(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような窓枠は、窓枠が有する中空部内に熱膨張性耐火材が設けられているので、火災などにより加熱された場合には、膨張した耐火材は中空部内に留まる。このとき、窓框との係合部は中空部の外側に設けられているので、溶融してしまうおそれがある。窓枠との係合部が溶融して空隙が生じると、この空隙から火炎が窓框の反対側に貫通してしまうおそれがあるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、火炎に晒されても貫通しにくい、合成樹脂製の枠体を備えた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、枠組みされて開口を形成する合成樹脂製の枠体と、前記開口を開閉可能に前記枠体に案内されてスライドする障子と、を有し、前記枠体は、その外周側に、前記障子のスライド方向に沿って形成された第1中空部を備えた外周部と、前記第1中空部に収容されて前記スライド方向に沿って設けられ、躯体に保持される不燃性または難燃性の補強部材と、前記外周部から前記枠体の内周側に突出し前記スライド方向に沿って形成された第2中空部を備えて前記障子を案内する内突出部と、前記第2中空部に収容されて前記スライド方向に沿って設けられた不燃性または難燃性の遮炎部材と、前記内突出部とともに前記スライド方向に沿って当該内突出部と繋がるように配置され
て前記内突出部とともに前記障子を案内する不燃性または難燃性の固定部材と、を有し、前記固定部材は、前記遮炎部材を支持するとともに前記補強部材に固定されていることを特徴とする建具である。
【0007】
このような建具によれば、外周部から枠体の内周側に突出し障子を案内する内突出部に備えられスライド方向に沿って形成された第2中空部に、不燃性または難燃性の遮炎部材が収容されており、遮炎部材はスライド方向に沿って内突出部と繋がって配置される不燃性または難燃性の固定部材に支持されており、固定部材は、外周部に備えられた第1中空部に収容されて躯体に保持される不燃性または難燃性の補強部材に固定されている。このため、たとえ、建具が火炎に晒されて加熱され合成樹脂製の枠体が溶融したとしても、遮炎部材は躯体に保持された補強部材に固定された固定部材に支持されているので、火炎が枠体と障子との間から見込み方向に貫通することを防止することが可能である。このため、火炎に晒されても貫通しにくい合成樹脂製の枠体を備えた建具を提供することが可能である。
【0008】
かかる建具であって、前記固定部材は、前記開口を閉じた状態の前記障子の戸尻側の部位と見込み方向において対向する位置に設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、不燃性または難燃性の固定部材が、開口を閉じた状態の障子の戸尻側の部位と見込み方向において対向する位置に設けられているので、障子の戸尻側となる、開口の内と外との境界部分において、火炎が貫通することを防止することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記固定部材の外周側には、前記スライド方向に沿うスリットが設けられており、前記遮炎部材の内周側には、外周側に窪む凹部が設けられており、前記遮炎部材が前記スリットに挿入されて前記固定部材の前記スライド方向における縁部に前記凹部の前記スライド方向における縁部が係合して位置決めされることが望ましい。
このような建具によれば、固定部材の外周側に設けられた、スライド方向に沿うスリットに挿入されて、固定部材のスライド方向における縁部に遮炎部材に設けられた凹部のスライド方向における縁部が係合するので、遮炎部材をスライド方向に位置決めすることが可能であり、遮炎部材の移動を規制することが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記固定部材は、前記遮炎部材が挿入された前記スリットの、見込み方向における両側に
て固定具に
より固定されていることが望ましい。
このような建具によれば、固定部材は、遮炎部材が挿入されたスリットの、見込み方向における両側にて固定されているので、遮炎部材は固定部材から外れることなく、より確実に固定部材により遮炎部材を支持することが可能である。
【0011】
かかる建具であって、前記遮炎部材には、前記障子を閉じたときに見込み方向において当該障子と対向する部位に熱発泡性耐火材が設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、遮炎部材には、開口を閉じた状態の障子と対向する部位に熱発泡性耐火材が設けられているので、建具が火炎に晒されて加熱された場合には熱発泡性耐火材が発泡して遮炎部材と障子との間が膨張した熱発泡性耐火材で埋められる。このため、より火炎が貫通しにくい建具を提供することが可能である。
