特許第6261860号(P6261860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261860
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】鉄筋定着構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/16 20060101AFI20180104BHJP
   E04C 5/02 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   E04B1/16 G
   E04C5/02
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-287458(P2012-287458)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129670(P2014-129670A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】高津 比呂人
(72)【発明者】
【氏名】水島 靖典
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−130848(JP,A)
【文献】 特開平09−228470(JP,A)
【文献】 特開2005−344317(JP,A)
【文献】 特開平08−199681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16−18
E04C 5/02
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下梁主筋の軸端部が接合される下側枠材と、
上梁主筋の軸端部が接合される上側枠材と、
前記下側枠材と前記上側枠材とを上下方向に間隔をあけて連結する連結部材と、
を備えた鉄筋定着装置を有し、
前記下側枠材及び前記上側枠材には、前記下梁主筋及び前記上梁主筋が挿通された孔が形成され、
前記下梁主筋及び前記上梁主筋の先端には、前記孔よりも大きな鉄筋コブが設けられ
前記下側枠材及び前記上側枠材は、それぞれ上下に重ね合わされて接合された複数の板枠材で構成され、
重ね合わせ面には前記下梁主筋の軸端部又は前記上梁主筋の軸端部が係合し、重ね合わせることで前記孔となる凹部が形成されている、鉄筋定着構造。
【請求項2】
前記下側枠材には、下柱の柱主筋の上端部が接合され、
前記上側枠材には、上柱の柱主筋の下端部が接合されている、
請求項1に記載の鉄筋定着構造。
【請求項3】
前記下側枠材には、柱鉄骨を支持する基礎部に連結される基礎梁の下梁主筋が接合され、
前記上側枠材には、前記基礎梁の上梁主筋が接合されている、
請求項1に記載の鉄筋定着構造。
【請求項4】
前記鉄筋定着装置の外側には、上側及び下側に架台を有する鋼製フレームが設けられ、
前記鋼製フレームの下側の前記架台には、前記鉄筋定着装置の前記下側枠材が載せられ、
前記鋼製フレームには、コンクリートに埋設され、前記柱鉄骨を支持するアンカーボルトが取り付けられる、
請求項3の鉄筋定着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋定着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、柱と梁の仕口における柱主筋の内側に設置され、梁の主筋を定着させる鉄筋の定着装置において、梁の主筋が接続されるリング状部と、リング状部の内側に配設されてリング状部を補強するリブ部と、を備えてなることを特徴とする鉄筋の定着装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【0003】
ここで、柱梁仕口において梁主筋の定着性が確保されない場合、柱梁仕口からの梁主筋の抜け出しが生じ、架構全体の履歴性状がスリップ型となる。履歴性状がスリップ型になると、設計で想定している履歴エネルギーの吸収量が確保されない虞がある。
【0004】
柱梁仕口からの梁主筋が抜け出さないように梁主筋の定着性を確保するためには、柱成を大きくして、梁主筋の定着代を長く必要がある。しかし、柱成を大きくして梁主筋の定着性を確保すると、柱の水平断面が必要以上に大きくなる。
【0005】
したがって、梁主筋の抜け出しを防止することに関して、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−177245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、梁主筋の抜け出しを防止することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、下梁主筋の軸端部が接合される下側枠材と、上梁主筋の軸端部が接合される上側枠材と、前記下側枠材と前記上側枠材とを上下方向に間隔をあけて連結する連結部材と、を備えた鉄筋定着装置を有し、前記下側枠材及び前記上側枠材には、前記下梁主筋及び前記上梁主筋が挿通された孔が形成され、前記下梁主筋及び前記上梁主筋の先端には、前記孔よりも大きな鉄筋コブが設けられ、前記下側枠材及び前記上側枠材は、それぞれ上下に重ね合わされて接合された複数の板枠材で構成され、重ね合わせ面には前記下梁主筋の軸端部又は前記上梁主筋の軸端部が係合し、重ね合わせることで前記孔となる凹部が形成されている。
