特許第6262053号(P6262053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6262053発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法
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  • 6262053-発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6262053
(24)【登録日】2017年12月22日
(45)【発行日】2018年1月17日
(54)【発明の名称】発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20180104BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20180104BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B5/32
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-67131(P2014-67131)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189050(P2015-189050A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】古井 孝宜
(72)【発明者】
【氏名】桑原 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】人見 一迅
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−315260(JP,A)
【文献】 特開2000−135754(JP,A)
【文献】 特開2014−028920(JP,A)
【文献】 特開2010−202196(JP,A)
【文献】 特開2009−107293(JP,A)
【文献】 特開2003−145657(JP,A)
【文献】 特開2000−117870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 67/00−67/24
C08J 9/00− 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された複数の発泡シートが積層一体化されてなり、
該発泡シートで形成された発泡層を複数備え、
下記式(1)に示す気泡のアスペクト比の平均値が0.6〜1.2である発泡シート積層体。
気泡のアスペクト比 = 前記発泡シートの積層面に垂直な方向の気泡径/前記発泡シートの積層面に平行な方向の気泡径 ・・・(1)
【請求項2】
非発泡層をさらに備えており、
前記非発泡層の厚みの合計に対する前記発泡層の厚みの合計の比が、30〜110である請求項1に記載の発泡シート積層体。
【請求項3】
複数の前記発泡層は、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えており、
複数の前記最小密度領域のうち最も見掛け密度が小さい領域における気泡のアスペクト比の平均値が1.4以上である請求項1又は2に記載の発泡シート積層体。
【請求項4】
前記最小密度領域の気泡のアスペクト比の平均値が、全ての前記発泡層において、1.3以上である請求項3に記載の発泡シート積層体。
【請求項5】
複数の前記発泡層は、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えており、
複数の前記発泡シートのうちの一の発泡シートの一面側が熱溶融されてなる熱溶融層を最表面に備えており、
前記最表面に備えられた前記熱溶融層を含む表層部の見掛け密度は、複数の前記最小密度領域のうち最も見掛け密度が小さい領域の見掛け密度に対して1.3倍以上である請求項1〜4の何れか1項に記載の発泡シート積層体。
【請求項6】
複数の前記発泡シートのうちの一の発泡シートの一面側が熱溶融されてなる熱溶融層を最表面に備えており、
前記最表面に備えられた前記熱溶融層を含む表層部の結晶化熱量が、5.0mJ/mg以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡シート積層体。
【請求項7】
芯材と、該芯材の表面に積層された繊維強化合成樹脂体とを備える繊維強化複合体の前記芯材として用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の発泡シート積層体。
【請求項8】
芯材としての発泡シート積層体と、該芯材の表面に積層された繊維強化合成樹脂体とを備えており、
前記芯材として、請求項7に記載の発泡シート積層体が用いられている繊維強化複合体。
【請求項9】
複数の発泡シートを一体化させる、発泡シート積層体の製造方法であって、
熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された前記発泡シートが複数枚積層されてなる積層体を、該積層体の自然状態での厚み以下に規制しつつ加熱する第1の工程と、
前記第1の工程後に、前記積層体を加熱しつつ、該積層体の厚みを増大させて前記発泡シートそれぞれについて前記第1の工程前の厚みよりも厚みを大きくする第2の工程と、を備える発泡シート積層体の製造方法。
【請求項10】
前記第1の工程前に、熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤とを溶融混練し、押出発泡させることにより、前記第1の工程の複数枚の前記発泡シートのうちの少なくとも1枚を得る押出発泡工程を更に備える、請求項9に記載の発泡シート積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合体は、芯材と、該芯材の表面に積層された繊維強化合成樹脂体とを備えており、軽量で且つ高い機械的強度を有している。繊維強化複合体は、このような特性を有することから、自動車分野、船舶分野、航空機分野、風車分野、圧力容器分野、家電分野、医療機器分野、ロボット分野などで用いられており、例えば、自動車、船舶、航空機などのボディーの部材等として用いられている。
【0003】
近年、繊維強化複合体には、さらなる軽量化が求められている。発泡体は、軽量であることから、繊維強化複合体の芯材として用いる試みがなされている。
前記発泡体としては、優れた剛性を有することなどから、ポリエステル系樹脂発泡体を用いることが提案されている(例えば、特許文献1等)。
また、芯材として、発泡シートを積層した発泡シート積層体を用いることも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−028920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、繊維強化複合体には、曲げ強度及び圧縮強度がより一層優れることが求められていることから、芯材たる発泡シート積層体にもこのような特性に優れることが求められるようになって来ている。
