(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第一実施形態>
本発明の一実施形態にかかる鉄筋定着装置と本鉄筋定着装置を鉄筋コンクリート造の柱と鉄筋コンクリート造の梁との仕口部(柱梁接合部)に適用した配筋構造について説明する。なお、各図において、鉛直方向を矢印Zで示し、水平方向の直交する二方向を矢印X及び矢印Yで示す。また、各図においては、各種鉄筋のみが図示されコンクリートは図示していない。
【0021】
[仕口部の概要構造]
まず、仕口部の概要構造について説明する。
【0022】
図1に示すように、地上階又は地下階における鉄筋コンクリート造の柱10と鉄筋コンクリート造の梁20A、20B、20C、20Dとの仕口部(柱梁接合部)30に鉄筋定着装置100が埋設されている。そして、鉄筋定着装置100に、後述する梁主筋52L、52Uと柱主筋14L、14Uとが接合されている。また、柱10における仕口部30の上側を上柱12Uとし、下側を下柱12Lとする。
【0023】
なお、梁20A、20CはX方向に沿って設けられ、梁20B、20DはY方向に沿って設けられている。また、梁20A、20B、20C、20Dは、配置される場所や方向が異なる以外は同様の構成である。よって、以降の説明において、これらを区別する必要がない場合は符号の後のA、B、C、Dを省略する。
【0024】
また、本実施形態では、梁20に埋設されている梁鉄筋は、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとで構成されている。
【0025】
[梁鉄筋ユニット]
つぎに、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとについて説明する。
【0026】
なお、以降の説明において、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する各部材の後には符号の後にLを付し、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する各部材の後には符号の後にUを付す。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとは上下の向きが異なる以外は略同様の構成である。よって、これらを区別しないで説明する場合はU、Lを省略する。
【0027】
図1、
図2(A)、
図3に示すように、下側の梁鉄筋ユニット50Lは、梁主筋52Lとせん断補強筋54Lとを含んで構成されている。同様に、上側の梁鉄筋ユニット50Uは、梁主筋52Uとせん断補強筋54Uとを含んで構成されている。
【0028】
下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lは、梁20(
図1、
図3参照)の下部に梁幅方向に間隔をあけて梁長方向(X方向又はY方向、
図1参照)に沿って配設されている。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成するせん断補強筋54Lは、上側を開口側とするU字形状とされ梁長方向に間隔をあけて配設されていると共にU字の底部が梁主筋52Lに接合されている。
【0029】
同様に、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uは、梁20(
図1、
図3参照)の上部に梁幅方向に間隔をあけて梁長方向(X方向又はY方向、
図1参照)に沿って配設されている。また、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成するせん断補強筋54Uは、下側を開口側とするU字形状(逆U字形状)とされ梁長方向に間隔をあけて配設されていると共にU字の底部が梁主筋52Uに接合されている。
【0030】
そして、
図1及び
図3に示すように、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合されている。
【0031】
また、
図2(A)及び
図3に示すように、各梁主筋52の先端には、梁主筋52の外径よりも大きな鉄筋コブ53が設けられている。
【0032】
なお、梁主筋52とせん断補強筋54とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)によって接合されている。また、本実施形態の梁鉄筋ユニット50は、建築現場でなく、別の場所にある工場で製作される。
【0033】
[鉄筋定着装置]
つぎに、仕口部(柱梁接合部)30に埋設された鉄筋定着装置100について説明する。
【0034】
図4及び
