(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電磁波発生器は、前記入力電力に対して30mA以上150mA以下の範囲のアノード電流領域で前記電磁波を発生させ、かつ前記アノード電流領域の全域における前記電磁波の出力効率が72%以上である、請求項1に記載のプラズマ発光装置。
前記電磁波発生器で発生させる前記電磁波は、250W以上350W以下の範囲内の入力電力で最大出力効率を示す、請求項1または請求項2に記載のプラズマ発光装置。
前記電磁波集束器は高誘電物質からなる集束器本体を備え、前記無電極バルブは前記集束器本体内に設置されている、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ発光装置。
アノード円筒と、前記アノード円筒の内壁から管軸に向かって放射状に配置された複数枚のアノード共振板とを有し、前記アノード共振板の枚数が12枚であるアノード部と、
前記アノード円筒の管軸に沿って配置されたフィラメントを有するカソード部と、
前記アノード円筒の管軸方向に磁場を発生させる、磁束密度が230mT以上の永久磁石を有する励磁回路とを具備し、無電極バルブを備えるプラズマ発光装置に電磁波を供給する電磁波発生器であって、
前記カソード部の外径の半径(rc)と前記複数枚のアノード共振板の遊端側の内径で表される前記アノード部の内径の半径(ra)との比(rc/ra)が0.487以上であり、
100W以上350W以下の範囲内の入力電力の全域で発生させる前記電磁波の出力効率が72%以上であることを特徴とするプラズマ発光装置用電磁波発生器。
前記入力電力に対して30mA以上150mA以下の範囲のアノード電流領域で前記電磁波を発生させ、かつ前記アノード電流領域の全域における前記電磁波の出力効率が72%以上である、請求項5に記載のプラズマ発光装置用電磁波発生器。
【背景技術】
【0002】
従来、店舗や倉庫等の天井に設置される照明器具や道路照明等の高出力が求められる照明装置には、主として高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電ランプ(High Intensity Discharge lamp:HID)が用いられてきた。近年、省エネルギーへの要求がより一層強まるにつれて、照明装置に対しても省エネルギー化が強く求められている。HIDにおいても、透光性セラミックスからなる発光管を備えたメタルハライドランプ(セラミックメタルハライドランプ)等で省エネルギー化が進められているものの、十分とは言えない。また、セラミックメタルハライドランプは他のHIDと同様に輝度が経時的に劣化しやすいため、十分な寿命を有しているとは言えず、設置コストやメンテナンスコストが高くなる。
【0003】
長寿命で省エネルギーな照明装置としては、LED照明が注目されている。LED照明は、発光ダイオード(LED)を発光源や蛍光体の励起源として用いている。このため、LED照明は消費電力が少なく、また寿命も数万時間から10万時間程度と長いという特徴を有している。しかしながら、LED照明は一般的に低出力の照明装置に広く適用されているものの、高出力が求められる照明装置には不向きとされている。すなわち、LED照明を高出力化するとエネルギー変換効率が悪くなり、発熱量が増大するために寿命が著しく短くなる。また、高天井用の照明装置として用いた場合には、配光照度が不足する。
【0004】
HIDやLED等を用いた照明装置とは別に、無電極バルブ内に充填された発光物質をマイクロ波で励起してプラズマ発光させるプラズマ照明装置が知られている。プラズマ照明装置は、例えばマイクロ波発生器と、マイクロ波発生器で発生させたマイクロ波が導かれるマイクロ波集束器と、マイクロ波集束器内に設置された無電極バルブとを有している。無電極バルブ内に充填された発光物質は、マイクロ波集束器で無電極バルブに集束させたマイクロ波で励起されることによりプラズマ発光する。プラズマ照明装置は、バルブ内の発光物質を物理的な接触なしに活性化させるために長寿命であり、さらに点光源であるがゆえに配光設計に好適な照明装置である。
【0005】
