特許第6261882号(P6261882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261882
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】電流源回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 3/26 20060101AFI20180104BHJP
   G05F 3/24 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   G05F3/26
   G05F3/24 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-113632(P2013-113632)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-232467(P2014-232467A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】家坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
(72)【発明者】
【氏名】内海 智之
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−241672(JP,A)
【文献】 特開平11−296245(JP,A)
【文献】 特開2012−216034(JP,A)
【文献】 特開2000−214824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0249187(US,A1)
【文献】 特開2007−206972(JP,A)
【文献】 特開2001−312321(JP,A)
【文献】 特開2013−158140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0066434(US,A1)
【文献】 特開平5−27219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 3/26
G05F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2のMOSFETで構成された第1のカレントミラー回路と、第3と第4のMOSFETで構成された第2のカレントミラー回路と、第5と第6のMOSFETの直列回路で構成され第5と第6のMOSFETのゲート端子に発振回路からの矩形信号が与えられるパルス生成回路とを備え、
電源と接地間に前記第1のMOSFETと前記第3のMOSFETと定電流回路を直列接続し、電源と接地間に前記第4のMOSFETと前記第5と第6のMOSFETの直列回路を直列接続し、前記第2のMOSFETと第7のMOSFETを直列接続して前記第7のMOSFETのゲート端子に前記パルス生成回路からの矩形信号が印加されているとともに、
前記パルス生成回路は、前記第5と第6のMOSFETの直列回路の接続点と接地との間に設けたコンデンサと、前記第5と第6のMOSFETのゲート端子に矩形信号を与えて前記第5と第6のMOSFETの一方を導通状態、他方を非導通状態とする発振回路と、前記コンデンサの端子電圧を敷居電位と比較した結果と前記発振回路からの矩形信号により前記第7のMOSFETのゲート端子に与える前記矩形信号を定める論理回路で構成されており、前記パルス生成回路の前記矩形信号は温度により矩形波のパルス時間が変化するものであることを特徴とする電流源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電流源回路であって、
第1のカレントミラー回路のMOSFETをエンハンスメント型pチャネルMOSFETで構成し、第2のカレントミラー回路のMOSFETをエンハンスメント型nチャネルMOSFETで構成したことを特徴とする電流源回路。
【請求項3】
請求項1に記載の電流源回路であって、
第1のカレントミラー回路のMOSFETをエンハンスメント型nチャネルMOSFETで構成し、第2のカレントミラー回路のMOSFETをエンハンスメント型pチャネルMOSFETで構成したことを特徴とする電流源回路。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電流源回路であって、
前記定電流回路は抵抗で構成されていることを特徴とする電流源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度補償された電流源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
