【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、基材と、下塗着色塗料を塗装して得られた下塗層と、上塗着色塗料を部分塗装して得られた上塗層と、クリヤー塗料を塗装して得られたクリヤー層とを有した建築用化粧材であって、上塗着色塗料が、着色顔料として無機顔料と有機顔料との両方を含むことを特徴とする建築用化粧材である。
【0011】
また、本発明は、基材上に下塗着色塗料を塗装して下塗層を形成する工程と、上塗着色塗料を部分塗装して上塗層を形成する工程と、クリヤー塗料を塗装してクリヤー層を形成する工程とを含んだ建築用化粧材の製造方法であって、上塗着色塗料が、着色顔料として無機顔料と有機顔料との両方を含むことを特徴とする建築用化粧材の製造方法である。
【0012】
以下、本発明の建築用化粧材及びその製造方法について詳しく説明する。
本発明において、建築用化粧材を製造するために用いられる基材としては、後述する下塗着色塗料を塗装して下塗層を形成することが可能であれば、その材質や形状等が特に制限されるものではなく、従来からこの種の建材に用いられている種々の建築用資材を挙げることができる。その一例として、フレキシブルボード、ケイ酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質材料や、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料や、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機質材料のほか、これら無機質材料、金属材料、及び有機質材料から選ばれた2種以上のものの組合せからなる組合せ材料等を例示することができる。これらの基材については、その表面が平滑なものであってもよく、また、比較的細かな凹凸形状及び/又は比較的大きな凹凸形状を有するものであってもよい。
【0013】
また、下塗着色塗料を塗装して得られる下塗層は、使用する基材の表面の素穴を塞いだり、建築用化粧板の下地色を形成するなどの目的で設けるものであり、従来、この種の建材の製造に用いられている下塗着色塗料を用いることができる。例えば、合成樹脂や着色顔料のほか、必要に応じて溶剤、添加剤、改質剤等を含んだ下塗着色塗料を使用することができ、また、常温硬化型、強制乾燥型、焼付硬化型等の種別についても特に制限されない。
【0014】
このうち、合成樹脂としては、例えば、セルロース樹脂系、ビニル樹脂系、アクリル樹脂系、アミノアクリル樹脂系、アクリルウレタン樹脂系、ポリエステルウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系等が代表的なものとして挙げられる。また、これらの合成樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた型、水に溶解又は分散させた型、無溶剤型、粉体型のいずれの形態でも任意に選択可能である。
【0015】
また、着色顔料としては、一般的な下塗着色塗料と同様に、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン等の各種無機・有機顔料等が挙げられるが、下塗層が色落ちしたり、色の変化が生じると、本発明で目的とするような自然な風合いによる変化を得るための制御が難しくなることから、好ましくは、下塗着色塗料における着色顔料では有機顔料の使用を極力避けて、無機顔料を用いるようにするのがよい。
【0016】
更に、下塗着色塗料には、着色顔料とは別に、体質顔料として硫酸バリウム、タルク、カオリン等の各種のものを併用するようにしてもよく、また、必要に応じて、水、キシレン、トルエン、ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、セロソルブ等の溶剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、硬化促進剤、沈殿防止剤、分散剤等の各種添加剤、改質剤等を適宜使用することができる。
【0017】
基材の表面に下塗着色塗料を塗装する手段については特に制限はなく、従来から採用されているいずれの方法も適用可能であり、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ロールコーター塗装、フローコーター塗装等を適宜選択することができる。下塗着色塗料の塗布量については、選択する基材や下塗着色塗料の種類により適宜変更することが可能であるが、例えば、基材が無機質材料の場合、下塗着色塗料は固形分換算で10〜40g/m