ところで、比較的低い天井(例えば5m以下)に設置される屋内照明や屋外の狭域エリア照明等おいては、入力電力が200〜300WのHID(全光束が16000〜25000ルーメン)から省エネルギー効果が高いLED照明(入力電力が150〜200W/全光束が1000〜16000ルーメン)への切り替えが進められている。LED照明で十分な照度が得られない場合、照明装置の設置数を増やして対応しているが、これは照明装置の設置コストを上昇させる要因となっている。一方、従来のプラズマ照明装置は十分な照度を有している反面、比較的低い天井からの照度に対応させるために、入力電力を下げて調光した場合に発光効率の低下が著しいという難点を有している。そこで、プラズマ照明装置の入力電力を下げた場合の発光効率の低下を抑制することが求められている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態のプラズマ発光装置について、図面を参照して説明する。
図1はプラズマ発光装置の概略構成を示す図である。
図1に示すプラズマ発光装置1は、電磁波発生器2と、電磁波発生器2に電力を供給する電源部3と、電磁波発生器2から放射される電磁波を伝送する導波管4と、導波管4内を伝送される電磁波を受信するアンテナ5と、アンテナ5から電磁波が照射される電磁波集束器6と、電磁波集束器6内に設置された無電極バルブ7を有する発光部とを具備する。無電極バルブ7には、発光物質が充填されている。電磁波は、電磁波集束器6で無電極バルブ7に集束され、これにより無電極バルブ7内に充填された発光物質が励起されてプラズマ発光する。
【0011】
実施形態のプラズマ発光装置1の構成について述べる。電磁波発生器2は
図2に示すように、カソード部(陰極)11とアノード部(陽極)12とを備えている。カソード部11およびアノード部12は、高周波の電磁波(以下、マイクロ波と記す)を発生させる発振部として機能する。発生させるマイクロ波の周波数は、国際電気通信連合(International Telecommunication Union:ITU)により、電波法による放射許容値の規制を受けない工業・科学・医療用帯域であるISM(Industrial, Scientific and Medical)バンドに割り当てられている、2450±50MHzが好ましい。
【0012】
例えば、その近傍のISMバンドとしての915±15MHzバンドでは、共振波長が長くなる(2.45GHzの共振波長が12cmであるのに対して、915MHzの共振波長は33cm)ので、電磁波集束器や無電極バルブが大型化する。また、この帯域の使用認可は、南北アメリカ地域のみに限られている。さらに、5800±75MHzバンドは、共振波長が短くなる(5.8GHzの共振波長は5cm)ので、電磁波集束器や無電極バルブを小型化できる反面、無電極バルブの発光量が少なくなる等の難点がある。2450±50MHzバンドによれば、電磁波集束器6や無電極バルブ7の小型化と無電極バルブ7の発光量とを両立させることができる。
【0013】
アノード部12は、カソード部11を取り囲むように配置されている。電源部3は、主電源13、電源供給・制御回路14、カソード電源15、アノード電源16等を備えている。このような電源部3からカソード部11およびアノード部12に電力が供給される。アノード部12の管軸方向には、励磁回路17から磁場が印加されている。電磁波発生器2の具体的な構成については、後に詳述する。
【0014】
カソード部11をヒータで加熱しつつ、アノード部12に正の電圧を印加すると、カソード部11からアノード部12に向けて電子が放出される。カソード部11から放出された電子は、カソード部11とアノード部12との間の電界、およびアノード部12の管軸方向に印加された磁場によって、カソード部11とアノード部12との間の空間で軌道が曲げられて周回運動する。周回電子は熱電子流となって、共振器の高周波電界により集群してスポーク状の電子極を形成して同期回転する。これによって、マイクロ波が発生する。発生したマイクロ波は、電磁波発生器2の出力部18から放射される。
【0015】
電磁波発生器2の出力部18は、導波管4の内部に配置されている。マイクロ波は電磁波発生器2の出力部18から導波管4内に放射される。出力部18から放射されたマイクロ波は、導波管4内を伝送される。導波管4内には、伝送されたマイクロ波を受信するアンテナ5の入力端5aが配置されている。アンテナ5は、入力端5aが導波管4の内部に配置され、かつ出力端5bが電磁波集束器6と接続するように設置されている。アンテナ5の入力端5aで受信したマイクロ波は、出力端5bから電磁波集束器6に照射される。電磁波集束器6内には、発光物質が充填された無電極バルブ7が設置されている。
【0016】
