(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制動解除位置と制動位置との間で揺動自在であり、魚釣用スピニングリールのリール本体に回転自在に支持されたロータの回転を制動するロータ制動装置の制動操作レバーであって、
前記リール本体に回動自在に支持されたレバー本体と、
前記レバー本体の第1端部に設けられた制動操作用の操作部と、
前記レバー本体の第2端部に設けられ、前記操作部の操作によって、前記制動操作レバーが前記制動解除位置にあるときは前記ロータに非接触であり、前記制動位置にあるとき前記ロータに押圧されるブレーキシューと、
前記ブレーキシューと前記レバー本体との間に配置され、前記ブレーキシューが前記ロータに押圧された状態で弾性変形する弾性部材と、
前記弾性部材の弾性変形を所定量に規制して、前記弾性部材が前記所定量だけ弾性変形した以降は、前記操作部の操作力を前記レバー本体から前記ブレーキシューに直接伝達する変形規制機構と、
を備え、
前記制動操作レバーが前記制動位置にあるとき、前記操作部の操作力は前記レバー本体から前記ブレーキシューに前記弾性部材を介して伝達される、
魚釣用スピニングリールのロータ制動装置の制動操作レバー。
前記弾性部材は、前記ブレーキシューが前記制動面に押圧された際に前記ブレーキシューの当接面と前記レバー本体との間の距離が変化するように配置された板バネである、請求項1から4のいずれかに記載の魚釣用スピニングリールのロータ制動装置の制動操作レバー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のようなロータ制動装置のブレーキシューは、一般的に合成樹脂で形成されている。ブレーキシューは、摩耗を抑えて長寿命化を図るためには、剛性を高くする方が好ましい。一方で、剛性をあまり高くすると、制動力の調整幅が狭くなり、釣糸の張力を微妙に制御することが困難になる。
【0006】
本発明の課題は、魚釣用スピニングリールのロータ制動装置において、ブレーキシューの摩耗を抑えつつ、制動力の調整幅を広げることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、魚釣用スピニングリールのリール本体に回動自在に支持されたロータの回転を制動するロータ制動装置に設けられている。この制動操作レバーは、リール本体に回動自在に支持されたレバー本体と、レバー本体の第1端部に設けられた制動操作用の操作部と、レバー本体の第2端部に設けられ操作部の操作によってロータに押圧されるブレーキシューと、ブレーキシューとレバー本体との間に配置された弾性部材と、を備えている。
【0008】
この制動操作レバーでは、操作部が操作されることによって、レバー本体が回動し、レバー本体の端部に設けられたブレーキシューがロータに押圧される。これにより、ロータの回転が制動される。このとき、操作部に加える操作力を調整することによって制動力を調整でき、釣糸の張力を調整することができる。
【0009】
ここでは、ブレーキシューとレバー本体との間に弾性部材が配置されており、したがって、制動操作レバーが操作されてブレーキシューがロータに押圧されると、弾性部材が弾性変形する。この弾性部材の変形の程度によって、ブレーキシューのロータに対する押圧力を変えることができる。このため、従来の構成に比較して制動力の調整幅を広くすることができ、釣糸の張力を微妙に制御できる。
【0010】
本発明の第2側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第1側面の制動操作レバーにおいて、弾性部材はブレーキシューよりも低剛性である。ここでは、弾性部材が弾性変形しやすくなって制動力の調整幅を広くすることができ、前記同様に、釣糸の張力を微妙に制御できる。
【0011】
本発明の第3側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第1又は第2側面の制動操作レバーにおいて、弾性部材の弾性変形を所定量に規制して、弾性部材が所定量だけ弾性変形した以降は、操作部の操作力をレバー本体からブレーキシューに直接伝達する変形規制機構をさらに備えている。
【0012】
ここで、ブレーキシューとレバー本体との間に弾性部材を設けた場合、制動操作レバーを操作した際に弾性部材が弾性変形し、操作力が弾性部材に吸収される。このため大きな制動力を得にくくなる。
【0013】
そこで、ここでは、弾性部材の弾性変形を所定量に規制して、弾性部材が所定量だけ弾性変形した以降は、操作部の操作力をレバー本体からブレーキシューに直接伝達する変形規制機構をさらに備えている。