【0012】
かかる建具であって、前記内突出部は、前記障子の周縁部が収容される収容部をなし、前記遮炎部材は、前記障子を閉じたときに見込み方向において当該障子が位置する一方側に熱発泡性耐火材が設けられていてもよい。
このような建具によれば、障子の周縁部が収容される収容部をなす内突出部に収容された遮炎部材の、開口を閉じた状態の障子が位置する一方側に熱発泡性耐火材が設けられているので、建具が火炎に晒されて加熱された場合には熱発泡性耐火材が発泡して遮炎部材と障子との間が膨張した熱発泡性耐火材で埋められる。このため、より火炎が貫通しにくい建具を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火炎に晒されても貫通しにくい、合成樹脂製の枠体を備えた建具を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態では、屋内外の境界に設けられ枠組みされて開口を形成する枠体と、枠体に案内されて開口を開閉可能にスライドする障子と、を有する建具として、
図1に示すような引き違い方式の建具を例に挙げて説明する。
【0017】
本実施形態の建具1は、引き違い方式にて移動可能な2枚の障子3、4と、躯体2に取り付けられて2枚の障子3、4により閉塞可能な開口10aを形成する合成樹脂製の枠体10とを有している。
【0018】
以下の説明においては、躯体2の取り付けられた建具1を室内側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向とするとともに、枠体10の面内方向において開口10aの中央側を内周側、開口10aの外側を外周側として示す。また、建具1を構成する各部材及び各部位については、単体の状態であっても建具1が取り付けられた状態で上下方向、左右方向、見込み方向等となる方向、及び、枠体の内周側、外周側にて方向を特定して説明する。
【0019】
枠体10は、同一の断面形状をなす合成樹脂製の4本の押出成形部材が上枠11、下枠12、左枠13及び右枠14をなすように矩形状に枠組みされて形成されている。上枠11、下枠12、左枠13及び右枠14は、
図1に示すように、各々所定の長さにて端部が45度に切断され、互いに突き合わされて溶着されている。
【0020】
上枠11、下枠12、左枠13及び右枠14は、同一の断面形状をなしているので、ここでは、上枠11、下枠12、左枠13及び右枠14の構造について、主に上枠11を例に挙げて説明する。また、以下の説明及び図面においては、下枠12、左枠13及び右枠14において上枠11と同一の部位には、各々下枠12及び各縦枠13、14を示す番号の後に同一のアルファベット添えた符号を付して示すものとする。
【0021】
上枠11は、
図2、
図3に示すように、左右方向に貫通し見込み方向に並べて設けられた3つの中空部を有する枠本体部11aと、枠本体部11aをなし開口10aの中央側に臨む平面を有する本体内板部11bと、本体内板部11bの室内側の端から下方に垂設された内壁部11cと、本体内板部11bの室外側の端から下方に垂設された外壁部11dと、内壁部11cと外壁部11dとの間を見込み方向において2つの領域に仕切るように本体内板部11bから枠体10の内周側に突出する内突出部としての中央壁部11eと、枠本体部11aの上面11fに設けられて躯体2に固定される躯体固定部11gと、内壁部11cの室内に臨む面に設けられて内装材としての額縁5に固定される内装材固定部11hと、を有している。ここで、上枠11の本体内板部11bと、本体内板部11bより上側、すなわち本体内板部11bより枠体10の外周側の部位が枠体10の外周部に相当する。
【0022】
内壁部11cと中央壁部11eと本体内板部11bとから形成され、上方に窪む室内側溝部11iに内障子3の上端部が収容されて、内障子3の左右方向への移動が内壁部11cと中央壁部11eとにより案内され、外壁部11dと中央壁部11eと本体内板部11bとから形成され、上方に窪む室外側溝部11jに外障子4の上端部が収容されて、外障子4の左右方向への移動が外壁部11dと中央壁部11eとにより案内される。ここで、室内側溝部11i、室外側溝部11jのように、枠体10の外周側に窪むように設けられた溝部が障子3、4の周縁部が収容される収容部に相当する。
【0023】
