特許第6261888号(P6261888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261888
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】デオドラントスティック組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/89 20060101AFI20180104BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20180104BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20180104BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   A61K8/89
   A61K8/37
   A61K8/02
   A61K8/894
   A61K8/25
   A61K8/34
   A61K8/92
   A61K8/26
   A61K8/27
   A61K8/41
   A61Q15/00
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-131411(P2013-131411)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2015-3891(P2015-3891A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500578744
【氏名又は名称】株式会社アリエ
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】友松 公樹
(72)【発明者】
【氏名】松崎 謙一
(72)【発明者】
【氏名】大貫 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 円康
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 慎一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 淳
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−278982(JP,A)
【文献】 特開2003−081753(JP,A)
【文献】 国際公開第03/075864(WO,A1)
【文献】 各社ケイ素化合物香粧品原料紹介, FRAGRANCE JOURNAL Vol.28, No.11,津野田 勲 ▲C▼フレグランス ジャーナル社,第28巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーンゲル、
(B)多価アルコール脂肪酸エステル、
(C)粉体、
(D)固化剤、及び
(E)デオドラント成分を含有してなり、
前記(A)成分のシリコーンゲルが、ポリエーテル変性シリコーン架橋物、及びポリグリセリン変性シリコーン架橋物アルキル共変性物から選択される少なくとも1種であり、
前記(A)成分のシリコーンゲルの含有量が、0.02質量%〜5質量%であり、
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が、0.1質量%〜10質量%であり、
前記(C)成分の粉体の含有量が、2質量%〜30質量%であり、
前記(D)成分の固化剤の含有量が、5質量%〜35質量%であり、
前記(E)成分のデオドラント成分の含有量が、2質量%〜30質量%であり、
前記(C)成分と、前記(A)成分及び前記(B)成分との質量比C/(A+B)が、0.2〜50であることを特徴とするデオドラントスティック組成物。
【請求項2】
前記(A)成分のポリエーテル変性シリコーン架橋物、及びポリグリセリン変性シリコーン架橋物アルキル共変性物が、ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー、及び(ポリグリセリル−3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマーから選択される少なくとも1種である請求項1に記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項3】
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルが、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、及びトリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンから選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項4】
前記(C)成分の粉体が、タルク、シリカ及びマイカから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項5】
前記(D)成分の固化剤が、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、融点が60℃〜69℃のパラフィン、及び融点が85℃〜86℃の硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である請求項1から4のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項6】
前記(E)成分のデオドラント成分が、(E1)クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、(E2)酸化亜鉛、マグネシアシリカ、及び(E3)ベンザルコニウム塩化物、イソプロピルメチルフェノールから選択される少なくとも2種である請求項1から5のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項7】
