特許第6261953号(P6261953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6261953
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
   A61B1/00 715
   A61B1/00 655
   A61B1/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-229391(P2013-229391)
(22)【出願日】2013年11月5日
(65)【公開番号】特開2015-89402(P2015-89402A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 正泰
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−089812(JP,A)
【文献】 特表2003−530135(JP,A)
【文献】 特開2004−305505(JP,A)
【文献】 特開2007−289342(JP,A)
【文献】 特開2008−073376(JP,A)
【文献】 特許第4133074(JP,B2)
【文献】 特開2008−036306(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/078003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内を検査する内視鏡装置において、
経鼻にて挿入される多自由度屈曲性を有するマニピュレータと、
経口投入されるカプセル内視鏡と、
前記マニピュレータと前記カプセル内視鏡との間に設けられ、それらを接続/分離可能な接離手段と、
を有すること
を特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記接離手段は、前記マニピュレータと前記カプセル内視鏡との一方に配置された磁石と、他方に配置された磁石または磁性体とを有し、磁力により、前記カプセル内視鏡を接続するように構成されること
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記一方に配置された磁石は、凸部または凹部の一方を有し、
前記他方に配置された磁石または磁性体は、前記凸部または前記凹部の他方を有し、
前記凸部と前記凹部とは、相互に嵌合されることにより、前記マニピュレータに対しカプセル内視鏡を位置決めする構成を有すること
を特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記凸部と前記凹部は、同じ楕円形状の外形を有すること、
を特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記接離手段は、前記マニピュレータの先端部に配置されたノズルと、前記マニピュレータの基端部に配置された吸引手段と、を有し、
前記ノズルを前記カプセル内視鏡に当接させて、前記吸引手段で前記ノズル内を陰圧にすることにより、前記カプセル内視鏡を接続するように構成されること
を特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記カプセル内視鏡の表面に被係合部が設けられ、
前記接離手段は、係合部材および拘束部材を有し、
前記拘束部材は、前記係合部材を第1の姿勢に拘束することにより前記被係合部に挿入可能にし、前記被係合部に挿入された前記係合部材を拘束解除して、第2の姿勢に変化させることにより、前記係合部材を前記被係合部に係合させること
を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記係合部材は、前記第1の姿勢から前記第2の姿勢に変化するように付勢されること、
を特徴とする請求項6に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記接離手段は、棒状部材をさらに有し、前記磁力に抗して前記カプセル内視鏡を前記マニピュレータから分離させるように、前記マニピュレータから前記カプセル内視鏡の方に前記棒状部材を突出させること
を特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記マニピュレータの先端部は、光源と、光源から出射された光の反射光が入射される光学系とが配置され、
前記光学系に入射される反射光の明るさに基づいて、前記カプセル内視鏡が接続されたかどうかを判断可能に構成される接離検出手段をさらに有すること
を特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記マニピュレータに配置される前記磁石は、前記マニピュレータを通して電流が供給されるコイルを有する電磁石であり、
前記マニピュレータ側の前記電磁石と、前記カプセル内視鏡側に配置された永久磁石または磁性体とが相対的に近づく過程において、前記コイルに流れる電流の変化に基づいて、前記カプセル内視鏡が接続されたかどうかを判断可能に構成される接離検出手段をさらに有すること
を特徴とする請求項2、3、4または8に記載の内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、内視鏡装置に関する。なお、内視鏡装置を「診断システム」という場合がある。
【背景技術】
【0002】
カプセル内視鏡には、主に、体腔内の画像を撮像するための撮像部(CCDカメラ等)と体腔内部を照明するための照明部(LED等)と撮影した画像情報を体外の受信装置に送るための送信部と、これらに電力を供給する電源部(酸化銀ボタン電池等)が備えられている。被検者に経口的に投与されると、通常の食物と同じように各消化管の主に蠕動運動により、食道から小腸あるいは大腸までを一秒間に数枚の撮影をしながら移動し、約10時間後に肛門から体外へ排出される(目的の小腸を撮影し終わるまでが約8時間である)。なお、被検者を「患者」という場合がある。
【0003】
これまで内視鏡による観察が困難であった小腸を観察するための手段としては、ダブルバルーン内視鏡(例えば、非特許文献1)が存在する。しかし、ダブルバルーン内視鏡による検査には被検者への多少の負担があるため、まずはより負担の少ないカプセル内視鏡でスクリーニング検査を行うという流れができつつある。