また、繊維強化複合体の芯材として用いられる発泡シート積層体に限らず、他の用途に用いる発泡シート積層体についても、曲げ強度及び圧縮強度がより一層優れるものが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、上記要望点に鑑み、曲げ強度及び圧縮強度に優れる発泡シート積層体及び繊維強化複合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された複数の発泡シートが積層一体化されてなり、
該発泡シートで形成された発泡層を複数備え、
下記式(1)に示す気泡のアスペクト比の平均値が0.6〜1.2である発泡シート積層体にある。
気泡のアスペクト比 = 前記発泡シートの積層面に垂直な方向の気泡径/前記発泡シートの積層面に平行な方向の気泡径 ・・・(1)
【0008】
また、本発明は、芯材としての発泡シート積層体と、該芯材の表面に積層された繊維強化合成樹脂体とを備えており、前記芯材として、前記発泡シート積層体が用いられている繊維強化複合体にある。
【0009】
更に、本発明は、複数の発泡シートを一体化させる、発泡シート積層体の製造方法であって、
熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された前記発泡シートが複数枚積層されてなる積層体を、該積層体の自然状態での厚み以下に規制しつつ加熱する第1の工程と、
前記第1の工程後に、前記積層体を加熱しつつ、該積層体の厚みを増大させて前記発泡シートそれぞれについて前記第1の工程前の厚みよりも厚みを大きくする第2の工程と、を備える発泡シート積層体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ強度及び圧縮強度に優れる発泡シート積層体及び繊維強化複合体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】繊維強化複合体を作製する工程での一状態を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態の発泡シート積層体は、熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された複数の発泡シートが積層一体化されてなり、該発泡シートで形成された発泡層を複数備える。
また、本実施形態の発泡シート積層体において、下記式(1)に示す気泡のアスペクト比(Ac)の平均値は、0.6〜1.2であることが重要であり、0.7〜1.1であることが好ましい。
気泡のアスペクト比 = 前記発泡シートの積層面に垂直な方向の気泡径(垂直径)/前記発泡シートの積層面に平行な方向の気泡径(平行径) ・・・(1)
この平均値が0.6以上であることにより、発泡シート積層体は、積層面に垂直な方向から外圧がかかっても、気泡がクッションとなり、圧縮強度に優れたものとなり、また、曲げ強度にも優れたものとなる。
また、この平均値が1.2以下であることにより、発泡シート積層体は、圧縮時、特に、加熱状態における圧縮時に適度な反発力を発揮して賦形性に優れたものとなり、また、曲げ強度にも優れたものとなる。
【0014】
なお、気泡のアスペクト比の平均値は、以下のようにして求める。
すなわち、まず、発泡シートの積層面に垂直な方向で発泡シート積層体を切断して第1の切断面を形成し、走査型電子顕微鏡を用いて第1の切断面を200倍で撮影し、この写真において観察される気泡を無作為に100個選んで、それぞれの気泡の垂直径と平行径とを求め、平行径に対する垂直径の比率を個々の気泡のアスペクト比とする。次に、発泡シートの積層面に垂直な方向で、且つ、第1の切断面にも垂直な方向で発泡シート積層体を切断し第2の切断面を形成し、走査型電子顕微鏡を用いて第の切断面を200倍で撮影し、この写真において観察される気泡を無作為に100個選んで、それぞれの気泡の垂直径と平行径とを求め、平行径に対する垂直径の比率を個々の気泡のアスペクト比とする。そして、これらの気泡のアスペクト比を算術平均し、この算術平均値を発泡シート積層体の気泡のアスペクト比の平均値とする。
なお、気泡断面の外側輪郭線上において、積層面に垂直な方向で相互の距離が最大となる2点を選び、この2点間の距離を「垂直径」とする。また、この気泡断面の外側輪郭線上において、積層面に平行な方向で相互の距離が最大となる2点を選び、この2点間の距離を「平行径」とする。
また、外側輪郭線が断面にかかっている気泡は、アスペクト比の測定対象から除外する。例えば、発泡シート積層体から、積層方向に平行な面における未発泡の表皮を切断除去した場合などは、外側輪郭線が断面にかかっている気泡が存在している可能性があるからである。
【0015】
さらに、本実施形態の発泡シート積層体の気泡の平均垂直径は、0.05〜0.8mmが好ましく、0.08〜0.6mmがより好ましく、0.1〜0.5mmが特に好ましい。気泡の平均垂直径が0.05mm以上であることにより、発泡シート積層体は、柔軟になり、破断が生じ難く、また、衝撃エネルギーを十分に吸収することもできるという利点を有する。気泡の平均垂直径が0.8mm以下であることにより、発泡シート積層体は、硬度が高くなり、十分な機械的強度が得られるという利点を有する。
【0016】
なお、発泡シート積層体に含まれている気泡の平均垂直径は、気泡のアスペクト比の測定と同様に、切断面にそれぞれ含まれている100個の気泡について垂直径を測定し、その測定値の算術平均値を算出することにより求めることができる。
【0017】
また、本実施形態の発泡シート積層体は、非発泡層を少なくとも1層備えている。
前記非発泡層としては、前記発泡シートの表面部が非発泡な状態に熱溶融されてなる熱溶融層、前記発泡シート自体が有するスキン層、発泡シート積層体の最表面に設けられた非発泡な樹脂フィルム層、又は、前記発泡シート同士の間に介装された非発泡な樹脂フィルム層等が挙げられる。
【0018】
前記樹脂フィルム層を構成する樹脂フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムまたは熱硬化性樹脂フィルムのような合成樹脂フィルムが好ましく、熱可塑性樹脂フィルムがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂などが挙げられ、耐熱性、成形性、耐久性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ABS樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂等が挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れるという観点から、エポキシ樹脂や、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂としては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0019】
また、前記樹脂フィルム層の片面または両面に、接着剤層が形成されていてもよい。接着剤層を構成している接着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系感圧式接着剤、ゴム系感圧式接着剤の他に、アクリル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ナイロン系などのホットメルト型接着剤が挙げられる。接着剤としては、耐熱性及び接着性に優れるという観点から、アクリル系感圧式接着剤、アクリル系ホットメルト型接着剤、ポリエステル系ホットメルト型接着剤が好ましい。
