(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1の斜視図に示すように、本発明の第1実施形態に係る把持切断装置10は、コンクリート壁体20の上部に跨り、コンクリート壁体20を上方から把持する把持装置12、及びコンクリート壁体20を切断する切断装置24を有している。
ここに、コンクリート壁体20としては、例えば
図2の原子力発電プラント100の断面図に示す原子炉遮蔽壁102が考えられる。
図2の原子力発電プラント100において、原子炉遮蔽壁102は、中空円柱状に形成され、下端部がRPVペデスタル104で支持されている。原子炉遮蔽壁102の内部には原子炉圧力容器108が配置され、原子炉遮蔽壁102の外側には生体遮蔽壁106が配置されている。
原子炉遮蔽壁102の解体においては、原子炉遮蔽壁102は、放射化されて放射化レベルが高い(放射化レベル:L2)部位であるため、作業時の被曝を避けて、安全に原子炉遮蔽壁102の壁体を切断し、切断された壁体を原子力発電所の外へ撤去するする必要性から、把持切断装置10は、以下に説明する作業を遠隔操作、若しくは自動運転で行う構成とされている。
【0017】
図1に示すように、把持装置12には、鋼製の角材で直状に形成された把持基材14が所定の間隔を開けて2本配置されている。2本の把持基材14は、いずれも同じ構成とされ、コンクリート壁体20の上方に、コンクリート壁体20の中心から放射状に配置されている。把持基材14の上面には、クレーンで吊り下げる際に使用される環状部を備えた吊り部16が形成されている。また、2つの把持基材14の底面には、側面視が門形状に形成され、上面で把持基材14の底面と接合される把持部18がそれぞれ設けられている。把持部18は、2本の脚部18Eでコンクリート壁体20を両側面から挟み、把持することができる。
【0018】
把持部18は、
図3の側面図、
図4の斜視図に示すように、門形状を構成する脚部18Eに設けられた一対の締結ジャッキ114と、同様に脚部18Eに設けられた穿孔型固定手段115を備えている。締結ジャッキ114は、コンクリート壁体20の上縁部に上方から跨る把持部18が、コンクリート壁体20と接する際のコンクリート壁体20の上部に位置し、コンクリート壁体20の内外面に対向して、左右の側壁に対峙する位置に一対に設けられている。これにより、コンクリート壁体20を、左右方向から同時に挟み付けることができる。この締結ジャッキ114の操作は、図示しない制御装置を介して、遠隔操作で可能とされている。
【0019】
穿孔型固定手段115は、脚部18Eの下部に位置し、コンクリート壁体20を挟んで、コンクリート壁体20に吊りピン部117を貫通させる貫通部120と、貫通したドリルビット118を収納する収納部121が配置されている。
即ち、コンクリート壁体20の内壁側には、送り出し装置116aを有するドリル116、ドリル116の先端と連結された吊りピン部117、及び吊りピン部117の先端と連結された中空部を有するドリルビット118、を有する貫通部120が配置されている。一方、コンクリート壁体20の外壁側には、ドリルビット118を収納するドリルビットカバー119を備えた収納部121が配置されている。このドリル116の操作は、図示しない制御装置を介して、遠隔操作で可能とされている。
【0020】
これにより、ドリル116を回転させ、ドリルビット118でコンクリート壁体20の所定位置に貫通孔を設けることができる。貫通孔が貫通した時点においては、この貫通孔に吊りピン部117が挿通され、ドリルビット118は、収納部121のドリルビットカバー119に収納される。この結果、2箇所の把持部18でコンクリート壁体20をしっかり把持し、把持切断装置10の落下を防止することができる。
【0021】
次に、把持装置12の動作について
図4を用いて説明する。
図4(A)に示すように、把持切断装置10は、先ず、コンクリート壁体20に跨った後、把持装置12の締結ジャッキ114を操作(伸長させて)して、コンクリート壁体20の両側壁を締結ジャッキ114で把持する(第1次把持)。次に、
