特許第6261867号(P6261867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261867
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】弾性波デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20180104BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   H03H9/25 A
   H03H3/08
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-12150(P2013-12150)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-143640(P2014-143640A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年12月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】黒▲柳▼ ▲琢▼真
【審査官】 小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−151698(JP,A)
【文献】 特開2007−081555(JP,A)
【文献】 特開2006−050582(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157587(WO,A1)
【文献】 特開2008−270594(JP,A)
【文献】 特開2012−080188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/25
H03H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数の弾性波デバイスに対応する弾性波を励振する励振電極を含む機能部を形成する工程と、
前記基板上に、前記複数の弾性波デバイスに対応する前記励振電極と電気的に接続された柱状電極と、前記複数の弾性波デバイスに対応する前記機能部及び前記柱状電極を囲む金属枠体とを同時に形成する工程と、
セラミック基板上に、前記複数の弾性波デバイスの前記柱状電極に対応する位置に端子部となる第1金属層を形成し、前記複数の弾性波デバイスの前記金属枠体に対応する位置に封止部となる第2金属層を形成する工程と、
前記端子部及び前記封止部が形成された前記セラミック基板を切断し、複数のセラミック基板に個片化する工程と、
前記柱状電極及び前記金属枠体がそれぞれ前記端子部及び前記封止部に接合するように、切断した前記複数のセラミック基板を前記基板に接合することで、前記機能部を封止する工程と、
前記切断した複数のセラミック基板を、前記基板上の前記柱状電極及び前記金属枠体の位置に合わせて、支持体上に貼り付ける工程と、
を備え、
前記機能部を封止する工程は、前記支持体を、前記セラミック基板が前記基板と対向するように重ねることで、封止を行うことを特徴とする弾性波デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記セラミック基板を切断し、前記複数のセラミック基板に個片化する工程は、前記セラミック基板の大きさが、前記基板の貫通方向から見た場合に、前記基板よりも小さくなるように切断を行うことを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記柱状電極及び前記金属枠体を形成する工程は、前記柱状電極及び前記金属枠体の厚みが同じになるように形成を行うことを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする無線機器等のフィルタとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)やバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)等の弾性波を利用する弾性波フィルタを備えた弾性波デバイスが知られている。弾性波デバイスでは、弾性波を励振させるための機能部を封止し、保護するための構成が必要とされる。例えば、特許文献1には、弾性波デバイスが形成された弾性波チップを、半田を用いて支持基板に接続し、樹脂により気密封止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−514846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の弾性波デバイスでは、弾性波チップ上の信号端子を支持基板上の端子と接続するための工程と、弾性波チップを気密封止する工程とを別々に行っていた。このため、製造工程数が増加し、製造コストが大きくなってしまうという課題がった。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、製造工程を効率化した弾性波デバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板上に、複数の弾性波デバイスに対応する弾性波を励振する励振電極を含む機能部を形成する工程と、前記基板上に、前記複数の弾性波デバイスに対応する前記励振電極と電気的に接続された柱状電極と、前記複数の弾性波デバイスに対応する前記機能部及び前記柱状電極を囲む金属枠体とを同時に形成する工程と、セラミック基板上に、前記複数の弾性波デバイスの前記柱状電極に対応する位置に端子部となる第1金属層を形成し、前記複数の弾性波デバイスの前記金属枠体に対応する位置に封止部となる第2金属層を形成する工程と、前記端子部及び前記封止部が形成された前記セラミック基板を切断し、複数のセラミック基板に個片化する工程と、前記柱状電極及び前記金属枠体がそれぞれ前記端子部及び前記封止部に接合するように、切断した前記複数のセラミック基板を前記基板に接合することで、前記機能部を封止する工程と、前記切断した複数のセラミック基板を、前記基板上の前記柱状電極及び前記金属枠体の位置に合わせて、支持体上に貼り付ける工程と、を備え、前記機能部を封止する工程は、前記支持体を、前記セラミック基板が前記基板と対向するように重ねることで、封止を行うことを特徴とする弾性波デバイスの製造方法である。
