スライダ押しばね50の付勢力によってそれぞれ筐体12A,12B内でX2,X1方向(背板部材14に近接する方向)に前進する。このため、受圧部48bがスライド部材46の押圧面46bによる押圧力を受け、リンク部材48は押圧部48aが各シャッター部材24a,24bの受け片42を押圧して移動させる。
【0055】
具体的には、筐体12A側のリンク部材48は
図8A中で時計方向に回動し、筐体12B側のリンク部材48は
図8A中で反時計方向に回動して、
図8Bに示す状態となる。従って、各シャッター部材24a,24bは、シャッター押しばね44からの付勢力に抗してそれぞれX1,X2方向、つまり開口部22a,22bを開放する方向にスライドする。なお、シャッター部材24a,24bの先端は背板部材14の凹状部14aに位置している。
【0056】
但し、本実施形態の場合、
図8Bに示す90度位置では開口部22a,22bにヒンジアーム26a,26bが全く干渉しない。このため、各シャッター部材24a,24bは開放方向にスライドしつつも、互いに先端面同士は依然として当接した状態にあり、開口部22a,22bは完全に閉塞された状態にある。その結果、使用者から見て開口部22a,22bを容易に視認可能な90度位置についても開口部22a,22bが閉塞され、依然として電子機器10の外観品質が確保されている。
【0057】
続いて、
図8Bに示す90度位置から
図8Cに示す60度位置まで筐体12A,12B間が閉じられた場合、互いの内端面12Aa,12Baがさらに大きく離間する。この状態では、各ヒンジアーム26a,26bは、筐体12A,12Bの板厚の範囲内に収納されてはいるものの、開口部22a,22bにさらに近接し、筐体12A,12Bの表面(ベゼル部材20)にさらに近接した回動角度にある。
【0058】
この動作時、背板部材14は
図8Aから60度回動した状態となる。この際、背板部材14は、互いに大きく離間した内端面12Aa,12Baの隙間から一部が大きく外方に飛び出した位置まで移動している。このため、背板部材14の側面14b,14cのX方向位置は各当接面46aからさらに離間する方向に移動している。すなわち、各スライド部材46の当接面46aには、移動する背板部材14の側面14b,14cが摺動する。そして、各スライド部材46は、スライダ押しばね50の付勢力によってそれぞれ筐体12A,12B内でX2,X1方向(背板部材14に近接する方向)にさらに前進する。このため、受圧部48bがスライド部材46の押圧面46bによる押圧力を受け、リンク部材48は押圧部48aが各シャッター部材24a,24bの受け片42を押圧してさらに移動させる。
【0059】
具体的には、筐体12A側のリンク部材48は
図8B中で時計方向に回動し、筐体12B側のリンク部材48は
図8A中で反時計方向に回動して、
図8Cに示す状態となる。従って、各シャッター部材24a,24bは、シャッター押しばね44からの付勢力に抗してそれぞれX1,X2方向、つまり開口部22a,22bを開放する方向にスライドする。
【0060】
ここで、
図8Cに示す60度位置では、各シャッター部材24a,24bは開放方向にスライドして互いの先端面同士が離間した状態となり、開口部22a,22bが一部開放された状態となる。すなわち、本実施形態の場合、
図8Cに示す60度位置では開口部22a,22bにヒンジアーム26a,26bが干渉しないものの、非常に近接した位置にある。このため、本実施形態では、この60度位置から開口部22a,22bが徐々に開放される構成となっている。その結果、使用者から見て開口部22a,22bが容易に視認できない60度位置から開口部22a,22bが開放され、電子機器10の外観品質の低下はほとんどなく、またヒンジ機構18と筐体12a,12bの表面との干渉も回避される。
【0061】
図8Cに示す60度位置から
図8Dに示す0度位置まで筐体12A,12B間が閉じられた場合、互いの内端面12Aa,12Baが最も大きく離間する。この状態では、各ヒンジアーム26a,26bは、開口部22a,22bから大きく突出し、筐体12A,12Bの表面(ベゼル部材20)から突出した回動角度にある。
【0062】
この動作時、背板部材14は
図8Aから90度回動した状態となる。この際、背板部材14は、互いに大きく離間した内端面12Aa,12Baの隙間から一部が大きく外方に飛び出した位置まで移動している。このため、背板部材14の側面14b,14cのX方向位置は各当接面46aから最も離間した位置まで移動する。すなわち、各スライド部材46の当接面46aには、移動する背板部材14の側面14b,14cが摺動する。そして、各スライド部材46は、スライダ押しばね50の付勢力によってそれぞれ筐体12A,12B内でX2,X1方向(背板部材14に近接する方向)に最も前進した位置となる。このため、受圧部48bがスライド部材46の押圧面46bによる押圧力を受け、リンク部材48は押圧部48aが各シャッター部材24a,24bの受け片42を押圧してさらに移動させる。