図4(B)に示すように、送り出し装置116aにより、ドリル116を回転させ、ドリルビット118を内側から外側へ送り出す。このとき、ドリルビット118が、コンクリート壁体20を貫通するまで送り出す。最後に、
図4(C)に示すように、コンクリート壁体20を貫通したドリルビット118を、ドリルビットカバー119に収納させる。これにより、吊りピン部117がコンクリート壁体20の貫通孔に挿通され、吊りピン部117によりコンクリート壁体20が把持される。
これにより、吊りピン部117がコンクリート壁体20に挿通された状態で、把持装置12がコンクリート壁体20に固定される。この結果、地震や電源喪失が生じても、把持装置12がコンクリート壁体20を確実に把持することができる。
【0022】
2つの把持基材14の側壁端部には、2本のレール22、23の端面がそれぞれ接続されている。2本のレール22、23は、中空円柱状に形成されたコンクリート壁体20の中心から同心円状に形成された円弧の一部を形成している。レール23は、コンクリート壁体20の内側に配置され、レール22は、コンクリート壁体20の外側に配置されている。即ち、レール22がレール23より長く、それぞれコンクリート壁体20の曲面に沿って曲げ形成され、平面視において、2つの把持基材14と、2本のレール22、23で扇形が形成されている。
【0023】
図5(A)の斜視図に示すように、2本のレール22、23の下部には、コンクリート壁体20を切断する切断装置24が、レール22、23に沿って移動可能に取り付けられている。切断装置24は、水平案内部材26と鉛直案内部材28で、側面視が門形状に形成され、コンクリート壁体20を跨いで配置されている。
切断装置24の上部の水平案内部材26は、中空鋼材で直状に形成され、コンクリート壁体20の上に水平に配置されている。水平案内部材26の一方の端部は、レール22と移動可能に接合され、他方の端部は、レール23と移動可能に接合されている。
水平案内部材26の内部には、ワイヤーソー32と、ワイヤーソー32を走行させる図示しない走行部材類が収められ、水平案内部材26のレール22、23との連結部には、水平案内部材26をレール22、23に沿って移動可能とする、移動手段が設けられている。水平案内部材26の両端部には、鉛直案内部材28がそれぞれ設けられている。鉛直案内部材28は、中空鋼材で直状に形成され、内部には、ワイヤーソー32と、ワイヤーソー32を走行させる図示しない走行部材類や張力を調整する張力調整プーリー等が収められている。ここに、切断手段24を移動させる移動機構は、従来の移動機構でよく、詳細は省略するが、チエン駆動方式、ピニオンラック方式、油圧シリンダ方式等を採用すればよい。
【0024】
図5(B)に示すように、ワイヤーソー32には、例えば円環状に形成されたダイヤモンドワイヤが使用され、水平案内部材26の内部、2本の鉛直案内部材28の内部を順に掛け渡され、走行する構成とされている。
ここに、ワイヤーソー32、及びワイヤーソー32を走行させる走行装置自体の構造は既往の構造でよい。例示した
図5(B)においては、ワイヤーソー32の一部が、下向きに開放され、切断部となる門形開放空間OP(2本の鉛直案内部材28の間の空間)を水平方向へ横断する位置に配置されている。更に、門形開放空間OPにおいては、ワイヤーソー32は、水平方向に走行したまま、上下方向へ移動可能に構成されている。
ワイヤーソー32の上記走行を実現するため、水平案内部材26と、鉛直案内部材28の交点にはガイドシーブ124が配置され、2本の鉛直案内部材28の内部には、上下方向へ移動自在に設定された可動ガイドシーブ124aが配置されている。可動ガイドシーブ124aは駆動機構により、上下方向へ移動可能とされている。なお、ワイヤーソー32の駆動モータ128や張力調整プーリー129等は、鉛直案内部材28と隣接する収納部33に収納されている。
これにより、ワイヤーソー32を、ガイドシーブ124及び可動ガイドシーブ124aへ巻き付けて走行させることで、ワイヤーソー32を、門形開放空間OPにおいて、走行可能とすると共に、上下方向へ平行移動させることができる。
