(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1に係るクリップ取付座を適用した自動車のドアトリムの模式図である。
【
図2】
図1のドアトリムにおける第1のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【
図3】
図2の第1のクリップ取付座の平面図である。
【
図4】
図2の第1のクリップ取付座の正面図である。
【
図5】
図2の第1のクリップ取付座の側面図である。
【
図6】
図2のクリップを第1のクリップ取付座に装着するときのクリップの首部と第1のクリップ取付座との関係を説明する模式図であり、クリップを装着する前の状態を示している。
【
図7】
図6において、クリップを装着している途中の状態を示している。
【
図8】
図7において、クリップの装着が完了した状態を示している。
【
図9】
図8において、クリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用した状態を示している。
【
図10】
図9において、クリップに対して第1の荷重を超える第2の荷重が作用した状態を示している。
【
図11】
図10において、クリップがクリップ取付座から取り外された状態を示している。
【
図12】
図1のドアトリムにおける第2のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【
図13】
図1のドアトリムにおける第3のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【
図14】
図1のドアトリムにおける第4のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【
図15】実施例2に係る第1のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【
図17】
図15のクリップを第1のクリップ取付座に装着するときのクリップの首部と第1のクリップ取付座との関係を説明する模式図であり、クリップを装着する前の状態を示している。
【
図18】
図17において、クリップを装着している途中の状態を示している。
【
図19】
図18において、クリップの装着が完了した状態を示している。
【
図20】
図19において、クリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用した状態を示している。
【
図21】
図20において、クリップに対して第1の荷重を超える第2の荷重が作用した状態を示している。
【
図22】
図21において、クリップがクリップ取付座から取り外された状態を示している。
【
図23】従来技術におけるクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、
図1〜14を用いて説明する。はじめに、実施例1に係る内装部品1とクリップ3とを個別に説明していく。
【0011】
最初に、内装部品1から説明していく。この内装部品1は、
図1に示すように、例えば、自動車のドアトリムである。この内装部品1の内面(反意匠面)の四隅には、後述するクリップ3の上下の鍔部34a、34bがクリップ装着面22の表裏を挟み込むことで、クリップ3を装着できるクリップ取付座2(第1のクリップ取付座2a、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2d)が形成されている(
図2、12〜14参照)。
【0012】
これら4箇所のクリップ取付座2のうち、第1のクリップ取付座2aは、その装着孔24の内径が後述するクリップ3の首部34cの外径より僅かに大きくなるように設定されている。すなわち、第1のクリップ取付座2aの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向および/または前後方向の組み付け誤差を吸収できないような基準孔となるように設定されている(
図1、2参照)。
【0013】
これに対し、第2のクリップ取付座2bの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向の組み付け誤差を吸収可能な縦長孔となるように設定されている(
図1、12参照)。また、第3のクリップ取付座2cの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の前後方向の組み付け誤差を吸収可能な横長孔となるように設定されている(
図1、13参照)。また、第4のクリップ取付座2dの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向および前後方向の組み付け誤差を吸収可能な大孔となるように設定されている(
図1、14参照)。
【0014】
ここで、第1のクリップ取付座2aについて詳述する。なお、
図2と12〜14との比較からも明らかなように、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2dは、第1のクリップ取付座2aと比較すると、装着孔24の形状が相違するだけである。そのため、第1のクリップ取付座2aを説明することで、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2dの説明を省略することとする。
【0015】
第1のクリップ取付座2aは、
図2〜5に示すように、内装部品1に対して突出する周壁20と、この周壁20の上側を塞ぐように形成されているクリップ装着面22とから内装部品1に対して一体を成すように剛性を有する合成樹脂によって成形されている。
【0016】
この周壁20の一部は、
図2から明らかなように、開放されている。すなわち、この周壁20の一部(後述するガイド溝26側の一部)には、開口20aが形成されている。一方、このクリップ装着面22には、クリップ1の首部34cを装着可能な装着孔24と、開口20a側の縁から受け入れたクリップ1の首部34cを装着孔24に案内可能なガイド溝26と、ガイド溝26の両縁26aから先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片28とが備えられている。
【0017】
この一対の舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すようにそれぞれ形成されている。この「円弧形状」の記載が、特許請求の範囲に記載の「凹み状」に相当する。また、この一対の舌片28には、ガイド溝26の溝幅を狭めるように張り出した張出部28bがそれぞれ形成されている。なお、この一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、後述するように一対の舌片28が撓んでガイド溝26の両縁26aに底ついたとき、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなるように設定されている(