無電極バルブ7は、例えば中空構造の石英ガラス管や透光性セラミックス管等で構成されている。無電極バルブ7にセラミックス管を適用する場合、その構成材料としてはアルミナ、窒化アルミニウム、イットリウム・アルミニウム複合酸化物(YAG)、マグネシウム・アルミニウム複合酸化物(スピネル)、イットリア等の焼結体や単結晶体が例示される。無電極バルブ7内に充填される発光物質としては、臭化インジウム(InBr
3等)、ヨウ化ガリウム(GaI
3等)、ヨウ化ストロンチウム(SrI
2等)等の金属ハロゲン化物、あるいは硫黄(S)、セレン(Se)、これらを含む化合物等が挙げられる。発光物質は、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等から選ばれる少なくとも1種の希ガスと共に、無電極バルブ7内に封入される。
【0017】
電磁波集束器6としては、空洞共振器型や誘電体共振器型等が知られている。これらのうち、誘電体共振器型の電磁波集束器6を使用することが好ましい。誘電体共振器型の電磁波集束器6を使用することによって、電磁波集束器6に照射されたマイクロ波のエネルギー密度が向上するため、無電極バルブ7を有する発光部でのプラズマ発光の安定性が向上し、さらに発光出力や発光効率等を高めることができる。さらに、無電極バルブ7の発光時に発生する熱の放散性を高めることができる。
【0018】
誘電体共振器型の電磁波集束器6は、高誘電物質からなる集束器本体61を備えている。誘電体共振器型電磁波集束器6の集束器本体61は、誘電率が2以上の固体もしくは液体の高誘電物質で構成することが好ましい。固体状の高誘電物質としては、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、チタン酸バリウムやチタン酸ストロンチウム等のチタン酸塩、ジルコン酸ストロンチウム等のジルコン酸塩、およびそれらの複合化合物を主成分とするセラミックス材料(焼結体や単結晶体)が例示される。
【0019】
誘電体共振器型電磁波集束器6を使用する場合、発光物質や希ガス等が封入された無電極バルブ7は、高誘電物質からなる集束器本体61内に設置される。例えば、固体状の高誘電物質で所定のサイズを有する直方体状の集束器本体61を形成する。集束器本体61の1つの面に空洞部62を設け、この空洞部62内に無電極バルブ7を設置する。アンテナ5の出力端5bは、集束器本体61の他の面、例えば空洞部62を設けた面と対向する面に設置される。無電極バルブ7およびアンテナ5の出力端5bの設置位置は、マイクロ波の共振周波数等に応じて設定される。集束器本体61の無電極バルブ7および空洞部62の設置部を除く外面は、マイクロ波を反射する金属被膜等で覆ってもよい。これによって、マイクロ波のエネルギー密度が向上する。
【0020】
アンテナ5の出力端5bから電磁波集束器6に照射されたマイクロ波は、例えば高誘電物質からなる集束器本体61内で共振し、マイクロ波の共振周波数等に基づいて設置された無電極バルブ7に集束される。無電極バルブ7に集束したマイクロ波のエネルギーによって、無電極バルブ7内に充填された希ガスが電離してプラズマが発生する。金属ハロゲン化物等の発光物質は、発生したプラズマにより励起され、これにより発光(プラズマ発光)する。プラズマ発光は、電極を有しないバルブ(無電極バルブ7)内で発生する現象であるため、物理的な接触劣化がなく、長寿命の発光装置を提供することができる。
【0021】
ところで、従来のプラズマ発光装置は、前述したように入力電力が350W以下の照明用途等において、十分な発光効率(ランプ効率[単位:ルーメン/W])が得られないという難点を有している。例えば、入力電力が400Wクラスのプラズマ発光装置を用いて、入力電力を下げることにより300Wクラスの照度を得ようとした場合、発光効率(ランプ効率)が著しく低下するという難点を有している。本発明者はその原因について鋭意研究を行った結果、従来のプラズマ発光装置はマイクロ波の供給源であるマイクロ波発生器の出力効率が入力電力を小さくするにつれて顕著に低下し、このために入力電力を下げた際の発光効率(ランプ効率)の低下が著しくなることを見出した。また、マイクロ波発生器の動作電圧を下げて300Wクラスの照度に対応しようとした場合、マイクロ波発生器の出力効率が全般的に低下してしまう。
【0022】