上述した構成により、ワイヤーソー32は、コンクリート壁体20を直線状、又は曲線状に切断することができる。後述するように、直線状にコンクリート壁体20を順次切断することで、略立方体形状のコンクリートブロックを、コンクリート壁体20から切り離すことができる。
【0025】
また、
図1に示すように、水平案内部材26の側面には、コンクリート壁体20の側壁を両側から挟むブロック把持部30が備えられている。ブロック把持部30は、側面視が門形状に形成され、上部に設けられた水平部材で切断装置24の水平案内部材26と接合され、切断装置24と一体となって移動する。ブロック把持部30の把持部構成は、上述した把持装置18の把持部の構成と同じであり、説明は省略する。
これにより、ブロック把持部30は、切断装置24と共に移動し、把持装置12の間を移動可能とされる。この結果、コンクリート壁体20からコンクリートブロックを切り離す際に、コンクリートブロックを把持し、切り離されたコンクリートブロックの落下を防止することができる。また、後述するように、コンクリートブロックを把持した状態で、コンクリートブロックをクレーンで吊上げ、搬出することができる。
【0026】
続いて、
図6を用いて、コンクリート壁体20の切断手順を説明する。
図6(A)に示すように、先ず、把持切断装置10を、クレーン等で吊り下げてコンクリート壁体20の上に降ろし、コンクリート壁体20を跨がせ、コンクリート壁体20の上部を把持装置12の把持部18で把持させる。これにより、切断作業中に地震等が発生しても、把持切断装置10の落下を防止できる。
次に、鉛直方向へ切断する。即ち、初期設定状態から切断装置24を切断開始位置までレール22、23に沿って移動させ、ワイヤーソー32の切断部を、コンクリート壁体20の切断部の上部に位置させる。このとき、ブロック把持部30でコンクリート壁体20を把持させてもよい。続いて、ワイヤーソー32を走行させ、鉛直案内部材28の内部に設けられた可動ガイドシーブ124aを、下方へゆっくり、所定深さまで移動させる(矢印PDの方向)。これにより、ワイヤーソー32が下方へ移動され、コンクリート壁体20が、ワイヤーソー32により鉛直方向へ切断される。
【0027】
次に、
図6(B)に示すように、水平方向へ切断する。即ち、ワイヤーソー32を走行させながら、鉛直方向切断部の下端部へ移動させた状態から、水平方向へ移動させる。このとき、ブロック把持部30でコンクリート壁体20を把持した場合には、一旦、把持を解除させる。続いて、図示しない移動装置でレール22、23に沿って切断装置24を水平方向へ移動させる(矢印PRの方向)。これにより、コンクリート壁体20を水平方向へ切断することができる。このとき、把持部18がコンクリート壁体20を把持した状態で切断作業を行う。
【0028】
次に、
図6(C)に示すように、再び、鉛直方向へ切断する。即ち、ワイヤーソー32を走行させ、ワイヤーソー32を切断部の水平方向端部へ移動させた状態から、鉛直方向へ移動させる。この場合には、コンクリート壁体20からコンクリートブロック34が切り離されるため、ブロック把持部30でコンクリート壁体20を把持させておく。
これにより、切り離されるコンクリートブロック34を把持した状態で、ワイヤーソー32を鉛直方向上方へ移動させる(矢印PUの方向)ことで、コンクリート壁体20が鉛直方向へ切断され、コンクリートブロック34がコンクリート壁体20から切り離される。なお、この鉛直方向の切断は、方向性はなく上方から下方へ向けて切断してもよい。
【0029】
最後に、