MOSFETを用いた電流源回路の基本形として図7の回路構成などが知られている。図7の回路において、M11はデプレッション型nチャネルMOSFET、Vddは電源電圧であり、MOSFETのソースとゲートを接続した構成のものである。
【0003】
しかしこの回路は温度変化が生じた場合、MOSFETのドレイン電流が正の温度特性を持つため、設定された電流値が変化してしまう。そこでこの問題を解消するために特許文献1のような回路構成が提案されている。図8に特許文献1の回路構成を示す。
【0004】
この回路は、2つのエンハンスメント型pチャネルMOSFETM12、M13から構成されたカレントミラー回路と、カレントミラー回路の入力側のMOSFETM12のドレインに接続され、定電流源として機能するデプレッション型nチャネルMOSFETM14と、カレントミラー回路の入力側のMOSFETM12のソースに接続された負の温度特性を有する抵抗R2とで構成されている。係る回路構成により、正の温度特性を持つMOSFETのドレイン電流を負の温度特性を持つ抵抗によって相殺して温度変化に対して電流値の変化を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−150675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は正の温度特性を持つMOSFETのドレイン電流と、負の温度特性を持つ抵抗という二つの異なる部品の温度特性を組み合わせることで、それらの温度特性を相殺させ、温度変化に対して電流源回路の設定電流値を一定としている。このような回路構成の場合、二つの部品の温度特性が相殺するように各々の部品の温度特性を調整する必要がある。別な言い方をすると、特許文献1の方法では温度特性の調整に手間がかかり、温度特性が揃わない場合には十分な特性を出せないことになる。
【0007】
本発明は、複数の部品の温度特性に頼ることなく十分な性能を発揮することが可能な電流原回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電流源回路は、第1と第2のMOSFETで構成された第1のカレントミラー回路と、第3と第4のMOSFETで構成された第2のカレントミラー回路と、第5と第6のMOSFETの直列回路で構成され第5と第6のMOSFETのゲート端子に発振回路からの矩形信号が与えられるパルス生成回路とを備え、
電源と接地間に前記第1のMOSFETと前記第3のMOSFETと定電流回路を直列接続し、電源と接地間に前記第4のMOSFETと前記第5と第6のMOSFETの直列回路を直列接続し、前記第2のMOSFETと第7のMOSFETを直列接続して前記第7のMOSFETのゲート端子に前記パルス生成回路からの矩形信号が印加されているとともに、
前記パルス生成回路は、前記第5と第6のMOSFETの直列回路の接続点と接地との間に設けたコンデンサと、前記第5と第6のMOSFETのゲート端子に矩形信号を与えて前記第5と第6のMOSFETの一方を導通状態、他方を非導通状態とする発振回路と、前記コンデンサの端子電圧を敷居電位と比較した結果と前記発振回路からの矩形信号により前記第7のMOSFETのゲート端子に与える前記矩形信号を定める論理回路で構成されており、前記パルス生成回路の前記矩形信号は温度により矩形波のパルス時間が変化するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、温度補償された電流源回路を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の電流源回路の構成を示す図。
図2図1の電流源回路の各部電圧、電流波形を示す図。
図3】実施例2の電流源回路の構成を示す図。
図4図3の電流源回路の各部電圧、電流波形を示す図。
図5】実施例3の電流源回路の構成を示す図。
図6】実施例4の電流源回路の構成を示す図。
図7】MOSFETを用いた電流源回路の基本形を示す図。
図8】特許文献1の電流源回路の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施例の電流源回路の回路図である。この電流原回路は、図7に基本形を示した定電流回路と、定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路と、電源側と接地側のカレントミラー回路の間に形成されたパルス生成回路などで構成されている。いずれの回路も基本的にMOSFETにより構成されている。図示のMOSFETのうち、M8はデプレッション型nチャネルMOSFET、M3、M4、M6はエンハンスメント型nチャネルMOSFETであり、M1、M2、M5、M7はエンハンスメント型pチャネルMOSFETであるが、特に必要がない限り単にMOSFETとして説明する。