このような点に対して、実施形態のプラズマ発光装置1は、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上である電磁波発生器2を備えている。このような電磁波発生器2によれば、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で無電極バルブ7を有する発光部を効率よく発光させることができる。言い換えると、プラズマ発光装置1に対する入力電力を100〜350Wの範囲内で変化させて調光した場合においても、調光領域の全域にわたってプラズマ発光装置1の発光効率を高めることができる。従って、プラズマ発光装置1の入力電力に応じた全光束が向上し、さらに100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で発光効率が向上する。すなわち、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域(低入力電力領域)で明るさや省エネルギー性に優れるプラズマ発光装置1を提供することが可能になる。
【0023】
低入力電力領域(100〜350Wの範囲の全域)における電磁波発生器2の出力効率を向上させるためには、低電流領域で発生させるマイクロ波の出力効率を高めることが有効である。具体的には、電磁波発生器2は100〜350Wの範囲内の入力電力に対して30〜150mAの範囲のアノード電流領域でマイクロ波を発生させると共に、そのようなアノード電流領域の全域におけるマイクロ波の出力効率が72%以上であることが好ましい。さらに、電磁波発生器2の低入力電力領域における出力効率を向上させるために、マイクロ波は250〜350Wの範囲内の入力電力で最大出力効率を示すことが好ましい。これらによって、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で発生させるマイクロ波の出力効率をより再現性よく高めることが可能になる。
【0024】
上述したように、実施形態の電磁波発生器2は、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上であり、また30〜150mAの範囲内のアノード電流領域の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上であることが好ましく、さらに250〜350Wの範囲内の入力電力でマイクロ波が最大出力効率を示すことが好ましい。100〜350Wの範囲内の入力電力および30〜150mAの範囲内のアノード電流の全域で発生させるマイクロ波の出力効率は74%以上であることがより好ましい。そして、このような電磁波発生器2を使用することによって、省エネルギー性等に優れるプラズマ発光装置1の発光効率を高めることが可能になる。
【0025】
電磁波発生器2におけるマイクロ波(電磁波)の出力効率[単位:%]は、動作電圧(アノード電圧)eb[単位:kV]とアノード電流Ib[単位:mA]と出力電力Po[単位:W]とから、下記の式(1)に基づいて求められる値である。
出力効率[%]=出力/(動作電圧×アノード電流)×100…(1)
電磁波発生器2に対する入力電力は、下記の式(2)に基づいて求められる値である。
入力[W]=動作電圧[kV]×アノード電流[mA] …(2)
【0026】
表1および
図3〜7に、実施例による電磁波発生器2の入力電力、アノード電流、動作電圧(アノード電圧)、出力電力、マイクロ波の出力効率、および発振周波数の一例を示す。なお、表1および
図3〜7には、比較例1〜3による電磁波発生器の特性を併せて示す。実施例の電磁波発生器2は、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域、および30〜150mAの範囲内のアノード電流領域の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上、さらには74%以上であることが分かる(表1、
図3〜4参照)。また、マイクロ波が最大出力効率を示す入力電力は250〜350Wの範囲(具体的には300W前後)である。実施例の電磁波発生器2は、100〜350Wの範囲の入力電力に対して3〜3.2kV程度の動作電圧が保たれている(表1、
図5参照)。
【0028】
一方、比較例1の電磁波発生器は、入力電力が200W程度までの領域では72%以上の出力効率が維持されているものの、入力電力が200Wより下回ると出力効率の低下が著しく、出力効率は72%未満となっている。また、マイクロ波が最大出力効率を示す入力電力は300Wを超えて、400W前後である。比較例2および比較例3の電磁波発生器は、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で出力効率が72%未満であることが分かる。これら出力効率の違いに基づいて、実施例による電磁波発生器2は比較例1〜3の電磁波発生器に比べて出力に優れている(表1、
