特許第6261951号(P6261951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6261951内装部品または外装部品のクリップ取付座
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261951
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】内装部品または外装部品のクリップ取付座
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20180104BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20180104BHJP
   F16B 5/12 20060101ALI20180104BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20180104BHJP
   F16B 5/10 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B60R13/02 B
   B60R13/04 A
   F16B5/12 Y
   F16B5/06 Y
   F16B5/10 D
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-226892(P2013-226892)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85846(P2015-85846A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 準弥
(72)【発明者】
【氏名】藤井 和樹
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0255065(US,A1)
【文献】 米国特許第03700206(US,A)
【文献】 特開2005−081881(JP,A)
【文献】 実開平04−084905(JP,U)
【文献】 実開昭62−114208(JP,U)
【文献】 特開2000−071766(JP,A)
【文献】 特開2001−328425(JP,A)
【文献】 特開2011−106545(JP,A)
【文献】 米国特許第06594870(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 13/04
F16B 5/06
F16B 5/10
F16B 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内装部品または外装部品に対して段差を介して形成されているクリップ装着面を有しており、
段差は、その一部が開放された周壁から形成されており、
クリップ装着面には、クリップの首部を装着可能な装着孔と、開放側の縁または装着孔の縁から受け入れたクリップの首部を装着孔または開放側の縁に案内可能なガイド溝と、ガイド溝の両縁から先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片と、が備えられており、
ガイド溝にクリップの首部が案内されると、この案内されたクリップの首部によって一対の舌片が互いに遠ざかる方向に撓んでいき、この撓んでいった一対の舌片をクリップの首部が乗り越えると、この乗り越えたクリップの首部が装着孔に装着されるまたは装着孔から離脱する内装部品または外装部品のクリップ取付座であって、
一対の舌片の先端の縁は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって一対の舌片が互いに近づく方向に撓んでいくように凹み状にそれぞれ形成されており、
一対の舌片の先端の縁における内側は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に作用する第1の荷重によって舌片が互いに近づく方向に撓んでいった状態にあるとき、このクリップに対して第1の荷重を超え且つ抜去荷重より小さい第2の荷重が作用すると、この作用した第2の荷重によって一対の舌片が撓み前の状態に戻されるように傾斜形状に形成されていることを特徴とする内装部品または外装部品のクリップ取付座。
【請求項2】
内装部品または外装部品に対して段差を介して形成されているクリップ装着面を有しており、
段差は、その一部が開放された周壁から形成されており、
クリップ装着面には、クリップの首部を装着可能な装着孔と、開放側の縁または装着孔の縁から受け入れたクリップの首部を装着孔または開放側の縁に案内可能なガイド溝と、ガイド溝の両縁から先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片と、が備えられており、
ガイド溝にクリップの首部が案内されると、この案内されたクリップの首部によって一対の舌片が互いに遠ざかる方向に撓んでいき、この撓んでいった一対の舌片をクリップの首部が乗り越えると、この乗り越えたクリップの首部が装着孔に装着されるまたは装着孔から離脱する内装部品または外装部品のクリップ取付座であって、
一対の舌片の先端の縁は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって一対の舌片が互いに近づく方向に撓んでいくように凹み状にそれぞれ形成されており、
一対の舌片には、ガイド溝の溝幅を狭めるように張り出した張出部がそれぞれ形成されており、
一対の舌片は、互いが遠ざかる方向に撓んでいくと、ガイド溝の溝壁に底つくように形成されており、