図5に示すように、鉄筋定着装置100は、下側枠材110Lと上側枠材110Uと連結部材130とを含んで構成されている。なお、以降の説明において、基本的には下側の部材には符号の後にLを付し、上側の部材には符号の後にUを付して説明する。また、両者を区別しないで説明する場合はL、Uを省略して説明する。
【0035】
下側枠材110L及び上側枠材110Uは、平面視において矩形の枠状をなし、上下方向に間隔をあけて配置されている。下側枠材110Lと上側枠材110Uとは、連結部材130によって連結されている。連結部材130は、仕口部30に配筋される柱主筋132と柱主筋132の周囲を囲むせん断補強筋134とを含んで構成されている。なお、柱主筋132とせん断補強筋134とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)又は結束線によって接合されている。
【0036】
また、柱主筋132の下端部135Lが下側枠材110Lに溶接接合され、柱主筋132の上端部135Uが上側枠材110Uに溶接接合されている。なお、本実施形態では、
図6に示すように、柱主筋132における上下の端部135の先端部分137は、開先形状となっている。
【0037】
そして、
図1に示すように、下側枠材110Lに下側の梁主筋52Lの軸端部51L(
図3も参照)が接合されると共に上側枠材110Uに上側の梁主筋52Uの軸端部51U(
図3も参照)が接合される。また、下側枠材110Lには下柱12Lの柱主筋14Lの端部16Lが接合され、上側枠材110Uには上柱12Uの柱主筋14Uの端部16Uが接合されている。
【0038】
図4及び
図5に示すように、本実施形態では、下側枠材110L及び上側枠材110Uは、それぞれ上下に重ね合わされて接合された複数枚(本実施形態では二枚)の板枠材112L、112Uで構成されている。また、板枠材112L、112Uの重ね合わせ面114L、114Uには、凹部116L、116Uが形成されている。
【0039】
そして、
図4に示すように、板枠材112L、112Uの重ね合わせ面114L、114U同士が溶接接合されている。また、接合されることで孔118L、118Uが形成される。
【0040】
なお、
図1に示すように、各板枠材112L、112Uの凹部116L、116Uに梁主筋52L、52Uの軸端部51L、51U(
図3参照)が係合した状態で重ね合わせ面114L、114Uが接合されている。
【0041】
図5に想像線(二点破線)で示すように、本実施形態では、板枠材112U、112L同士が接合される前に、板枠材112Lの一方(下側)には下柱12Lの柱主筋14Lの端部16Lが接合され、板枠材112Uの一方(上側)には上柱12Uの柱主筋14Uの端部16Uが接合されている。
【0042】
そして、
図2(B)、
図2(C)及び
図5に示すように、板枠材112同士が接合される前において、仕口部鉄筋ユニット102と、柱鉄筋ユニット104L、104Lと、を構成している。なお、柱鉄筋ユニット104には上下端部に板枠材112が接合されている。また、柱鉄筋ユニット104には、柱主筋14の周囲を囲むようにせん断補強筋15が接合されている。また、柱主筋14とせん断補強筋15とは、予め電気抵抗溶接(スポット溶接)又は結束線によって接合されている。
【0043】
なお、本実施形態の柱鉄筋ユニット104及び仕口部鉄筋ユニット102は、建築現場でなく、別の場所にある工場で製作される。
【0044】
[仕口部の施工工程]
つぎに、仕口部30の施工工程について説明する。
【0045】
図7(A)に示すように、下柱12L(
図1も参照)を構成する柱鉄筋ユニット104Lを建て込んで、下側枠材110Lを構成する板枠材112Lに下側の梁鉄筋ユニット50Lを載せかける。このとき、板枠材112Lの凹部116Lに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51L(
図3参照)を係合させる。
【0046】
図7(B)に示すように、仕口部鉄筋ユニット102を板枠材112Lの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51Lが係合するように載せて、重ね合わせ面114L(
図5参照)同士を接合する(
図4参照)。
【0047】
図7(C)に示すように、上側枠材110Uを構成する板枠材112Uに上側の梁鉄筋ユニット50Uを載せかける。このとき板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(
図3参照)を係合させる。
【0048】
図7(D)に示すように、上柱12U(
図1も参照)を構成する柱鉄筋ユニット104Uを板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(
図3参照)が係合するように載せて、重ね合せ面114U同士(
図5参照)を接合する(
図4参照)。
【0049】
