(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1と第2のMOSFETで構成された第1のカレントミラー回路と、第3と第4のMOSFETで構成された第2のカレントミラー回路と、第5と第6のMOSFETの直列回路で構成され第5と第6のMOSFETのゲート端子に発振回路からの矩形信号が与えられるパルス生成回路とを備え、
電源と接地間に前記第1のMOSFETと前記第3のMOSFETと定電流回路を直列接続し、電源と接地間に前記第4のMOSFETと前記第5と第6のMOSFETの直列回路を直列接続し、前記第2のMOSFETと第7のMOSFETを直列接続して前記第7のMOSFETのゲート端子に前記パルス生成回路からの矩形信号が印加されているとともに、
前記パルス生成回路は、前記第5と第6のMOSFETの直列回路の接続点と接地との間に設けたコンデンサと、前記第5と第6のMOSFETのゲート端子に矩形信号を与えて前記第5と第6のMOSFETの一方を導通状態、他方を非導通状態とする発振回路と、前記コンデンサの端子電圧を敷居電位と比較した結果と前記発振回路からの矩形信号により前記第7のMOSFETのゲート端子に与える前記矩形信号を定める論理回路で構成されており、前記パルス生成回路の前記矩形信号は温度により矩形波のパルス時間が変化するものであることを特徴とする電流源回路。
【背景技術】
【0002】
MOSFETを用いた電流源回路の基本形として
図7の回路構成などが知られている。
図7の回路において、M11はデプレッション型nチャネルMOSFET、Vddは電源電圧であり、MOSFETのソースとゲートを接続した構成のものである。
【0003】
しかしこの回路は温度変化が生じた場合、MOSFETのドレイン電流が正の温度特性を持つため、設定された電流値が変化してしまう。そこでこの問題を解消するために特許文献1のような回路構成が提案されている。
図8に特許文献1の回路構成を示す。
【0004】
この回路は、2つのエンハンスメント型pチャネルMOSFETM12、M13から構成されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側のMOSFETM12のドレインに接続され、定電流源として機能するデプレッション型nチャネルMOSFETM14と、カレントミラー回路の入力側のMOSFETM12のソースに接続された負の温度特性を有する抵抗R2とで構成されている。係る回路構成により、正の温度特性を持つMOSFETのドレイン電流を負の温度特性を持つ抵抗によって相殺して温度変化に対して電流値の変化を低減している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の電流源回路の回路図である。この電流原回路は、
図7に基本形を示した定電流回路と、定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路と、電源側と接地側のカレントミラー回路の間に形成されたパルス生成回路などで構成されている。いずれの回路も基本的にMOSFETにより構成されている。図示のMOSFETのうち、M8はデプレッション型nチャネルMOSFET、M3、M4、M6はエンハンスメント型nチャネルMOSFETであり、M1、M2、M5、M7はエンハンスメント型pチャネルMOSFETであるが、特に必要がない限り単にMOSFETとして説明する。
【0013】
まず
図7に基本形を示した定電流回路は、MOSFET(M8)により構成されている。また定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路についてみると、電源側のカレントミラー回路はMOSFET(M1とM2)により構成され、接地側のカレントミラー回路はMOSFET(M3とM4)により構成されている。
【0014】
このうち、電源側カレントミラー回路のMOSFET(M1)と、定電流回路のMOSFET(M8)と、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M3)は直列接続されているので、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流をI1とすると、MOSFET(M1及びM3)にも電流I1が流れる。
【0015】
電源側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M2)は、MOSFET(M7)と直列に接続されており、この場合にMOSFET(M2)のドレイン電流をI3とする。
【0016】
また電源側カレントミラー回路の共通ソース端子側と接地との間に、パルス生成回路のMOSFET(M5、M6)、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M4)が直列に接続されている。この場合にMOSFET(M4)のドレイン電流をI2とする。
【0017】
カレントミラー回路を用いた上記回路構成によれば、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流I1は、カレントミラー回路の動作によりMOSFET(M4)を流れるドレイン電流I2、MOSFET(M2)流れるドレイン電流I3と比例関係になる。これらの関係は、以下の(1)式、(2)式に示すように表すことができる。ただし、a、bは比例定数である。
[数1]
I2=a×I1・・・(1)
I3=b×I1・・・(2)
ところで、MOSFETのドレイン電流は正の温度特性を持つため電流I1は温度上昇につれて増加する。このため(1)式、(2)式の関係を持つ電流I2とI3も温度上昇により増加することになる。
