特許第6261906号(P6261906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261906
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離材
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/40 20060101AFI20180104BHJP
   C08F 38/02 20060101ALI20180104BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B01D71/40
   C08F38/02
   C08J5/18CER
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-163547(P2013-163547)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2015-29980(P2015-29980A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月15日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日:平成25年5月14日、刊行物:高分子学会予稿集62巻1号[2013]1434ページ(第62回高分子学会年次大会) 発行日:平成25年5月29日、集会名、開催場所:第62回高分子学会年次大会、京都国際会館 申請日:平成25年6月20日、申請先(公開先):一般社団法人 日本ガス協会
(73)【特許権者】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100113033
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 精孝
(72)【発明者】
【氏名】田畑 昌祥
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 康輝
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−207787(JP,A)
【文献】 特開昭61−200833(JP,A)
【文献】 特開昭63−141626(JP,A)
【文献】 特開2008−222796(JP,A)
【文献】 特開2002−322293(JP,A)
【文献】 特開昭58−223407(JP,A)
【文献】 特開平09−173759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00− 71/82
C02F 1/44
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
C08C 19/00− 19/44
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】
(式(I)中、nは10〜100,000の整数を示し、Rは、炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、鎖状又は環状の一価の脂肪族炭化水素基を示す。)
で示されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー若しくはコポリマー、又は、これらのポリマーブレンドからなる二酸化炭素透過膜
【請求項2】
上記式(I)中のRが、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、及び、これらの組合せの基より成る群から選ばれ、ここで、上記の基は、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、請求項1記載の二酸化炭素透過膜
【請求項3】
上記式(I)中のRが、式−CHR−CHR−O−Rで示され、ここで、各Rが、夫々独立して、水素原子及び炭素数1〜2のアルキル基より成る群から選ばれ、Rが、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる、請求項1記載の二酸化炭素透過膜
【請求項4】
上記式(I)中のRが、メトキシエチル基、エトキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基及び1−エトキシ−2−プロピル基より成る群から選ばれる、請求項1記載の二酸化炭素透過膜
【請求項5】
nが100〜5,000の整数を示す、請求項1〜のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
【請求項6】
ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物又はこれらの混合物中の二酸化炭素分離用である、請求項1〜のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
【請求項7】
上記式(I)で示されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー又はコポリマーが、8−10族金属化合物を触媒として重合されたものである、請求項1〜のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜からなる分離膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離材に関し、更に詳しくは、プロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー、コポリマー、又は、これらのポリマーブレンドからなる二酸化炭素分離材、及び、該分離材から形成された二酸化炭素分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電の排ガス、バイオマスの熱分解ガス、あるいは油田のオフガス等からの二酸化炭素の分離精製に、種々の高分子材料の利用が検討されている。例えば、ポリ置換アセチレンは、その構造に特異な性質を有することが知られており、とりわけ、ビニルポリマーに比較して剛直な主鎖構造を有し、嵩高い置換基の存在により高い気体透過性能を示すことが知られている(非特許文献1)。
【0003】