そして、配筋した鉄筋の周りに型枠を設けコンクリートを打設して、鉄筋コンクリート造の梁20及び柱10を構築する。また、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合される。なお、重ね継ぎ手以外の方法で結合されていてもよい。例えば、コンクリートを打設する前に溶接結合してもよい。
【0050】
なお、柱鉄筋ユニット104Uの上に
図7で説明した施工を繰りかえすことで、上階の柱梁が構築される。
【0051】
[作用及び効果]
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0052】
下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lの軸端部51Lが鉄筋定着装置100の下側枠材110Lに接合(緊結)され、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uの軸端部51Uが鉄筋定着装置100の上側枠材110Uに接合(緊結)されている。また、本実施形態では、凹部116が重なって形成される孔118(
図5参照)の孔径よりも鉄筋コブ53は大きい(
図1参照)ので、下側枠材110L及び上側枠材110Uから梁主筋52が引き抜かれない。
【0053】
また、梁主筋52L、52Uの引張荷重は、下側枠材110L及び上側枠材110Uを介して、連結部材130(柱主筋132及びせん断補強筋134)を含む鉄筋定着装置100全体に伝達され、鉄筋定着装置100全体で引張荷重を受ける。また、梁主筋52が鉄筋定着装置100に接合(緊結)されることによって、梁主筋52の変形が拘束される。
【0054】
したがって、梁主筋52の仕口部30からの抜け出しが防止される。よって、仕口部30における梁主筋の定着強度を確保するため、例えば、梁主筋の曲げ加工や柱成を大きくして定着代を長くする必要がない。
【0055】
また、板枠材112の凹部116へ梁主筋52の軸端部51を係合させて、板枠材112で挟んで接合することで、梁主筋52の配筋作業が完了する。更に、
図1に示すように、仕口部30内で、X方向の梁20A、20C及びY方向の梁20B、20Cのそれぞれの梁主筋52が干渉しない(梁主筋52同士が干渉しない)。また、梁主筋52と柱主筋14とも干渉しない。したがって、配筋精度や施工性が向上する
【0056】
また、仕口部30内で梁主筋52同士を互いに干渉しないように高さ方向に段差を設ける必要が無くなるので、梁主筋52を高さ方向に段差を設ける場合よりも、梁成を低くすることができる。
【0057】
また、
図2に示すように、柱鉄筋ユニット104、梁鉄筋ユニット50、仕口部鉄筋ユニット102と、それぞれユニット化されているので、現地で配筋する場合と比較し品質が保障されると共に、現地での作業が軽減される。
【0058】
また、梁鉄筋ユニット50において、梁主筋52とせん断補強筋54とが電気抵抗溶接によって、予め接合されているので、現地で両者を結束する必要がなく、配筋の乱れもなくなるので、施工性が向上する。更に、梁鉄筋を下側の梁鉄筋ユニット50Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uとに分割することで、二つとのユニットに分割していない場合と比較し、現地までの輸送に際して積荷がかさばらず、搬送性が向上する。
【0059】
また、同様に、梁鉄筋ユニット50及び柱鉄筋ユニット104においても、柱主筋14、132とせん断補強筋15、134とが電気抵抗溶接によって、予め接合されているので、現地で両者を結束する必要がなく、配筋の乱れもなくなるので、施工性が向上する。
【0060】
また、スラブ型枠の施工前に柱・梁・壁の配筋を行うことができるので鉄筋工の作業効率が向上する。
【0061】
[変形例]
つぎに、本実施形態の変形例について説明する。
【0062】
(第一変形例)
図8に示す第一変形例の鉄筋定着装置202では、上側枠材111Uは、それぞれ上下に重ね合わされて接合された三枚の板枠材113A、113B、113Cで構成されている。また、板枠材113A、113B、113Cの重ね合わせ面115A、115B、115Cには、それぞれ凹部116A、116B、116Cが形成されている。
【0063】
そして、上下方向に二段に配置された上側の梁主筋52Uの軸端部51U(
図3参照)が板枠材113A、113B、113Cの凹部116A、116B、116Cに係合される。言い換えると、梁主筋52が挿通し接合される孔118が上下に二段形成される(
図8(B)を参照)。したがって、鉄筋定着装置202は、上側の梁主筋52Uが二段筋の構成に対応している。
【0064】
なお、下側枠材も同様に、三枚の板枠材113A、113B、113Cで構成し、下側の梁主筋52Lが二段筋である構成に対応するようにしてもよい。また、四枚以上の板枠材で構成し、三段筋以上の構成に対応するようにしてもよい。