【0012】
上記構成において、前記セラミック基板を切断し、前記複数のセラミック基板に個片化する工程は、前記セラミック基板の大きさが、前記基板の貫通方向から見た場合に、前記基板よりも小さくなるように切断を行う構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記柱状電極及び前記金属枠体を形成する工程は、前記柱状電極及び前記金属枠体の厚みが同じになるように形成を行う構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造工程を効率化した弾性波デバイス製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】比較例に係る弾性波デバイスの構成を示す図である。
図2】実施例1に係る弾性波デバイスの製造工程を示す図(その1)である。
図3】実施例1に係る弾性波デバイスの製造工程を示す図(その2)である。
図4】実施例1に係る弾性波デバイスの構成を示す図である。
図5】実施例1に係る弾性波デバイスの封止部分の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、比較例に係る弾性波デバイスについて説明する。
【0017】
図1は、比較例に係る弾性波デバイスの構成を示す図である。圧電基板70上に、IDT72及びこれに電気的に接続された配線74が形成されている。IDT72の上部は中空となっており、弾性波を励振するための機能部76が形成されている。機能部76の周囲には、樹脂による側壁78が形成され、側壁78上には、樹脂による蓋体80が形成されている。側壁78及び蓋体80により、弾性波デバイスの機能部76が封止され、保護されている。また、配線74上には、側壁78及び蓋体80を貫通する柱状電極82が形成されている。更に、柱状電極82の先端には、半田ボール84が形成されている。
【0018】
圧電基板70には、例えば厚さ250μmのタンタル酸リチウム(LiTaO)またはニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電体が用いられる。側壁78は、例えば液レジストを用いて高さ30μmに形成され、蓋体80は、例えばフィルムレジストを用いて厚さ45μmに形成される。
【0019】
実施例1に係る弾性波デバイスによれば、配線74と電気的に接続された柱状電極82及び半田ボール84により、外部との電気的な接続を図ることができる(IDT72の信号端子及びグランド端子等が、配線74を介して外部に引き出される)。そして、半田ボール84を下にして支持基板(不図示)にフリップチップ実装することにより、弾性波デバイスを支持基板に固定すると共に、弾性波デバイスと支持基板を電気的に接続することができる。
【0020】
しかし、比較例に係る弾性波デバイスでは、弾性波デバイスの機能部76を封止するための工程(側壁78及び蓋体80の形成工程)と、外部との電気的接続を確保とするための工程(柱状電極82及び半田ボール84の形成工程)を別々に行わなくてはならない。このため、工程数が増加してしまい、製造コストが大きくなるという課題がある。また、樹脂による封止は、後述するセラミック基板を用いた封止に比べて、耐湿性・放熱性・耐電力性の点で劣後してしまうという課題がある。
【0021】
以下の実施例では、上記の課題に鑑み、製造工程を効率化すると共に、信頼性を高めた弾性波デバイス及びその製造方法について説明する。
【実施例1】
【0022】
図2図3は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造工程を示す図である。最初に、図2(a)に示すように、圧電基板10上にIDT(InterDigital Transducer)12及び反射電極(不図示)を含む機能部14と、下部金属層16を形成する。下部金属層16のうち、符号16aで示す構成は、機能部14からの信号を外部に伝達するための柱状電極(図4の符号30)の一部となり、断面形状は例えば円形とすることができる。また、下部金属層16のうち、符号16bで示す構成は、機能部14を封止するための金属枠体(図4の符号32)の一部となる。下部金属層16bは、機能部14及び下部金属層16aの周囲を取り囲むように環状に形成される。
【0023】
圧電基板10には、例えば厚さ180μmのタンタル酸リチウム(LiTaO)またはニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電体を用いることができる。また、IDT12及び下部金属層16には、例えばアルミニウム(Al)または銅(Cu)等を用いることができる。
【0024】
次に、図2(b)に示すように、圧電基板10の表面のうち、下部金属層16が形成されていない領域(IDT12の上部も含む)に、レジスト18を形成する。次に、図2(c)に示すように、レジスト18から露出した下部金属層16上に、中部金属層20を形成する。中部金属層20のうち、符号20aで示す構成は、前述の柱状電極30の一部となり、符号20bで示す構成は、前述の金属枠体32の一部となる。中部金属層20は、例えば電解メッキ法により形成することができ、その厚みは、下部金属層16と合わせて例えば20μmとすることができる。
【0025】
次に、図2(c)に示すように、レジスト18から露出した中部金属層20上に、上部金属層22を形成する。上部金属層22は、後述のセラミック基板40上の金属層との接続を図るための層であり、例えば厚み10μmの半田(SnAg)を用いることができる。上部金属層22のうち、符号22aで示す構成は、前述の柱状電極30の一部となり、符号22bで示す構成は、前述の金属枠体32の一部となる。次に、図2(d)に示すように、レジスト18を除去する。以上の工程により、圧電基板10側の製造工程が完了する。
【0026】
次に、図3(a)に示すように、表面に金属層が形成されたセラミック基板40を用意する。セラミック基板40に形成された金属層は、圧電基板10側の柱状電極30と接合する端子部42(第1金属層)と、圧電基板10側の金属枠体32と接合する封止部44(第2金属層)とを含む。端子部42(第1金属層)は、セラミック基板40に形成された貫通孔を介して、セラミック基板40の反対側に引き出されている。封止部44は、圧電基板10における金属枠体32に対応する位置に、端子部42の周囲を取り囲むように環状に形成されている。
