【文献】
Marion Heckenroth 外5名 Chem.Eur.J,2009年,15,9375−9386,S9375/1−S9375/6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配位子KおよびK’は、水素アニオン、重水素アニオン、F、Cl、Br、I、アルキルアセチリド、アリール−またはヘテロアリールアセチリド、アルキル基、アルキルアリールラジカル、アリール基(二座であってもよい)、ヘテロアリール基(二座であってもよい)、水酸化物、シアン化物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、脂肪族または芳香族アルコレート、脂肪族または芳香族チオアルコレート、アミド、カルボキシレート、アニオン性の窒素含有複素環、シクロペンタジエニル(Cp)、及びインデニルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3の1項以上に記載の化合物。
LおよびL’は、アミン、エーテル、水、アルコール、一酸化炭素、ニトリル、一酸化窒素、イソニトリル、オレフィン、窒素含有複素環、ホスフィン、ホスフィット、脂肪族もしくは芳香族スルフィド、カルベン、ジアミン、イミン、2個の窒素原子を含有する複素環、ジホスフィン、及び、共役ジエンからなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜4の1項以上に記載の化合物。
請求項1〜5の1項以上に記載の少なくとも1種の化合物を含有する電子デバイスであって、有機エレクトロルミネッセンスデバイス、有機発光トランジスタ、発光電気化学電池または有機レーザーダイオードである電子デバイス。
有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、1以上の発光層において請求項1〜5の1項以上に記載の化合物が発光化合物として使用されることを特徴とする請求項8に記載の電子デバイス。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、ビスイミダゾリウム塩と、それらに由来する新規のモノおよびビスカルベンと、対応するモノおよびビスカルベンをリガンドとして含有する金属錯体と、本発明のビスイミダゾリウム塩、本発明のモノおよびビスカルベンならびに本発明の金属錯体を調製するための方法と、本発明のビスイミダゾリウム塩、本発明のモノおよびビスカルベンの使用と、本発明の金属錯体の使用とに関する。
【0002】
イミダゾリウムおよびビスイミダゾリウム塩ならびにそれらの調製は、文献から知られている。これらは、N−複素環式カルベンおよびそれらの金属錯体の前駆体として働く化合物である。カルベン自体は、求核有機触媒として使用することができる。N−複素環式カルベンの金属錯体は、金属触媒として使用することができる(Herrmann、Angew.Chem.Int.Ed.2002、41、1290〜1309)。これらの金属錯体は、さらに、電子デバイスにおいて、例えば有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおいて発光体として使用することができる。
【0003】
N−複素環式カルベンの領域の重要なクラスの化合物は、いわゆるビスカルベンであり、これらは、互いに結合した2つのカルベン単位を含有する。それらは、二座キレート配位子として機能することができ、したがって、対応する金属錯体が高い安定性を達成するのを促進する。特に、1以上のCH
2単位を介して架橋されたビスイミダゾリウム塩またはビスカルベンが文献(Perisら、Chem.Rev.2009、109、3677〜3707)から知られている。
【化1】
【0004】
大部分のビスカルベンリガンドの特色の1つは、リガンド構造の回転を伴うバイメタル錯体も形成する可能性があることである。
【0005】
ビスカルベンの中で、2つのカルベン単位の直接的なN−N結合が存在している例はごくわずかしかない。
【0006】
N−N結合ビスカルベンの非常に早期の例は、Tschugajeffらによる1925年のものである(Z.Anorg.Allg.Chem.1925、37〜42)。しかし、著者らは、このとき、彼らが単離した化合物がビスカルベン錯体であることに気付いていなかった。カルベン構造は、1970年にBurkeら(J.Am.Chem.Soc.1970、2555〜2557)およびShaw(Chem.Comm.1970、183)によって最初に推論され、Burkeは、X線構造分析により構造的証拠を示すことができた。Tschugajeffカルベンの構造は以下で示す。
【化2】
【0007】
様々なTschugajeffカルベンが、SlaughterらによりSuzuki−Miyaura反応における触媒として首尾よく使用された(Slaughterら、Tetrahedron Lett.2005、46、1399〜1403およびOrganometallics、2006、25、491〜505)。
【0008】
R.H.Crabtreeら(Chem.Comm.2007、2267〜2269およびOrganometallics 2008、27、2128〜2136)は、トリアゾールベースのN−N結合ビスイミダゾリウム塩およびその金属錯体の一部について記載している。しかし、ここで平面配位は自動的に生じるものではないことに留意されたい。同様に、リガンド構造の回転を伴う2つの金属中心への非キレート配位が観察された。
【化3】
【0009】
Perisら(Dalton Trans.2010、39、6339〜6343)は、触媒的水素移動のためのルテニウム錯体の調製目的でのCrabtreeらにより開発されたリガンドの使用について記載している。
【0010】
Crabtreeらにより記載されている系は、分子が強塩基性の反応条件下で再配列され、もはや金属中心に配位することができないので、ビスカルベンを生じるためのビスイミダゾリウム塩の脱プロトン化が可能ではないという不利益を有する。したがって、遊離ビスカルベンから出発する金属錯体の合成が可能ではなく、それにより、金属前駆体の選択が制限される。さらに、リガンド解離の場合、遊離カルベンの分解が予期されるので、金属錯体の安定性が低いと予期される。
【0011】
したがって、本発明の目的は、モノおよびビスカルベンならびにそれらの金属錯体用の前駆体として働くことができるクラスのN−N結合ビスイミダゾリウム塩を開発することであった。Crabtreeらにより観察された再配列が防止され、さらに、N−N結合周りの回転がこのように妨害されたことにより、金属錯体におけるキレート配位が優先される。さらに、本発明は、ビスイミダゾリウム塩、モノおよびビスカルベンならびにそれらの金属錯体を調製するための方法を提供するという目的に基づいていた。本発明のさらなる目的は、触媒および/または電子デバイスにおける、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける発光体としての使用に適した金属錯体を提供することであった。
【0012】
この目的は、以下に記載の式(1)、(2)および(3)の金属錯体の提供、ならびにこれらの金属錯体がベースにしている式(4)および(5)のリガンドの提供により達成される。
【0013】
本発明の金属錯体は、高い安定性により区別され、これは、おそらく、ビスカルベンリガンドが適切なバイト角を有する強固なコンホメーションを有し、フェナントロリンおよびビピリジンリガンドと同様に挙動することができるという事実に起因している。
【0014】
したがって、本出願は、以下の一般式(1)、(2)および(3)の金属錯体に関し、
【化4】
【0015】
ここで、使用された記号および添え字は、以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、元素の周期表の1〜13族、ランタノイドまたはアクチノイドから選択される荷電または非荷電金属原子であり;
R、R’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、水素、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖もしくは分枝アルケニル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの三重結合を有する直鎖もしくは分枝アルキニル、3〜10個のC原子を有する飽和、部分もしくは完全不飽和のシクロアルキル(これは、1〜10個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)、無置換もしくは置換のアリールもしくは芳香族環系、無置換もしくは置換の複素環もしくはヘテロ芳香族環系または置換もしくは無置換のアラルキルもしくはヘテロアラルキルであり、ここで、一方または両方の置換基RおよびR’は、ハロゲンにより任意の所望の位置で部分的に置換されているかもしくは完全に置換されているか、またはCNもしくはNO
2により任意の所望の位置で部分的に置換されていてもよく、ハロゲンは、F、Cl、BrおよびIから選択され、一方または両方の置換基RおよびR’の炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
3−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR
1−、−PR
1−、−P(O)R
1−、−P(O)R
1−O−、−O−P(O)R
1−O−、および−P(R
1)
2=N−から選択される原子および/または原子団により置きかえられていてもよく、ここで、R
1は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは全フッ素化アルキル、3〜10個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換のアリールまたは飽和もしくは不飽和、無置換もしくは置換の複素環であり;
X、X’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR
2、SiR
2、N、P、OまたはSであり、ここで、R
2は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、R
2は、RまたはR’と結合して3〜20員環を形成していてもよく、ラジカルRもR’も、XまたはX’がOまたはSを表す場合、XまたはX’に結合しておらず;
W、W’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR
3、SiR
3、N、NR
3またはP、PR
3であり、ここで、R
3は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、WおよびW’のラジカルのR
3は、互いに結合して架橋を形成していてもよく;
Aは、1〜5個の架橋原子からなる架橋、飽和または不飽和単位であり、ここで、架橋原子は、CR
4、CR
4R
5、N、NR
4、P、PR
4、O、S(式中、R
4およびR
5は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてもよく、RもしくはR’と同じ意味を有するか、またはハロゲンF、Cl、Br、Iである。)から選択され、炭素の場合、該単位は、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子N、P、O、Sにより1回以上割り込まれていてもよく;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
6、N、−CR
6R
7−、−SiR
6R
7−、−NR
6−、−PR
6−、−BR
6−、−BNR
6−、−BNR
6R
7−、−O−または−S−であり、ここで、R
6およびR
7は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてもよく、RもしくはR’と同じ意味を有するか、または1〜3個の架橋原子からなる架橋単位であり、架橋原子は、CR
6、−CR
6R
7−、−SiR
6R
7−、−BR
6−、−BNR
6−、−BNR
6R
7−、−NR
6−、−PR
6−、−O−、−S−(式中、R
6は、RまたはR’と同じ意味を有する。)から選択され、炭素の場合、該単位は、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子B、Si、N、P、O、Sにより1回以上割り込まれているか、および/またはR
6およびR
7により置換されているか、および/またはハロゲン原子F、Cl、Br、Iにより置換されていてもよく、少なくとも2個のC原子の場合、これらは、飽和または一〜多価不飽和の様式で互いに結合していてもよく、さらに、ラジカルR
6および/またはR
7は、YまたはY’内、さらにはYとY’の間の両方で、互いに結合していてもよく;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR
8、SiR
8、B、NまたはPであり、ここで、R
8は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、ZおよびZ’のラジカルR
8は、互いに結合して環を形成していてもよく;
ただし、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子は、同一であるかまたは互いに独立し、Si、B、N、O、SまたはPから選択されるヘテロ原子を含有し;
K、K’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、モノ、ジまたはトリアニオン性リガンドであり、これは、単座、二座、三座、四座、五座または六座であってもよく;
L、L’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、中性の単座、二座、三座、四座、五座または六座配位子であり、
o、o’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、リガンドKまたはK’の数0〜6であり、ここで、oが1より大きい場合、リガンドKおよびK’は、同一であるかまたは異なっていてもよく;
p、p’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、リガンドLまたはL’の数0〜6であり、ここで、pが1より大きい場合、リガンドLおよびL’は、同一であるかまたは異なっていてもよく;
ここで、oまたはo’は、全てのリガンドKおよびK’の電荷が使用される金属原子の原子価に対応するように選択され、oとpまたはo’とp’の合計は、使用される金属原子の配位数ならびにリガンドKとLまたはK’とL’の添え字sおよび配座性によって決まり、
ここで、KまたはK’は、弱配位性または非配位性であってもよく、対イオンとして、金属錯体の電荷を平衡させ、
ここで、sは、金属錯体が1、2または3個のビスカルベンリガンドを含有するような1〜3の整数であり、これは、互いに独立して同一でも異なっていてもよく、
ここで、金属原子MおよびM’に応じて、リガンドL
p、L’
p’、K
o、K’
o’およびビスカルベンリガンドの立体的影響は、また、金属原子に対して非常に弱い結合を形成するか、または配位的結合のみ形成してもよい。
【0016】
式(2)のMとM’の間には相互作用、結合相互作用または反結合相互作用が存在せず、第2のカルベンリガンドは、オリゴマーまたはポリマー構造が形成するように架橋様式で別の金属原子にも結合していてもよい。
【0017】
さらに、同じ原子または隣接する原子のいずれかに結合した2つ以上のラジカルは、互いに芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環系を形成していてもよい。このことは、例えば、基Aで隣接する原子に結合する2つのラジカルに当てはまる。したがって、芳香族基Aも形成することができる。
【0018】
さらに、2つ以上のリガンドは、また、基RまたはR’を介して互いに結合していてもよく、したがって、四座配位子系または多脚型配位子を形成する。
【0019】
またさらに、基Rおよび/またはR’は、MまたはM’にも配位していてもよい。
【0020】
本発明の意味における完全不飽和の置換基は、芳香族置換基も意味するものとされる。
【0021】
詳細には、様々なラジカルに使用した総称は、以下の意味を有する:
1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル:最大で20個のC原子を有する直鎖または分枝炭化水素ラジカル、好ましくはC
1〜C
12−アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または1,3−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシルならびにそれらの異性体。1〜8個のC原子を有するアルキルラジカルが特に優先される。
【0022】
2〜20個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル:少なくとも1つの二重結合を任意の所望の位置に有する不飽和、直鎖または分枝炭化水素ラジカル、好ましくはC
2〜C
12−アルケニル、例えば、エテニル、1−または2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−、2−または3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、1−、2−、3−または4−ペンテニル、1−、2−、3−、4−または5−ヘキセニル、およびそれらの異性体ならびにヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニルおよびドデセニルの異性体。2〜8個のC原子を有するアルケニルラジカルが特に優先される。
【0023】
2〜20個のC原子および少なくとも1つの三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル:少なくとも1つの三重結合を任意の所望の位置に有する不飽和、直鎖または分枝炭化水素ラジカル、好ましくはC
2〜C
12−アルキニル、例えば、エチニル、1−または2−プロピニル、1−、2−または3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、1−、2−、3−または4−ペンチニル、1−、2−、3−、4−または5−ヘキシニル、およびそれらの異性体ならびにヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニルおよびドデシニルの異性体。2〜8個のC原子を有するアルキニルラジカルが特に優先される。