【0065】
(第二変形例)
図9に示す第二変形例の鉄筋定着装置204では、下側枠材210L及び上側枠材210Uは板枠材に分割されていないで、孔118が形成されている。そして、梁主筋52を孔118に挿通し接合する。なお、梁主筋52と下側枠材210L及び上側枠材210Uとの接合方法は、どのような方法であってもよい。例えば、孔118に溶着金属を流し込んで固結してもよいし、
図9(B)に示すように、挿通後に先端部55に定着板190を接合して抜け出しを防止してもよい。
【0066】
(第三変形例)
図10に示す第三変形例の鉄筋定着装置206は、下側枠材110Lと上側枠材110Uとが鋼管で構成された連結部材220によって連結されている。なお、下側枠材110L及び上側枠材110Uと連結部材220とは溶接接合されている。このように連結部材220を鋼管とすることで、鉄筋定着装置206の剛性が向上し、この結果、仕口部30の強度が向上する。
【0067】
(第四変形例)
図11に示す第四変形例の鉄筋定着装置208は、板枠材112がボルト299(及びナット)によって締結されている。したがって、例えば溶接接合と比較し、作業性が向上する。
【0068】
(第五変形例)
図12に示す第五変形例の鉄筋定着装置209は、下側枠材110L及び上側枠材110Uにスリーブ212L、212Uが設けられている。そして、スリーブ212に柱主筋132の軸端部135を挿入し、溶着金属214(
図11(B)参照)を流し込んで固結している。このようにスリーブ212を設けることで柱主筋132の接合箇所の位置決めが容易となると共に位置決め精度が向上する。
【0069】
(第六変形例)
図13に示す第六変形例の鉄筋定着装置211は、下側枠材110L及び上側枠材110Uにスリーブ212L、212Uが設けられている。そして、柱主筋132の軸端部135とスリーブ212とにネジ溝137、213(
図13(B)参照)を切って螺合させている。
【0070】
(その他)
第五変形例及び第六変形例において、スリーブ212の数は、柱主筋132の本数よりも多い。これは、柱主筋132を多くした場合にも、使用可能なように汎用性が高められているからである。
【0071】
また、下柱12Lの柱主筋14L及び上柱12Uの柱主筋14Uと、下側枠材110L及び上側枠材110Uと、の接合も、第五変形例及び第六変形例のように、スリーブ212に挿入させて接合する構成を適用することができる。
【0072】
<第二実施形態>
本発明の一実施形態にかかる鉄筋定着装置100を基礎階における鉄筋コンクリート造の基礎梁とその上部から鉄骨造となる鉄筋コンクリート造の基礎柱との柱梁接合部(仕口部)である基礎部に適用した構造について説明する。
【0073】
なお、鉄筋定着装置100は、
図4及び
図5等に示す第一実施形態と同様の構成であるので、詳しい説明を省略する。なお、第一実施形態の変形例も本実施形態に適用することができる。また、その他第一実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0074】
[基礎部の概要]
まず、基礎部の概要について説明する。
【0075】
図14(A)、
図14(H)及び
図15等に示すように、杭頭302の上に基礎部200が設けられている。基礎部200は、基礎梁280A、280B、280Cとその上部から鉄骨造となる鉄筋コンクリート造の柱284(
図14(H))との柱梁接合部(仕口部)である。
【0076】
そして、基礎部200に第一実施形態と同様の鉄筋定着装置100が埋設されると共に、鉄筋定着装置100に、基礎梁280A,280B,280Cの梁主筋52L、52Uが接合(緊結)されている。
【0077】
また、鋼製フレーム250(
図14(G)も参照)が鉄筋定着装置100の外側に設置され、鉄筋コンクリート造の基礎柱284の上部に柱鉄骨282を取り付けるアンカーボルト254が鉄筋定着装置100の内側に設置される。更に、鉄筋定着装置100(鋼製フレーム250)の周りに基礎袴筋312と基礎配筋310とが配筋されている。
【0078】
[基礎部の施工方法]
つぎに、基礎部の施工方法について説明する。
【0079】
図14(A)に示すように、杭頭302の周囲に基礎施工用の捨てコン304を打設する(
図15も参照)。そして、捨てコン304に後述する柱鉄骨282を取り付けるアンカーボルト254(
図14(G)、(H)を参照)を固定するために用いる鋼製フレーム250(
図14(G))を構成する下側の架台251を設置する。
【0080】
図14(B)に示すように、基礎配筋310を行い、鉄筋定着装置100の下側枠材110Lを構成する板枠材112L(
図4及び
図5参照)を架台251の上に設置する。なお、杭鉄筋301は板枠材112Lの内側に配置される(