例えば、ポリ(ジフェニルアセチレン)のようなポリ置換アセチレン類は、高い物質透過性、選択透過性と優れた熱安定性を有することが知られている(特許文献1)。しかし、触媒に五塩化タンタル、助触媒にテトラブチルスズを用いて得られる、これらのポリ置換アセチレン類においては、得られるポリマーの幾何異性及び高次構造の詳細、並びに、二酸化炭素の透過及び分離性能については不明である。一方、重合反応機構からは、シス型とトランス型とが混合した重合体では、非晶質を多く含むことが推察される(非特許文献2)。このようなポリ置換アセチレン類では、気体透過性に寄与する分子間隙のサイズ及び体積に分布が生じ、高度な選択透過性能を発現するには不利である。また、透過に関わる気体分子との接触により、その性質が経時的に変化していく恐れもある。更には、複雑な構造を有するポリ(ジフェニルアセチレン)類を工業的に大量に合成することは製造コストからも困難である。
【0004】
重合触媒にロジウム(Rh)錯体を用いてp−メチルフェニルアセチレンのような置換アセチレンを重合した際には、立体規則的に重合が進行し、主鎖の二重結合がシス型のポリ置換アセチレンが得られることが知られている(非特許文献3)。このようにして得られた主鎖の二重結合がシス型のポリ置換アセチレンはらせん構造を形成する。また、チオール基を有するRh触媒を金基板上に化学結合により固定化し、基板上に垂直に主鎖の二重結合がシス型のポリアセチレンを配置してなる螺旋型置換ポリアセチレン構造体からなる気体分離膜が知られている(特許文献2)。らせん構造の分子を一方向に配向させることは、機能を有効に利用する一つの手段であると考えられる。しかし、一面が金属基板であるこのような構造体において、気体分子が膜面に対して垂直に透過することは困難であることが推察される。Pdのような金属に対し、水素のような非常に小さな気体分子が僅かに溶解する現象は知られているが、二酸化炭素程度のサイズを有する気体分子であれば、金基板を透過することは更に困難である。また、金基板上に化学結合しているポリ置換アセチレンを、その構造を破壊することなく基板上から剥離することは困難である。更には、このような複雑なプロセスを経て作製される構造体を、工業的に大量かつ安価に製造することは極めて困難である。
【0005】
これらの問題を解決すべく、本願の発明者らは、既に、一般式(I)
【化1】
[式(I)中、nは10〜100,000の整数である。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜7の複素環基、M(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)のいずれかを表す]で表されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体からなる二酸化炭素吸着材を出願した(特許文献3)。しかし、該吸着材を分離膜にした際の二酸化炭素の透過性能については記載がなく不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−322293号公報
【特許文献2】特開2008−222796号公報
【特許文献3】特開2010−207787号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T.Masuda,et.al.,J.Am.Chem.Soc.,Vol.105、p.7473−7474、(1983)
【非特許文献2】増田俊夫ら、有機合成化学、第43巻、第8号、p.744−752(1985)
【非特許文献3】田畑昌祥ら、高分子、第55巻、第12号、p.938−941(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力と製造コストとのバランスに極めて優れるばかりではなく、より大きな靱性を有することから繰り返し使用に耐え、従って、より長い寿命を有する二酸化炭素分離材、及び、該分離材から形成された二酸化炭素分離膜を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく種々の検討を試みた。まず、本発明者らは、上記特許文献3における一般式(I)で示される重合体を使用して、二酸化炭素分離材、例えば、二酸化炭素分離膜を製造することを試みた。しかし、該重合体は、二酸化炭素を選択的に吸着する能力には優れているものの、混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力に関しては十分であるとはいえなかった。また、その構造によっては、溶剤に溶解せず、二酸化炭素分離膜自体を製造することが困難であるものも存在した。加えて、該重合体は、その収率が比較的小さく、その結果、二酸化炭素分離材のコスト高を招くものであった。そこで、本発明者らは、更に検討を加え、上記特許文献3における一般式(I)の重合体を改良し、一般式(I)中のRで示される基として、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む一価の炭化水素基を用いれば、該重合体から形成された二酸化炭素分離材が、著しく良好な、二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力を有するばかりではなく、該重合体の収率がより高く、加えて、二酸化炭素分離膜等として使用した際に、より長い寿命を有することを見出し、本発明を完成するに至った。また、特許文献3には、一般式(I)中のRで示される基として、著しく多数の基が記載されている。しかし、それらの基の全てに関して、二酸化炭素吸着剤としての効果が実施例において実証されているものではない。また、特許文献3の実施例はあくまで二酸化炭素吸着剤としてものであり、二酸化炭素分離材としての効果、即ち、混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力については何ら検討されていない。
【0010】
即ち、本発明は
(1)下記式(I)
【化2】
(式(I)中、nは10〜100,000の整数を示し、Rは、炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、鎖状又は環状の一価の脂肪族炭化水素基を示す。)
で示されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー若しくはコポリマー、又は、これらのポリマーブレンドからなる二酸化炭素透過膜である。
【0011】
好ましい態様として、