【0024】
3〜10個のC原子を有する飽和、部分または完全不飽和のシクロアルキル(これは、1〜10個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。):単環式、飽和、部分または完全不飽和の、すなわち、3〜10個の炭素環員を有する、好ましくは3〜7個の炭素環員を有する芳香族炭化水素基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニル、(各々は、C
1〜C
10−アルキル基により置換されていてもよい。)。
【0025】
個々の置換基は、上記の通り、互いに独立して、任意の所望の位置で、ハロゲンにより部分的もしくは完全に置換されているか、またはCNもしくはNO
2により部分的に置換されていてもよく、ここで、ハロゲンは、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される。置換基内のハロゲン原子の数は、好ましくは最大で19、特に好ましくは最大で9、非常に特に好ましくは最大で3であり、特に、置換基は、ハロゲン原子により置換されていない。置換基内のCNおよびNO
2基の数は、好ましくは最大で4、特に好ましくは1であり、特に、置換基は、CNまたはNO
2基により置換されていない。
【0026】
本発明において、1以上の置換基RおよびR’の炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
3−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR
1−、−PR
1−、−P(O)R
1、−P(O)R
1−O−、−O−P(O)R
1−O−、および−P(R
1)
2=N−から選択される原子および/または原子団により置きかえられていてもよく、ここで、R
1は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは全フッ素化アルキル、飽和または部分もしくは完全不飽和の3〜7個のC原子を有するシクロアルキル、無置換もしくは置換のフェニルまたは無置換もしくは置換の複素環であり、アルキルおよびシクロアルキルという用語は、上記の意味を有する。R
1からの複素環は、酸素、窒素および/または硫黄原子を含有する好ましくは5〜9員、特に5〜6員環系、例えば、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−、4−または5−イミダゾリル、3−、4−または5−ピラゾリルを表す。
【0027】
本発明の意味におけるアリール基は、6〜40個のC原子を含有し;本発明の意味におけるヘテロアリール基は、2〜40個のC原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、ここで、C原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。ここで、アリール基またはヘテロアリール基は、単純芳香族環、すなわち、ベンゼン、または、単純芳香族複素環、例えばピリジン、ピリミジン、チオフェン等、または、縮合されたアリールまたはヘテロアリール基、例えばナフタレン、アントラセン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン等のいずれかを意味するものとされる。
【0028】
本発明の意味における芳香族環系は、該環系に6〜60個のC原子を含有する。本発明の意味における芳香族複素環系は、該環系に1〜60個のC原子および少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、ここで、C原子とヘテロ原子の合計は、少なくとも5である。ヘテロ原子は、好ましくは、N、Oおよび/またはSから選択される。本発明の意味における芳香族環または芳香族複素環系は、必ずしもアリールまたはヘテロアリール基のみを含有するとは限らず、その代わり、ここでさらに、複数のアリールまたはヘテロアリール基が非芳香族単位(好ましくは、10%未満のH以外の原子)、例えば、C、NまたはO原子またはカルボニル基などにより割り込まれていてもよい系を意味することが意図される。したがって、例えば、9,9’−スピロビフルオレン、9,9−ジアリールフルオレン、トリアリールアミン、ジアリールエーテル、スチルベンなどの系、2個以上のアリール基が、例えば、線状または環式のアルキル基、または、シリル基により割り込まれている同様の系も本発明の目的のための芳香族環系であることが意図される。さらに、2以上のアリールまたはヘテロアリール基が直接互いに結合した系、例えば、ビフェニルまたはテルフェニルは、同様に、芳香族またはヘテロ芳香族環系を意味することが意図される。
【0029】
本発明の目的のために、C
1−〜C
40−アルキル基(これらはさらに、個々のH原子またはCH
2基は、上述の基により置換されていてもよい。)は、例えば、ラジカルメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、シクロブチル、2−メチルブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、tert−ペンチル、2−ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、tert−ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロペンチル、2−メチルペンチル、n−ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、4−ヘプチル、シクロヘプチル、1−メチルシクロヘキシル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、シクロオクチル、1−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチル、2−(2,6−ジメチル)オクチル、3−(3,7−ジメチル)オクチル、アダマンチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルを意味するものとされる。アルケニル基は、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを意味するものとされる。アルキニル基は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを意味するものとされる。C
1−〜C
40−アルコキシ基は、例えば、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシまたは2−メチルブトキシを意味するものとされる。
【0030】
5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族環または芳香族複素環系(各々は上述のラジカルRにより置換されていてもよく、任意の所望の位置を介して芳香族または複素環式芳香族環系に連結していてもよい。)は、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ベンズアントラセン、フェナントレン、ベンゾフェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンゾフルオランテン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、cis−またはtrans−インデノフルオレン、cis−またはtrans−インデノカルバゾール、cis−またはtrans−インドロカルバゾール、cis−またはtrans−モノベンゼンインデノフルオレン、cis−またはtrans−ジベンゾインデノフルオレン、トルキセン、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、インドロカルバゾール、インデノカルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフチイミダゾール(naphthimidazole)、フェナントリイミダゾール(phenanthrimidazole)、ピリジミイミダゾール(pyridimidazole)、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン(fluorubin)、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジンおよびベンゾチアジアゾールに由来する基を意味するものとされる。
【0031】
式(1)、(2)および(3)の化合物の好ましい態様を以下に記載する。
【0032】
X、X’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、意味C、CR
2、SiR
2、N、P、OまたはSを有し、ここで、R
2は、同一であるかまたは異なり、RおよびR’と同じ意味、好ましくはC、CR
2、N、P、O、またはS、特に好ましくはCR
2、NおよびSを有し、R
2は、RまたはR’と結合して3〜20員環を形成していてもよく、好ましくは3〜12員環を形成していてもよく、特に好ましくは5〜8員環を形成していてもよい。XまたはX’がOまたはSを表す場合、ラジカルRもR’もこれらの基に結合していない。XおよびX’は、非常に特に好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、CR
2またはN、特にNである。
【0033】
二重結合は、好ましくは各々の場合、WとYの間およびW’とY’の間に形式上存在し、すなわち、二重結合は、Lewis表記法で引くことができる。これは、例えば、WがCを表しYがCR
6またはNを表す場合である。
【0034】
W、W’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、意味C、CR
3、SiR
3、NまたはPを有し、ここで、R
3は、同一であるかまたは異なり、RおよびR’と同じ意味、好ましくはC、CR
3、N、P、特に好ましくはC、CR
3を有し、WおよびW’のラジカルR
3は、また、互いに結合していてもよく、したがって、好ましくは1〜6個の架橋原子、特に好ましくは2〜4個の架橋原子からなる架橋を形成する。WおよびW’は、非常に特に好ましくは、Cを表す。
【0035】
Aは、1〜5個の架橋原子、好ましくは1、2または3個の架橋原子、特に好ましくは2個の架橋原子からなる架橋単位の意味を有する。該単位は、飽和でも不飽和でもよく、特に不飽和である。架橋原子は、C、−CR
4−、−CR
4R
5−、N、−NR
4−、P、−PR
4−、−O−、−S−(式中、R
4およびR
5は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてよく、RもしくはR’と同じ意味を有する。)から選択されるか、またはハロゲンである。架橋原子は、好ましくはC、−CR
4−、−CR
4R
5−、N、−NR
4−、−O−、−S−、特に好ましくはCR
4、Nであり、炭素の場合、該単位は、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子N、P、O、S、好ましくはN、O、Sにより1回以上割り込まれていてもよい。特に好ましい基Aは、−CR
4=CR
4−、−CR
4=N−および−CR
4R
5−CR
4R
5−、非常に特に好ましくは−CR
4=CR
4−および−CR
4=N−、特に−CR
4=CR
4−である。ラジカルR
4が互いに環を形成する場合、アリールまたはヘテロアリール基の形成も可能である。さらに好ましい基Aは、任意に置換されたオルト−フェニレン基である。
【0036】
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、意味CR
6、N、CR
6R
7、SiR
6R
7、NR
6、PR
6、BR
6、BNR
6、BNR
6R
7、OまたはSを有し、ここで、R
6およびR
7は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてよく、RおよびR’と同じ意味を有する。YおよびY’は、好ましくは、意味CR
6、N、CR
6R
7、NR
6、PR
6、BR
6、BNR
6、BNR
6R
7、特に好ましくはCR
6、N、CR
6R
7、NR
6を有する。YおよびY’は、最大で3個の架橋原子からなる架橋単位を形成し、ここで、架橋原子は、炭素および/またはヘテロ原子から選択され、ヘテロ原子の場合、該単位は、最大で3個の架橋原子としてのヘテロ原子からなり、−BR
6−、BNR
6−、BNR
6R
7−、SiR
6R
7、−NR
6−、−PR
6−、−O−、−S−(式中、R
6は、同一であるかまたは異なり、RおよびR’と同じ意味を有する。)から、好ましくはBR
6、BNR
6、BNR
6R
7、−NR
6−、特に−NR
6−から選択され、炭素の場合、該単位は、最大で3、好ましくは1または2、特に好ましくは1個の架橋原子としての炭素原子からなり、これは、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子B、N、P、O、Sにより1回以上割り込まれているか、および/またはR
3およびR
4により置換されているか、および/またはハロゲン原子F、Cl、Br、Iにより置換されていてもよく、少なくとも1個のC原子の場合、これらは、飽和または一〜多価不飽和の様式で互いに結合していてもよく、さらに、ラジカルR
6および/またはR
7は、YとY’の間で互いに結合していてもよい。
【0037】
YおよびY’は、特に好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、CR
6またはNであり、ここで、これらの基は、次いで、各々の場合、隣接する基WまたはW’、非常に特に好ましくはCR
6に対して二重結合を形成する。
【0038】
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、意味C、CR
8、SiR
8、B、NまたはPを有し、ここで、R
8は、同一であるかまたは異なり、RおよびR’と同じ意味を有し;ZおよびZ’は、好ましくは、意味C、CR
8、NおよびP、特に好ましくはCおよびNを有し、ZおよびZ’のラジカルR
8は、互いに結合して環を形成してもよく、この環は、好ましくは3〜8個の環原子、特に好ましくは3〜6個の環原子からなる。ZおよびZ’は、非常に特に好ましくはNに等しい。
【0039】
さらに、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子が、同一であるかまたは互いに独立し、Si、B、N、O、SまたはPから選択されるヘテロ原子を含有することが本発明にとって必須である。X、X’、Z、Z’および/またはY、Y’は、好ましくはヘテロ原子であり、特に好ましくはX、X’およびZ、Z’がヘテロ原子である。本発明の特に好ましい態様において、X、X’およびZ、Z’は、窒素である。
【0040】
MおよびM’は、好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ti、Zr、V、Mn、Sc、Cr、Mo、WおよびAl、特に好ましくはNi、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Fe、Ru、Os、Co RhおよびIr、非常に特に好ましくはIr、PtおよびCuからなる群から選択される。
【0041】
RおよびR’は、好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜10個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、2〜10個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖もしくは分枝アルケニル、3〜8個のC原子を有する飽和、部分もしくは完全不飽和のシクロアルキル(これは、1〜10個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)、無置換もしくは置換のアリールもしくは芳香族環系、無置換もしくは置換の複素環もしくはヘテロ芳香族環系または置換もしくは無置換のアラルキルもしくはヘテロアラルキルからなる群から選択され、ここで、一方または両方の置換基RおよびR’は、Fにより任意の所望の位置で部分的に置換されているかまたは完全に置換されていてもよく、一方または両方の置換基RおよびR’の炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−NR
1−、−PR
1−または−P(O)R
1−から選択される原子および/または原子団により置きかえられていてもよく、ここでR
1は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは全フッ素化アルキル、3〜10個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換のアリールまたは飽和もしくは不飽和、無置換もしくは置換の複素環である。
【0042】
RおよびR’は、特に好ましくは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜10個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、3〜6個のC原子を有する飽和シクロアルキル(これは、1〜4個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)、無置換もしくは置換のアリールもしくは芳香族環系、無置換もしくは置換の複素環もしくはヘテロ芳香族環系または置換もしくは無置換のアラルキルもしくはヘテロアラルキルからなる群から選択され、ここで、一方または両方の置換基RおよびR’の炭素原子は、−O−により置きかえられていてもよい。
【0043】
RまたはR’が金属に配位している場合、RまたはR’は、好ましくは置換または無置換のアラルキルまたはヘテロアラルキル基、特に−CH
2−CH
2−アリールまたは−CH
2−CH
2−ヘテロアリール基を表し、ここで、アリールまたはヘテロアリールおよび/またはCH
2基は、また、各々が置換されていてもよく、好ましい置換基は、1〜5個のC原子を有するアルキル基または芳香族もしくはヘテロ芳香族環系(これらは、場合によりアルキル基により置換されている。)である。さらに、CH
2基のうちの1つは、やはりO、SまたはNRにより置換されていてもよい。この目的にさらに適しているのは、また、アリールまたはヘテロアリール基配位基であり、これらは、各々の場合、任意に置換されたオルト−アリーレンまたはオルト−ヘテロアリーレン基を介してXまたはX’に結合している。