【0009】
請求項1に記載の発明では、下梁主筋の軸端部が鉄筋定着装置の下側枠材に結合され、上梁主筋の軸端部が鉄筋定着装置の上側枠材に結合される。したがって、梁主筋の抜け出しが防止される。
【0011】
また、板枠材の凹部へ下梁主筋の軸端部及び上梁主筋の軸端部を係合させ、板枠材で挟んで接合することで、梁主筋の配筋作業が完了する。よって、施工性が向上する。
【0012】
請求項2の発明は、前記下側枠材には、下柱の柱主筋の上端部が接合され、前記上側枠材には、上柱の柱主筋の下端部が接合されている。
【0013】
請求項2に記載の発明では、柱主筋と梁主筋とが干渉しないので、配筋の施工性が向上する。
【0014】
請求項3の発明は、前記下側枠材には、柱鉄骨を支持する基礎部に連結される基礎梁の下梁主筋が接合され、前記上側枠材には、前記基礎梁の上梁主筋が接合されている。
【0015】
請求項3に記載の発明では、梁主筋と、基礎部に設けられる例えば杭鉄筋、アンカーボルト、架台等との干渉が抑制され、施工性が向上する。
【0016】
請求項4の発明は、前記鉄筋定着装置の外側には、上側及び下側に架台を有する鋼製フレームが設けられ、前記鋼製フレームの下側の前記架台には、前記鉄筋定着装置の前記下側枠材が載せられ、前記鋼製フレームには、コンクリートに埋設され、前記柱鉄骨を支持するアンカーボルトが取り付けられる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、柱鉄骨のアンカーボルトを支持する架台に鉄筋定着装置を載せることで、別途、鉄筋定着装置を載せるスペーサーブロック等を用いる場合と比較し、施工が容易である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、梁主筋の抜け出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第一実施形態の仕口部の配筋を示す斜視図である。
図2】(A)は上側の梁鉄筋ユニットと下側の梁鉄筋ユニットとを示す斜視図であり、(B)仕口部鉄筋ユニットを示す斜視図であり、(C)は柱鉄筋ユニットを示す斜視図である。
図3】上側の梁鉄筋ユニットと下側の梁鉄筋ユニッとで配筋された梁鉄筋を示す斜視図である。
図4】鉄筋定着装置を示す斜視図である。
図5図4の鉄筋定着装置の分解斜視図である。
図6】(A)は鉄筋定着装置を構成する仕口部鉄筋ユニットを示す斜視図であり、(B)は(A)のB部の部分拡大正面図である。
図7-1】第一実施形態の仕口部の施工工程の(A)と(B)とを示す斜視図である。
図7-2】第一実施形態の仕口部の施工工程の(C)と(D)とを示す斜視図である。
図8】(A)は第一変形例の鉄筋定着装置を示す分解斜視図であり、(B)は(A)の要部を示す正面図である。
図9】(A)は第二変形例の鉄筋定着装置を示す斜視図であり、(B)は(A)の要部を示す斜視図である。
図10】第三変形例の鉄筋定着装置を示す分解斜視図である。
図11】第四変形例の鉄筋定着装置を示す斜視図である。
図12】(A)は第五変形例の鉄筋定着装置の仕口部鉄筋ユニットを示す斜視図であり、(B)は(A)のB部の部分拡大正面図である。
図13】(A)は第六変形例の鉄筋定着装置の仕口部鉄筋ユニットを示す斜視図であり、(B)は(A)のB部の部分拡大正面図である。
図14-1】第二実施形態の基礎部の施工工程の(A)と(B)とを示す斜視図である。
図14-2】第二実施形態の基礎部の施工工程の(C)と(D)とを示す斜視図である。
図14-3】第二実施形態の基礎部の施工工程の(E)と(F)とを示す斜視図である。
図14-4】第二実施形態の基礎部の施工工程の(G)と(H)とを示す斜視図である。
図15】第二実施形態の基礎部の配筋を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第一実施形態>
本発明の一実施形態にかかる鉄筋定着装置と本鉄筋定着装置を鉄筋コンクリート造の柱と鉄筋コンクリート造の梁との仕口部(柱梁接合部)に適用した配筋構造について説明する。なお、各図において、鉛直方向を矢印Zで示し、水平方向の直交する二方向を矢印X及び矢印Yで示す。また、各図においては、各種鉄筋のみが図示されコンクリートは図示していない。
【0021】
[仕口部の概要構造]
まず、仕口部の概要構造について説明する。
【0022】