2の範囲で塗装するのがよく、好ましくは、15〜30g/m
2の範囲で塗装するのがよい。すなわち、基材と下塗層の密着性、エフロ成分のブリード抑止効果が低下するのを防ぐためには15g/m
2以上にするのが好適であり、また、乾燥に要する時間の考慮やコスト性のほか、チェッキング等の発生を防いでより平滑な下塗層が形成されやすくすることなどから、30g/m
2以下にするのが好適である。なお、下塗層は、同種の下塗着色塗料を用いたり、或いは異なる下塗着色塗料を用いて重ね塗りし、2層以上を設けるようにしてもよい。
【0018】
また、着色顔料を含んだ上塗塗料を部分塗装して得られる上塗層は、下塗層による着色塗膜に対して模様付けをして、建築用化粧板の意匠性を高めるようにするものである。加えて、本発明では、上塗着色塗料の着色顔料として、無機顔料と有機顔料との両方を用いることで、経年変化により有機顔料の色落ちや色の変化を生じさせて、自然な風合いの変化(エージング)を発現させるようにする。
【0019】
ここで、上塗着色塗料に含める無機顔料としては、一般的に上塗着色塗料に含まれるものを使用することができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、カーボンブラック、黄鉛、オーカー、弁柄、複合酸化物(ニッケル・チタン系、クロム・チタン系、ビスマス・バナジウム系)等が挙げられる。
【0020】
一方、上塗着色塗料に含める有機顔料としては、アゾ系顔料、縮合多環系顔料、染付レーキ顔料等の各種有機顔料を使用することができ、例えば、モノアゾ、ジアゾ系顔料(Pig.No.Red 12,48,112,144,150,170,184,188等)、アゾレーキ顔料(PigNo.Red 49:1,50:1,53:1,57:1,58:2,58:4,60:1等)、キナクリドン系顔料(Pig.No.Red 122、Violet 19等)、ピランスロンレッド(Pig.No.Red 216)、ペリレン系顔料(Pig.No.Red 178,179等)、アンスラキノン系顔料(Pig.No.Red 177)、縮合アゾ系顔料(Pig.No.Red 144,146)、ジケトピロロピロール系顔料(Pig.No.254,255等)
等を例示することができる。
【0021】
詳しくは、主に黄色用の有機顔料として、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ハンザイエローG),2,3(ハンザイエロー10G),4,5(ハンザイエロー5G),6,7,10,11,12(ジスアゾイエローAAA),13,14,16,17,24(フラバントロンイエロー),55(ジスアゾイエローAAPT),61,61:1,65,73,74(ファストイエロー5GX),75,81,83(ジスアゾイエローHR),93(縮合アゾイエロー3G),94(縮合アゾイエロー6G),95(縮合アゾイエローGR),97(ファストイエローFGL),98,99(アントラキノン),100,108(アントラピリミジンイエロー),109(イソインドリノンイエロー2GLT),110(イソインドリノンイエロー3RLT),113,117,120(ベンズイミダゾロンイエローH2G),123(アントラキノンイエロー),124,128(縮合アゾイエロー8G),129,133,138(キノフタロンイエロー),139(イソインドリノンイエロー),147,151(ベンズイミダゾロンイエローH4G),153(ニッケルニトロソイエロー),154(ベンズイミダゾロンイエローH3G),155,156(ベンズイミダゾロンイエローHLR),167,168,172,173(イソインドリノンイエロー6GL),180(ベンズイミダゾロンイエロー)等が挙げられる。
【0022】
また、赤用の有機顔料として、例えば、C.l.ピグメントレッド1(パラレッド),2,3(トルイジンレッド),4,5(lTR Red),6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38(ピラゾロンレッドB),40,41,42,88(チオインジゴボルドー),112(ナフトールレッドFGR),114(ブリリアントカーミンBS),122(ジメチルキナクリドン),123(ペリレンバーミリオン),144,146,149(ペリレンスカーレッド),150,166,168(アントアントロンオレンジ),170(ナフトールレッドF3RK),171(ベンズイミダゾロンマルーンHFM),175(ベンズイミダゾロンレッドHFT),176(ベンズイミダゾロンカーミンHF3C),177,178(ペリレンレッド),179(ペリレンマルーン),185(ベンズイミダゾロンカーミンHF4C),187,188,189(ペリレンレッド),190(ペリレンレッド),194(ペリノンレッド),202(キナクリドンマゼンタ),209(ジクロロキナクリドンレッド),214(縮合アゾレッド),216,5219,220(縮合アゾ),224(ペリレンレッド),242(縮合アゾスカーレット),245(ナフトールレッド),又は、C.I.