図15も参照)。
【0081】
図14(C)に示すように、板枠材112Lに下側の梁鉄筋ユニット50Lを載せ掛ける。このとき、下側枠材110Lを構成する板枠材112Lの凹部116Lに、梁鉄筋ユニット50Lの下側の梁主筋52Lの軸端部51Lを係合させる。
【0082】
図14(D)に示すように、仕口部鉄筋ユニット102を板枠材112Lの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Lの梁主筋52Lの軸端部51Lが係合するように載せて、重ね合せ面114L(
図5参照)同士を接合する(
図4参照)。
【0083】
図14(E)に示すように、上側枠材110Uを構成する板枠材112Uに上側の梁鉄筋ユニット50Uを載せかける。このとき板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(
図3参照)を係合させる。
【0084】
図14(F)に示すように、鉄筋定着装置100の上側枠材110Uを構成する板枠材112Uの凹部116Uに梁鉄筋ユニット50Uの梁主筋52Uの軸端部51U(
図3参照)が係合するように載せて、重ね合せ面114U同士(
図5参照)を接合する(
図4参照)。
【0085】
図14(G)に示すように、下側の架台251(
図14(A)参照)を利用して上側の架台252を設置し、鋼製フレーム250を組み立てる。そして、鋼製フレーム250にアンカーボルト254を取り付ける。なお、鋼製フレーム250は鉄筋定着装置100の外側に設置され、アンカーボルト254は鉄筋定着装置100の内側に設置される(
図15も参照)。
【0086】
図14(H)に示すように、鉄筋定着装置100(鋼製フレーム250)の周りに基礎袴筋312を配筋する。
【0087】
そして、型枠を設けてコンクリートを打設し、基礎部200、鉄筋コンクリート造の梁280、及び鉄筋コンクリートの柱284を構築する。なお、柱鉄骨282を支持する基礎部200のコンクリートを打設した後に、アンカーボルト254に柱鉄骨282を取り付ける。
【0088】
また、下側の梁鉄筋ユニット50Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット50Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合される。なお、重ね継ぎ手以外の方法で結合されていてもよい。例えば、コンクリートを打設する前に溶接結合してもよい。
【0089】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0090】
第一実施形態と同様に、下側の梁鉄筋ユニット50Lを構成する梁主筋52Lの軸端部51Lが鉄筋定着装置100の下側枠材110Lに接合(緊結)され、上側の梁鉄筋ユニット50Uを構成する梁主筋52Uの軸端部51Uが鉄筋定着装置100の上側枠材110Uに接合(緊結)されている。また、凹部116が重なって形成される孔118(
図5参照)の孔径よりも鉄筋コブ53は大きいので、下側枠材110L及び上側枠材110Uから梁主筋52が引き抜かれない。
【0091】
また、梁主筋52L、52Uの引張荷重は、下側枠材110L及び上側枠材110Uを介して、連結部材130(柱主筋132及びせん断補強筋134)を含む鉄筋定着装置100全体に伝達され、鉄筋定着装置100全体で引張荷重を受ける。また、梁主筋52が鉄筋定着装置100に接合(緊結)されることによって、梁主筋52の変形が拘束される。
【0092】
したがって、梁主筋52の基礎部200からの抜け出しが防止される。また、基礎部200における梁主筋の定着強度を確保するため、例えば、梁主筋の曲げ加工や柱成を大きくして定着代を長くする必要がない。
【0093】
また、基礎部200内で、X方向の梁280A、280C及びY方向の梁280Bのそれぞれの梁主筋52が干渉しない(梁主筋52同士が干渉しない)。また、鉄筋定着装置100はアンカーボルト254及び杭鉄筋301を囲むように配置されるため、これらと梁主筋52との干渉が回避される。
【0094】
また、柱鉄骨282のアンカーボルト254を支持する鋼製フレーム250の下側の架台251を鉄筋定着装置100の取付けにも利用することにより、鉄筋定着装置100の施工が効率化される。なお、鋼製フレーム250の下側の架台251に利用しないで、下側枠材110の下にスペーサーブロック等を入れて鉄筋定着装置100を取り付けてもよい。
【0095】
なお、その他、第一実施形態及び変形例と重複する作用及び効果の説明は省略する。
【0096】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態について説明する。なお、第一実施形態及び第二実施形態と同一の部材には、同じ符号を付し、重複する説明は省略する。但し、本実施形態では、第一実施形態及び第二実施形態で用いた定着装置(