【0044】
上述の態様は、所望により互いに組み合わせることができる。上述の好ましい態様は、好ましくは同時に発生する。
【0045】
式(1)、(2)および(3)の化合物の好ましい態様は、したがって、それぞれ、以下の式(1a)、(2a)および(3a)の化合物であり、
【化5】
【0046】
ここで、R、R’、R
1〜R
8、K、K’、L、L’、o、o’、p、p’およびsは、上記の意味を有し、使用された他の記号および添え字は、以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ti、Zr、V、Mn、Sc、Cr、MoおよびWからなる群から選択され;
X、X’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
2またはNであり;
Aは、−CR
4=CR
4−、−CR
4=N−または−CR
4R
5−CR
4R
5−であり;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
6またはNであり;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
8またはNであり;
ただし、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子は、同一であるかまたは互いに独立し、窒素原子を含有する。
【0047】
式(1)、(2)および(3)の化合物の特に好ましい態様は、したがって、それぞれ、以下の式(1b)、(2b)および(3b)の化合物であり、
【化6】
【0048】
ここで、R、R’、R
1〜R
8、K、K’、L、L’、o、o’、p、p’およびsは、上記の意味を有し、使用された他の記号および添え字は、以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Ir、PtおよびCuからなる群から選択され;
Aは、−CR
4=CR
4−または−CR
4=N−、好ましくは−CR
4=CR
4−であり;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
6またはNであり;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR
8またはN、好ましくはNである。
【0049】
本発明の式(1)、(2)および(3)の金属錯体の好ましい例は、X、X’、Z、Z’が窒素に等しく、Y、Y’が−CH=に等しく、W、W’が炭素に等しく、Aが−CH=CH−に等しく、R、R’がアルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルまたはtert−ブチルに等しく、M、M’がPt
2+、Ir
+、Ir
3+、Pd
2+、Cu
+、Ag
+、Au
+またはRh
+に等しく、K、K’がヨージド(Pd
2+の場合)、PF
6-(Cu
+、Ag
+、Au
+の場合)に等しく、L、L’がCO、COD(Rh
+の場合)に等しく、sがPd
2+、Rh
+の場合1に等しく、sがCu
+、Ag
+、Au
+の場合2に等しいことを特徴とする。
【0050】
上記の通り、ラジカルRおよび/またはR’は、金属(1以上)に配位することも可能である。このことは、以下の式(1c)、(1d)、(2c)、(2d)および(3c)の化合物に関して図式的に示し、
【化7】
【0051】
ここで、使用された記号および添え字は、上記の意味を有する。
【0052】
さらに、上記の通り、リガンドの2以上は、架橋基により互いに結合していてもよく、すなわち、基RまたはR’が、それにより全体として四座または多脚型配位子が形成するように2以上のリガンドを結合している。架橋基として使用することができる適切な基は、当業者に知られており、進歩性なしに、ここで言及したリガンドにも使用することができる。
【0053】
適切なモノアニオン性の配位子KおよびK’は、単座、二座、三座、四座、五座または六座であってもよく、水素化物、重水素化物、ハロゲン化物F、Cl、BrおよびI、擬ハロゲン化物、アジド、トリフルオロスルホネート、アルキルアセチリド、例えば、メチル−C≡C
-、tert−ブチル−C≡C
-など、アリール−またはヘテロアリールアセチリド、例えば、フェニル−C≡C
-など、σ結合によって金属原子Mに連結することができるアルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルなど、σ結合によって金属原子Mに連結することができるアルキルアリールラジカル、アリール基、例えば、フェニル、ナフチルなど、ヘテロアリール、例えば、ピリジル、水酸化物、シアン化物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネートなど、脂肪族または芳香族アルコレート、例えば、メタノレート、エタノレート、プロパノレート、イソプロパノレート、tert−ブチレート、フェノレートなど、脂肪族または芳香族チオアルコレート、例えば、メタンチオレート、エタンチオレート、プロパンチオレート、イソプロパンチオレート、tert−チオブチレート、チオフェノレートなど、アミド、例えば、ジメチルアミド、ジエチルアミド、ジイソプロピルアミド、モルホリドなど、カルボキシレート、例えば、アセテート、トリフルオロアセテート、プロピオネート、ベンゾエートなど、アニオン性の窒素含有複素環、例えば、ピロリド、イミダゾリド、ピラゾリドなど、脂肪族および芳香族ホスフィドPR
2-、脂肪族または芳香族セレニドSeR
-、シクロペンタジエニル(Cp)(ここで、シクロペンタジエニル基は、シクロペンタジエニルラジカルが、ペンタメチルシクロペンタジエニル(Cp
*)またはインデニルを示す(ここで、インデニルラジカルは、アルキル置換基、好ましくはメチルによって場合により置換されていてもよい)ように、アルキル置換基、好ましくはメチルまたはtert−ブチル、特に好ましくは5個のメチル基によって置換されていてもよい)からなる群から選択される。これらの基におけるアルキル基は、好ましくはC
1〜C
20−アルキル基、特に好ましくはC
1〜C
10−アルキル基、非常に特に好ましくはC
1〜C
4−アルキル基である。アリール基は、ヘテロアリール基も意味するものとされる。適切なジ−またはトリアニオン性リガンドKおよびK’は、R−N=M(式中、Rは、一般に、置換基またはN
3-を表す)の形態の配位を生じる、O
2-、S
2-、ニトレンである。
【0054】
リガンドKは、特に好ましくは、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、アルコレート、カルボキシレート、アセチルアセトネートおよびその誘導体、トリフルオロスルホネート、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基からなる群から選択される。
【0055】
適切なモノ−またはジアニオン性二座配位子KおよびK’は、1,3−ジケトンに由来する1,3−ジケトネート、例えば、アセチルアセトン、tert−ブチルアセチルアセトン(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン)、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ジベンゾイルメタン、ビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタンなど、3−ケトエステルに由来する3−ケトネート、例えば、エチルアセトアセテートなど、アミノカルボン酸に由来するカルボキシレート、例えば、ピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸、グリシン、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、N,N−ジメチルアミノアラニンなど、サリチルイミンに由来するサリチルイミネート、例えば、メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、フェニルサリチルイミンなど、ジアルコールに由来するジアルコレート、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコールなど、およびジチオールに由来するジチオレート、例えば、1,2−エチレンジチオール、1,3−プロピレンジチオールなどから選択される。
【0056】
金属と共に、少なくとも1つの金属−炭素結合を有するまたは2つの金属−窒素結合を有するシクロメタル化5員環または6員環、特にシクロメタル化5員環を有する二座モノアニオン性またはジアニオン性リガンドKおよびK’がさらに優先される。これらは、特に、有機エレクトロルミネッセンスデバイス用の燐光金属錯体の分野において一般に使用されるリガンド、すなわち、フェニルピリジン、ナフチルピリジン、フェニルキノリン、フェニルイソキノリン等のタイプのリガンドであり、これらの各々は、1以上のラジカルR
1により置換されていてもよい。非常に多数のこのタイプのリガンドは、燐光エレクトロルミネッセンスデバイスの分野の当業者に知られており、当業者は、進歩性なしに、このタイプのさらなるリガンドを式(1)、(2)または(3)の化合物のリガンドKまたはK’として選択することができる。一般に、以下の式(A)〜(BB)により示される2つの基の組合せは、この目的に特に適している。一般に、中性窒素原子またはカルベン原子を介して、および負に荷電している炭素原子または負に荷電している窒素原子を介して結合する組合せ、さらに、例えば、2個の中性窒素原子または2個の負に荷電している窒素原子または2個の負に荷電している炭素原子が金属に結合する組合せが、この目的に適している。次いで、二座配位子KまたはK’は、式(A)〜(BB)の基から、これらの基を、各々の場合、#により示される位置で互いに結合させることにより形成することができる。基が金属に配位する位置は、*により示される。
【化8-1】
【化8-2】
【0057】
本明細書で使用された記号は、上記と同一の意味を有し、ここで、各基において最大で3つの記号Eは、Nを表し、Qは、出現するごとに同一であるかまたは異なり、OまたはSを表す。好ましくは、各基において最大で2つの記号EがNを表し、特に好ましくは各基において最大で1つの記号EがNを表し、非常に特に好ましくは全ての記号EがCRを表す。
【0058】
式(A)〜(BB)の基も単座配位子KまたはK’として好適である。この場合、*により示される位置は、金属に配位している。炭素原子の代わりに、基E、すなわち、基CRまたはNが、次いで、#により示す位置に存在している。
【0059】
KまたはK’が非配位性アニオンである場合、これは、好ましくは、以下で式(4)についてアニオンQ
-として記載しているアニオンから選択される。
【0060】
適切な中性の単座、二座、三座、四座、五座または六座配位子LおよびL’は、好ましくはアミン、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリンなど、エーテル、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテルなど、水、アルコール、一酸化炭素、ニトリル、特にアルキルニトリル、一酸化窒素、イソニトリル、例えば、tert−ブチルイソニトリル、シクロヘキシルイソニトリル、アダマンチルイソニトリル、フェニルイソニトリル、メシチルイソニトリル、2,6−ジメチルフェニルイソニトリル、2,6−ジイソプロピルフェニルイソニトリル、2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイソニトリルなど、オレフィン、窒素含有複素環、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジンなど(ここで、これらの各々はアルキルまたはアリール基により置換されていてもよい。)、ホスフィン、好ましくはトリアルキル、トリアリールもしくはアルキルアリールホスフィン、特に好ましくはPAr
3(ここで、Arは、置換もしくは無置換のアリールラジカルであり、PAr
3中の3つのアリールラジカルは、同一であるかまたは異なっていてもよい。)、例えば、PPh
3、PMe
3、PEt
3、P(n−Bu)
3、P(t−Bu)
3、PEt
2Ph、PMe
2Ph、P(n−Bu)
2Ph、PAd
3、PMeAd
2、PCy
3、PF
3など、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、ホスホネートおよび誘導体、それらのアルセネートおよびそれらの誘導体、ホスフィット、例えば、トリメチルホスフィット、トリエチルホスフィットなど、アルシン、例えば、トリフルオロアルシン、トリメチルアルシン、トリシクロヘキシルアルシン、トリ−tert−ブチルアルシン、トリフェニルアルシニン、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルシンなど、スチビン、例えば、トリフルオロスチビン、トリメチルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、トリ−tert−ブチルスチビン、トリフェニルスチビン、トリス(ペンタフルオロフェニル)スチビンなど、脂肪族もしくは芳香族スルフィド、例えば、硫化ジメチル、ジエチルスルフィドなど、または脂肪族もしくは芳香族セレニド、例えば、ジメチルセレニド、ジエチルセレニドなど、カルベンおよびアセチレン不飽和多重結合系からなる群から選択される。
【0061】
適切な中性二座配位子LおよびL’は、ジアミン、例えば、エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、プロピレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミンなど、cis−またはtrans−ジアミノシクロヘキサン、cis−またはtrans−N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノシクロヘキサン、イミン、例えば、2−[1−(フェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(メチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(エチルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(イソプロピルイミノ)エチル]ピリジン、2−[1−(tert−ブチルイミノ)エチル]ピリジンなど、ジイミン、例えば、1,2−ビス(メチルイミノ)エタン、1,2−ビス(エチルイミノ)エタン、1,2−ビス(イソプロピルイミノ)エタン、1,2−ビス(tert−ブチルイミノ)エタン、2,3−ビス(メチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(エチルイミノ)ブタン、2,3−ビス(イソプロピルイミノ)ブタン、2,3−ビス(tert−ブチルイミノ)ブタン、1,2−ビス(フェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2−メチルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)エタン、1,2−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)エタン、2,3−ビス(フェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2−メチルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニルイミノ)ブタン、2,3−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルイミノ)ブタンなど、2個の窒素原子を含有する複素環、例えば、2,2’−ビピリジン、o−フェナントロリンなど、ならびにジホスフィン、例えば、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ビス(ジメチルホスフィノ)メタン、ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、ビス(ジメチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジメチルホスフィノ)ブタン、ビス(ジエチルホスフィノ)メタン、ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、ビス(ジエチルホスフィノ)プロパン、ビス(ジエチルホスフィノ)ブタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)メタン、ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)エタン、ビス(tert−ブチルホスフィノ)プロパン、ビス(tert−ブチルホスフィノ)ブタンなど、ならびに金属原子Mとp−錯体を形成する共役ジエン、好ましくはη
4−1,3−ブタジエン、η
4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、η
4−1,3−ペンタジエン、η
4−1−フェニル−1,3−ペンタジエン、η
4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、η
4−2,4−ヘキサジエン、η
4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、η
4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、η
4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエンおよびη
2−またはη
4−シクロオクタジエン(COD)(各1,3および各1,5)、特に好ましくはη
4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、η
4−1−フェニル−1,3−ペンタジエン、η
4−2,4−ヘキサジエン、ブタジエン、η
4−1,3−シクロオクタジエンおよびη
2−1,5−シクロオクタジエンからさらに選択される。
【0062】
アミン、エーテル水、アルコール、ピリジン(ここで、ピリジンは、アルキルまたはアリール基により置換されていてもよい。)、一酸化炭素、ニトリル、好ましくはアルキルニトリル、オレフィン、好ましくはエチレン、シクロオクテン、η