図1に示すように、地上階又は地下階における鉄筋コンクリート造の柱10と鉄筋コンクリート造の梁20A、20B、20C、20Dとの仕口部(柱梁接合部)30に鉄筋定着装置100が埋設されている。そして、鉄筋定着装置100に、後述する梁主筋52L、52Uと柱主筋14L、14Uとが接合されている。また、柱10における仕口部30の上側を上柱12Uとし、下側を下柱12Lとする。
【0023】
なお、梁20A、20CはX方向に沿って設けられ、梁20B、20DはY方向に沿って設けられている。また、梁20A、20B、20C、20Dは、配置される場所や方向が異なる以外は同様の構成である。よって、以降の説明において、これらを区別する必要がない場合は符号の後のA、B、C、Dを省略する。
【0024】
また、本実施形態では、梁20に埋設されている梁鉄筋は、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとで構成されている。
【0025】
[梁鉄筋ユニット]
つぎに、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとについて説明する。
【0026】
なお、以降の説明において、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する各部材の後には符号の後にLを付し、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する各部材の後には符号の後にUを付す。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとは上下の向きが異なる以外は略同様の構成である。よって、これらを区別しないで説明する場合はU、Lを省略する。
【0027】
図1図2(A)、図3に示すように、下側の梁鉄筋ユニット50Lは、梁主筋52Lとせん断補強筋54Lとを含んで構成されている。同様に、上側の梁鉄筋ユニット50Uは、梁主筋52Uとせん断補強筋54Uとを含んで構成されている。
【0028】
下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lは、梁20(図1図3参照)の下部に梁幅方向に間隔をあけて梁長方向(X方向又はY方向、図1参照)に沿って配設されている。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成するせん断補強筋54Lは、上側を開口側とするU字形状とされ梁長方向に間隔をあけて配設されていると共にU字の底部が梁主筋52Lに接合されている。
【0029】
同様に、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uは、梁20(図1図3参照)の上部に梁幅方向に間隔をあけて梁長方向(X方向又はY方向、図1参照)に沿って配設されている。また、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成するせん断補強筋54Uは、下側を開口側とするU字形状(逆U字形状)とされ梁長方向に間隔をあけて配設されていると共にU字の底部が梁主筋52Uに接合されている。
【0030】
そして、図1及び図3に示すように、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合されている。
【0031】
また、図2(A)及び図3に示すように、各梁主筋52の先端には、梁主筋52の外径よりも大きな鉄筋コブ53が設けられている。
【0032】
なお、梁主筋52とせん断補強筋54とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)によって接合されている。また、本実施形態の梁鉄筋ユニット50は、建築現場でなく、別の場所にある工場で製作される。
【0033】
[鉄筋定着装置]
つぎに、仕口部(柱梁接合部)30に埋設された鉄筋定着装置100について説明する。
【0034】
図4及び図5に示すように、鉄筋定着装置100は、下側枠材110Lと上側枠材110Uと連結部材130とを含んで構成されている。なお、以降の説明において、基本的には下側の部材には符号の後にLを付し、上側の部材には符号の後にUを付して説明する。また、両者を区別しないで説明する場合はL、Uを省略して説明する。
【0035】
下側枠材110L及び上側枠材110Uは、平面視において矩形の枠状をなし、上下方向に間隔をあけて配置されている。下側枠材110Lと上側枠材110Uとは、連結部材130によって連結されている。連結部材130は、仕口部30に配筋される柱主筋132と柱主筋132の周囲を囲むせん断補強筋134とを含んで構成されている。なお、柱主筋132とせん断補強筋134とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)又は結束線によって接合されている。
【0036】
また、柱主筋132の下端部135Lが下側枠材110Lに溶接接合され、柱主筋132の上端部135Uが上側枠材110Uに溶接接合されている。なお、本実施形態では、図6に示すように、柱主筋132における上下の端部135の先端部分137は、開先形状となっている。
