【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、SOFCのような燃料電池を運転する際には、熱自立のため発電室を厳重に保温しなければならず、例えば断熱構造の圧力容器内に複数のSOFCカートリッジを収納するSOFCモジュール構造が採用されている。
しかし、SOFCモジュールの厳重な保温は、SOFCの運転(発電)停止時や緊急時において、圧力容器の内部にある発電室温度を低下させる障害となるので、迅速な停止操作を実施できないという問題が指摘されている。すなわち、SOFCが厳重に保温されていると、熱容量の大きいSOFCモジュールは放熱に時間を要することとなり、この結果、発電室が停止可能な温度まで低下するには多くの時間を必要とする。
【0007】
このため、燃料電池においては、運転時には要求される高断熱を保ち、停止時もしくは緊急時においては断熱性能を低くして、迅速な停止操作を可能にすることが望まれる。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、運転時に必要な高断熱を保つことができ、しかも、停止時や緊急時には断熱性能を低くして迅速な停止操作を可能にする燃料電池及び燃料電池の冷却方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の第1態様に係る燃料電池は、圧力容器の内部に収納し、燃料ガス及び酸化性ガスを供給して発電する燃料電池において、前記圧力容器を内部シェル及び外部シェルよりなる二重構造圧力容器とし、前記内部シェル及び前記外部シェルの間に運転時の真空断熱を行う真空室を形成するとともに、前記真空室が前記内部シェルと前記外部シェルとの間を連結する断熱材の補強スペーサと
、を備え
、前記真空室が、運転時に前記真空室を真空にする真空断熱モードと、運転停止時及び緊急時に前記真空室に気体を供給して真空解除する冷却モードと、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
このような第1態様の燃料電池によれば、圧力容器を内部シェル及び外部シェルよりなる二重構造圧力容器とし、内部シェル及び外部シェルの間に運転時の真空断熱を行う真空室を形成するとともに、真空室が内部シェルと外部シェルとの間を連結する断熱材の補強スペーサを備えているので、二重構造圧力容器の内外は、従来の断熱材による保温と比較して小型化が容易な真空断熱により確実に断熱することができる。このため、内部シェルの内部に収納されている燃料電池カートリッジは、発電室内を所望の高温に維持して発電することができる。
また、断熱材の補強スペーサを備えているので、真空室内外の温度差によるシェルの熱変形を抑制することができる。このような熱変形は、特に運転停止等による温度低下時に生じやすい。このような補強スペーサは、外部シェルへ熱伝達する熱量を最小限に抑えた断熱材であり、例えば外部シェルとの接触面積を最小限に抑えるため、複数に分割した板材やピン等が好適である。
【0010】
上述した第1態様の燃料電池においては、前記真空室が、運転時時に前記真空室を真空にする真空断熱モードと、運転停止時及び緊急時に前記真空室に気体を供給して
真空解除する冷却モードと、を備えていることが好ましい。
【0011】
このような燃料電池によれば、燃料電池の運転時において、真空断熱により内部シェルの内部に収納されている燃料電池カートリッジは、発電室内を所望の高温に維持して発電でき、燃料電池の運転停止時及び緊急時において、真空室内の真空状態を解除することで発電室内からの放熱量を増大させて降温速度を速めることができる。
この場合、前記冷却モード時に、前記外部シェルの外表面から冷却媒体に吸熱して冷却する冷却装置を設けることが好ましく、これにより、運転停止時及び緊急時に冷却装置を作動させることで、降温速度をより一層速めることができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る燃料電池の冷却方法は、圧力容器の内部に収納し、燃料ガス及び酸化性ガスを供給して発電する燃料電池の冷却方法において、前記圧力容器を内部シェル及び外部シェルよりなる二重構造圧力容器とし、前記内部シェル及び前記外部シェルの間に形成されて運転時に真空断熱を行うための真空室が、運転停止時及び緊急時に気体の供給を受けて、真空断熱状態が解除されることを特徴とするものである。
【0013】