4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、η
4−1−フェニル−1,3−ペンタジエン、η
4−2,4−ヘキサジエン、ブタジエン、η
4−1,3−シクロオクタジエンおよびη
2−1,5−シクロオクタジエンからなる群から選択される中性の単座、二座、三座、四座、五座または六座のリンを含まないリガンドの使用が特に優先される。
【0063】
本発明の適切な金属錯体の例は、以下の表に示す化合物である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0064】
本発明の化合物は、例えば比較的長いアルキル基(約4〜20個のC原子)、特に分枝アルキル基、または任意に置換されたアリール基、例えばキシリル、メシチルまたは分枝テルフェニルもしくはクアテルフェニル基による適切な置換により可溶性にすることもできる。このタイプの化合物は、次いで、室温で、溶液からの錯体の加工を可能にするための十分な濃度で、一般的な有機溶媒、例えば、トルエンまたはキシレンなどに可溶である。これらの可溶性化合物は、例えば、印刷プロセスによる加工に特に適している。
【0065】
したがって、本発明は、さらに、式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の少なくとも1種の化合物および少なくとも1種の溶媒を含む配合物、特に溶液、懸濁液またはミニエマルジョンに関する。
【0066】
本発明は、さらに、対応するビスイミダゾリウム塩およびそれらに由来するビスカルベンと同様に、式(1)〜(3)の化合物がベースにしているリガンドに関する。
【0067】
したがって、本発明は、さらに、式(4)の化合物およびそれらに由来する式(5)のビスカルベンに関し、
【化9】
【0068】
ここで、R、R’、X、X’、W、W’、A、Y、Y’、Z、Z’は、上記の意味を有し、ただし、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子は、同一であるかまたは互いに独立し、Si、B、N、O、SまたはPから選択されるヘテロ原子を含有し、さらに:
Q
-は、アニオン性対イオンであり、好ましくはF
-、Cl
-、Br
-、I
-、CN
-、[ClO
4]
-、[BF
4]
-、[BF
zR
F4-z]
-、[BF
z(CN)
4-z]
-、[B(CN)
4]
-、[B(C
6F
5)
4]
-、[B(OR
9)
4]
-、[N(CF
3)
2]
-、[N(CN)
2]
-、[AlCl
4]
-、[SbF
6]
-、[SiF
6]
-、[R
9SO
3]
-、[R
FSO
3]
-、[(R
FSO
2)
2N)]
-、[(R
FSO
2)
3C)]
-、[(FSO
2)
3C]
-、[R
9CH
2OSO
3]
-、[R
9C(O)O]
-、[R
FC(O)O]
-、[CCl
3C(O)O]
-、[(CN)
3C]
-、[(CN)
2CR
9]
-、[(R
9O(O)C)
2CR
9]、[P(C
nF
2n+1-mH
m)
yF
6-y]
-、[P(C
6F
5)
yF
6-y]
-、[R
92P(O)O]
-、[R
9P(O)O
2]
2-、[(R
9O)
2P(O)O]
-、[(R
9O)P(O)O
2]
2-、[(R
9O)(R
9)P(O)O]
-、[R
F2P(O)O]
-、[R
FP(O)O
2]
2-からなる群から選択され、
ここで、置換基R
Fは、各々、互いに独立して、1〜20個のC原子を有する全フッ素化および直鎖または分枝アルキル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する全フッ素化および直鎖または分枝アルケニル、全フッ素化フェニルおよび3〜7個のC原子を有する飽和、部分または完全不飽和のシクロアルキル(これは、ペルフルオロアルキル基により置換されていてもよい。)を示し、[R
F2P(O)O]
-中の置換基R
Fは、それらが一緒に3〜8員環を形成するように単または二重結合により互いに結合していてもよく、
ここで、置換基R
Fの1個の炭素原子または2個の非隣接炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−N=、−N=N−、−NR
1−、−PR
1−および−P(O)R
1−から選択される原子および/もしくは原子団により置きかえられているか、または末端基R
1−O−SO
2−もしくはR
1−OC(O)−(ここでR
1は、上記の意味を有する。)を含有していてもよく、
ここで、置換基R
9は、各々、互いに独立して、水素、1〜20個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分枝アルケニル、2〜20個のC原子および1以上の三重結合を有する直鎖または分枝アルキニル、3〜7個のC原子を有する飽和、部分または完全不飽和のシクロアルキル(これは、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)を示し、R
9は、CN
-、NO
2-、F
-、Cl
-、Br
-またはI
-により部分的に置換されていてもよく、アニオン[(R
9)
2P(O)O]
-、[(R
9O(O)C)
2CR
9]および[(R
9O)(R
9)P(O)O]
-中の2つの置換基R
9は、それらが一緒に3〜8員環を形成するように単または二重結合により互いに結合していてもよく、
ここで、R
9の炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
3−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR
1−、−PR
1−および−P(O)R
1−、−P(O)R
1O−、−OP(O)R
1O−、−PR
12=N−、−C(O)NH−、−C(O)NR
1−、−SO
2NH−または−SO
2NR
1−(ここでR
1は、上記の意味を有する。)から選択される原子および/または原子団により置きかえられていてもよく、
変数n、m、yおよびzは、各々整数であり、
nは、1〜20を示し、
mは、0、1、2または3を示し、
yは、0、1、2、3または4を示し、
zは、0、1、2または3を示し、
ここで、Q
-は、また、前記アニオンの任意の所望の混合物であってもよい。
【0069】
使用された記号の好ましい態様は、ここで、既に式(1)〜(3)の化合物について上記したものに対応する。
【0070】
W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子が、同一であるかまたは互いに独立し、Si、B、N、O、SまたはPから選択されるヘテロ原子を含有することが本発明にとってさらに必須である。X、X’、Z、Z’およびY、Y’は、好ましくはヘテロ原子であり、特に好ましくはX、X’およびZ、Z’がヘテロ原子である。本発明の特に好ましい態様において、X、X’およびZ、Z’は、窒素である。
【0071】
特に好ましいアニオンQ−は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、CN
-、[ClO
4]
-、[BF
4]
-、[R
9CH
2OSO
3]
-、[SbF
6]
-および[PF
6]
-、非常に特に好ましくはCl
-、Br
-、I
-、[BF
4]
-および[PF
6]
-である。
【0072】
アニオンQ
-中の2つの置換基R
FまたはR
9が単または二重結合により互いに結合している場合、それらは、一般的な3〜8員環、好ましくは5〜7員、特に好ましくは5または6員環を形成することができる。
【0073】
本発明の式(4)のビスイミダゾリウム塩の好ましい例は、X、X’、Z、Z’が窒素に等しく、Y、Y’が−CH=に等しく、W、W’が炭素に等しく、Aが−CH=CH−に等しく、QがCl
-またはPF
6-に等しく、R、R’がアルキル、好ましくはメチル、エチルまたはn−プロピルに等しいことを特徴とする。
【0074】
本発明の式(5)のビスカルベンの好ましい例は、X、X’、Z、Z’が窒素に等しく、Y、Y’が−CH=に等しく、W、W’が炭素に等しく、Aが−CH=CH−に等しく、R、R’がアルキル、特にメチル、エチルまたはn−プロピルに等しいことを特徴とする。
【0075】
本発明において、ビスカルベン(5)は、また、部分的にプロトン化された形態であってもよく、その結果、モノカルベンが生じ、これは、本発明の目的のために一般式(5)に含まれ、したがって、同様に本発明の主題である。
【0076】
本出願は、さらに、上述の金属錯体を調製するための方法に関する。
【0077】
この調製は、本発明において、式(4)または式(5)の化合物をビスカルベンリガンドまたはモノカルベンリガンドとして使用して実施される。適切なプロセスは、特に、当業者に知られている、好ましくはin situでのリガンド前駆体の脱プロトン化、遊離した単離モノおよびビスカルベンリガンドの錯化、ハロホルムアミジニウム誘導体の酸化的付加、金属化合物による電子が豊富なオレフィンの切断ならびに金属カルベン錯体の金属交換反応のプロセスである。適切な調製プロセスは、例えば、F.E.Hahn、M.C.Jahnke、Angew.Chem.2008、120、3166〜3216;Angew.Chem.Int.Ed.2008、47、3122〜3172およびそれらの中で列挙されている文献に開示されている。
【0078】
特に適切なプロセスは、式(4)の対応するリガンド前駆体の脱プロトン化およびその後の金属化合物との反応である。さらに、単離された代表の式(5)のビスカルベンは、また、金属化合物と、またはそれらのモノカルベンとも反応させることができる。さらなる可能性は、式(1)、(2)または(3)の適切な金属錯体と金属化合物との反応(金属交換反応)、および(3)の脱プロトン化であり、必要であれば、式(2)の金属錯体を形成するためのさらなる金属化合物とのその後の反応である。
【0079】
本発明の金属錯体(1)、(2)および(3)の調製は、好ましくはin situでのリガンド前駆体の脱プロトン化、および適切な金属化合物との反応、または本発明の金属錯体(1)および(2)の場合、本発明の金属錯体(3)の脱プロトン化、ならびに金属錯体(2)の場合、適切な金属化合物とのその後の反応により実施することが好ましい。
【0080】
式(4)の化合物の脱プロトン化は、一般に、塩基性のアニオンにより、ならびに式(4)の化合物から出発する式(5)のモノおよびビスカルベンの調製について以下に記載する条件の下で実施される。
【0081】
このようにin situで生成した式(5)のカルベンまたは式(5)の単離カルベンの金属化は、式(1)、(2)または(3)の所望の金属錯体を生じるのに適切な金属化合物を使用して実施される。金属化は、一般に、適切な溶媒に溶解または懸濁される脱プロトン化により得られた反応混合物または単離カルベンの反応混合物への対応する金属化合物の添加により実施される。
【0082】
先に単離したまたはin situで生成したカルベンの金属化は、適切な溶媒、好ましくは極性非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドにおいて、対応する金属錯体の添加により実施される。一般に、反応は、−110〜180℃、好ましくは−30〜100℃、特に好ましくは0〜50℃の温度で実施される。反応持続期間は、一般に1分〜5日間、好ましくは1時間〜1日である。
【0083】
金属交換反応の場合、式(1)、(2)および(3)の適切な金属カルベン錯体が、適切な溶媒、好ましくは極性非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドに最初に導入され、金属化合物が添加される。一般に、反応は、−30〜200℃、好ましくは20〜120℃の温度で実施される。反応持続期間は、一般に1分〜5日間、好ましくは1時間〜2日間である。
【0084】
使用した塩基および金属塩の反応性および化学量論に応じて、式(4)のビスイミダゾリウム塩の脱プロトン化は、部分的にのみ生じてもよく、式(5)のビスカルベンの代わりに対応するモノカルベンをリガンドとして含有する式(3)の金属錯体を生じる。
【0085】
式(1)、(2)および(3)の金属錯体の調製に適した金属化合物は、例えば、PdCl
2、PdCl
2(PPh
3)
2、Pd(PPh
3)
4、Pd
2(ジベンジリデンアセトン)
3、アリルパラジウムクロリド、[PdCl
2(CH
3CN)
2]、Pd(CH
3CN)
4(BF
4)
2、NiCl
2、NiBr
2(ジメトキシエタン)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル、NiCl
2(PPh
3)
2、Ru(Cl)
2(PPh
3)
2(カルベン)、CpRuCl(PPh
3)
2、[CpRu(CO)
2]
2、[CpRu(CH
3CN)
3]
+、[Cp
*Ru(CH
3CN)
3]
+、[RuCl
2(CO)
3]
2、RuCl
2(dmso)
4、ジ−μ−クロロビス[(p−シメン)クロロルテニウム(II)]、[RuCl
2(C
6H
6)]
2、RuCl
3、RuI
3、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム、アセチルアセトナトビス(エチレン)ロジウム、ビス(ジカルボニルクロロロジウム(I))、RhCl
3*xH
2O、アセチルアセトナトイルジウム(acetylacetonatoirdium)(I)、トリス(アセチルアセトナト)イルジウム(tris(acetylacetonato)irdium)(III)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム、ビス(ジカルボニルクロロイリジウム(I))、場合により水和物の形態の三ハロゲン化イリジウム、Na
2[Ir(acac)
2Cl
2]、PtCl
2、PtCl
2(PPh
3)
2、Pt(PPh
3)
4、ビス(1,5−シクロオクタジエン)白金、ヘキサクロロプラチネート(IV)、(DMSO)
2PtMe
2、CuCl
2、CuCl、CuO
2、Cu
2O
2、CuI
2、CuI CuBr
2、CuBr、Ag
2O、Ag(トシレート)、Ag(トリフレート)、AgNO
3、AuCl、AuCl(PPh
3)、AuCl(SMe
2)、AuCl(テトラヒドロチオフェン)、AuCl
3、TiCl
3、TiCl
4、Ti(O−i−プロピル)
4、Ti(Nアルキル
2)
4、TiCl
2(Nアルキル
2)
2、CpTiCl
3、Cp
2TiCl
2、ZrCl
4、Zr(Nアルキル
2)
4、ZrCl
2(Nアルキル
2)
2、CpZrCl
3、Cp
2ZrCl
2、W(CO)
6、W(CO)
5(THF)、W(CO)
5(ピリジン)、Cr(CO)
6、Cr(CO)
5(THF)、Cr(CO)
5(ピリジン)、Mo(CO)
6、Mo(CO)
5(THF)、Mo(CO)
5(ピリジン)、CoCl
2、Co
2(CO)
8、FeCl
2、FeCl
3、FeBr
2、FeBr
3、Fe(CO)
5、Fe
2(CO)
9である。
【0086】
塩基の添加による脱プロトン化の代わりに、塩基性のアニオンを有する適切な金属化合物、例えば、Pd(II)もしくはNi(II)のジアセテートもしくはアセチルアセトネート、Ir(I)のアセチルアセトネート、またはアルコキシリガンドを有するRh(I)およびIr(I)化合物、ならびにCu
2OおよびAg
2Oを使用することも可能である。
【0087】
金属交換反応に使用される式(1)、(2)および(3)の金属カルベン錯体に特に適しているのは、M、M’=AgおよびCuである錯体である。金属交換反応は、上述の金属化合物に対して実施される。
【0088】
得られた式(1)、(2)および(3)の金属錯体は、当業者に知られている方法により処理される。処理は、例えば、(蒸留または濾過による。)溶媒の除去およびその後の結果として得られた生成物のクロマトグラフィーまたは結果として得られた生成物の再結晶により実施することができる。
【0089】
式(4)のビスイミダゾリウム塩は、一般に2:1〜1:4、好ましくは1:2.2〜1.2:1の塩基性のアニオンに対するモル比で使用される。
【0090】
式(1)、(2)および(3)の金属錯体の調製において、式(4)および(5)のイミダゾリウム塩もしくはモノおよびビスカルベン、または金属交換反応に使用される式(1)、(2)および(3)の金属錯体は、一般に8:1〜1.8:1の適切な金属錯体に対するモル比で、好ましくは0〜20%のモノおよびビスカルベンの過剰または0〜10%のモノおよびビスカルベンの欠乏という化学量論に一致した比で使用される。
【0091】
各々の場合、アニオン性リガンドKの別のアニオン性リガンドKによる置きかえのために適切な塩も反応混合物に添加することができる。
【0092】
したがって、本発明は、さらに、リガンド前駆体の脱プロトン化、またはモノもしくはビスカルベンリガンドの錯化、またはハロホルムアミジニウム誘導体の酸化的付加、または金属化合物による電子が豊富なオレフィンの切断、または金属カルベン錯体の金属交換反応によるビスもしくはモノカルベンリガンドとしての式(4)もしくは式(5)の化合物の反応により、式(1)、(2)または(3)の化合物を調製するための方法に関する。
【0093】
本発明は、さらに、式(4)のビスイミダゾリウム塩を調製するための方法に関し、式(4)のビスイミダゾリウム塩は、本発明において、化合物4を調製するための4ステッププロセスを参照しながら現時点での一例として説明するプロセスにより調製される:
(i)対応するジ(ハロメチル)ピリダジン1を生じるための3,6−ジメチルピリダジンとハロゲン化剤との反応。
【化10】
【0094】
(ii)対応するアミノメチルピリダジン2を生じるためのジ(ハロメチル)ピリダジンと第一級アミンとの反応。
【化11】
【0095】
(iii)無水酢酸または他の好適なギ酸誘導体による促進を伴う、ジ(ホルムアミドイルメチル)ピリダジン3を生じるためのギ酸を使用した対応するジ(アミノメチル)ピリダジンのホルムアミド化。
【化12】
【0096】
(iv)ビスイミダゾリウム塩4(Hal)を生じるための塩化ホスホリルまたは他の適切なハロホルムアミド形成剤を使用した対応するジ(ホルムアミドメチル)ピリダジンの環化および場合によりビスイミダゾリウム塩4を生じるためのQ
-による対イオンの置きかえのための塩交換。
【化13】
【0097】
ステップ(i)は、一般に、溶液中で実施される。適切な溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたは四塩化炭素であり;クロロホルムが好ましい。
【0098】
一般的ハロゲン化剤は、トリハロイソシカヌル酸(trihaloisocycanuric acid)またはN−ハロスクシンイミドであり;トリクロロイソシアヌル酸が好ましい。