【0004】
また、カプセル内視鏡による内視鏡検査は、患者の負担が少ないという利点においては、これまで行われて来た上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査に勝るため、食道から大腸までのそれぞれの、あるいは全ての消化管を観察するためのカプセル内視鏡も研究・開発されつつある。
【0005】
一例として、カプセル内視鏡は、小腸のような狭い空間を蠕動運動により推進しながら観察するものであるため、胃や大腸のような広い空間を隈なく観察することは困難である。そこで、体外のジョイスティックでコントロールすることができる小型磁石とヒレを組み合わせたマイクロマシンを既存のカプセル内視鏡に取りつけた、“自走式カプセル内視鏡”が開発され、学会発表が行われている(例えば、非特許文献2)。
【0006】
また、カプセル内視鏡が最初の適用部位(例えば十二指腸)に達するまでに無駄な時間を費やし、撮像、送信等によって内蔵電池が無駄に消費されてしまうという問題を解決するために、スコープの先端にカプセル内視鏡を接続して、口から適用部位まではスコープで誘導し、適用部位に達した時点でカプセル内視鏡を分離するという技術も開発されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,604,531号明細書
【特許文献2】特許第3810381号公報
【特許文献3】特許第4133074号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】臨床消化器内科 18, 1203-1208, 2003
【非特許文献2】Sadaharu Nouda, Eiji Umegaki, Naotake Ohtsuka, Kenshiro Uesugi, et al.Observation of the Human Large Intestine With a Self-Propelling Capsule Endoscope Using a Magnetic Field by Two Different Approaches :Gastroenterology Vol. 142, Issue 5, Supplement 1, Page S-244
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の技術においては次の問題点があった。
非特許文献2に記載される自走式カプセル内視鏡は水500mlを一度に飲む他は患者に苦痛がないシステムと思われるが、カプセル内視鏡を、外部からコントロールするための大型の装置が必要である。
【0010】
そこで、特許文献3に記載されるように、内視鏡のスコープの先にカプセル内視鏡を装着し、従来の内視鏡と同様にスコープを操作することにより胃や十二指腸までの検査を行い、その後カプセルの部分をスコープから分離して、通常のカプセル内視鏡として十二指腸から先の消化管を観察するということが考えられた。ここで、口から内視鏡を挿入すると中咽頭にある舌根に内視鏡の先端部が接触し、咽頭反射による吐き気が生じることがある。これが患者に大きな負担になることから、強い麻酔や鎮静剤が必要になる場合があり、患者には別の負担となっている他、検査時間が長くなることで、医療機関側の負担も生じている。
【0011】
この咽頭反射の問題を解決するために、咽頭を通らずに内視鏡を胃に挿入する経鼻内視鏡が開発され、既に広く普及している。しかし、ファイバーの直径が経口内視鏡の約10mmと比較して約6mmmと細いため、カメラの径も細くなり、視野が狭く画像の解像度が低く、また可視光源も小さいために視野が暗くなり、精密検査には不向きという問題があると言われている。また先端に装着するカプセル内視鏡を鼻から入るサイズにすることも、カメラ、光源、アンテナとそれらを駆動する電源等を搭載する必要があることから困難と思われる。
【0012】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、被検者の負担を軽減し、さらに、体腔内を観察するときの視野を広く、かつ、明るくすることが可能な内視鏡装置を提供することを目的とする。さらに、胃の表面および胃壁の粘膜層から漿膜までの組織を観察する内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、実施形態の内視鏡装置は、体腔内を検査するもので、マニピュレータと、カプセル内視鏡と、接離手段とを有する。マニピュレータは、経鼻にて挿入される多自由度屈曲性を有する。カプセル内視鏡は、経口投入される。接離手段は、マニピュレータとカプセル内視鏡との間に設けられ、それらを接続/分離可能なものであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】診断システムの機能ブロック図。
図2】カプセル内視鏡システム部の機能ブロック図。
図3】マニピュレータの全体図。
図4】マニピュレータの先端部の拡大図。
図5】カプセル内視鏡の構成図。
図6】第1実施形態に係る接離手段の構成図。
図7】接続前の接離手段の一部を断面にした図。
図8図7の部分拡大断面図。
図9】凸部、凹部の相互の嵌合後、嵌合穴による案内開始状態の拘束部材等を示す断面図。
図10】嵌合穴による案内終了状態の拘束部材等を示す断面図。
図11】被係合部に係合された係合部材等を示す断面図。
図12】棒状部材により嵌合穴から引き出された拘束部材等を示す断面図。
図13】接離検出手段の機能ブロック図。
図14】胃壁を検査するときの内視鏡装置を示す図。
図15】体腔内にあるカプセル内視鏡に近づけられたマニピュレータを示す図。
図16】内視鏡装置により体腔内を検査するときの一連の動作を示すフローチャート。
図17】変形例において接続前の接離手段の一部を断面にした図。
図18】凸部、凹部の相互の嵌合後、嵌合穴による案内開始状態の拘束部材等を示す断面図。
図19】第2実施形態に係る接離手段の構成図。
図20】第2実施形態において、接続された後の接離手段の一部を断面にした図。
図21】分離されたときの接離手段の一部を断面にした図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
内視鏡装置を用いて胃内や腸内などの体腔内を観察するとき、経鼻にて小径のマニピュレータが挿入される。さらに、カプセル内視鏡が経口投与される。マニピュレータとカプセル内視鏡とが胃の中で接続され、胃・十二指腸の検査後に再び分離される。