このような燃料電池の冷却方法によれば、圧力容器を内部シェル及び外部シェルよりなる二重構造圧力容器とし、内部シェル及び外部シェルの間に形成されて運転時に真空断熱を行うための真空室が、運転停止時及び緊急時に気体の供給を受けて、真空断熱状態が解除されるようにすることで、発電室内からの放熱量増大により降温速度を速め、冷却に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によれば、燃料電池の運転時には、真空断熱により発電室内を保温することで要求される高断熱を保ち、燃料電池の停止時もしくは緊急時には、真空断熱を解除して断熱性能を低下させることにより、迅速な停止操作が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る燃料電池及び燃料電池の冷却方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、燃料電池の一例として、固体酸化物型燃料電池(以下、「SOFC」と呼ぶ)について説明するが、特に限定されることはない。
図6は、燃料ガス及び酸化性ガスの供給を受ける1または複数(図示の構成例では4)のSOFCモジュール1による発電と、例えばマイクロガスタービン(MGT)のようなガスタービン60により発電機を駆動する発電と、を組み合わせたSOFC複合発電システム70の構成例を示している。図示のガスタービン60は、燃焼器61と、圧縮機62と、タービン63と、を具備して構成され、燃焼器61で燃料ガスを燃焼させて得られる高温高圧の燃焼ガスをタービン63に供給して軸出力を得る。この軸出力は、圧縮機62及び図示しない発電機の駆動に用いられる。
【0017】
このSOFC複合発電システム70においては、燃焼器61の燃料として、未使用の燃料ガス及び発電後にSOFCモジュール1から排出される排燃料ガスが使用される。すなわち、発電後にSOFCモジュール1から排出される排燃料ガスは、排燃料ガス流路71、制御弁72A及び燃料圧縮機73を介して燃料ガス流路74を流れる燃料ガスに合流させることで、SOFCモジュール1及びガスタービン60の燃料ガスとして再利用される。
燃焼器61へ供給するガス燃料の流量は、燃料ガス流路74に設けた制御弁72Bによって調整される。さらに、燃焼器61は、必要に応じて専用の燃料ガス供給ライン75から供給されるガス燃料も使用する。
【0018】
また、この実施形態では、SOFCモジュール1で使用する酸化性ガスとして、ガスタービン60の圧縮機62で圧縮した空気が使用されている。この酸化性ガス(圧縮空気)は、酸化性ガス流路76を介してSOFCモジュール1に供給される。そして、発電後にSOFCモジュール1から排出される排酸化性ガスは、排酸化性ガス流路77を通って燃焼器61に供給され、燃焼器61に供給される燃料ガスの燃焼に使用される。
なお、燃焼器61から供給される燃焼ガスは、タービン63で仕事をした後に燃焼排ガスとして排出されるが、この燃焼排ガスは、例えば排熱回収ボイラで蒸気を生成する熱源として再利用することも可能である。
【0019】
上述したSOFCモジュール1は、
図1から5に示すように、1または複数のSOFCカートリッジ10と、これら1または複数のSOFCカートリッジ10を収納する二重構造圧力容器2とを有する。
二重構造圧力容器2は、耐圧部の内部シェル(内筒)3と外部シェル(外筒)4とを同心に配置し、内部シェル3の外壁面と外部シェル4の内壁面との間に、真空室5となる空間部を形成したものである。真空室5の内部には、円周方向へ等ピッチに配置した複数の補強スペーサ6を介在させている。
【0020】
この補強スペーサ6は、放射状に配置されて内部シェル3の外壁面と外部シェル4の内壁面との間を連結するリブ状の補強部材であるが、後述する熱伝導の観点から、内部シェル3及び外部シェル4と接触する面の面積を最小限にした板状部材やピン等が望ましい。すなわち、必要な補強強度を確保できる範囲内において、接触面積を最小限にすることが必要であり、例えば板材を使用する場合には、真空室5の長手方向(二重構造圧力容器2の軸方向)を複数に分割して接触面積を最小限とすることで、接触面積を最小限にした断熱性を有する断面形状とする。また、接触面積の小さいピンのように、シェル間の断熱性を有する断面形状とした補強スペーサ6を採用してもよい。
なお、図示の構成例では、補強スペーサ6の板材が円周方向へ45度ピッチに8枚用いられているが、特に限定されるものではない。
【0021】
また、SOFCモジュール1は、
図6に示すように、燃料ガス流路74から分岐する燃料ガス供給管74aと複数の燃料ガス供給枝管(不図示)とを有する。さらに、SOFCモジュール1は、排燃料ガス流路71に合流する燃料ガス排出管71aと複数の燃料ガス排出枝管(不図示)とを有する。