【0014】
ここでは、弾性部材が所定量だけ弾性変形した以降は、弾性部材の弾性変形が規制される。そして、この後は、操作部の操作力はレバー本体からブレーキシューに直接伝達される。したがって、ブレーキシューとレバー本体との間に弾性部材を配置した場合であっても、大きな制動力を得ることができる。
【0015】
本発明の第4側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第3側面の制動操作レバーにおいて、変形規制機構はブレーキシューにおいてレバー本体側に突出して設けられた突起である。
【0016】
ここでは、制動操作レバーが操作され、弾性部材が所定量変形すると、ブレーキシューに設けられた突起がレバー本体に当接する。そして、これ以降は、レバー本体からの力は弾性部材を介することなくブレーキシューに直接伝達される。したがって、非常に簡単な構成で変形規制機構を実現できる。
【0017】
本発明の第5側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第3又は第4側面の制動操作レバーにおいて、変形規制機構はレバー本体においてシュー側に突出して設けられた突起である。
【0018】
ここでは、制動操作レバーが操作され、弾性部材が所定量変形すると、レバー本体に設けられた突起がブレーキシューに当接する。そして、これ以降は、レバー本体からの力は弾性部材を介することなくブレーキシューに直接伝達される。したがって、前記同様に、非常に簡単な構成で変形規制機構を実現できる。
【0019】
本発明の第6側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第1から第5側面のいずれかの制動操作レバーにおいて、弾性部材はゴム製である。
【0020】
本発明の第7側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第1から第5側面のいずれかの制動操作レバーにおいて、弾性部材は、ブレーキシューが制動面に押圧された際にブレーキシューの当接面とレバー本体との間の距離が変化するように配置された板バネである。
【0021】
本発明の第8側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第1から第7側面のいずれかの制動操作レバーにおいて、ブレーキシューは、当接部と、1対の脚部と、を有している。当接部は、一方の端面がロータに当接するとともに、レバー本体との間に隙間をあけて配置されている。1対の脚部は、当接部と逆側に設けられ、レバー本体に係合する。そして、弾性部材は隙間に配置されている。
【0022】
ここでは、ブレーキシューは1対の脚部によってレバー本体に係合されて一体化され、当接部の端面がロータに当接してロータを制動する。そして、弾性部材は当接部とレバー本体との間に設けられた隙間に配置されている。
【0023】
本発明の第9側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第8側面の制動操作レバーにおいて、ブレーキシューは弾性部材収容部をさらに有している。弾性部材収容部は、当接部と1対の脚部との間に設けられ、弾性部材が収容された収容空間を内部に有する。そして、弾性部材は弾性部材収容部に形成された1つの開口のみを介して収容空間に着脱可能である。
【0024】
ここでは、弾性部材収容部の収容空間に収容される弾性部材は、弾性部材収容部の1つの開口のみから着脱される。
【0025】
したがって、弾性部材の組付等が容易になり、しかも組み付けた後は収容空間から弾性部材が脱落しにくい。
【0026】
本発明の第10側面に係るロータ制動装置の制動操作レバーは、第9側面の制動操作レバーにおいて、弾性部材収容部の1つの開口は、ロータの回転方向と交差する方向に開いている。
【0027】
ここで、弾性部材は、直接ロータに当接するわけではないが、弾性部材収容部の開口がロータの回転方向に沿った方向の面に形成されていると、この開口から内部の弾性部材が脱落する危険性がある。
【0028】
そこで、この発明では、ロータの回転方向と交差する方向に開口が位置するように弾性部材収容部が構成されている。このため、弾性部材が弾性部材収容部の内部空間から、より脱落しにくくなる。
【0029】
本発明の第11側面に係る魚釣用スピニングリールは、竿装着部及び竿装着部から延びる脚部を有するリール本体と、リール本体に回転自在に装着されたロータと、本発明の第1から第10側面のいずれかに記載の制動操作レバーを有しロータの回転を制動するロータ制動装置と、を備えている。