このような内視鏡装置では、マニピュレータとカプセル内視鏡とを接続/分離する接離手段が必要となる。
【0016】
<第1実施形態>
次に、第1実施形態に係る内視鏡装置の構成について各図を参照して説明する。図1は、診断システムの構成ブロック図である。
【0017】
図1に示すように、診断システムは、カプセル内視鏡システム部1、マニピュレータ部2、データ記録部9、表示部10、コンソール11、接離手段14、操作部17、および、統括制御部18を有する。
【0018】
〔カプセル内視鏡システム部1〕
図2は、カプセル内視鏡システム部の機能ブロック図である。
カプセル内視鏡システム部1は例えば検査室に設置される。
図2に示すように、カプセル内視鏡システム部1は、カプセル検知画像記憶装置3と、カプセル内視鏡4とを有する。
【0019】
カプセル内視鏡4は、従来のカプセル内視鏡と同じく、人間が無理なく飲み込める直径約10mm、長さ約25mm程度の大きさである。搭載する各種機器の性能を維持するためには最低限この程度の大きさが必要であり、鼻腔からは入らないという点が重要である。
【0020】
図2に示すように、カプセル検知画像記憶装置3は、カプセル内視鏡4の消化管内の位置を検知し、カプセル内視鏡4において撮像された画像の記憶を行う装置である。例えば被検者が着る上着(チョッキ)等に設けられ、カプセル内視鏡4の位置信号を受信する体表アンテナ5と、体表アンテナ5からの信号を受信してカプセル内視鏡4の位置情報を検知する位置検知部6とカプセル内視鏡4において撮像した画像を受信する画像受信部7と、これらの画像を記憶する画像記憶部8と、位置検知部6で検知した位置情報及び、画像記憶部8に記憶された画像情報を、外部のデータ記録部9に送信する送信部(図示せず)と、これらの各部を制御する制御部(図示せず)とを有する。
【0021】
〔データ記録部9、表示部10、コンソール11〕
図1および図2に示すように、データ記録部9は、位置検知部6から送信された位置情報、および画像記憶部8に記憶された画像情報を記録する。
【0022】
表示部10は、データ記録部9から呼び出された位置情報や画像情報を表示する。コンソール11は、表示部10に表示された情報を加工して再びデータ記録部9に保存する。
【0023】
〔マニピュレータ部2〕
図3はマニピュレータの全体図、図4はマニピュレータの先端部の拡大図である。
図3および図4に示すように、マニピュレータ部2は、マニピュレータ12と先端部13と操作部17とから構成される。
【0024】
マニピュレータ12は、複数のリンクと、リンク同士が回動自在に連結する関節部分と、関節部分にてリンク同士を相対的に回転駆動させるアクチュエータ(図示省略)と、を備えることで、多自由度屈曲性を有する。マニピュレータを「多自由度屈曲型マニピュレータ」という場合がある。
【0025】
操作部17はハンドルとスイッチとを有する。マニピュレータ12は、術者によるハンドル、スイッチの指示を制御部で操作信号に変換し、電気信号に基づいて、先端部13の各要部を制御してもよいし、操作部17の指示を機械的に各要部に伝達し、制御してもよい。
【0026】
操作部17の指示を受けて制御部により制御される各要部には、例えば、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4を接続/分離するための接離手段14(係合部材32、拘束部材34、および、棒状部材35)が含まれる(図6参照)。接離手段14の詳細については後述する。
【0027】
図4に示すように、先端部13には、接離手段14の他に、カメラ部15と、ライト部16とが配置される。カメラ部15およびライト部16は、体腔内(例えば、胃内)においてカプセル内視鏡4の位置を確認するために用いられる。
【0028】
〔カプセル内視鏡の詳細〕
次に、カプセル内視鏡4の詳細について説明する。図5は、カプセル内視鏡の構成図である。
【0029】
図5に示すように、カプセル内視鏡4は基本的な構成は既に製品化されているものと同様で、体内の画像を所定の解像度で撮像するための光学系19と、この光学系19により得た光学的な画像情報を電気信号として取得する画像取得部20と、この画像取得部20により得た画像を無線により外部に送信する画像送信部21と、カプセル内視鏡4の位置のデータなどを外部に送信するための位置送信部22と、光学系19と連動してカプセル内視鏡4の周辺の臓器を照明する光源部23とこれらの各部に電力を供給する電池24と、これらを収容する楕円形状の内視鏡筐体25と、を有する。
【0030】
なお、楕円形状における「短軸方向」および「長軸方向」を、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続される方向を示すときに用いる。なお、第1実施形態では、接続方向を短軸方向とする。
【0031】
カプセル内視鏡4には、超音波装置、OCT(Optical coherence tomography)装置の少なくとも一つが収納される。これらの装置を図5に「超音波/OCT装置27」で示す。筐体25の表面に超音波プローブおよびOCTプローブの少なくとも一つが収納される。これらのプローブを図5に「超音波/OCTプローブ28」で示す。なお、本診断システムは、統括制御部18によって制御される。
【0032】
〔接離手段14〕
図6は、接離手段14の構成図である。
図6に示すように、接離手段14は、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4との間に配置される。接離手段14は、永久磁石31、係合部材32、付勢部材33、拘束部材34、および、棒状部材35を有する。これらは、マニピュレータ12の先端部13に配置される。
【0033】
カプセル内視鏡4には、永久磁石41および被係合部42が配置される。永久磁石41および被係合部42と、接離手段14とにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続/分離されるように構成される。
【0034】
接離手段14により、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続されたとき、胃内でマニピュレータ12を介してカプセル内視鏡4を操作することで、カプセル内視鏡4を通常の内視鏡と同様に胃壁に押し付けられるようになる(図14参照)。