また、SOFCモジュール1は、酸化性ガス流路76から分岐する酸化性ガス供給管76aと酸化性ガス供給枝管(不図示)とを有する。さらに、SOFCモジュール1は、排酸化性ガス流路77に合流する排酸化性ガス排出管77aと複数の酸化性ガス排出枝管(不図示)とを有する。
【0022】
燃料ガス供給管74aは、二重構造圧力容器2の外部において、一端がSOFCモジュール1の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを供給する図示しない燃料ガス供給部(燃料ガス供給源)と、燃料ガス流路74を介して接続されている。また、燃料ガス供給管74aの他端は、二重構造圧力容器2の内部において、燃料ガス供給枝管に接続されている。この燃料ガス供給管74aは、上述の燃料ガス供給部から供給される所定流量の燃料ガスを、複数の燃料ガス供給枝管に分岐してSOFCカートリッジ10に導くものである。この燃料ガス供給枝管は、燃料ガス供給管74aから供給される燃料ガスを複数のSOFCカートリッジ10に略均等の流量で導き、複数のSOFCカートリッジ10の発電性能を略均一化させるものである。
【0023】
燃料ガス排出枝管は、一端が複数のSOFCカートリッジ10に接続されるとともに、他端が燃料ガス排出管71aに接続されている。この燃料ガス排出枝管は、SOFCカートリッジ10から排出される排燃料ガスを燃料ガス排出管71aに導くものである。
また、排酸化性ガス排出管77aは、複数の燃料ガス排出枝管に接続されるとともに、一部が二重構造圧力容器2の外部で排酸化性ガス流路77に接続されている。この排酸化性ガス排出管77aは、燃料ガス排出枝管から導出される排燃料ガスを二重構造圧力容器2の外部に導くものである。
【0024】
SOFCモジュール1は、内部シェル3の内部に断熱材で囲まれた空間が形成され、この空間内には、
図4(b)に示すようにユニット化された1または複数のSOFCカートリッジ10が収納されている。なお、SOFCモジュール1の内部に収納されるSOFCカートリッジ10の数については、特に限定されるものではない。
ところで、以下の説明においては、便宜上紙面を基準として「上」及び「下」の表現を用いて各構成要素の位置関係を特定するが、鉛直方向に対して必ずしもこの限りである必要はない。例えば、紙面における上方向が鉛直方向における下方向に対応してもよい。また、紙面における上下方向が鉛直方向に直行する水平方向に対応してもよい。
【0025】
SOFCカートリッジ10は、
図5に示すように、複数のセルスタック(円筒セル)40と、発電室11と、燃料ガス供給室12と、燃料ガス排出室13と、酸化性ガス供給室14と、酸化性ガス排出室15とを有する。また、SOFCカートリッジ10は、上部管板16aと、下部管板16bと、上部断熱体17aと、下部断熱体17bとを有する。
なお、本実施形態において、SOFCカートリッジ10は、燃料ガス供給室12と、燃料ガス排出室13と、酸化性ガス供給室14と、酸化性ガス排出室15とが図示のように配置されることで、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック40の内側と外側とを対向して流れる構造となっているが、必ずしもこの必要はなく、例えば、セルスタックの内側と外側とを平行して流れる構造、または、酸化性ガスがセルスタックの長手方向と直交する方向へ流れる構造としてもよい。
【0026】
発電室11は、上部断熱体17aと下部断熱体17bとの間に形成された領域である。この発電室11は、セルスタック40の燃料電池セル41が配置され、燃料ガスと酸化性ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う領域である。また、この発電室11は、セルスタック40の長手方向中央部付近の温度が、SOFCモジュール1の定常運転時に高温雰囲気(例えば700℃〜1100℃程度)となる。
【0027】
燃料ガス供給室12は、SOFCカートリッジ10の上部ケーシング18aと上部管板16aとに囲まれた領域である。また、燃料ガス供給室12は、上部ケーシング18aに備えられた燃料ガス供給孔19aによって、図示しない燃料ガス供給枝管と連通されている。また、燃料ガス供給室12には、セルスタック40の一方の端部が、セルスタック40の基体管42の内部が燃料ガス供給室12に対して開放して配置されている。この燃料ガス供給室12は、図示しない燃料ガス供給枝管から燃料ガス供給孔19aを介して供給される所定ガス組成と所定流量の燃料ガスを、複数のセルスタック40の基体管42の内部に略均一流量で導き、複数のセルスタック40の発電性能を略均一化させるものである。