枠本体部11aが有する3つの中空部は、見込み方向において中央に位置する第1中空部としての中央中空部11kが、室内側及び室外側の端中空部11nより大きく形成されている。中央中空部11kは、本体内板部11bを挟んで下側に設けられた室内側溝部11iと室外側溝部11jとの上方に渡って設けられている。
【0024】
躯体固定部11gは、中央中空部11kの上方に突出されたヒレ状をなす部位であり、内装材固定部11hは、枠本体部11aの本体内板部11bより開口10aの中央側にて内壁部11cから室内側に突出されたヒレ状をなす部位である。本実施形態においては、躯体固定部11gは、中央中空部11kの室内側に偏らせて設けられている。
【0025】
中央中空部11kの本体内板部11bと対向して上方に位置する本体外板部11lには、中央中空部11kの内側に窪む段差部11mが、中央中空部11kの室内側に偏った位置に設けられている。この段差部11mには、中央中空部11k内に設けられる不燃性である金属製の第1枠側補強部材20と、躯体固定部11gとともに躯体2にビス止めされる連結金具21の補強材接合部21aとを本体外板部11lを介して接合するビス40の頭部が収容される。
【0026】
第1枠側補強部材20は、本体外板部11lの、段差部11mを形成している部位の下面と対向する内対向部20aと、中央中空部11k内の本体内板部11bの見込み方向におけるほぼ全域と対向する下対向部20bと、内対向部20aと下対向部20bとの室内側の端部同士を上下に繋ぐ上下接合壁部20cと、下対向部20bの室外側の端部から上方に延出された上方延出部20dと、を有する形状をなしている。ここで、連結金具21の左右方向の幅は、ビス止め可能な程度の幅、すなわち、上枠11の左右方向の幅より十分狭く形成されており、第1枠側補強部材20は、上枠11の左右方向のほぼ全域に渡って設けられている。
【0027】
上枠11の中央壁部11eは、左右方向に貫通する第2中空部としての内周中空部11oを有している。また、上枠11の中央壁部11eは、障子3、4にて開口10aが閉塞されたときに、障子3、4の戸尻側となる召合せ框34、44が見込み方向に対向している召合せ部10bに位置する部位が、
図4、
図5に示すように切除されている。すなわち、中央壁部11eは、切除された部位を挟んで左右の両側にそれぞれ設けられている。左右に設けられた2つの中央壁部11eの内周中空部11oには、左右方向におけるほぼ全域にわたるように、すなわち2つの中央壁部11e内を貫通するように金属製の遮炎部材16が設けられている。
【0028】
遮炎部材16は、断面がコ字状をなすように、ほぼ鉛直に配置される遮炎壁部16aと遮炎壁部16aを補強するために、遮炎壁部16aの上下の端部から室外側に延出された補強片16bとを有している。遮炎部材16は、2つの中央壁部11e内にわたるように配置されたときに、中央壁部11eの切除された部位に位置する部分の、内周側が切り欠かれて、外周側に窪む凹部としての切欠部16cが設けられている。
【0029】
上枠11において、2枚の障子3、4の間に位置する中央壁部11e内に設けられた遮炎部材16には、2枚の障子3、4を閉じた状態で遮炎壁部16aの各障子3、4側に臨む面に熱発泡性耐火材としての熱膨張性黒鉛38が設けられている。より具体的には、
図5に示すように、遮炎部材16には、内障子3と外障子4との召合せ部に位置する中継部材22に係合する切欠部16cより右側に位置する部位の内障子3側となる室内側面に熱膨張性黒鉛38が設けられており、切欠部16cより左側に位置する部位の外障子4側となる室外側面に熱膨張性黒鉛38が設けられている。
【0030】
2つの中央壁部11e間となる、中央壁部11eが切除された部位には、分断された中央壁部11eが繋がるように不燃性である固定部材としての中継部材22が取り付けられる。
【0031】
中継部材22は、上枠11に固定される枠固定部22aと、枠固定部22aの見込み方向の中央から突出される中継本体部22bとを有しており、中継本体部22bの先端に合成樹脂製の風止め部材24が嵌合される風止め部材嵌合部22cが設けられ、中継部材22の外周側にて本体内板部11bと対向する部位には、左右方向に沿って中継本体部22b側に窪み、遮炎部材16が収容されるスリット22gが形成されている。スリット22gの見込み方向の幅は、遮炎部材16の見込み方向の幅より僅かに広く形成されている。
【0032】
遮炎部材16は、切欠部16cの外周側がスリット22gに収容されるように中継部材22に係合され、召合せ部10bの本体内板部11bを介して第1枠側補強部材20にビス止めされる。遮炎部材16がスリット22gに収容されて固定された中継部材22は、切欠部16cの左右の縁部16dと中継部材22の左右方向の縁部22hとが各々僅かに間隔を隔てて対向するように遮炎部材16と係合することにより、遮炎部材16の左右方向における移動が規制される。