【0099】
ステップ(i)において、通常、3,6−ジメチルピリダジンが最初に導入され、ハロゲン化剤が5分間〜3日間の期間にわたって少量ずつ添加され;15分間〜5時間が好ましく、特に好ましくは30〜90分間である。
【0100】
反応溶液は、一般に、−10〜180℃、好ましくは25〜100℃、特に好ましくは35〜80℃まで加熱される。反応混合物は、ハロゲン化剤の最終分量の添加後に、1分〜10日間、好ましくは10分間〜24時間、特に好ましくは30分間〜3時間の期間にわたって前記温度で維持される。反応混合物は、その後、冷却され、生成物は、副産物からの濾過により、または当業者に知られている方法により処理される。
【0101】
ピリダジンおよびハロゲン化生成物は、一般に、移動されたハロゲン原子の数に基づいて、1:10〜1:1、好ましくは1:1.5〜1:3のモル比で使用される。
【0102】
出発原料として使用されるピリダジン化合物およびその誘導体ならびにハロゲン化剤は、当業者に知られているプロセスにより調製することができ、市販されている場合もある(R.H.Wiley、J.Macromol.Sci.−Chem.1987、A24、1183〜1190)。
【0103】
ステップ(ii)は、一般に、溶媒中で実施される。適切な溶媒は、アルキルニトリル、エーテルまたは芳香族および脂肪族炭化水素、例えば、トルエンまたはヘキサンであり;アセトニトリルが好ましい。
【0104】
反応は、一般式R−NH
2およびR’−NH
2の第一級脂肪族または芳香族アミンを用いて実施することが好ましい。
【0105】
化合物1および第一級アミンは、一般に1:1〜1:100、好ましくは1:2〜1:50のモル比で使用される。アミンは、直ちにまたは分割して添加することができる。2種の異なるアミンR’−NH
2およびR−NH
2を使用することも可能である。ここで、2種のアミン等価物は、形成されるハロゲン化水素酸の捕捉にも役立つ。必要であれば、当業者に知られている他のハロゲン化水素酸捕捉剤も使用することができる。
【0106】
反応溶液は、一般に、−30〜180℃、好ましくは0〜120℃、特に好ましくは10〜80℃の温度で、一般に5分間〜10日間、好ましくは1時間〜5日間、特に好ましくは5時間〜2日間の期間温められる。
【0107】
反応混合物は、当業者に知られている方法により処理される。好ましくはジエチルエーテルおよびアセトニトリルからなる溶媒混合物による生成物の抽出が優先される。生成物は、適切な溶媒から、好ましくはジエチルエーテルからの再結晶によりさらに精製することができる。
【0108】
その後のステップ(iii)において、ホルムアミド化が実施される。これは、ホルミル無水物の中間体生成により反応するギ酸または誘導体、好ましくは無水酢酸混合物中のギ酸を使用して実施することができる。
【0109】
反応は、適切な溶媒中で、好ましくはギ酸中で実施することが好ましい。反応溶液は、一般に−30〜120℃、好ましくは0〜80℃、特に好ましくは10〜50℃の温度で維持される。その期間は、一般に1分〜5日間、好ましくは15分間〜12時間、特に好ましくは30分間〜3時間である。
【0110】
反応混合物は、当業者に知られている方法により処理される。混合物は、好ましくは水を使用して加水分解され、真空中で蒸発乾固させられる。生成物は、適切な溶媒、好ましくはジエチルエーテルによる抽出により抽出され、適切な乾燥剤を使用して乾燥され、好ましくは真空中で溶媒を除去される。生成物は、好ましくは、さらに精製せずに次のステップにおいても使用することができる。
【0111】
その後のステップ(iv)において、ビスイミダゾリウム塩への環化が当業者に知られているプロセスにより実施される。一般に、ホルムアミドは、好ましくは酸塩化物形成剤により、特に好ましくは塩化ホスホリル、三塩化リンまたは塩化チオニルを使用して活性化される。
【0112】
反応は、一般に、溶媒中で、好ましくは脂肪族または芳香族炭化水素中で、特に好ましくはトルエン中で実施される。
【0113】
反応温度は、一般に−30〜180℃、好ましくは0〜150℃、特に好ましくは30〜120℃である。
【0114】
生成物は、一般に、真空中での溶媒の除去および適切な溶媒混合物、例えばTHF/ペンタン混合物による残渣の洗浄により単離および精製される。
【0115】
必要であれば、対イオンは、塩交換により置きかえることができる。このため、ビスイミダゾリウム塩は、一般に、水に溶解され、所望の対イオンの塩が添加される。生成物は、当業者に知られている方法により、特に結晶化により単離および精製される。
【0116】
式(4)のビスイミダゾリウム塩を調製するための代替の方法は、3,6−ジホルミルピリダジンから出発することができ、これを、知られているプロセスにより第一級アルキルおよびアリールアミンと(J.R.Price、Y.Lan、S.Brooker Dalton Trans.2007、1807〜1820;S.Brooker、R.J.Kelly、P.G.Plieger Chem.Commun.1998、1079)ならびにヒドロキシルアミンと(N.K.Szymczeak、L.A.Berben、J.C.Peters、Chem.Commun.2009、6729〜6731;またはB.Mernari、M.Lagranee、J.Heterocyclic Chem.1996、33、2059〜2061)反応させて、それぞれのビスイミンaを生じることができる。
【0117】
ビスイミンaから出発すると、銀トリフレートおよびピバル酸クロロメチルを用いた環化により、Gloriusがビスイミンについて記載している通り、一般式(4)のビスイミダゾリウム塩4を直接導くことができるが、イミダゾ[1,5−a]ピリジニウム塩の調製にもつながる(F.Glorius US2005/0240025 A1;C.Burstein、C.W.Lehmann、F.Glorius、Tetrahedron 2005、61、6207〜6217)。
【0118】
さらなる可能性は、例えば、文献(P.R.Plieger、A.J.Downard、B.Moubaraki、K.S.Murray、S.Brooker、Dalton Trans.2004、2157〜2165;S.Brooker、S.S.Iremonger、P.G.Plieger、Polyhedron 2003、22、665〜671)から知られている通り、対応するビス(アミノメチル)ピリダジンを生じるための水素化ホウ素ナトリウムを使用したビスイミンの還元である。これは、次いで、ステップ(iii)および(iv)の後に、一般式(4)に対応するビスイミダゾリウム塩4に同様に転換することができる。
【0119】
ヒドロキシルアミンの場合、水素化ホウ素ナトリウムまたは触媒水素化を使用した還元により3,6−ジ(アミノメチル)ピリダジンdを生じることが可能であり、これを、次いで、(ステップ(iii)と同様に)ギ酸を使用してホルミルアミド化して、化合物cを生じ、ステップ(iv)と同様に、塩化ホスホリルまたは類似の試薬を使用して環化して、ジ(イミダゾ)ピリダジンfを生じることができる。次いで、これを、ハロゲン化アルキルまたは電子不足のハロゲン化アリールと反応させて、式(I)に対応するビスイミダゾリウム塩4を生じることができる。この経路は、イミダゾ[1,5−a]ピリジニウム塩について記載したものと類似している(M.Nonnenmacher、dissertation、Heidelberg、2008)。
【化14】
【0120】
本出願は、さらに、式(4)の化合物のイオン性液体としての使用に関する。
【0121】
本出願は、さらに、一般式(5)のビスカルベンを調製するための方法に関する。
【0122】
調製は、本発明において、例えば当業者に知られているプロセスによる脱プロトン化により一般式(4)のビスイミダゾリウム塩から出発して実施される。これらには、(4)の不完全な脱プロトン化も含まれ、モノカルベンあるいはビスイミダゾリウム塩(4)およびモノカルベン、ビスイミダゾリウム塩およびビスカルベン(5)、またはモノカルベンおよびビスカルベン(5)の混合物が生じ、これは塩基等価物により制御することができる。
【0123】
脱プロトン化は、一般に、溶媒中で実施される。適切な溶媒は、環式および非環式エーテル、脂肪族および芳香族炭化水素、特にテトラヒドロフランである。
【0124】
適切な脱プロトン化剤は、一般に中強度および強塩基、特に金属水素化物、金属アミド、アルキル金属およびアリール金属化合物、金属アルコキシド、金属カルボキシレートおよび嵩高い第三級アミン、特にメチルリチウム、カリウムtert−ブトキシド、酢酸カリウムおよびリチウムジイソプロピルアミドである。
【0125】
脱プロトン化は、式(4)のビスイミダゾリウム塩1当量当たり最大で20当量、好ましくは最大で10当量、特に好ましくは最大で1.8〜2.2当量、モノカルベンの場合、ビスイミダゾリウム塩(I)1当量当たり0.8〜1.2当量の塩基を使用して実施される。
【0126】
反応は、一般に、−110〜100℃、特に−78〜50℃、特に−30〜30℃の温度で実施される。
【0127】
ビスイミダゾリウム塩は、通常、溶媒に溶解または懸濁され、塩基は、一度にまたは分割して添加される。塩基の添加が完了すると、反応混合物は、さらなる1秒〜5日間の時間、特に2分間〜6時間、特に5分間および2時間に適応される温度で放置される。モノまたはビスカルベンは、in situでさらに加工するか、または濾過により副産物から分離して取り除き、その後の真空中での濾液の蒸発乾固により単離することができ、その間、温度は、カルベンが安定するように適合させなければならない。式(5)のモノおよびビスカルベンは、適切な溶媒により再結晶させることができる。
【0128】
本発明は、さらに、式(5)の化合物の有機触媒としての使用に関し、これは、ビスイミダゾリウム塩(4)の不完全な脱プロトン化または不完全なプロトン化により生成されるモノカルベンも意味するものとされる。
【0129】
本発明は、さらに、カルボニル化、ヒドロアミノ化、水素化、ヒドロアミノメチル化、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロシアン化、水添二量化、酸化、酸化カップリング、Heck反応、Tsuji−Trostカップリング、Suzuki−Miyauraカップリング、Kumadaカップリング、Negishiカップリング、Stilleカップリング、Sonogashira反応、C(sp
3)−C(sp
3)カップリング反応、C(sp
3)−C(sp
2)カップリング反応、Hartwig−Buchwaldアミノ化、Ullmann−Goldbergカップリング、異性化、再配列、Diels−Alder反応、メタセシス、アルカンおよびアルケンのC−H活性化、1,3−ジエンの1,4−官能化、単鎖重合、オリゴマー化および/または重合からなる群から選択されるプロセスにおける式(1)、(2)および(3)の金属錯体の使用に関する。それらは、一般に、前記反応において触媒として使用される。
【0130】
上記の式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の錯体は、電子デバイスにおける能動素子としてさらに使用することもできる。したがって、本発明は、さらに、電子デバイスにおける式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物の使用に関する。
【0131】
本発明は、また、さらに、少なくとも1種の式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物を含む電子デバイスに関する。本発明の電子デバイスは、陽極、陰極および少なくとも1種の上述の式(1)、(2)または(3)の化合物を含む少なくとも1つの層を含む。ここで、好ましい電子デバイスは、少なくとも1つの層に少なくとも1種の上述の式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物を含む、有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機太陽電池(O−SC)、有機光学検出器、有機感光体、有機電場消光デバイス(O−FQD)、発光電気化学電池(LEC)または有機レーザーダイオード(O−レーザー)からなる群から選択される。
【0132】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスが特に優先される。能動素子は、一般に、陽極と陰極の間に導入される有機または無機材料、例えば電荷注入、電荷輸送または電荷ブロッキング材料であるが、特に発光材料およびマトリックス材料である。本発明の化合物は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスにおける発光材料として特に良好な性質を示す。したがって、本発明の好ましい態様は、有機エレクトロルミネッセンスデバイスである。
【0133】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、陰極、陽極および少なくとも1つの発光層を含む。これらの層とは別に、該デバイスは、さらなる層、例えば、各々の場合、1以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層、励起ブロッキング層、電子ブロッキング層、電荷発生層および/または有機もしくは無機p/n接合も含んでいてもよい。例えば、励起ブロッキング機能を有するか、および/またはエレクトロルミネッセンスデバイスにおける電荷バランスを制御する中間層を2つの発光層の間に導入することが同様に可能である。しかし、これらの各々の層が必ず存在していなければならないとは限らないことを指摘すべきである。
【0134】
ここで、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、1つまたは複数の発光層を含んでいてもよい。複数の発光層が存在している場合、それらは、好ましくは、全体で380nm〜750nmの複数の発光最大値を有し、その結果、全体的に白色の発光が生じ、すなわち、蛍光または燐光を発することができる様々な発光化合物が発光層において使用される。3つの層が青、緑およびオレンジまたは赤色の発光を示す3層系(基本構造に関しては、例えば、WO2005/011013を参照されたい。)または4以上の発光層を有する系が特に優先される。それは、また、1以上の層が蛍光を発し、1以上の他の層が燐光を発するハイブリッド系であってもよい。
【0135】
本発明の好ましい態様において、有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物を1以上の発光層において発光化合物として含む。
【0136】
式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物が発光層における発光化合物として使用される場合、それは、好ましくは、1以上のマトリックス材料と組み合わせて使用される。本発明の意味におけるマトリックス材料は、一般に<25%の体積濃度で発光材料にドープするために発光層において使用することができるが、ドープされた発光体材料とは対照的にそれ自体は発光にほとんど寄与しない材料である。どの材料が発光体層における発光に有意に寄与し、どの材料が寄与しないのか、したがってどの材料が発光体と見なされ、どの材料がマトリックス材料と見なされるのかは、個々の材料の光ルミネッセンススペクトルと発光体層が存在しているOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルとの比較により認識することができる。式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物およびマトリックス材料の混合物は、発光体およびマトリックス材料の混合物全体に対して、0.1〜99体積%、好ましくは1〜90体積%、特に好ましくは3〜40体積%、特に5〜15体積%の式(1)、(2)もしくは(3)または上記の好ましい態様の化合物を含む。それに対応して、混合物は、発光体およびマトリックス材料の混合物全体に対して、99.9〜1体積%、好ましくは99〜10体積%、特に好ましくは97〜60体積%、特に95〜85体積%のマトリックス材料を含む。
【0137】
使用されるマトリックス材料は、一般に、先行技術によるこの目的に関して知られている全ての材料とすることができる。マトリックス材料の三重項レベルは、好ましくは、発光体の三重項レベルより高い。
【0138】
本発明の化合物用の適切なマトリックス材料は、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン、例えばWO2004/013080、WO2004/093207、WO2006/005627またはWO2010/006680によるもの、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、例えばCBP(N,N−ビスカルバゾリルビフェニル)、m−CBPまたはWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527、WO2008/086851またはUS2009/0134784に開示されているカルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、例えばWO2007/063754またはWO2008/056746によるもの、インデノカルバゾール誘導体、例えばWO2010/136109またはWO2011/000455によるもの、アザカルバゾール、例えばEP1617710、EP1617711、EP1731584、JP2005/347160によるもの、双極性マトリックス材料、例えばWO2007/137725によるもの、シラン、例えばWO2005/111172によるもの、アザボロールまたはボロン酸エステル、例えばWO2006/117052によるもの、ジアザシロール誘導体、例えばWO2010/054729によるもの、ジアザホスホール誘導体、例えばWO2010/054730によるもの、トリアジン誘導体、例えばWO2010/015306、WO2007/063754またはWO2008/056746によるもの、亜鉛錯体、例えばEP652273またはWO2009/062578によるもの、ジベンゾフラン誘導体、例えばWO2009/148015によるもの、または、架橋されたカルバゾール誘導体、例えばUS2009/0136779、WO2010/050778、WO2011/042107、WO2011/088877、WO2011/116865、WO2011/137951または未公開出願EP11003232.3によるものである。
【0139】