底つき状態における一対の舌片の両張出部の間隔は、クリップの首部の外径よりも狭くなるように設定されていることを特徴とする内装部品または外装部品のクリップ取付座。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップの首部を装着可能なクリップ装着面を有する内装部品または外装部品のクリップ取付座に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体パネルに自動車の内装部品(例えば、ドアトリム、インストルメントパネル等)を取り付けるとき、例えば、クリップを使用して取り付ける技術が既に知られている。この技術では、内装部品の内面には、ガイド溝を介して装着孔にクリップの首部を装着可能クリップ取付座が形成されている。ここで、下記特許文献1には、図23に示すように、ガイド溝226の両縁226aから先端が装着孔224に向けて張り出す一対の舌片228が形成されたクリップ取付座202が開示されている。この開示のように形成されていると、装着孔224から抜け方向に移動するクリップ203の首部234cに対して一対の舌片228が抵抗として作用するため、クリップ203の意図しない脱落を抑制できる。したがって、自動車の走行時の振動によって、内装部品(図示しない)が脱落してしまうことを抑制できる。また、装着孔224に挿し込む方向に移動するクリップ203の首部234cに対して一対の舌片228が抵抗として作用しないため、クリップ203の装着性が悪化する(クリップ203の挿入荷重が大きくなる)こともない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−81881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、装着したクリップ203の保持荷重を高めるためにクリップ203を装着孔224から抜け難くすると、クリップ203の装着性が悪化する(クリップ203をクリップ取付座に装着し難くなる)という問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、クリップの装着性を悪化させることなく、装着したクリップを抜け難くできるクリップ取付座を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。請求項1に記載の発明は、内装部品または外装部品に対して段差を介して形成されているクリップ装着面を有しており、段差は、その一部が開放された周壁から形成されており、クリップ装着面には、クリップの首部を装着可能な装着孔と、開放側の縁または装着孔の縁から受け入れたクリップの首部を装着孔または開放側の縁に案内可能なガイド溝と、ガイド溝の両縁から先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片と、が備えられており、ガイド溝にクリップの首部が案内されると、この案内されたクリップの首部によって一対の舌片が互いに遠ざかる方向に撓んでいき、この撓んでいった一対の舌片をクリップの首部が乗り越えると、この乗り越えたクリップの首部が装着孔に装着されるまたは装着孔から離脱する内装部品または外装部品のクリップ取付座であって、一対の舌片の先端の縁は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって一対の舌片が互いに近づく方向に撓んでいくように凹み状にそれぞれ形成されており、一対の舌片の先端の縁における内側は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に作用する第1の荷重によって舌片が互いに近づく方向に撓んでいった状態にあるとき、このクリップに対して第1の荷重を超え且つ抜去荷重より小さい第2の荷重が作用すると、この作用した第2の荷重によって一対の舌片が撓み前の状態に戻されるように傾斜形状に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、クリップ取付座に装着状態のクリップに対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって移動したクリップの首部を一対の舌片の先端の縁が受け止める。したがって、一対の舌片は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく。このように一対の舌片が撓んでいくと、装着孔から抜け方向に移動するクリップの首部に対して一対の舌片が抵抗として作用するため、クリップの意図しない脱落をより抑制できる。すなわち、装着したクリップを抜け難くできる。なお、このように装着したクリップを抜け難くしても、クリップの装着のメカニズムは従来と同様である。したがって、クリップの装着性が悪化することもない。
また、この構成によれば、クリップ取付座に装着状態のクリップに対して抜け方向に第2の荷重を作用させると、クリップの首部をクリップ装着面のガイド溝から離脱させることができる。すなわち、クリップをクリップ取付座から取り外すことができる。