図7の一部拡大図参照)。内装部品1は、このように構成されている。
【0018】
次に、
図2に戻って、クリップ3を説明していく。このクリップ3は、周知のものであり、そのベースを成す円状の基板体30と、この基板体30の上面から突出したアンカー体32と、この基板体30の下面から突出した装着体34とから、剛性を有する合成樹脂によって一体的に形成されている。基板体30の外周には、上側に皿状に張り出したスタビライザー30aが形成されている。
【0019】
アンカー体32は、車体パネルの取付孔(いずれも図示しない)に挿入可能な膨張体から構成されている。また、アンカー体32の外周には、複数(例えば、4個)の弾性爪32aが形成されている。これにより、車体パネルの取付孔に挿入したアンカー体32を係合できる。したがって、車体パネルにドアトリム1を取り付けることができる。
【0020】
装着体34は、第1のクリップ取付座2aのクリップ装着面22の表裏を挟み込み可能に形成された上下に対を成す鍔部(上鍔部34a、下鍔部34b)と、これら上下の鍔部34a、34bの間を橋渡すクビレ状に形成された首部34c(
図2において、図示しない)とから構成されている。クリップ3は、このように構成されている。
【0021】
続いて、
図2、6〜8を参照して、第1のクリップ取付座2aにクリップ3を装着する手順を説明する。まず、クリップ3のアンカー体32を指(図示しない)で摘み、
図2、6に示す状態から、クリップ3の上下の鍔部34a、34bの間にクリップ装着面22の表裏を挟み込ませるように、クリップ取付座3のガイド溝26に向けてクリップ3の首部34cを挿し込んでいく。
【0022】
すると、
図7に示すように、挿し込まれたクリップ1の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bを押し込むため、一対の舌片28は互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく。これにより、一対の舌片28はガイド溝26の両縁26aに底つき状態となる。この底つき状態のとき、既に説明したように、一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなっている。すなわち、
図7の一部拡大図に示すように、この底つき状態のとき、舌片28の張出部28bの引出線とクリップ3の首部34cの引出線との間には距離Sが生じることとなっている。
【0023】
そのため、この底つき状態から、クリップ装着面22の装着孔24に向けてクリップ3の首部34cを押し込んでいくと、押し込まれたクリップ3の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bの先端を撓ませることとなる。これにより、クリップ3の首部34cは両張出部28bの先端(
図7において、距離S)を乗り越える。したがって、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22の装着孔24に装着される(
図8参照)。
【0024】
すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aに装着される。この装着のとき、従来技術と同様に、装着孔24に挿し込む方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用しないため、クリップ3の装着性が悪化する(クリップ3の挿入荷重が大きくなる)こともない。
【0025】
最後に、
図8〜11を参照して、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重(保持荷重より大きく抜去荷重より小さい荷重)が作用した場合を説明する。
図8に示すように、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、クリップ3の首部34cは、クリップ装着面22の装着孔24からガイド溝26へと移動していく。すると、移動したクリップ3の首部34cが第1のクリップ取付座2aの一対の舌片28の先端の縁28aに到達する。
【0026】
このとき、既に説明したように、舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、一対の舌片28の先端の縁28aは、到達したクリップ3の首部34cを受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(
図9参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が十分に抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。
【0027】
なお、この撓み状態から、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重(抜去荷重より小さい荷重)が作用すると、一対の舌片28は、さらに、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(
図10参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28がより十分に抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより確実に抑制できる。
【0028】
なお、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に抜去荷重が作用すると、
図9、10に示す状態から、一対の舌片28は、互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく。すると、クリップ3の首部34cが撓んだ一対の舌片28を乗り越える。これにより、
図11に示すように、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22のガイド溝26から離脱する。すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aから取り外される。
【0029】
本発明の実施例1に係るドアトリム1の第1のクリップ取付座2aは、上述したように構成されている。この構成によれば、クリップ装着面22には、クリップ1の首部34cを装着可能な装着孔24と、開口20a側の縁から受け入れたクリップ1の首部34cを装着孔24に案内可能なガイド溝26と、ガイド溝26の両縁26aから先端が装着孔24に向けて張り出す一対の舌片28とが備えられている。この舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって移動したクリップ3の首部34cを一対の舌片28の先端の縁28aが受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(