【0035】
〔接離手段14の主構成〕
次に、接離手段14の一例について図6および図7を参照して説明する。
先ず、カプセル内視鏡4とマニピュレータ12とを接続するための接離手段14の主構成について説明する。
【0036】
図6に示すように、主構成は、永久磁石31を有する。これに対し、カプセル内視鏡4は永久磁石41を有する。
【0037】
(永久磁石31)
図7に示すように、永久磁石31は、マニピュレータ12の先端部13に配置される。永久磁石31は凸部の形状を有する。凸部は楕円形状の外形を有する。
【0038】
(永久磁石41)
永久磁石41は、カプセル内視鏡4の側面(プローブのある側面とは反対側の側面)に配置される。永久磁石41は凹部の形状を有する。凹部は凸部と同じ楕円形状の外形を有する。同じ楕円形状の外形を有する凸部と凹部とを嵌合させることで、マニピュレータ12に対するカプセル内視鏡4の位置が決められると共に、楕円形状の長軸同士、短軸同士が一致するため、カプセル内視鏡4の方向が決められる。カプセル内視鏡4の位置および方向を決めることを、「カプセル内視鏡4の位置決め」という場合がある。
【0039】
永久磁石41がカプセル内視鏡4の側面に配置される理由は、カプセル内視鏡4において、その側面がマニピュレータ12と接続する面積を先端や後部に比較して大きくとることができる。それにより、カプセル内視鏡4を安定させることができ、カプセル内視鏡4を胃壁等に押し付ける際に有利であるためである。ただし、永久磁石41がカプセル内視鏡4の後部などに配置されることを否定するものではない。
【0040】
以上が、永久磁石31、41の磁力により、カプセル内視鏡4をマニピュレータ12に接続するための主構成である。なお、永久磁石31、41のいずれか一方を磁性体に代え、他方の永久磁石の磁力により、カプセル内視鏡4をマニピュレータ12に接続するように構成してもよい。
【0041】
次に、カプセル内視鏡4をマニピュレータ12に接続するための接離手段14の補助的な構成の説明をする。
【0042】
〔接離手段14の補助的な構成〕
図6および図7に示すように、補助的な構成は、係合部材32、付勢部材33、拘束部材34を有する。これに対し、カプセル内視鏡4は、被係合部42、および、嵌合穴43を有する。
【0043】
図8は接続前の接離手段の一部を断面にした図である。図8に示すように、一対の係合部材32は、一対の嵌合穴43に対応して配置される。また、一対の拘束部材34は、一対の嵌合穴43に対応して配置される。一対の係合部材32の間隔は、一対の嵌合穴43の間隔と同じであり、一対の拘束部材34の間隔は、一対の嵌合穴43の間隔と同じである。
【0044】
(係合部材32、拘束部材34)
図9は凸部、凹部の相互の嵌合後、嵌合穴による案内開始状態の拘束部材等を示す断面図、図10は嵌合穴による案内終了状態の拘束部材等を示す断面図、図11は被係合部に係合された係合部材等を示す断面図、図12は棒状部材により嵌合穴から引き出された拘束部材等を示す断面図である。
【0045】
図7に示すように、マニピュレータ12の先端部13において、永久磁石31の両側に係合部材32が配置される。マニピュレータ12の先端部13には、係合部材32の姿勢を拘束する拘束部材34が配置される。
【0046】
係合部材32は、長尺で平板形状の弾性材により形成され、復元力を有し、長手方向に延伸させた第1の姿勢(図8図9図10図12参照)と、復元力によりその先端部を屈曲させた第2の姿勢(図11参照)と、に変形する。
【0047】
拘束部材34は、係合部材32を第1の姿勢に拘束すると共に、係合部材32を長手方向に案内する拘束溝34aを有する。係合部材32は、拘束溝34aに対し係合部材32が突出されたとき、拘束溝34aによる拘束が解除されて、復元力により第2の姿勢に変形する。
【0048】
図11に、第2の姿勢に変形して、被係合部42に係合した係合部材32を示す。なお、係合部材32は、復元力を有する構成であるため、その先端部を第2姿勢に変形させるための付勢部材33を特に必要としない。復元力を有する係合部材32は付勢部材33を備えているといえる。しかし、係合部材32が復元力を有しない構成では、係合部材32を第1の姿勢から第2の姿勢に変形させる付勢部材33を設けてもよい。
【0049】
操作部17の指示を受けて制御部により、拘束部材34は、マニピュレータ12の先端部13から出没するように制御される。さらに、操作部17の指示を受けて制御部により、係合部材32は、拘束部材34に対し相対的に出没するように制御される。それにより、係合部材32は、拘束溝34aの一端から突出される突出位置と拘束溝34aの内部に没入される没入位置との間に案内される。
【0050】
図9に示すように、拘束部材34は、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続されるとき、嵌合穴43に嵌め込まれる。なお、拘束部材34を楔状に形成することにより、嵌め込み易くしてもよい。
【0051】
拘束溝34aは、係合部材32の板厚と同じ溝幅を有する。拘束溝34aの一端(係合部材32が出没する側の端)において、係合部材32の先端部が屈曲する側の溝壁は、面取り部34bを有する。面取り部34bは、溝壁と被係合部42とを滑らかに連絡するように傾斜面となっている。図10に、拘束溝34aの溝壁と被係合部42とを連絡する面取り部34bを示す。
【0052】
(被係合部42、嵌合穴43)
嵌合穴43は、カプセル内視鏡の側面(短軸方向に対向する面)にあって、永久磁石41の左右位置に配置される。嵌合穴43は、略L字形の断面形状に形成される。嵌合穴43は、入り口43aと、穴壁45と、穴の奥において穴壁45に連なり、穴の深さ方向に対し略直角方向に曲がる角部である被係合部42とを有する(図8参照)。
【0053】
凸部である永久磁石31が凹部である永久磁石41に嵌め込まれ、永久磁石31、41同士の磁力により、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続されたとき、操作部17の指示を受けて制御部により、拘束部材34をマニピュレータ12の先端部13から突出させることにより、拘束部材34が嵌合穴43に嵌め込まれる。図9に、没入位置にある拘束部材34を示す。図10に、操作部17の指示を受けて制御部により突出され、嵌合穴43に嵌め込まれた拘束部材34を示す。