【0030】
本発明の第12側面に係る魚釣用スピニングリールは、第11側面の魚釣用スピニングリールにおいて、ロータは、リール本体に回転自在に支持されたロータ本体と、制動部と、を有している。制動部は、ブレーキシューが当接可能な制動面を有する制動部本体と、ロータ本体の糸繰り出し方向の回転のみを制動部本体に伝達するワンウェイクラッチと、を有し、リール本体に回転自在に支持されている。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によれば、ロータ制動装置に設けられた制動操作レバーのブレーキシューの摩耗を抑えつつ、制動力の調整幅を広げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[全体構成]
図1に、本発明の一実施形態を採用したスピニングリールを示す。このスピニングリールは、釣り竿の長手方向に沿う第1軸X回りに釣り糸を巻き取るレバーブレーキ型のリールである。スピニングリールは、ハンドル組立体1を備えたリール本体2と、リール本体2の前部に第1軸X回りに回転自在に支持されたロータ3と、ロータ3の前部に配置された釣り糸を巻き取るスプール4とを備えている。
【0034】
[リール本体2]
リール本体2は、
図1及び
図2に示すように、機構収容部2aと、脚部2bと、竿装着部2cと、を有している。機構収容部2aは各機構部を装着するための空間を内部に有している。機構収容部2aは一方の側部に開口を有し、この開口は蓋部材2dにより塞がれている。また、機構収容部2aの前部には筒状の取付部材2eが装着されている。脚部2bは、機構収容部2aと一体形成され、機構収容部2aから竿装着部2cに向かって延びている。竿装着部2cは、脚部2bの先端に脚部2bと一体形成され、前後に長く延びている。
【0035】
リール本体2の後部はガード部材6により覆われている。脚部2bの前面には、後述する
制動操作レバー7(以下、単に「制動レバー7」と記す)を収納するための装着溝2gが形成されている。装着溝2gにはシート部材8が装着されている。
【0036】
機構収容部2aの内部には、
図1に示すように、ロータ駆動機構10と、ロータ制動装置11と、オシレーティング機構12と、が設けられている。ロータ駆動機構10は、ハンドル組立体1に連動してロータ3を回転させるための機構である。ロータ制動装置11は、ロータ3の糸繰り出し方向の回転(逆転)を制動するための装置である。オシレーティング機構12は、ハンドル組立体1の回転に連動してスプール軸14を介してスプール4を前後に往復移動させる機構である。
【0037】
ロータ駆動機構10は、
図1及び
図2に示すように、ハンドル組立体1が一体回転可能に固定されたマスターギア軸16と、マスターギア軸16ともに回転するマスターギア17と、マスターギア17に噛み合うピニオンギア18と、を有している。
【0038】
マスターギア軸16は、マスターギア17と一体に形成され、機構収容部2a及び蓋部材2dに回転自在に支持されている。ピニオンギア18は筒状に形成されており、ピニオンギア18の前部はロータ3の前方でスプール4側に延びている。そして、ピニオンギア18の前部がナット20によりロータ3に一体回転可能に固定されている。ピニオンギア18は、先端部、中間部、及び後部が、それぞれ軸受により機構収容部2aに回転自在に支持されている。
【0039】
オシレーティング機構12は、
図1及び
図2に示すように、トラバースカム式のものであり、ピニオンギア18に噛み合う中間ギア23と、機構収容部2aにスプール軸14と平行な軸回りに回転自在に装着された螺軸24と、螺軸24の回転により前後移動するスライダ25とを有している。
【0040】
[ロータ3]
ロータ3は、リール本体2に回転自在に支持されており、ロータ本体26と、制動部27と、を有している。ロータ本体26は、円筒部26aと、円筒部26aの側方に互いに対向して設けられた第1アーム部26b及び第2アーム部26cとを有している。円筒部26aの前部には、中央に貫通孔を有する前壁26dが形成されている。この前壁26dに形成された貫通孔を、ピニオンギア18が貫通している。また、
図1に示すように、第1アーム部26bの先端と第2アーム部26cの先端部との間には、ベールアーム29が揺動自在に設けられている。このベールアーム29により釣り糸がスプール4に案内される。
【0041】
制動部27は、制動レバー7とともにロータ制動装置11を構成する。このロータ制動装置11については後述する。