【0028】
燃料ガス排出室13は、SOFCカートリッジ40の下部ケーシング18bと下部管板16bとに囲まれた領域である。また、燃料ガス排出室13は、下部ケーシング18bに備えられた燃料ガス排出孔19bによって、図示しない燃料ガス排出枝管と連通されている。また、燃料ガス排出室13には、セルスタック40の他方の端部が、セルスタック40の基体管42の内部が燃料ガス排出室13に対して開放して配置されている。この燃料ガス排出室13は、複数のセルスタック40の基体管42の内部を通過して燃料ガス排出室13に供給される排燃料ガスを集約して、燃料ガス排出孔19bを介して図示しない燃料ガス排出枝管に導くものである。
【0029】
SOFCモジュール1の発電量に対応して所定ガス組成と所定流量の酸化性ガスを酸化性ガス供給枝管へと分岐して、複数のSOFCカートリッジ10へ供給する。酸化性ガス供給室14は、SOFCカートリッジ10の下部ケーシング18bと下部管板16bと下部断熱体17bとに囲まれた領域である。
また、酸化性ガス供給室14は、下部ケーシング18bに備えられた酸化性ガス供給孔20aによって、図示しない酸化性ガス供給枝管と連通されている。この酸化性ガス供給室14は、図示しない酸化性ガス供給枝管から酸化性ガス供給孔20aを介して供給される所定流量の酸化性ガスを、後述する酸化性ガス供給隙間21aを介して発電室11に導くものである。
【0030】
酸化性ガス排出室15は、SOFCカートリッジ10の上部ケーシング18aと上部管板16aと上部断熱体17aとに囲まれた領域である。また、酸化性ガス排出室15は、上部ケーシング18aに備えられた酸化性ガス排出孔20bによって、図示しない酸化性ガス排出枝管と連通されている。この酸化性ガス排出室15は、発電室11から、後述する酸化性ガス排出隙間21bを介して燃料ガス排出室15に供給される排酸化性ガスを、酸化性ガス排出孔20bを介して図示しない酸化性ガス排出枝管に導くものである。
【0031】
上部管板16aは、上部ケーシング18aの天板と上部断熱体17aとの間に、上部管板16aと上部ケーシング18aの天板と上部断熱体17aとが略平行になるように、上部ケーシング18aの側板に固定されている。
また、上部管板16aは、SOFCカートリッジ10に備えられるセルスタック40の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック40がそれぞれ挿入されている。この上部管板16aは、複数のセルスタック40の一方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス供給室12と酸化性ガス排出室15とを隔離するものである。
【0032】
下部管板16bは、下部ケーシング18bの底板と下部断熱体17bとの間に、下部管板16bと下部ケーシング18bの底板と下部断熱体17bとが略平行になるように下部ケーシング18bの側板に固定されている。また、下部管板16bは、SOFCカートリッジ10に備えられるセルスタック40の本数に対応した複数の孔を有し、該孔にはセルスタック40がそれぞれ挿入されている。この下部管板16bは、複数のセルスタック40の他方の端部をシール部材及び接着部材のいずれか一方又は両方を介して気密に支持すると共に、燃料ガス排出室13と酸化性ガス供給室14とを隔離するものである。
【0033】
上部断熱体17aは、上部ケーシング18aの下端部に、上部断熱体17aと上部ケーシング18aの天板と上部管板16aとが略平行になるように配置され、上部ケーシング18aの側板に固定されている。また、上部断熱体17aには、SOFCカートリッジ10に備えられるセルスタック40の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径は、セルスタック40の外径よりも大きく設定されている。上部断熱体17aは、この孔の内面と、上部断熱体17aに挿通されたセルスタック40の外面との間に形成された酸化性ガス排出隙間21bを有する。
【0034】