【0054】
図11に、操作部17の指示を受けて制御部により拘束部材34に対し相対的に突出され、被係合部42に係合する係合部材32を示す。操作部17の指示を受けて制御部により、係合部材32を拘束部材34に対し相対的に突出させることにより、係合部材32が没入位置から突出位置に案内され、係合部材32が第1の姿勢から第2の姿勢に変形して、被係合部42に係合する。それにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とがしっかりと固定される。この構成が、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とを接続するための補助的な構成である。この構成により、超音波/OCTプローブ28を胃壁に押し付けても、カプセル内視鏡4がマニピュレータ12から離脱しない。超音波/OCTプローブ28を胃壁に押し付けることにより、胃の表面および胃壁の粘膜層から漿膜までの組織(厚さ約8mm)を観察することが可能となる。なお、カプセル内視鏡4に搭載された電池24の消費を抑えるために、接続後はマニピュレータ12より電力を供給されてもよい(電力供給装置は図示せず)。
【0055】
これに対し、操作部17の指示を受けて制御部により、係合部材32を拘束部材34に対し相対的に没入させることにより、係合部材32が突出位置から突入位置に案内され、係合部材32が第2の姿勢から第1の姿勢に変形して、被係合部42から離脱する。
【0056】
操作部17の指示を受けて制御部により、拘束部材34をマニピュレータ12の先端部13に没入させることにより、拘束部材34が嵌合穴43から外れる。このとき、係合部材32は第1の姿勢で没入位置にあり、操作部17の指示を受けて制御部により、拘束部材34と一体的に没入されるように制御される。
【0057】
このとき、依然として、凸部である永久磁石31が凹部である永久磁石41に嵌め込まれ、永久磁石31、41同士の磁力により、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続されたままである。
【0058】
〔接離手段14における分離のための構成〕
次に、カプセル内視鏡4とマニピュレータ12とを分離するための接離手段14の一例について説明する。
【0059】
(棒状部材35)
図7及び図8に示すように、棒状部材35は、マニピュレータ12からカプセル内視鏡4の方に出没するように構成される。棒状部材35は、操作部17の指示を受けて制御部により、出没されるように制御される。図8図11に没入された棒状部材35を示す。図12に突出された棒状部材35を示す。
【0060】
図11に示す状態では、永久磁石31、41同士は嵌合し、係合部材32は被係合部42に係合している。図11に示す状態から、操作部17の指示を受けて制御部により、係合部材32を拘束部材34に対し相対的に没入させ、図10に示す状態にする。
【0061】
図10に示す状態において、操作部17の指示を受けて制御部により、棒状部材35がカプセル内視鏡4の方に突出されると、棒状部材35が、永久磁石31、41の磁力に抗して、カプセル内視鏡4をマニピュレータ12に対し離間させる。それにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが分離される。
【0062】
〔接離手段14の他の例〕
なお、上述する接離手段14は一例であり、これに限定されない。例えば、上述の接離手段14では、永久磁石31、41同士の接続であったが、サイズ的な問題をクリアできれば、電磁石同士や永久磁石と電磁石を組み合わせた永電磁マグネットでの接続であってもよい。特に永電磁マグネットは磁力ON/OFFの時にのみ電力を供給するものであるため、電力を節約することができる。これらの磁石は電力の供給状態により接続したり分離したりすることが可能であるため、係合部材32等の仕組みは不要となる。
【0063】
〔接離検出手段50〕
次に、接離検出手段50について図13を参照して説明する。
図13は、接離検出手段50の機能ブロック図である。
【0064】
図13に示すように、接離検出手段50は、参照情報記憶部51、比較部52、および、検出部53を有する。
【0065】
体腔内に挿入されたマニピュレータ12において、ライト部16から出射された光の反射光がカメラ部15に入射される。検出部53は、反射光の明るさ(例えば、輝度)を検出する。検出された検出値(輝度値)を“Vd”とする。参照値を“Vr”とする。参照情報記憶部51は、参照値Vrを記憶する。
【0066】
検出部53により検出される反射光の明るさにおいて、マニピュレータ12の先端部13がカプセル内視鏡4に近づくにつれて、カメラ部15に入射される反射光が多くなり、検出値Vdが高くなる。マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続されると、マニピュレータ12の先端部13とカプセル内視鏡4の表面とが密着されるため、カメラ部15に入射される反射光が少なくなり、検出値Vdが急激に低下する。接離検出手段50は、このような現象を利用する。急激に低下したときの検出値を、参照値Vrとする。
【0067】
比較部52は、参照値Vrと検出値Vdとを比較し、検出値Vdが参照値Vrより高いとき、接続前であると判断し、検出値Vdが参照値Vr以下になったとき、接続がされたと判断する。
【0068】
なお、接離検出手段50としては、これに限らない。
例えば、マニピュレータ12に設けられる永久磁石31に代えて、コイルを有する電磁石を用い、マニピュレータ12を通してコイルに電流を供給するように構成する。コイルに供給される電流をIsとする。
【0069】
一方で、マニピュレータ12側の電磁石と、カプセル内視鏡4に設けられた永久磁石41との間に相対的な速度が生じるとき、誘導起電力による電流がコイルに流れる。ここで、両者が相対的に近づくとき、コイルに流れる電流を+Iiとし、両者が相対的に遠ざかるとき、コイルに流れる電流を-Iiとする。
【0070】
すなわち、供給される電流と誘導起電力による電流とがコイルに流れることとなる。したがって、両者間で相対的な速度が生じるとき、コイルに流れる全体的な電流は、Is±Iiとなる。両者間で相対的な速度が生じないとき、コイルに流れる全体的な電流は、Isとなる。
【0071】