図6参照)。なお、実施例による電磁波発生器2と比較例1〜3による電磁波発生器との具体的な構成上の違いは、表2に示す通りである。これら構成上の違いについては後に詳述する。
【0030】
表3および
図8に実施例の電磁波発生器2を用いたプラズマ発光装置1の入力電力と全光束[単位:ルーメン(lm)]との関係を示す。また、表3および
図9に実施例の電磁波発生器2を用いたプラズマ発光装置1の入力電力と発光効率(ランプ効率[単位:lm/W])との関係を示す。これらの表および図には、比較例1〜3の電磁波発生器を用いたプラズマ発光装置の入力電力と全光束および発光効率(ランプ効率)との関係を併せて示す。実施例のプラズマ発光装置1は、比較例1〜3のプラズマ発光装置に比べて、350W以下の入力電力における発光効率および全光束に優れていることが分かる。
【0032】
表3、
図8および
図9はプラズマ発光装置1への入力電力を変化させて調光した場合の全光束およびランプ発光効率に相当する。表3、
図8および
図9に示すように、100〜350Wの範囲の入力電力の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上である電磁波発生器2によれば、プラズマ発光装置1の明るさを調整(調光)するために入力電力を350W以下の範囲で変化させた場合においても、ランプ発光効率が維持される。すなわち、実施例の電磁波発生器2を用いたプラズマ発光装置1は、調光時の発光効率および全光束に優れるものである。従って、調光時の発光効率の低下に伴う消費電力の増大等を抑制することが可能になる。
【0033】
上述したように、100〜350Wの範囲内の入力電力の全域で発生させるマイクロ波の出力効率が72%以上である電磁波発生器2を適用することによって、入力電力が300Wクラスのプラズマ発光装置1の発光効率および全光束を向上させることができる。さらに、300Wクラスのプラズマ発光装置1の調光を100〜350Wの範囲の入力電力で効率よく実施することが可能になる。実施形態のプラズマ発光装置1によれば、店舗や倉庫等の比較的低い天井(例えば5m以下)に設置される屋内照明や屋外の狭域エリア照明等に好適な照明装置を提供することができる。ただし、実施形態のプラズマ発光装置1は照明装置に限らず、プロジェクタの光源等に適用してもよい。
【0034】
実施形態のプラズマ発光装置1は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等のHIDと同様に、比較的低い天井用照明や狭域エリア照明等の照明装置に好適である。さらに、100〜350Wの範囲の入力電力で調光可能であるため、HIDに比べて省エネルギー性に優れ、また無電極バルブ7を有する発光部を使用しているため、寿命特性に優れるものである。従って、実施形態のプラズマ発光装置1は、エネルギー効率の向上による消費電力の低減と、長寿命化による装置コストやメンテナンスコストの低減とを具現化した、省エネルギーな照明装置として有効に利用可能なものである。
【0035】
次に、実施形態のプラズマ発光装置1に用いる電磁波発生器2の具体的な構成について、
図10〜12を参照して説明する。電磁波発生器2は、発振部本体としてカソード部(陰極部)11とアノード部(陽極部)12とを備えている。アノード部12は、アノード円筒21と、アノード円筒21の内壁から管軸に向かって放射状に等間隔に配置された複数枚のアノード共振板22とを有している。アノード共振板22の外側端部は、アノード円筒21の内壁に固定されており、内側端部は遊端になっている。カソード部11は、アノード円筒21の内側に管軸に沿って配置された、例えば螺旋状のフィラメント23を有している。フィラメント23は、アノード共振板22の遊端と間隔をあけて、空洞共振器を形成する電子作用空間内に配置されている。
【0036】
アノード共振板22の上辺(出力部側)および下辺(入力部側)には、一対の第1のストラップリング24a、24bと、第1のストラップリング24a、24bの外側に位置し、第1のストラップリングより径が大きい一対の第2のストラップリング25a、25bとが交互に接続されている。例えば、アノード共振板22の上辺は、1つ目のアノード共振板22から数えて奇数番目のアノード共振板22同士が第1のストラップリング24aで接続されており、偶数番目のアノード共振板22同士が第2のストラップリング25aで接続されている。アノード共振板22の下辺は、逆に奇数番目のアノード共振板22同士が第2のストラップリング25bで接続されており、偶数番目のアノード共振板22同士が第1のストラップリング24bで接続されている。
