特許第6261851号(P6261851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261851
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】蓄熱装置及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20180104BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   F28D20/02 Z
   F25B1/00 321C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-254710(P2012-254710)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-102039(P2014-102039A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年11月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】本郷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平澤 博明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−143060(JP,A)
【文献】 特開2007−155197(JP,A)
【文献】 特開平11−132622(JP,A)
【文献】 実開昭56−144986(JP,U)
【文献】 実開昭63−123959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相変化材料の蓄熱材及びこの蓄熱材を収容するとともに収容された前記蓄熱材の液圧に応じて自在に変形する柔軟性を有する材料で形成された容器を夫々が有した2つの蓄熱部と、
前記2つの蓄熱部を支持する2つの支持部材及び2つの支持部材の一端部を回動可能に接続するヒンジを備える支持手段と、
前記2つの支持部材の自由端部に取り付けられていて、熱交換対象物に向けて前記支持手段の2つの支持部材を介し前記2つの蓄熱部の前記容器の熱交換面を押し付けて前記2つの蓄熱部の前記容器の熱交換面を前記熱交換対象物と熱交換が出来る状態に保持する保持手段と、
を備えていて、
夫々の支持部材は、前記容器より剛性が高い材料で形成され、支持している前記蓄熱部の熱交換側の反対側から前記蓄熱部を支持する板で形成された部、この基部から前記熱交換側に折れ曲って突出され前記蓄熱部を下方から支持する下側支持部、前記基部から前記蓄熱部の熱交換側に折れ曲って突出され前記蓄熱部を上方から支持する上側支持部、そして、前記基部の幅方向両側縁から前記蓄熱部の熱交換側に折れ曲って突出され夫々が前記下側支持部及び前記上側支持部と一体に連続されている第1及び第2側方支持部、を有し、互いに連続した下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部の突出端に開口を有する箱状に形成されていて、支持している前記蓄熱部が内側に嵌り込んで前記蓄熱部の前記容器が前記基部,下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部に面接触しており、
前記支持部材の前記下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部の夫々の突出寸法が、前記蓄熱材の相変化による前記蓄熱部の体積の変化にも関わらず前記支持部材の前記開口から突出した前記蓄熱部の前記容器の熱交換面と前記蓄熱部の前記基部に接した前記容器の面とで規定される前記蓄熱部の厚みより短く設定されている、
ことを特徴とする蓄熱装置。
【請求項2】
前記支持部材の前記基部は円弧形状に曲っており,前記上側支持部及び前記下側支持部の夫々の突出方向の縁も円弧形状に曲っており、そして、
前記蓄熱部は、前記支持手段により円弧形状に支持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