また、樹脂フィルム層の厚み(樹脂フィルム層が複数存在する場合には、樹脂フィルム層の各層の厚み)は、5〜800μmが好ましく、10〜600μmがより好ましい。
なお、樹脂フィルム層は、後述するような、樹脂中に繊維を含む繊維強化合成樹脂シートであってもよい。
【0020】
また、本実施形態の発泡シート積層体において、前記非発泡層の厚みの合計に対する前記発泡層の厚みの合計の比が、30〜110であることが好ましく、40〜100であることがより好ましい。前記非発泡層の厚みの合計に対する前記発泡層の厚みの合計の比が、30以上であることにより、発泡シート積層体は、軽量性に優れるという利点を有する。また、前記非発泡層の厚みの合計に対する前記発泡層の厚みの合計の比が、110以下であることにより、発泡シート積層体は、非発泡層の割合を大きくすることができ、機械的強度に優れるという利点を有する。
【0021】
なお、発泡層は、走査型電子顕微鏡を用いて発泡シート積層体の断面を200倍で撮影し、この写真において気泡が観察される層を意味する。一方で、非発泡層は、この写真において気泡が観察されない層を意味する。
【0022】
また、本実施形態の発泡シート積層体は、軽量性の観点から見掛け密度が0.40g/cm3以下であることが好ましく、0.30g/cm3以下であることがより好ましい。一方で、機械強度が優れるという観点から0.08g/cm3以上であることが好ましく、0.10g/cm3以上であることがより好ましい。
なお、見かけ密度は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の求め方」記載方法に準拠して測定することができる。
【0023】
複数の前記発泡層は、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えている。
なお、複数の前記発泡層は、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えているかは、以下のようにして確認する。
すなわち、まず、複数の前記発泡層を、厚み方向(積層方向)に0.3mm間隔で、厚み方向と平行にスライスする。次に、各スライス部分の見掛け密度を、上述した発泡シート積層体の見掛け密度の求め方と同様な求め方で求め、複数の前記発泡層が、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えているか確認する。
また、本実施形態の発泡シート積層体において、圧縮強度に優れるという観点から、複数の前記最小密度領域のうち最も見掛け密度が小さい領域における気泡のアスペクト比の平均値が、1.4以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
なお、前記最小密度領域における気泡のアスペクト比の平均値は、以下のようにして求める。
すなわち、発泡層の各層において見掛け密度が最も小さい領域を前記最小密度領域として、複数の前記最小密度領域のうち最も見掛け密度が小さい領域における気泡のアスペクト比の平均値を求める。なお、このスライス部分における気泡のアスペクト比の平均値は、上述した発泡シート積層体の気泡のアスペクト比の平均値の求め方と同様な求め方で求める。すなわち、発泡シート積層体の断面において、最も見掛け密度が小さい領域での気泡のアスペクト比の平均値を求める。なお、このときスライスによって最も見掛け密度が小さい領域と判断した部分の0.3mmの範囲に気泡の断面積の50%以上が含まれている気泡についてのみ垂直径及び平行径を測定して、気泡のアスペクト比の平均値を求めるものとする。
【0024】
さらに、本実施形態の発泡シート積層体において、圧縮強度に優れるという観点から、前記最小密度領域の気泡のアスペクト比の平均値が、全ての前記発泡層において、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。
なお、前記最小密度領域の気泡のアスペクト比の平均値は、前記最小密度領域に当たる気泡のアスペクト比の平均値として、上述した発泡シート積層体の気泡のアスペクト比の平均値の求め方と同様な求め方で求める。
【0025】
また、本実施形態の発泡シート積層体は、複数の前記発泡層は、最も見掛け密度が小さい最小密度領域を各層の厚み方向中央部に備えており、複数の前記発泡シートのうちの一の発泡シートの一面側が熱溶融されてなる熱溶融層を最表面に備えており、前記最表面に備えられた前記熱溶融層を含む表層部の見掛け密度が、複数の前記最小密度領域のうち最も見掛け密度が小さい領域の見掛け密度に対して1.3倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることがより好ましい。本実施形態の発泡シート積層体は、斯かる構成を有することにより、前記表層部が硬質なものとなり、前記表層部で高い初期荷重を発現できるという利点を有する。また、本実施形態の発泡シート積層体は、斯かる構成を有することにより、前記表層部で局所的にかかる力を面方向に分散させつつ、分散された力を発泡シート積層体全体で吸収することができ、その結果、エネルギー吸収性に優れたものとなるという利点を有する。
なお、前記表層部の見掛け密度、及び、各発泡層の最小密度領域の見掛け密度は、以下のようにして求める。
すなわち、発泡シート積層体の発泡層を、表面から、厚み方向0.3mm間隔で、厚み方向と平行にスライスする。次に、前記表層部に当たる第1回目のスライス部分の見掛け密度、及び、前記最小密度領域に当たるスライス部分の見掛け密度を、上述した発泡シート積層体の見掛け密度の求め方と同様な求め方で求めることにより、前記表層部の見掛け密度、及び、各発泡層の最小密度領域の見掛け密度を求める。
【0026】
また、本実施形態の発泡シート積層体は、複数の前記発泡シートのうちの一の発泡シートの一面側が熱溶融されてなる熱溶融層を最表面に備えており、前記最表面に備えられた前記熱溶融層を含む表層部の結晶化熱量が、5.0mJ/mg以下であることが好ましい。また、この結晶化熱量が、3.0mJ/mg以下であることがより好ましい。
本実施形態の発泡シート積層体は、斯かる構成を有することにより、前記表層部が硬質なものとなり、前記表層部で高い初期荷重を発現できるという利点を有する。また、本実施形態の発泡シート積層体は、斯かる構成を有することにより、前記表層部で局所的にかかる力を面方向に分散させつつ、分散された力を発泡シート積層体全体で吸収することができ、その結果、エネルギー吸収性に優れたものとなるという利点を有する。
なお、前記表層部の結晶化熱量は、以下のようにして求める。
すなわち、発泡シート積層体の発泡層を、表面から、厚み方向0.3mmで、厚み方向と平行にスライスする。そして、前記表層部に当たる第1回目のスライス部分の結晶化熱量を測定する。
結晶化熱量は、JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」に記載されている方法で測定した値を意味する。