【0013】
まず図7に基本形を示した定電流回路は、MOSFET(M8)により構成されている。また定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路についてみると、電源側のカレントミラー回路はMOSFET(M1とM2)により構成され、接地側のカレントミラー回路はMOSFET(M3とM4)により構成されている。
【0014】
このうち、電源側カレントミラー回路のMOSFET(M1)と、定電流回路のMOSFET(M8)と、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M3)は直列接続されているので、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流をI1とすると、MOSFET(M1及びM3)にも電流I1が流れる。
【0015】
電源側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M2)は、MOSFET(M7)と直列に接続されており、この場合にMOSFET(M2)のドレイン電流をI3とする。
【0016】
また電源側カレントミラー回路の共通ソース端子側と接地との間に、パルス生成回路のMOSFET(M5、M6)、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M4)が直列に接続されている。この場合にMOSFET(M4)のドレイン電流をI2とする。
【0017】
カレントミラー回路を用いた上記回路構成によれば、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流I1は、カレントミラー回路の動作によりMOSFET(M4)を流れるドレイン電流I2、MOSFET(M2)流れるドレイン電流I3と比例関係になる。これらの関係は、以下の(1)式、(2)式に示すように表すことができる。ただし、a、bは比例定数である。
[数1]
I2=a×I1・・・(1)
I3=b×I1・・・(2)
ところで、MOSFETのドレイン電流は正の温度特性を持つため電流I1は温度上昇につれて増加する。このため(1)式、(2)式の関係を持つ電流I2とI3も温度上昇により増加することになる。
【0018】
図1においてパルス生成回路は、方形波発振回路と、MOSFET(M5、M6)の直列回路と、コンデンサC1と、NAND素子(NAND1)で構成されている。このパルス生成回路における各部電圧は、方形波発振回路の出力電圧V1、コンデンサC1の端子電圧V2、NAND素子NAND1の出力電圧V3であり、最終的にMOSFET(M7)のドレイン電流I4が決定される。
【0019】
図2は、パルス生成回路における各部電圧とMOSFET(M7)のドレイン電流I4の時間的推移を示した図である。この図の上段には方形波発振回路の出力電圧V1を示しており、これは電位Vdd(Hiレベル)と接地電位GND(Lo)の間で周期的に変動(周期T)する矩形状信号である。
【0020】
図2の2段目にはコンデンサC1の端子電圧V2の時系列変化を示している。これによれば、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時、MOSFET(M5)が導通し、コンデンサC1を充電する。この時、MOSFET(M5)のオン抵抗以外に電流値を低下させるものはないため、コンデンサC1は高速に電源電圧Vddまで充電される。
【0021】
他方、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時、MOSFET(M6)が導通し、コンデンサC1を放電する。この時、放電電流はMOSFET(M4)により電流I2に制限されるため放電速度が低下する。これらの動作により、コンデンサC1の端子電圧V2の波形は立ち上がりが早く、立下りが遅い波形となる。
【0022】
図2の3段目には、NAND素子NAND1の出力波形電圧V3を記載している。NAND1は敷居電圧Vthでスイッチングし、その2つの入力(V1とV2)がともに敷居電圧Vth以上となる期間のみ接地電位GNDを与え、それ以外の期間では電源電位Vddを与える。この結果、NAND素子NAND1の出力波形電圧V3は、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時点から、コンデンサ電圧V2が放電により敷居電圧Vth以下となる時点までの期間、接地電位GNDを与えることになる。電圧V3は、このようにして定まるパルス状の波形となる。電圧V3のパルス時間tはコンデンサC1とMOSFET(M4)のドレイン電流I2に依存し、次の(3)式で表すことができる。
[数2]
t=C1×(Vdd―Vth)/I2・・・(3)