【0027】
セラミック基板40の厚みは、例えば90μmとすることができる。端子部42及び封止部44は、例えばセラミック基板40の側からタングステン(W)、ニッケル(Ni)、金(Au)を順に積層した金属層を用いることができ、その厚みは例えば10μmとすることができる。従って、金属層を含めたセラミック基板40の厚みは、例えば110μmとなる。
【0028】
次に、図3(b)に示すように、セラミック基板40を切断(ダイシング)し、封止部44が形成された側と反対側の面を、耐熱テープ50に貼り付ける。このとき、セラミック基板40は、ウェハ状態にある個々の圧電基板10と整合する位置に貼り付けられる。耐熱テープ50としては、例えばポリイミドテープを用いることができる。
【0029】
次に、図3(c)に示すように、セラミック基板40が貼り付けられた耐熱テープ50を、セラミック基板40の形成された側から、圧電基板10の表面に貼り付ける。このとき、端子部42は柱状電極30上の上部金属層22aと、封止部44は金属枠体32上の上部金属層22bと、それぞれ接触する。その後、半田の融点以上の温度(260℃)まで過熱すると共に、セラミック基板40を加圧することにより、上記の金属層同士が接合し、封止が行われる。
【0030】
次に、図3(d)に示すように、耐熱テープを剥がした後、圧電基板10を切断し、個片化(ダイシング)する。以上の工程により、実施例1に係る弾性波デバイスが完成する。
【0031】
図4は、実施例1に係る弾性波デバイス100の構成を示す図である。図4(a)はセラミック基板40を透過した斜視図(セラミック基板40及び端子部42の構成に相当する構成を点線で示す)を、図4(b)は全体の断面図をそれぞれ示す。図4(a)及び(b)に示すように、圧電基板10には、柱状電極30及び金属枠体32が形成されている。柱状電極30は、圧電基板10上のIDT12及びセラミック基板40上の端子部42のそれぞれと電気的に接続されている。図4(b)に示すように、端子部42はセラミック基板40の上面側(機能部14の反対側)に引き出されているため、当該端子部42により、弾性波デバイス100を外部と電気的に接続することができる。
【0032】
図5は、封止構造の詳細を示す平面図である。図5(a)は圧電基板10の上面図を、図5(b)はセラミック基板40の上面側の構成を、図5(c)はセラミック基板40の下面側(機能部14側)の構成を、それぞれ示す。図5(a)に示すように、金属枠体32は、IDT12及び柱状電極30の周囲を囲むように形成されている。また、図5(a)及び図5(b)に示すように、柱状電極30の断面形状は円形、端子部42の断面形状は矩形となっているが、これら以外の形状を採用することも可能である。また、図5(a)及び図5(c)に示すように、金属枠体32と封止部44とは、互いに重なり合う位置に形成されている。本実施例では、セラミック基板40の上下方向(圧電基板10の貫通方向)から見た場合の大きさが、圧電基板10より小さい。このため、セラミック基板40の外縁部と封止部44との距離は、圧電基板10の外縁部と金属枠体32の距離に比べて小さくなっている。
【0033】
実施例1に係る弾性波デバイス100によれば、予め端子部42及び封止部44が形成されたセラミック基板40を、圧電基板10上に形成された柱状電極30及び金属枠体32に重ねることにより、封止を行っている。これにより、弾性波デバイス100の機能部を封止するための工程と、外部との電気的接続を図るための工程とを、同時に行うことができる。これにより、製造工程数を削減することができる。
【0034】
また、実施例1に係る弾性波デバイス100によれば、封止の側壁として金属製の金属枠体を用い、封止の蓋体としてセラミック基板40を用いている。これにより、比較例(樹脂による封止)の場合に比べ、耐湿性・放熱性・耐電力性に優れた弾性波デバイスを得ることができる。以上のように、実施例1によれば、製造工程を効率化すると共に、信頼性を高めた弾性波デバイスを得ることができる。
【0035】
また、実施例1に係る弾性波デバイスによれば、セラミック基板40を切断し、耐熱テープ50に貼り付けた上で、封止を行っている(図3(a)〜(c))。セラミック基板40は、金属パターン(端子部42及び封止部44)の形成後に焼成されるため、焼成時の収縮等により形状が非線形となる場合がある。このため、セラミック基板40を個片化した上で、封止する圧電基板10の位置に合わせて耐熱テープ(支持体)に貼り付けることにより、封止を安定して行うことができる。
【0036】
また、実施例1に係る弾性波デバイスによれば、柱状電極30及び金属枠体32は同一の高さに設定されている。これにより、封止工程(図3(c))において、セラミック基板40を重ねるだけで、封止及び外部との電気的接続の確保を同時に行うことができる。
【0037】
また、実施例1に係る弾性波デバイスによれば、圧電基板10の大きさよりも小さいセラミック基板40を用いて、封止を行うことができる(図5)。これにより、装置の小型化を図ることができる。
【0038】
実施例1では、弾性波デバイスとして、弾性表面波(SAW)を用いる共振器を例に説明を行ったが、弾性波デバイスとしては、他にもバルク波を用いる圧電薄膜共振器(FBAR)や、ラブ波、境界波、及びLamb波を用いる弾性波デバイスを採用することも可能である。これらの弾性波デバイスは、実施例1のものと同様に弾性波を励振するための機能部を有しており、当該機能部を封止するにあたって、実施例1に係る方法を用いることが好適である。なお、実施例1では圧電基板10を用いる例について説明を行ったが、SAW共振器以外の弾性波デバイスを用いる場合には、圧電基板以外の基板を用いてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 圧電基板
12 IDT
14 機能部
16 下部金属層
18 レジスト
20 中部金属層
22 上部金属層
30 柱状電極
32 金属枠体
40 セラミック基板
42 端子部
44 封止部
50 耐熱テープ
100 弾性波デバイス
図1
図2
図3
図4
図5