【0042】
[スプール4]
スプール4はロータ本体26の第1アーム部26bと第2アーム部26cとの間に配置されている。スプール4は、スプール軸14の先端にワンタッチ着脱機構30を介して着脱自在かつ回転不能に装着されている。スプール4は、スプール本体32と、スプール本体32内に配置されたドラグ機構33と、スプール本体32を回転自在に支持するスプール筒部34と、を有している。
【0043】
[ロータ制動装置11]
図1から
図3に示すように、ロータ制動装置11は主に、制動レバー7と、制動部27と、制動制御部35(
図2参照)と、を有している。制動レバー7は制動部27の制動力を調整操作するための部材である。制動制御部35は、制動レバー7により、所定の制動力を作用させる制動状態と、制動が解除された制動解除状態と、に切り換えるための機構である。
【0044】
<制動部27>
制動部27は、
図3に示すように、制動部本体37と、ワンウェイクラッチ38と、を有している。制動部本体37は、制動レバー7の先端が圧接されて制動される制動面を有している。ワンウェイクラッチ38はロータ3と制動部本体37とをロータ3の回転方向に応じて連結・遮断する。
【0045】
制動部本体37は、ロータ3の円筒部26aの内周側にロータ3と同心に配置された筒状部材40と、筒状部材40の内周面に固定されたブレーキドラム41とを有している。
【0046】
筒状部材40は、
図3に示すように、円筒部26aの内周側に同芯に配置される外筒部40aと、外筒部40aの内周側に配置された内筒部40bと、外筒部40aと内筒部40bとを連結する円板部40cと、を有する。外筒部40aの外周面には、制動制御部35の後述する摩擦リングが装着される複数の環状溝40dが形成されている。内筒部40bは軸受支持部材42の外周面に軸受43により回転自在に支持されている。軸受支持部材42は取付部材2eに固定されている。なお、内筒部40bとロータ3の前壁26dとの間にはシール部材44が装着されている。
【0047】
ブレーキドラム41は、外筒部40aの内周面から内筒部40bを経て軸受43の後面に向かって延びている。このブレーキドラム41の外筒部40aに沿った内周面が制動面41aとなっている。ブレーキドラム41は筒状部材40の円板部40cにねじ止め固定されている。なお、ブレーキドラム41の内周端と取付部材2eとの間にはシール部材45が装着されている。
【0048】
ワンウェイクラッチ38は、ロータ3が糸繰り出し方向に回転したときにのみロータ3と制動部本体37の筒状部材40とを連結し、ロータ3に連動して筒状部材40を糸繰り出し方向に回転させる。したがって、ロータ3が糸巻取方向に回転したときには、ロータ3と筒状部材40とは遮断され、ロータ3から筒状部材40に回転が伝達されない。
【0049】
<制動レバー7>
図1及び
図2に示すように、制動レバー7は、リール本体2の脚部2bに装着された支持軸47によりリール本体2に第2軸Y回りに揺動自在に支持されている。また、制動レバー7は、バネ部材48により竿装着部2cと離反する方向に付勢されている。
【0050】
脚部2bの前面には、前述したように装着溝2gが形成され、装着溝2gには、シート部材8が装着されている。シート部材8は、
図1及び
図2に示すように、装着溝2gの装着されたボックス状の部材であり、側方視で三日月形状である。そして、このシート部材8の底部には筒状のバネ収容部8aが形成されており、このバネ収容部8aにバネ部材48が収納されている。なお、シート部材8は支持軸47により装着溝2gに対して抜け止めされている。
【0051】
制動レバー7は、
図1に一点鎖線で示す所定制動位置と、制動解除位置より竿装着部2cに接近した二点鎖線で示す制動位置との間で揺動自在である。なお、制動レバー7は、通常は、バネ部材48及び制動制御部35の機構により、
図1に実線で示す制動解除位置と一点鎖線で示す所定制動位置とのいずれかに保持される。
【0052】
制動レバー7は、制動操作するための操作部50と、脚部2bの装着溝2gに揺動自在に支持されるレバー本体51と、レバー本体51の先端部に装着されたブレーキシュー52及び弾性部材53と、を有している。ブレーキシュー52はブレーキドラム41の内周面(制動面41a)に対向して配置されている。
【0053】