冷媒管に冷媒を循環させる圧縮機を有するヒートポンプ式の空気調和機において、請求項1又は2に記載の蓄熱装置を備え、この蓄熱装置が有する蓄熱部を、熱交換対象物である前記圧縮機と熱交換できるように前記圧縮機に面接触して配置したことを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、相変化蓄熱材を有する蓄熱装置、及びこの装置を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば空気調和機の暖房運転時に、圧縮機排熱を相変化材料の蓄熱材に吸収し、冬季等のように温度が低い条件下で空気調和機の運転が開始される場合、蓄熱材に蓄えた熱を圧縮機等に放出することが提案されている。これによれば、圧縮機の運転に伴って循環される冷媒の温度上昇が早められる結果、空気調和機の室内機から暖房のための温風を速やかに吹出すことが可能となる。
【0003】
相変化材料の蓄熱材は、その融点にて固体から液体に相変化する際に吸熱し、固体から液体に相変化する特徴を有している。このような蓄熱材を取扱う上では、蓄熱材によってこれに接する部材が腐食しないこと、圧縮機などの外部の熱交換対象物との熱的接続を良好に維持できること、安価で取扱いが容易であること等が望まれる。そのために、耐蓄熱材性を有した柔軟な袋状の容器に蓄熱材を収容することが検討されている。この場合、容器と熱交換対象物が密接された状態は、バンド等を用いて保持する。
【0004】
相変化材料の蓄熱材は吸熱することによって溶けて液状態となる。この状態では、バンド等による締め付けに拘わらず、液状の蓄熱材は、重力の影響を受けて、柔軟な袋状容器の下部にこの容器の変形を伴って集まろうとする。これにより容器が変形すると、容器と熱交換対象物との熱的な接続の性能が低下する、という課題が考えられる。
【0005】
その上、前記のように容器が変形することで、蓄熱材の厚みが重力方向(上下方向)に不均一となる、という課題が考えられる。このようになると、蓄熱材の厚みが減った部位では、想定した蓄熱量を確保し難くなる。これとともに、蓄熱材の厚みが増えた部位では、この部位の熱交換対象物に対して遠い部分まで、熱交換対象物から吸収した熱が伝わり難くなることで、想定した時間で所定の熱量を吸収し難くなる。したがって、このように蓄熱材の各部位での蓄熱量にばらつきを生じると、想定した蓄熱性能及び放熱性能を得られ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−143060号公報
【特許文献2】特開2011−163662号公報
【特許文献3】特開2012−52682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、柔軟な容器に収容された蓄熱材の相変化に拘わらず、この蓄熱材の厚みが重力方向に不均一となることを抑制可能な蓄熱装置、及びこの蓄熱装置を備える空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、実施形態の蓄熱装置は:相変化材料の蓄熱材及びこの蓄熱材を収容するとともに収容された前記蓄熱材の液圧に応じて自在に変形する柔軟性を有する材料で形成された容器を夫々が有した2つの蓄熱部と;前記2つの蓄熱部を支持する2つの支持部材及び2つの支持部材の一端部を回動可能に接続するヒンジを備える支持手段と;前記2つの支持部材の自由端部に取り付けられていて、熱交換対象物に向けて前記支持手段の2つの支持部材を介し前記2つの蓄熱部の前記容器の熱交換面を押し付けて前記2つの蓄熱部の前記容器の熱交換面を前記熱交換対象物と熱交換が出来る状態に保持する保持手段と;を備えている。
夫々の支持部材は、前記容器より剛性が高い材料で形成され、支持している前記蓄熱部の熱交換側の反対側から前記蓄熱部を支持する板で形成された基部、この基部から前記熱交換側に折れ曲って突出され前記蓄熱部を下方から支持する下側支持部、前記基部から前記蓄熱部の熱交換側に折れ曲って突出され前記蓄熱部を上方から支持する上側支持部、そして、前記基部の幅方向両側縁から前記蓄熱部の熱交換側に折れ曲って突出され夫々が前記下側支持部及び前記上側支持部と一体に連続されている第1及び第2側方支持部、を有している。
そして夫々の支持部材は、互いに連続した下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部の突出端に開口を有する箱状に形成されていて、支持している前記蓄熱部が内側に嵌り込んで前記蓄熱部の前記容器が前記基部,下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部に面接触している。