【0037】
そして、図1に示すように、下側枠材110Lに下側の梁主筋52Lの軸端部51L(図3も参照)が接合されると共に上側枠材110Uに上側の梁主筋52Uの軸端部51U(図3も参照)が接合される。また、下側枠材110Lには下柱12Lの柱主筋14Lの端部16Lが接合され、上側枠材110Uには上柱12Uの柱主筋14Uの端部16Uが接合されている。
【0038】
図4及び図5に示すように、本実施形態では、下側枠材110L及び上側枠材110Uは、それぞれ上下に重ね合わされて接合された複数枚(本実施形態では二枚)の板枠材112L、112Uで構成されている。また、板枠材112L、112Uの重ね合わせ面114L、114Uには、凹部116L、116Uが形成されている。
【0039】
そして、図4に示すように、板枠材112L、112Uの重ね合わせ面114L、114U同士が溶接接合されている。また、接合されることで孔118L、118Uが形成される。
【0040】
なお、図1に示すように、各板枠材112L、112Uの凹部116L、116Uに梁主筋52L、52Uの軸端部51L、51U(図3参照)が係合した状態で重ね合わせ面114L、114Uが接合されている。
【0041】
図5に想像線(二点破線)で示すように、本実施形態では、板枠材112U、112L同士が接合される前に、板枠材112Lの一方(下側)には下柱12Lの柱主筋14Lの端部16Lが接合され、板枠材112Uの一方(上側)には上柱12Uの柱主筋14Uの端部16Uが接合されている。
【0042】
そして、図2(B)、図2(C)及び図5に示すように、板枠材112同士が接合される前において、仕口部鉄筋ユニット102と、柱鉄筋ユニット104L、104Lと、を構成している。なお、柱鉄筋ユニット104には上下端部に板枠材112が接合されている。また、柱鉄筋ユニット104には、柱主筋14の周囲を囲むようにせん断補強筋15が接合されている。また、柱主筋14とせん断補強筋15とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)又は結束線によって接合されている。
【0043】
なお、本実施形態の柱鉄筋ユニット104及び仕口部鉄筋ユニット102は、建築現場でなく、別の場所にある工場で製作される。
【0044】
[仕口部の施工工程]
つぎに、仕口部30の施工工程について説明する。
【0045】
図7(A)に示すように、下柱12L(図1も参照)を構成する柱鉄筋ユニット104Lを建て込んで、下側枠材110Lを構成する板枠材112Lに下側の梁鉄筋ユニット50Lを載せかける。このとき、板枠材112Lの凹部116Lに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51L(図3参照)を係合させる。
【0046】
図7(B)に示すように、仕口部鉄筋ユニット102を板枠材112Lの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51Lが係合するように載せて、重ね合わせ面114L(図5参照)同士を接合する(図4参照)。
【0047】
図7(C)に示すように、上側枠材110Uを構成する板枠材112Uに上側の梁鉄筋ユニット50Uを載せかける。このとき板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(図3参照)を係合させる。
【0048】
図7(D)に示すように、上柱12U(図1も参照)を構成する柱鉄筋ユニット104Uを板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(図3参照)が係合するように載せて、重ね合せ面114U同士(図5参照)を接合する(図4参照)。
【0049】
そして、配筋した鉄筋の周りに型枠を設けコンクリートを打設して、鉄筋コンクリート造の梁20及び柱10を構築する。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合される。なお、重ね継ぎ手以外の方法で結合されていてもよい。例えば、コンクリートを打設する前に溶接結合してもよい。
【0050】
なお、柱鉄筋ユニット104Uの上に図7で説明した施工を繰りかえすことで、上階の柱梁が構築される。
【0051】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lの軸端部51Lが鉄筋定着装置100の下側枠材110Lに接合(緊結)され、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uの軸端部51Uが鉄筋定着装置100の上側枠材110Uに接合(緊結)されている。また、本実施形態では、凹部116が重なって形成される孔118(図5参照)の孔径よりも鉄筋コブ53は大きい(図1参照)ので、下側枠材110L及び上側枠材110Uから梁主筋52が引き抜かれない。
【0053】