)上記式(I)中のRが、炭素数2〜15のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、及び、これらの組合せの基より成る群から選ばれ、ここで、上記の基は、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、炭素数2〜10のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、及び、これらの組合せの基より成る群から選ばれ、ここで、上記の基は、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、炭素数2〜7のアルキル基、炭素数3〜5のシクロアルキル基、及び、これらの組合せの基より成る群から選ばれ、ここで、上記の基は、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、式−CHR−CHR−O−Rで示され、ここで、各Rが、夫々独立して、水素原子及び炭素数1〜2のアルキル基より成る群から選ばれ、Rが、炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、式−CHR−CHR−O−Rで示され、ここで、各Rが、夫々独立して、水素原子及びメチル基より成る群から選ばれ、Rが、炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、メトキシエチル基、エトキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基及び1−エトキシ−2−プロピル基より成る群から選ばれる、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)上記式(I)中のRが、メトキシエチル基又はエトキシエチル基である、上記(1)記載の二酸化炭素透過膜
)nが100〜5,000の整数を示す、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
10)ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物又はこれらの混合物中の二酸化炭素分離用である、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
11)ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素又はこれらの混合物中の二酸化炭素分離用である、上記(1)〜()のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
12)上記式(I)で示されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー又はコポリマーが、8−10族金属化合物を触媒として重合されたものである、上記(1)〜(11)のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜
13)上記(1)〜(12)のいずれか一つに記載の二酸化炭素透過膜からなる分離膜
を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、式(I)で示されるホモポリマー若しくはコポリマー、又は、これらのポリマーブレンドから構成される二酸化炭素分離材は、式(I)中のRが、少なくとも1個の酸素原子を、好ましくは炭素・炭素結合中に含むことから、混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力に著しく優れている。従って、これらの二酸化炭素分離材から製造された分離膜によれば、著しく良好な選択性で二酸化炭素を透過して分離精製することができる。加えて、式(I)で示されるホモポリマー及びコポリマーは、比較的高い収率で製造され得る故、二酸化炭素分離材をより安価に製造することができる。このように、本発明の二酸化炭素分離材及びそれから形成された二酸化炭素分離膜は、二酸化炭素を選択的に透過して分離する能力と製造コストとのバランスに極めて優れている。更に、本発明の二酸化炭素分離材及びそれから形成された二酸化炭素分離膜は、より大きな靱性を有することから繰り返し使用に耐え、従って、より長い寿命を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の二酸化炭素分離材は、上記式(I)で示されるプロピオール酸又はその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型のホモポリマー若しくはコポリマー(以下、単に「重合体」と言うことがある。)、又は、これらのポリマーブレンドから構成される。該重合体は、主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつ、これらのらせん構造が凝集した結晶を含有するものである。ここで、ホモポリマーとは、上記式(I)のRが全て同一のモノマーからなるものであり、コポリマーとは、上記式(I)のRが異なるモノマーからなるものである。
【0014】
上記式(I)における平均重合度nは、10〜100,000、好ましくは100〜100,000、より好ましくは100〜5,000の整数である。nを10以上とすることにより重合体から得られた成形体の機械的強度がより優れるものとなり、100以上とすることにより成形性がより優れるので好ましい。一方、重合体の製造コスト及び成形コストを考慮すると、nは10,000以下であることが好ましい。nが10〜100,000の重合体の数平均分子量は、1,000〜30,000,000程度となる。下記に詳述する反応(重合)条件において、反応温度を低くし、反応時間を短くし、あるいは、プロピオール酸又はその誘導体の濃度を低くすると、得られる重合体の数平均分子量は低くなる。ここで、重合体の平均重合度nは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行い、ポリスチレン標準物質より求めた検量線に基づいて算出することができる。重合体の一次構造は、例えば、H−NMRにより測定することができる。
【0015】