【0033】
上枠11に取り付けられる中継部材22は、障子3、4が火炎等により加熱されて溶融する場合であっても、遮炎部材16を保持しつつ障子3、4を吊り下げて保持することができるように設けられる不燃性の吊り下げ金具23とともにビス止めされる。また、中継部材22と吊り下げ金具23とが本体内板部11bを介してビス止めされた第1枠側補強部材20の下対向部20bと本体内板部11bとの間には、熱膨張性黒鉛38が設けられている。
【0034】
中継部材22は、上枠11に固定されると、召合せ部10bにて分断された中央壁部11eの一方側と他方側とが中継本体部22bにて繋がり、風止め部材24が中央壁部11eより開口10aの中央側に突出するように構成されている。
【0035】
上枠11に固定される中継部材22の枠固定部22aは、中継本体部22bが設けられている中央部22dが、当該中央部22dより、室内側及び室外側に位置し固定用ビスの貫通穴22eが設けられた脇部22fより厚く形成されている。このため、中央部22dが上枠11に当接されると、脇部22fと上枠11との間に空隙が生じるように形成されている。この空隙に吊り下げ金具23の固定部23aが介在され、吊り下げ金具23は中継部材22とともに第1枠側補強部材20の下対向部20bにビス止めされている。
【0036】
吊り下げ金具23は、中継部材22が有する枠固定部22aの脇部22fと上枠11との間の空隙に介在される固定部23aと、固定部23aから垂設され中央壁部11eと見込み方向に間隔を隔てて対向する対向壁部23bと、対向壁部23bの下端に設けられ、障子3、4に設けられた不燃性のフック金具36と係合される鉤状部23cとを有している。
【0037】
吊り下げ金具23の対向壁部23bは、上枠11に取り付けられたときに室内側溝部11i及び室外側溝部11jの見込み方向の中央より僅かに内壁部11c及び外壁部11d側に偏って配置されるように形成され、鉤状部23cが室内側溝部11i及び室外側溝部11jの見込み方向のほぼ中央に位置するように形成されている。吊り下げ金具23は、鉤状部23cが、中央壁部11eとほぼ同じ位置まで下方に突出されており、鉤状部23cと中央壁部11eとが見込み方向において互いに間隔を隔てるように取り付けられる。また、各吊り下げ金具23の対向壁部23bの中央壁部11eに臨む面には、室内側溝部11iと室外側溝部11jに設けられたフック金具36より上側の部位にそれぞれ熱膨張性黒鉛38が設けられている。
【0038】
吊り下げ金具23の左右方向の幅は、
図6に示すように、中継部材22の左右方向の幅より広く形成されており、中継部材22の固定部23aと重なる部位から繋がって、吊り下げられる障子3、4の戸先側にそれぞれ延出されている。
【0039】
下枠12の室内側溝部12i及び室外側溝部12jには、
図7に示すように、内障子3及び外障子4に設けられた戸車60が載置されて内障子3及び外障子4を案内するレール15aを備えたレール部材15が設けられている。このレール部材15は、アルミニウム製の押出成形部材であり、下枠12の全長に渡って設けられている。
【0040】
下枠12の中央中空部12k内には、第2枠側補強部材120が設けられている。第2枠側補強部材120は、本体内板部12bと対向する内対向板部120aと、見込み方向に間隔を隔てて設けられ内対向板部120aから外周側に延出された2本の延出部120bと、延出部120bを共有し内対向板部120aから外周側に窪むように形成されたビス止め用の2つの溝部120cと、室内側に設けられた延出部120bの先端側から室内側に延出され段差部12mと対向してビス止めされる固定片120dとを有している。2つの溝部120cの見込み方向の間隔は、中継部材22に設けられた固定用ビスの貫通穴22eの間隔と一致している。
【0041】
左枠13の中央中空部13kには、
図8、
図9に示すように、上枠11と同様に第1枠側補強部材20が設けられており、左枠13は、連結金具21により、中央中空部13k内に設けられた第1枠側補強部材20と本体外板部13lを介して接合され、躯体固定部13gとともに躯体2にビス止めされて躯体2と第1枠側補強部材20とが連結されている。
【0042】
左枠13が有する室外側溝部13jには、外障子4と係合する不燃性である金属製の係合部材25が設けられており、本体内板部13bを介して中央中空部13k内の第1枠側補強部材20にビス止めされている。中央中空部13k内の第1枠側補強部材20には、内対向部20aの外周側(左側)の面において中央壁部13eの裏側に相当する位置から室外側の部位に熱膨張性黒鉛38が、長手方向における全域に渡って設けられている。
