【実施例】
【0038】
実施例及び比較例における分析及び評価は、下記の通りに実施した。
【0039】
(1)重合体の分子構造:
[溶液
1H−NMR]
得られた重合体がクロロホルムに溶解する場合には、溶液
1H−NMR(核磁気共鳴)測定を行い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
【0040】
<分析条件>
装置:500MHz超伝導核磁気共鳴装置 JEOL JNM−ECA500(商標、日本電子株式会社製)
溶媒:0.03v/v%TMS含有重クロロホルム(ISOTEC社製)
濃度:20mg/ミリリットル
温度:20℃
積算回数:32回
【0041】
[固体
13C−NMR(CP/MAS法)]
得られた重合体がクロロホルムに溶解しない場合には、固体
13C-NMR(核磁気共鳴)測定を行い、アダマンタンを基準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
【0042】
<分析条件>
装置:500MHz超伝導核磁気共鳴装置 JNM−ECA500(商標、日本電子株式会社製)
温度:20℃
積算回数:5,000回
【0043】
(2)重合体の分子量測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行い、ポリスチレン換算分子量として算出した。測定条件の詳細を以下に示す。
【0044】
<分析条件>
装置 :ゲルパーミエーションクロマトグラフィー JASCO GPC−900(商標、日本分光株式会社製)
カラム:Shodex K−806L(商標、昭和電工株式会社製)を2本連結(カラム温度:40℃)
移動相:クロロホルム(高速液体クロマトグラフィー用)(純正)
流速:1.0ミリリットル/分
検出器:RI
濾過:孔径0.45μmのフィルター
濃度:0.5mg/ミリリットル
注入量:20μL
標準物質:ポリスチレンスタンダード(Mw:800〜1,090,000)
【0045】
(3)気体透過測定
<分析条件>
装置:気体透過率測定装置 K−315−01(商標、ツクバリカセイキ株式会社製)
高圧側圧力:133.32kPa(最大値)
減圧側圧力:1333Pa(最大値)
セル口径:直径20mm
温度:25℃
【0046】
以下、酸素をO
2、窒素をN
2、二酸化炭素をCO
2、メタンをCH
4と示すことがある。
【0047】
(実施例1)
<ポリ(メトキシエチルプロピオレート)の合成>
U型重合管の片側にメトキシエチルプロピオレートモノマー1.28g(10.0mmol)を入れ、他方にクロロ(ノルボルナジエン)ロジウムダイマー46mg(0.1mmol)を入れ、蒸留により精製した脱水メタノール2.5mLを、夫々に加えた。液体窒素中で冷却しながら、真空ポンプで系内の減圧脱気を行ったのち、系内で、上記の両物質が良く混合するように30秒間程度U型重合管を手で振り、次いで、恒温振とう器中、4時間、40℃で重合させた。500mLビーカーにメタノール300mLを入れ、メタノールでU型重合管を洗浄しながら重合終了後の反応液を、該ビーカー中に取った。10分間撹拌し、その後、沈殿が形成されるまで静置した。上澄みのみを吸引ろ過により取り除き、メタノール150mLを沈殿に加え、再度10分間撹拌した。同じ操作を2回繰り返し、最後に沈殿を回収した。該沈殿をデシケーター中で12時間以上減圧乾燥させた。重合体の約0.95gが得られた(収率:74%)。
【0048】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、3.38ppm(−OC
H3:3H)、3.56ppm(−C
H2OCH
3:2H)、3.95及び4.11ppm(−COOC
H2−:2H)、6.89ppm(−
HC=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(メトキシエチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH
2−CH
2−O−CH
3(メトキシエチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は130,000〔重合度≒1015〕であった。
【0049】
<ポリ(メトキシエチルプロピオレート)の気体透過測定>
得られたポリ(メトキシエチルプロピオレート)50mgをジクロロメタン2mLに溶解させ、ニトロセルロース製の微多孔膜(MILLIPORE社製)にキャストし、乾燥して溶媒を完全に除去する方法で成膜した。ポリ(メトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
<ポリ(エトキシエチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.42g(10.0mmol)のエトキシエチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約1.07gが得られた(収率:75%)。
【0051】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、1.20ppm(−CH
2C
H3:3H)、3.53ppm(−C
H2OCH
2CH
3:2H)、3.59ppm(−OC
H2CH
3:2H)、3.96及び4.12ppm(−COOC
H2−:2H)、6.84ppm(−
HC=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(エトキシエチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
3(エトキシエチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は130,000〔重合度≒915〕であった。
【0052】
<ポリ(エトキシエチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(エトキシエチルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にして成膜した。ポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
<ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.42g(10.0mmol)の1−メトキシ−2−プロピルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.60gが得られた(収率:42%)。
【0054】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、1.23ppm(−OC
H3:3H)、3.33ppm(−CHC
H3−:3H)、3.46ppm(−C
H2−OCH
3:2H)、4.91ppm(−C
HCH
3−:1H)、7.06ppm(−
HC=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH(CH
3)−CH
2−O−CH
3(1−メトキシ−2−プロピル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は70,000〔重合度≒492〕であった。
【0055】
<ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にして成膜した。ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
<ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.56g(10.0mmol)の1−エトキシ−2−プロピルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.66gが得られた(収率:42%)。
【0057】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、1.16ppm(−CH
2−C
H3:3H)、1.24ppm(−OC
H2−CH
3:2H)、3.32ppm(−C
H2−OCH
2CH
3:2H)、3.50ppm(−CHC
H3−:3H)、4.88ppm(−C
HCH
3−:1H)、7.00ppm(−
HC=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH(CH
3)−CH
2−O−CH
2−CH
3(1−エトキシ−2−プロピル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は110,000〔重合度≒704〕であった。
【0058】
<ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
<ポリ(メチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、0.84g(10.0mmol)のメチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.59gが得られた(収率:70%)。
【0060】