この(3)式において、電流I2は温度上昇により増加するため、パルス時間tは温度上昇により低下することになる。図2の電圧波形V3において、実線と破線で示すように、高温である時には低温である時に比べて電圧V3のパルス時間tは短くなるという関係にある。
【0023】
図2の4段目には、MOSFET(M7)のドレイン電流I4を示している。図1の回路では、パルス電圧V3を受けてMOSFET(M7)はMOSFET(M2)が発生する電流I3をスイッチングする。スイッチングにより電流I4は、パルス状になる。電流I4の時間平均値Ioutは(1)〜(3)式を用いて(4)式のように表すことができる。
[数3]
Iout=I3×t/T
=b/a×C1×(Vdd−Vth)/T・・・(4)
(4)式によれば、出力電流の時間平均値Ioutは温度依存性のない定数のみで与えられる。これは温度上昇により増加する電流I3と、温度上昇につれて低下するパルス時間tが相殺し温度変化に対して一定となるためである。
【0024】
以上より本実施例の電流源回路は温度変化の影響を受けないことが示された。
【実施例2】
【0025】
図3は、第2の実施例の電流源回路の回路図である。この電流原回路は、図7に基本形を示した定電流回路と、定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路と、電源側と接地側のカレントミラー回路の間に形成されたパルス生成回路などで構成されている。いずれの回路も基本的にMOSFETにより構成されている。図示のMOSFETのうち、M8はデプレッション型nチャネルMOSFET、M3、M4、M6、M9はエンハンスメント型nチャネルMOSFETであり、M1、M2、M5はエンハンスメント型pチャネルMOSFETであるが、特に必要がない限り単にMOSFETとして説明する。
【0026】
まず図7に基本形を示した定電流回路は、MOSFET(M8)により構成されている。また定電流回路の電源側と接地側にそれぞれ設けたカレントミラー回路についてみると、電源側のカレントミラー回路はMOSFET(M1とM2)により構成され、接地側のカレントミラー回路はMOSFET(M3とM4)により構成されている。
【0027】
このうち、電源側カレントミラー回路のMOSFET(M1)と、定電流回路のMOSFET(M8)と、接地側カレントミラー回路のMOSFET(M3)は直列接続されているので、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流をI1とすると、MOSFET(M1及びM3)にも電流I1が流れる。
【0028】
電源側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M2)は、パルス生成回路のMOSFET(M5、M6)を経由して、接地されている。この場合にMOSFET(M2)のドレイン電流をI3とする。
【0029】
また接地側カレントミラー回路の他方のMOSFET(M4)は、MOSFET(M9)と直列に接続されている。この場合にMOSFET(M4)のドレイン電流をI2とする。
【0030】
カレントミラー回路を用いた上記回路構成によれば、定電流回路のMOSFET(M8)のドレイン電流I1は、カレントミラー回路の動作によりMOSFET(M4)を流れるドレイン電流I2、MOSFET(M2)流れるドレイン電流I3と比例関係になる。これらの関係は、先述の(1)式、(2)式と同じであり、これを(5)式、(6)式で表す。ただし、a、bは比例定数である。
[数4]
I2=a×I1・・・(5)
I3=b×I1・・・(6)
ところで、MOSFETのドレイン電流は正の温度特性を持つため電流I1は温度上昇につれて増加する。このため(5)式、(6)式の関係を持つ電流I2とI3も温度上昇により増加することになる。
【0031】
図3においてパルス生成回路は、方形波発振回路と、MOSFET(M5、M6)の直列回路と、コンデンサC1と、NOR素子(NOR1)で構成されている。このパルス生成回路における各部電圧は、方形波発振回路の出力電圧V1、コンデンサC1の端子電圧V2、NOR素子NOR1の出力電圧V3であり、最終的にMOSFET(M9)のドレイン電流I4が決定される。
【0032】
図4は、パルス生成回路における各部電圧とMOSFET(M9)のドレイン電流I4の時間的推移を示した図である。この図の上段には方形波発振回路の出力電圧V1を示しており、これは電位Vdd(Hiレベル)と接地電位GND(Lo)の間で周期的に変動(周期T)する矩形状信号である。
【0033】
図2の2段目にはコンデンサC1の端子電圧V2の時系列変化を示している。これによれば、方形波発振回路の出力電圧V1がLoからHiに変化した時、MOSFET(M6)が導通し、コンデンサC1を放電する。この時、MOSFET(M6)のオン抵抗以外に電流値を低下させるものはないため、コンデンサC1は高速に接地電圧GNDまで放電される。