【0043】
右枠14の中央中空部14kには、
図8、
図10に示すように、下枠12と同様の第2枠側補強部材120が設けられており、右枠14は、連結金具21により、中央中空部14k内に設けられた第2枠側補強部材120と本体外板部14lを介して接合され、躯体固定部14gとともに躯体2にビス止めされて躯体2と第2枠側補強部材120とが連結されている。
【0044】
右枠14が有する室内側溝部14iには、内障子3と係合する金属製の係合部材25が設けられており、本体内板部14bを介して第2枠側補強部材120の一方の溝部120cにビス止めされている。左枠13に設けられた係合部材25は、係合片25aの先端は、外壁部13d及び中央壁部13eの先端とほぼ同じ位置まで突出しており、右枠14に設けられた係合部材25は、係合片25aの先端は、内壁部14c及び中央壁部14eの先端とほぼ同じ位置まで突出している。
【0045】
係合部材25は、断面形状がL字状をなすアルミニウム製の部材であり、左枠13に固定される係合部材25と右枠14に固定される係合部材25とは同一の部材である。係合部材25は、内障子3または外障子4と係合する係合片25aと、係合片25aと直交し左枠13及び右枠14に当接される固定片25bとがL字状をなすように形成されている。
【0046】
係合部材25は、本体内板部13b、14bを介して固定片25bが第1枠側補強部材20または第2枠側補強部材120にビス止めされると、係合片25aが室外側溝部13jまたは室内側溝部14iにて見込み方向におけるほぼ中央にて開口10aの中央側に向かって突出するように配置される。係合片25aは、固定片25b側となる基端部と先端部とを除く部位の見込み方向の厚みが、基端部及び先端部より薄く形成されて、室内側と室外側とに開放された窪みが設けられており、この窪みに熱膨張性黒鉛38が、長手方向における全域に渡って設けられている。
【0047】
内障子3及び外障子4は、矩形状に框組みされた框体35、45と、框体35、45にて囲まれた領域に設けられる複層ガラス7と、複層ガラス7を室外側から押さえる押縁8、とを有している。また、内障子3の召合せ框34には、上下方向にける中央付近に障子3、4を施錠するためのクレセント錠50が設けられており、外障子4の召合せ框34には、クレセント錠50と係合する受け部材51が設けられている。
【0048】
框体35、45は、同一の断面形状をなす合成樹脂製の3本の押出成形部材が上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43と、断面形状が異なる合成樹脂製の召合せ框34、44とを有している。上框31、41、下框32、42、戸先框33、43、及び、召合せ框34、44は、各々長手方向に貫通する框体中空部35a、45aを有する框本体35b、45bを有しており、框本体35b、45bの室内側の端部から長手方向における全域に渡って内周側に突出させた内側突出部35c、45cが設けられ、框本体35b、45bの室外側の端部には框体中空部35a、45a内に窪み押縁8が嵌合される嵌合凹部35d、45dが設けられている。
【0049】
そして、上框31、41、下框32、42、戸先框33、43、及び、召合せ框34、44は、各々所定の長さにて端部が45度に切断され、共通に設けられている框本体35b、45bと、内側突出部35c、45cとが、互いに突き合わされて溶着されている。上框31、41、下框32、42、戸先框33、43、及び、召合せ框34、44は、溶着される際に、各框体中空部35a、45a内には、不燃性である金属製の框側補強部材27が収容される。框側補強部材27は、対向する2つの壁部27aと2つに壁部27aの一方の端部同士を繋ぐ連結部27bとで断面がコ字状をなす金属製の部材であり、コ字状の開放された側が室内側を向くように配置されている。框側補強部材27の連結部27bは、嵌合凹部35d、45dより室内側に位置しており、連結部27bの嵌合凹部35d、45dと対向しない位置の表裏面にそれぞれ熱膨張性黒鉛38が、長手方向における全域に渡って設けられている。
【0050】
各框体中空部35a、45a内に収容された框側補強部材27は、一方の壁部27aに、框体35、45の内周側、すなわち、上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43の框本体35b、45bより内周側にて複層ガラス7を保持する保持金具28がビス止めされている。
【0051】
