(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262046
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】チャック開閉装置およびチャック開閉装置を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 31/26 20060101AFI20180104BHJP
【FI】
B23B31/26
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-61307(P2014-61307)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-182181(P2015-182181A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 浩史
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−036747(JP,A)
【文献】
実開昭54−151974(JP,U)
【文献】
特開2000−108071(JP,A)
【文献】
実開平06−042005(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/16,31/00,31/30,
B23Q 3/12,
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸内に設けられたチャックを開閉操作する操作部材と、該操作部材を前記主軸に対して摺動させる駆動手段とを備え、該駆動手段が、前記操作部材と一体的に形成されたピストンと、該ピストンが収容されるシリンダとからなり、前記ピストンの往復運動時の前進端位置と後進端位置を調節する調節手段を備え、前記ピストンの往復運動により、前記操作部材を摺動させ、前記チャックを開閉するチャック開閉装置において、
前記調節手段は、前記シリンダの内部から外部に突出するように設けられた筒状のボスと、前記シリンダの内部及び外部の各々に配置されて前記ボスに取り付けられる一対の当接部と、両前記当接部の間に配置されて前記シリンダに設けられるストッパと、を備え、前記ピストンの往復運動に伴って、前記ストッパと各前記当接部とが当接することで前記ピストンの前進端位置と後進端位置とが位置決めされ、前記ボスが、前記操作部材に、前記ピストンの往復運動方向に位置決め自在に装着され、一方の当接部が前記ボスに一体的に設けられ、他方の当接部が前記ボスに位置決め自在に装着されたことを特徴とするチャック開閉装置。
【請求項2】
前記ボスが、前記操作部材に位置決め自在に螺合されて装着され、前記他方の当接部が前記ボスに位置決め自在に螺合されて装着された請求項1に記載のチャック開閉装置。
【請求項3】
前記各当接部は、前記操作部材又は前記ボスの外周に配置される一対の固定片を有し、該固定片の内径を縮径することで前記操作部材又は前記ボスの外周に固定される請求項1または2に記載のチャック開閉装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のチャック開閉装置を備えたことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック開閉装置およびチャック開閉装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋盤等の工作機械において、チャックスリーブをスライド移動させることで、ワークを把持するチャックの開閉操作を行う手段が知られている。このチャックスリーブの移動調節を行うことによって、チャックの開閉調節を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、チャックスリーブの後端に、シリンダ内を軸方向に進退摺動するピストンを設けている。シリンダには、ピストンの前進方向および後退方向に、ピストンが突き当たって移動を停止させる調整ねじが設けられ、この調整ねじのシリンダ内への突出量を調節することで、ピストンの往復運動を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−224204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、シリンダの後方に設けた調整ねじの調節作業は、主軸の外側から行うことができるが、シリンダの前方に設けた調整ねじは、主軸の内部に位置しているため、その調節作業が容易ではないという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、チャックの開閉調節を行うピストンの往復運動を、簡易な構成で容易に調節することが可能なチャック開閉装置およびチャック開閉装置を備えた工作機械を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るチャック開閉装置は、主軸内に設けられたチャックを開閉操作する操作部材と、該操作部材を前記主軸に対して摺動させる駆動手段とを備え、該駆動手段が、前記操作部材と一体的に形成されたピストンと、該ピストンが収容されるシリンダとからなり、前記ピストンの往復運動を調節する調節手段を備え、前記ピストンの往復運動により、前記操作部材を摺動させ、前記チャックを開閉するチャック開閉装置において、前記調節手段は、前記シリンダ側に設けられたストッパと、各々前記ストッパと当接するように、前記ストッパを挟んで配置される一対の当接部と、前記ストッパの外部に突出するように、前記操作部材側に位置決め自在に装着されるボスとを備え、一方の当接部が前記ボスに一体的に設けられ、他方の当接部が前記ボスに位置決め自在に装着されたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る工作機械は、上述のようなチャック開閉装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るチャック開閉装置およびこのチャック開閉装置を備えた工作機械によれば、ピストンの往復運動の調節をシリンダ側に設けられたストッパの外部で容易に行い、チャックの開閉調節を、簡易な構成で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチャック開閉装置を備えた工作機械の要部を示す断面図である。