なお、具体的には、結晶化熱量の測定は、示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いて行う。より具体的には、アルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんし、該試料を該容器ごと示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)にセットし、窒素ガス流量20mL/minのもと30℃で2分間試料を保持する。そして、速度10℃/minで30℃から290℃まで試料を昇温した時のDSC曲線を作成する。この際、基準物質としてはアルミナを用いる。
そして、DSC曲線の結晶化ピークの面積から、結晶化熱量(mJ/mg)を求める。
【0027】
さらに、本実施形態の発泡シート積層体において、曲げ強度に優れるという観点から、「曲げ最大点応力」を「発泡シート積層体の見掛け密度」で除した「比曲げ最大点応力」が、好ましくは15MPa/(g/cm3)以上、より好ましくは20MPa/(g/cm3)以上である。
なお、「比曲げ最大点応力」は、後述する実施例に記載の方法で測定したものを意味する。
【0028】
また、本実施形態の発泡シート積層体において、圧縮強度に優れるという観点から、「25%変形圧縮応力」を「発泡シート積層体の見掛け密度」で除した「比25%変形圧縮応力」が、6.5MPa/(g/cm3)以上であることが好ましい。
なお、「比25%変形圧縮応力」は、後述する実施例に記載の方法で測定したものを意味する。
【0029】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の固有粘度(以下、「IV値」ともいう。)は、好ましくは0.8〜1.5、より好ましくは1.0〜1.3である。
なお、IV値は、JIS K7367−5:2000に準拠して測定した値である。
【0031】
次に、本実施形態の発泡シート積層体の製造方法について説明する。
本実施形態の発泡シート積層体の製造方法は、複数の発泡シートを一体化させる方法である。
また、本実施形態の発泡シート積層体の製造方法は、熱可塑性ポリエステル系樹脂で形成された前記発泡シートが複数枚積層されてなる積層体を、該積層体の自然状態での厚み以下に規制しつつ加熱する第1の工程と、前記第1の工程後に、前記積層体を加熱しつつ、該積層体の厚みを増大させて前記発泡シートそれぞれについて前記第1の工程前の厚みよりも厚みを大きくする第2の工程と、を備える。
【0032】
前記発泡シートを製造する方法では、熱可塑性ポリエステル系樹脂、発泡剤、気泡調整剤、及び、架橋剤を押出機に供給し溶融混練することにより発泡性樹脂組成物を得る。
そして、押出機の先端に取り付けたサーキュラーダイから発泡性樹脂組成物を押出して円筒状の発泡シートを形成する。
次に、該サーキュラーダイの下流側(押出方向前方)に配した冷却用マンドレルの外周面に前記発泡シートの内面を摺接させつつ該発泡シートを引き取り、該冷却用マンドレルで発泡シートを拡径するとともに発泡シートの内側からマンドレルで発泡シートを冷却し、発泡シートの外側から発泡シートに空気を吹き付けて発泡シートを冷却し、該冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで前記発泡シートを押出方向に向けて連続的に切断して平坦なシートとなるように展開し、長尺帯状の発泡シートを作製する。
【0033】
前記発泡剤としては、飽和脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。
前記飽和脂肪族炭化水素としては、プロパン、ブタン、ペンタンなどが挙げられる。また、前記ハロゲン化炭化水素としては、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタンが挙げられる。
前記発泡剤の使用量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0034】
前記気泡調整剤としては、無機系核剤、有機系核剤が挙げられる。
前記無機系核剤としては、タルク、シリカなどが挙げられる。また、有機系核剤としては、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
前記気泡調整剤の使用量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
【0035】
前記架橋剤としては、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
前記架橋剤の使用量は、熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.05〜2質量部が好ましい。
【0036】
前記第1の工程では、2枚の熱板を備える加熱プレス機において、加熱した2枚の熱板の間に、前記発泡シートが複数枚積層されてなる積層体を挟む。そして、熱板で積層体に加圧することにより、積層体の自然状態での厚み以下に積層体を規制しつつ加熱する。
なお、積層体は、最表面に設けられた非発泡な樹脂フィルム層、及び、前記発泡シート同士の間に介装された非発泡な樹脂フィルム層の少なくとも何れか一方の層を有してもよい。
【0037】
前記第2の工程では、前記第1の工程後に、熱板の熱によって積層体を加熱しつつ、積層体を2枚の熱板で挟んだ状態を保ちながら熱板間の距離を徐々に広げ積層体の厚みを増大させて前記発泡シートそれぞれについて前記第1の工程前の厚みよりも厚みを大きくする。
【0038】
本実施形態の発泡シート積層体の製造方法では、前記第2の工程後、前記熱板の熱によって積層体を更に加熱することにより、前記発泡シート同士を加熱融着させる。そして、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで、発泡シート積層体を得る。
【0039】
本実施形態の発泡シート積層体の製造方法は、第1の工程及び第2の工程を実施することにより、発泡シートの気泡のアスペクト比を高めることができ、その結果、得られる発泡シート積層体が圧縮強度に優れたものとなるという利点を有する。
【0040】
また、本実施形態の発泡シート積層体の製造方法は、積層した発泡シートの両面側から加熱することにより、得られる発泡シート積層体の表面部分に特に熱がかかりやすくなるので、発泡シート積層体の表層部が硬くなり、発泡シート積層体が曲げ強度に優れたものとなるという利点を有する。
【0041】
次に、本実施形態の繊維強化複合体について説明する。
本実施形態の繊維強化複合体は、芯材としての発泡シート積層体と、該芯材の表面に積層された繊維強化合成樹脂体とを備え、前記芯材として、本実施形態の発泡シート積層体が用いられている。
本実施形態の繊維強化複合体は、気泡のアスペクト比の平均値が0.6〜1.2であることが好ましい。なお、繊維強化合成樹脂体に積層される前の発泡シート積層体における気泡のアスペクト比の平均値が0.6〜1.2であれば、本実施形態の繊維強化複合体における気泡のアスペクト比の平均値は、0.6未満でもよく、また、1.2を超えてもよい。
【0042】