混合物として複数の異なるマトリックス材料、特に少なくとも1種の電子伝導マトリックス材料および少なくとも1種の正孔伝導マトリックス材料を使用することも好ましくてもよい。好ましい組合せは、例えば、本発明の金属錯体としての芳香族ケトン、トリアジン誘導体またはホスフィンオキシド誘導体とトリアリールアミン誘導体またはカルバゾール誘導体との混合マトリックスの使用である。同様に、例えば、WO2010/108579に記載されている、電荷輸送マトリックス材料および電荷輸送に関与していないかまたはほとんど関与していない電気的に不活性なマトリックス材料の混合物の使用が優先される。
【0140】
2以上の三重項発光体の混合物をマトリックスと共に使用することがさらに好ましい。短波発光スペクトルを有する三重項発光体は、ここで、長波発光スペクトルを有する三重項発光体用の共マトリックスとして機能する。したがって、例えば、本発明の式(1)、(2)または(3)の錯体は、より長波長で発光する三重項発光体、例えば緑色または赤色発光三重項発光体用の共マトリックスとして使用することができる。同様に、本発明の錯体は、より短波長で発光する金属錯体と共に三重項発光体として使用することができる。ここで、2種の白金錯体の組合せまたは1種の白金錯体と1種のイリジウム錯体との組合せが優先される。
【0141】
本発明の化合物は、電子デバイスにおける他の機能において、例えば正孔注入または輸送層における正孔輸送材料として、電荷発生材料または電子ブロッキング材料として使用することもできる。本発明の錯体は、発光層において他の燐光金属錯体用のマトリックス材料として同様に使用することができる。
【0142】
各層に関して先行技術により使用されている全ての材料を、一般に、さらなる層において使用することができ、当業者は、進歩性なしに、電子デバイスにおいてこれらの材料の各々を本発明の材料と組み合わせることができよう。
【0143】
該デバイスは、対応して(用途に応じて)構造化され、接点を設けられ、そのようなデバイスの寿命は水および/または空気の存在下で大幅に短縮されるので、最終的に気密封止される。
【0144】
さらに、1以上の層が昇華プロセスにより適用される(ここで、材料は、真空昇華装置において、通常10
-5mbar未満、好ましくは10
-6mbar未満の初期圧力で蒸着される)ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが優先される。初期圧力は、さらに低くまたはさらに高く、例えば10
-7mbar未満とすることもできる。
【0145】
同様に、1以上の層がOVPD(有機気相堆積)プロセスにより、または、キャリアガス昇華を用いてコーティングされる(ここで、材料は、10
-5mbar〜1barの圧力で適用される)ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが優先される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機蒸気ジェット印刷)プロセスであり、ここで、材料は、ノズルを通して直接適用され、したがって構造化される(例えばM.S.Arnoldら、Appl.Phys.Lett.2008、92、053301)。
【0146】
さらに、1以上の層が、溶液から、例えば、スピンコーティングなどにより、または、任意の所望の印刷プロセス、例えば、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷またはノズル印刷、特に好ましくはLITI(光誘起熱画像法、熱転写印刷)またはインクジェット印刷などにより製造されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスデバイスが優先される。可溶性化合物は、この目的のために必要であり、例えば、適切な置換を通して得られる。
【0147】
有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、1以上の層を溶液から適用すること、および1以上の他の層を蒸着により適用することによりハイブリッド系として製造することもできる。したがって、例えば、式(1)、(2)または(3)の化合物およびマトリックス材料を含む発光層を溶液から適用すること、ならびに正孔ブロッキング層および/または電子輸送層を真空蒸着によりその上に適用することが可能である。
【0148】
これらのプロセスは、一般に当業者に知られており、式(1)、(2)または(3)または上記の好ましい態様の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスに問題なく当業者が適用することができる。
【0149】
本発明の電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、先行技術に勝る以下の驚くべき利点により区別される:
1.発光材料として式(1)、(2)または(3)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、良好な寿命を有する。
【0150】
2.発光材料として式(1)、(2)または(3)の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンスデバイスは、同時に良好な効率を有する。
【0151】
これらの上記の利点は、他の電子的特性の低下を伴うものではない。
【0152】
本発明は、以下の例によってより詳細に説明されるが、それにより本発明を限定することを望むものではない。当業者は、進歩性なしに、説明から本発明のさらなる電子デバイスを製造し、したがって、特許請求された範囲全体にわたって本発明を実施することができよう。
【0153】
[実施例]
各反応は、別段の定めのない限り、Schlenk技術を使用して空気および湿気を排除して行った。使用した不活性ガスは、Westphalen AGからのアルゴン5.0であった。使用したガラス機器は、油ポンプ真空(<10
-3mbar)でホットエアガンを用いて加熱することにより使用前に乾燥させ、アルゴンで通気した。溶媒は、標準的方法(W.L.F.Armarego、C.L.L.Chai、「Purification of Laboratory Chemicals」、第5版、Elsevier、Oxford 2003)により、またはMBraunからのMBraun−SPS−800溶媒精製システムを使用して無水にした。重水素化溶媒は、標準的方法により同様に乾燥させ、蒸留し、その後の液体窒素中での凍結、上方の気層の排気およびアルゴンによる飽和により脱気した。溶媒の移動は、セプタムおよびカニューレ技術により実施した。固体は、フィルターシリンジ(SartoriusからのMinisart SRP 15 0.45μm)、D4孔径を有するガラス吸引フィルターを使用して、またはTeflon(登録商標)テープを使用してTeflonカニューレに取り付けられたWhatman(登録商標)フィルター(ガラスマイクロファイバーフィルター)を使用して、分離して取り除いた。空気および湿気感受性の固体および液体は、不活性ガスとしてアルゴン5.0を用いながらMBraunからのグローブボックス(MBraun Labmaster)内で処理した。気密様式で封止することができるTeflonスクリューキャップを有する標準的NMR管およびYoung(登録商標)NMR管は、Deuteroから得られる。市販されている化学物質は、AcrosおよびSigma−Aldrichから購入した。
【0154】
核共鳴スペクトルは、BACS−60試料交換器を備えたBruker AVII+400分光計で記録した。
13C−NMRスペクトルは、広帯域{
1H}デカップリングにより記録した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシランに対するppm単位で示す。結合定数(J)は、ヘルツ(Hz)単位で示す。
1H−NMRスペクトル(400.13MHz)における標準化は、重水素化溶媒の残留するプロトン信号の較正により内部で実施する:THF−d
7δ=1.73、3.58;CD
2HCNδ=1.94;DMSO−d
5δ=2.50およびCHCl
3δ=7.27。
13C{
1H}−NMRスペクトル(100.61MHz)に使用する内標準は、溶媒信号:THF−d
8δ=25.5、67.7;CD
3CNδ=1.4、118.7;CDCl
3δ=77.0およびDMSO−d
6δ=39.5である。スペクトルの説明において、非常に多数の信号について以下の略語を使用する:s=一重項、d=二重項、t=三重項、q=四重項、m=多重項、sext=六重項。brの付加は、広幅の信号であることを示す。各信号は、適切な2D実験により割り当てた。
【0155】
質量スペクトルは、溶媒としてのアセトニトリルまたはメタノールにおいてBruker Daltonics APEX II FT−ICRで測定した。全ての測定は、University of TubingenのMass Spectrometry Departmentにおいて行った。
【0156】
元素分析は、University of TubingenのDepartment of Inorganic ChemistryにおいてElementarからのvarioMicro Cubeおよびa varioEL−IIで行った。
【0157】
例1
3,6−ビス(クロロメチル)ピリダジン
【化15】
【0158】
3,6−ジメチルピリダジン(6.60g、61.0mmol)の無水CHCl
3(400ml)溶液を保護ガス雰囲気下で沸騰するまで加熱する。次いで、トリクロロイソシアヌル酸(12.3g、52.9mmol)を1時間の間に少量ずつ添加する。各々の場合、混合物は、短く泡立ち、褐色を帯びた懸濁液が形成され、これをさらに2.5h加熱還流する。室温への冷却後、フリット(D4)を介してベージュ色の固体を分離して取り除き、濾液を毎回150mlの0.2M NaOH水溶液で2回、および毎回200mlの水で2回洗浄する。有機相をNa
2SO
4上で乾燥させ、溶媒を真空中で除去すると、褐色の油が残り、そこに少量のペンタンを添加し、混合物を−30℃で一晩貯蔵する。形成された褐色の結晶を濾過して取り除き、50mlの無水ジエチルエーテルで抽出する。エーテル不溶性の褐色の固体を廃棄し、エーテル溶液を真空中で蒸発乾固させる。生成物は、ベージュ色の固体として得られる(4.49g、42%)。分解を防止するために、生成物を保護ガス下で−30℃で貯蔵する。
【0159】
1H-NMR (CDCl
3, 400.13 MHz):
δ = 7.77 (s, 2H, 4/5-H), 4.92 (s, 4H, CH
2).
13C{
1H}-NMR (CDCl
3, 100.61 MHz):
δ = 158.9 (C3/6), 127.2 (C4/5), 44.2 (CH
2).
元素分析:
計算値: C 40.71 H 3.42 N 15.82
実測値: C 40.26 H 3.04 N 15.62
例2
3,6−ビス(n−プロピルアミノメチル)ピリダジン
【化16】
【0160】
n−プロピルアミン(1.85ml、1.33g、22.6mmol)を保護ガス下で例1からの3,6−ビス(クロロメチル)ピリダジン(200mg、1.13mmol)の無水アセトニトリル(5ml)溶液に添加する。褐色を帯びた溶液を室温で一晩撹拌し、次いで、蒸発乾固させる。残渣を毎回5mlのジエチルエーテルおよびアセトニトリルの混合物(1:1)で2回、ならびにジエチルエーテル(5ml)で1回抽出する。溶液を真空中で蒸発させ、油状残渣を−30℃でジエチルエーテルから再結晶させる。生成物は、黄褐色の固体として得られる(174mg、69%)。
【0161】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 7.56 (s, 2H, 4/5-H), 3.99 (s, 4H, NCH
2), 2.54 (t,
3J
HH = 7.1 Hz, 4H, NCH
2-Pr), 1.91 (s, br, 2H, NH), 1.48 (六重線,
3J
HH = 7.3 Hz, 4H, CH
2-Pr), 0.90 (t,
3J
HH = 7.4 Hz, 6H, CH
3-Pr).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 162.7 (C3/6), 127.5 (C4/5), 54.3 (NCH
2), 52.4 (NCH
2-Pr), 24.3 (CH
2-Pr), 12.5 (CH
3-Pr).
同様に下記化合物が調製される。
【表2】
【0162】
例9
3,6−ビス(n−プロピルホルムアミドメチル)ピリダジン
【化17】
【0163】
例2からの3,6−ビス(n−プロピルアミノメチル)ピリダジン(1.60g、7.18mmol)をアルゴン雰囲気下でギ酸(純度99+%、10ml)および無水酢酸(1.5ml)の混合物に添加する。ガスのわずかな放出が発生し、黄褐色の溶液が形成され、これを室温で1.5h撹拌する。5mlの水を、次いで、添加し、溶液を真空中で蒸発乾固させる。油状の褐色の残渣を毎回10mlのジエチルエーテルで5回抽出する。エーテル溶液をNa
2SO
4上での乾燥後、真空中で蒸発乾固させると、生成物は、その3種の異性体A、BおよびCの形態の黄色がかった油として得られ、これは、さらに精製せずに使用することができる(1.75g、88%)。
【0164】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
(異性体A, BおよびCをできる限り帰属させた)
δ = 8.34, 8.33, (各々s, 3H, CHO, AおよびB), 8.21, 8.20 (各々s, 3H, CHO, BおよびC), 7.72 (s, 2H, 4/5-H, A), 7.65 (d, 1H,
3J
HH=8.6 Hz, 4/5-H, B), 7.56 (d, 1H,
3J
HH=8.6 Hz, 4/5-H, B), 7.51 (s, 2H, 4/5-H, C), 4.75 (s, 4H, NCH
2, A), 4.73 (s, 2H, NCH
2, B), 4.70 (s, 2H, NCH
2, B), 4.69 (s, 4H, NCH
2, C), 3.24-3.28 (m, 6H, NCH
2-Pr, BおよびC), 3.06-3.10 (m, 6H, NCH
2-Pr, AおよびB), 1.42-1.51 (m, 6H, CH
2-Pr, BおよびC), 1.30-1.40 (m, 6H, CH
2-Pr, AおよびB), 0.71-0.78 (m, 18H, CH
3-Pr, A, BおよびC).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
(異性体A, BおよびCをできる限り帰属させた)
δ = 163.5, 163.3 (各々の場合に2つのシグナル, CHO, A, BおよびC), 158.8, 158.4 (各々の場合に2つのシグナル, C3/6, A, BおよびC), 126.7 (C4/5, A), 126.6 (C4/5, B), 126.5 (C4/5, B), 126.4 (C4/5, C), 50.1 (2つのシグナル, NCH
2, AおよびB), 48.8 (2つのシグナル, NCH
2-Pr, BおよびC), 45.3, 45.2 (NCH
2, BおよびC), 43.4 (2つのシグナル, NCH
2-Pr, AおよびB), 21.1 (CH
2-Pr, BおよびC) 19.8 (CH
2-Pr, AおよびB), 11.0, 10.6 (CH
3-Pr, A, BおよびC).
同様に下記化合物が調製される。
【表3】
【0165】
例16
ビスイミダゾリウム塩
【化18】
【0166】
POCl
3(1.26ml、2.12g、14mmol)を100mlの無水トルエン中の例9からの3,6−ビス(n−プロピルホルムアミドメチル)ピリダジンの3種の異性体の混合物(1.75g、6.28mmol)に添加する。反応混合物を85℃で一晩撹拌し、その間に褐色の油がフラスコの壁に形成される。20h後、溶媒を真空中で除去し、25mlのTHF、50mlのTHF/ペンタンの混合物(1:1)および25mlのペンタンを使用して油状残渣を精製する。褐色を帯びた残渣を可能な最小量の水(約10ml)に溶解する。KPF
6の飽和水溶液(2.13g、13mmol)を水溶液に添加すると、ベージュ色の固体が直ちに沈殿する。固体を濾過して取り除き、冷水(20ml)および乾燥ジエチルエーテル(50ml)で洗浄する。真空中で乾燥させることによりベージュ色の固体として生成物が生じる(1.82g、54%)。
【0167】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 9.36 (s, 2H, 5/8-H), 8.06 (s, 2H, 3/10-H), 7.57 (s, 2H, 1/2-H), 4.47 (t,
3J
HH = 7.1 Hz, 4H, NCH
2), 2.02 (六重線, 4H,
3J
HH = 7.3 Hz, CH
2), 1.00 (t, 6H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 127.2 (C5/8), 125.9 (C2a/10a), 119.4 (C3/10), 116.1 (C1/2), 54.8 (NCH
2), 24.2 (CH
2), 10.7 (CH
3).
19F-NMR (CD
3CN, 376.50 MHz):
δ = -72.9 (d, J
FP = 706.9 Hz, PF
6-).
【表4】
【0168】
例23
NMR実験における遊離カルベンの合成
【化19】
【0169】
例6からのビスイミダゾリウム塩(10.0mg、0.019mmol)をYoungのNMR管においてアルゴン雰囲気下で0.5mlの無水THF−d
8に懸濁し、メチルリチウム(0.8mg、0.04mmol)を添加する。カルベンの褐色を帯びた溶液が形成され、これは、その後、カルベンの漸進的な分解と共に暗色となり、室温で黒色となる。メチルリチウムの添加の直後に記録した
1H−NMRスペクトルは、2種のイミダゾリウムプロトンの信号の消失を示す。
【0170】
1H-NMR (THF-d
8, 400.13 MHz):
δ = 7.57 (s, 2H, 1/2-H), 7.03 (s, 2H, 3/10-H), 4.19 (t, 4H,
3J
HH=7.0 Hz, NCH
2), 1.93 (六重線, 4H,
3J
HH=7.2 Hz, CH
2), 0.95 (t, 6H,
3J
HH=7.4 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (THF-d
8, 100.61 MHz):
δ = 124.7 (C2a/10a), 117.0 (C3/10), 113.2 (C1/2), 54.7 (NCH
2), 22.3 (CH
2), 11.4 (CH
3), C5/8は検出されず.