前記支持部材の前記下側支持部,上側支持部,そして第1及び第2側方支持部の夫々の突出寸法は、前記蓄熱材の相変化による前記蓄熱部の体積の変化にも関わらず前記支持部材の前記開口から突出した前記蓄熱部の前記容器の熱交換面と前記蓄熱部の前記基部に接した前記容器の面とで規定される前記蓄熱部の厚みより短く設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態に係る蓄熱装置を、模式的に描いた熱交換対象物である圧縮機とともに示す横断平面図である。
図2】一実施の形態に係る蓄熱装置を、模式的に描いた圧縮機とともに縦断側面図である。
図3図1中F3部を拡大してヒンジを示す断面図である。
図4】一実施の形態に係る蓄熱装置が備える支持手段を、開かれた状態で、かつ、一部を切欠いて示す平面図である。
図5】一実施の形態に係る蓄熱装置が備える蓄熱部を、適正な形状を保持している状態で一部切欠いて示す平面図である。
図6】一実施の形態に係る蓄熱装置が備える蓄熱部を、適正な形状を保持している状態で示す縦断側面図である。
図7】(A)は一実施の形態に係る蓄熱装置と模式的に描いた圧縮機との関係を、蓄熱材が融解した状態で示す図である。(B)は一実施の形態に係る蓄熱装置と模式的に描いた圧縮機との関係を、蓄熱材が固化した状態で示す図である。
図8】一実施の形態に係る蓄熱装置を、模式的に描いた圧縮機に取付ける第1手順を示す横断平面図である。
図9】一実施の形態に係る蓄熱装置を、模式的に描いた圧縮機に取付ける第2手順を示す横断平面図である。
図10】一実施の形態に係る蓄熱装置を、模式的に描いた圧縮機に取付ける第3手順を示す横断平面図である。
図11】一実施の形態に係る蓄熱装置を備える空気調和機の冷凍サイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態に係る蓄熱装置及びこれを備えた空気調和機について、図1図11を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように蓄熱装置1は、蓄熱部2と、支持手段11と、保持手段21とを備えている。
【0012】
蓄熱部2は、蓄熱材3及び容器4を有している。蓄熱材3は、融点にて固体から液体に相変化する際に吸熱し、固体から液体に相変化する特徴を有した物質(PCM;Phase Change Material)からなり、相変化蓄熱材又は潜熱蓄熱材とも称される。このような蓄熱材として、例えば酢酸ナトリウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、パラフィン等を用いることが可能である。
【0013】
蓄熱材3が酢酸ナトリウ水和物である場合、この物質の蓄熱密度は水の蓄熱密度より大きい。このため、蓄熱部2の小形化、具体的には容器4を薄くできることによる小形化を実現でき、蓄熱装置1の設置スペースを小さくすることが可能である。
【0014】
容器4は蓄熱材3を収容している。この容器4は、内部に充填された蓄熱材3の液圧に応じて自在に変形する柔軟性を有するとともに、耐蓄熱材性(つまり、蓄熱材3により腐食されない性質)を有している。このような性質を有する材料として、例えばビニール等のプラスチックス又はアルミニウム等の金属をフィルム状に薄く(例えば肉厚が略100μm)した材料、若しくはこれら異種のフィルム状材料を積層した複合材を用いることが可能である。こうした材料を用いて容器4は袋状のパック部品として形成される。
【0015】
蓄熱部2はその使用状態で、後述する圧縮機(熱交換対象物)の外郭形状の少なくとも一部に面接触ができる適正形状、具体的には図5に例示するように平面視円弧形状に、後述の支持手段11によって支持される。
【0016】
蓄熱部2の各面を図5及び図6により説明する。符号5aは円弧状の第1側面、符号5bは円弧状の第2側面を示している。これら第1側面5aと第2側面5bは略平行である。熱交換面として機能する第1側面5aは前記外郭形状の一部に倣う円弧形状をなしている。符号5cは第1側面5aと第2側面5bの幅方向(円弧が延びる方向)の一端を一体に接続した第1端面、符号5dは第1側面5aと第2側面5bの幅方項の一端を一体に接続した第2端面を示している。更に、符号5eは上端面、符号5fは下端面を示している。
【0017】
図1に示すように支持手段11は、複数例えば2個の支持部材12と、これらを接続したヒンジ14を備えている。
【0018】
各支持部材12は容器4より剛性が高い材料、例えば、厚さが0.3mmのステンレス、又は厚さが1mmのポリフェニレンサルファイド(PPS)等で形成されている。これらの支持部材12は、その素材が金属の場合プレス型により成型され、又、プラスチックスの場合、射出成形或いは成型された平板をプレス型で曲げ加工して得られる一体品である。