したがって、請求項1と比較すると、抜去荷重より小さい荷重でクリップをクリップ取付座から取り外すことができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、内装部品または外装部品に対して段差を介して形成されているクリップ装着面を有しており、段差は、その一部が開放された周壁から形成されており、クリップ装着面には、クリップの首部を装着可能な装着孔と、開放側の縁または装着孔の縁から受け入れたクリップの首部を装着孔または開放側の縁に案内可能なガイド溝と、ガイド溝の両縁から先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片と、が備えられており、ガイド溝にクリップの首部が案内されると、この案内されたクリップの首部によって一対の舌片が互いに遠ざかる方向に撓んでいき、この撓んでいった一対の舌片をクリップの首部が乗り越えると、この乗り越えたクリップの首部が装着孔に装着されるまたは装着孔から離脱する内装部品または外装部品のクリップ取付座であって、一対の舌片の先端の縁は、装着孔に装着されたクリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって一対の舌片が互いに近づく方向に撓んでいくように凹み状にそれぞれ形成されており、一対の舌片には、ガイド溝の溝幅を狭めるように張り出した張出部がそれぞれ形成されており、一対の舌片は、互いが遠ざかる方向に撓んでいくと、ガイド溝の溝壁に底つくように形成されており、底つき状態における一対の舌片の両張出部の間隔は、クリップの首部の外径よりも狭くなるように設定されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、クリップ取付座に装着状態のクリップに対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって移動したクリップの首部を一対の舌片の先端の縁が受け止める。したがって、一対の舌片は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく。このように一対の舌片が撓んでいくと、装着孔から抜け方向に移動するクリップの首部に対して一対の舌片が抵抗として作用するため、クリップの意図しない脱落をより抑制できる。すなわち、装着したクリップを抜け難くできる。なお、このように装着したクリップを抜け難くしても、クリップの装着のメカニズムは従来と同様である。したがって、クリップの装着性が悪化することもない。
また、この構成によれば、クリップ取付座にクリップを装着するとき、クリップ装着面の装着孔に向けてクリップの首部を挿し込んでいくと、挿し込まれたクリップの首部が一対の舌片の両張出部の先端を乗り越えるため、クリップのアンカー体を摘んだ指に節度感が生じることとなる。そのため、クリップの装着を確実に体感できる。したがって、クリップの未装着を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係るクリップ取付座を適用した自動車のドアトリムの模式図である。
図2図1のドアトリムにおける第1のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
図3図2の第1のクリップ取付座の平面図である。
図4図2の第1のクリップ取付座の正面図である。
図5図2の第1のクリップ取付座の側面図である。
図6図2のクリップを第1のクリップ取付座に装着するときのクリップの首部と第1のクリップ取付座との関係を説明する模式図であり、クリップを装着する前の状態を示している。
図7図6において、クリップを装着している途中の状態を示している。
図8図7において、クリップの装着が完了した状態を示している。
図9図8において、クリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用した状態を示している。
図10図9において、クリップに対して第1の荷重を超える第2の荷重が作用した状態を示している。
図11図10において、クリップがクリップ取付座から取り外された状態を示している。
図12図1のドアトリムにおける第2のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
図13図1のドアトリムにおける第3のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
図14図1のドアトリムにおける第4のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
図15】実施例2に係る第1のクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
図16図15の第1のクリップ取付座の平面図である。
図17図15のクリップを第1のクリップ取付座に装着するときのクリップの首部と第1のクリップ取付座との関係を説明する模式図であり、クリップを装着する前の状態を示している。
図18図17において、クリップを装着している途中の状態を示している。
図19図18において、クリップの装着が完了した状態を示している。
図20図19において、クリップに対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重が作用した状態を示している。
図21図20において、クリップに対して第1の荷重を超える第2の荷重が作用した状態を示している。
図22図21において、クリップがクリップ取付座から取り外された状態を示している。
図23】従来技術におけるクリップ取付座の斜視図であり、クリップの装着前の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を、図1〜14を用いて説明する。はじめに、実施例1に係る内装部品1とクリップ3とを個別に説明していく。
【0011】
最初に、内装部品1から説明していく。この内装部品1は、図1に示すように、例えば、自動車のドアトリムである。この内装部品1の内面(反意匠面)の四隅には、後述するクリップ3の上下の鍔部34a、34bがクリップ装着面22の表裏を挟み込むことで、クリップ3を装着できるクリップ取付座2(第1のクリップ取付座2a、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2d)が形成されている(図2、12〜14参照)。
【0012】