前記繊維強化合成樹脂体の強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維;ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維;ボロン繊維などが挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有するという観点から、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材などが挙げられる。繊維束は、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えたものである。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
前記繊維強化合成樹脂体については、一枚の繊維強化合成樹脂シートのみを積層せずに用いてもよく、複数枚の繊維強化合成樹脂シートを積層して用いてもよい。複数枚の繊維強化合成樹脂シートを積層した繊維強化合成樹脂体としては、(1)一種のみの繊維強化合成樹脂シートを複数枚用意し、これらの繊維強化合成樹脂シートを積層した繊維強化合成樹脂体、(2)複数種の繊維強化合成樹脂シートを用意し、これらの繊維強化合成樹脂シートを積層した繊維強化合成樹脂体、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる繊維強化合成樹脂シートを複数枚用意し、これらの繊維強化合成樹脂シートを繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた繊維強化合成樹脂シート同士を糸で一体化(縫合)してなる繊維強化合成樹脂体などが用いられる。なお、糸としては、ポリアミド樹脂糸やポリエステル樹脂糸などの結束用合成樹脂糸、及びガラス繊維糸などのステッチ糸が挙げられる。
【0043】
また、前記繊維強化合成樹脂体のマトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂の何れも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
【0044】
強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂も挙げられる。熱硬化性樹脂としては、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂や、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤などの添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂としては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、発泡シート積層体との接着性又は前記繊維強化合成樹脂体を構成している強化繊維同士の結着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂や、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂としては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の単独重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。熱可塑性エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂としては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどが挙げられる。ジオールとしては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートとしては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、1種が単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
前記繊維強化合成樹脂体中におけるマトリックス樹脂の含有量は、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。繊維強化合成樹脂体中におけるマトリックス樹脂の含有量が少なすぎると、強化繊維同士の結着性や繊維強化合成樹脂体と発泡シート積層体との接着性が不十分となり、繊維強化合成樹脂体の機械的物性や繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞がある。マトリックス樹脂の含有量が多すぎると、繊維強化合成樹脂体の機械的物性が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上させることができない虞がある。
【0047】
繊維強化合成樹脂体の目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。目付が上記範囲内である繊維強化合成樹脂体は、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
繊維強化合成樹脂体の厚みは、20〜2000μmが好ましく、50〜1000μmがより好ましい。
【0048】
尚、本実施形態の発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法は、上記構成により、上記利点を有するものであったが、本発明の発泡シート積層体、繊維強化複合体、及び、発泡シート積層体の製造方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【実施例】
【0049】
次に、試験例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0050】
まず、試験例の発泡シート、発泡シート積層体、繊維強化複合体の物性値の測定方法を説明する。なお、上述した測定方法は以下では割愛する。
【0051】
<連続気泡率>
連続気泡率は、ASTM D−2856−87に準拠して1−1/2−1気圧法にて測定した。
【0052】
<圧縮強度>
発泡シート積層体の圧縮特性の評価は、「25%変形圧縮応力」を「発泡シート積層体の見掛け密度」で除した「比25%変形圧縮応力」によって評価した。
発泡シート積層体の25%変形圧縮応力は、JIS K7220:2006「硬質発泡プラスチック−圧縮特性の求め方」記載の方法により測定した。
すなわち、試験片のサイズは、縦50mm×横50mm×発泡シート積層体の厚み(mm)とした。そして、テンシロン万能試験機UCT−10T((株)オリエンテック製)、万能試験機データ処理(UTPS−237ソフトブレーン(株)製)を用い、圧縮速度を1分当たり発泡シート積層体の厚みの10%厚み(mm)として、この試験片の25%変形圧縮応力を求めた。試験片の数は最少5個とし、試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下に16時間以上置いた後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で試験片の25%変形圧縮応力を求めた。
なお、25%変形圧縮応力は次式により算出した。
(25%変形圧縮応力)
σ25=F25/A0
σ25:25%変形圧縮応力(MPa)
25:25%変形時の力(N)