【0019】
支持部材12は、図4等に示すように基部12a、下側支持部12b、上側支持部12c、第1側方支持部12d、及び第2側方支持部12eを有している。
【0020】
基部12aは例えば板で形成されている。この基部12aは、第2側面5bに応じた形状であり例えば円弧状に曲がっている。下側支持部12bは、基部12aの円弧の中心側、換言すれば、支持部材12に支持された蓄熱部2が後述の熱交換対象物と熱交換をする側(以下、熱交換側と称する。)に向けて、基部12aの下縁から略直角に折れ曲がった状態に突出されている。同様に、上側支持部12cは下側支持部12bと平行に設けられている。したがって、この上側支持部12cも、支持部材12に支持された蓄熱部2の熱交換側に向けて、基部12aの上縁から略直角に折れ曲がった状態に突出されている。これら下側支持部12bと上側支持部12cの突出方向の縁は、基部12aと平行であり例えば円弧状に曲がっている。
【0021】
第1側方支持部12dは、支持部材12に支持された蓄熱部2の熱交換側に向けて、基部12aの幅方向(円弧が延びる方向)の一側縁から略直角に折れ曲がった状態に突出されている。同様に、第2側方支持部12eも、支持部材12に支持された蓄熱部2の熱交換側に向けて、基部12aの幅方向(円弧が延びる方向)の一側縁から略直角に折れ曲がった状態に突出されている。これら第1側方支持部12dと第2側方支持部12eは上下方向に延びている。
【0022】
第1側方支持部12dの下端は下側支持部12bの一端に接続され、それにより、第1側方支持部12dと下側支持部12bとは略直角をなして一体に連続している。第1側方支持部12dの上端は上側支持部12cの一端に接続され、それにより、第1側方支持部12dと上側支持部12cとは略直角をなして一体に連続している。
【0023】
同様に、第2側方支持部12eの下端は下側支持部12bの一端に接続され、それにより、第2側方支持部12eと下側支持部12bとは略直角をなして一体に連続している。第2側方支持部12eの上端は上側支持部12cの一端に接続され、それにより、第2側方支持部12eと上側支持部12cとは略直角をなして一体に連続している。
【0024】
したがって、支持部材12は、互に連続した各支持部12b〜12eの突出側に開口を有する箱状に形成されている。
【0025】
2個の支持部材12は、ヒンジ14によって回動可能に接続され、このヒンジ14を中心とする回動により両支持部材12間が開閉される。
【0026】
図3に示すようにヒンジ14は、例えば接続凸部15,16及びヒンジ軸17を有する蝶番で形成されている。接続凸部15は、一方の支持部材12が有した基部12aの第2側方支持部12e側の端部に一体に突設されている。同様に、接続凸部16は、他方の支持部材12が有した基部12aの第2側方支持部12e側の端部に一体に突設されている。これら接続凸部15,16は上下に重ね合わされる接続部位を有している。隣接された支持部材12の回動中心をなすヒンジ軸17は、接続凸部15,16の接続部位を貫通して両支持部材12を接続している。
【0027】
図1及び図2に示すように各支持部材12の内側に前記蓄熱部2が嵌り込んだ状態で支持されている。
【0028】
詳しくは、蓄熱部2が有する容器4の第2側面5bは、基部12aに略面接触する状態でこの基部12aに支持されている。換言すれば、基部12aは、蓄熱部2をその熱交換側(つまり、熱交換面をなす第1側面5a側)と反対側から支持している。
【0029】
これとともに、蓄熱部2が有する容器4の下端面5fは下側支持部12bに略面接触され、それにより、蓄熱部2はその下方から下側支持部12bで支持されている。同様に蓄熱部2が有する容器4の上端面5eは上側支持部12cに略面接触され、それにより、蓄熱部2はその上方から上側支持部12cで支持されている。したがって、蓄熱部2はその上下方向に支持部材12の下側支持部12bと上側支持部12cとで挟まれている。
【0030】
更に、蓄熱部2が有する容器4の第1端面5cは側方支持部12dに略面接触され、それにより、蓄熱部2は幅方向に沿って側方支持部12dで支持されている。同様に、蓄熱部2が有する容器4の第2端面5dは側方支持部12eに略面接触され、それにより、蓄熱部2は幅方向に沿って側方支持部12eで支持されている。したがって、蓄熱部2はその幅方向に支持部材12の側方支持部12dと側方支持部12eとで挟まれている。
【0031】