【0037】
アノード円筒21の管軸方向の両端部には、一対の集磁板26a、26bが対向して設けられている。集磁板26a、26bは、それぞれ漏斗状の形状を有し、中央に貫通孔が設けられている。集磁板26a、26bの貫通孔の中心は、アノード円筒21の管軸上に位置している。集磁板26aの上方および集磁板26bの下方には、それぞれ環状の永久磁石27a、27bが配置されている。永久磁石27a、27bは、ヨーク28で囲われている。集磁板26a、26bと永久磁石27a、27bとヨーク28は、アノード円筒21の管軸方向に磁場を発生させる励磁回路17を構成している。
【0038】
集磁板26bの管軸方向の下方には、フィラメント印加電力および動作電圧を供給する入力部29が設けられている。集磁板26aの管軸方向の上方には、マイクロ波をアンテナリード30から放射する出力部18が設けられている。アンテナリード30は、1つのアノード共振板22から導出されている。アノード共振板22により形成される空洞共振器の作用空間内に生じる電界と、励磁回路17により管軸方向に発生させた磁界と、入力部29から供給されるフィラメント印加電力および動作電圧によって、フィラメント23から放出された熱電子は作用空間で周回運動を行うことによって、マイクロ波を発振させる。マイクロ波はアンテナリード30を介して出力部18から放射される。
【0039】
ここで、発振部本体としてカソード部11とアノード部12とを備える電磁波発生器2は、同軸円筒電極間の電流を管軸方向に付与される磁界で制御して発振させる、一種の二極管である。同軸円筒の二極管にアノード電圧を印加すると、カソードから放出された電子は真っ直ぐにアノードに達する。アノード・カソード軸に平行に磁界を加えると、電子は運動方向と磁界方向に直角な力を受けて曲がった軌跡を描く。磁界がさらに強くなると、アノード面をかすめて再びアノードに向かう。このときの磁界の磁束密度を臨界磁束密度と呼ぶ。この現象は磁界を一定にしてアノード電圧を減少させた場合も同様であり、アノード電圧が低くなると電子がアノードに到達しなくなる。この限界電圧をカットオフ電圧と呼ぶ。アノード電圧がカットオフ電圧を超えると電流が急激に流れるため、電磁波発生器2は高いカットオフ電圧を持った一種のダイオードと言える。
【0040】
電磁波発生器2のアノード部12は複数に分割されているため、
図12に示すようにC、Lの等価回路で表現される共振器を構成している。分割されたアノード共振板22間には、発振しない状態でも微弱なマイクロ波が振動しており、正常な状態では高周波電界は隣り合うアノード共振板22間で反対の向きになっている。隣り合うアノード共振板22間の位相差は180度(πラジアン)であり、この状態をπモードと呼ぶ。高周波電界は、共振周波数の周期で変化している。カソード部11を加熱し、アノード部12に電圧を印加すると、電子はアノード部12の周りを周回する。アノード電圧と磁束密度との比を変えると電子の周回速度が変化するため、これを調整することで周回角速度を共振器における高周波電界の変化速度(電界の角速度)と等しくすることができる。
【0041】
加速電界のある空間では電子はカソード部11側に収縮し、減速電界のある空間ではアノード部12側に広がるため、電子はスポーク状の電子群を構成する。この電子群は、共振回路の高周波電界の回転周期と同期して回転する間に、減速電界中の電子が位置エネルギーを失ってアノード部12に収束するため、共振器にエネルギーを与えて発振することになる。このとき、スポーク状の電子群の形状はアノード共振板22の枚数により変化し、アノード共振板22の枚数が多いほどスポーク形状が先鋭になる。スポーク形状が先鋭になるほど、流れる誘導電流が小さくなるため、出力効率の最大点が低電流領域側に移行する。このため、電磁波発生器2は12枚のアノード共振板22を有している。
【0042】
図11は12枚のアノード共振板22を有する電磁波発生器2を示している。12枚のアノード共振板22を有するアノード部12によれば、低電力領域および低電流領域での出力効率を高めることができる。アノード共振板22の分割数が増えると、共振板間の高周波電界の単位当たりの密度が大きくなり、電子効率が向上する。また、アノード共振板22の分割数が増えると、流れる誘導電流の許容値が小さくなり、低電流領域で出力効率が最大となる。このような点から、低電力領域および低電流領域での出力効率を高める上で、12枚のアノード共振板22を有するアノード部12が有効となる。