両者間で相対的な速度が生じないときとは、二つのケースが考えられる。第1のケースは、マニピュレータ12が動きを止めたときである。第2のケースは、マニピュレータ12を動かせても、電磁石と永久磁石41とが嵌合したために、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続され、両者が一体的に移動したときである。
【0072】
接離検出手段50は、このような現象を利用する。比較部52は、参照値Ir(ここでは、Ii)と、コイルに流れる電流値(検出値)Idとを比較する。検出値Idが参照値Irでないとき、接続前であると判断し、マニピュレータ12を動かせても、検出値Idが参照値Irになったとき、接続がされたと判断する。
【0073】
〔動作〕
次に、内視鏡装置を用いて体腔内を観察するときの一連の動作について図14図15および図16を参照して説明する。図14は、胃壁を検査するときの内視鏡装置を示す図、図15は、体腔内にあるカプセル内視鏡に近づけられたマニピュレータを示す図、図16は、内視鏡装置により体腔内を検査するときの一連の動作を示すフローチャートである。
【0074】
(S1:カプセル内視鏡を経口投与)
従来のカプセル内視鏡検査と同じく、被検者は検査の12時間前より絶食を開始する。また検査開始前の所定の時間に胃蠕動運動の抑制のための薬剤と、鼻腔への局所麻酔剤を投与される。検査開始時は被検者の体表にカプセル検知画像記憶装置3が取り付けられる。術者は統括制御部18によりカプセル内視鏡の位置送信部22を作動させ、被検者の体内でのカプセル内視鏡の位置が把握できる状態にした後、カプセル内視鏡がすぐに胃の奥に落ちてしまうことを防ぐ目的で、被検者を仰臥位にし、カプセル内視鏡を口から投与する。
【0075】
(S2〜S3:鼻腔から胃へマニピュレータ12を挿入)
術者はカプセル検知画像記憶装置3によりカプセル内視鏡4が被検者の胃に到達したことを確認した後、被検者の鼻腔からマニピュレータ12を挿入する。マニピュレータ12に搭載のカメラ部15でマニピュレータ12が胃内に到達したことを確認する。
【0076】
(S4:カプセル内視鏡の位置確認)
図15に示すように、マニピュレータ12に搭載のカメラ部15やライト部16やカプセル内視鏡搭載の光学系19およびカプセル検知画像記憶装置3で、胃中のカプセル内視鏡4の位置を確認しながら、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の距離を近づけていく。なお、カプセル内視鏡4の位置を確認するとき、光学系19に代えて、または、光学系19と共に、カプセル内視鏡4に搭載した超音波プローブを用いてもよい。
【0077】
(S5:マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の接続)
マニピュレータ12とカプセル内視鏡4が所定の任意の距離まで近づいたら、双方に備えられた永久磁石31、41の磁力(吸着力)が働き、マニピュレータ12の先端部13に、カプセル内視鏡4が接続できる。この時に、永久磁石31が凸部の形状を有し、かつ、凸部が楕円形状の外形を有し、さらに、永久磁石41が凹部の形状を有し、かつ、凹部が凸部と同じ楕円形状の外形を有するために、カプセル内視鏡4の吸着される向きを一定にすることができる(図9参照)。これは、マニピュレータ12の先端部13から押し出される拘束部材34とカプセル内視鏡4に設けられた嵌合穴43との位置を合わせることに役立つ。
【0078】
双方の永久磁石31、41は、後で棒状部材35を用いて分離することができる程度には、磁力が弱いことが求められるため、永久磁石31、41の磁力だけでは胃/十二指腸の検査中にマニピュレータ12とカプセル内視鏡4の接続を保つことは困難である。そのため、永久磁石31、41での接続後に、マニピュレータ12の先端部13からカプセル内視鏡4の嵌合穴43にまず拘束部材34を嵌合させ、さらに、拘束部材34の拘束溝34aを通るように復元力を有する係合部材32を挿入し、係合部材32の先端部を屈曲させて、被係合部42に係合させることで、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4をしっかり固定する(図11参照)。尚、拘束部材34と係合部材32はマニピュレータ12に備えられた操作部17の指示を受けて制御部により、例えばマニピュレータ12を保持した術者の手元で操作することが可能である。
【0079】
(S6:胃内の観察)
カプセル内視鏡4を接続したマニピュレータ12を操作して、通常の胃内視鏡検査と同様に、出血、腫瘍、ポリープ、潰瘍、糜爛等、胃粘膜や胃壁の色や形状の変化の有無を観察する。また、必要に応じて、カプセル内視鏡に備えられた超音波/OCTプローブ28を胃壁に押し付けることにより、胃壁内部の組織の状態を観察してもよい(図14参照)。この検査は通常の内視鏡検査やX線透視検査では見つけ難いことで問題となっている、スキルス性胃がんの発見に有用と考えられる。
【0080】
(S7:十二指腸内の観察)
更にカプセル内視鏡4を接続したマニピュレータ12を胃の奥まで進め、通常の十二指腸内視鏡検査と同様に、出血、腫瘍、ポリープ、潰瘍、糜爛等、十二指腸の粘膜や腸壁の色や形状の変化の有無を観察する。十二指腸壁は薄いため、胃壁ほどの必要性はないと思われるが、必要により十二指腸壁にカプセル内視鏡に備えられた超音波/OCTプローブ28を押し付けて、十二指腸壁内の組織の状態を調べてもよい(図14参照)。
【0081】
(S8:マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の分離)
胃/十二指腸の観察が終了したら十二指腸の終点付近までマニピュレータ12を進め、マニピュレータ12からカプセル内視鏡4を分離する。
【0082】
胃/十二指腸の検査が終了し、十二指腸の終点あるいは任意の地点でマニピュレータ12からカプセル内視鏡4を分離する際には、係合部材32を被係合部42から離脱させると共に、拘束部材34を嵌合穴43から抜き、最後にマニピュレータ12の先端部13から棒状部材35を押し出して、双方の永久磁石31、41を離すことになる。この棒状部材35も拘束部材34等と同様に、操作部17の指示を受けて制御部により、例えばマニピュレータ12を保持した術者の手元で制御することが可能である。
【0083】
術者はマニピュレータ12またはカプセル内視鏡4に備えられたカメラ等を用いて、確実に分離が行われたことを確認する。
【0084】