0:試験片の初めの断面積(mm2
また、比25%変形圧縮応力は次式により算出した。
(比25%変形圧縮応力)
25=σ25/ρ
25:比25%変形圧縮応力(MPa/(g/cm3))
σ25:25%変形圧縮応力(MPa)
ρ:試験片の見掛け密度(g/cm3
そして、以下の基準で評価した。
○:6.5MPa/(g/cm3)以上
×:6.5MPa/(g/cm3)未満
【0053】
<曲げ強度>
発泡シート積層体の曲げ特性の評価は、「曲げ最大点応力」を「発泡シート積層体の見掛け密度」で除した「比曲げ最大点応力」によって評価した。
発泡シート積層体の曲げ最大点応力は、JIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」記載の方法により測定した。
すなわち、試験片のサイズは、幅25mm×長さ120mm×発泡シート積層体の厚み(mm)とした。そして、テンシロン万能試験機UCT−10T((株)オリエンテック製)、万能試験機データ処理(UTPS−237ソフトブレーン(株)製)を用い、試験速度を10mm/minとし、加圧くさびを5Rとし、支持台を5Rとし、支点間距離を100mmとして、試験片の曲げ最大点応力を求めた。試験片の数は5個とし、試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下に16時間以上置いた後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で試験片の曲げ最大点応力を求めた。
なお、曲げ最大点応力は次式により算出した。
(曲げ最大点応力)
R=1.5FR×L/bd2
R:曲げ最大点応力(MPa)
FR:最大点荷重(N)
L:支点間距離(mm)
b:試験片の幅(mm)
d:試験片の厚さ(mm)
また、比曲げ最大点応力は次式により算出した。
(比曲げ最大点応力)
FL=R/ρ
FL:比曲げ最大点応力(MPa/(g/cm3))
R:曲げ最大点応力(MPa)
ρ:試験片の見掛け密度(g/cm3
そして、以下の基準で評価した。
○:20MPa/(g/cm3)以上
△:15MPa/(g/cm3)以上20MPa/(g/cm3)未満
×:15MPa/(g/cm3)未満
【0054】
<比吸収エネルギー>
発泡シート積層体を芯材として備える繊維強化複合体の比吸収エネルギーは、JIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」記載の方法により測定した。
すなわち、試験片サイズは、幅25mm×長さ150mm×繊維強化複合体の厚み(mm)とした。そして、テンシロン万能試験機UCT−10T((株)オリエンテック製)、万能試験機データ処理(UTPS−237ソフトブレーン(株)製)を用い、試験速度を10mm/min、加圧くさびを10Rとし、支持台を10Rとし、支点間距離を100mmして、試験片の比吸収エネルギーを求めた。試験片の数は5個とし、試験片を温度23±2℃、湿度50±5%の環境下に16時間以上置いた後、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で試験片の吸収エネルギーを求めた。
なお、比吸収エネルギーは、試験開始から最大点荷重を示した変位までの荷重−変位グラフの積分値を吸収エネルギーとし、該吸収エネルギーを繊維強化複合体の見掛け密度で除することで求めた。
比吸収エネルギーは次式により算出した。
C=E/ρ×103
C:比吸収エネルギー(mJ/(g/cm3))
E:吸収エネルギー(J)
ρ:試験片の見掛け密度(g/cm3
【0055】
(試験例1)
熱可塑性ポリエステル系樹脂としてのポリエチレンテレフタレート(The Far Eastern Industry社製、商品名「CH611」、融点:251℃、ガラス転移温度:78.1℃、結晶化温度:132℃、IV値1.04)96.4質量部、ポリエチレンテレフタレートに気泡調整剤としてのタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60質量%、タルク含有量:40質量%)3.6質量部および無水ピロメリット酸0.20質量部を、発泡シートを形成させるための樹脂原料として用意した。
【0056】
なお、ポリエチレンテレフタレートの融点及び結晶化温度は、以下のようにして求めた。
すなわち、結晶化熱量を求める際に用いたDSC曲線と同様にしてDSC曲線を求め、DSC曲線から得られる融解ピーク温度を融点とし、DSC曲線から得られる結晶化ピーク温度を結晶化温度とした。
【0057】
また、前記したガラス転移温度は以下のようにして求めた。
すなわち、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんして、窒素ガス流量20mL/minのもと10℃/minの昇温速度で30℃から290℃まで昇温し、10分間保持後速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、10℃/minの昇温速度で30℃から290℃まで昇温した時に得られたDSC曲線より中間点ガラス転移温度を算出した。この時に基準物質としてアルミナを用いた。この中間点ガラス転移温度は該規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求めた。
【0058】
スクリュー径65mmφの単軸押出機のホッパーに前記樹脂原料を供給し、該押出機内で最高温度290℃で前記樹脂原料を加熱溶融させ、前記樹脂原料を溶融混練することにより、樹脂組成物を得た。
その後、前記樹脂原料100質量部に対する割合が0.38質量部となる割合で発泡剤としてのブタン(イソブタン:35質量%、ノルマルブタン:65質量%)をこの押出機の途中において圧入し、樹脂組成物と発泡剤とを溶融混練させることにより、発泡性樹脂組成物を得た。
【0059】
そして、押出機の先端部において、溶融状態の前記発泡性樹脂組成物を275℃に冷却した後、押出機の先端に装着された円環状の吐出口を有するサーキュラーダイ(吐出口の口径70mm、スリット幅1.00mm)から押出して円筒状の発泡シートを形成した。
次に、該サーキュラーダイの下流側(押出方向前方)に配した直径210mmの冷却用マンドレルの外周面に前記発泡シートの内面を摺接させつつ該発泡シートを引き取り、該冷却用マンドレルで発泡シートを拡径するとともに発泡シートの内側からマンドレルで発泡シートを冷却し、発泡シートの外側から発泡シートに空気を吹き付けて発泡シートを冷却し、該冷却用マンドレルの下流側に設けたカッターで前記発泡シートを押出方向に向けて連続的に切断して平坦なシートとなるように展開し、長尺帯状のポリエステル系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)を作製した。
【0060】
なお、作製した発泡シートは、厚みが1.8mmであり、見掛け密度が0.35g/cm3であり、連続気泡率が6%であり、シート表面部分の結晶化熱量が23.0mJ/mgであり、気泡のアスペクト比の平均値が0.38であった。
なお、発泡シートの気泡のアスペクト比の平均値は、発泡シート積層体の気泡のアスペクト比の平均値を求める際の「積層方向」を「厚み方向」に変えて測定した。