得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であることから、CP/MAS法により固体
13C−NMR測定を行った結果、52ppm(−O
CH
3)、128ppm(=
CH−)、134ppm(=
C−)、164ppm(
C=O)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(メチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH
3(メチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であり、その数平均分子量を算出することはできなかった。
【0061】
<ポリ(メチルプロピオレート)の気体透過測定>
得られた重合体であるポリ(メチルプロピオレート)は種々の有機溶媒に対して不溶であることから、フィルムに成形することができなかった。従って、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定は不能であった。
【0062】
(比較例2)
<ポリ(エチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、0.98g(10.0mmol)のエチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.61gが得られた(収率:63%)。
【0063】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、1.23ppm(−CH
2C
H3:3H)、3.97ppm(−C
H2CH
3:2H)、6.86ppm(−C
H=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(エチルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH
2−CH
3(エチル基)である。)]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は22,000〔重合度≒224〕であった。
【0064】
<ポリ(エチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(エチルプロピオレート)を用い、更に溶媒としてクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.26g(10.0mmol)のn−ブチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.44gが得られた(収率:35%)。
【0066】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、
1H−NMR測定を行った結果、0.93ppm(−CH
2C
H3:3H)、1.38ppm(−C
H2CH
3:2H)、1.59ppm(−CH
2−C
H2−CH
2−:2H)、3.76〜3.98ppm(−O−C
H2−CH
2−:2H)、6.85ppm(−C
H=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(n−ブチルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
3(n−ブチル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は32,000〔重合度≒254〕であった。
【0067】
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(n−ブチルプロピオレート)を用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(n−ブチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO
2、CH
4の各純ガス透過係数(P
CO2、P
CH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
表1中、透過係数の単位barrer(バーラー)は、1×10
−10cm
3(STP)・cm・cm
−2・s
−1・cmHg
−1を表す。
【0069】
表1に示す結果より、実施例1〜4においては、CH
4に対するCO
2の透過係数比が高く、かつ、その原料(得られた重合体)の収率も高いことから、二酸化炭素を選択的に透過して分離する性質と製造コストとのバランスに極めて優れた二酸化炭素分離膜が得られたことが分かった。加えて、原料の重合度が高いことから、より大きな靱性を有し、二酸化炭素分離膜等を形成した際、その膜等がしなやかで割れ難く、長時間の繰り返し使用に耐え得ることが分かった。実施例1のポリ(メトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の透過係数比は、他の実施例のものより低い値を示したが、その一方で原料であるポリ(メトキシエチルプロピオレート)の収率が著しく高いことから、本発明の効果、即ち、二酸化炭素を選択的に透過して分離する性質と製造コストとのバランスを損なうものではなく、更には、原料の重合度が著しく高く、総合的に見て優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。実施例2のポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の透過係数比が著しく高いばかりではなく、その原料であるポリ(エトキシエチルプロピオレート)の収率も著しく高いものであり、非常に良好な上記バランスを有し、更には、原料の重合度も著しく高く、極めて優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。実施例3及び4のポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)及びポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、いずれも高い透過係数比を示し、また、その原料の収率も比較的高いものであり、良好な上記バランスを有し、更には、原料の重合度も高く、優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。
【0070】
一方、比較例1のポリ(メチルプロピオレート)は、比較的高い収率で得られるものの、各種溶剤に全く溶解しないことから、二酸化炭素分離膜として使用できるものではなかった。比較例2のポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、比較的高い透過係数比及び収率が得られた。しかし、同様にエチル基を有する実施例1及び2のフィルムからなる二酸化炭素分離膜と比較すると、実施例1の二酸化炭素分離膜に対しては透過係数比が高いものの、原料の収率が著しく劣り、著しくコスト高になってしまい、また、実施例2の二酸化炭素分離膜に対しては透過係数比及び原料の収率の両方において著しく劣っており、加えて、実施例1及び2の二酸化炭素分離膜のいずれの原料と比較しても、その原料の重合度は著しく小さく、従って、靱性が小さく、長期間の繰り返し使用に耐え得るものではないことが分かった。このように、比較例2のポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜は総合的に評価すると本発明の二酸化炭素分離膜と比較して著しく劣るものであった。比較例3のポリ(n−ブチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、透過係数比及び原料の収率の両方において著しく劣っているばかりではなく、原料の重合度も著しく小さいものであることが分かった。
【0071】
(O
2及びN
2の各純ガス透過試験)
実施例2のポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の通り、CH
4に対するCO
2の透過係数比が著しく高いばかりではなく、その原料であるポリ(エトキシエチルプロピオレート)の収率も著しく高いものであり、非常に良好なバランスを有するものであったことから、該二酸化炭素分離膜については、更に、O
2及びN
2の各純ガス透過係数(P
O2、P
N2)の測定を行った。その結果、その透過係数は、夫々、89barrer及び31barrerであった。実施例2で測定したCO
2純ガス透過係数(P
CO2)は912barrerであったことから、O
2及びN
2に対するCO
2純ガス透過係数比は、夫々、10.2(P
CO2/P
O2)及び29.4(P
CO2/P
N2)であった。
【0072】
以上の結果から、実施例2で得たポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜は、O
2及びN
2の各純ガスに対しても、二酸化炭素を選択的に透過する性質が高いことが分かった。これらの結果から、実施例2で得たポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムは、二酸化炭素のみを選択的に透過して分離し得ることが分かった。