【
図4】ピストンおよび調節手段付近の拡大断面図であり、調節手段の第2ナットがシリンダ壁に突き当たることで、ピストンの前進端位置が位置決めされた状態を示す。
【
図5】ピストンおよび調節手段付近の拡大断面図であり、調節手段のフランジがシリンダ壁に突き当たることで、ピストンの後退端位置が位置決めされた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るチャック開閉装置を備えた工作機械(自動旋盤装置)の一実施形態について、前記工作機械の主軸を示す図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の工作機械に設けられる主軸10は、軸線Cを中心に回転駆動自在に、主軸台11に支持されている。主軸台11と主軸10との間には、ビルトインモータ12が設けられている。主軸10は、ビルトインモータ12によって回転駆動される。
【0012】
主軸10の先端には、該主軸10の軸線Cに沿って進退摺動可能にチャックスリーブ22が挿入されている。チャックスリーブ22内に、コレットチャック21が収容されている。主軸10内のチャックスリーブ22の後方Rには、チャック操作スリーブ23が進退摺動可能に挿入されている。
【0013】
コレットチャック21とチャックスリーブ22との間には圧縮バネ24が介設されている。コレットチャック21は、圧縮バネ24の付勢力によって、主軸10の前方Fの端部に設けられたキャップ25に当接して位置決めされる。チャック操作スリーブ23は、コレットチャック21が位置決めされることによって、圧縮バネ24の付勢力により、チャックスリーブ22を介して後方Rに付勢される。
【0014】
チャック操作スリーブ23の後方R側にピストン26が一体的に設けられている。主軸10の後方R側にはシリンダ30が一体的に回転するように設けられている。ピストン26は、前後方向に往復運動するように、シリンダ30内に挿入されている。チャック操作スリーブ23は、ピストン26の往復運動により、ピストン26と一体的に軸線Cに沿って進退摺動する。
【0015】
シリンダ30の内部空間31は、ピストン26を挟んで、前方F側の第1シリンダ室31aと後方R側の第2シリンダ室31bとに区画されている。ピストン26は、後方R側の第2シリンダ室31b内へのエアやオイル等の加圧流体の導入によって前方Fに前進移動する。第2シリンダ室31b内の加圧流体を流出可能な状態とすると、圧縮バネ24の付勢力によって、ピストン26は、前記加圧流体を第2シリンダ室31b内から流出させながら後方Rに後退移動する。なお第1シリンダ室31aに加圧流体を導入することによってピストン26を後方Rに後退移動させてもよい。
【0016】
ピストン26の前方Fへの移動により、チャック操作スリーブ23を介してチャックスリーブ22が前方Fに移動し、チャックスリーブ22のテーパ状の内周面がコレットチャック21の外周面のテーパを押圧することによって、コレットチャック21が閉じる。ピストン26の後方Rへの移動により、圧縮バネ24によってチャック操作スリーブ23に追従してチャックスリーブ22が後方Rに移動し、チャックスリーブ22によるコレットチャック21のテーパの押圧が解除されて、コレットチャック21が開く。
【0017】
主軸10は、コレットチャック21にワークが挿入された状態で、コレットチャック21を閉じることによって、ワークを把持することができ、ワークを把持した状態のコレットチャック21を開くことによって、ワークの把持を解除することができる。ピストン26の往復運動は、調節手段60により調節される。調節手段60は、シリンダ30の後方R側を閉塞するシリンダ壁32と、第2シリンダ室31b内に位置する第1ナット40と、シリンダ30の外側に位置する第2ナット50とから構成される。
【0018】
図2、
図3に示されるように、第1ナット40は、主軸10の軸線Cと同軸に形成された筒状のボス41を有する。ボス41の前方F側の一端に、径方向に突出したフランジ42が一体的に形成されている。チャック操作スリーブ23の後端は、突出部27として、シリンダ30から後方Rに突出し、突出部27の外周には、ねじ溝(おねじ)27aが形成されている。
【0019】
ボス41の内周面には突出部27のおねじ27aと螺合するねじ溝(めねじ)49aが形成されている。ボス41が突出部27に螺合することによって、フランジ42が第2シリンダ室31b内に位置し、ボス41がシリンダ壁32の後方Rに突出するように、第1ナット40がチャック操作スリーブ23に装着される。第1ナット40を突出部27に対して螺合回転させることによって、突出部27に対する第1ナット40の軸線C方向の位置を調節することができる。
【0020】
ボス41のシリンダ壁32より外部に突出した後方R側には、軸線C方向と交差する方向にスリット44が形成されている。ボス41のスリット44より後方部分には、軸線C方向に平行な割溝45が設けられている。割溝45の両側に形成される一対の第1固定片46a,46bには、穴47a及びネジ穴47bが設けられている。穴47aとネジ穴47bとを介して固定ねじ48により、第1固定片46a,46bを締結することによって、両第1固定片46a,46bからなる第1固定部43が縮径し、第1ナット40が突出部27に固定される。
【0021】