例24
Ptカルベン錯体
【化20】
【0171】
4.80g(10.0mmol)の例17からのビスイミダゾリウム塩、2.47g(10.0mmol)の白金(II)シアニド、2.97g(30.0mmol)の酢酸カリウムおよび100mlのアセトニトリルの混合物を50℃で20h撹拌する。冷却後、反応混合物を約30mlまで蒸発させ、形成された固体を吸引濾過し、毎回5mlのアセトニトリルで3回および毎回5mlのn−ヘプタンで3回洗浄し、次いで、減圧中で乾燥させる。精製は、3回の分別昇華により実施する(p約10
-6mbar、T=260〜280℃)。収率:1.27g(2.9mmol)、29%。純度:
1H−NMRによると>99.5%。
【0172】
同様に下記化合物が調製される。
【表5】
【0173】
例29
Ptカルベン錯体
【化21】
【0174】
6.32g(10mmol)の例21のビスイミダゾリウム塩、3.5FF10g(10mmol)のジメチルジ(1−S−ジメチルスルホキシジル)白金(II)、2.97g(30mmol)の酢酸カリウムおよび100mlのベンゾニトリルの混合物を50℃で10h撹拌する。反応混合物をその後160℃で12h加熱し、次いで、冷却させ、ベンゾニトリルを真空中で除去し、ジクロロメタンを用いて残渣をシリカゲルでクロマトグラフする。真空中で黄色の溶出液からジクロロメタンを除去し、ジクロロメタンを用いて残渣をシリカゲルで再びクロマトグラフし、溶媒を取り除いた後、DMFから3回再結晶させる。さらなる精製は、3回の分別昇華により実施する(p約10
-6mbar、T=290〜300℃)。収率:1.44g(2.70mmol)、27%。純度:
1H−NMRによると>99.5%。
【0175】
例30
Irカルベン錯体
【化22】
【0176】
4.80g(10mmol)の例17からのビスイミダゾリウム塩、7.71g(10mmol)のカルボニルビス(トリフェニルホスフィノ)イリジウム(I)シアニド、2.97g(30mmol)の酢酸カリウムおよび100mlのアセトニトリルの混合物を50℃で20h撹拌する。冷却後、反応混合物を約30mlまで蒸発させ、形成された固体を吸引濾過し、毎回5mlのアセトニトリルで3回および毎回5mlのn−ヘプタンで3回洗浄し、次いで、減圧中で乾燥させる。精製は、3回の分別昇華により実施する(p約10
-6mbar、T=260〜280℃)。収率:1.21g(2.59mmol)、26%。純度:
1H−NMRによると>99.5%。
【0177】
同様に下記化合物が調製される。
【表6】
【0178】
例33
Osカルベン錯体
【化23】
【0179】
9.6g(20mmol)の例17のビスイミダゾリウム塩、4.39g(10mmol)のヘキサクロロオスミウム(II)酸アンモウニウム(ammounium hexachloroosmate(II))、9.97g(60mmol)のシュウ酸二カリウムおよび100mlのエチレングリコールの混合物を160℃で12h撹拌する。冷却後、2.26g(11mmol)の亜ジチオン酸ナトリウムの5mlの水溶液を添加し、混合物を室温でさらに2h撹拌し、300mlの水を滴下添加し、沈殿した固体を吸引濾過し、毎回10mlのメタノール/水混合物(1:1、vv)で3回、毎回10mlのメタノールで3回洗浄し、次いで、減圧中で乾燥させる。ジクロロメタンを用いて残渣をシリカゲルでクロマトグラフする。真空中で黄色の溶出液からジクロロメタンを除去し、ジクロロメタンを用いて残渣をシリカゲルで再びクロマトグラフし、溶媒を取り除いた後、DMFから3回再結晶させる。さらなる精製は、3回の分別昇華により実施する(p約10
-6mbar、T=340〜350℃)。収率:2.00g(3.05mmol)、30%。純度:
1H−NMRによると>99.5%。
【0180】
例34
Cuカルベン錯体
【化24】
【0181】
Cu
2O(29.5mg、0.206mmol)を例16からのビスイミダゾリウム塩(100mg、187μmol)の無水CH
3CN(10ml)溶液に添加する。懸濁液を100℃で一晩撹拌する。室温への冷却後、混合物をセライトを通して濾過し、濾液を真空中で蒸発乾固させる。残渣をCH
2Cl
2(10ml)で抽出し、溶液を真空中で蒸発乾固させる。油状残渣をペンタン(10ml)中で1h撹拌し、濾過して取り除く。真空中で乾燥させることにより、ベージュ色の固体として生成物が生じる(69mg、82%)。
【0182】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 7.56 (s, 4H, 3/10-H), 7.06 (s, 4H, 2/10-H), 4.42 (t, 8H,
3J
HH=7.5 Hz, NCH
2), 1.99 (六重線, 8H,
3J
HH=7.5 Hz, CH
2), 0.98 (t, 12H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 167.9 (C5/8,
1H,
13C-HMBCから), 126.8 (C2a/10a), 117.7 (C3/10), 113.8 (C1/2), 55.3 (NCH
2), 25.6 (CH
2), 11.3 (CH
3).
例35
Agカルベン錯体
【化25】
【0183】
Ag
2O(43mg、0.206mmol)を例16からのビスイミダゾリウム塩(100mg、187μmol)の無水CH
3CN(10ml)溶液に添加する。黒っぽい懸濁液を遮光しながら50℃で一晩撹拌し、ヨウ化ナトリウム(75mg、500mmol)を次いで添加する。室温への冷却後、混合物をセライトを通して濾過し、溶液を真空中で蒸発乾固させる。残渣を無水CH
2Cl
2(10ml)で抽出し、溶液を真空中で蒸発乾固させる。油状残渣を無水ペンタン(10ml)中で一晩撹拌し、濾過して取り除き、真空中で乾燥させる。生成物は、ベージュ色の固体として得られる(82mg、88%)。
【0184】
1H-NMR (DMSO-d
6, 400.13 MHz):
δ = 8.23 (s, 4H, 3/10-H), 7.40 (s, 4H, 1/2-H), 4.44 (t, 8H,
3J
HH=7.3 Hz, NCH
2), 1.96 (六重線, 8H,
3J
HH=7.4 Hz, CH
2), 0.94 (t, 12H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (DMSO-d
6, 100.61 MHz):
δ = 168.0 (C5/8,
1H,
13C-HMBC), 126.3 (C2a/10a), 117.9 (C3/10), 113.2 (C1/2), 55.3 (NCH
2), 24.6 (CH
2), 10.7 (CH
3).
元素分析: C
14H
18AgIN
4
計算値: C 35.24 H 3.80 N 11.74
実測値: C 34.64 H 4.92 N 11.47
例36
Auカルベン錯体
【化26】
【0185】
Ag
2O(47.7mg、206μmol)をビスイミダゾリウム塩、例16(100mg、187μmol)の無水CH
3CN(10ml)溶液に添加する。黒っぽい懸濁液を遮光しながら50℃で一晩撹拌する。次いで、沈殿物を濾過して取り除き、[AuCl(SMe
2)](52.4mg、178μmol)を濾液に添加する。青白い固体が直ちに沈殿し、これは、時間とともに灰色となる。混合物を室温で7h撹拌する。混合物を、次いで、セライトを通して濾過し、濾液を真空中で蒸発乾固させる。黄色の残渣をCH
2Cl
2(10ml)で抽出し、溶液を蒸発乾固し、黄色の懸濁液の形成と共に油状残渣をペンタン(10ml)中で一晩撹拌する。固体の真空中での濾過および乾燥により、黄色の固体として生成物が生じる(97mg、89%)。
【0186】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 7.80 (s, 2H, 3/10-H), 7.26 (s, 2H, 1/2-H), 4.47 (t, 4H,
3J
HH=7.3 Hz, NCH
2), 2.03 (六重線, 4H,
3J
HH=7.4 Hz, CH
2), 0.97 (t, 6H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
3).
1H-NMR (DMSO-d
6, 400.13 MHz):
δ = 8.29 (s, 4H, 3/10-H), 7.44 (s, 4H, 1/2-H), 4.50 (t, 8H,
3J
HH=7.2 Hz, NCH
2), 1.98 (六重線, 8H,
3J
HH=7.4 Hz, CH
2), 0.94 (t, 12H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (DMSO-d
6, 100.61 MHz):
δ = 170.0 (C5/8), 127.2 (C2a/10a), 118.1 (C3/10), 113.8 (C1/2), 55.4 (NCH
2), 24.4 (CH
2), 10.7 (CH
3).
例37
Pdカルベン錯体
【化27】
【0187】
例16からのビスイミダゾリウム塩(150mg、0.281mmol)およびPd(OAc)
2(63.0mg、0.28mmol)を15mlの無水CH
3CNに溶解し、NaI(84.2mg、0.56mmol)を添加する。黄色の溶液はこのプロセスにおいて暗色となる。混合物を50℃で一晩撹拌し、20h後に黄色の溶液中で赤色の固体が形成される。溶液を濾過して取り除き、固体をCH
3CN(10ml)およびペンタン(5ml)で洗浄する。真空中で乾燥させることにより、赤色の固体の生成物が生じる。
【0188】
1H-NMR (DMSO-d
6, 400.13 MHz):
δ = 8.11 (s, 2H, 3/10-H), 7.16 (s, 2H, 1/2-H), 4.91 (t, 4H,
3J
HH=7.5 Hz, NCH
2), 2.11 (六重線, 4H,
3J
HH=7.3 Hz, CH
2), 0.97 (t, 6H,
3J
HH =7.3 Hz, CH
3).
13C{
1H}-NMR (DMSO-d
6, 100.61 MHz):
δ = 127.6 (C2a/10a), 118.25 (C3/10), 112.6 (C1/2), 55.4 (NCH
2), 23.2 (CH
2), 10.8 (CH
3), C5/8は検出されず.
元素分析: C
14H
18I
2N
4Pd
計算値: C 27.91 H 3.01 N 9.30
実測値: C 27.50 H 2.75 N 8.83
例38
Rhカルベン錯体
【化28】
【0189】
ビスイミダゾリウム塩、例16(10.0mg、18.7μmol)、[Rh(μ−Cl)(cod)]
2(4.6mg、9.3μmol)およびKOAc(1.8mg、19μmol)をCD
3CN(0.5ml)に懸濁する。青白い固体を有する黄色の懸濁液が形成し、これは、3h後、非対称性Rh(I)錯体の完全な転換および形成を示す。
【0190】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 12.63 (s, br, 1H, 8-H), 7.83 (d, 1H,
4J
HH = 1.8 Hz, 10-H), 7.67 (s, 1H, 3-H), 7.25 (d, 1H,
3J
HH = 10.3 Hz, 1-H), 7.12 (d, 1H,
3J
HH = 10.3 Hz, 2-H), 5.18-5.28 (m, 2H, =CH
cod), 4.96 (ddd,
2J
HH = 13.2 Hz,
3J
HH = 8.8 Hz,
3J
HH = 6.3 Hz, 1H, 11-H), 4.59 (ddd,
2J
HH = 13.2 Hz,
3J
HH = 8.7 Hz,
3J
HH = 6.4 Hz, 1H, 11-H), 4.45-4.58 (m, 2H, 11'-H), 3.61-3.69 (m, 1H, =CH
cod), 3.49-3.57 (m, 1H, =CH
cod), 2.37-2.60 (m, 4H, CH
2cod), 2.02-2.23 (m, 8H, CH
2cod, 12/12'-H), 1.08 (t, 3H,
3J
HH = 7.4 Hz, 13-H), 1.05 (t, 3H,
3J
HH = 7.4 Hz, 13'-H).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 127.2 (C10a), 127.1 (C2a), 126.0 (C8), 119.0 (C3), 117.9 (C10), 117.3 (C1), 111.9 (C2), 102.5 (d,
1J
RhC = 7.1 Hz, =CH
cod), 101.4 (d,
1J
RhC = 7.1 Hz, =CH
cod), 74.1 (br, =CH
cod), 56.2 (C11), 54.2 (C11'), 34.1 (CH
2cod), 32.4 (CH
2cod), 30.0 (CH
2cod), 29.4 (CH
2cod), 25.2 (C12), 24.5 (C12'), 11.5 (C13), 10.9 (C13').
例39
Rhカルベン錯体
【化29】
【0191】
ビスイミダゾリウム塩、例16(15.0mg、28.1μmol)、[Rh(μ−Cl)(CO)]
2(5.5mg、14μmol)およびKOAc(2.8mg、28μmol)をCD
3CN(0.5ml)に懸濁する。青白い固体を有する黄色の懸濁液が形成し、これは、40℃で3h後、非対称性Rh(I)錯体の完全な転換および形成を示す。
【0192】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 11.46 (d, 1H,
4J
HH = 1.6 Hz, 8-H), 7.85 (d, 1H,
4J
HH = 1.6 Hz, 10-H), 7.36 (d, 1H,
3J
HH = 10.3 Hz, 1-H), 7.23 (d, 1H,
3J
HH = 10.3 Hz, 2-H), 4.50-4.62 (m, 2H, 11-H), 4.45 (t, 2H,
3J
HH = 7.1 Hz, 11'-H), 1.97-2.09 (m, 4H, 12/12'-H), 1.00 (t, 3H,
3J
HH = 7.4 Hz, 13-H), 0.99 (t, 3H,
3J
HH = 7.4 Hz, 13'-H).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 186.0 (d,
1J
RhC = 56.0 Hz, CO), 182.2 (d,
1J
RhC = 73.0 Hz, CO), 165.6 (d,
1J
RhC = 44.7 Hz, C5), 127.6 (C2a), 127.0 (C10a), 126.4 (C8), 119.6 (C3), 117.9 (C10), 117.0 (C1), 112.9 (C2), 56.7 (C11), 53.9 (C11'), 25.1 (C12), 24.6 (C12'), 11.2 (C13), 10.7 (C13').
例40
Rhカルベン錯体
【化30】
【0193】
KOAcを使用した脱プロトン化:
KOAc(1.8mg、19μmol)をin situで生成した非対称性Rh(I)錯体、例38(11.9mg、18.7μmol)の0.5mlの無水CD
3CN溶液に添加する。この添加の間、溶液はいくぶん黒っぽくなり、30min後、対称性錯体への転換をNMR分光分析法により観察することができる。
【0194】
Ag
2Oを使用した脱プロトン化:
Ag
2O(3.3mg、14μmol)をin situで生成した非対称性Rh(I)錯体、例38(16.8mg、28.1μmol)の0.5mlの無水CD
3CN溶液に添加する。灰色の固体が沈殿し、対称性錯体の形成をNMR分光分析法により追跡することができる。
【0195】
1H-NMR (CD
3CN, 400.13 MHz):
δ = 7.44 (s, 2H, 3/10-H), 7.16 (s, 2H, 1/2-H), 5.37 (s, br, 4H, CH
cod), 3.96 (t, 4H,
3J
HH = 7.4 Hz, NCH
2), 2.33-2.36 (m, 4H, CH
2cod), 2.18-2.24 (m, 4H, CH
2cod), 1.90 (六重線, 4H,
3J
HH = 7.4 Hz, CH
2), 0.96 (t, 6H,
3J
HH = 7.4 Hz).
13C{
1H}-NMR (CD
3CN, 100.61 MHz):
δ = 160.9 (d,
1J
RhC = 54.2 Hz, C5/8), 122.5 (C2a/10a), 117.7 (C3/10), 114.8 (C1/2), 86.8 (d,
1J
RhC = 9.0 Hz, CH
cod), 52.8 (NCH
2), 31.7 (CH
2cod), 31.5 (CH
2cod), 26.0 (CH
2), 11.2 (CH
3).