操作部50は、複数のボルト55によりレバー本体51に着脱自在に連結されている。操作部50は、前方先端部が分岐しており、引き込み操作部50a及び第1押し込み操作部50bを有している。また、レバー本体51に連結される部分に第2押し込み操作部50cを有している。引き込み操作部50aは、例えば、釣り竿を持つ手(例えば左手)の人差し指で引き込み操作して操作力に応じてロータ3を制動する際に使用される。また、第1押し込み操作部50bは、釣り竿を持つ手の人差し指で押し込み操作する際に使用され、第2押し込み操作部50cは、釣り竿を持つ手の中指で押し込み操作する際に使用される。
【0054】
より具体的には、引き込み操作部50aを用いた引き込み操作により、制動レバー7は、
図1の実線で示す制動解除位置から二点鎖線で示す竿装着部2cに接近した制動位置に向けて揺動する。また、第1押し込み操作部50b又は第2押し込み操作部50cを用いた押し込み操作により、制動レバー7は、実線で示す制動解除位置から一点鎖線で示す竿装着部2cから離反した所定制動位置に向け揺動する。
【0055】
図4にレバー本体51の先端部の断面図を示している。また、
図5にその外観斜視図、
図6にブレーキシュー52及び弾性体53を取り出した外観斜視図を示している。これらの図に示すように、ブレーキ本体51の先端部には、ブレーキドラム41の内周面(制動面41a)に接触可能なブレーキシュー52が着脱自在に取り付けられている。また、ブレーキシュー52とレバー本体51との間には弾性部材53が配置されている。
【0056】
レバー本体51の先端には、上部に押圧面51aが形成されるとともに、下部に係合凹部51bが形成されている。
【0057】
ブレーキシュー52は、たとえばポリアミド系合成樹脂やポリアセタールなどの弾性を有する合成樹脂製である。ブレーキシュー52は、ブレーキドラム41に接触する当接部52aと、弾性部材53を収容する収容部52bと、レバー本体51の係合凹部51bに係合する1対の脚部52cと、を有している。
【0058】
当接部52aは上面がブレーキドラム41の制動面41aに押圧される。この当接部52aの下面には、所定の幅でレバー本体51側に突出する突起(変形規制機構)52dが形成されている。突起52dの突出量は弾性部材53の厚みより小さく、弾性部材53の硬さや必要な制動力を考慮して設定される。
【0059】
収容部52bは、当接部52aのレバー本体51側に形成されている。収容部52bは弾性部材53が内部に収容される収容空間52eを有している。この収容空間52eにおいて、ロータ3の回転方向において対向する部分の2面52e1,52e2及び当接部52a側の1面52e3には壁が形成され、弾性部材53が収容空間52eから脱落あるいは飛び出るのを防止している。また、収容空間52eの当接部52a側と逆側の面52e4には、レバー本体51の先端が挿入される開口が形成されている。さらに、ロータ3の回転方向と直交する方向の一方の面52e5には、弾性部材53の幅よりも狭い開口が形成されている。そして、ロータ3の回転方向と直交する方向の他方の面は開放され、この面を介して弾性部材53の着脱が可能となっている。
【0060】
1対の脚部52cは、収容部52bから当接部52aとは逆側に延びて形成されている。そして、1対の脚部52cの先端が、レバー本体51の係合凹部51bに係合している。これにより、ブレーキシュー52はレバー本体51の先端部に固定されている。
【0061】
弾性部材53は、ブレーキシュー52の収容部52bに設けられている。すなわち、弾性部材53は、ブレーキシュー52の当接部52aとレバー本体51の押圧面51aとの間に設けられ、ここではブレーキシュー52に接着剤によって固定されている。弾性部材53は、ブレーキシュー52の剛性よりも低剛性のゴム製である。
【0062】
なお、制動レバー
7は、操作されていない状態では、バネ部材48により付勢されて、
図1の実線で示すように、制動解除位置に配置されている。この状態では、ブレーキシュー52はブレーキドラム41から離反している。
【0063】
[制動制御部]
制動制御部35は、
図2、
図3及び
図7に示すように、制動レバー7と連動して揺動するレバー部材60と、トグルバネ61と、摩擦部材62と、摩擦リング63と、を有している。トグルバネ61はレバー部材60を制動解除位置と所定制動位置とで保持する。摩擦部材62は、筒状部材40に相対回転可能に装着され、筒状部材40に摩擦係合する。摩擦リング63は、たとえばOリングからなり、摩擦部材62を筒状部材40に摩擦係合させるために2つの環状溝40dにそれぞれ装着されている。
【0064】
レバー部材60は、
図2及び
図7に示すように、取付部材2eの後面に、制動解除位置と所定制動位置との間で揺動自在に装着されている。レバー部材60には係止爪65が揺動自在に装着されている。