第2ナット50は、主軸10の軸線Cと同軸のリング状に形成されている。ボス41のスリット44より前方F部分の外周には、ねじ溝(おねじ)49bが形成されている。第2ナット50の内周面には、ボス41のおねじ49bに螺合するねじ溝(めねじ)56が形成されている。第2ナット50はボス41に螺合することによって、シリンダ壁32の外側で第1ナット40に装着される。第2ナット50を第1ナット40(ボス41)に対して螺合回転させることによって、ボス41に対する第2ナット50の軸線C方向の位置を調節することができる。
【0022】
第2ナット50には、軸線C方向に平行な割溝51が設けられている。割溝51の両側に形成される一対の第2固定片52a,52bには、穴54a及びネジ穴54bが設けられている。穴54aとネジ穴54bとを介して固定ねじ55により、第2固定片52a,52bを締結することによって、第2固定片52a,52bからなる第2固定部53が縮径し、第2ナット50が第1ナット40に固定される。
【0023】
ピストン26は、シリンダ壁32をストッパとし、シリンダ30内でフランジ42がシリンダ壁32の内面32aに突き当たり、シリンダ30の外部で、第2ナット50(端面)がシリンダ壁32の外面32bに突き当たる範囲で往復運動する。第1ナット40のフランジ42と第2ナット50とは、ストッパであるシリンダ壁32を挟んで対向するように配置される一対の当接部を構成する。
【0024】
ピストン26の前進端位置は、
図4に示されるように、第2ナット50の端面がシリンダ30の外部でシリンダ壁32の外面32bに突き当たることによって位置決めされる。ピストン26が前進端に位置すると、チャックスリーブ22の前方Fへの移動が規制され、コレットチャック21の把持力が定まる。
【0025】
ピストン26の前進端位置は、コレットチャック21の把持力が、把持の対象となるワークを適正に把持することができるように調節される。ピストン26が前進端に位置すると、フランジ42とシリンダ壁32の内面32aとの距離D1だけピストン26が後方Rに移動可能となる。
【0026】
ピストン26の後退端位置は、
図5に示されるように、第1ナット40のフランジ42がシリンダ30内でシリンダ壁32の内面32aに突き当たることによって位置決めされる。ピストン26が後退端に位置すると、チャックスリーブ22の後方Rへの移動が規制される。ピストン26の後退端位置は、コレットチャック21がスプリングバックの範囲で拡径した状態でチャックスリーブ22と接するように調節される。
【0027】
コレットチャック21の開状態で、コレットチャック21とチャックスリーブ22とが離反することがなく、コレットチャック21とチャックスリーブ22との間への切り粉の噛み込み等を防止し、ワークの把持や把持の解除を円滑に行うことができる。ピストン26が後退端に位置すると、第2ナット50の端面とシリンダ壁32の外面32bとの距離D2だけ、ピストン26が前方Fに移動可能となる。
【0028】
ピストン26の後退端位置は、例えば、第1ナット40のフランジ42とシリンダ壁32の内面32aとの当接状態で、コレットチャック21がスプリングバックの範囲で拡径しチャックスリーブ22と接するように、ボス41を突出部27に対して螺合回転させることによって調節できる。ボス41は、シリンダ30の外側に突出しており、ピストン26の後退端位置の調節は、主軸10の外部から容易に行うことができる。
【0029】
ピストン26の前進端位置は、例えば、ピストン26の後退端位置の調節後、第2ナット50の端面とシリンダ壁32の外面32bとの当接状態で、コレットチャック21の把持力が所定の力となるように、第2ナット50をボス41に対して螺合回転させることによって調節できる。第2ナット50はシリンダ30の外部に配置されているため、ピストン26の前進端位置の調節は、主軸10の外部から容易に行うことができる。
【0030】
以上、本実施形態のチャック開閉装置20によれば、調節手段60の第1ナット40と第2ナット50とを、シリンダ30の外側から操作して、軸線Cに沿って前方F又は後方Rへ移動させるだけで、ピストン26の前進端位置と後退端位置を容易に調節して位置決めし、ピストン26の往復運動の調節を行うことができる。簡易な構成の調節手段60によって、ピストン26の往復運動を調節し、コレットチャック21の開閉調節を、チャック開閉装置20を主軸10から取り外すことなく容易に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態のチャック開閉装置20を備えた工作機械によれば、チャック開閉装置20の取り外しや主軸10の分解等を行うことなく、主軸10の外側から、コレットチャック21の開閉調節を容易に行うことができる。ワークの寸法に対応する各種コレットチャックに応じて、コレットチャック21の開閉調節を容易に行うことができ、寸法の異なる様々なワークの加工が可能な工作機械を提供することができる。
【0032】
この工作機械は、コレットチャック21をチャックとして適用したものであるが、本発明に係る工作機械におけるチャックは、コレットチャックに限定されるものではなく、ましてや、押し形式のコレットチャックに限定されるものではない。コレットチャックを軸線Cに沿って後方Rに向けて引くことで閉じる、引き形式のコレットチャックに適用することもできる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述してきたが、上記実施形態は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
10 主軸 21 コレットチャック(チャック)
22 チャックスリーブ(操作部材) 23 チャック操作スリーブ(操作部材)
26 ピストン(駆動手段) 30 シリンダ(駆動手段)
32 シリンダ壁(ストッパ) 41 ボス 42 フランジ(当接部)
50 第2ナット部(当接部) 52a,52b 第2固定片
60 調節手段