図4等参照)は使用していない。
【0097】
鉄筋コンクリート造梁20には
図16に示す梁鉄筋550、又は
図17に示す梁鉄筋502が埋設されている。
図16及び
図18に示すように、梁鉄筋500は下側の梁鉄筋ユニット550Lと上側の梁鉄筋ユニット550Uとで構成されている。また、
図17に示すように、梁鉄筋502は下側の梁鉄筋ユニット552Lと上側の梁鉄筋ユニット552Uとで構成されている。
【0098】
[梁鉄筋ユニット]
つぎに、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lと上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uとについて説明する。なお、以降の説明において、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lを構成する各部材の後には符号の後にLを付し、上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uを構成する各部材の後には符号の後にUを付す。また、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lと上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uとは上下の向きが異なる以外は略同様の構成である。よって、これらを区別しないで説明する場合はU、Lを省略する。
【0099】
(梁鉄筋ユニット550)
図16及び
図18に示す梁鉄筋ユニット550は、第一実施形態及び第二実施形態の梁鉄筋ユニット50(
図2、
図3参照)と梁主筋52の先端に鉄筋コブ53が設けられていない構造である。これ以外の構造や配置は全く同じである。よって、詳しい説明を省略する。
【0100】
(梁鉄筋ユニット552)
図17に示すように、上側の梁鉄筋ユニット552Uの梁主筋52Uの端部には、下側に屈曲し下側に延出する縦部554Uが形成されている。同様に下側の梁鉄筋ユニット552Lの梁主筋52Lの端部には、上側に屈曲され上側に延出する縦部554Lが形成さている。縦部554以外の構造は、梁鉄筋ユニット550(
図16、
図18)と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0101】
[梁鉄筋ユニットの製造方法]
つぎに、梁鉄筋ユニット550、552の製造方法の一例について説明する。
【0102】
図19(A)、(C)に示すように、梁主筋52とせん断補強筋54とを平面視において格子状に配筋する。そして、梁主筋52とせん断補強筋54とを電気抵抗溶接(スポット溶接)によって接合する。
【0103】
つぎに、
図19(B)、(D)に示すように、両外側に配置された梁主筋52Aを支点として、せん断補強筋54をU字形状に折り曲げる。
【0104】
なお、梁鉄筋ユニット552の梁主筋52の縦部554は、どのように形成してもよい。例えば、せん断補強筋54をU字形状に折り曲げた後に形成してもよいし、予め形成されていてもよい。
【0105】
[施工工程と配筋構造]
つぎに、施工工程を説明し、これによって配筋構造も説明する。
【0106】
図20(A)に示すように、9本の鉄筋コンクリート造の柱10を構成する柱主筋14を配筋し圧接する。
図20(B)に示すように、各柱10の柱主筋14の周りにせん断補強筋15を配筋し、柱主筋14とせん断補強筋15とを溶接接合、又は結束線などにより固定する。
【0107】
図20(C)に示すように、各柱10の柱主筋14及びせん断補強筋15の周囲に柱型枠602を建て込み、
図20(D)に示すように梁型枠604を建て込み、そして、
図20(E)に示すように、スラブ型枠606を建て込む。
【0108】
図20(F)に示すように、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lを配置し、
図20(G)に示すように、梁型枠604内に落とし込む。
【0109】
このとき、梁鉄筋ユニット550L(
図16及び
図18参照)は各柱10を跨いで配置する。また、中央部の柱10を跨ぐ二つの梁鉄筋ユニット550Lは、平面視十字形状に重ねて配置する。
【0110】
また、梁鉄筋ユニット552L(
図17参照)は、外周部分の柱10との仕口部に、梁主筋52の縦部554が埋設されるように配置する。
【0111】
なお、
図20では、各梁鉄筋ユニット550L、552Lの長手方向の端部間には隙間が図示されている。しかし、これは各梁鉄筋ユニット550L、552Lの配置を判り易くするためであり、実際は端部同士が圧接接合や機械式接合により接合されている。また、これは次に説明する上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uでも同様である。