図6(D)に示すように、ワイヤーソー32の走行を止め、ブロック把持部30でコンクリート壁体20を把持させた状態で、把持部18の把持を解放する。これにより、コンクリートブロック34を把持切断装置10で把持させた状態で、クレーンで持ち上げてコンクリート壁体20から撤去させることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンクリート壁体20が把持装置12で把持された状態で、ワイヤーソー32により切断され、コンクリート壁体20から切り離されてコンクリートブロック34となる。そして、コンクリートブロック34を把持した把持装置12を、図示しないクレーン等で吊り下げることで、コンクリート壁体20からコンクリートブロック34を取り除くことができる。この切断工程、及び吊り下げ(搬出)工程を繰り返すことで、作業員がコンクリート壁体に近づかなくても、現場から、コンクリート壁体20を、コンクリートブロック34単位で撤去することができる。
【0031】
このとき、ブロック把持部30がコンクリート壁体20を把持した状態で、切断装置24がコンクリート壁体20からコンクリートブロック34を切り離すので、コンクリートブロック34を落下させずに安全にコンクリート壁体20の解体を遠隔操作で実行することができる。また、把持装置12が、コンクリート壁体20から切り離されたコンクリートブロック34を把持したまま、クレーン等で吊り下げられるので、安全かつ迅速に、コンクリートブロック34を撤去することができる。
【0032】
本実施形態では、コンクリート壁体20の代表例として、原子力発電所の放射化された原子炉遮蔽壁102の解体について説明した。しかし、これに限定されることはなく、例えば、
図2で説明した放射化されたRPVペデスタル104等、他のコンクリート壁体の解体に適用してもよい。
また、原子力発電所等の放射化された、放射能に汚染された、又は有害物質等に汚染された鉄骨構造、鋼構造(S造)、重量鉄骨構造、軽量鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)、コンクリート充填鋼管構造(CFT造)等の構造物の切断及び解体に適用してもよい。
また、脆弱な構造(例えば震災、経年劣化等)での鉄骨構造、鋼構造(S造)、重量鉄骨構造、軽量鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)、コンクリート充填鋼管構造(CFT造)等の構造物の切断や解体に適用してもよい。更に、高所、又は作業機械が切断箇所まで接近できない構造物等の切断や解体に適用してもよい。
【0033】
(第2実施形態)
図7の斜視図に示すように、本発明の第2実施形態に係る把持切断装置40は、コンクリート壁体20を把持する把持装置13において、把持部18を1箇所(一対)とし、切断フレーム(切断装置)42を水平方向へのみ切断可能とした点において、第1実施形態の把持切断装置10と相違する。相違点を中心に説明する。
把持切断装置40は、第1実施形態で説明した把持部18を1箇所だけ有している。把持部18は、第1実施形態と同じ構成であり、同じ手順でコンクリート壁体20を把持する。また、把持部18には、切断手段としての切断フレーム(切断装置)42が移動可能に取り付けられている。把持部18は、側面視が門形状に形成され、把持部18を形成する上部の水平部材14の上面中央には吊り部16が設けられている。水平部材14の両端部には、切断フレーム42と移動可能に接合される接合部44が設けられている。
【0034】
切断フレーム42は、コンクリート壁体20を跨いで配置され、側面視がコ字状に形成された1対の側面フレームと、一対の側面フレームをコンクリート壁体20の上で連結する矩形状の上面フレームで構成されている。把持部18に設けられた接合部44には、切断フレーム42の上面フレームを構成する水平フレーム43が移動可能に挿入されている。水平フレーム43は、接合部44に設けられた図示しない移動機構により水平方向に移動可能とされている。
また、切断フレーム42の下部の一対の水平フレーム45には、コンクリート壁体20を横断してワイヤーソー36が掛け渡されている。側面フレームの水平フレーム45には、更に、ワイヤーソー36を駆動するワイヤーソー駆動部46、及びワイヤーソー36の張力を調整するプーリー48等が取り付けられている。
これにより、把持部18でコンクリート壁体20を把持した状態で、ワイヤーソー36を走行させて、切断フレーム42を水平方向(矢印PLの方向)へ移動させることで、ワイヤーソー36でコンクリート壁体20を、水平方向に切断することができる。