前記(E)成分が、前記(E1)成分と、前記(E2)成分の併用、又は前記(E1)成分と、前記(E3)成分の併用である請求項6に記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項8】
前記(E1)成分と、前記(E2)成分及び前記(E3)成分との質量比E1/(E2+E3)が、0.1〜50である請求項6に記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項9】
前記(E1)成分の含有量が、2質量%〜10質量%であり、
前記(E2)成分の含有量が、1質量%〜5質量%であり、
前記(E3)成分の含有量が、0.05質量%〜0.5質量%である請求項6から8のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項10】
前記(A)成分のシリコーンゲルの含有量が、0.2質量%〜2質量%であり、
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
前記(C)成分の粉体の含有量が、4質量%〜20質量%であり、
前記(D)成分の固化剤の含有量が、10質量%〜15質量%であり、
前記(E)成分のデオドラント成分の含有量が、4質量%〜15質量%である請求項1から9のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【請求項11】
制汗剤、防臭剤、制汗防臭剤、及びデオドラント剤のいずれかである請求項1から10のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デオドラントスティック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デオドラントスティック組成物において、滑らかな使用感を付与するために油性成分が用いられている(特許文献1〜4参照)が、べたつきが生じることがある。このため、粉体を添加することで、べたつきを抑えることが知られている(特許文献5及び6参照)。
しかしながら、これらの提案のように、べたつきや白残りを抑制すると、固形デオドラント剤の肌への付着性が低くなるため、良好な使用感やデオドラント(防臭)効果が得られなくなるという課題がある。
したがって、塗布しても肌が白くならず、良好な剤の肌への付着性と滑らかな使用感を実現できるデオドラントスティック組成物の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−292415号公報
【特許文献2】特許第5183090号公報
【特許文献3】特開2005−187470号公報
【特許文献4】特開2007−314527号公報
【特許文献5】特開2002−114661号公報
【特許文献6】特開2009−132638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、塗布しても肌が白くならず、良好な剤の肌への付着性と滑らかな使用感を実現できるデオドラントスティック組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のデオドラントスティック組成物は、
(A)シリコーンゲル、
(B)多価アルコール脂肪酸エステル、
(C)粉体、
(D)固化剤、及び
(E)デオドラント成分を含有してなり、
前記(C)成分と、前記(A)成分及び前記(B)成分との質量比C/(A+B)が、0.2〜50である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、塗布しても肌が白くならず、良好な剤の肌への付着性と滑らかな使用感を実現することができるデオドラントスティック組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(デオドラントスティック組成物)
本発明のデオドラントスティック組成物は、(A)シリコーンゲル、(B)多価アルコール脂肪酸エステル、(C)粉体、(D)固化剤、及び(E)デオドラント成分を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0008】
本発明のデオドラントスティック組成物は、前記(A)シリコーンゲル、前記(B)多価アルコール脂肪酸エステル、前記(C)粉体、前記(D)固化剤、及び前記(E)デオドラント成分を含み、前記(C)成分と、前記(A)成分及び前記(B)成分との質量比C/(A+B)が、0.2〜50であることにより、これらが相乗的に働いて、塗布しても肌が白くならず、良好な剤の肌への付着性と滑らかな使用感を実現することができるデオドラントスティック組成物が得られることを知見した。
【0009】
<(A)シリコーンゲル>
前記(A)成分のシリコーンゲルを含有することにより、デオドラントスティック組成物の肌への付着性、及びデオドラント(防臭)効果の向上を図ることができる。
前記(A)成分のシリコーンゲルは、シロキサン骨格を有する化合物であり、シロキサン骨格を三次元に架橋させたペースト及び固体状弾性ポリマーの総称である。
前記シロキサン骨格が、ポリエーテル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、アラルキル基、メチル基、及びフェニル基から選択される少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい。
【0010】
前記(A)成分のシリコーンゲルとしては、ポリエーテル変性シリコーン架橋物、及びポリグリセリン変性シリコーン架橋物アルキル共変性物から選択される少なくとも1種が好ましい。
前記ポリエーテル変性シリコーン架橋物、及びポリグリセリン変性シリコーン架橋物アルキル共変性物から選択される少なくとも1種としては、例えば、ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー、などが挙げられる。
前記ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマーは、ジメチコンをPEG−10ジアリルエーテル、及びPEG−15ジアリルエーテルで架橋したものである。