図9参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。すなわち、装着したクリップ3を抜け難くできる。このことは、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重が作用した場合も同様である。なお、このように装着したクリップ3を抜け難くしても、クリップ3の装着のメカニズムは従来と同様である。したがって、クリップ3の装着性が悪化することもない。
【0030】
また、この構成によれば、一対の舌片28には、ガイド溝26の溝幅を狭めるように張り出した張出部28bがそれぞれ形成されている。この一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、一対の舌片28が撓んでガイド溝26の両縁26aに底ついたとき、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなるように設定されている。そのため、第1のクリップ取付座2aにクリップ3を装着するとき、クリップ装着面22の装着孔24に向けてクリップ3の首部34cを挿し込んでいくと、挿し込まれたクリップ3の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bの先端(
図7において、距離S)を乗り越えるため、クリップ3のアンカー体32を摘んだ指に節度感が生じることとなる。そのため、クリップ3の装着を確実に体感できる。したがって、クリップ3の未装着を防止できる。
【0031】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、
図15〜22を用いて説明する。この実施例2のクリップ取付座102は、既に説明した実施例1のクリップ取付座2と比較すると、メンテナンス時におけるクリップ3の取り外しを簡便に実施できる形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1で説明した部材と同一の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。
【0032】
図15〜17に示すように、第1のクリップ取付座102aの舌片28の先端の縁28aにおける内側28cは、円弧が削ぎ落とされた傾斜形状を成すように形成されている。一方、この舌片28の先端の縁28aにおける外側28dは、実施例1のそれと同様に、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。第1のクリップ取付座102aは、このように構成されている。このように構成されている第1のクリップ取付座102aは、
図17〜19に示すように、実施例1の第1のクリップ取付座2aと同様にクリップ3を装着できる。
【0033】
最後に、
図19〜22を参照して、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重(保持荷重より大きく抜去荷重より小さい荷重)が作用した場合を説明する。
図19に示すように、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、クリップ3の首部34cは、実施例1の説明と同様に、クリップ装着面22の装着孔24からガイド溝26へと移動していく。すると、移動したクリップ3の首部34cは第1のクリップ取付座102aの一対の舌片28の先端の縁28aの外側28dに到達する。
【0034】
この外側28dは、既に説明したように、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、この外側28dは、到達したクリップ3の首部34cを受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(
図20参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が十分に抵抗として作用するため、実施例1の説明と同様に、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。
【0035】
なお、この撓み状態から、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重(抜去荷重より小さい荷重)が作用すると、クリップ3の首部34cはクリップ取付座2の一対の舌片28の先端の縁28aの内側28cに到達する。この内側28cは、既に説明したように、傾斜形状を成すように形成されている。そのため、一対の舌片28は、互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく(
図20参照)。
【0036】
このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用しないため、実施例1の説明と異なり、この撓んだ一対の舌片28をクリップ3の首部34cが乗り越える。これにより、
図22に示すように、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22のガイド溝26から離脱する。すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aから取り外される。
【0037】
本発明の実施例2に係るドアトリム1の第1のクリップ取付座102aは、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。また、この構成によれば、第1のクリップ取付座102aの舌片28の先端の縁28aにおける内側28cは、円弧が削ぎ落とされた傾斜形状を成すように形成されている。そのため、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第2の荷重を作用させると、クリップ3の首部34cをクリップ装着面22のガイド溝26から離脱させることができる。すなわち、クリップ3をドアトリム1の第1のクリップ取付座2aから取り外すことができる。したがって、実施例1と比較すると、抜去荷重より小さい荷重でクリップ3をドアトリム1の第1のクリップ取付座2aから取り外すことができる。また、このように抜去荷重より小さい荷重でクリップ3を取り外すことができる。したがって、一対の舌片28に折れ曲がりが生じることなく、クリップ3を取り外した後、再度使用できる。
【0038】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、「内装部品1」が「ドアトリム」である形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「内装部品1」が「各種の樹脂成形品」であっても構わない。もちろん、「内装部品1」にかわって「各種の外装部品」であっても構わない。
【0039】
また、実施例1では、一対の舌片28の先端の縁28aは、円弧形状に形成されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、V字溝形状に形成されていても構わない。