蓄熱部2の体積は蓄熱材3の相変化により変化する。例えば、蓄熱材3が液状態であるときの体積より固体状態での体積の方が小さくなる相変化材料で蓄熱材3が形成されている条件では、この蓄熱材3が相変化により収縮した場合(換言すれば、蓄熱材3が溶解した状態から放熱を伴って固化した場合)に、蓄熱部2の体積は最小となる。図7(A)及び図7(B)に示す蓄熱部2の厚みtは、蓄熱材3の体積が最小であるときにおいても、熱交換面である第1側面5aと基部12aに接した第2側面5bとの間の距離で規定される。前記のように支持部材12に支持された蓄熱部2の厚みtに対して、支持部材12の各支持部12b〜12eの突出寸法L(この符号を、上側支持部12cと下側支持部12dにおいて代表して示す。)は短く設定されている。
【0032】
既述のように前記構成の蓄熱装置1は、蓄熱材3を収容した容器4を備え、この容器4を接着止めや固定部品を用いることなく、支持部材12に支持している。このように蓄熱部2は、容器4に収められているとともに、この容器4が支持部材12の内側に支持されているので、取扱いが容易である。しかも、容器4は一般的な材料からなるので、低コストで入手できることに加えて、容器4をなす材料と周囲の支持部材12等を、液密の接合状態を保って、かつ、分離できないように接合する新たな技術を開発する必要もない。このため、量産性にも優れるので、低コストの蓄熱装置1を構成できる。更に、蓄熱材3は容器4以外には接しないので、蓄熱材3によって支持部材12等が腐食することがない。これとともに、容器4が薄く柔軟性を有していることで、後述する圧縮機の外周面に多少の凸凹があっても、この外周面への良好な密接性を確保でき、それにより、圧縮機との熱的接続を良好に維持できる。
【0033】
保持手段21は、蓄熱装置1が装着される熱交換対象物である後述の圧縮機に向けて支持手段11の支持部材12を介して蓄熱部2を押し付けて、蓄熱部2を圧縮機32と熱交換ができる状態に保持するものであって、例えばばね具体的にはコイルばねで形成されている。なお、保持手段21は、ばねに限定されず、金属製などのバンド等を用いることも可能である。
【0034】
コイルばね(保持手段21)は、弾性変形した状態で、2個の支持部材12にわたって取付けられている。具体的には、図1に示すようにコイルばね(保持手段21)の一端部を、一方の支持部材12の自由端部(つまり、第1側方支持部12d側の端部)に引っ掛けるとともに、コイルばね(保持手段21)の他端部を、他方の支持部材12の自由端部(つまり第1側方支持部12d側の端部)に引っ掛けて、引き伸ばされた状態に設けられている。なお、コイルばね(保持手段21)は、図面上一個しか描いていないが、実際には、複数例えば支持手段11の高さ方向の上下両端部とその中間部にそれぞれ配置されている。しかし、コイルばね(保持手段21)の使用数は1個でも差し支えない。
【0035】
次に、前記蓄熱装置1を備えたヒートポンプ式の空気調和機を図11により説明する。空気調和機31は、室外機Kaと室内機Kbとから構成されている。
【0036】
室外機Kaには、圧縮機32、四方切換え弁33、室外熱交換器34、及び膨張装置35等が配置されている。室内機Kbには、室内熱交換器36等が配置されている。これら圧縮機32−四方切換え弁33−室外熱交換器34−膨張装置35−室内熱交換器36は、冷媒管Pを介して順次接続されて、冷凍サイクル回路Rを構成している。この冷凍サイクル回路Rを流れる熱媒体には、例えば冷媒、具体的にはHFC(ハイドロフルオロカーボン)冷媒R410Aが使用される。
【0037】
圧縮機32は蓄熱装置1と熱交換をする熱交換対象物である。圧縮機32の外郭は鋳鉄で形成され、この外郭の形状は略円柱状である。圧縮機32はその運転により温度が上昇される。この場合、圧縮機32の温度は、圧縮機32の上部の方が下部よりもが高くなる。
【0038】
なお、蓄熱装置1が空気調和機31以外の機器、例えば冷蔵庫やヒートポンプ式給湯器などに適用される場合、蓄熱装置1と熱交換をする熱交換対象物として例えば温水配管などを使用することが可能である。
【0039】
室外機Kaには室外熱交換器34に対向して室外送風機37が配置される。更に、室外機Kaには、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
【0040】
室外送風機37は、プロペラ型の室外ファン37Fと、これを駆動する駆動モータ37Mとからなる。室外熱交換器34において、室外ファン37Fの回転により室外熱交換器34を通風する室外空気と、室外熱交換器34の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