【0035】
本実施形態の把持切断装置40は、例えば、第1実施形態の把持切断装置10により、コンクリート壁体20の一部が既に切り離された状態において、切り残されたコンクリートブロック35の下部を、水平方向に切断する場合に特に有用である。
更に、切り離されたコンクリートブロック35は、把持部18で把持しているので、吊り部16を利用して、クレーン等で把持切断装置40を吊り下げれば、コンクリートブロック35を容易に取り除くことができる。他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0036】
(第3実施形態)
図8の斜視図に示すように、本発明の第3実施形態に係る把持切断装置50は、コンクリート壁体20を把持する把持装置53を1か所とし、切断装置58を鉛直方向へのみ移動可能とした点において、第1実施形態の把持切断装置10と相違する。相違点を中心に説明する。
把持切断装置50は、側面視が門形状とされた把持装置53を有している。把持装置53の上部の水平方向に渡された水平部材49の両端部には、鉛直方向へ設けられた一対の脚部が設けられ、脚部には、コンクリート壁体20を把持する把持部52が取付けられている。脚部は、鋼製フレーム材で矩形に形成され、上辺が水平部材49と連結されている。把持部52には、第1実施形態で説明した図示しない把持機構が設けられ、第1実施形態と同じ手順でコンクリート壁体20を把持する。また、把持部52の下方には、落下防止ステー54が取り付けられている。落下防止ステー54は、下方へ延出可能に構成されている。
【0037】
把持装置53の一方の側壁には、ワイヤーソー56を用いた切断装置58が、上下方向へ移動可能に取り付けられている。切断装置58は門形状のフレームを有し、フレームの脚部は、把持装置53の脚部と鉛直方向へスライド可能に取り付けられている。
フレームの脚部の間には、環状とされたワイヤーソー56が掛け渡され、フレームには、ワイヤーソー駆動部57や、ワイヤーソー56を走行させる補助ローラ55がそれぞれ設けられている。また、切断装置58の下方には、切断装置58を鉛直方向へ移動させる鉛直補助ローラ55が取り付けられ、隣接して、ワイヤーソー56の水平方向の張力を調整する張力調整ローラ51が取付けられている。
これにより、ワイヤーソー56を走行させながら、把持切断装置50を水平方向へ移動させ、又は切断装置58を上下方向へ移動させて、コンクリート壁体20を切断することができる。
【0038】
次に、
図9を用いて切断手順を説明する。
図9(A)に示すように、把持切断装置50は、図示しないクレーン等で吊り下げられてコンクリート壁体20の上に、コンクリート壁体20を跨いで降ろされる。その後、コンクリート壁体20の上部を、両側面から挟んで把持装置53の把持部52で把持させ、切断装置58を上方へスライドさせた状態で、切断開始位置にセットする。このとき、ワイヤーソー32の切断部は、コンクリート壁体20の切断位置の上部にセットする。
【0039】
次に、
図9(B)に示すように、鉛直方向の切断を実行する。即ち、コンクリート壁体20を把持装置53で把持した状態において、ワイヤーソー56を走行させ、切断装置58を、所定深さまで下方へ移動させる。これにより、ワイヤーソー56が下方へ移動され(矢印PDの方向)、コンクリート壁体20を鉛直方向へ切断することができる。
次に、
図9(C)に示すように、水平方向の切断を実行する。即ち、把持装置53の把持を解除し、図示しない水平移動装置で、切断装置58を把持装置53と一体として水平方向へ移動させる。このとき、ワイヤーソー56を走行させておくことで(矢印PDの方向)、コンクリート壁体20を水平方向へ切断することができる。即ち、ワイヤーソー32を下部へ移動させた状態で、切断装置24を水平方向に移動させ(矢印PRの方向)、コンクリート壁体20を水平方向へ切断する。
【0040】
次に、
図9(D)に示すように、把持切断装置50を初期設定状態に戻す。即ち、ワイヤーソー32を切断部に沿って、水平方向に移動させた後、上方へ移動させ(矢印PUの方向)、切断前の初期設定状態に戻す。