また、梁主筋52L、52Uの引張荷重は、下側枠材110L及び上側枠材110Uを介して、連結部材130(柱主筋132及びせん断補強筋134)を含む鉄筋定着装置100全体に伝達され、鉄筋定着装置100全体で引張荷重を受ける。また、梁主筋52が鉄筋定着装置100に接合(緊結)されることによって、梁主筋52の変形が拘束される。
【0054】
したがって、梁主筋52の仕口部30からの抜け出しが防止される。よって、仕口部30における梁主筋の定着強度を確保するため、例えば、梁主筋の曲げ加工や柱成を大きくして定着代を長くする必要がない。
【0055】
また、板枠材112の凹部116へ梁主筋52の軸端部51を係合させて、板枠材112で挟んで接合することで、梁主筋52の配筋作業が完了する。更に、図1に示すように、仕口部30内で、X方向の梁20A、20C及びY方向の梁20B、20Cのそれぞれの梁主筋52が干渉しない(梁主筋52同士が干渉しない)。また、梁主筋52と柱主筋14とも干渉しない。したがって、配筋精度や施工性が向上する
【0056】
また、仕口部30内で梁主筋52同士を互いに干渉しないように高さ方向に段差を設ける必要が無くなるので、梁主筋52を高さ方向に段差を設ける場合よりも、梁成を低くすることができる。
【0057】
また、図2に示すように、柱鉄筋ユニット104、梁鉄筋ユニット50、仕口部鉄筋ユニット102と、それぞれユニット化されているので、現地で配筋する場合と比較し品質が保障されると共に、現地での作業が軽減される。
【0058】
また、梁鉄筋ユニット50において、梁主筋52とせん断補強筋54とが電気抵抗溶接によって、予め接合されているので、現地で両者を結束する必要がなく、配筋の乱れもなくなるので、施工性が向上する。更に、梁鉄筋を下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとに分割することで、二つとのユニットに分割していない場合と比較し、現地までの輸送に際して積荷がかさばらず、搬送性が向上する。
【0059】
また、同様に、梁鉄筋ユニット50及び柱鉄筋ユニット104においても、柱主筋14、132とせん断補強筋15、134とが電気抵抗溶接によって、予め接合されているので、現地で両者を結束する必要がなく、配筋の乱れもなくなるので、施工性が向上する。
【0060】
また、スラブ型枠の施工前に柱・梁・壁の配筋を行うことができるので鉄筋工の作業効率が向上する。
【0061】
[変形例]
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
【0062】
(第一変形例)
図8に示す第一変形例の鉄筋定着装置202では、上側枠材111Uは、それぞれ上下に重ね合わされて接合された三枚の板枠材113A、113B、113Cで構成されている。また、板枠材113A、113B、113Cの重ね合わせ面115A、115B、115Cには、それぞれ凹部116A、116B、116Cが形成されている。
【0063】
そして、上下方向に二段に配置された上側の梁主筋52Uの軸端部51U(図3参照)が板枠材113A、113B、113Cの凹部116A、116B、116Cに係合される。言い換えると、梁主筋52が挿通し接合される孔118が上下に二段形成される(図8(B)を参照)。したがって、鉄筋定着装置202は、上側の梁主筋52Uが二段筋の構成に対応している。
【0064】
なお、下側枠材も同様に、三枚の板枠材113A、113B、113Cで構成し、下側の梁主筋52Lが二段筋である構成に対応するようにしてもよい。また、四枚以上の板枠材で構成し、三段筋以上の構成に対応するようにしてもよい。
【0065】
(第二変形例)
図9に示す第二変形例の鉄筋定着装置204では、下側枠材210L及び上側枠材210Uは板枠材に分割されていないで、孔118が形成されている。そして、梁主筋52を孔118に挿通し接合する。なお、梁主筋52と下側枠材210L及び上側枠材210Uとの接合方法は、どのような方法であってもよい。例えば、孔118に溶着金属を流し込んで固結してもよいし、図9(B)に示すように、挿通後に先端部55に定着板190を接合して抜け出しを防止してもよい。
【0066】
(第三変形例)
図10に示す第三変形例の鉄筋定着装置206は、下側枠材110Lと上側枠材110Uとが鋼管で構成された連結部材220によって連結されている。なお、下側枠材110L及び上側枠材110Uと連結部材220とは溶接接合されている。このように連結部材220を鋼管とすることで、鉄筋定着装置206の剛性が向上し、この結果、仕口部30の強度が向上する。
【0067】
(第四変形例)
図11に示す第四変形例の鉄筋定着装置208は、板枠材112がボルト299(及びナット)によって締結されている。したがって、例えば溶接接合と比較し、作業性が向上する。
【0068】
(第五変形例)
図12に示す第五変形例の鉄筋定着装置209は、下側枠材110L及び上側枠材110Uにスリーブ212L、212Uが設けられている。そして、スリーブ212に柱主筋132の軸端部135を挿入し、溶着金属214(図11(B)参照)を流し込んで固結している。このようにスリーブ212を設けることで柱主筋132の接合箇所の位置決めが容易となると共に位置決め精度が向上する。