この上部断熱体17aは、発電室11と酸化性ガス排出室15とを仕切るものであり、上部管板16aの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。上部管板16a等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、上部管板16a等が発電室11内の高温に晒されて、上部管板16a等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、上部断熱体17aは、発電室11を通過して高温に晒された排酸化性ガスを、酸化性ガス排出隙間21bを通過させて酸化性ガス排出室15に導くものである。
【0035】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ10の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック40の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。このことにより、排酸化性ガスは、基体管42の内部を通って発電室11に供給される燃料ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る上部管板16a等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて酸化性ガス排出室15に供給される。また、燃料ガスは、発電室11から排出される排酸化性ガスとの熱交換により昇温され、発電室11に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく、発電に適した温度に予熱昇温された燃料ガスを発電室11に供給することができる。
【0036】
下部断熱体17bは、下部ケーシング18bの上端部に、下部断熱体17bと下部ケーシング18bの底板と下部管板16bとが略平行になるように配置され、下部ケーシング18aの側板に固定されている。また、下部断熱体17bには、SOFCカートリッジ10に備えられるセルスタック40の本数に対応して、複数の孔が設けられている。この孔の直径はセルスタック40の外径よりも大きく設定されている。下部断熱体17bは、この孔の内面と、下部断熱体17bに挿通されたセルスタック40の外面との間に形成された酸化性ガス供給隙間21aを有する。
【0037】
この下部断熱体17bは、発電室11と酸化性ガス供給室14とを仕切るものであり、下部管板16bの周囲の雰囲気が高温化し強度低下や酸化性ガス中に含まれる酸化剤による腐食が増加することを抑制する。下部管板16b等はインコネルなどの高温耐久性のある金属材料から成るが、下部管板16b等が高温に晒されて下部管板16b等内の温度差が大きくなることで熱変形することを防ぐものである。また、下部断熱体17bは、酸化性ガス供給室14に供給される酸化性ガスを、酸化性ガス供給隙間21aを通過させて発電室11に導くものである。
【0038】
本実施形態によれば、上述したSOFCカートリッジ10の構造により、燃料ガスと酸化性ガスとがセルスタック40の内側と外側とを対向して流れるものとなっている。この結果、基体管42の内部を通って発電室11を通過した排燃料ガスは、発電室11に供給される酸化性ガスとの間で熱交換がなされ、金属材料から成る下部管板16b等が座屈などの変形をしない温度に冷却されて燃料ガス排出室13に供給される。また、酸化性ガスは、排燃料ガスとの熱交換により昇温され、発電室11に供給される。その結果、ヒーター等を用いることなく、発電に必要な温度に昇温された酸化性ガスを発電室11に供給することができる。
【0039】
発電室11で発電された直流電力は、複数の燃料電池セル41に設けたNi/YSZ等からなるリード膜によりセルスタック40の端部付近まで導出した後に、SOFCカートリッジ10の集電棒(不図示)に集電板(不図示)を介して集電して、各SOFCカートリッジ10の外部へと取り出される。なお、集電棒によってSOFCカートリッジ10の外部に導出された電力は、各SOFCカートリッジ10の発電電力を所定の直列数および並列数へと相互に接続され、SOFCモジュール1の外部へと導出されて、図示しないインバータなどにより所定の交流電力へと変換されて、電力負荷へと供給される。
【0040】
図1は、
図6に示したSOFC複合発電システム70を簡略化して示すとともに、本実施形態の二重構造圧力容器2について、真空室5の圧力調整システム30を加えたシステム構成図である。
図示の真空室5は、真空状態、大気圧及び加圧状態の選択切替を可能とする圧力調整システム30を備えている。この圧力調整システム30は、真空室5の内部状態について、SOFCモジュール1の運転時時に真空室5を真空にする真空断熱モードと、運転停止時及び緊急時に真空室5に空気(気体)を供給して加圧する冷却モードとの選択切替を行うものである。