【0063】
具体的には、筐体12A側のリンク部材48は
図8C中で時計方向に回動し、筐体12B側のリンク部材48は
図8A中で反時計方向に回動して、
図8Dに示す状態となる。従って、各シャッター部材24a,24bは、シャッター押しばね44からの付勢力に抗してそれぞれX1,X2方向、つまり開口部22a,22bを開放する方向にスライドする。
【0064】
ここで、
図8Cに示す0度位置では、各シャッター部材24a,24bは開放方向に最もスライドして互いの先端面同士が大きく離間した状態となり、開口部22a,22bが開放された状態となる。その結果、使用者から見て開口部22a,22bが視認できない0度位置で開口部22a,22bが完全に開放され、電子機器10の外観品質の低下を生じることなく、ヒンジ機構18と筐体12a,12bの表面との干渉が回避される。
【0065】
次に、0度位置に閉じた筐体12A,12Bを180度位置まで開く場合は、筐体12A,12Bをヒンジ機構18を回動中心として互いに開き動作させる。そうすると、背板部材14、リンク機構40及びシャッター部材24a,24bが上記した閉じ動作時とは逆に動作する。この際、スライド部材46はスライダ押しばね50の付勢力に抗して背板部材14の側面14b,14cから押圧力を受けて後退し、シャッター部材24a,24bはシャッター押しばね44の付勢力によって前進する。その結果、0度位置から60度位置までヒンジアーム26a,26bが開口部22a,22bから退避するのに伴い、シャッター部材24a,24bが開口部22a,22bを次第に閉塞する。そして、少なくとも90度位置では開口部22a,22bが完全に閉塞され、この閉塞状態が180度位置まで維持される。
【0066】
ところで、当該電子機器10では、上記した通り、筐体12A,12Bを使用形態から収納形態まで閉じ動作させる際に、所定角度(60度位置)まで閉じられる間はシャッター部材24a,24bによる開口部22a,22bの閉塞状態を維持する時間差機構54を備える。
【0067】
本実施形態の場合、時間差機構54は、隙間Gを有する(
図8A参照)。隙間Gは、
図8Aに示す使用形態でスライド部材46の押圧面46bと、リンク部材48の受圧部48bとの間に設定された間隔である。隙間Gは、筐体12A,12Bが
図8Aに示す180度位置から閉じ動作した場合に、ある程度の角度位置までは押圧面46bが受圧部48bを押圧しない空走距離である。本実施形態の場合は、筐体12A,12Bが180度位置から90度位置の手前の角度位置、例えば100度位置程度で押圧面46bが受圧部48bを押圧し始める。このため、この100度位置程度まではシャッター部材24a,24bは全く移動せず、開口部22a,22bの閉塞状態が維持される。
【0068】
なお、本実施形態の場合は、
図8Bに示す90度位置では筐体12A,12Bの角度変化に伴いシャッター部材24a,24bの先端面同士の距離が近接した分だけシャッター部材24a,24bが開放方向にスライドする構成となっている。このため、上記した通り、90度位置でも開口部22a,22bは完全に閉塞された状態にある。そして、
図8Cに示す60度位置では開口部22a,22bが一部開放された状態になるように設定されている。
【0069】
このように時間差機構54は、ヒンジ機構18によって筐体12A,12Bが使用形態から収納形態への閉じ動作を行う際、筐体12A,12B間が閉じ動作の開始から所定角度(本実施形態では60度)に閉じられるまでの間はシャッター部材24a,24bによる開口部22a,22bの閉塞状態を維持する。つまり、時間差機構54は、筐体12A,12Bの閉じ動作の開始タイミングと、シャッター部材24a,24bの開き動作の開始タイミングとの間に時間差を付与する遅延機構である。その結果、電子機器10は、筐体12A,12Bを閉じ始めた直後、例えば170度位置で開口部22a,22bが開放され、外観品質が低下してしまうことを防止できる。隙間Gは、他の要素間、例えばリンク部材48の押圧部48aとシャッター部材24a,24bの受け片42との間に設けてもよい。時間差機構54によるシャッター部材24a,24bの開口部22a,22bの開放角度は、60度位置以外に設定されても勿論よい。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る電子機器10では、筐体12A,12Bの表面(ベゼル部材20)には、筐体12A,12B内に設けられたヒンジ機構18と重なる位置に開口部22a,22bが形成されている。そして、ヒンジ機構18による筐体12A、12Bの開閉動作と連動して移動することで、筐体12A、12Bが使用形態とされた場合に開口部22a,22bを閉塞する一方、筐体12A、12Bが収納形態とされた場合に開口部22a,22bを開放するシャッター部材24a,24bを備える。