【0069】
(第六変形例)
図13に示す第六変形例の鉄筋定着装置211は、下側枠材110L及び上側枠材110Uにスリーブ212L、212Uが設けられている。そして、柱主筋132の軸端部135とスリーブ212とにネジ溝137、213(図13(B)参照)を切って螺合させている。
【0070】
(その他)
第五変形例及び第六変形例において、スリーブ212の数は、柱主筋132の本数よりも多い。これは、柱主筋132を多くした場合にも、使用可能なように汎用性が高められているからである。
【0071】
また、下柱12Lの柱主筋14L及び上柱12Uの柱主筋14Uと、下側枠材110L及び上側枠材110Uと、の接合も、第五変形例及び第六変形例のように、スリーブ212に挿入させて接合する構成を適用することができる。
【0072】
<第二実施形態>
本発明の一実施形態にかかる鉄筋定着装置100を基礎階における鉄筋コンクリート造の基礎梁とその上部から鉄骨造となる鉄筋コンクリート造の基礎柱との柱梁接合部(仕口部)である基礎部に適用した構造について説明する。
【0073】
なお、鉄筋定着装置100は、図4及び図5等に示す第一実施形態と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。なお、第一実施形態の変形例も本実施形態に適用することができる。また、その他第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
[基礎部の概要]
まず、基礎部の概要について説明する。
【0075】
図14(A)、図14(H)及び図15等に示すように、杭頭302の上に基礎部200が設けられている。基礎部200は、基礎梁280A、280B、280Cとその上部から鉄骨造となる鉄筋コンクリート造の基礎柱284(図14(H))との柱梁接合部(仕口部)である。
【0076】
そして、基礎部200に第一実施形態と同様の鉄筋定着装置100が埋設されると共に、鉄筋定着装置100に、基礎梁280A,280B,280Cの梁主筋52L、52Uが接合(緊結)されている。
【0077】
また、鋼製フレーム250(図14(G)も参照)が鉄筋定着装置100の外側に設置され、鉄筋コンクリート造の基礎柱284の上部に柱鉄骨282を取り付けるアンカーボルト254が鉄筋定着装置100の内側に設置される。更に、鉄筋定着装置100(鋼製フレーム250)の周りに基礎袴筋312と基礎配筋310とが配筋されている。
【0078】
[基礎部の施工方法]
つぎに、基礎部の施工方法について説明する。
【0079】
図14(A)に示すように、杭頭302の周囲に基礎施工用の捨てコン304を打設する(図15も参照)。そして、捨てコン304に後述する柱鉄骨282を取り付けるアンカーボルト254(図14(G)、(H)を参照)を固定するために用いる鋼製フレーム250(図14(G))を構成する下側の架台251を設置する。
【0080】
図14(B)に示すように、基礎配筋310を行い、鉄筋定着装置100の下側枠材110Lを構成する板枠材112L(図4及び図5参照)を架台251の上に設置する。なお、杭鉄筋301は板枠材112Lの内側に配置される(図15も参照)。
【0081】
図14(C)に示すように、板枠材112Lに下側の梁鉄筋ユニット50Lを載せ掛ける。このとき、下側枠材110Lを構成する板枠材112Lの凹部116Lに、梁鉄筋ユニット50Lの下側の梁主筋52Lの軸端部51Lを係合させる。
【0082】
図14(D)に示すように、仕口部鉄筋ユニット102を板枠材112Lの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51Lが係合するように載せて、重ね合せ面114L(図5参照)同士を接合する(図4参照)。
【0083】
図14(E)に示すように、上側枠材110Uを構成する板枠材112Uに上側の梁鉄筋ユニット50Uを載せかける。このとき板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(図3参照)を係合させる。
【0084】
図14(F)に示すように、鉄筋定着装置100の上側枠材110Uを構成する板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(図3参照)が係合するように載せて、重ね合せ面114U同士(図5参照)を接合する(図4参照)。
【0085】
図14(G)に示すように、下側の架台251(図14(A)参照)を利用して上側の架台252を設置し、鋼製フレーム250を組み立てる。そして、鋼製フレーム250にアンカーボルト254を取り付ける。なお、鋼製フレーム250は鉄筋定着装置100の外側に設置され、アンカーボルト254は鉄筋定着装置100の内側に設置される(図15も参照)。
【0086】