ピグメントバイオレット19(キナクリドン),23(ジオキサジンバイオレット),31,32,33,36,38,43,50等が挙げられる。
【0023】
更に、青用の有機顔料として、例えば、C.l.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6(以上いずれもフタロシアニンブルー),16(無金属フタロシアニンブルー),17:1,18(アルカリブルートナー),19,21,22,25,56,60(スレンブルー),64(ジクロロインダントロンブルー),65(ビオラントロン),66(インジゴ)等を挙げることができる。更に、黒用の有機顔料としては、アニリンブラック(C.l.ピグメントブラック1)等の黒色有機顔料を用いることができる。
【0024】
更にまた、黄、赤又は青用以外の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1,2,5,7,13,14,15,16(バルカンオレンジ),24,31(縮合アゾオレンジ4R),34,36(ベンズイミダゾロンオレンジHL),38,40(ピラントロンオレンジ),42(イソインドリノンオレンジRLT),43,51,60(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),62(ベンズイミダゾロン系不溶性モノアゾ顔料),63;C.I.ピグメントグリーン7(フタロシアニングリーン),10(グリーンゴールド),36(塩臭素化フタロシアニングリーン),37,47(ビオラントロングリーン);あるいはC.I.ピグメントブラウン1,2,3,5,23(縮合アゾブラウン5R),25(ベンズイミダゾロンブラウンHFR),26(ペリレンボルドー),32(ベンズイミダゾロンブラウンHFL)等が挙げられる。
【0025】
なかでも、自然石模様、大理石模様、タイル模様、木目模様、レンガ模様等の外観模様を呈する建築用化粧材として、経年による自然な風合いの変化を再現するには、好適には、有機顔料として、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントオレンジ、又は、C.I.ピグメントブラウンを用いるのがよい。なお、有機顔料は1種のみを用いてもよく、2種以上を配合して用いるようにしてもよい。
【0026】
また、上塗着色塗料の着色顔料における有機顔料と無機顔料との配合割合については、好ましくは、質量比で有機顔料:無機顔料=1:9〜9:1の範囲であるのがよく、より好ましくは、質量比で有機顔料:無機顔料=1.5:8.5〜5.0:5.0の範囲であるのがよい。有機顔料の比率が1:9の割合より少なくなると、場合によっては、本発明で目的とするような経年変化を再現することが難しくなるおそれがある。反対に有機顔料の比率が9:1の割合より多くなると、有機顔料の色の変化や色落ちが目立ちすぎるようになり、自然な風合いの変化を再現するのが難しくなるおそれがある。
【0027】
ここで、経年による自然な風合いの変化(エージング)の程度を定量的に規定することは困難であり、色の種類や模様付け等によっても変わる可能性があるため、一概に特定することはできないが、下記実施例で説明するように、アイスーパーUVテスター(岩崎電気社製)試験時間200時間における促進耐候性試験の前後で色差ΔE*が1.5〜20.0、好ましくは3.0〜6.0になるように有機顔料と無機顔料とを配合した上塗着色塗料を用いるようにするのがよい。ここで、上記色差とは、二つの色の間の隔たりを数値化した値であり、次のように求めることができる。すなわち、JIS−Z−8729に規定されるL*・a*・b*表色系色度図において、二つの色の間のa*軸方向の差Δa*、b*軸方向の差Δb*、L*軸方向の差ΔL*を以下の式1に代入することにより、色差ΔE*が得られる。
ΔE*={(Δa*2乗)+(Δb*2乗)+(ΔL*2乗)}1/2乗 …式1
【0028】