【0041】
室内機Kbには室内熱交換器36に対向して室内送風機38が配置される。更に、室内機Kbには、図示しない圧縮機駆動装置、温度センサの他、各構成部品を接続する配管や電気配線等が設けられている。
【0042】
室内送風機38は、横流ファン型の室内ファン38Fと、これを駆動する駆動モータ38Mとからなる。室内熱交換器36において、室内ファン38Fの回転により室内熱交換器36を通風する室内空気と、室内熱交換器36の内部を流れる冷媒とが熱交換される。
【0043】
空気調和機31の制御部は、図示しないリモートコントローラから運転開始信号を受けることにより、圧縮機32と、室外送風機37、及び室内送風機38に駆動信号を送る。それにより、空気調和機31の冷房運転又は暖房運転が開始される。
【0044】
冷房運転では、圧縮機32で圧縮されて冷媒管Pに吐出される高温高圧のガス冷媒が、図11中実線で示すように切換えられた四方切換え弁33を経由して室外熱交換器34に流入する。室外熱交換器34に流入したガス冷媒は、室外送風機37の室外ファン37Fによって送風される外気と熱交換して冷却され、室外熱交換器34を流通するうちに徐々にガス状から液状に変化する。
【0045】
室外熱交換器34の冷媒出口で、冷媒の全てが液状となることで、室外熱交換器34は凝縮器として機能する。この室外熱交換器34から導出される高圧の液冷媒は、膨張装置35に導かれて断熱膨張し、ガス冷媒と液冷媒の混ざった、いわゆる気液ニ相状態の冷媒となる。
【0046】
この冷媒は、室内熱交換器36に導かれ、室内送風機38から送風される室内空気と熱交換して蒸発し、室内空気から蒸発潜熱を奪う。これにより、室内空気の温度が低下されて、この空気は室内に吹出されて冷房作用をなす。室内熱交換器36において、冷媒は気液ニ相状態からガス状態に変化されるので、室内熱交換器36は蒸発器として機能する。こうして室内熱交換器36から流出したガス冷媒は圧縮機32に吸込まれて、冷房サイクルが形成される。
【0047】
四方切換え弁33を図11中点線で示すように切換えることにより、圧縮機32から吐出される高温高圧のガス冷媒は、前記冷房サイクルとは逆方向に導かれて冷媒管Pを流通し循環して、暖房サイクルを形成する。このような暖房運転においては、室内熱交換器36が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器34が蒸発器として機能する。
【0048】
そのため、室内熱交換器36に通風される室内空気は、室内熱交換器36での熱交換により加熱される。つまり、冷媒が凝縮する際に放出される凝縮熱を吸収して温度上昇される。こうして室内熱交換器36において温度が上がった空気は、室内に吹出されて、暖房作用をなす。
【0049】
この空気調和機31は前記構成の蓄熱装置1を備えている。即ち、図1及び図2に模式的に示すように蓄熱装置1は、その蓄熱部2が熱伝導により圧縮機32と熱交換できるように、蓄熱部2を圧縮機32の周面の少なくとも一部例えば略全周にわたって接触させて(つまり、蓄熱部2を熱交換位置に配置して)、圧縮機32の外周に配置されている。この場合、蓄熱部2が圧縮機32の少なくとも上部と熱交換できるように蓄熱装置1を配置することが好ましい。
【0050】
次に、図8図10を参照して熱交換対象物である圧縮機32の外周に蓄熱装置1を組付ける手順を説明する。
【0051】
まず、図8に示すようにコイルばね(保持手段21)の一端部を、蓄熱部2が支持された両支持部材12のうちの一方から外した状態として、ヒンジ14を中心に両支持部材12を回動させることにより、これら支持部材12間を圧縮機32の直径より大きく開く。次に、図9に示すようにいずれか一方の支持部材12を圧縮機32の外周に沿って配置させ、この支持部材12の内側に支持されている蓄熱部2が有する容器4の第1側面(熱交換面)5aを圧縮機32の外周に接触させる。この後、他方の支持部材12を圧縮機32の外周に沿わせて配置させることにより、この支持部材12の内側に支持されている蓄熱部2が有する容器4の第1側面(熱交換面)5aを圧縮機32の外周に接触させる。最後に、図10に示すようにコイルばね(保持手段21)の前記一端部を、これが外された支持部材12の自由端部に引掛けて接続する。
【0052】