前記シリコーンゲルとしては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー(KSG−210、KSG−240)、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(KSG−310、KSG−320、KSG−330)、(PEG−10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー及び(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー(KSG−340)、(PEG−15/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG−320Z、KSG−350Z、KSG−360Z)、(ジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー(KSG−710)、(ラウリルジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー(KSG−810、KSG−820、KSG−830、KSG−840)、(ポリグリセリル−3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー(KSG−820Z、KSG−850Z)(いずれも、信越化学工業株式会社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、剤の肌への付着性、及びデオドラント(防臭)効果の点から、(ジメチコン/ポリグリセリン−3)クロスポリマー、(ポリグリセリル−3/ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン)クロスポリマー、(PEG−15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー(KSG−210)が好ましく、ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー(KSG−210)がより好ましい。
【0011】
前記(A)成分のシリコーンゲルの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、剤の肌への付着性、及びデオドラント(防臭)効果の点から、0.02質量%〜5質量%が好ましく、0.2質量%〜2質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.02質量%未満であると、剤の肌への付着性、及びデオドラント(防臭)効果が低下することがあり、5質量%を超えると、肌のべたつきが生じることがある。
【0012】
<(B)多価アルコール脂肪酸エステル>
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルを含有することにより、剤の肌への付着性、及び白残り抑制効果が向上する。
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルにおける多価アルコールとしては、2価以上のアルコールが好ましく、具体的には、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、アルキル鎖長が8〜24の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸が好ましく、具体的には、2−エチルヘキサン酸、カプリル酸、カプリン酸、イソノナン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、エイコサン酸、などが挙げられる。
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ジステアリン酸トリエチレングリコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、剤の肌への付着性、及び白残り抑制効果から、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(KAK TTI、高級アルコール工業株式会社製)、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンが特に好ましい。
前記(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、剤の肌への付着性、及び白残り抑制効果の点から、0.1質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であると、剤の肌への付着性、及び白残り抑制効果が低下することがあり、10質量%を超えると、肌のべたつきが生じることがある。
【0013】
<(C)粉体>
前記(C)成分の粉体を含有することにより、肌のべたつき抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果が向上する。
前記(C)成分の粉体としては、有機粉体及び無機粉体のいずれも用いることができる。
前記有機粉体としては、例えば、セルロース粉末、ナイロン粉末、架橋ポリスチレン粉末、ポリアクリル酸アルキル粉末、ポリエチレン粉末、ポリウレタン粉末、などが挙げられる。
前記無機粉体としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、酸化チタン、セリサイト、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、などが挙げられる。
これらの中でも、肌のべたつき抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果の点から、無機粉体が好ましく、タルク(SW−特、浅田製粉株式会社製、シリカ(サンスフェアH−122、AGCエスアイテック社製)、マイカ(エクセルマイカJP−2、三好化成社製)が好ましく、タルクがより好ましい。