これら4箇所のクリップ取付座2のうち、第1のクリップ取付座2aは、その装着孔24の内径が後述するクリップ3の首部34cの外径より僅かに大きくなるように設定されている。すなわち、第1のクリップ取付座2aの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向および/または前後方向の組み付け誤差を吸収できないような基準孔となるように設定されている(図1、2参照)。
【0013】
これに対し、第2のクリップ取付座2bの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向の組み付け誤差を吸収可能な縦長孔となるように設定されている(図1、12参照)。また、第3のクリップ取付座2cの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の前後方向の組み付け誤差を吸収可能な横長孔となるように設定されている(図1、13参照)。また、第4のクリップ取付座2dの装着孔24は、車体パネルPに対するドアトリム1の上下方向および前後方向の組み付け誤差を吸収可能な大孔となるように設定されている(図1、14参照)。
【0014】
ここで、第1のクリップ取付座2aについて詳述する。なお、図2と12〜14との比較からも明らかなように、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2dは、第1のクリップ取付座2aと比較すると、装着孔24の形状が相違するだけである。そのため、第1のクリップ取付座2aを説明することで、第2のクリップ取付座2b、第3のクリップ取付座2c、第4のクリップ取付座2dの説明を省略することとする。
【0015】
第1のクリップ取付座2aは、図2〜5に示すように、内装部品1に対して突出する周壁20と、この周壁20の上側を塞ぐように形成されているクリップ装着面22とから内装部品1に対して一体を成すように剛性を有する合成樹脂によって成形されている。
【0016】
この周壁20の一部は、図2から明らかなように、開放されている。すなわち、この周壁20の一部(後述するガイド溝26側の一部)には、開口20aが形成されている。一方、このクリップ装着面22には、クリップ1の首部34cを装着可能な装着孔24と、開口20a側の縁から受け入れたクリップ1の首部34cを装着孔24に案内可能なガイド溝26と、ガイド溝26の両縁26aから先端が装着孔に向けて張り出す一対の舌片28とが備えられている。
【0017】
この一対の舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すようにそれぞれ形成されている。この「円弧形状」の記載が、特許請求の範囲に記載の「凹み状」に相当する。また、この一対の舌片28には、ガイド溝26の溝幅を狭めるように張り出した張出部28bがそれぞれ形成されている。なお、この一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、後述するように一対の舌片28が撓んでガイド溝26の両縁26aに底ついたとき、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなるように設定されている(図7の一部拡大図参照)。内装部品1は、このように構成されている。
【0018】
次に、図2に戻って、クリップ3を説明していく。このクリップ3は、周知のものであり、そのベースを成す円状の基板体30と、この基板体30の上面から突出したアンカー体32と、この基板体30の下面から突出した装着体34とから、剛性を有する合成樹脂によって一体的に形成されている。基板体30の外周には、上側に皿状に張り出したスタビライザー30aが形成されている。
【0019】
アンカー体32は、車体パネルの取付孔(いずれも図示しない)に挿入可能な膨張体から構成されている。また、アンカー体32の外周には、複数(例えば、4個)の弾性爪32aが形成されている。これにより、車体パネルの取付孔に挿入したアンカー体32を係合できる。したがって、車体パネルにドアトリム1を取り付けることができる。
【0020】
装着体34は、第1のクリップ取付座2aのクリップ装着面22の表裏を挟み込み可能に形成された上下に対を成す鍔部(上鍔部34a、下鍔部34b)と、これら上下の鍔部34a、34bの間を橋渡すクビレ状に形成された首部34c(図2において、図示しない)とから構成されている。クリップ3は、このように構成されている。
【0021】
続いて、図2、6〜8を参照して、第1のクリップ取付座2aにクリップ3を装着する手順を説明する。まず、クリップ3のアンカー体32を指(図示しない)で摘み、図2、6に示す状態から、クリップ3の上下の鍔部34a、34bの間にクリップ装着面22の表裏を挟み込ませるように、クリップ取付座3のガイド溝26に向けてクリップ3の首部34cを挿し込んでいく。
【0022】
すると、図7に示すように、挿し込まれたクリップ1の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bを押し込むため、一対の舌片28は互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく。これにより、一対の舌片28はガイド溝26の両縁26aに底つき状態となる。この底つき状態のとき、既に説明したように、一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなっている。すなわち、図7の一部拡大図に示すように、この底つき状態のとき、舌片28の張出部28bの引出線とクリップ3の首部34cの引出線との間には距離Sが生じることとなっている。
【0023】