【0034】
他方、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時、MOSFET(M5)が導通し、コンデンサC1を充電する。この時、充電電流はMOSFET(M2)により電流I3に制限されるため充電速度が低下する。これらの動作により、コンデンサC1の端子電圧V2の波形は立ち上がりが遅く、立下りが早い波形となる。
【0035】
図4の3段目には、NOR素子NOR1の出力波形電圧V3を記載している。NOR1は敷居電圧Vthでスイッチングし、その2つの入力(V1とV2)がともに敷居電圧Vth以下となる期間のみ電源電圧Vddを与え、それ以外の期間では接地電位GNDを与える。この結果、NOR素子NOR1の出力波形電圧V3は、方形波発振回路の出力電圧V1がHiからLoに変化した時点から、コンデンサ電圧V2が敷居電圧Vth以上となる時点までの期間、電源電圧Vddを与えることになる。電圧V3は、このようにして定まるパルス状の波形となる。電圧V3のパルス時間tはコンデンサC1とMOSFET(M2)のドレイン電流I3に依存し、次の(3)式で表すことができる。
[数5]
t=C1×Vth/I3・・・(7)
この(7)式において、電流I3は温度上昇により増加するため、パルス時間tは温度上昇により低下することになる。図4の電圧波形V3において、実線と破線で示すように、高温である時には低温である時に比べて電圧V3のパルス時間tは短くなるという関係にある。
【0036】
図4の4段目には、MOSFET(M9)のドレイン電流I4を示している。図3の回路では、パルス電圧V3を受けてMOSFET(M9)はMOSFET(M4)が発生する電流I2をスイッチングする。スイッチングにより電流I4は、パルス状になる。電流I4の時間平均値Ioutは(5)〜(7)式を用いて(8)式のように表すことができる。
[数6]
Iout=I2×t/T
=a/b×C1×Vth/T・・・(8)
(8)式によれば、出力電流の時間平均値Ioutは温度依存性のない定数のみで与えられる。これは温度上昇により増加する電流I2と、温度上昇につれて低下するパルス時間tが相殺し温度変化に対して一定となるためである。
【0037】
以上より本実施例の電流源回路は温度変化の影響を受けないことが示された。
【実施例3】
【0038】
図5は第3の実施例の電流源回路の回路図である。図1に示した実施例1の電流源回路において定電流回路部であるMOSFET(M8)を抵抗R1に置換したものである。
【0039】
図1の実施例1では電流I1をMOSFET(M8)で構成した定電流回路により生成していたが、図5では抵抗R1とMOSFET(M1とM3)の敷居電圧のバランスにより電流I1が決定される。本実施例においても(1)〜(4)式の関係は成立し、出力電流の平均電流値Ioutは(4)式で与えられる。よって、温度依存性のない電流源回路として機能する。
【実施例4】
【0040】
図6図1の電流源回路を用いたタイマー回路の回路図である。図1の実施例1の電流源回路に、コンデンサC2、MOSFET(M10)、コンパレータCM1、基準電圧Vrefを追加し、その他は図1の実施例1と同様である。なおM10はエンハンスメント型nチャネルMOSFETである。
【0041】
この回路構成では、電流源回路によりコンデンサC2を充電し、設定した基準電圧Vrefを超えた時点で信号がVoutから出力される。信号出力までの時間Ttmは電流源回路の出力電流平均値IoutとコンデンサC2、基準電圧Vrefを用いて(9)式により与えられる。
[数7]
Ttm=C2×Vref/Iout・・・(9)
【符号の説明】
【0042】
M8、M11、M14:デプレッション型nチャネルMOSFET
M3、M4、M6、M9、M10:エンハンスメント型nチャネルMOSFET
M1、M2、M5、M7、M12、M13:エンハンスメント型pチャネルMOSFET
C1、C2:コンデンサ
R1、R2:抵抗
NAND1:NAND素子
NOR1:NOR素子
CM1:コンパレータ
Vdd:電源電圧
Vth:NAND素子またはNOR素子の動作敷居電圧
Vref:基準電圧
V1:方形波発振回路の出力する電圧
V2:コンデンサC1の電圧
V3:NAND素子またはNOR素子の出力電圧
GND:接地電圧
I1:MOSFETのM8、M1、M3を流れる電流
I2:MOSFETのM4を流れる電流
I3:MOSFETのM2を流れる電流
I4:MOSFETのM7またはM9を流れる電流
T:方形波発振回路の出力波形の周期
t:V3の出力電圧のパルス時間幅
Ttm:タイマー回路の設定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8