【0018】
図1においてパルス生成回路は、方形波発振回路と、MOSFET(M5、M6)の直列回路と、コンデンサC1と、NAND素子(NAND1)で構成されている。このパルス生成回路における各部電圧は、方形波発振回路の出力電圧V1、コンデンサC1の端子電圧V2、NAND素子NAND1の出力電圧V3であり、最終的にMOSFET(M7)のドレイン電流I4が決定される。
【0019】
図2は、パルス生成回路における各部電圧とMOSFET(M7)のドレイン電流I4の時間的推移を示した図である。この図の上段には方形波発振回路の出力電圧V1を示しており、これは電位Vdd(Hiレベル)と接地電位GND(Lo)の間で周期的に変動(周期T)する矩形状信号である。
【0020】
図2の2段目にはコンデンサC1の端子電圧V2の時系列変化を示している。これによれば、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時、MOSFET(M5)が導通し、コンデンサC1を充電する。この時、MOSFET(M5)のオン抵抗以外に電流値を低下させるものはないため、コンデンサC1は高速に電源電圧Vddまで充電される。
【0021】
他方、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時、MOSFET(M6)が導通し、コンデンサC1を放電する。この時、放電電流はMOSFET(M4)により電流I2に制限されるため放電速度が低下する。これらの動作により、コンデンサC1の端子電圧V2の波形は立ち上がりが早く、立下りが遅い波形となる。
【0022】
図2の3段目には、NAND素子NAND1の出力波形電圧V3を記載している。NAND1は敷居電圧Vthでスイッチングし、その2つの入力(V1とV2)がともに敷居電圧Vth以上となる期間のみ接地電位GNDを与え、それ以外の期間では電源電位Vddを与える。この結果、NAND素子NAND1の出力波形電圧V3は、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時点から、コンデンサ電圧V2が放電により敷居電圧Vth以下となる時点までの期間、接地電位GNDを与えることになる。電圧V3は、このようにして定まるパルス状の波形となる。電圧V3のパルス時間tはコンデンサC1とMOSFET(M4)のドレイン電流I2に依存し、次の(3)式で表すことができる。
[数2]
t=C1×(Vdd―Vth)/I2・・・(3)
この(3)式において、電流I2は温度上昇により増加するため、パルス時間tは温度上昇により低下することになる。
図2の電圧波形V3において、実線と破線で示すように、高温である時には低温である時に比べて電圧V3のパルス時間tは短くなるという関係にある。
【0023】
図2の4段目には、MOSFET(M7)のドレイン電流I4を示している。
図1の回路では、パルス電圧V3を受けてMOSFET(M7)はMOSFET(M2)が発生する電流I3をスイッチングする。スイッチングにより電流I4は、パルス状になる。電流I4の時間平均値Ioutは(1)〜(3)式を用いて(4)式のように表すことができる。
[数3]
Iout=I3×t/T
=b/a×C1×(Vdd−Vth)/T・・・(4)
(4)式によれば、出力電流の時間平均値Ioutは温度依存性のない定数のみで与えられる。これは温度上昇により増加する電流I3と、温度上昇につれて低下するパルス時間tが相殺し温度変化に対して一定となるためである。
【0024】
以上より本実施例の電流源回路は温度変化の影響を受けないことが示された。
【実施例2】
【0025】
図3は、第2の実施例の電流源回路の回路図である。この電流原回路は、
図7に基本形を示した定電流回路と、定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路と、電源側と接地側のカレントミラー回路の間に形成されたパルス生成回路などで構成されている。いずれの回路も基本的にMOSFETにより構成されている。図示のMOSFETのうち、M8はデプレッション型nチャネルMOSFET、M3、M4、M6、M9はエンハンスメント型nチャネルMOSFETであり、M1、M2、M5はエンハンスメント型pチャネルMOSFETであるが、特に必要がない限り単にMOSFETとして説明する。
【0026】
まず
図7に基本形を示した定電流回路は、MOSFET(M8)により構成されている。また定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路についてみると、電源側のカレントミラー回路はMOSFET(M1とM2)により構成され、接地側のカレントミラー回路はMOSFET(M3とM4)により構成されている。
【0027】
このうち、電源側カレントミラー回路のMOSFET(M1)と、定電流回路のMOSFET(M8)と、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M3)は直列接続されているので、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流をI1とすると、MOSFET(M1及びM3)にも電流I1が流れる。
【0028】
電源側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M2)は、パルス生成回路のMOSFET(M5、M6)を経由して、接地されている。この場合にMOSFET(M2)のドレイン電流をI3とする。
【0029】
また接地側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M4)は、MOSFET(M9)と直列に接続されている。この場合にMOSFET(M4)のドレイン電流をI2とする。