上記式(I)において、Rは、好ましくは炭素・炭素結合中に、少なくとも1個の酸素原子を含む一価の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む、鎖状又は環状の一価の脂肪族炭化水素基を示す。もちろん、これらの鎖状又は環状の一価の脂肪族炭化水素基が組み合わされた基であってもよい。Rは、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜10、更に好ましくは炭素数2〜7のアルキル基を示し、また、好ましくは炭素数3〜12、より好ましくは炭素数3〜8、更に好ましくは炭素数3〜5のシクロアルキル基を示し、また、これらアルキル基及びシクロアルキル基の組合せの基を示す。ここで、上記のアルキル基、シクロアルキル基、及びこれらの組合せの基は、好ましくはその炭素・炭素結合中に、少なくとも1個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個、更に好ましくは1個の酸素原子を含む。
【0016】
式(I)におけるRにおいて、上記のアルキル基であって、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む基としては、例えば、メトキシエチル基、エトキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基、1−エトキシ−2−プロピル基、1−(n−プロポキシ)−2−プロピル基、n−プロポキシメチル基、n−プロポキシエチル基、2−プロポキシメチル基、2−プロポキシエチル基、n−ブトキシメチル基、n−ブトキシエチル基、イソブトキシメチル基、イソブトキシエチル基、1−(n−ブトキシ)−2−プロピル基、1−イソブトキシ−2−プロピル基、メトキシn−プロピル基、メトキシn−ブチル基、メトキシn−ペンチル基、及び、下記式
【化3】
で表される基等が挙げられる。これらのうち、上記式(I)におけるRとしては、式−CHR−CHR−O−Rで示される基が好ましい。ここで、各Rは、夫々独立して、水素原子及び炭素数1〜2のアルキル基、好ましくは、水素原子及びメチル基より成る群から選ばれ、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる。上記式(I)におけるRとしては、より好ましくは、メトキシエチル基、エトキシエチル基、1−メトキシ−2−プロピル基及び1−エトキシ−2−プロピル基より成る群から選ばれる。
【0017】
上記式(I)におけるRにおいて、上記のシクロアルキル基であって、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む基としては、例えば、テトラヒドロピラニル基、ジオキサニル基、トリオキサニル基、ジオキシラニル基、オキシラニル基、ジオキセタニル基、オキセタニル基等が挙げられる。また、上記式(I)におけるRにおいて、上記のアルキル基及びシクロアルキル基の組合せの基であって、その炭素・炭素結合中に少なくとも1個の酸素原子を含む基としては、例えば、上記の式−CHR−CHR−O−Rで示される基のRが、上記のシクロアルキル基であるもの、あるいは、−R−O−CHR−CHRで示される基であって、Rが、上記のシクロアルキル基であるもの等が挙げられる。
【0018】
上記式(I)で示される重合体は、下記の化学反応式で示される反応により合成される。
【0019】
【化4】
【0020】
本発明において、上記式(I)で示されるプロピオール酸又はその誘導体の重合は、通常、有機溶媒中で実行される。該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール等のアルコール;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトン等のケトン;ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、反応速度の観点からアルコールのような極性の高い有機溶媒を使用するのが好ましい。これらの有機溶媒は単独で使用してもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0021】
有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量に特に制限はないが、プロピオール酸又はその誘導体及び有機溶媒混合液の全体中、好ましくは、1〜95質量%であり、より好ましくは70〜95質量%である。有機溶媒の使用量を1質量%以上とすることにより、混合液の粘度を低下せしめて効率的な攪拌が可能となり、95質量%以下とすることにより、実用的な反応速度を維持することができる。
【0022】
本発明において、プロピオール酸又はその誘導体を重合させる際、反応を円滑に進行させるため、触媒を用いることが好ましい。該触媒としては、8−10族金属化合物を用いることが好ましい。好ましく用いられる8−10族金属化合物としては、例えば、ロジウム錯体、パラジウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体、ルテニウム錯体等が挙げられる。
【0023】
ロジウム錯体としては、例えば、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、アセチルアセトナトビス(エチレン)ロジウム、アセチルアセトナトビス(シクロオクテン)ロジウム、アセチルアセトナト(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヘキサフルオロホスフェート、(ノルボルナジエン)トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフルオロボレート、クロロビス(エチレン)ロジウムダイマー、クロロビス(シクロオクテン)ロジウムダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウムダイマー、クロロ(ジシクロペンタジエニル)ロジウムダイマー、クロロ(テトラフルオロベンゾバレレン)ロジウムダイマー等が挙げられる。
【0024】
パラジウム錯体としては、例えば、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムが挙げられる。イリジウム錯体としては、アセチルアセトナト(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、クロロビス(シクロオクテン)イリジウムダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムダイマー等が挙げられる。白金錯体としては、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)白金等が挙げられる。ルテニウム錯体としては、例えば、第2世代グラブス−ホベイダ触媒等が挙げられる。