図14(H)に示すように、鉄筋定着装置100(鋼製フレーム250)の周りに基礎袴筋312を配筋する。
【0087】
そして、型枠を設けてコンクリートを打設し、基礎部200、鉄筋コンクリート造の梁280、及び鉄筋コンクリートの柱284を構築する。なお、柱鉄骨282を支持する基礎部200のコンクリートを打設した後に、アンカーボルト254に柱鉄骨282を取り付ける。
【0088】
また、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合される。なお、重ね継ぎ手以外の方法で結合されていてもよい。例えば、コンクリートを打設する前に溶接結合してもよい。
【0089】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0090】
第一実施形態と同様に、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lの軸端部51Lが鉄筋定着装置100の下側枠材110Lに接合(緊結)され、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uの軸端部51Uが鉄筋定着装置100の上側枠材110Uに接合(緊結)されている。また、凹部116が重なって形成される孔118(図5参照)の孔径よりも鉄筋コブ53は大きいので、下側枠材110L及び上側枠材110Uから梁主筋52が引き抜かれない。
【0091】
また、梁主筋52L、52Uの引張荷重は、下側枠材110L及び上側枠材110Uを介して、連結部材130(柱主筋132及びせん断補強筋134)を含む鉄筋定着装置100全体に伝達され、鉄筋定着装置100全体で引張荷重を受ける。また、梁主筋52が鉄筋定着装置100に接合(緊結)されることによって、梁主筋52の変形が拘束される。
【0092】
したがって、梁主筋52の基礎部200からの抜け出しが防止される。また、基礎部200における梁主筋の定着強度を確保するため、例えば、梁主筋の曲げ加工や柱成を大きくして定着代を長くする必要がない。
【0093】
また、基礎部200内で、X方向の梁280A、280C及びY方向の梁280Bのそれぞれの梁主筋52が干渉しない(梁主筋52同士が干渉しない)。また、鉄筋定着装置100はアンカーボルト254及び杭鉄筋301を囲むように配置されるため、これらと梁主筋52との干渉が回避される。
【0094】
また、柱鉄骨282のアンカーボルト254を支持する鋼製フレーム250の下側の架台251を鉄筋定着装置100の取付けにも利用することにより、鉄筋定着装置100の施工が効率化される。なお、鋼製フレーム250の下側の架台251に利用しないで、下側枠材110の下にスペーサーブロック等を入れて鉄筋定着装置100を取り付けてもよい。
【0095】
なお、その他、第一実施形態及び変形例と重複する作用及び効果の説明は省略する。
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0096】
上記実施形態では、地上階の仕口部30及び基礎部200に本発明を適用したが、これに限定されない。
【0097】
例えば、第二実施形態の基礎梁において柱鉄骨を支持しない構成(基礎梁接合部)や基礎梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部にも適用できる。
【0098】
また、基礎部のアンカーボルトが支持する上部の柱は鉄骨造の柱だけでなく、コンクリート充填鋼管(CFT)の鋼管柱や鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨柱であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、鉄筋定着装置に接合される梁(梁主筋)は四つ(第一実施形態)又は三つ(第二実施形態)であったがこれに限定されない。鉄筋定着装置に接合される梁は二つ(交差方向でも同方向でもよい)であってもよいし、一つであってもよい。
【0100】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0101】
12L 下柱
12U 上柱
14L 柱主筋
14U 柱主筋
16L 上端部
16U 下端部に接合される
51L 軸端部
52L 梁主筋(下梁主筋の一例)
51L 軸端部
52U 梁主筋(上梁主筋の一例)
100 鉄筋定着装置
110L 下側枠材
110U 上側枠材
112L 板枠材
112U 板枠材
116L 凹部
116U 凹部
130 連結部材
200 基礎部
202 鉄筋定着装置
204 鉄筋定着装置
206 鉄筋定着装置
220 連結部
208 鉄筋定着装置
209 鉄筋定着装置
211 鉄筋定着装置
251 架台
254 アンカーボルト
280A 基礎梁
280B 基礎梁
280C 基礎梁
282 柱鉄骨
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図15