【0030】
カレントミラー回路を用いた上記回路構成によれば、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流I1は、カレントミラー回路の動作によりMOSFET(M4)を流れるドレイン電流I2、MOSFET(M2)流れるドレイン電流I3と比例関係になる。これらの関係は、先述の(1)式、(2)式と同じであり、これを(5)式、(6)式で表す。ただし、a、bは比例定数である。
[数4]
I2=a×I1・・・(5)
I3=b×I1・・・(6)
ところで、MOSFETのドレイン電流は正の温度特性を持つため電流I1は温度上昇につれて増加する。このため(5)式、(6)式の関係を持つ電流I2とI3も温度上昇により増加することになる。
【0031】
図3においてパルス生成回路は、方形波発振回路と、MOSFET(M5、M6)の直列回路と、コンデンサC1と、NOR素子(NOR1)で構成されている。このパルス生成回路における各部電圧は、方形波発振回路の出力電圧V1、コンデンサC1の端子電圧V2、NOR素子NOR1の出力電圧V3であり、最終的にMOSFET(M9)のドレイン電流I4が決定される。
【0032】
図4は、パルス生成回路における各部電圧とMOSFET(M9)のドレイン電流I4の時間的推移を示した図である。この図の上段には方形波発振回路の出力電圧V1を示しており、これは電位Vdd(Hiレベル)と接地電位GND(Lo)の間で周期的に変動(周期T)する矩形状信号である。
【0033】
図2の2段目にはコンデンサC1の端子電圧V2の時系列変化を示している。これによれば、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時、MOSFET(M6)が導通し、コンデンサC1を放電する。この時、MOSFET(M6)のオン抵抗以外に電流値を低下させるものはないため、コンデンサC1は高速に接地電圧GNDまで放電される。
【0034】
他方、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時、MOSFET(M5)が導通し、コンデンサC1を充電する。この時、充電電流はMOSFET(M2)により電流I3に制限されるため充電速度が低下する。これらの動作により、コンデンサC1の端子電圧V2の波形は立ち上がりが遅く、立下りが早い波形となる。
【0035】
図4の3段目には、NOR素子NOR1の出力波形電圧V3を記載している。NOR1は敷居電圧Vthでスイッチングし、その2つの入力(V1とV2)がともに敷居電圧Vth以下となる期間のみ電源電圧Vddを与え、それ以外の期間では接地電位GNDを与える。この結果、NOR素子NOR1の出力波形電圧V3は、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時点から、コンデンサ電圧V2が敷居電圧Vth以上となる時点までの期間、電源電圧Vddを与えることになる。電圧V3は、このようにして定まるパルス状の波形となる。電圧V3のパルス時間tはコンデンサC1とMOSFET(M2)のドレイン電流I3に依存し、次の(3)式で表すことができる。
[数5]
t=C1×Vth/I3・・・(7)
この(7)式において、電流I3は温度上昇により増加するため、パルス時間tは温度上昇により低下することになる。
図4の電圧波形V3において、実線と破線で示すように、高温である時には低温である時に比べて電圧V3のパルス時間tは短くなるという関係にある。
【0036】
図4の4段目には、MOSFET(M9)のドレイン電流I4を示している。
図3の回路では、パルス電圧V3を受けてMOSFET(M9)はMOSFET(M4)が発生する電流I2をスイッチングする。スイッチングにより電流I4は、パルス状になる。電流I4の時間平均値Ioutは(5)〜(7)式を用いて(8)式のように表すことができる。
[数6]
Iout=I2×t/T
=a/b×C1×Vth/T・・・(8)
(8)式によれば、出力電流の時間平均値Ioutは温度依存性のない定数のみで与えられる。これは温度上昇により増加する電流I2と、温度上昇につれて低下するパルス時間tが相殺し温度変化に対して一定となるためである。
【0037】
以上より本実施例の電流源回路は温度変化の影響を受けないことが示された。
【実施例3】
【0038】
図5は第3の実施例の電流源回路の回路図である。
図1に示した実施例1の電流源回路において定電流回路部であるMOSFET(M8)を抵抗R1に置換したものである。
【0039】
図1の実施例1では電流I1をMOSFET(M8)で構成した定電流回路により生成していたが、
図5では抵抗R1とMOSFET(M1とM3)の敷居電圧のバランスにより電流I1が決定される。本実施例においても(1)〜(4)式の関係は成立し、出力電流の平均電流値Ioutは(4)式で与えられる。よって、温度依存性のない電流源回路として機能する。
【実施例4】
【0040】
図6は
図1の電流源回路を用いたタイマー回路の回路図である。
図1の実施例1の電流源回路に、コンデンサC2、MOSFET(M10)、コンパレータCM1、基準電圧Vrefを追加し、その他は
図1の実施例1と同様である。なおM10はエンハンスメント型nチャネルMOSFETである。
【0041】
この回路構成では、電流源回路によりコンデンサC2を充電し、設定した基準電圧Vrefを超えた時点で信号がVoutから出力される。信号出力までの時間Ttmは電流源回路の出力電流平均値IoutとコンデンサC2、基準電圧Vrefを用いて(9)式により与えられる。
[数7]
Ttm=C2×Vref/Iout・・・(9)