例
OLEDの製造
本発明のOLEDは、本明細書に記載の状況(層厚さの変動、使用する材料)に適応させたWO2004/058911に従う一般的プロセスにより製造する。
【0196】
様々なOLEDに関する結果は、以下の例41〜49(表1および2)に示す。厚さ150nmの構造化ITO(インジウムスズ酸化物)でコーティングされたガラス板を、加工性の改善のために20nmのPEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン)、水からのスピンコーティングにより適用する;H.C.Starck、Goslar、Germanyから購入)でコーティングする。これらのコーティングされたガラス板は、OLEDが適用される基材を形成する。OLEDは、原理上、以下の層構造:基材/正孔注入層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/発光層(EML)/正孔ブロッキング層(HBL)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最終的に陰極を有する。陰極は、厚さ100nmのアルミニウム層により形成する。
【0197】
最初に、真空処理したOLEDについて説明する。この目的のために、全ての材料を真空チャンバにおいて熱蒸着により適用する。ここで、発光層は、常に、少なくとも1種のマトリックス材料(ホスト材料)および発光ドーパント(発光体)からなり、発光ドーパントとマトリックス材料(1以上)を特定の体積割合で同時蒸着により混ぜ合わせる。ここで、M1:M2:例XY(55%:35%:10%)などの表現は、材料M1が55%の体積割合で該層に存在し、M2が35%の割合で該層に存在し、例XYの発光体が10%の割合で該層に存在することを意味する。OLEDの正確な構造を表1に示す。OLEDの製造に使用した材料を表3に示す。
【0198】
OLEDは、標準的方法により特徴付けられる。この目的のために、エレクトロルミネッセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)および電圧(V単位で1000cd/m
2で測定)を電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から決定する。選択した実験のために、寿命を決定する。寿命は、その時間を超えると、光束密度が特定の初期の光束密度から特定の割合に低下する時間として定義する。LT50という表現は、示している寿命が、光束密度が初期の光束密度の50%、すなわち、例えば、4000cd/m
2から、2000cd/m
2に低下する時間であることを意味する。発光色に応じて様々な初期の輝度を選択する。寿命に関する値は、当業者に知られている転換式を用いて他の初期の光束密度に関する数値に転換することができる。1000cd/m
2という初期の光束密度の寿命がここでは通常の数値である。
【0199】
燐光OLEDにおける発光体材料としての本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、とりわけ、OLEDの発光層において燐光発光体材料として使用することができる。中心原子IrおよびPtを含有する金属錯体をここで使用する。OLEDに関する結果を表2において要約する。OLEDの場合、本発明の材料により効率的な発光OLEDが得られることがここで分かっている。
【表7】
【表8】
【表9】
【0200】
本発明の材料は、溶液から使用することもでき、その場合、それらは、良好な性質を有するにもかかわらず、真空処理されたOLEDと比較して単純なOLEDとなる。このタイプの素子の製造は、文献(例えばWO2004/037887)において既に何回も記載されているポリマー発光ダイオード(PLED)の製造に基づいている。その構造は、基材/ITO/PEDOT(80nm)/中間層/発光層(80nm)/陰極からなる。使用する中間層は、正孔注入に役立ち;この場合、MerckからのHIL−012を使用する。本発明の場合、本発明の発光体は、マトリックス以外の発光層のためにトルエンまたはTHFに溶解する。そのような溶液の一般的な固形分は、今回のように、スピンコーティングによりデバイスの一般的な層厚さを80nmにする場合、16〜25g/lである。発光層は、不活性ガス、本発明の場合はアルゴン雰囲気でスピンコーティングにより適用し、120℃で10min加熱することにより乾燥させる。最終的に、バリウムおよびアルミニウムを含む陰極を真空蒸着により適用する。上述の例において使用した層HBLおよびETLは、蒸着によりEMLと陰極の間に適用することもでき、中間層は、また、1以上の層により置きかえてもよく、これらは、溶液からのEML沈着というその後の加工ステップにより再び分離されないという条件を満たすだけでよい。溶液処理したデバイスは、マトリックスPS(ポリスチレン):M1:M2:例XY(30%:20%:40%:10%)において標準的であると特徴付けられ、前記OLED例は、未だ最適化されていない。表4は、得られたデータを要約したものである。溶液処理したOLEDの場合、本発明の材料により効率的な発光OLEDが得られることがここで分かっている。
【表10】
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 式(1)、(2)又は(3)の化合物:
【化31】
式中、使用された記号および添え字は以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、元素の周期表の1〜13族、ランタノイドまたはアクチノイドから選択される荷電または非荷電金属原子であり;
R、R’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、水素、1〜20個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの二重結合を有する直鎖もしくは分枝アルケニル、2〜20個のC原子および少なくとも1つの三重結合を有する直鎖もしくは分枝アルキニル、3〜10個のC原子を有する飽和、部分もしくは完全不飽和のシクロアルキル(これは、1〜10個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)、無置換もしくは置換のアリールもしくは芳香族環系、無置換もしくは置換の複素環もしくはヘテロ芳香族環系または置換もしくは無置換のアラルキルもしくはヘテロアラルキルであり、ここで、一方または両方の置換基RおよびR’は、ハロゲンにより任意の所望の位置で部分的に置換されているかもしくは完全に置換されているか、またはCNもしくはNO2により任意の所望の位置で部分的に置換されていてもよく、ハロゲンは、F、Cl、BrおよびIから選択され、一方または両方の置換基RおよびR’の炭素原子は、−O−、−C(O)−、−C(O)O−、−S−、−S(O)−、−SO2−、−SO3−、−N=、−N=N−、−NH−、−NR1−、−PR1−、−P(O)R1−、−P(O)R1−O−、−O−P(O)R1−O−、および−P(R1)2=N−から選択される原子および/または原子団により置きかえられていてもよく、ここで、R1は、1〜6個のC原子を有する非フッ素化、部分もしくは全フッ素化アルキル、3〜10個のC原子を有する飽和もしくは部分不飽和シクロアルキル、無置換もしくは置換のアリールまたは飽和もしくは不飽和の、無置換もしくは置換の複素環であり;
X、X’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR2、SiR2、N、P、OまたはSであり、ここで、R2は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、R2は、RまたはR’と結合して3〜20員環を形成していてもよく、ラジカルR又はR’は、XまたはX’がOまたはSを表す場合、XまたはX’に結合しておらず;
W、W’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR3、SiR3、N、NR3またはP、PR3であり、ここで、R3は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、WおよびW’のラジカルのR3は、互いに結合して架橋を形成していてもよく;
Aは、1〜5個の架橋原子からなる架橋、飽和または不飽和単位であり、ここで、架橋原子は、CR4、CR4R5、N、NR4、P、PR4、O、S(式中、R4およびR5は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてもよく、RもしくはR’と同じ意味を有するか、またはハロゲンF、Cl、Br、Iである。)から選択され、炭素の場合、該単位は、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子N、P、O、Sにより1回以上割り込まれていてもよく;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR6、N、−CR6R7−、−SiR6R7−、−NR6−、−PR6−、−BR6−、−BNR6−、−BNR6R7−、−O−または−S−であり、ここで、R6およびR7は、互いに独立して、同一であるかまたは異なっていてもよく、RもしくはR’と同じ意味を有するか、または1〜3個の架橋原子からなる架橋単位であり、架橋原子は、CR6、−CR6R7−、−SiR6R7−、−BR6−、−BNR6−、−BNR6R7−、−NR6−、−PR6−、−O−、−S−(式中、R6は、RまたはR’と同じ意味を有する。)から選択され、炭素の場合、該単位は、場合により任意の所望の位置でヘテロ原子B、Si、N、P、O、Sにより1回以上割り込まれているか、および/またはR6およびR7により置換されているか、および/またはハロゲン原子F、Cl、Br、Iにより置換されていてもよく、少なくとも2個のC原子の場合、これらは、飽和または一〜多価不飽和の様式で互いに結合していてもよく、さらに、ラジカルR6および/またはR7は、YまたはY’内、さらにはYとY’の間の両方で、互いに結合していてもよく;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、C、CR8、SiR8、B、NまたはPであり、ここで、R8は、同一であるかまたは異なり、RまたはR’と同じ意味を有し、ZおよびZ’のラジカルR8は、互いに結合して環を形成していてもよく;
ただし、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子は、同一であるかまたは互いに独立し、Si、B、N、O、SまたはPから選択されるヘテロ原子を含有し;
K、K’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、モノ、ジまたはトリアニオン性リガンドであり、これは、単座、二座、三座、四座、五座または六座であってもよく;
L、L’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、中性の単座、二座、三座、四座、五座または六座配位子であり、
o、o’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、リガンドKまたはK’の数の0〜6であり、ここで、oが1より大きい場合、リガンドKおよびK’は、同一であるかまたは異なっていてもよく;
p、p’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、リガンドLまたはL’の数の0〜6であり、ここで、pが1より大きい場合、リガンドLおよびL’は、同一であるかまたは異なっていてもよく;
ここで、oまたはo’は、全てのリガンドKおよびK’の電荷が使用される金属原子の原子価に対応するように選択され、oとpまたはo’とp’の合計は、使用される金属原子の配位数ならびにリガンドKとLまたはK’とL’の添え字sおよび配座性によって決まり、
ここで、KまたはK’は、弱配位性または非配位性であってもよく、対イオンとして、金属錯体の電荷を平衡させ、
ここで、sは、金属錯体が1、2または3個のビスカルベンリガンドを含有するような1〜3の整数であり、これは、互いに独立して同一でも異なっていてもよく、
ここで、金属原子MおよびM’に応じて、リガンドLp、L’p’、Ko、K’o’およびビスカルベンリガンドの立体的影響は、また、金属原子に対して非常に弱い結合を形成するか、または配位的結合のみ形成してもよく、
さらに、同じ原子または隣接する原子に結合した2つ以上のラジカルは、互いに芳香族、ヘテロ芳香族または脂肪族環系を形成していてもよく、
さらに、2つ以上のリガンドは、また、基RまたはR’を介して互いに結合し、四座配位子系または多脚型配位子を形成してもよく、または、基Rおよび/またはR’はM又はM’に配位してもよい。
[2] MおよびM’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ti、Zr、V、Mn、Sc、Cr、Mo、WおよびAlなる群、好ましくはIr、PtおよびCuからなる群から選択されることを特徴とする[1]に記載の化合物。
[3] RおよびR’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、1〜10個のC原子を有する直鎖もしくは分枝アルキル、3〜6個のC原子を有する飽和シクロアルキル(これは、1〜4個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい。)、無置換もしくは置換のアリールもしくは芳香族環系、無置換もしくは置換の複素環もしくはヘテロ芳香族環系または置換もしくは無置換のアラルキルもしくはヘテロアラルキルからなる群から選択され(ここで、置換基RおよびR’の一方または両方の炭素原子は−O−により置きかえられていてもよい)、あるいは、RまたはR’が金属に配位している場合、RまたはR’は、置換または無置換のアラルキルまたはヘテロアラルキル基を表す(ここで、C原子はさらにO、SまたはNRにより置き換えられていてもよい)ことを特徴とする[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] 式(1a)、(2a)及び(3a)の化合物から選択される[1]〜[3]の1項以上に記載の化合物:
【化32】
式中、R、R’、R1〜R8、K、K’、L、L’、o、o’、p、p’及びsは、[1]に記載の意味を有し、使用された他の記号および添え字は以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Ti、Zr、V、Mn、Sc、Cr、MoおよびWからなる群から選択され;
X、X’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR2またはNであり;
Aは、−CR4=CR4−、−CR4=N−または−CR4R5−CR4R5−であり;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR6またはNであり;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR8またはNであり;
ただし、W、X、Y、Zからの少なくとも1個の原子およびW’、X’、Y’、Z’からの少なくとも1個の原子は、同一であるかまたは互いに独立し、窒素原子を含有する。
[5] 式(1b)、(2b)及び(3b)の化合物から選択される[1]〜[4]の1項以上に記載の化合物:
【化33】
式中、R、R’、R1〜R8、K、K’、L、L’、o、o’、p、p’及びsは、[1]に記載の意味を有し、使用された他の記号および添え字は以下の意味を有する:
M、M’は、出現するごとに同一であるかまたは異なり、Ir、PtおよびCuからなる群から選択され;
Aは、−CR4=CR4−または−CR4=N−、好ましくは−CR4=CR4−であり;
Y、Y’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR6またはNであり;
Z、Z’は、互いに独立して同一であるかまたは異なり、CR8またはN、好ましくはNである。
[6] 式(1c)、(1d)、(2c)、(2d)及び(3c)の化合物から選択される[1]〜[5]の1項以上に記載の化合物:
【化34】
式中、使用された記号および添え字は[1]に記載の意味を有する。
[7] 配位子KおよびK’は、水素化物、重水素化物、F、Cl、Br、I、擬ハロゲン化物、アジド、トリフルオロスルホネート、アルキルアセチリド、アリール−またはヘテロアリールアセチリド、アルキル基、アルキルアリールラジカル、アリール基(二座又は多座であってもよい)、ヘテロアリール基(二座又は多座であってもよい)、水酸化物、シアン化物、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、脂肪族または芳香族アルコレート、脂肪族または芳香族チオアルコレート、アミド、カルボキシレート、アニオン性の窒素含有複素環、脂肪族および芳香族ホスフィドPR2-、脂肪族または芳香族セレニドSeR-、シクロペンタジエニル(Cp)(ここで、シクロペンタジエニル基は、アルキル置換基により置換されていてもよい)、インデニル(ここで、インデニルラジカルは、アルキル置換基により置換されていてもよい)、O2-、S2-、ニトレン、1,3−ジケトンに由来する1,3−ジケトネート、3−ケトエステルに由来する3−ケトネート、アミノカルボン酸に由来するカルボキシレート、サリチルイミンに由来するサリチルイミネート、ジアルコールに由来するジアルコレート、および、ジチオールに由来するジチオレートからなる群から選択されることを特徴とする[1]〜[6]の1項以上に記載の化合物。
[8] LおよびL’は、アミン、エーテル、水、アルコール、一酸化炭素、ニトリル、一酸化窒素、イソニトリル、オレフィン、窒素含有複素環、ホスフィン、ホスホネート、アルセネート、ホスフィット、アルシン、スチビン、脂肪族もしくは芳香族スルフィド、脂肪族もしくは芳香族セレニド、カルベン、アセチレン不飽和多重結合系、ジアミン、イミン、2個の窒素原子を含有する複素環、ジホスフィン、及び、共役ジエンからなる群から選択されることを特徴とする[1]〜[7]の1項以上に記載の化合物。
[9] [1]〜[8]の1項以上に記載の少なくとも1種の化合物と少なくとも1種の溶媒を含有する配合物、特に溶液、懸濁液またはミニエマルジョン。
[10] 式(4)又は式(5)の化合物:
【化35】
式中、R、R’、X、X’、W、W’、A、Y、Y’、Z、Z’は、[1]に記載の意味を有し、Q-は、アニオン性対イオンであり、式(5)の化合物は、部分的にプロトン化された形態のモノカルベンであってもよい。
[11] リガンド前駆体の脱プロトン化、モノ又はビスカルベンリガンドの錯化、ハロホルムアミジニウム誘導体の酸化的付加、金属化合物による電子が豊富なオレフィンの切断、又は、金属カルベン錯体の金属交換反応により、[9]に記載の化合物をビスカルベンリガンドまたはモノカルベンリガンドとして反応させることによる[1]〜[8]の1項以上に記載の化合物の調製方法。
[12] 有機触媒又はイオン性液体としての[9]に記載の化合物の使用。
[13] カルボニル化、ヒドロアミノ化、水素化、ヒドロアミノメチル化、ヒドロホルミル化、ヒドロシリル化、ヒドロシアン化、水添二量化、酸化、酸化カップリング、Heck反応、Tsuji−Trostカップリング、Suzuki−Miyauraカップリング、Kumadaカップリング、Negishiカップリング、Stilleカップリング、Sonogashira反応、C(sp3)−C(sp3)カップリング反応、C(sp3)−C(sp2)カップリング反応、Hartwig−Buchwaldアミノ化、Ullmann−Goldbergカップリング、異性化、再配列、Diels−Alder反応、メタセシス、アルカンおよびアルケンのC−H活性化、1,3−ジエンの1,4−官能化、単鎖重合、オリゴマー化および/または重合からなる群から選択されるプロセスにおける[1]〜[8]の1項以上に記載の化合物の使用、又は、電子デバイスにおける[1]〜[8]の1項以上に記載の化合物の使用。
[14] [1]〜[8]の1項以上に記載の少なくとも1種の化合物を含有する電子デバイスであって、好ましくは、有機エレクトロルミネッセンスデバイス、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機光学検出器、有機感光体、有機電場消光デバイス、発光電気化学電池または有機レーザーダイオードからなる群から選択される電子デバイス。
[15] 有機エレクトロルミネッセンスデバイスであって、1以上の発光層において[1]〜[13]の1項以上に記載の化合物が発光化合物として使用されることを特徴とする[19]に記載の電子デバイス。