次に、
図10(E)に示すように、把持切断装置50を図示しないクレーンで吊上げて鉛直軸Jを中心に180度回転させ、回転後、再びクレーンを下げて、把持切断装置50にコンクリート壁体20を跨がせる。これにより、切断装置58が、コンクリート壁体20の初期設定状態から反対側に向く。切断装置58は上方へスライドさせておき、ワイヤーソー56を切断位置にセットする。
【0041】
次に、
図10(F)に示すように、ワイヤーソー32を走行させ、把持装置53に沿って切断装置58を下方へ移動させ(矢印PDの方向)、鉛直下方へ切断する。即ち、コンクリート壁体20を把持したまま、コンクリート壁体20からコンクリートブロック34を切り離すことができる。
次に、
図10(G)に示すように、撤去工程を実行する。即ち、切り離されたブロック35を把持部52で把持させたまま、図示しないクレーンで吊り下げて、コンクリート壁体20から撤去する。なお、コンクリートブロック34のサイズは、把持部52で把持したまま撤去できる大きさに切断すればよい。
最後に、
図10(H)に示すように、把持切断装置50を次の切断箇所にセットする。
以上説明した手順を繰り返すことにより、把持切断装置50でコンクリート壁体20を上下方向及び横方向に、順次切断することができる。他の構成は、第1実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0042】
(第4実施形態)
図11の斜視図に示すように、本発明の第4実施形態に係る把持切断装置60は、コンクリート壁体20を把持する把持装置53の両側面に、同じ構成の切断装置58A、58Bを、把持装置53に対してそれぞれスライド可能に取付けた点において、第3実施形態の把持切断装置50と相違する。相違点を中心に説明する。
把持切断装置60は、門形状に形成された把持装置53を有し、把持装置53の上部の水平部材の両端部には一対の脚部が鉛直方向へ取付けられ、脚部には上述した把持部52が設けられている。把持装置53の両側面には、コンクリート壁体20を切断する切断装置58A、58Bが、対向して取付けられている。切断装置58A、58Bは、いずれも同じ構成とされ、ワイヤーソー56が走行可能に取り付けられている。ワイヤーソー56は、ワイヤーソー駆動部57A、57Bでそれぞれ独立して駆動される。また、切断装置58A、58Bは、把持部52の両側の側壁との間に設けられたスライド機構により、上下方向へ移動可能に取り付けられている。
これにより、ワイヤーソー56を走行させながら、切断装置58A、58Bをそれぞれ上下方向へ移動させることができる。また、把持切断装置60を、水平方向へ移動させることができる。
【0043】
次に、把持切断装置60による切断、撤去手順について説明する。
図12(A)に示すように、先ず、把持切断装置60を、図示しないクレーン等で吊り下げてコンクリート壁体20の上に降ろし、コンクリート壁体20を跨がせ、コンクリート壁体20の両側面を把持装置53の把持部52で把持させる。このとき、切断装置58A上部へスライドさせ、ワイヤーソー56の切断部を、コンクリート壁体20の切断部の上に位置させる。切断装置58Bも上部へスライドさせておく。
【0044】
次に、
図12(B)に示すように、ワイヤーソー56を走行させ、切断装置58Aを下方へ所定深さまで移動させる。これにより、ワイヤーソー56が下方へ移動し、コンクリート壁体20を鉛直下方(矢印PDの方向)へ切断することができる。
次に、
図12(C)に示すように、ワイヤーソー56を下部へ移動させた状態で、把持装置53の把持を解放し、図示しない水平移動装置で、把持切断装置60を水平方向へ移動させる。このとき、ワイヤーソー56を走行させながら、水平方向(矢印PRの方向)へ移動させる。これにより、コンクリート壁体20を水平方向へ切断することができる。
【0045】
次に、
図12(D)、
図13(E)に示すように、切断装置58Aを初期設定位置に戻す。このため、ワイヤーソー56を、切断装置58Aと共に切断部に沿って水平方向(矢印PLの方向)及び上方へ移動させる。これにより、切断装置58Aの作業が終了する。