【0025】
これらのうち、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウムダイマー、クロロ(テトラフルオロベンゾバレレン)ロジウムダイマーが好ましく、重合活性並びに工業的な入手性の観点からクロロ(ノルボルナジエン)ロジウムダイマーがより好ましい。
【0026】
上記触媒の使用量は、反応(重合)用混合液(プロピオール酸又はその誘導体及び前記有機溶媒)1リットル当たり、金属原子換算で0.000001〜10モルの範囲が好ましく、0.0001〜1モルの範囲がより好ましい。触媒の使用量が、金属原子換算で反応(重合)用混合液1L当たり0.000001モル未満であると、反応速度が極めて遅くなる傾向にあり、また10モルを超えてもそれに見合う効果が得られず、触媒コストが増大するのみである。
【0027】
本発明において、プロピオール酸又はその誘導体を重合させる際の反応温度は、−60〜100℃の範囲であるのが好ましく、0〜40℃の範囲であるのがより好ましい。反応温度を−60℃以上とすることにより、反応が適度な時間内に進行し、100℃以下とすることにより、シス型からトランス型への異性化等の副反応を抑制することができる。プロピオール酸又はその誘導体の重合における反応時間は、通常、1分〜48時間の範囲であり、0.5〜10時間の範囲であるのが生産効率の観点から好ましい。通常、反応温度が低い場合は長時間で、反応温度が高い場合は短時間で反応を行うのが好ましい。プロピオール酸又はその誘導体の重合における反応は、通常、常圧下に行われる。
【0028】
反応は通常、下記の手順で行われる。まず、有機溶媒にプロピオール酸又はその誘導体を溶解させた混合液1を準備する。別途、同じ有機溶媒に8−10族金属化合物のような触媒を溶解させた混合液2を準備する。次いで、混合液1と混合液2とを混合し、所定の反応温度に保ちながら撹拌して所定の時間反応させることにより重合体を含む反応液が得られる。
【0029】
また、この重合に際して、得られる重合体に対する溶解度の低い貧溶媒、例えば、アルコール、アセトニトリル、エーテル、酢酸エステル、アセトン、水又はn−ヘキサン等を用いることが好ましい。また、アルコール、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イオン液体又は超臨界液体炭酸ガス等の混合溶媒を用いて、前記プロピオール酸又はその誘導体を室温付近で数時間かけて重合してもよい。このようにして重合された重合体は溶媒中で凝集して沈殿するため、多孔質体又は粉末の形態で得られる。
【0030】
本発明においては、プロピオール酸又はその誘導体の重合工程で得られた反応液から重合体を一般的な手法によって単離、精製することができる。例えば、得られた反応液をメタノール、水又はn−ヘキサンのような貧溶媒中に添加して重合体を沈殿させ、ろ過により分離後、乾燥することにより、重合体を取得することができる。該重合体は、必要に応じて、更に再沈処理を施すか、貧溶媒とソックスレー抽出器等を用いて、残留する金属化合物や低分子量成分を除去することができる。
【0031】
本発明の二酸化炭素分離材の形状は特に制限されず、重合体を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えば、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体、粉末状、各種異形成形体、繊維、中空糸、織布、編布、不織布などを挙げることができる。特に本材料を分離膜として用いる場合には、気体分子の透過性、選択性、処理効率の観点よりフィルムであることが好ましく、処理効率の観点からは中空糸、あるいは該重合体でコーティングされた成形体や中空糸であることがより好ましい。
【0032】
本発明の二酸化炭素分離材として用いる重合体をフィルム状で用いる場合には、二酸化炭素を選択的に透過して分離させることができるフィルムとして利用することができる。フィルムの成形方法としては、本発明の二酸化炭素分離材を適当な溶媒に溶解させて液状の有機重合体組成物を調製し、該液状の有機重合体組成物を、剥離性の基材又は支持体上に塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法等を採用することによって製造することができる。本発明の二酸化炭素分離材を溶解させる溶媒には、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン等が例示される。
【0033】
離型性の基材又は支持体への、本発明の二酸化炭素分離材の塗工方法は特に制限されず、液状の塗工材料を用いる、従来から知られている塗工方法のいずれもが採用できる。例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法等の塗工方法を採用することができる。
【0034】
本発明の二酸化炭素分離材は単独のままで使用できるが、必要に応じて、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体又は紙等の天然若しくは合成繊維、あるいはガラス若しくはアルミナ等の無機繊維と組み合わせて複合化してもよい。また、この二酸化炭素分離材の形状としては、バルク体、織布、不織布又はフィルム等が例示される。
【0035】
本発明の二酸化炭素分離材は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、難燃剤、他の近赤外線吸収性化合物、紫外線吸収剤、色調補正剤、染料、酸化防止剤、その他の特殊機能剤の添加剤の1種又は2種以上を含有することができる。
【0036】
重合体からなる本発明の二酸化炭素分離材は、種々の気体の中に混在している二酸化炭素を選択的に分離し得るが、好ましくは、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)又はそれらの混合物、特に、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素又はそれらの混合物中に混在している二酸化炭素を選択的に分離するのに有効である。
【0037】
以下の実施例において、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
実施例及び比較例における分析及び評価は、下記の通りに実施した。