そのため、この底つき状態から、クリップ装着面22の装着孔24に向けてクリップ3の首部34cを押し込んでいくと、押し込まれたクリップ3の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bの先端を撓ませることとなる。これにより、クリップ3の首部34cは両張出部28bの先端(図7において、距離S)を乗り越える。したがって、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22の装着孔24に装着される(図8参照)。
【0024】
すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aに装着される。この装着のとき、従来技術と同様に、装着孔24に挿し込む方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用しないため、クリップ3の装着性が悪化する(クリップ3の挿入荷重が大きくなる)こともない。
【0025】
最後に、図8〜11を参照して、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重(保持荷重より大きく抜去荷重より小さい荷重)が作用した場合を説明する。図8に示すように、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、クリップ3の首部34cは、クリップ装着面22の装着孔24からガイド溝26へと移動していく。すると、移動したクリップ3の首部34cが第1のクリップ取付座2aの一対の舌片28の先端の縁28aに到達する。
【0026】
このとき、既に説明したように、舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、一対の舌片28の先端の縁28aは、到達したクリップ3の首部34cを受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(図9参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が十分に抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。
【0027】
なお、この撓み状態から、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重(抜去荷重より小さい荷重)が作用すると、一対の舌片28は、さらに、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(図10参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28がより十分に抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより確実に抑制できる。
【0028】
なお、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に抜去荷重が作用すると、図9、10に示す状態から、一対の舌片28は、互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく。すると、クリップ3の首部34cが撓んだ一対の舌片28を乗り越える。これにより、図11に示すように、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22のガイド溝26から離脱する。すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aから取り外される。
【0029】
本発明の実施例1に係るドアトリム1の第1のクリップ取付座2aは、上述したように構成されている。この構成によれば、クリップ装着面22には、クリップ1の首部34cを装着可能な装着孔24と、開口20a側の縁から受け入れたクリップ1の首部34cを装着孔24に案内可能なガイド溝26と、ガイド溝26の両縁26aから先端が装着孔24に向けて張り出す一対の舌片28とが備えられている。この舌片28の先端の縁28aは、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、この作用した第1の荷重によって移動したクリップ3の首部34cを一対の舌片28の先端の縁28aが受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(図9参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用するため、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。すなわち、装着したクリップ3を抜け難くできる。このことは、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重が作用した場合も同様である。なお、このように装着したクリップ3を抜け難くしても、クリップ3の装着のメカニズムは従来と同様である。したがって、クリップ3の装着性が悪化することもない。
【0030】
また、この構成によれば、一対の舌片28には、ガイド溝26の溝幅を狭めるように張り出した張出部28bがそれぞれ形成されている。この一対の舌片28の両張出部28bの間隔は、一対の舌片28が撓んでガイド溝26の両縁26aに底ついたとき、クリップ3の首部34cの外径よりも狭くなるように設定されている。そのため、第1のクリップ取付座2aにクリップ3を装着するとき、クリップ装着面22の装着孔24に向けてクリップ3の首部34cを挿し込んでいくと、挿し込まれたクリップ3の首部34cが一対の舌片28の両張出部28bの先端(図7において、距離S)を乗り越えるため、クリップ3のアンカー体32を摘んだ指に節度感が生じることとなる。そのため、クリップ3の装着を確実に体感できる。したがって、クリップ3の未装着を防止できる。