【0041】
この圧力調整システム30は、減圧用の真空ポンプ31及び流路切替弁32を備えた真空引きライン33と、計装空気(例えば0.35MPaA程度)34のような昇圧用の空気を供給する空気供給源に接続されるとともに流路切替弁35を備えた加圧ライン36と、一端を大気開放にするとともに流路切替弁37を備えた大気開放ライン38とを備えている。真空引きライン33、加圧ライン36及び大気開放ライン38は、何れも圧力調整流路39を介して真空室5の内部と連通している。
【0042】
上述した圧力調整システム30は、真空断熱モードにおいて、SOFCモジュール1の運転時に熱自立性を保つための保温として、真空断熱の利用を可能にする。
すなわち、SOFCモジュール1を運転する際には、流路切替弁32を開いて流路切替弁35,37を閉じた状態とし、真空ポンプ31を運転する。この結果、真空室5内の空気は、真空引きライン33を通って真空ポンプ31に吸引される。このような真空引きは、真空室5内が所定の真空圧力(例えば0MPaA以下)になるまで継続され、所定の真空圧力まで到達した後に流路切替弁32を閉じるとともに真空ポンプ31の運転を停止する。
【0043】
このようにして真空室5が所定の真空圧に維持されると、SOFCカートリッジ10が発熱する内部シェル3の内部は、真空室5を介して、外部シェル4の外部と真空断熱される。このため、熱自立のため発電室11を厳重に保温する目的でSOFCカートリッジ10の外周を囲うように設けている断熱材7については、この断熱材7を全てなくすか、あるいは、その厚さを大幅に低減することが可能になる。
【0044】
このような断熱材7の省略または厚さ低減は、内部シェル3及び二重構造圧力容器2の小型化を可能にするので、この結果、SOFCモジュール1の小型化は勿論のこと、このSOFCモジュール1を構成要素とするSOFC複合発電システム70の小型化も同様に可能となる。
また、断熱性の高い補強スペーサ6を備えているので、補強スペーサ6を介した熱伝導も最小限に抑えることができ、しかも、真空室5の内外温度差により内部シェル3及び外部シェル4の熱変形を抑制することができる。このような熱変形は、特に運転停止等による温度低下時に生じやすい。
【0045】
さらに、断熱材7が省略されると二重構造圧力容器2の構造を簡素化できるため、SOFCカートリッジ10もしくは複数のSOFCカートリッジ10を備えた二重構造圧力容器2を用意することにより、セル損傷が生じた場合に問題のあるSOFCカートリッジ10のみを交換することができる。このようなSOFCカートリッジ10の交換は、SOFC複合発電システム70のシステム構成によっては、運転中でも可能になる。
従って、小型化された二重構造圧力容器2を複数に分散させることで、損傷発生時のSOFCカートリッジ10の交換に伴う運転停止時間を大幅に削減することができる。
【0046】
そして、上述した二重構造圧力容器2及び圧力調整システム30は、SOFCモジュール1の発電停止時及び緊急時に冷却モードを選択することにより、降温速度を速めることでセルスタック40の燃料電池セル41を保護する還元性ガスの供給量を減少させることができる。
具体的に説明すると、運転中のSOFCモジュール1を停止(発電停止)する場合や、何らかの事情で緊急停止が必要となった場合には、真空室5を加圧することにより発電室11からの放熱を促進する。すなわち、SOFCモジュール1を停止または緊急停止する場合には、真空ポンプ31の運転を停止して流路切替弁32を閉じるとともに、流路切替弁35を開いて真空室5に計装空気34を供給し、内部を所定圧力(例えば0.2MPa程度)まで昇圧する。このようにして真空室5が所定圧まで昇圧されると、流路切替弁35を閉じて真空室5の加圧状態を維持する。
【0047】
このような真空室5の加圧状態では、二重構造圧力容器2の放熱量が大幅に増大するので、発電室11の温度低下も促進される。従って、発電室11内の高温時に燃料電池セル41を保護するために必要だった還元性ガスは、従来との比較において発電室11内を短時間で温度低下させることができるため、時間短縮に応じた供給量の低減が可能になる。
このような降温速度の増大及び還元性ガス供給量の低減は、システム保護に必要な還元性ガスの保有量低減を実現し、あるいは、還元性ガス供給系統の設置を不要にするので、SOFCモジュール1の運転に要するコストの低減やセルスタックが再酸化する温度域に晒される時間を短縮できるのでロバスト性の向上に有効である。