【0039】
(1)重合体の分子構造:
[溶液H−NMR]
得られた重合体がクロロホルムに溶解する場合には、溶液H−NMR(核磁気共鳴)測定を行い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
【0040】
<分析条件>
装置:500MHz超伝導核磁気共鳴装置 JEOL JNM−ECA500(商標、日本電子株式会社製)
溶媒:0.03v/v%TMS含有重クロロホルム(ISOTEC社製)
濃度:20mg/ミリリットル
温度:20℃
積算回数:32回
【0041】
[固体13C−NMR(CP/MAS法)]
得られた重合体がクロロホルムに溶解しない場合には、固体13C-NMR(核磁気共鳴)測定を行い、アダマンタンを基準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
【0042】
<分析条件>
装置:500MHz超伝導核磁気共鳴装置 JNM−ECA500(商標、日本電子株式会社製)
温度:20℃
積算回数:5,000回
【0043】
(2)重合体の分子量測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行い、ポリスチレン換算分子量として算出した。測定条件の詳細を以下に示す。
【0044】
<分析条件>
装置 :ゲルパーミエーションクロマトグラフィー JASCO GPC−900(商標、日本分光株式会社製)
カラム:Shodex K−806L(商標、昭和電工株式会社製)を2本連結(カラム温度:40℃)
移動相:クロロホルム(高速液体クロマトグラフィー用)(純正)
流速:1.0ミリリットル/分
検出器:RI
濾過:孔径0.45μmのフィルター
濃度:0.5mg/ミリリットル
注入量:20μL
標準物質:ポリスチレンスタンダード(Mw:800〜1,090,000)
【0045】
(3)気体透過測定
<分析条件>
装置:気体透過率測定装置 K−315−01(商標、ツクバリカセイキ株式会社製)
高圧側圧力:133.32kPa(最大値)
減圧側圧力:1333Pa(最大値)
セル口径:直径20mm
温度:25℃
【0046】
以下、酸素をO、窒素をN、二酸化炭素をCO、メタンをCHと示すことがある。
【0047】
(実施例1)
<ポリ(メトキシエチルプロピオレート)の合成>
U型重合管の片側にメトキシエチルプロピオレートモノマー1.28g(10.0mmol)を入れ、他方にクロロ(ノルボルナジエン)ロジウムダイマー46mg(0.1mmol)を入れ、蒸留により精製した脱水メタノール2.5mLを、夫々に加えた。液体窒素中で冷却しながら、真空ポンプで系内の減圧脱気を行ったのち、系内で、上記の両物質が良く混合するように30秒間程度U型重合管を手で振り、次いで、恒温振とう器中、4時間、40℃で重合させた。500mLビーカーにメタノール300mLを入れ、メタノールでU型重合管を洗浄しながら重合終了後の反応液を、該ビーカー中に取った。10分間撹拌し、その後、沈殿が形成されるまで静置した。上澄みのみを吸引ろ過により取り除き、メタノール150mLを沈殿に加え、再度10分間撹拌した。同じ操作を2回繰り返し、最後に沈殿を回収した。該沈殿をデシケーター中で12時間以上減圧乾燥させた。重合体の約0.95gが得られた(収率:74%)。
【0048】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、3.38ppm(−OC:3H)、3.56ppm(−COCH:2H)、3.95及び4.11ppm(−COOC−:2H)、6.89ppm(−C=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(メトキシエチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH−CH−O−CH(メトキシエチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は130,000〔重合度≒1015〕であった。
【0049】
<ポリ(メトキシエチルプロピオレート)の気体透過測定>
得られたポリ(メトキシエチルプロピオレート)50mgをジクロロメタン2mLに溶解させ、ニトロセルロース製の微多孔膜(MILLIPORE社製)にキャストし、乾燥して溶媒を完全に除去する方法で成膜した。ポリ(メトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例2)
<ポリ(エトキシエチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.42g(10.0mmol)のエトキシエチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約1.07gが得られた(収率:75%)。
【0051】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、1.20ppm(−CH:3H)、3.53ppm(−COCHCH:2H)、3.59ppm(−OCCH:2H)、3.96及び4.12ppm(−COOC−:2H)、6.84ppm(−C=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(エトキシエチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH−CH−O−CH−CH(エトキシエチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は130,000〔重合度≒915〕であった。
【0052】
<ポリ(エトキシエチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(エトキシエチルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にして成膜した。ポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(実施例3)
<ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.42g(10.0mmol)の1−メトキシ−2−プロピルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.60gが得られた(収率:42%)。