【0031】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2を、図15〜22を用いて説明する。この実施例2のクリップ取付座102は、既に説明した実施例1のクリップ取付座2と比較すると、メンテナンス時におけるクリップ3の取り外しを簡便に実施できる形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1で説明した部材と同一の部材には、図面において同一符号を付すことで、重複する説明は省略することとする。
【0032】
図15〜17に示すように、第1のクリップ取付座102aの舌片28の先端の縁28aにおける内側28cは、円弧が削ぎ落とされた傾斜形状を成すように形成されている。一方、この舌片28の先端の縁28aにおける外側28dは、実施例1のそれと同様に、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。第1のクリップ取付座102aは、このように構成されている。このように構成されている第1のクリップ取付座102aは、図17〜19に示すように、実施例1の第1のクリップ取付座2aと同様にクリップ3を装着できる。
【0033】
最後に、図19〜22を参照して、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に保持荷重を超える第1の荷重(保持荷重より大きく抜去荷重より小さい荷重)が作用した場合を説明する。図19に示すように、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第1の荷重が作用すると、クリップ3の首部34cは、実施例1の説明と同様に、クリップ装着面22の装着孔24からガイド溝26へと移動していく。すると、移動したクリップ3の首部34cは第1のクリップ取付座102aの一対の舌片28の先端の縁28aの外側28dに到達する。
【0034】
この外側28dは、既に説明したように、装着孔24の内周面の円弧形状に対して同一の円弧形状を成すように形成されている。そのため、この外側28dは、到達したクリップ3の首部34cを受け止める。したがって、一対の舌片28は、互いが近づく方向に向けて撓んでいく(図20参照)。このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が十分に抵抗として作用するため、実施例1の説明と同様に、クリップ3の意図しない脱落をより抑制できる。
【0035】
なお、この撓み状態から、クリップ3に対して抜け方向に第1の荷重を超える第2の荷重(抜去荷重より小さい荷重)が作用すると、クリップ3の首部34cはクリップ取付座2の一対の舌片28の先端の縁28aの内側28cに到達する。この内側28cは、既に説明したように、傾斜形状を成すように形成されている。そのため、一対の舌片28は、互いが遠ざかる方向に向けて撓んでいく(図20参照)。
【0036】
このように一対の舌片28が撓んでいくと、装着孔24から抜け方向に移動するクリップ3の首部34cに対して一対の舌片28が抵抗として作用しないため、実施例1の説明と異なり、この撓んだ一対の舌片28をクリップ3の首部34cが乗り越える。これにより、図22に示すように、クリップ3の首部34cはクリップ装着面22のガイド溝26から離脱する。すなわち、クリップ3は内装部品1の第1のクリップ取付座2aから取り外される。
【0037】
本発明の実施例2に係るドアトリム1の第1のクリップ取付座102aは、上述したように構成されている。この構成によれば、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。また、この構成によれば、第1のクリップ取付座102aの舌片28の先端の縁28aにおける内側28cは、円弧が削ぎ落とされた傾斜形状を成すように形成されている。そのため、装着状態のクリップ3に対して抜け方向に第2の荷重を作用させると、クリップ3の首部34cをクリップ装着面22のガイド溝26から離脱させることができる。すなわち、クリップ3をドアトリム1の第1のクリップ取付座2aから取り外すことができる。したがって、実施例1と比較すると、抜去荷重より小さい荷重でクリップ3をドアトリム1の第1のクリップ取付座2aから取り外すことができる。また、このように抜去荷重より小さい荷重でクリップ3を取り外すことができる。したがって、一対の舌片28に折れ曲がりが生じることなく、クリップ3を取り外した後、再度使用できる。
【0038】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、「内装部品1」が「ドアトリム」である形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、「内装部品1」が「各種の樹脂成形品」であっても構わない。もちろん、「内装部品1」にかわって「各種の外装部品」であっても構わない。
【0039】
また、実施例1では、一対の舌片28の先端の縁28aは、円弧形状に形成されている形態を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、V字溝形状に形成されていても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1 ドアトリム(内装部品)
2 クリップ取付座(実施例1)
2a 第1のクリップ取付座(実施例1)
3 クリップ
20 周壁
20a 開口
22 クリップ装着面
24 装着孔
26 ガイド溝
26a 縁
28 舌片
28a 縁
34c 首部
102 クリップ取付座(実施例2)
102a 第1のクリップ取付座(実施例2)


図1
図2
図3
図4
図5
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