【0112】
そして、
図20(G)に示すように、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lを梁型枠604内に落とし込んだのち、上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uを配置し、
図20(H)に示すように、梁型枠604内に落とし込む。
【0113】
このとき、同様に梁鉄筋ユニット550U(
図16参照)は各柱10を跨いで配置する。また、中央部の柱10を跨ぐ二つの梁鉄筋ユニット550Uは、平面視十字形状に重ねて配置する。
【0114】
また、梁鉄筋ユニット552U(
図17参照)は、外周部分の柱10との仕口部に、梁主筋52の縦部554が埋設されるように配置する。
【0115】
そして、型枠を設けコンクリートを打設し、躯体を構築する。これにより、
図16及び
図17に示すように、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lのせん断補強筋54Lの軸端部55Lと上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uのせん断補強筋54Uの軸端部55Uとが重ね継ぎ手によって結合される。また、各梁鉄筋ユニット550、552の長手方向の端部同士も圧接接合や機械式接合により接合される。
【0116】
(作用及び効果)
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0117】
図20に示すように、柱梁接部における梁鉄筋同士の干渉を考慮することなく、下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lを落とし込んだ後、上側の梁鉄筋ユニット550U,552Uを落とし込むことができるので、配筋作業が容易となる。したがって、鉄筋コンクリート造梁20の施工効率が向上する。
【0118】
また、
図19に示すように、両外側に配筋された梁主筋52を支点として、せん断補強筋54をU字形状に折り曲げる。よって、別途冶具を用いてせん断補強筋54を曲げる場合と比較し、梁鉄筋ユニット550、552の製造効率が向上し、これにより鉄筋コンクリート造梁20の施工効率が向上する。
【0119】
そして、このようにU字形状のせん断補強筋54と梁主筋52とを予め接合して梁鉄筋ユニット550、552とすることで、結束線や番線等で固定する必要がなくなり、施工性や搬送性が向上する。また、ユニット化されることで品質が安定し、この結果、施工時の工数が削減される。
【0120】
また、梁鉄筋ユニット550、552において、梁主筋52とせん断補強筋54とが電気抵抗溶接によって、予め接合されているので、現地で両者を結束する必要がなく、配筋の乱れもなくなるので、施工性が向上する。更に、梁鉄筋を下側の梁鉄筋ユニット550L、552Lと上側の梁鉄筋ユニット550U、552Uとに分割することで、二つとのユニットに分割していない場合と比較し、現地までの輸送に際して積荷がかさばらず、搬送性が向上する。
【0121】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0122】
第一実施形態及び第二実施形態では、地上階の仕口部30及び基礎部200に本発明を適用したが、これに限定されない。例えば、第二実施形態の基礎梁において柱鉄骨を支持しない構成(基礎梁接合部)や基礎梁と鉄筋コンクリート柱との柱梁接合部にも適用できる。また、基礎部のアンカーボルトが支持する柱鉄骨は、コンクリート充填鋼管(CFT)の鋼管柱や鉄骨鉄筋コンクリート造の鉄骨柱であってもよい。
【0123】
また、第一実施形態及び第二実施形態では、鉄筋定着装置に接合される梁(梁主筋)は四つ(第一実施形態)又は三つ(第二実施形態)であったがこれに限定されない。鉄筋定着装置に接合される梁は二つ(交差方向でも同方向でもよい)であってもよいし、一つであってもよい。
【0124】
また、第一実施形態及び第二実施形態の梁鉄筋ユニット50においても、第三実施形態の梁鉄筋ユニット550、552のように、
図19に示すように、両外側に配筋された梁主筋52を支点として、せん断補強筋54をU字形状に折り曲げてもよい。
【0125】
また、
図21(A)に示すように、梁鉄筋ユニット50、550、552を長手方向に見た場合にせん断補強筋54は同じ長さで左右対称であったが、
図21(B)に示すように長さが異なった左右非対称であってもよい。
【0126】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。