【0071】
従って、当該電子機器10では、筐体12A,12Bの表面に開口部22a,22bを設けている。特に開口部22a,22bは、筐体12A,12Bの表面にヒンジ機構18が干渉し易い収納形態で開放される。このため、ヒンジ機構18が筐体12A,12Bの表面に干渉することを回避できる。しかも、当該電子機器10では、筐体12A,12Bの表面とヒンジ機構18の干渉を生じない使用形態で開口部22a,22bを閉塞するシャッター部材24a,24bを備える。このため、電子機器10の外観品質が確保されると共に、開口部22a,22bから筐体12A,12B内へと異物が侵入することが防止される。
【0072】
ヒンジ機構18は、筐体12A,12Bに対してそれぞれ回動可能に支持されたヒンジアーム26a,26bと、ヒンジアーム26a,26bの回動動作を同期させるギア部28とを有する。このようにギア部28を設けた同期回動するヒンジアーム26a,26bを備えた構成では、ヒンジアーム26a,26bにある程度の板厚を必要とする。このため、電子機器10の外観品質を考慮すると、ヒンジアーム26a,26bは筐体12A,12Bの外側ではなく内側に設置しておく必要がある。そうすると、筐体12A,12B内でのヒンジ機構18の設置スペースがある程度大きくなり、開口部22a,22bの開口面積も拡大し易い。この点、当該電子機器10では、開口部22a,22bを開閉するシャッター部材24a,24bを設けたため、外観品質の低下を抑制できる。しかも、筐体12A,12B内にギア部28がある場合は、開口部22a,22bからの異物の侵入はギア部28の不具合を生じる懸念もあるが、この不具合も確実に回避できる。
【0073】
当該電子機器10は、筐体12A,12Bの内面間に亘って設けられ、ヒンジ機構18による筐体12A,12Bの開閉動作に伴って平板状に開いた状態(
図2参照)と、二つ折りに折り畳んだ状態(
図1参照)とに開閉可能なディスプレイ16を備える。従って、使用形態にあるディスプレイ16の折曲部16a付近で開口部22a,22bが開口し、その使用や外観に問題が出ることをシャッター部材24a,24bによって確実に抑制できる。
【0074】
この場合、当該電子機器10は、筐体12A,12Bの一端部同士の当接面間(内端面12Aa,12Ba間)を覆うようにディスプレイ16の折曲部16aに対応する部分の裏側に配置され、ヒンジ機構18による筐体12A,12Bの開閉動作と連動して移動することで、筐体12A,12Bが使用形態とされた場合に筐体12A,12Bの一端部に近接した位置に配置される一方、筐体12A,12Bが収納形態とされた場合に筐体12A,12Bの一端部から離間した位置に配置される背板部材14を備える。このため、ディスプレイ16の折曲部16aが折り曲げられた収納形態時に筐体12A,12Bの一端部間に形成される隙間から露出することを背板部材14によって防止できる。
【0075】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0076】
スライド部材46は、背板部材14ではなくヒンジ機構18の構成要素によって当接、押圧される構成としてもよい。第1ヒンジ軸30,32は、背板部材14に軸支しなくてもよい。例えば、2つの第1ヒンジ軸30,32をまとめて1本のヒンジ軸とし、2本のヒンジアーム26a,26bをこの1本のヒンジ軸で連結した3軸構造としてもよい。ブラケット板29a,29bは省略してもよいが、ブラケット板29a,29bを設けることで、リンク機構40の構成要素をアセンブリ部品として筐体12A,12Bに組み付けることができ、生産性が向上する。
【解決手段】電子機器10は、筐体12A,12Bの表面に筐体12A,12B内に設けられたヒンジ機構18と重なる位置に開口部22a,22bが形成されている。そして、ヒンジ機構18による筐体12A、12Bの開閉動作と連動して移動することで、筐体12A、12Bが使用形態とされた場合に開口部22a,22bを閉塞する一方、筐体12A、12Bが収納形態とされた場合に開口部22a,22bを開放するシャッター部材24a,24bを備える。