また、上塗着色塗料は、着色顔料以外については、従来からこの種の建材で用いられている一般的な上塗着色塗料と同様にすることができ、アクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アルキド樹脂系、ポリブタジエン樹脂系等の合成樹脂が挙げられる。また、これらの合成樹脂を有機溶剤に溶解又は分散させた型、水に溶解又は分散させた型、無溶剤のいずれの形態でも選択可能である。更に上塗着色塗料には、着色顔料とは別に、必要に応じて水、有機溶剤、体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、成膜助剤、防腐剤、紫外線吸収剤、表面調整剤等の各種添加剤を含んだものを例示することができる。ここで、上塗着色塗料における着色顔料(無機顔料と有機顔料と合計)の含有量については、塗料中に0.02〜70質量%含まれるようにするのが好ましい。
【0029】
上塗着色塗料を塗装する手段について、本発明では基材表面の全部に対して上塗層を設けるのではなく、部分的な模様付けを行うものであることから、そのような部分塗装が行える公知の手段を採用すればよい。例えば、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装、フレキソ印刷、グラビヤ印刷、インクジェット印刷等を挙げることができ、いずれか1種又は2種以上の手段を組み合わせるようにしてもよい。
【0030】
また、部分模様付けの形態について、タイル模様やレンガ模様を呈する建築用化粧材を製造する場合を例に説明すると、例えば、凹部と凸部を有しているタイルやレンガ調を模した基材に対し、下塗層を全面に形成した後、基材の凸部に相当する部分の一部又は全部に上塗着色塗料を塗装すれば、目地(凹部)の部分は、上塗層による部分模様付けがなされないことになる。上述したように、上塗層には着色顔料として無機顔料と有機顔料とが含まれ、経時的に有機顔料が色落ちしたり、色の変化が生じることから、基材の凸部では、上塗層における部分的な変化と下塗層による着色塗膜とが相まって、自然な風合いの変化を再現することができる。
【0031】
また、上記のようなタイル模様やレンガ模様を呈する建築用化粧材を製造する場合、エヤレススプレー塗装やエアスプレー塗装では上塗着色塗料は固形分換算で2〜15g/m
2の範囲で塗装するのがよく、好ましくは、4〜10g/m
2の範囲で塗装するのがよい。すなわち、塗布を安定して行うようにするには4g/m
2以上とし、また、チェッキングや膨れ等を発生させずにより平滑な塗面を得るには10g/m
2以下にするのが好適である。
【0032】
上記以外にも、例えば、凹凸を有さない木目調の平らな基材に上塗着色塗料を部分塗装したりして、建築用化粧材を製造するようにしても勿論よく、上塗着色塗料による部分塗装はこれらの場合に制限されるものではない。また、下塗着色塗料や上塗着色塗料とは色彩が異なる中塗着色塗料を用意し、例えば、上塗着色塗料による部分塗装に先駆けて、基材の凸部に相当する部分にスポンジロール塗装やゴムロール塗装機等で中塗着色塗料を塗装し、その中塗層に対して上塗着色塗料を部分塗装するなどして、重畳的な模様付けを行うようにしてもよい。
【0033】
また、本発明における建築用化粧材の表面には、クリヤー塗料を塗装して得られたクリヤー層を備えるようにする。ここで、クリヤー塗料については、従来一般に用いられているクリヤー塗料を使用することができ、特に制限されないが、例えば、アクリル共重合体、ヒンダードアミン基含有アクリル共重合体、加水分解性シリル基含有アクリル共重合体、含フッ素共重合体、加水分解性シリル基含有含フッ素共重合体、及びアルコキシシラン縮合体からなる群から選ばれる少なくとも1種をバインダーとして含むクリヤー塗料であれば、建築用化粧材自体に優れた耐候性を付与させることができる点で好ましい。
【0034】
また、クリヤー塗料には、透明性を失わない程度で、艶消し剤を含む体質顔料、着色顔料、或いはカラーマイカ、ウレタン系、アクリル系着色ビーズ、ウレタン系、アクリル系透明ビーズ、鱗片状黒鉛、鱗片状酸化鉄、メッキ処理ガラスフレーク、メッキ処理マイカ、パール顔料、アルミフレーク、アルミ箔カラークリヤー塗布切断品等の各種顔料類を配合してもよく、また、紫外線吸収剤や酸化防止剤等を添加してもよい。
【0035】
クリヤー塗料を塗装する手段については特に制限はなく、例えば、常法のエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、ロールコーター塗装、フローコーター塗装等公知の塗装方法を使用して塗装することができる。