【0065】
摩擦部材62は、筒状の部材であり、筒状部材40の外周に回転自在に装着されている。摩擦部材62の一端(
図3右端)内周面には、係止爪65の爪65aに係合する鋸歯部62aが径方向内方に突出して形成されている。鋸歯部62aは、レバー部材60が所定制動位置にあるとき、係止爪65に係合して摩擦部材62の糸繰り出し方向の回転を禁止するために設けられている。
【0066】
このような構成では、制動レバー7を所定制動位置に押し込み操作すると、それに連動してレバー部材60も制動解除位置から所定制動位置に揺動する。この結果、係止爪65が摩擦部材62の鋸歯部62aに係合する。この状態では、摩擦部材62が摩擦リング63の作用により筒状部材40に対して摩擦摺動し、ロータ3の糸繰り出し方向の回転が所定制動状態で制動される。
【0067】
トグルバネ61は、一端がレバー部材60の基端に係止され、他端がリール本体2の機構収容部2aの前端面に係止されている。そして、トグルバネ61は、レバー部材60を付勢して制動レバー7を所定制動位置と制動解除位置とに付勢し、その姿勢を保持することができる。
【0068】
[リールの動作及び操作]
キャスティング時には、ベールアーム29を糸開放姿勢側に倒し、キャスティングすることにより、スプール4の外周から釣り糸が繰り出される。糸巻取時には、ハンドル組立体1を糸巻き取り方向に回転させると、ベールアーム29が図示しない戻し機構により糸巻き取り姿勢に戻る。ハンドル組立体1の回転力は、マスターギア軸16、マスターギア17を介してピニオンギア18に伝達される。ピニオンギア18に伝達された回転力はロータ3に伝達される。このときロータ3は糸巻き取り方向に回転するので、ワンウェイクラッチ38によって、この回転力は筒状部材40には伝達されない。また、ピニオンギア18が回転することにより、スプール軸14が前後方向に往復移動する。
【0069】
制動レバー7が操作されていない状態では、制動レバー7は、バネ部材48及び制動制御部35の作用により押圧され、制動解除位置または所定制動位置に配置される。
【0070】
ロータ3を逆転させて魚とやりとりする時には、制動レバー7の引き込み操作部50aをたとえば人差し指により竿装着部2c側に引き込み操作して制動力を調整する。
【0071】
釣り糸が魚により引かれてロータ3が糸繰り出し方向に逆転するとロータ3の回転力がワンウェイクラッチ38を介して筒状部材40に伝達され、さらにブレーキドラム41に伝達され、ロータ制動装置11が制動可能な状態になる。
【0072】
ワンウェイクラッチ38によってロータ3の回転が筒状部材40伝達されると、ブレーキドラム41がロータ3と一体で回転する。このとき、制動レバー7の引き込み操作部50aを竿装着部2cに接近する方向に引き込み操作すると、たとえ制動レバー7が所定制動位置にあっても、レバー部材60が制動解除位置側に揺動する。この結果、制動制御部35による所定制動状態が一旦解除される。このとき、トグルバネ61がレバー部材60の揺動により反転し、レバー部材60は制動解除位置側に付勢されて制動解除位置で保持される。
【0073】
この状態でさらに制動レバー7を竿装着部2cに接近する方向に操作すると、制動レバー7のブレーキシュー52がブレーキドラム41内周面を径方向外方に強く押圧する。この制動力は制動レバー7に加える力を加減することにより調整でき、ロータ3の逆転量を任意に調整できる。この結果、制動レバー7の操作力に応じた制動力がロータ3に付与される。このように、所定制動状態の解除を忘れても、制動レバー7を引き込み操作するだけで、所定制動状態を解除できる。
【0074】
ここで、制動レバー7を操作すると、ブレーキシュー52が制動面41aに押し付けられるが、このときブレーキ本体51とブレーキシュー52の当接部52aとの間に設けられた弾性部材53が弾性変形する。したがって、弾性部材が設けられていない従来の装置に比較して、制動力の調整幅をより広くすることができる。
【0075】
また、制動レバー7を強い力で操作し、弾性部材53がある程度弾性変形すると、ブレーキシュー52の当接部52aに設けられた突起52dがレバー本体51の押圧面51aに当接する。この状態からさらに制動レバー7を操作すると、制動レバー7の加えられた力は、レバー本体51から突起52dを介して直接ブレーキシュー52の当接部52aに伝達される。したがって、弾性部材53がある程度弾性変形した後は、制動力を最大限ブレーキシュー52に作用させることができる。
【0076】