上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43の外周側には、框本体35b、45bの室内側及び室外側から外側に突出する内側外周突部35e、45e及び外側外周突部35f、45fが見込み方向において互いに間隔を隔てて設けられている。すなわち、上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43の外周側には、框本体35b、45b、内側外周突部35e、45e及び外側外周突部35f、45fにて、框体35、45の内周側に窪む框側溝部35g、45gが設けられている。
【0052】
上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43が有する各框側溝部35g、45gの内周面には、遮炎金具29が長手方向における全域に設けられ、各框体中空部35a、45a内に収容された框側補強部材27とビス止めされている。また、上框31、41の框側溝部35g、45g内には、上框31、41の召合せ部側に、上枠11に設けられた吊り下げ金具23と対向する位置に、吊り下げ金具23の鉤状部23cと係合可能なフック部36aを有するフック金具36が、遮炎金具29とともに框側補強部材27とビス止めされている。すなわち、内障子3及び外障子4の上端側において、召合せ側にそれぞれフック金具36が設けられている。
【0053】
吊り下げ金具23とフック金具36とは、通常は互いに接触および係合することなく間隔を隔てて移動している。そして、内障子3及び外障子4にて開口10aを閉塞した状態にて、火炎等により枠体10及び框体35に軟化及び溶融等が生じて内障子3及び外障子4が降下したときに、吊り下げ金具23とフック金具36とが係合して、内障子3及び外障子4が保持されるように構成されている。
【0054】
内障子3の框側溝部35gを形成する内側外周突部35eの内面に沿わされた遮炎金具29の表面と、外障子4の框側溝部45gを形成する外側外周突部45fの内面に沿わされた遮炎金具29の表面とには、熱膨張性黒鉛38が上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43の全域に渡って設けられている。また、内障子3及び外障子4の戸先框33、43の遮炎金具29の内側には引寄部材37が設けられており、内障子3及び外障子4にて開口10aを閉塞したときに、左枠13及び右枠14に取り付けられた係合部材25の係合片25aが戸先框33、43の框側溝部35g、45gに挿入され、框側溝部35g、45g内にて係合片25aと引寄部材37とが係合する。
【0055】
図11に示すように、召合せ框34、44の框側溝部35g、45g内にも、2つの壁部271aと連結部271bとで断面がコ字状をなす金属製の框側補強部材271が設けられている。召合せ框34、44は、上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43と異なり、障子を閉じた状態でも上下端部以外は枠体と係合しないので加熱により反りが生じやすい。このため、上框31、41、下框32、42、及び、戸先框33、43に設けられた框側補強部材27より剛性が高い、具体的には厚みが厚い框側補強部材271が設けられている。框側補強部材271は、コ字状の開放された側が戸尻側を向くように配置されている。框側補強部材271の一方の壁部271aは、嵌合凹部35d、45dより室内側に位置し、嵌合凹部35d、45dと対向しない位置において、外障子は室内側に、内障子は室外側にそれぞれ熱膨張性黒鉛38が、長手方向における全域に渡って設けられている。
【0056】
本実施形態の建具1によれば、本体内板部11bから枠体10の内周側に突出し障子3、4を案内する中央壁部11eに備えられスライド方向に沿って形成された内周中空部11oに金属製の遮炎部材16が収容されており、遮炎部材16はスライド方向に沿って中央壁部11eと繋がるように配置される中継部材22に支持されており、中継部材22は、中央中空部11kに収容されて躯体2に保持される金属製の第1枠側補強部材20に金属製の固定具、たとえばビス26により固定されている。このため、たとえ、建具1が火炎に晒されて加熱され合成樹脂製の枠体10が溶融したとしても、遮炎部材16は躯体2に保持された第1枠側補強部材20に固定された中継部材22に支持されているので、火炎が枠体10と障子3、4との間から見込み方向に貫通することを防止することが可能である。このため、火炎に晒されても貫通しにくい合成樹脂製の枠体10を備えた建具1を提供することが可能である。
【0057】