この接続に伴い、コイルばね(保持手段21)は伸張され弾性変形をした状態となる、このため、圧縮機32の外周に装着された蓄熱装置1の両支持部材12の自由端部、つまり、コイルばねが接続された端部は、互に近づけられるようにコイルばね(保持手段21)のばね力によって付勢される。これにより、蓄熱部2が有した容器4の第1側面5aが、圧縮機32の外郭の外周面に押付けられて密接され、容器4内の蓄熱材3に内圧が掛かって、この蓄熱材3が圧縮機32と熱的に接続される。つまり、蓄熱部2と圧縮機32とが第1側面5aを介して熱伝導により熱交換できるように接続される。
【0053】
以上説明した手順で圧縮機32の外周に蓄熱装置1が配置された状態で、図3に示すように両支持部材12の第2側方支持部12e間に隙間gが確保される。この隙間gはヒンジ14に近付く程狭くなっている。
【0054】
こうした構成の隙間gによって、両支持部材12等の部品の寸法精度のばらつきが吸収される。このため、第2側方支持部12e同士が接することで、これらがストッパとなって、両支持部材12の自由端部が互に近付くことが妨げられる、といった事態を生じないようにできる。これとともに、蓄熱装置1の蓄熱材3がその相変化に伴う体積変化をするときも、第2側方支持部12e同士が接することで、これらがストッパとなって、両支持部材12の自由端部が互に近付くことが妨げられる、といった事態を生じないようにできる。したがって、前記熱的接続に悪影響を与えることが防止される。
【0055】
以上説明した圧縮機32の外周への蓄熱装置1の配置により、容器4内の蓄熱材3は、冬季等における空気調和機31の暖房運転中に、高温となる圧縮機32によって蓄熱材3の融点以上の温度となるように加熱される。したがって、空気調和機31の運転中、蓄熱材3は圧縮機32の排熱によって温度上昇され、溶解して液相状態となる。
【0056】
一方、空気調和機31の使用者による暖房停止指令に基づいて、空気調和機31の暖房運転が停止される。暖房運転が停止すると、圧縮機32の発熱がなくなるため、周囲温度との温度差で、蓄熱装置1及び圧縮機32の温度は時間の経過とともに低下する。
【0057】
この状態から再び暖房運転が開始される場合、圧縮機32の温度が低いほど、ガス冷媒の熱が圧縮機32に吸収される。このため、室内熱交換器36から吹出される温風の温度は低く、指定された温度の温風が室内熱交換器36から吹出されるまでの時間が長く掛かる。
【0058】
しかし、一実施形態の空気調和機31によれば、暖房運転時に蓄熱材3に蓄えられた潜熱が、圧縮機32に暖房運転の停止中に放出されるので、圧縮機32の温度低下を抑制できる。このように蓄熱装置1からの放熱で圧縮機32の温度は比較的高く保持され、この状態から暖房運転が再開されることにより、圧縮機32に吸収されるガス冷媒の熱量が減らされるに伴い、室内熱交換器36から吹出される温風の温度を高くできるとともに、指定された温度の温風が室内熱交換器36から吹出されるまでの時間を短くできる。
【0059】
以上のように暖房運転中に蓄熱材3は圧縮機32の熱を吸収するので、それに伴い蓄熱材3は溶解して液状態になる。このとき、液状態の蓄熱材3は、重力の影響により、柔軟性を有した容器4の下端面5f側に集まろうとする。しかし、容器4はその下方から支持部材12の下側支持部12bで支持されているので、液状態の蓄熱材3の液圧で容器4が変形することが抑制される。
【0060】
このように容器4の変形を伴って蓄熱部2の厚みが重力方向(上下方向)に不均一となることが抑制される。これとともに、保持手段21の付勢力によって、容器4の第2側面5bに略面接触している支持部材12の基部12aは、容器4を圧縮機32の周面に押付けている。このため、容器4の形状が適正に保持されて、この容器4と圧縮機32との熱的な接続の性能が低下することを抑制できる。
【0061】
したがって、蓄熱材3の上下方向の各部位において、暖房運転時に想定した時間で所定の熱量を圧縮機32から吸収することが可能であるとともに、暖房運転停止後に圧縮機32に対して想定した放熱性能を発揮することが可能である。
【0062】
なお、蓄熱材3が溶解した状態で容器4をその厚みが不均一となるように変形させる他の因子を以下に説明する。コイルばね(保持手段21)の高さ位置のばらつき、複数のコイルばね(保持手段21)が張り渡される時期のずれ、複数のコイルばね(保持手段21)のばね特性のばらつき、及び暖房運転中の圧縮機32はその上部ほど熱くなるので、その温度勾配にしたがう蓄熱材3の溶解の進行。しかし、これらの因子が加わっても、容器4が不用意に変形することが支持部材12で防止されるので、容器4の形状は適正に保持される。
【0063】