前記(C)成分の粉体の含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、肌のべたつき抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果の点から、2質量%〜30質量%が好ましく、4質量%〜20質量%がより好ましい。
前記含有量が、2質量%未満であると、肌のべたつき抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果が低下することがあり、30質量%を超えると、白残りが生じることがある
【0014】
<質量比C/(A+B)>
前記(C)成分と、前記(A)成分及び前記(B)成分との質量比C/(A+B)は、剤の肌への付着性、白残り抑制効果、肌のべたつき抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果の点から、0.2〜50であり、0.7〜15が好ましい。
前記質量比C/(A+B)が、0.2未満であると、剤の肌への付着性、デオドラント(防臭)効果が低下することがあり、50を超えると、白残りのなさ、肌のべたつき抑制効果が低下することがある。
【0015】
<(D)固化剤>
前記(D)成分の固化剤を含有することにより、剤の付着性、肌のべたつきのなさ及び剤の保形性が得られる。
前記(D)成分の固化剤としては、例えば、炭素数16〜22の直鎖脂肪族アルコール、融点が60℃〜69℃にあるパラフィン、融点が85℃〜86℃の硬化ヒマシ油などが挙げられる。
前記炭素数16〜22の直鎖脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール(NAA45、融点60℃、日油社製)、セチルアルコール(コノール1695、融点50℃、新日本理化社製)、セトステアリルアルコール(NAA48、融点52℃、日油社製)、ベヘニルアルコール(コノール2280、融点69℃、新日本理化社製)などが挙げられる。
前記融点が60℃〜69℃にあるパラフィンとしては、例えば、パラフィン140(融点61℃、日本精蝋社製)、パラフィン150(融点66℃、日本精蝋社製)、パラフィン155(粒状)(融点69℃、日本精蝋社製)などが挙げられる。
前記融点が85℃〜86℃の硬化ヒマシ油としては、例えば、ヒマ硬(融点86℃、川研ファインケミカル社製)、ヒマシ硬化油A(融点85℃、伊藤製油社製)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保形性の点から、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、パラフィン、硬化ヒマシ油が好ましく、剤の付着性、肌のべたつきのなさ、及び保形性の点から、ステアリルアルコール(NAA45、融点60℃、日油社製)、ステアリルアルコールとパラフィンの併用、ステアリルアルコールと硬化ヒマシ油の併用、硬化ヒマシ油とパラフィンの併用がより好ましい。
前記(D)成分の固化剤の含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、保形性の点から、5質量%〜35質量%が好ましく、10質量%〜15質量%がより好ましい。
前記含有量が、5質量%未満であると、剤の硬度が低下するため、剤が肌へ過剰に付着し、べたつきが生じることがある。35質量%を超えると、剤が硬くなり、デオドラント成分の肌への付着量が劣り、デオドラント(防臭)効果の持続性が低下することがある。
【0016】
前記融点の測定方法としては、「直鎖脂肪族アルコール:外原規 一般試験法 第5法」に基づき、測定することができる。
まず、試料を注意しながらできるだけ低温で融解し、これを泡が入らないように注意しながら両端の開いた長さ約120mmの毛細管中に吸い上げ、約10mmの高さとする。毛細管から試料が流出しないように保ち、毛細管を少し傾けるか、又は加温して上昇させて試料をずらした後に小炎で毛細管の一端を封じた後、試料を封じた一端にもどす(固化してしまう試料は適度に加温して一端に戻す)。10℃以下で24時間放置するか、又は少なくとも2時間氷冷した後、試料の位置が水銀球の中央外側にくるようにゴム輪で温度計(浸線付き又は全没式)に取付け、水を入れた250mLのビーカーに入れ、試料の上端を水面下10mmの位置に保つ。水を絶えずかき混ぜながら加温し、予想した融点より5℃低い温度に達したとき、1分間に1℃上がるように加温を続ける。試料が透明になり濁りを認めなくなったときの温度を融点とする。また、前記硬化ヒマシ油及び前記パラフィンの融点は、JIS K2235−5.3に準拠して測定することができる。
【0017】
<(E)デオドラント成分>
前記(E)デオドラント成分は、発汗を抑制し汗中に含まれる悪臭原因成分の分泌を抑制する効果がある制汗成分(E1)、悪臭成分を吸着する消臭成分(E2)、及び、体臭成分の発生源となる細菌の繁殖を抑える殺菌成分(E3)からなることが好ましい。それぞれ、デオドラント(防臭)効果の点から、前記(E1)制汗成分は、クロルヒドロキシアルミニウム、及びパラフェノールスルホン酸亜鉛から選択される少なくとも1種が好ましく、前記(E2)消臭成分は、酸化亜鉛、及びマグネシアシリカから選択される少なくとも1種が好ましく、前記(E3)殺菌成分は、ベンザルコニウム塩化物、及びイソプロピルメチルフェノールから選択される少なくとも1種が好ましい。デオドラント(防臭)効果の点から、前記(E)デオドラント成分は少なくとも2種を併用するのが好ましく、3種を併用することがより好ましい。
2種併用する場合は、デオドラント(防臭)効果の点から、(E1)制汗成分と(E2)消臭成分の併用、又は、(E1)制汗成分と(E3)殺菌成分の併用がより好ましい。
前記(E)成分のデオドラント成分としては、市販品を使用してもよい。前記市販品として、例えば、(E1)制汗成分としては、クロルヒドロキシアルミニウム(Summit Research Labs社製、商品名:MICRO−DRY 3115)、パラフェノールスルホン酸亜鉛(マツモトファインケミカル株式会社製、商品名:スルホ石炭酸亜鉛)、(E2)消臭成分としては、酸化亜鉛(和光純薬工業株式会社製、商品名:酸化亜鉛)、マグネシアシリカ(水澤化学工業株式会社製、商品名:ミズパール「M−5015」)、(E3)殺菌成分としては、ベンザルコニウム塩化物(小堺製薬株式会社製、商品名:トリゾン消毒液10%液「YI」)、イソプロピルメチルフェノール(大阪化成株式会社製、商品名:イソプロピルメチルフェノール)などが挙げられる。これらの中でも、クロルヒドロキシアルミニウムと酸化亜鉛、クロルヒドロキシアルミニウムとベンザルコニウム塩化物の組合せが好ましく、クロルヒドロキシアルミニウムと酸化亜鉛とベンザルコニウム塩化物の組合せがより好ましい。