また、シート表面の結晶化度は、表面から、厚み方向に0.3mm、厚み方向と平行に発泡シートをスライスし、前記したJIS K7122:1987に従って測定した。
【0061】
2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから7.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
【0062】
なお、作製した発泡シート積層体は、厚みが7.0mmであり、見掛け密度が0.17g/cm3であった。
【0063】
<繊維強化複合体の作製>
繊維強化合成樹脂体としての繊維強化合成樹脂シート(厚み300μm、目付:200g/m2、三菱レイヨン社製 商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523 381KMP」)を2枚用意した。繊維強化合成樹脂シートは、炭素繊維からなる綾織の織物からなる強化繊維基材に、未硬化のエポキシ樹脂が40質量%含浸されているシートである。繊維強化合成樹脂シートは、縦180mm×横180mmの平面正方形状とした。
そして、2枚の繊維強化合成樹脂シートを、互いに隣接する繊維強化合成樹脂シートの強化繊維基材の経糸の長さ方向が直交するように重ね合わせた。
【0064】
次に、アルミニウム板を用意し、このアルミニウム板の上面に離型剤(ケムリースジャパン社製 商品名「ケムリース2166」)を塗布して一日放置することにより、アルミニウム板の上面に離型処理を施した。なお、アルミニウム板上面の外周縁部には、後記する封止材やバックバルブを配置するため、離型処理は施さなかった。
【0065】
図1に示すように、上面に離型処理を施したアルミニウム板を押圧部材3aとして用い、押圧部材3aの離型処理を施した面上に、重ね合わせた2枚の繊維強化合成樹脂シート2を載置し、これらの繊維強化合成樹脂シート2上に発泡シート積層体1を載置した。
【0066】
上記の繊維強化合成樹脂シートとは別に、上記と同一の繊維強化合成樹脂シートを更に2枚用意し、2枚の繊維強化合成樹脂シートを上記と同様の要領で重ね合わせた。これらの重ね合わせた2枚の繊維強化合成樹脂シート2を発泡シート積層体1上に載置して繊維強化積層体Aを作製した。
【0067】
次に、押圧部材3aの離型処理を施した面上に、繊維強化積層体Aの幅方向両端部の外側に一対の棒状で直方体状のスペーサ4a、4bを載置した。なお、スペーサ4a、4bはアルミニウム板からなり、8.0mmの厚みを有していた。また、スペーサ4a、4bにおいて後述する押圧部材3bと接触する上面には予め離型処理を施した。そして、下面に離型処理を施したアルミニウム板を押圧部材3bとして用意し、繊維強化積層体A及びスペーサ4a、4b上に押圧部材3bを積層した。この時、押圧部材3bの離型処理面が繊維強化積層体A及びスペーサ4a、4bと接触するようにした。
【0068】
そして、押圧部材3b上に、この押圧部材3bを全面的に被覆するように、貫通孔を有するリリースフィルム5(AIRTECH社製 商品名「WL5200B−P」)及びブリーザークロス6(AIRTECH社製 商品名「AIRWEAVE N4」)を順に積層した。
リリースフィルム5は、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体フィルムで形成されたものである。また、リリースフィルム5は、両面間に亘って貫通し且つ繊維強化合成樹脂シート2中のエポキシ樹脂が通過可能な貫通孔が多数形成されたものである。
ブリーザークロス6は、ポリエステル樹脂繊維で構成された不織布から形成されており、エポキシ樹脂を含浸可能に構成されたものである。
【0069】
ブリーザークロス6上にバギングフィルム7(AIRTECH社製 商品名「WL7400」)を被せ、バギングフィルム7の外周縁部とこれに対向する押圧部材3aとを封止材8としてのシーラントテープ(AIRTECH社製 商品名「GS43MR」)を用いて気密的に接合して繊維強化積層体Aを密封した。
バギングフィルム7は、ナイロンフィルムから構成されたものである。バギングフィルム7の一部にバックバルブ9(AIRTECH社製 商品名「VAC VALVE 402A」)を配置して積層構造体を作製した。
【0070】
次に、真空ポンプを真空ラインに接続し、積層構造体をオートクレーブ内に供給し、積層構造体のバックバルブ9を真空ラインに接続した。そして、バギングフィルム7で密封された空間部B内の空気を、繊維強化積層体Aからこの繊維強化積層体Aの側面をスペーサ4a、4bを介して被覆しているブリーザークロス6の方向に排出することにより、空間部B内を真空度0.10MPaに減圧した。なお、空間部B内の減圧はその後も継続して行った。
【0071】
しかる後、前記空間部B内の減圧を継続して行うことにより、繊維強化合成樹脂シート2中に存在している空気を吸引、除去しながら、オートクレーブ内を昇温速度4℃/分にて90℃となるまで昇温し、そして、繊維強化積層体Aを90℃で90分間に亘って加熱した(予備加熱工程)。この予備加熱工程により、繊維強化合成樹脂シート2中のエポキシ樹脂を軟化させて繊維強化合成樹脂シート2を発泡シート積層体1の表面に沿って変形させると共に、発泡シート積層体1の繊維強化合成樹脂シート2が積層されている面における表面部に含まれている熱可塑性ポリエステル系樹脂を適度に軟化させた。
【0072】
次に、オートクレーブ内をゲージ圧力0.3MPaに加圧して繊維強化積層体Aに押圧部材3a、3bを介して押圧力を加えると共に、オートクレーブ内を昇温速度4℃/分にて130℃となるまで昇温し、そして、繊維強化積層体Aを130℃で60分間に亘って加熱した(硬化工程)。この硬化工程により、繊維強化合成樹脂シート2中のエポキシ樹脂を硬化させて繊維強化合成樹脂層を得た。その後、オートクレーブ内を冷却してオートクレーブ内が60℃となった時点でオートクレーブ内の加圧を解除して大気圧に戻して、繊維強化積層体Aを取り出し、繊維強化積層体Aを室温まで冷却した。これにより、発泡シート積層体の両面に繊維強化合成樹脂層2が形成された繊維強化複合体を得た。
なお、繊維強化積層体Aへの加圧によって繊維強化合成樹脂シート2、2中の余分なエポキシ樹脂の一部は、リリースフィルム5の貫通孔を介してブリーザークロス6に吸収され、他の一部は、リリースフィルム5の貫通孔を介さずにブリーザークロス6に吸収されていた。
【0073】
(試験例2)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、3枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(3枚の合計厚み:5.4mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.6mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:4.8mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を4.8mmから10.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ11.0mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0074】