また、釣り場を移動する時やリールを収納する時には、引き込み操作部50aから手を離し第1押し込み操作部50b又は第2押し込み操作部50cを竿装着部2cから離反する方向に押し込み操作する。すると、レバー部材60が制動解除位置から所定制動位置に揺動し、トグルバネ61によりその位置で保持される。この結果、係止爪65が摩擦部材62の鋸歯部62aに係合して摩擦部材62の回転が阻止され、ロータ3の逆転が阻止される。
【0077】
このときの制動力は、摩擦部材62と筒状部材40との間に装着された摩擦リング63の弾性力によって定められる。このため、移動途中にハンドル組立体1に何かが当たってもハンドル組立体1が回らない程度に強い所定制動力を得やすくなり、釣り場の移動途中に糸ふけが生じない程度に強く所定制動力を設定できる。また、摩擦部材62と筒状部材40との相対回転により制動するので、制動力が変動しにくくなり安定する。
【0078】
さらに、仕掛けの垂らし長さを変更するためや、魚に当たりがあった時に魚に仕掛けを確実に食い込ませるために、ロータ3を所定制動状態から制動解除状態にしたい場合には、制動レバー7を僅かに竿装着部2cに接近する方向に操作すればよい。すると、前述したように、制動レバー7によりレバー部材60が制動解除位置に揺動して所定制動状態が一旦解除される。
【0079】
[特徴]
(1)レバー本体51とブレーキシュー52との間に低剛性の弾性部材53が配置されており、制動レバー7が操作されると弾性部材53が弾性変形する。この弾性部材53の変形の程度によって、ブレーキシュー52のロータ3に対する押圧力を変えることができる。このため、制動力の調整幅を広くすることができ、釣糸の張力を微妙に制御できる。
【0080】
(2)ブレーキシュー52の一部に突起52dが形成されており、この突起52dにより弾性部材53の弾性変形が所定量に規制される。そして、弾性部材53が所定量変形した以降は、操作力がレバー本体51からブレーキシュー52に直接伝達される。このため、ブレーキシュー52とレバー本体51との間に弾性部材53が配置されているにもかかわらず、大きな制動力を得ることができる。
【0081】
(3)弾性部材53は、ブレーキシュー52の収容部52bの収容空間に配置され、一方の側面を除いた他の面から弾性部材53が脱落するのが防止されている。したがって、弾性部材53が装着されたブレーキシュー52をレバー本体51に組み付けるのが容易になり、しかも組み付けた後は収容空間から弾性部材53が脱落しにくい。特に、弾性部材53が通過する開口が形成された1面は、ロータ3の回転方向と交差する方向に位置しているので、弾性部材53が収容部52bの内部空間から、より脱落しにくくなる。
【0082】
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0083】
(a)前記実施形態では、ブレーキシュー52側に弾性部材53を固定したが、弾性部材53はレバー本体51側に固定してもよい。
【0084】
(b)前記実施形態では、変形規制機構を、ブレーキシュー52の当接部52aに形成した突起52dで構成したが、変形規制機構の構成はこれに限定されない。例えば、レバー本体51側に突起を設け、この突起をブレーキシュー52の当接部52aに当接させるようにしてもよい。
【0085】
(c)前記実施形態では、弾性部材53をゴムで構成したが、弾性部材53はブレーキシュー52の剛性より低い部材であれば、材料等については限定されない。
図8及び
図9に他の弾性部材の例を示している。この例では、ブレーキシュー52の収容部52bに弾性部材としての板バネ70が配置されている。板バネ70は、ロータ3の回転方向に沿って延びるとともに、レバー本体51側に膨らむように湾曲して形成されている。
【0086】
なお、ブレーキシュー52及びレバー本体51の形状等は、前記実施形態とまったく同様である。したがって、同じ部分には同じ符号を付している。
【0087】
ここでは、制動レバー7が操作されると、ブレーキシュー52の当接部52aとレバー本体51の押圧面51aとの距離が変化するように板バネ70が弾性変形する。このような構成によっても、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0088】
(d)
図5に示した例では、弾性部材53の幅を、レバー本体51の押圧面51aの幅よりも広く形成したが、弾性部材53の幅はレバー本体51の押圧面51aの幅と同じにしてもよい。弾性部材53の幅とレバー本体51の押圧面51aの幅とを同じにした場合は、弾性部材53の、押圧面51aに当接する部分とそれ以外の部分との境界における弾性部材53の損傷を抑えることができる。