また、金属製の中継部材22が、開口10aを閉じた状態の障子3、4の戸尻側の部位と対向する位置に設けられているので、障子3、4の戸尻側となる、室内外の境界において、火炎が貫通することを防止することが可能である。
【0058】
また、中継部材22の外周側に設けられた、左右方向に沿うスリット22gに挿入されて、中継部材22の左右方向における縁部22hに遮炎部材16に設けられた切欠部16cの左右方向における縁部16dが係合するので、遮炎部材16を左右方向に位置決めすることが可能であり、遮炎部材16の移動を規制することが可能である。
【0059】
また、中継部材22は、遮炎部材16が挿入されたスリット22gの、見込み方向における両側にて固定されているので、遮炎部材16が中継部材22から外れることを防止することが可能である。
【0060】
また、遮炎部材16には、開口10aを閉じた状態の障子3、4と対向する部位に熱膨張性黒鉛38が設けられているので、建具1が火炎に晒されて加熱された場合には熱膨張性黒鉛38が膨張して遮炎部材16と障子3、4との間が膨張した黒鉛で埋められる。このため、火炎がより貫通しにくい建具1を提供することが可能である。
【0061】
また、障子3、4の周縁部が収容される室内側溝部11i、室外側溝部11jを形成する中央壁部11eに収容された遮炎部材16の、開口10aを閉じた状態の障子3、4が位置する一方側に熱膨張性黒鉛38が設けられているので、建具1が火炎に晒されて加熱された場合には熱膨張性黒鉛38が膨張して遮炎部材16と障子3、4との間が膨張した黒鉛で埋められる。このため、火炎がより貫通しにくい建具1を提供することが可能である。
【0062】
上記実施形態においては、上枠11の中央壁部11e内に遮炎部材16を備えた例について説明したが、下枠12にも遮炎部材を備える、或いは、左右の縦枠にも遮炎部材を備えても構わない。また、遮炎部材16を支持する中継部材22を召合せ部に設けた例について説明したが、これに限らず、遮炎部材を支持することができれば、その他の場所に設ける、或いは、複数設けても構わない。たとえば、引き違い方式の障子を備えた建具の縦枠に遮炎部材を備える場合には、上下の端部に中継部材22を設けて遮炎部材を支持することにより、縦枠に設けた遮炎部材を縦枠に沿わせて支持することが可能である。
【0063】
また、上記実施形態においては、本体内板部11bから枠体10の内周側に突出し障子3、4を案内し、遮炎部材16が収容される中央壁部11eが、見込み方向において内障子3と外障子4との間に設けられて、内障子3および外障子4の周縁部が収容される室内側溝部11iおよび室外側溝部11jを構成する例について説明したが、中央壁部11eが内障子および外障子のレールをなす構成であっても構わない。
【0064】
上記実施形態においては、左右方向にスライドする内障子3及び外障子4を備えた引き違い方式の建具を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。たとえば、3枚以上の障子が左右方向にスライドする引き違い方式の窓や両袖片引き窓や引き分け窓、枠体内の領域が縦骨により区分けされ、区分けされた一方の領域がFIX窓や壁をなす片引き窓であっても構わない。片引き窓の場合には、障子の戸尻側の部位と縦骨とが対向する部位が召合せ部となる。また、枠体10の内周側に突出する中央壁部11eが縦枠に設けられて障子が上下方向にスライドする上げ下げ窓であっても構わない。この場合には、上述した枠体10が90度回転した状態のように、縦枠に設けられた中央壁部11e内に遮炎部材が設けられ、上下方向のほぼ中央の召合せ部に中継部材を設ける。
【0065】
上記実施形態においては、吊り下げ金具23及び吊り下げ金具23と係合するフック金具36を内障子3及び外障子4の召合せ部10bに設ける例について説明したが、これに限らず、召合せ部10bと、内障子3及び外障子4の戸先側にそれぞれ設けられていてもよい。
【0066】
上記実施形態においては、遮炎部材16、第1枠側補強部材20および框側補強部材27を不燃性である金属製としたが、鉄・ステンレス等の不燃性である金属等は、もちろんのこと、火災によりまず表面が炭化し、炭化した表面の断熱効果により内部に燃え進むことを遅らせる、例えば、MDF・木材等のような難燃性の材料にて補強部材を構成しても構わない。また、前述した金属製材料と木材の組合せで構成された補強材でも構わない。
【0067】
また、中継部材22、吊り下げ金具23、フック金具36を不燃性である金属製としたが、鉄・ステンレス等の不燃性である金属はもちろんのこと、燃焼に時間がかかる難燃性の部材にて構成しても構わない。
【0068】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。