(試験例3)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、4枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(4枚の合計厚み:7.2mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.8mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:6.4mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を6.4mmから14.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ15.0mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0075】
(試験例4)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから9.5mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ10.5mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0076】
(試験例5)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)、PETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラー U34#50」、縦180mm×横180mm×厚み50μm)及び発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)をこの順で積層したものを挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートとPETフィルムの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートとPETフィルムの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから7.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ7.0mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0077】
(試験例6)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから4.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ5.0mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0078】
(試験例7)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから12.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませた。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ13.0mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0079】
(試験例8)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)を接着剤(HUNTSMAN社製、商品名「アラルダイト2011」)を使用して貼り合わせ、貼り合わせた発泡シートを23℃の環境下に1週間置き、発泡シート積層体を作製した。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ4.7mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0080】
(試験例9)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、145℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから7.0mmまで3分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませたが、熱板間距離を広げている途中、4.2mmの厚みで発泡が止まったため、熱板間の距離を4.2mmとし、熱板で発泡シートを隙間なく挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以上の温度(145℃)で、積層した発泡シートをさらに12分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ5.2mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0081】
(試験例10)
試験例1と同様にして発泡シートを得た。
次に、2枚の熱板(180mm×180mm)を備える加熱プレス機において、100℃に加熱した2枚の熱板の間に、2枚積層した発泡シート(縦180mm×横180mm×厚み1.8mm)(2枚の合計厚み:3.6mm)を挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(100℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、前記熱板同士の間の距離が、積層した発泡シートの合計の厚みよりも0.4mm小さくなるように(積層した発泡シートの合計の厚みの11%分小さくなるように)(熱板同士の間の距離:3.2mm)、積層した発泡シートを前記熱板で加圧した。
次に、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上の温度(100℃)で、積層した発泡シートを加熱しつつ、熱板間の距離を3.2mmから7.0mmまで1分かけて徐々に広げて前記発泡シートを膨らませたが、熱板間距離を広げている途中、5.3mmの厚みで発泡が止まったため、熱板間距離を5.3mmとし、熱板で発泡シートを隙間なく挟んだ。
そして、前記熱板の熱によって、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化温度以下の温度(100℃)で、積層した発泡シートをさらに14分間加熱することにより、前記発泡シートを合計15分間加熱圧着させた。
次に、加熱プレス機の熱板の内部を水冷することで該熱板を60℃まで冷却した後、発泡シート積層体を得た。
また、この発泡シート積層体を用いたこと、及び、高さ6.3mmのスペーサを用いたこと以外は、試験例1と同様にして繊維強化複合体を得た。
【0082】
結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【符号の説明】
【0084】
1:発泡シート積層体、2:繊維強化合成樹脂シート、3a:押圧部材、3b:押圧部材、4a:スペーサ、4b:スペーサ、5:リリースフィルム、6:ブリーザークロス、7:バギングフィルム、8:封止材、9:バックバルブ、A:繊維強化積層体、B:空間部
図1