【0054】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、1.23ppm(−OC:3H)、3.33ppm(−CHC−:3H)、3.46ppm(−C−OCH:2H)、4.91ppm(−CCH−:1H)、7.06ppm(−C=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH(CH)−CH−O−CH(1−メトキシ−2−プロピル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は70,000〔重合度≒492〕であった。
【0055】
<ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にして成膜した。ポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例4)
<ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.56g(10.0mmol)の1−エトキシ−2−プロピルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.66gが得られた(収率:42%)。
【0057】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、1.16ppm(−CH−C:3H)、1.24ppm(−OC−CH:2H)、3.32ppm(−C−OCHCH:2H)、3.50ppm(−CHC−:3H)、4.88ppm(−CCH−:1H)、7.00ppm(−C=:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有していたため、主鎖の二重結合がシス型のポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH(CH)−CH−O−CH−CH(1−エトキシ−2−プロピル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は110,000〔重合度≒704〕であった。
【0058】
<ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を用い、更に、溶媒としてトルエンを用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例1)
<ポリ(メチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、0.84g(10.0mmol)のメチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.59gが得られた(収率:70%)。
【0060】
得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であることから、CP/MAS法により固体13C−NMR測定を行った結果、52ppm(−O)、128ppm(=H−)、134ppm(=−)、164ppm(=O)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(メチルプロピオレート)(式(I)中のRが、−CH(メチル基)である。)であることを確認した。得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であり、その数平均分子量を算出することはできなかった。
【0061】
<ポリ(メチルプロピオレート)の気体透過測定>
得られた重合体であるポリ(メチルプロピオレート)は種々の有機溶媒に対して不溶であることから、フィルムに成形することができなかった。従って、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定は不能であった。
【0062】
(比較例2)
<ポリ(エチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、0.98g(10.0mmol)のエチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.61gが得られた(収率:63%)。
【0063】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、1.23ppm(−CH:3H)、3.97ppm(−CCH:2H)、6.86ppm(−C=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(エチルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH−CH(エチル基)である。)]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は22,000〔重合度≒224〕であった。
【0064】
<ポリ(エチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(エチルプロピオレート)を用い、更に溶媒としてクロロホルムを用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例3)
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)の合成>
メトキシエチルプロピオレートモノマーに代えて、1.26g(10.0mmol)のn−ブチルプロピオレートモノマーを用いた以外は、実施例1と同一にして合成した。重合体の約0.44gが得られた(収率:35%)。
【0066】
得られた重合体を重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、0.93ppm(−CH:3H)、1.38ppm(−CCH:2H)、1.59ppm(−CH−C−CH−:2H)、3.76〜3.98ppm(−O−C−CH−:2H)、6.85ppm(−C=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(n−ブチルプロピオレート)[式(I)中のRが、−CH−CH−CH−CH(n−ブチル基)である。]であることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は32,000〔重合度≒254〕であった。
【0067】