【0018】
前記(E1)制汗成分の含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、1質量%〜20質量%が好ましく、2質量%〜10質量%がより好ましい。
前記(E2)消臭成分の含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、0.1質量%〜10質量%が好ましく、1質量%〜5質量%がより好ましい。
前記(E3)殺菌成分の含有量は、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、0.01質量%〜1質量%が好ましく、0.05質量%〜0.5質量%がより好ましい。
前記(E1)制汗成分と、前記(E2)消臭成分及び(E3)殺菌成分との質量比E1/(E2+E3)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、デオドラント(防臭)効果の点から、0.1〜50が好ましく、0.4〜9.5がより好ましい。
前記質量比E1/(E2+E3)が、0.1未満であると、デオドラント(防臭)効果が低下することがあり、50を超えると、白残り抑制効果、及びデオドラント(防臭)効果が低下することがある。
前記(E)成分のデオドラント成分の合計含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記デオドラントスティック組成物全量に対して、2質量%〜30質量%が好ましく、4質量%〜15質量%がより好ましい。
前記合計含有量が、2質量%未満であると、デオドラント(防臭)効果、剤の肌への付着性、及び肌のべたつき抑制効果が不十分となることがあり、30質量%を超えると、白残りが生じることがある。
【0019】
<その他の成分>
本発明のデオドラントスティック組成物には、前記(A)成分〜前記(E)成分以外にも、通常、デオドラントスティック組成物に配合されるその他の成分を配合することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を妨げない範囲で目的に応じて適宜選択して配合することができ、例えば、油脂類、ワックス類、メチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン油、炭化水素油、高級脂肪酸、合成エステル油、高分子化合物、界面活性剤、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、色素、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、メントール等の清涼剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸2カリウム等の抗炎症剤、アミノ酸、ビタミン剤、各種植物抽出エキス、などが挙げられる。
【0020】
<デオドラントスティック組成物の製造方法>
本発明のデオドラントスティック組成物の製造方法は、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(D)成分、及び前記(E)成分をデカメチルシクロペンタシロキサンに混合し、前記(D)成分が溶解する温度まで十分に加熱し、溶解後、前記(C)粉体を分散させる。得られた分散液を、前記(D)成分の凝固点より少し高い温度まで冷却し、香料及び必要に応じてその他の成分を加えた後、容器に流し込み、室温又は冷却条件下で固めて、デオドラントスティック組成物を作製することができる。
【0021】
<用途>
本発明のデオドラントスティック組成物は、例えば、制汗剤、防臭剤、制汗防臭、デオドラント剤、などとして好適に用いられる。
本発明のデオドラントスティック組成物は、腋窩部や他の部位の、汗及び臭いの少なくともいずれかを抑えるのに十分な量を塗布することにより使用される。
対象とする皮膚上の部位に、0.1g〜10g塗布するのが好ましく、0.1g〜5g塗布するのがより好ましい。また、本発明のデオドラントスティック組成物は、汗及び臭いの少なくともいずれかを有効に抑えるために、1日1回又は2回塗布するのが好ましい。
【0022】
<剤型>
本発明のデオドラントスティック組成物は、制汗防臭効果及びその持続性、塗布のしやすさなどの点から、スティック状であることが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下に示す実施例及び比較例において、各成分の含有量は、純分換算値を示す。
【0024】
(実施例1〜54及び比較例1〜7)
下記表1〜表12に示す(A)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分、及びその他の油剤をデカメチルシクロペンタシロキサンに混合し、前記(B)及び(D)成分が溶解する温度まで十分加熱(約85℃)し、溶解後、(C)粉体を分散させた。得られた分散液を、前記(B)及び(D)成分の凝固点より少し高い温度(約70℃)まで冷却し、香料及び必要に応じてその他の成分を加えた後、容器に約30g流し込み、室温又は冷却条件下で固めて、デオドラントスティック組成物(固形デオドラント剤)を作製した。
次に、得られた各固形デオドラント剤について、以下のようにして、「肌への付着性の良さ」、「白残りのなさ」、「肌のべたつきのなさ」、及び「デオドラント効果」を評価した。結果を表1〜表12に示した。
【0025】
<肌への付着性>
20名の専門評価者が、腋窩に各固形デオドラント剤0.15gを塗布し、塗布時の剤の肌への付着性を回答してもらい、下記の評価基準に従って、剤の肌への付着性を評価した。
〔評価基準〕