【0043】
さらに、300Wクラスのプラズマ発光装置1で400Wクラスと同等の発光効率を得るためには、出力効率の最大点をより低電流側に移行させる必要がある。そのためには、アノード内径(2ra)を小さくし、アノード内径の半径(ra)とカソード外径(2rc)の半径(rc)との比(rc/ra)を大きくすることが好ましい。これによって、同一磁界に対するアノード電圧を下げることができる。rc/ra比は0.487以上であることが好ましい。ここで、アノード内径(2ra)は複数枚のアノード共振板22の内側端部(遊端)の内径を意味する。さらに、12枚のアノード共振板22を用いた場合、共振器のLが大きくなり、Q値も低下する。また、アノード内径(2ra)を小さくすることで、共振器のCが大きくなり、さらにQ値が低下する。このため、マイクロ波の最大出力効率を示すアノード電流をより低電流側に移行させることができる。
【0044】
このような点から、350W以下の低電力領域および150mA以下の低電流領域における電磁波発生器2の出力効率を高めるためには、12枚のアノード共振板22を有するアノード部12を適用し、かつrc/ra比を0.487以上とすることが好ましい。前述した実施例1の電磁波発生器2は、表2に示したように、12枚のアノード共振板22を有し、かつrc/ra比が0.487である。一方、比較例1、3の電磁波発生器はアノード共振板の枚数が12枚であるものの、rc/ra比は0.481である。さらに、比較例3の電磁波発生器は動作電圧が2.3〜2.7Vと低い。比較例2の電磁波発生器は、アノード共振板の枚数が10枚で、rc/ra比が0.443である。
【0045】
上述したような電磁波発生器の具体的な構成の違いに基づいて、実施例1の電磁波発生器2ではマイクロ波が最大出力効率を示す入力電力が比較例1に比べてより低電流側に移行していることが分かる。このような入力電力と出力効率との関係に基づいて、実施例1の電磁波発生器2は100〜350Wの範囲内の入力電力の全域および30〜150mAの範囲内のアノード電流領域の全域でマイクロ波の出力効率が72%以上であるという構成を実現したものである。なお、比較例2の電磁波発生器はアノード共振板の枚数が10枚であり、また比較例3の電磁波発生器は動作電圧が低いため、100〜350Wの範囲の入力電力によるマイクロ波の出力効率が全般的に低いことが分かる。
【0046】
また、カソード部11から放出された熱電子は、カソード部11とアノード部12との間の電界により加速されることで運動エネルギーを得るが、電界に直交する磁界の影響により回転運動をする。この回転運動をする際に、アノード共振板22の先端を通過することで、アノード部12に誘導電流が発生する。この誘導電流がマイクロ波電力となる。この電子が電界から得た運動エネルギーをマイクロ波エネルギーに変換する効率を電子効率と呼ぶ。電子効率ηeの理論式は下式によって表される。
【0047】
【数1】
上記した式において、raはアノード内径の半径、rcはカソード外径の半径、σはraに対するrcの比(rc/ra)、Boは 臨界磁束密度、Bは設計磁束密度、nはモード数(アノード分割N/2)、α
1、α
2は定数である。
実施例の電磁波発生器は、一定の磁束密度に対するアノード電圧が低いものの、電子効率が高くなる。基本的に、磁束密度が高いほど電子効率は向上する。実施例の電磁波発生器は、磁束密度が230mT以上の永久磁石27a、27bを使用することによって、さらに効率の向上を達成することができる。
【0048】
上述したように、12枚のアノード共振板22を有するアノード部12と磁束密度が230mT以上の永久磁石27a、27bとを適用することによって、表1および
図3〜7に示したように、30〜150mAのアノード電流領域(低電流領域)の全域で出力効率が72%以上の電磁波発生器2を実現することができる。そして、このような電磁波発生器2を適用し、350W以下の入力電力に対する発光効率を高めることによって、入力電力を100〜350Wの範囲とした際に、全灯時および調光時の効率および全光束を向上させたプラズマ発光装置1を提供することが可能となる。
【0049】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。