次に、
図12(F)に示すように、把持装置53に沿って切断装置58A、58Bを下方へ移動させて(矢印PDの方向)、コンクリート壁体20を鉛直方向へ切断する。これにより、把持部52が把持した状態で、コンクリート壁体20からコンクリートブロック34を切り離すことができる。
【0046】
次に、
図12(G)に示すように、把持切断装置60を図示しないクレーンで吊り下げてコンクリートブロック34を移動させる。このとき、把持切断装置60の把持装置53には、コンクリート壁体20から切断されたコンクリートブロック34が把持されており、コンクリートブロック34をコンクリート壁体20から容易に取り除くことができる。
最後に、
図12(H)に示すように、把持切断装置60を、図示しないクレーンで吊り下げ、次の切断箇所にセットする。
上述した手順により、把持切断装置60でコンクリート壁体20を上下方向及び横方向に切断し、コンクリートブロック34として撤去することができる。他の構成は、第3実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0047】
(第5実施形態)
図14の斜視図に示すように、本発明の第5実施形態に係る把持切断装置70は、コンクリート壁体20を把持する把持装置66に、切断装置68を鉛直方向に対して傾斜可能に取付けた点において、第3実施形態の把持切断装置50と相違する。相違点を中心に説明する。把持装置66は、門形状に形成され、矩形に形成された水平部材64と、同じく矩形に形成された脚部を有している。水平方向に渡された水平部材64の両端部には、脚部が鉛直方向に取付けられている。また、水平部材64には、図示しない吊り下げ部が設けられている。
【0048】
把持装置66の上部には、切断装置68を水平方向へ移動させる水平案内部材72と、切断装置68を鉛直方向へ移動させる鉛直案内部材74とが設けられている。また、水平案内部材72と鉛直案内部材74との交点には、水平及び鉛直移動機構が設けられ、水平案内部材72と鉛直案内部材74の相対位置を水平及び鉛直方向に移動させることができる。また、鉛直案内部材74に切断装置68が傾斜して取付けられており、水平案内部材72と鉛直案内部材74の位置を調整することで、切断装置68を任意の位置に移動させることができる。
切断装置68には、ワイヤーソー62が走行可能に取り付けられ、ワイヤーソー62は、ワイヤーソー駆動部57で駆動される。これにより、ワイヤーソー62を走行させながら、切断装置68を上下方向、及び水平方向へ移動させることができる。
【0049】
次に、切断手順について
図15、
図16を用いて説明する。
図15(A)に示すように、先ず、把持切断装置70を、クレーン等で吊り下げてコンクリート壁体20の上に降ろし、コンクリート壁体20を跨がせ、コンクリート壁体20の上部を把持部52の把持装置66で把持させる。このとき、切断装置68を持ち上げて、ワイヤーソー62の切断部をコンクリート壁体20の切断部の上部にセットさせる。
【0050】
次に、
図15(B)に示すように、鉛直方向の切断を行う。即ち、ワイヤーソー62を走行させながら、鉛直案内部材74を下へ下げ、切断装置68を下方へ移動させる(矢印PDの方向)。これにより、コンクリート壁体20を鉛直方向へ切断することができる。
次に、
図15(C)に示すように、水平方向の切断を行う。即ち、ワイヤーソー62を走行させながら、水平案内部材72を水平に移動させる(矢印PLの方向)。これにより、切断装置68が水平方向へ移動し、コンクリート壁体20を水平方向へ切断することができる。このとき、落下防止ステー54は把持装置66に収納しておく。
【0051】
次に、
図16(D)に示すように、ワイヤーソー62を走行させながら、鉛直案内部材74を鉛直上方へ移動させる(矢印PUの方向)。これにより、把持装置66で把持した状態で、切断装置68が上方へ持ち上げられ、コンクリート壁体20から、コンクリートブロック34を切り離すことができる。