更に、蓄熱装置1の支持部材12は、その基部12aから蓄熱部2の熱交換側に突出された上側支持部12cを有し、この上側支持部12cで蓄熱部2を上方から支持している。これにより、蓄熱材3が溶解した状態で、例えば3本のコイルばね(保持手段21)による付勢力のバランスが崩れても、溶解した蓄熱材3が容器4の上端面5e側に集まり、容器4の上部程厚く下部ほど薄くなるように容器4が変形することが抑制されるため、容器4の形状を適正に保持できる。
【0064】
加えて、蓄熱装置1の支持部材12は、基部12aの幅方向両側から蓄熱部2の熱交換側に突出された側方支持部12d,12eを有し、これら側方支持部12d,12eで蓄熱部2をその幅方向から支持している。これにより、蓄熱材3が溶解した状態で、例えば3本のコイルばね(保持手段21)による付勢力のバランスが崩れても、蓄熱材3が容器4の第1端面5c側又は第2端面5dに集まり、容器4の幅方向一端(第1端面5c)側程厚く幅方向他端(第2端面5d)側ほど薄くなるように容器4が変形することを抑制できるため、容器4の形状を適正に保持できる。
【0065】
なお、側方支持部は基部12aの幅方向両側縁のうちの少なくとも片方の側縁にあればよい。即ち、支持部材12の第2側方支持部12eは省略しても良い。この場合、蓄熱装置1が圧縮機32に装着された状態で、隣接する蓄熱部2が有した容器4の第2端面5d同士が接する構成とすれば良い。
【0066】
又、支持部材12の下側支持部12bと上側支持部12cとは、基部12aに対して略直角に折れ曲がっているので、基部12aをその上下両端において補強できる。これにより、基部12aの剛性が高められる。したがって、コイルばね(保持手段21)のばね力で基部12aの幅方向両縁が圧縮機32に近付けられるように基部12aが変形することを抑制できる。このことも、容器4の形状を適正に保持する上で有効である。
【0067】
しかも、蓄熱装置1の支持部材12において、その第1側方支持部12d及び第2側方支持部12eの各下端は下側支持部12bに接続され、第1側方支持部12d及び第2側方支持部12eの各上端は上側支持部12cに接続されている。これにより、支持部材12を構成する素材の厚みが薄い場合であっても、支持部材12全体の剛性が更に高められ、容器4の形状を適正に保持する上で有用である。
【0068】
又、蓄熱装置1の支持部材12において、その基部12aに対する上側支持部12c、下側支持部12b、及び第1側方支持部12d、第2側方支持部12eの各突出寸法Lは、蓄熱部2の熱交換面(第1側面5a)と基部12aに接した蓄熱部2の面(第2側面5b)とで規定される蓄熱部2の厚みtより短い。
【0069】
これにより、蓄熱材3が液状態から固化されて、この蓄熱材3が収縮した状態にある場合でも、前記突出寸法Lと前記厚みtとの関係により、図7(B)に示すように各支持部が圧縮機32の外周に当ることがない。又、蓄熱材3が液状態ある場合も、前記突出寸法Lと前記厚みtとの関係、及び蓄熱材3が固体状態にあるときと比較して膨張した状態にあるので、図7(A)に示すように各支持部12b〜12eが圧縮機32の外周に当ることがない。
【0070】
したがって、コイルばね(保持手段21)の付勢による、容器4の第1側面(熱交換面)5aと圧縮機32の外周面との密接状態が保持される。このため、蓄熱材3の相変化に拘わらず、圧縮機32との熱的な接続状態が確保され、設計通りに蓄熱材3の吸熱と放熱を実現させることができる。
【0071】
以上のように本発明の一実施の形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この新規な実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であるとともに、発明の要旨を逸脱しない限り、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形などは、発明の範囲に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…蓄熱装置、2…蓄熱部、t…蓄熱部の厚み、3…蓄熱材、4…容器、11…支持手段、12…支持部材、12a…基部、12b…下側支持部、12c…上側支持部、12d…第1側方支持部、12e…第2側方支持部、L…各支持部の突出寸法、21…保持手段、31…空気調和機、32…圧縮機(熱交換対象物)、P…冷媒管
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