【0048】
ところで、上述した大気開放系統38及び流路切替弁37は、加圧状態の真空室5を真空状態に切り替える場合や、真空状態の真空室5を加圧状態に切り替える場合において、流路切替弁37を開いて真空室5を大気開放することで、切替に要する時間を短縮することが可能になる。
また、上述したSOFCモジュール1の停止時及び緊急時において、降温速度をより一層速めるため、例えば
図2に示すように、外部シェル4を外側から冷却する冷却装置80を設けてもよい。図示の冷却装置80は、外部シェル4の外周面に沿って螺旋状に冷却媒体配管81を配置し、冷却媒体配管81内に水等の冷却媒体を流して外側から吸熱するようにすれば、大気に放熱する場合と比較して発電室11の冷却速度はより一層向上する。なお、冷却媒体配管81は、螺旋状の配置に限定されることはなく、また、冷却媒体についても水に限定されることはない。
【0049】
このように、上述した本実施形態のSOFCモジュール1は、運転(発電)時に内部シェル3と外部シェル4との間に形成される真空室5を真空(例えば1〜10Pa)に維持することで発電室11の真空断熱を行い、停止時・緊急時に真空室5を加圧(例えば0.2MPa程度)することで、発電室11からの放熱を促進する。
図3は、停止時・緊急時に真空室5の冷却を開始した場合について、時間経過を横軸にして圧力及び温度の変化を示したものであり、シェル間圧力(真空室5の内部圧力)、内部シェル3の温度(内部シェル温度)及び空気温度(排酸化性ガス排出管77aの出口温度)が示されている。
【0050】
図3によれば、冷却開始とともに内部シェル間圧力が真空状態から加圧されて所定値の0.2MPa程度まで上昇し、二重構造圧力容器5の真空断熱状態が解除される。
この結果、内部シェル温度は運転中の高温(例えば700℃)から、そして、空気温度は運転中の高温taから50℃程度まで短時間で温度低下する。なお、
図3では、内部シェル温度及び空気温度の温度低下がほとんど認められなくなった時点で流路切替弁37を開き、真空室5の内部を加圧状態から大気圧状態にしている。
【0051】
このように、二重構造圧力容器2は、内部シェル3の内部圧力が0.1MPa〜約1MPa、内部温度が大気温度から約700〜1100℃で運用されるので、耐圧性と酸化性ガス中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性を保有する材質が利用される。なお、内部シェル3に好適な材料としては、例えばSUS304などのステンレス系材を例示できる。
しかし、外部シェル4については、二重構造圧力容器2の真空断熱構造を採用したことで温度条件等が緩和されるため、例えばSS400のような一般構造用圧延鋼材の使用が可能となる。
【0052】
また、近年のSOFCモジュール1においては、SOFCカートリッジ10が長尺化する傾向にある。このため、二重構造圧力容器2は、側壁部の表面積がさらに増加して熱伝導に対する影響割合を増すが、シェルの上下(左右)に取り付けられる蓋部については逆に影響割合が低下する。このため、蓋部については、コストを優先して二重構造を採用しなくてもよい。
【0053】
そして、上述した構造のSOFCモジュール1は、内部シェル3及び外部シェル4よりなる二重構造圧力容器2を採用し、内部シェル3及び外部シェル4の間に形成されて運転時に真空断熱を行うための真空室5を備えているので、運転停止時及び緊急時に空気を供給して真空断熱状態を解除すれば、発電室11内からの放熱量が増大して降温速度を速めることができ、このような冷却方法は、SOFCモジュール1の冷却に要する時間の短縮に有効である。
【0054】
このように上述した本実施形態によれば、SOFCモジュール1の運転時には、真空断熱により発電室11内を保温することで要求される高断熱を保ち、停止時もしくは緊急時には、真空断熱を解除して断熱性能を低下させることにより、迅速な停止操作が可能になる。また、真空断熱構造の採用により、圧力容器内の断熱材を省略または小型化できるので、SOFCモジュール1の小型化や、SOFCモジュール1を小分け(多系列化)することで、損傷発生時のSOFCカートリッジ10の交換に伴う運転停止時間を大幅に削減することも可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、たとえばSOFC以外の燃料電池にも適用可能であるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。