(S9:小腸のカプセル内視鏡検査)
マニピュレータ12から分離されたことを確認されたカプセル内視鏡4は、術者の検査開始の合図等の所定の手続き後に、カプセル内視鏡4としての検査を開始する。マニピュレータ12から電力を供給されていた場合には、このタイミングでカプセル内視鏡4に搭載の電池24で駆動されるように切替が行われることになる。通常のカプセル内視鏡4と同様に蠕動運動によって小腸から大腸へ運ばれ、この間に小腸の検査がカプセル内視鏡4により行われるが、以降の手段は公知のためここでは省略する。
【0085】
以上のような方法により、咽頭反射のないスコープを用いた、解像度が高く広角で明るい内視鏡での胃/十二指腸検査が可能になり、疾患の発見率が高くなると思われる。
【0086】
〔第1実施形態の変形例1〕
次に、カプセル内視鏡4を位置決めするための構成の変形例1について図17および図18を参照して説明する。図17は変形例において接続前の接離手段の一部を断面にした図、図18は、凸部、凹部の相互の嵌合後、嵌合穴による案内開始状態の拘束部材等を示す断面図である。
【0087】
第1実施形態では、凸部(楕円形状の外形)である永久磁石31と、凹部(楕円形状の外形)である永久磁石41とにより、カプセル内視鏡4の位置決めをしたが、マニピュレータ12の先端部13の全体を凸部(楕円形状の外形)に形成し、それに対応させて、カプセル内視鏡4の側面を凹部(楕円形状の外形)に形成してもよい。凸部、凹部が大きい分だけ、カプセル内視鏡4の位置決め精度を高めることが可能となる。
【0088】
〔第1実施形態の変形例2〕
次に、カプセル内視鏡4を位置決めするための構成の変形例2について説明する。
第1実施形態において、マニピュレータ12にカプセル内視鏡4を接続するための接離手段14の主構成として、例えば永久磁石31のN極と、永久磁石41のS極とが対向配置されるものを示したが、これに限らない。
【0089】
例えば、永久磁石31として、マニピュレータ12の先端部13の表面に沿ってN極とS極とが配置されるものとする。また、永久磁石41として、カプセル内視鏡4の表面に沿ってN極とS極とが配置されるものとする。それにより、永久磁石31のN極と永久磁石41のS極とが引き合い、かつ、永久磁石31のS極と永久磁石41のN極とが引き合うため、永久磁石31、41同士が吸着されるときの位置および方向が決められる。それにより、マニピュレータ12に対するカプセル内視鏡4の位置および方向を決めることが可能となる。
【0090】
<第2実施形態>
次に、装置の第2実施形態について図19から図21を参照して説明する。図19は接離手段の構成図、図20は接続された後の接離手段の一部を断面にした図、図21は、分離されたときの接離手段の一部を断面にした図である。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成については同一番号を付してその説明を省略し、異なる構成について主に説明する。
【0091】
〔接離手段14〕
マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とを接続するための接離手段14の主構成として、第1実施形態では、永久磁石31、41を有するものを示したが、第2実施形態では、永久磁石31、41の代わりに、吸引装置36、ノズル37、チャンバー38、チューブ39、バルブ39aを有する。なお、接続するための補助的な構成として、係合部材32、付勢部材33、および、拘束部材34が設けられることは、第1実施形態と同様である(図19参照)。
【0092】
また、第1実施形態では、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続される方向を短軸方向とした。これに対し、第2実施形態では、接続方向を長軸方向とする。
【0093】
(吸引装置36)
図19および図20に示すように、マニピュレータ12の基端部に吸引装置36が配置される。マニピュレータ12の先端部13にノズル37が配置される。ノズル37は、楕円形の断面形状の外形を有する。ノズル37は、チャンバー38、チャンバー38、チューブ39および、バルブ39aを介して吸引装置36に連結される。バルブ39aにより、ノズル37が吸引装置36側に連通され、また、外気に連通される。
【0094】
吸引装置36は、操作部17の指示を受けて制御部による制御を受けて作動する。バルブ39aによりノズル37を吸引装置36側に連通させ、吸引装置36を作動させて、ノズル37から体腔内の気体を吸い込み、ノズル37の内部を体腔内の気体の圧力より低い状態(陰圧)にする。一方、バルブ39aにより、ノズル37を外気に連通させることで、ノズル37の内部を体腔内の気体の圧力以上の状態(陽圧)にする。吸引装置36は、操作部17の指示を受けて制御部により、例えばマニピュレータ12を保持した術者の手元で制御することが可能である。
【0095】
(被係合部42、ターゲット44)
図20に示すように、カプセル内視鏡4の側面(長軸方向に対向する面)には被係合部42が配置される。被係合部42は、ノズル37の外形と同じ楕円形の穴を有する。また、カプセル内視鏡4には、被係合部42より奥(長軸方向の先)にターゲット44が配置される。
【0096】
ノズル37を被係合部42に嵌め込み、かつ、ノズル37の先端をターゲット44に当接させ(図20参照)、かつ、吸引装置36を作動させて、ノズル37を陰圧にする。それにより、ターゲット44がノズル37に吸いつけられる。それにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続される。吸引装置36、ノズル37、チャンバー38、チューブ39、バルブ39aによる構成が、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とを接続するための接離手段14の主構成となる。
【0097】
バルブ39aにより、ノズル37の内部を外気と連通させることにより、ノズル37の内部が陽圧となり、ターゲット44が吸い付けられず、ターゲット44がノズル37から離れる。それにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが分離される。
【0098】
(係合部材32、付勢部材33、拘束部材34)