最後に、
図16(E)に示すように、把持切断装置70を図示しないクレーンで吊り下げて移動させる。把持切断装置70には、切断されたコンクリートブロック34が把持されており、切断されたコンクリートブロック34を、排除することができる。
これにより、把持切断装置70を移動させることなく、把持切断装置70でコンクリート壁体20を上下方向及び横方向に切断し、コンクリートブロック34として切り離すことができる。また、切り離されたコンクリートブロック34を移動させることができる。他の構成は、第3実施形態と同じであり、説明は省略する。
【0052】
なお、
図17の斜視図に示すように、コンクリート壁体20を切断する切断装置82のワイヤーソー駆動部84を、切断装置82の下部に取付けた把持切断装置80としてもよい。これにより、把持切断装置80の切断時の安定性を向上させることができる。
【0053】
(第6実施形態)
図18、
図19の斜視図に示すように、本発明の第6実施形態に係る把持切断装置92は、コンクリート壁体20を把持する把持装置66に、切断装置94を鉛直方向に取付けた点において、第5実施形態の把持切断装置70と相違する。
本実施形態に係る把持切断装置92の切断方法について説明する。
図18(A)に示すように、先ず、把持切断装置92を、クレーン等で吊り下げてコンクリート壁体20の上に降ろし、コンクリート壁体20を跨がせ、コンクリート壁体20の上部を把持装置66把持部52で把持させる。また、切断装置94を切断開始位置にセットする。このとき、切断装置94は、鉛直方向に取付けられており、ワイヤーソー96の切断位置は、コンクリート壁体20の切断部の上部にセットさせる。
【0054】
次に、
図18(B)に示すように、鉛直方向に切断する。即ち、ワイヤーソー96を走行させながら、鉛直案内部材74を下げて、切断装置94を下方へ移動させる(矢印PDの方向)。これにより、コンクリート壁体20を鉛直方向へ切断することができる。
次に、
図18(C)に示すように、鉛直案内部材74を持ち上げて、切断装置94を、鉛直方向に移動させて切断前の状態に戻す。続いて、
図18(D)に示すように、把持切断装置92をコンクリート壁体20に沿って水平に移動させ、次の切断位置にワイヤーソー62をセットする。
【0055】
次に、
図19(E)に示すように、ワイヤーソー96を走行させながら鉛直案内部材74を下げて、切断装置94を下方へ移動させる。これにより、コンクリート壁体20を鉛直方向へ切断することができる。
次に、
図19(F)に示すように、ワイヤーソー96を走行させながら、水平案内部材72を水平方向へ移動させ(矢印PLの方向)、切断装置94を水平方向へ移動させる。これにより、コンクリート壁体20を水平方向に切断することができる。
次に、
図19(G)に示すように、把持切断装置92を図示しないクレーンで吊り下げて移動させる。これにより、把持切断装置92でコンクリート壁体20を上下方向及び横方向に切断し、コンクリートブロック34として切り離すことができる。また、切り離されたコンクリートブロック34を移動させることができる。
【0056】
(第7実施形態)
図20の斜視図に示すように本発明の第7実施形態に係る把持切断装置は、コンクリート壁体20を切断する切断装置90の切断部にウォールソー86A、86B、86C、86Dを使用した点において、第5実施形態の把持切断装置70と相違する。相違点を中心に説明する。
図20に示すように、上部フレームの水平部材の間には、2つの鉛直ウォールソー86A、86Bが鉛直方向に取り付けられている。2つの鉛直ウォールソー86A、86Bは駆動装置で回転可能に取り付けられている。これにより、コンクリート壁体を鉛直方向へ切断することができる。
【0057】
また、上部フレームの水平部材の間には、2つの水平ウォールソー86A、86Bが水平方向に取り付けられている。2つの水平ウォールソー86A、86Bは駆動装置で回転可能に取り付けられている。これにより、コンクリート壁体を水平方向へ切断することができる。他の構成は、第5実施形態と同じであり説明は省略する。