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)の気体透過測定>
ポリ(メトキシエチルプロピオレート)に代えて、ポリ(n−ブチルプロピオレート)を用いた以外は、実施例1と同一にした成膜した。ポリ(n−ブチルプロピオレート)を塗布したフィルムについて、CO、CHの各純ガス透過係数(PCO2、PCH4)の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
表1中、透過係数の単位barrer(バーラー)は、1×10−10cm(STP)・cm・cm−2・s−1・cmHg−1を表す。
【0069】
表1に示す結果より、実施例1〜4においては、CHに対するCO2の透過係数比が高く、かつ、その原料(得られた重合体)の収率も高いことから、二酸化炭素を選択的に透過して分離する性質と製造コストとのバランスに極めて優れた二酸化炭素分離膜が得られたことが分かった。加えて、原料の重合度が高いことから、より大きな靱性を有し、二酸化炭素分離膜等を形成した際、その膜等がしなやかで割れ難く、長時間の繰り返し使用に耐え得ることが分かった。実施例1のポリ(メトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の透過係数比は、他の実施例のものより低い値を示したが、その一方で原料であるポリ(メトキシエチルプロピオレート)の収率が著しく高いことから、本発明の効果、即ち、二酸化炭素を選択的に透過して分離する性質と製造コストとのバランスを損なうものではなく、更には、原料の重合度が著しく高く、総合的に見て優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。実施例2のポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の透過係数比が著しく高いばかりではなく、その原料であるポリ(エトキシエチルプロピオレート)の収率も著しく高いものであり、非常に良好な上記バランスを有し、更には、原料の重合度も著しく高く、極めて優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。実施例3及び4のポリ(1−メトキシ−2−プロピルプロピオレート)及びポリ(1−エトキシ−2−プロピルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、いずれも高い透過係数比を示し、また、その原料の収率も比較的高いものであり、良好な上記バランスを有し、更には、原料の重合度も高く、優れた二酸化炭素分離膜であることが分かった。
【0070】
一方、比較例1のポリ(メチルプロピオレート)は、比較的高い収率で得られるものの、各種溶剤に全く溶解しないことから、二酸化炭素分離膜として使用できるものではなかった。比較例2のポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、比較的高い透過係数比及び収率が得られた。しかし、同様にエチル基を有する実施例1及び2のフィルムからなる二酸化炭素分離膜と比較すると、実施例1の二酸化炭素分離膜に対しては透過係数比が高いものの、原料の収率が著しく劣り、著しくコスト高になってしまい、また、実施例2の二酸化炭素分離膜に対しては透過係数比及び原料の収率の両方において著しく劣っており、加えて、実施例1及び2の二酸化炭素分離膜のいずれの原料と比較しても、その原料の重合度は著しく小さく、従って、靱性が小さく、長期間の繰り返し使用に耐え得るものではないことが分かった。このように、比較例2のポリ(エチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜は総合的に評価すると本発明の二酸化炭素分離膜と比較して著しく劣るものであった。比較例3のポリ(n−ブチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、透過係数比及び原料の収率の両方において著しく劣っているばかりではなく、原料の重合度も著しく小さいものであることが分かった。
【0071】
(O及びNの各純ガス透過試験)
実施例2のポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜については、上記の通り、CHに対するCO2の透過係数比が著しく高いばかりではなく、その原料であるポリ(エトキシエチルプロピオレート)の収率も著しく高いものであり、非常に良好なバランスを有するものであったことから、該二酸化炭素分離膜については、更に、O及びNの各純ガス透過係数(PO2、PN2)の測定を行った。その結果、その透過係数は、夫々、89barrer及び31barrerであった。実施例2で測定したCO純ガス透過係数(PCO2)は912barrerであったことから、O及びNに対するCO純ガス透過係数比は、夫々、10.2(PCO2/PO2)及び29.4(PCO2/PN2)であった。
【0072】
以上の結果から、実施例2で得たポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムからなる二酸化炭素分離膜は、O及びNの各純ガスに対しても、二酸化炭素を選択的に透過する性質が高いことが分かった。これらの結果から、実施例2で得たポリ(エトキシエチルプロピオレート)を塗布したフィルムは、二酸化炭素のみを選択的に透過して分離し得ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の、式(I)で示されるホモポリマー若しくはコポリマー、又は、これらのポリマーブレンドから構成される二酸化炭素分離材は、式(I)中のRが、少なくとも1個の酸素原子を含むことから、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、種々の炭化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物及びこれらの混合物中に混在する二酸化炭素を選択的に分離する能力に著しく優れている。加えて、その原料である式(I)で示されるホモポリマー及びコポリマーは、比較的高い収率で製造され得ることから、それから得られる二酸化炭素分離材も低コストで製造され得る。また、その寿命も長い。従って、例えば、天然ガス、メタン発酵ガス、火力発電の排ガス、バイオマス熱分解ガス、油田のオフガス等からの二酸化炭素の分離及び回収に、今後、大いに利用されることが期待される。