◎:「剤の肌への付着性が良い」と回答した人が、18名以上、20名以下
○〜◎:「剤の肌への付着性が良い」と回答した人が、15名以上、17名以下
○:「剤の肌への付着性が良い」と回答した人が、11名以上、14名以下
△:「剤の肌への付着性が良い」と回答した人が、6名以上、10名以下
×:「剤の肌への付着性が良い」と回答した人が、5名以下
【0026】
<白残りのなさ>
20名の専門評価者が、前腕内側部に各デオドラント剤を0.15g塗布し、乾燥後、肌に白残りがあるか否かを回答してもらい、下記の評価基準に従って、評価した。
〔評価基準〕
◎:「白残りがない」と回答した人が、18名以上、20名以下
○〜◎:「白残りがない」と回答した人が、15名以上、17名以下
○:「白残りがない」と回答した人が、11名以上、14名以下
△:「白残りがない」と回答した人が、6名以上、10名以下
×:「白残りがない」と回答した人が、5名以下
【0027】
<肌のべたつき抑制(使用感)効果>
20名の専門評価者が、前腕内側部に各固形デオドラント剤を0.15g塗布し、塗布してから10分間後の肌のべたつき抑制(使用感)効果を回答してもらい、下記の評価基準に従って、評価した。
〔評価基準〕
◎:「肌のべたつきがない」と回答した人が、18名以上、20名以下
○〜◎:「肌のべたつきがない」と回答した人が、15名以上、17名以下
○:「肌のべたつきがない」と回答した人が、11名以上、14名以下
△:「肌のべたつきがない」と回答した人が、6名以上、10名以下
×:「肌のべたつきがない」と回答した人が、5名以下
【0028】
<デオドラント(防臭)効果>
20名の専門評価者に、朝、腋窩に各デオドラントスティック組成物を0.15g塗布してもらい、8時間後にデオドラント(防臭)効果があるか否かを回答してもらい、下記の評価基準に従って、デオドラント(防臭)効果を評価した。
〔評価基準〕
◎:「デオドラント(防臭)効果がある」と回答した人が、18名以上、20名以下
○〜◎:「デオドラント(防臭)効果がある」と回答した人が、15名以上、17名以下
○:「デオドラント(防臭)効果がある」と回答した人が、11名以上、14名以下
△:「デオドラント(防臭)効果がある」と回答した人が、6名以上、10名以下
×:「デオドラント(防臭)効果がある」と回答した人が、5名以下
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
【0035】
【表7】
【0036】
【表8】
【0037】
【表9】
【0038】
【表10】
【0039】
【表11】
【0040】
【表12】
【0041】
実施例1〜54及び比較例1〜7において使用した各成分の詳細については、下記表13に示すとおりである。
【0042】
【表13】
【0043】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> (A)シリコーンゲル、
(B)多価アルコール脂肪酸エステル、
(C)粉体、
(D)固化剤、及び
(E)デオドラント成分を含有してなり、
前記(C)成分と、前記(A)成分及び前記(B)成分との質量比C/(A+B)が、0.2〜50であることを特徴とするデオドラントスティック組成物である。
<2> (A)成分のシリコーンゲルが、ポリエーテル変性シリコーン架橋物、及びポリグリセリン変性シリコーン架橋物アルキル共変性物から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載のデオドラントスティック組成物である。
<3> (B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルが、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、及びトリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパンから選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
<4> (C)成分の粉体が、タルク、シリカ及びマイカから選択される少なくとも1種である前記<1>から<3>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
<5> (D)成分の固化剤が、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、融点が60℃〜69℃のパラフィン、及び融点が85℃〜86℃の硬化ヒマシ油から選択される少なくとも1種である前記<1>から<4>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
<6> (E)成分のデオドラント成分が、(E1)クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、(E2)酸化亜鉛、マグネシアシリカ、及び(E3)ベンザルコニウム塩化物、イソプロピルメチルフェノールから選択される少なくとも2種である前記<1>から<5>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
<7> (A)成分のシリコーンゲルの含有量が、0.2質量%〜2質量%であり、
(B)成分の多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が、1質量%〜5質量%であり、
(C)成分の粉体の含有量が、4質量%〜20質量%であり、
(D)成分の固化剤の含有量が、10質量%〜15質量%であり、
(E)成分のデオドラント成分の含有量が、4質量%〜15質量%である前記<1>から<6>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
<8> スティック状である前記<1>から<7>のいずれかに記載のデオドラントスティック組成物である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のデオドラントスティック組成物は、例えば、制汗剤、防臭剤、制汗防臭、デオドラント剤、などとして好適に用いられる。