図20および図21に示すように、ノズル37には一対の係合部材32が配置される。一対の係合部材32は、その外面がノズル37の周面と滑らかに連続するように閉じた状態と、ノズル37の周面から離れた開いた状態とに開閉可能に構成される。図20では、V字形状に開いた状態にある一対の係合部材32を示す。図21では、閉じた状態にある一対の係合部材32を示す。
【0099】
付勢部材33は、圧縮コイルバネである。付勢部材33は、一対の係合部材32を開く方向に付勢する。
【0100】
一対の係合部材32は、閉じた状態で、被係合部42に抜き差し可能となる。一対の係合部材32は、開いた状態で、被係合部42に係合する。各係合部材32は、その一端部(図20において下端部)を中心にその他端部(図20において上端部)を開閉させるように構成される。被係合部42は、一対の係合部材32の開きを可能にし、かつ、開いた状態で一対の係合部材32が係合するように構成される。そのため、被係合部42は、係合部材32の他端部が開閉されるときの移動軌跡に沿うように形成されるとよい。
【0101】
係合部材32が開かれて、被係合部42に係合されることにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが分離されないようになる。係合部材32が閉じられて、被係合部42から離脱されることにより、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが分離可能となる(実際に分離されるためには、ノズル37によりターゲット44が吸い付けられないことが必要となる。)。
【0102】
図20および図21に示すように、拘束部材34の一端部が係合部材32にそれぞれ連結される。ここで、拘束部材34は、コントロールワイヤであり、ノズル37に沿うように引かれ、その先端部がマニピュレータ12の基端部に延ばされる。拘束部材34は、操作部17の指示を受けて制御部による制御を受けて、繰り込み/繰り出される。付勢される力に抗して拘束部材34が繰り込まれると、一対の係合部材32が閉じられる(図21参照)。付勢される力により拘束部材34が繰り出されると、一対の係合部材32が開かれる(図20参照)。係合部材32、付勢部材33、拘束部材34による構成が、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とを接続するための接離手段14の補助的な構成となる。
【0103】
〔動作〕
次に、内視鏡装置を用いて体腔内を観察するときの一連の動作について説明する。一連の動作において、第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、図16に示す一連の動作においては、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の接続(S5)と、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の分離(S8)である。
以下に、これらの異なる動作について、説明する。
【0104】
(S5:マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の接続)
マニピュレータ12をカプセル内視鏡4に近づけていき、ノズル37を被係合部42に挿入させる。この時、ノズル37の外形と被係合部42の形状とが同じ楕円形状であるため、カプセル内視鏡4の吸着される向きを一定にすることができる。このとき、付勢部材33の付勢力に抗して拘束部材34を繰り込み、係合部材32を閉じ状態にする(図21参照)。
【0105】
さらに、ノズル37を挿入させていき、ノズル37の先端をターゲット44に当接させる(図20参照)。次に、操作部17の指示を受けて制御部により吸引装置36を作動し、ノズル37を通して体腔内の気体を吸い込む。それにより、ノズル37が陰圧となり、ターゲット44がノズル37に吸い付けられ、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが接続される。
【0106】
次に、付勢部材33の付勢力により、拘束部材34を繰り出し、係合部材32をV字形の開き状態にする(図20参照)。それにより、係合部材32が被係合部42に係合される。それにより、マニピュレータ12にカプセル内視鏡4がしっかり固定される。
【0107】
(S8:マニピュレータ12とカプセル内視鏡4の分離)
胃/十二指腸の観察が終了したら十二指腸の終点付近までマニピュレータ12を進め、マニピュレータ12からカプセル内視鏡4を分離する。
【0108】
胃/十二指腸の検査が終了し、十二指腸の終点あるいは任意の地点でマニピュレータ12からカプセル内視鏡4を分離する際には、バルブ39aにより、ノズル37を外気に連通させて、ノズル37の内部を陽圧にすればよい。それにより、ターゲット44がノズル37に吸着されない。さらに、拘束部材34を繰り込むことで、係合部材を閉じ状態にする(図21参照)。それにより、係合部材32が被係合部42から外れる。以上により、マニピュレータ12とカプセル内視鏡4とが分離される。
【0109】
ノズル37内を陽圧にするだけで、ターゲット44がノズル37に吸着されないようになるため、第1実施形態に係る棒状部材35は不要となる。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 カプセル内視鏡システム部
2 マニピュレータ部
3 カプセル検知画像記憶装置
4 カプセル内視鏡
5 体表アンテナ
6 位置検知部
7 画像受信部
8 画像記憶部
9 データ記録部
10 表示部
11 コンソール
12 マニピュレータ
13 先端部
14 接離手段
15 カメラ部
16 ライト部
17 操作部
18 統括制御部
19 光学系
20 画像取得部
21 画像送信部
22 位置送信部
23 光源部
24 電池
25 筐体
27 超音波/OCT装置
28 超音波/OCTプローブ
31 永久磁石
32 係合部材
33 付勢部材
34 拘束部材
34a 拘束溝
34b 面取り部
35 棒状部材
36 吸引装置
37 ノズル
38 チャンバー
39 チューブ
39a バルブ
41 永久磁石
42 被係合部
43 嵌合穴
43a 入り口
44 ターゲット
45 穴壁
50 接離検出手段
51 参照情報記憶部
52 比較部
53 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21